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  • 新型ウイルス NTR?肛門検査レター

    
    
    
     気まずい、非常に気まずい。
     なんたって、学校であんなことがあった手前、表面上はいつものように一緒に帰るぼくたちだけれど、自然と口数は少なくなっている。おかしな空気をどうにかしたいのは山々でも、さすがに今日の出来事を思うと、ペラペラと陽気に喋る気にもなれない。
    「……ねえ」
     やっと、彼女が口を開いた。
     ずっとずっと、下ばかりを向いて歩いて、黒髪から覗く白いはずの耳が赤らんでいた。何も話そうとする気配がなく、ただただ、いつもそうしているからというだけで、何となくの流れで一緒に帰っているぼくたちのあいだに、それまで会話は何もなかった。
     ぼくの隣を歩く、ぼくの恋人。
     名前は緑川遠子。
     恋に落ちたのは中学の時だ。
     大人しく控え目な遠子は、あるおり美術室で真剣な面持ちを浮かべ、画面に絵の具を走らせていた。たまたま通りかかったぼくは、思わずそれを覗いてしまった。何かに惹かれたように美術室に入ってしまい、ぼくは呆気に取られたのだ。
     彼女そのものが、絵になっていた。
     窓から差し込む光によって、カーテンが白く輝いていて、そんな輝きを背景にキャンバスに筆先を走らせる。美少女が絵を描いている光景という、それ自体が芸術のように見えてしまって、何の気の迷いだっただろう。
     美術館の作品に感動して魅入られることがあったら、あんな気持ちになるに違いない。
     ぼくはスマートフォンを取り出していて、思わずパシャリとやってしまい、その音に驚いた彼女は、目を丸めた驚いた顔でこちらを見ていた。みるみるうちに罪悪感が膨らんで、ぼくは必死でその場で謝り、今すぐ写真も消すと言ったのだが……。
    
     ねえ、どうして撮ったの?
    
     頭を下げ、何度も何度もゴメンと連呼するうちに、彼女はしだいに不思議そうな顔を浮かべて尋ねてきた。
     ぼくは正直に答えた。
    
     綺麗に、見えて…………。
    
     それで、思わず撮ったのだと。
     そう言った途端に、彼女は急に赤らんで、恥ずかしそうに目を逸らした。思えば芸術に感動して、それでついと白状したようなもので、そこまで大きく持ち上げられては、気恥ずかしいというかくすぐったいというか、そんな感じにもなるだろう。
     だけど、あの照れっぷりがますます可愛く見えて、ぼくは恋をしてしまった。
     それまで、女の子に興味はあっても、何故だか好きな子はいなかった。
     クラスにタイプの子がいなかったのだと思う。
     その子はとても輝いて見えた。必要以上に可愛く見えた。確かに美少女で、ルックスは優れていたけど、それでもなお、我ながら目にフィルターがかかっていることを自覚するほど、とことん可愛く見えたのだ。
     きっと、ぼくにとって、よっぽどタイプの子だったから、さながら天使に見えたのだ。
    
     写真、消さなくていいよ?
    
     と、彼女は言った。
     それから、イタズラっぽく微笑んで――。
    
     その代わり、モデルになって下さい。
    
     絵のモデルをやらされた。
     甘んじて引き受けたぼくは、モデルとして何時間もポーズを取らされ、ぴくりとも動かずポーズを維持するのは、こんなにも筋力を使うのかと実感しながら耐えに耐え、ようやく完成した絵をどこかのコンクールに出したらしい。
     今思えば、遠子もぼくに興味を持ってくれたのだろうか。
     なんて、その場で思い上がったわけではない。
    
     ありがとね。
     お礼に、アイス奢ってあげる。
    
     って、駅前のショッピングモールを一緒に歩いた。
     やばい、デートだ。
     なんていうドキドキやら、緊張やらで、当時はそれどころではなかったけど、今にして思えば、お礼という口実でぼくを誘ったのもあり得る話だ。そもそも、モデルを頼んできたことも、あれはぼくとの接点を強める作戦だったのかもしれない。
     うぬぼれ? 思い上がり?
     そうは言うけど、卒業式の日に合わせ。ぼくは告白されたのだ。
     いや、告白させられたのだろうか。
    
    『今日、校舎裏で私に告白して下さい』
    
     そんなメールが送られてきて、それによってぼくは告白した。
     しかし、告白して来て欲しいという宣言は、それ自体が告白というか、ある意味では向こうから告白してきたことになるような、そんな気もするわけで。
     交際を開始するなり、すぐにデートを繰り返し、高校も同じ学校に合格している。毎日のように通学路を共にして、同じ通学電車に乗り、同じ教室に通っている。そんなぼくたちに降りかかるのが、あの最悪の検査であった。
    「栄介は、何かされなかった?」
     心配そうに尋ねてくる。
    「え、いや……」
     された、というべきだろうか。
    「大丈夫だった?」
    「……うん」
     いいや、本当は少しだけ、大丈夫とは言えない部分がある。
     とてもとても、最悪な体験をしたと思うのだけど、なんていってもぼくは男で、遠子の方がウブで恥じらいもある女の子だ。いくら男にとっても恥ずかしい体験とはいえ、女の子の方がより大きな羞恥心を感じたはずだ。
    
     ……肛門検査をやったのだから。
    
     ここ数ヶ月前、海の向こうで新型ウイルスの流行がニュースになった。
     広まる一方の感染で、そのウイルス発生国は大変な事態に陥って、世界各国は次々とその国の人間に入国禁止の措置を図った。ところが日本はその判断が遅く、関東や関西に東北など、各地で感染が確認されたとニュースに上がっていき、とうとう何十人、何百人もの感染者が出始める。
     このまま感染が広がり続けていけば、日本も世界も、これからどうなっていくのか、誰にもわかりはしない。
     だが、とうとう特効薬は開発された。
     感染者を割り出す実に簡単な検査方法も発見され、あとは特効薬を量産して次から次へと感染者を治していけば、事態はやがて収束していくことになる。
     それはいい。
     世間を騒がすニュースが収束に向かっていき、事態が落ち着くというのなら、是非とも検査や治療をやりまくって欲しいと思ったものだ。
     ところが、実際に緊急検査要請が首相によって行われ、それを受けた全国学校で実施されることとなった検査内容は、医師の前で四つん這いのポーズを取り、お尻を丸出しにして肛門を診てもらうものだった。
     実に機械的にやったと思う。
     まるでベルトコンベアの上を家畜が流れているみたいに、やっている側は淡々と作業をこなしていた。けど、そんな検査を受けるぼくたちは、いかにも屈辱的な方法でウイルスの有無を調べられ、もしも感染していれば……。
    
     ……座薬を挿入されてしまう。
    
     幸い、ぼくには何もなかったけども。
     肛門の色素を診て、表面と内部の触診を簡単に行うだけで、新型ウイルス感染の有無がわかってしまうらしい。もしも感染していたら、特効薬となる座薬を入れてしまえば、たったそれだけで解決だ。
     事態が収束に向かうのはいい。
     感染すれば、命の危機に関わることはもちろん、感染拡大によって社会的な打撃だってもたらしかねない。感染者が学校に出入りすれば、学校全体に広がることになりかねない。そんな危険な症状を誰だって放置したくはない。感染などしたくはないし、していたら治したいに決まっている。
     だけど、それにしたって、あんな方法だとは思わない。
    
     検査とはいえ、人に肛門を見せるだなんて――……。
    
     そう、だからだ。
     四つん這い、お尻丸出し、肛門を観察して触診まで行う方法で、全校生徒が一人残らず屈辱を受けたものだから、その日の教室はおかしな空気になっていた。腫れ物を扱う空気が校内全域に行き渡っていたというか、一人残らず全ての人間が、不自然なまでにその話題を避けていたり、極端なほど遠回しに話していた。
     そう、男女関係なく。
     男子にとっても羞恥と屈辱にまみれたといえる方法で、女子さえも検査され、しかも女医がいなかったということは、男性医師や男性助手の面々にお尻を診られている。
     だから、ぼくは思うのだ。
    「……遠子こそ、大丈夫だったの?」
     まさか、平気なものか。
     心に深い傷が残っているに決まっているのに、口を突いてでるのはこんな言葉だ。
    「……大丈夫」
     と、そう言うに決まっている。
     ぼくだって、そう言ったばかりだ。
     しかし、遠子は少し違った。
    「あのね……」
     続きがあった。
    「お医者さんの人達だって、ああいう方法で検査するなんて、色々言われたり、批判されたりするだろうし……大変だと思うから……それで、本当に感染しているかわかったり、治せたりするなら…………」
    「そうだよね……」
     やっぱり、遠子は天使だ。
     あんな目に遭ったはずなのに、あんな検査をやった医師たちを擁護するようなことが言えるのだ。ぼくだって問題は感じるけれど、あれしか方法がなかったのなら、きっと仕方のないことなのだ。
     あれで適切だというのなら、命の方が大切だろう。
    「うん。本当は嫌。本当は、すっごく最悪だった。私に人を簡単に吹っ飛ばせる力があったら、暴れちゃいたかった」
    「ははっ、確かに」
    「でも、きちんと考えてみたら、暴れたりしたらお医者さんも可哀想」
    「あの人たちも、自分の仕事やってるだけだろうしね」
    「うん。だから、本当は我が儘言ったり、泣いて困らせてやりたかったけど、そういうことはしないように我慢しました」
    「偉いよ。遠子は」
    「栄介もね」
    「ぼくも?」
    「そう。栄介も」
     笑い合い、ぼくたちのあいだで少しは傷が和らいだ。
     魔法のように、一瞬で癒えてしまうことはないけれど、少しだけ和らいだのだ。
    
         ***
    
     だけど、数日後の夜だった。
     部屋に自分のパソコンを持っているぼくは、こっそりとそういう検索をしてしまうこともあり、つまるところネットにアップロードされた動画を探していた。部屋の外に音が漏れることを嫌い、きちんとイヤホンをしたぼくは、なにかいい動画はないかとサイトの巡回をして、これと思うものを再生するつもりでいた。
    
    『肛門検査盗撮! うらわかき少女のアナルが晒される!』
    
     ページタイトルとなった見出しの文は、先日の記憶がまだ新しいから目に留まり、どうも心に引っかかったためなのだろうか。決して良い思い出ではないというのに、何故だかぼくはクリックをしてしまい、動画掲載サイトに飛ぶ。
     どうして、よりにもよって肛門検査だなんて、いつものぼくなら、もっとノーマルな性交しか見ないというのに気になった。
     検査や診断だとかを扱うAVがあるというのは、何となく知っている。いくら個人の命や社会全体に関わる問題だったとはいえ、女の子のお尻を調べた検査は、AVとして出せば、きっとそういうジャンルのマニアは喜ぶだろう。
     遠子がどんな目に遭ったか。
     擬似的にだけど、見ることが出来る。
     それで、なのだろうか。
     だからぼくは、正体のわからない不思議な衝動にかられている。嫌な思い出を自分自身で掘り返しているかもしれないのに、遠子がどういう目に遭ったか、頭の中では想像してみたいのだろうか。
     動画投稿サイトの動画が埋め込まれ、ここで再生可能になっている。
     その再生をクリックした。
     途端に、ぼくは衝撃を受けていた。
    
    『緑川遠子さん』
    
     動画再生の始まった最初の一秒の瞬間から、ぼくのよく知る名前が、よりにもよって恋人と同じ名前が呼ばれ、大いに驚かされていた。
     馬鹿な、そんなはずはない。
    「遠子? いや、まさかねぇ?」
     同姓同名に決まっている。
     だいたい、こういうアダルト動画は、AVから切り抜かれたものが、違法にアップロードされているだけなのだ。そうと知りながら視聴するのは、あまりよくないことなのだろうが、残念ながら正規に購入ができる年齢には至っていない。
     おこずかいは限られており、定められた予算で遠子とのデートをこなす一方で、AVの購入などしてはいられない。
     という言い訳を自分にしつつ、そんなサイトを利用しているぼくは、だから名前が同じだけのまったくの別人が出て来るのだろうと信じていた。びっくりしたけど、ぼくの知る遠子が出て来るはずはない。
     しかし、そう思っていたぼくは、より一層の驚きに目を丸め、きっと眼球を血走らせさせしているに違いない。
    
    「遠子!?」
    
     ぼくは思わず、画面に向かって身を乗り出していた。
     緑川遠子だったのだ。
     映像の中に現れて、制服のブレザーを着ている可憐な少女は、まぎれもなくぼくの恋人その人で、視聴者の目の前に立っている。どうやって撮ったのか、どんな小型カメラか偽造カメラを使ったのか、とにかく真正面から堂々と、遠子は撮られているのだった。
     本物なのか?
     盗撮といっても、普通はそれらしく撮影したAVじゃないか。AV女優がそういう風な作品に出ているだけで、本当の犯罪を犯して撮ったものではない。レイプも、弱みを握った脅迫も何もかも、AVとして出版され、ダウンロード購入だって可能な代物のはず。
     だったら、どうして遠子が映っている?
     高校生が出演できるわけがない、遠子は未成年だ。
     それでも映っているからには、本物の盗撮じゃないか。
     だとしたら、ぼくの学校に犯罪者が入り込み、しかもアップロードしたことになる。ぼくのように、遠子のことを知る人間が見てしまったら、その人だって本物の盗撮であると気づくだろう。
     そして、ヤラセだと思いながら見る人の頭の中では、ただ高校生っぽく見えるだけの、遠子がAV女優ということになってしまう。
     最悪だ。
     なんで、どうしてこんなことが起きた。
    『緑川遠子です。よろしくお願いします』
     本人は自分が動画に撮られている自覚もなく、何も知らずに視聴者に向かって会釈をする。
     そして、軽い問診で最近の症状を尋ね、熱や咳についての話を済ませる。特にここ最近、何の症状も感じた覚えはない、そう答えていた遠子は、いよいよ医師の指示を受け、診察ベッドへ上がっていく。
     ベッドの周りには、他にも何人かの白衣の男が行き来していた。
     何人いる?
     一体、何人に囲まれて、四つん這いになるというんだ?
     即座に自分が検査を受けた時のことを思い出す。
     きっと、ぼくの時と面子は変わっていない。確か、メインの医師と、助手と、何か記録していた人で、三人だったはずである。だったら遠子の周りも三人か。
     ベッドに上がった遠子はイヌの姿勢となっていた。
     ああ、なんてことだ。
     ぼくは自然と、医者なら検査や診察のためだけに、何の下心もなく女の子の裸や恥部を見るものだと思っていた。そうでなければ困る。女性のクレームということもある。ぼくの恋人が、そんな心の持ち主から検査や診察を受けるだなんて、考えたくもない話だ。
     しかし、決してありえない話じゃない、
     いくらプロの医師であっても、大勢の中の一人くらいは、自分の立場を利用して性的な犯罪に手を染める人がいるはずだ。きっと、百人に一人、千人に数人程度の、本当に限られた確率だとは思うけど、運悪くもそういう輩が遠子に当たるのも、絶対にありえないわけではない。
     たとえ医師自身が興奮するわけではなくても、盗撮した映像を売れば金になる、なんていう考え方もありそうだ。
     ぼくは戦慄した。
     本物の盗撮映像が撮られたばかりか、こうしてアップロードされている。
     ただでさえ、犯罪によって作られた映像なんてまずいのに、未成年が映っているのは、法的にいってもより一層の危うさである。投稿者はどうしてこんなことを平然とできたのか。それとも、何らかの形で流出が起きたのか。
    『それじゃあ、初めていくんで、頭は下げちゃって下さいね』
     若い声で、軽快に指示が出る。
     すると、両手を突いて四足歩行動物のようなポーズを取っていた遠子は、言われた通りに上半身の角度を下げる。
     ちょうど、その前には一人の白衣がいた。
    「土下座……」
     正確な土下座ではない。
     だけど、連想してしまう。
     頭の位置が下がっていて、その前に男がいるのだ。形としては、間違いなく男に頭を下げているし、土下座をさせられているわけではないけど連想してしまう。一度連想してしまうと、遠子が屈辱に遭わされているように思えて怒りが湧く。
     カメラはお尻の後ろに回った。
     まるで撮影者の視界をそのまま映像にしているように、明らかに一人の男の身体に仕込まれたカメラには、白衣の両手が映り込む。さながら視聴者が自分で腕を伸ばして、これからスカートを捲るつもりになりきれるような主観視点で、まずは丈を持ち上げるかと思いきや、最初に行うことはお尻に手を乗せることだった。
    『はい。始めるからね?』
     たったそれだけのために、肩でも叩いて挨拶をするような気持ちだけで、こんなにも軽々しくお尻を触った。ぼくだって触れたことのない、手を握ったことしかない遠子の体に、医者とはいえ触っている。
     ぼくの中には黒い感情が湧いていた。
    「こいつ……!」
     歯ぎしりをしながら、それでもぼくは見てしまう。
    『ではお尻の方、失礼しますね?』
     白衣の両手はスカートを捲り上げ、白いショーツを丸出しにする。まだ一度も見たことのなかった下着をこんな形で見てしまい、黒い怒りを燃やしているはずのぼくなのに、股間は正直に膨らんでいた。
     これが遠子のお尻……。
     綺麗だと、見惚れてしまうぼくだけど、咄嗟に頭を振って我を取り返し、これが盗撮映像なのだということを思い出す。
     本当は見てはいけない映像だ。
     今すぐブラウザを消すべきだ。
     だけど、再生回数を見てみれば、既に何百人もの人が再生を済ませた後で、世の中の不特定多数の人々が、遠子のお尻を見ているのだ。どこの誰かもわからない、顔も名前もわからない男達が見ているのに、ぼくだけが遠子のお尻を見ていないなんて耐えられない。
     いけない、ことだ。
     わかっている。
     わかっていても、ぼくの心は画面の中に吸い込まれ、もう映像を止めることは出来なくなってしまっていた。
    『はい。失礼しまーす』
     医者とは、なんて存在だろう。
     しかも、生物災害を危惧する状況だったから、遠子だって素直に黙って検査を受けざるを得ない。ぼくだってそうしたくらいだ。
     だけど、女の子の身体というものは、恋人の関係になって、肉体関係にまで進展して、初めて目にする資格が得られるものだ。そこに辿り着くまでには、それなりの道のりがあるはずではないか。
     そんなものはすっ飛ばし、医者という理由だけで、白衣の両手は遠子の下着を下げている。
    「くそ……」
     悔しさを噛み締めながら、ショーツが下がるにつれて広がるお尻の肌面積に、ぼくは完全に目を奪われ、そして肛門に視線を吸い込まれた。
    
     遠子の、お尻の穴………………。
    
     とんでもないものを見てしまっている。
     見てはいけない、なにか禁断のものを目の当たりにしてしまった気持ちに、ぼくは何故だか、これから自分には神界から天罰が下ってもおかしくないくらいの、大袈裟な罪悪感に囚われていた。
     だって、肛門じゃないか。
     性器と肛門なら、一体どちらが恥ずかしいのか、ぼくには想像しかできないけれど、少なくとも乳房を出すより遥かに羞恥を煽ることは間違いない。禁断の領域に踏み込んでしまった気になった。
     いつかは本人の了解を得て、正しく見ることができるかもしれないのに、過程を飛ばしてしまう禁忌を犯したような気になった。
     胸がざわつくぼくだけれど、それでも視線は外せない。
     薄桃色の、放射状の皺の窄まりは、とても綺麗だった。
     汚れ一つなく、黒ずみも薄い。
     とても清潔にしてあるそこは、白いお尻の中心に咲いていた。
     せめてもの親切心か、肛門だけが見える状態で、ショーツを下げることはやめている。だけど尻たぶに手を乗せて、心なしか撫でているような気がする。見知らぬ男の手が、遠子のお尻を味わっている。
    『ではじっくりと観察していきますよ』
     カメラが肛門に近づいた。
    『おや? 穴の近くにホクロがあるんですね?』
     羞恥を煽るに決まっている言葉を振りかけて、医者は視診を行っていた。見れば確かに、皺から何ミリか右に寄ったところにホクロがあり、そして両手ともが、意味もなく尻たぶの上に置かれている。
     あんな場所のホクロだなんて、それこそ肉体関係でなければ知ることはできない。
     医者の立場から、遠子のホクロが暴かれてしまった。
     しかも、ぼくのように動画を視聴している人間は、遠子のことを知りすらせず、きっとAV女優だと思い込んだまま、肛門の形もホクロの位置も知ったことになる。大切な秘密が知れ渡っているような焦燥にかられるも、ぼくの力で動画を削除させることはできない。
     いや、通報のシステムくらいはあるだろう。
     直ちに消えるはずもなく、削除までどれほど時間がかかるだろう。
     だいたい、海外サイトだ。
     削除申請の場所を見つけるのも、手間取ることになってしまう。
     そうこう考えているあいだにも、尻たぶに乗った両手とも、はっきりとした撫で方ではないものの、明らかにさする動きを行っている。非常にゆっくり、さりげなく、円を成して回っているのだ。
    『触診をしていきますが、すぐに終わりますので、できるだけリラックスして、落ち着いて待っていて下さいね』
     何がリラックスだ。
     これから肛門を触られるとわかっていて、どうして落ち着いた気分でいられるか。お尻が丸々と大きく映り、画面をデカデカと支配している状態で、肩も顔も映っていない。しかし、見えてなどいなくても、ぼくには強張っている様子がひしひしと伝わってきた。
     人差し指が迫っていく。
    (遠子……)
     ぼくは歯を食い縛る。
     何をどう願っても、どんなに強く念じても、この動画の中の出来事は、もう既に起きてしまったことなのだ。どう足掻いても変えられない。ただ指を咥えて見ているしかない歯がゆさに苛まれた。
     嵌めているのは、医療用のビニール手袋なのだろう。
     その白いビニールから透けた肌色の指先は、みるみるうちに肛門と距離を縮めて、ついには接触の位置に到達した。
    
     ぐにぃっ、
    
     と、押し込むようなマッサージが始まった。
    (遠子……!)
     血の涙が流れそうな思いを抱え、ぼくは肛門がぐにぐにとやられている様を見てしまう。左手は尻たぶの上に置き、触診を施しているのには、わかっていても怨念が湧いてくる。
     もし、遠子が新型ウイルスに感染していたら?
     一時の感情で医師の元へ怒鳴り込み、殴りでもしたところで、遠子のことを守るどころか、かえって病気の危険に晒すことになる。診察さえいければ、感染していても助かることは、頭では十分にわかっているのだ。
     それでも、怨念が湧いて仕方がない。
    「くそ……」
     医師が恨めしい。
     一旦、指は離れていくも、それは外側の触診を済ませたからに過ぎない。今度は指にジェルを塗り、内側を調べ始めるはず。そんな透明な粘液によってコーティングされた指先が画面に現れ、再び肛門に迫っていく。
     指先が触れ、そのまま穴の中へと潜っていった。
     皺の窄まりに侵入して、指が根元まで埋まっていき、遠子のお尻の穴は医療の名の下に暴かれていた。
     調べているのだ。
     内部に炎症はないか、できものはないか。
     そういうことを診ているのはわかっていても、恋人の肛門が指に犯されている映像は、ぼくの胸を万力で締め付けるように痛めてくる。見ていて苦しく、だけど禁忌の映像を見ている興奮に、遠子の気持ちにかかわらず、ぼくの肉棒は元気に膨らむ。
     どんな恥辱の思いだろう。
     医師の指はくるくると、回転するように動きつつ、少しばかりのピストンも織り交ぜて、内部を探っているのがわかる。探し物をしている手つきでしかない、医療上の行いなのが、挙動から伝わって来る。
     しかし、左手は相変わらず、意味もなく尻たぶに乗せていた。
    (何なんだよ……その手は……!)
     必要があるとは思えない、意味のない左手の存在が気になって、苛立ちを煽って来る。ただでさえ遠子の穴を弄られて嫌なのに、無用な接触が続いているのは最悪だ。
     指が抜かれる。
     人差し指の太さだけ広がっていたはずの肛門は、直ちに皺を引き締めていた。放射状の皺の周りは、ジェルが浸透しているせいか、光を反射して輝いている。薄桃色の鮮やかな色合いがジェルの光沢で色気を増し、ぼくは肛門で興奮しそうになっていた。
     ……歪む。
     ぼくの性癖が、どうにかなってしまいそうだ。
     そして、次が仕上げであった。
    (遠子………………)
     本当に惨めな気持ちになるだろう。
     ぼくだって、あんなことをされて本当に辛く、最悪で、恥ずかしい思いだった。まるで赤ん坊扱いされたような気がして、情けないことこの上なかった。ここまで男女平等に同じことをしているなら、それを女子にしないはずはない。
    
     遠子はお尻を拭かれていた。
    
     ジェルを綺麗に拭き取るため、ウェットティッシュで肛門をこすり、人の手でお尻を綺麗にしてもらう。それこそ、赤ん坊の頃でなければ到底ありえない世話を、高校生にもなってされているのだ。
     白いウェットティッシュ越しに、指で肛門をこすっている。
     それがひとしきり済んだ時、
    
     ぺちっ、ぺちっ、
    
     医師はお尻を叩いた。
    『はい、終わりですよ?』
     ただただ終了を告げるためだけの、叩いた本人にはまるで悪意のなさそうな、とてもとても軽いスパンキングだったけど、遠子にとっては惨めな打撃を浴びたようなものではないか。
     さらにはショーツを穿かせ直して、スカートも医師の手で元に戻した。
     こんな目に遭った遠子の気持ちを思えば思うほど、ぼくの内側ではらわたが煮えくりかえり、画面を殴りたくなってくる。モニターを壊しても意味はない。だけど、この衝動をどこかにぶつけたくなってしまう。
    「くそ……!」
     四つん這いだった遠子はベッドを降りて、両足を下ろして綺麗な姿勢でカメラを向く。赤らんだ顔つきで、涙目になりながら、それでも遠子は頭を下げた。
    『……ありがとうございました』
     あんな目に遭って、その相手にお礼を言う。
     こんなの、屈辱でしかない。
     背中を向け、診察の場から去って行く遠子の背中は、いかにも素早い小走りで消えていくのだった。
    
         †††
    
     あれから、ぼくは削除申請を出していた。
     遠子の映像だけでなく、他の女子の映像もあったのを――正直に言うと、見つけたものは全て視聴してしまったが、それでも海外サイトの英語をどうにか読み、削除申請の場所を探して英文を書き散らした。
     学校で習った単語や文法を必死になって思い出し、動画の女の子は未成年に見えるため、児童ポルノにあたるのではないか? という、疑問の形式文章を送りつけたのだ。個人的な知り合いであり、間違いなく未成年だという、確定的なことを言うのは怖かったし、だから他人の立場で未成年を疑った風に見せかけた。
     ぼくの申請が通ったからかはわからない。
     運営自身がまずいと思ったのか、他にも通報者がいたのか。
     どうあれ、動画は消えていた。
     そして、ぼくのフォルダーには、ブラウザアドオンを使ってダウンロードしたことで、通報をする一方でいけない保存もしてしまっていた。
     ぼくは罪深いだろうか。
     そうかもしれない。
    
     だけど……………………。
    
     遠子のお尻の穴。
     これだけは、大切な宝物にしたかった。
    
    
     
    
    
    


     
     
     


  • ボクのカノジョがダレのモノかはサイコロできまる


     
     
     
     Hなスゴロクゲームの作品なのですが、これには羞恥シーンがありました。

     作品の題材からして、当然スケベマスに止まればヒロインはHな目に……。
     服を脱いで下さいといったマスがあるのは当たり前ですね。

     すると、衆人環視の中での脱衣となります。

     あらわとなった裸に対する感想・品評がヒロインに向けて飛ばされます。

     ただし、あれば良かったと思うのは、やはり女の子側の心理描写ですね。
     寝取られゲーということで、衆人環視ばかりかそこに彼氏がいる状況での露出ショー。

     ならば、あってもいいはずです。

     「こ、こんな大勢の前でなんて……!」
     「彼が見ているのに……!」

     といった心の声が少しでもあればよかったのですが。

     脱ぐ(動作の描写)
     品評(裸に対する衆人環視の声)

     主にあったのはこれくらい。

     いえ、目の前で彼女が脱ぐことへの彼氏の声もあったのですが……。

     それと、これはDLsiteのレビューにはありますが。

     ・周回前提なのにスキップ無し
     ・回想がCGのみ

     ということは、イベントをもう一度見るには再びゲームをやり、所定のマスに止まるしかありません。
     それは運要素が強いので、狙ったマスに都合良く止まるのが難しい。

     このゲーム的に残念な点は、同サークルの「ボクとカノジョとHな超能力者たち!」では改善されていました。

     ワンシーンだけですが、超能力者の方にはオッパイに聴診器という検査羞恥有り。

     
     
     
    DLsiteで購入
     
     


  • クベルの首枷病


     
     
     寝取られを売りにしたRPG作品なのですが、どうもDLsiteでの販売ページを見ると「羞恥」タグがついている。FANZAの方の販売ページには「野外・露出」タグがついている。これは気になる。絵柄も好み。とりあえず体験版をプレイしてみるに、最低のクズ男に犯されちゃう姿に興奮できたので購入しました。
     
     

     
     
     野外でオナニーをして、見つかりそうになりドキドキしちゃう!?
     
     
     とある「謎の遺跡」を調査に訪れるマジェタノだが、その際奥には危険な禁書が眠っていた。町長のバカ息子に遊び感覚で禁術をかけられ、従わざるを得ない状態にされてしまい、術の作用によって遺跡を歩いているだけで肉欲ゲージが溜まってしまう。これを解消しなければ、まともな探索などできやしない!
     
     


     
     
     しかも、本来のマジェタノはもっとチート級の魔力量を誇っており、魔物との戦闘で魔力切れを起こす心配などまずなかった。バカ息子にかけられた禁術のせいで、本当の実力を封印され、ハンデを背負った状態で遺跡を探索して、目的を達成しなくてはいけない。
     
     溜まっていく肉欲……。
     
     歩いているだけで下着が濡れ、股がウズウズする状態で、このままでは活動に支障が出る。溜まった肉欲ゲージを減らすためには当然エロいことをしなくてはならないが、その一つが野外でのオナニーとなる。
     
     見つかる!?
     
     そんな状況に置かれたマジェタノちゃんの姿は見物でした。
     
     
     では探索中に肉欲ゲージが溜まってしまうと?
     



     
     
     不本意なセックスが見たいというのが黒塚の趣味です。
     
     そういくと、ほかに好きな男がいるにも関わらず、クズな男に感じさせられ、気持ちよくされてしまう屈辱の姿は極上のもので、堕ち方が段階的であればそんなシーンを何度も見ることができる。
     
     
     NTRゲーとしても評価がたかくおすすめの一品です。
     
     
     
    FANZAで購入DLsiteで購入

  • 彼女の媚肉が堕ちるまで


     
     
    強気なお姉さんが汚っさんに寝取られる。
     
     
     
    そのストーリーはヒロインの千晴が精神的に衰弱したところに付け込まれる内容です。
     
    千晴と出会い、お互いに惹かれ合い、付き合い始める二人なものの、主人公は教師を目指す勉強のために一時土地を離れてしまう。彼氏(主人公)のいない間にヒロインに悲劇が起こり、幼い弟が交通事故で入院したことがショックでダメージを受けてしまう。
     
     
    辛い彼女を支えてやるべき男はいない。

    メールが来ても、強がって弟の事故は隠してしまう。

    そんな千晴はやがて心労で酒に浸り、道端で泥酔する。

    倒れて意識のない千晴を襲うのは・・・・・。
     
     

     
     

    こんなにも汚い『汚ッサン』なのです。

     
     
     
    意識が朦朧として倒れていたところ、それを家まで運んであげる汚ッサンは、
    この絶好のチャンスを逃さすセックス!
     
     
     
     
    しかも、その後のオッサンの台詞は――
     
     
     
     
    「千晴ちゃんから誘ってきたんだぜぇ……?」
    「あん時や…自分から舌絡めてきてよぉ…♪激しかったぜぇ……♪」

     
     
     
     
     
     そんなん嘘です。
     オッサンが寝込みを襲ったのです。
     
     
     しかし、目が覚めたらオッサンの腕の中で目が覚めたという事実があり、おまけに酒で記憶が朦朧としていて、セックスをしてしまった証拠はあっても、嘘が嘘だとわかるものは何もない。ただただ、状況証拠とオッサンの台詞ばかりが突きつけられ、もうすっかりとヒロインが自分から誘ったんだということにされてしまう。
     
     

     
      
     相手は見た目からして汚らしいオッサンで、日頃からスケベな視線を向けていたいやらしい奴です。そんな奴を相手に自分から誘ったなんて、いくらなんでもありえない。元が強気なお姉さんだから、そうやって言い返しはするものの……。
     
     
     それでもオッサンに言い負かされ、「どー考えても千晴ちゃんがわりぃよなぁ」とまで言い残され、過ちを犯してしまった罪悪感に打ちのめされる。
     
     
     あとは弱みに付け込まれ、だんだん堕とされてわけだが。
     
     


     
     

     元が強気なヒロインであり、オッサンのことは毛虫のごとく嫌っていた。
     
     
     堕ち始めていても、完璧に堕ちきるまでは、嫌がる気持ちが残っているんですねぇ?
     
     
     
     初めてオッサンとした際、千晴ちゃんは意識がはっきりしていません。二回目できちんとチンポの太さだとかを意識的に感じ取るわけですが、想像より気持ちいいものを入れられての反応が素晴らしい。

     ちょっとは強気な言葉を返すけど、それでもどこか快楽に流されていて、というこの具合が黒塚の好みにマッチしました。
     
     
     
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  • リーナと初夜権

    第1話「リーナとキアラン」
    第2話「密かなエッチ」
    第3話「処女検査」
    第4話「リーナの決闘」
    第5話「恥辱の初夜権」
    第6話「調教の始まり」
    第7話「失われる純潔」
    第8話「リーナの屈辱」
    第9話「三日目 屈辱の言葉」
    第10話「四日目 刻み込まれるジョードの肌」
    第11話「五日目 お尻ペンペンとおチンポ記憶」
    第12話「リーナのチンポ当てゲーム」
    第13話「六日目① 寸止め」
    第14話「六日目② 憎いが故にペロペロと・・・」
    第15話「六日目③ 賭けの提案
    第16話「チンポには屈しない!」
    第17話「最後の晩に向けて」
    第18話「最終日」
    第19話「堕ちないリーナ」
    第20話「諦めたジョード」
    第21話「キアランとの再会」
    第22話「お風呂で体洗い」
    第23話「おチンポ洗いとフェラチオ」
    第24話「キアランとのセックス」
    第25話「キアランの心」


  • 催眠セックスの実験

    
    
    
     性交指導実施のためにある指導室には、面談用の机やソファーの他にも、ベッドや浴室まで完備されている。バイブやローターにローションから、ソーププレイ用のマットさえ置かれているが、俺が行うセックスは仕事でもあるのだ。
     この高校は研究機関と契約を結んでおり、ブレインリングの装着データを絶えず提出し続ける対価として、多額の費用を援助してもらっている。それらの金は修学旅行の予算や部活動の部費といった形で生徒にも還元され、ほぼ全員が漏れなく恩恵を受けているといってもいい。
     ブレインリングは催眠、洗脳、常識改変といった力を持つ機械の首輪だ。
     今回俺が行うのは動作確認。
     個人の脳に直接的な影響を与え、催眠や常識改変にあたって情報を流し込む関係上、開発当初から脳や精神に障害が残る可能性が心配されてきた。十年以上の研究により、そうした障害の危険性は取り除かれ、全ての改変行為は操作一つで気軽に解除可能になってはいるが、バージョンアップの際に不具合が出ていないかはその都度テストすることになる。
    
     姫川椎名――17歳。
     彼氏持ち。
    
     どことなくお嬢様っぽい、おしとやかで優しそうな顔立ちの椎名は、とても真面目で非行などには縁がない。
     担任をやっている俺でもあるが、今のところ遅刻は無し。休み時間中は大人しく本を読み、たまに友達と喋っているが、大きな声で騒いだり、走り回ったりする姿は一度として見たことがない。
     極めて大人しいタイプだが、一年生の頃に告白され、他クラスの男子と付き合っているようだった。
     まず行うのは、俺のことを彼氏と誤認させた状態でのセックスである。
    「えっへへ。勇樹くん。目がエッチになってる」
     俺は既に椎名を全裸にさせ、肉棒を握らせていた。
     いや、積極的に手コキをしてくれているのだ。シャワーを済ませた後、椎名の待つベッドに上がるなり、腰に巻き付けたタオルの中身に興味津々といった顔をして、自分から肉棒の世話を始めてくれたのだ。
     ブレインリングを使えば肉体関係の有無を聞き出すのは造作もなく、交際半年で処女を捧げたという椎名は、機会を見つけては彼氏と交わり合っているそうだ。
     学校内のベッドを使用することには疑問を持たせず、さらに椎名の目には、俺の本来の顔が映っていない。個人の体臭や肌に触れた感触に至るまで、全てが中田勇樹という恋人のものに変換され、椎名の中では完全に、彼氏と行う甘いセックスの時間ということになっている。
     つまり、俺が見ている椎名の姿は、彼氏以外の男には決して見せない女の顔だ。
    「こんなに硬くしちゃってー」
     俺が仰向けに横たわると、椎名は俺の顔を追うように倒れてきて、下の方では手コキを続けながらも、耳元に唇を接近させる。
    「キスしていい? っていうか、するよ!」
     実に楽しそうに、嬉しそうに、ご馳走の香りによだれを垂らした表情といっても過言でない顔をしながら、椎名は恋人の唇を貪った。手でのしごきは活発に、キスにも力を尽くして何度も啄み、俺の口内に舌まで入れた。
    「ねえねえ、今日はいかがなさっちゃう? なんでもするよ? この前みたいに、ご主人様って呼ぼうか?」
     椎名の彼氏はそんなことをさせているのか。
    「それとも、私が責める?」
     勇気という少年は、SとMの両方の気質を持ち合わせているのだろうか。少なくとも椎名は攻めにも受けにもまわるらしい。
     俺はご主人様のおチンポに目一杯のご奉仕をさせることにした。
    「かしこまりました。ご主人様」
     椎名はすぐに俺の脚へ移動して、仰向けである俺の肉棒に四つん這いで食らいつく。両手で茎を立たせてしゃぶりつき、淫乱としか思えない積極ぶりで、じゅるじゅると音を立てるようなフェラチオを始めたのだ。
    「はじゅぅぅぅぅぅ――ずっ、ずずぅぅぅ――ずっ、じむっ、ちゅるっ、ちゅっ、じゅむぅぅぅぅぅ……じゅりゅぅぅぅ……」
     口内の温かさに肉棒を包み込み、舌も使って奉仕してくる後頭部が、俺の股で上下に振りたくられている。見れば向こう側に聳える尻も、ご主人様への奉仕が嬉しくてたまらないかのように、左右にフリフリと動いていた。
     しかし、この子は決してビッチではない。
     ブレインリングから得られた情報は、スマートフォンによく似たタッチ画面式のデバイスで確認できる。そこで愛情値の表示を見れば、平常時は90だった数字が、現在は最大値の100を示している。
     交際関係であったり、あるいは結婚している夫婦における愛情値の平均が、90前後という数字になる。
     椎名の発情値は愛情値の増加と比例しており、一言でいえば彼氏だから興奮している。
     よく尽くし、そして甘い時間を大切にしたがる傾向にあるというだけで、淫乱値に関しては平均より低い。ブレインリングの設定では、淫乱値とは、常日頃から股でものを考えたり、誰にでも体を許す可能性の高さという定義としてあり、なので一般的な女子は、発情値が上昇しても淫乱値が上がるわけではない。
    「ご主人様のおチンチン……じゅっ、じゅむっ――とても、美味しいです……ずずっ、ずむっ、はぷっ、ちゅるぅぅぅぅ……ずずずっ、ずりゅぅ……」
    根本から先まで舐め上げ、側面の部分にも唇をよく這わせる。周りに唾液を塗りつけていく表情は、美味しいものを口にして幸せそうにしているそのものだ。そんな椎名と目が合うと、より嬉しそうに微笑んで、今一度咥え直して激しいフェラチオに励んでいった。
     俺は予告なしに射精した。
     ほぼ直角の、天に向かった肉棒から、白い噴火の精を放つと、椎名は「んっ!」と、驚いた呻き声を上げてから、すぐさま唇に力を入れた。全力で締め上げながら、喉奥に触れんばかりの奥まで咥え、どうにか受け止めようと頑張る姿は、本当に健気というより他はない。
     それでも、急に出した精液は、飲もうとしても飲み干しきれず、竿を伝って陰毛の中に紛れてしまう。
     ごくりと喉を鳴らした椎名は、すぐに俺に謝罪した。
    「も、申し訳ありません! ご主人様! 直ちにお掃除致しますので!」
     一体、勇樹はどんな仕込み方をしたというのか。
     陰毛の茂みに吸い付いて、ペロペロと舐め取ろうと、吸い上げようと努力する。竿の部分にも舌を這わせ、亀頭にかけて掃除に励み、俺の肉棒と陰毛には、唾液で濡れた痕跡以外は綺麗に取り除かれていた。
     そして、四つん這いで尻を向けた。
     まるで本当に罪を償いたくてたまらないかのように、土下座のごとく額を下につけ、尻だけは高く掲げる。
    「ご主人様。椎名のイケナイおマンコに、どうかご主人様のおチンチンでお仕置きをして下さい……」
     もちろん、俺はコンドームを付けるなり挿入した。
     肉棒をギュっと圧する膣の力が、とろけるような刺激を与え、俺の根本から先端にかけてが天国に連れていかれた。
    
     パン! パン! パン! パン! パン! パン! パン! パン! パン!
    
     俺の腰と、椎名の尻がぶつかり合う。肌と肌の打音が響き、そのたびに尻肉はプルプルと、ゼリーやプリンに振動を加えたように震えている。肛門がキュ、キュ、と窄められ、初めは俺が腰を振っていたものの、いつの間にか椎名の方から振りたくり、もはや俺が動くこともなくなっていた。
    「あぁぁぁん! あっ、あん! ご主人様! ご主人様ぁぁ! 気持ちいいです! わ、わたしっ、すごく幸せ――あん! あぁっ、あん! あん! あん!」
     射精が近いことを告げると、今度は逆に、力の限り尻を押しつけ、コンドーム越しの精液を膣内で受け止めようとまでしているのだ。
    「あぁぁ……! 出てますっ、でてますねっ、ご主人様ぁっ、すごく熱いですぅ……」
     幸せそうな声を出し、俺の射精が終わると、次にはコンドームを外しにかかり、それを縛ってシーツに放ると、四つん這いでのフェラチオに移っていた。
    「まだ元気だな。勇樹、もっとする? あ、まだご主人様って呼んだ方がいい?」
     ともかく椎名はエロかった。
     学校生活での様子からは想像もつかないほど、心は一途だが、恋人に対してはどこまでも一生懸命に奉仕をする。淫らになってたくさん喜ぶ。勇樹も大人しい性格と聞いているが、二人きりの時なら、教師やクラスメイトが知らない別の顔を持っているのかもしれない。
    
         *
    
     性交指導の名目により呼び出し、担任である俺とのセックスを義務付ける。
     そのような設定を入力して、正常位での挿入に至る俺だが、先週の『勇樹』とのセックス比べ物にならないほど、椎名は静かに耐え忍んでいた。
    「んっ、あぁぁ……ゆう……きぃ……」
     肉棒を根本まで押し込むと、椎名の顔はみるみるうちに罪悪感に満ちていき、俺とのセックスを明らかに我慢していた。
     今回の設定において、貞操観念に対する影響は一切与えていない。たとえ義務付けによって仕方がないことだと割り切っても、恋人に操を立てたい女子であればあるほど、自分は彼氏に対して申し訳ないことをしているのだと、悲痛な顔を浮かべるのだ。
     俺に対する愛情値が低下している。
     さらに、性感値を先週のセックスと同等の数字に引き上げても、椎名の顔から罪悪感が消える様子はない。こういう義務が存在することに、不満さえ隠せない、どこか不機嫌でもある表情で、目が何かを言いたげだった。
    「んっ、あ……あぁ……んぅ…………ふっ、あ、ふぁ…………うっ、んぁ…………」
     喘ぎ声も静かなもので、ブレインリングの効果に反している。感度操作に不具合の可能性があるのかと思いきや、快楽の度合いに関して答えさせると「物凄く気持ちいいですけど?」と反抗的に返してきた。
     嘘をつかせない効果に関して、不具合の報告はされていない。
     つまり、これが椎名自身の、好きでもない男で感じていることへの、純粋な反応らしい。
    「彼氏とはどうやって出会った?」
     ピストンを止め、俺は尋ねる。
     他人の肉棒が入っている状態で、本命との馴れ初めについて話すのは、乙女にとっては果たしてどんな気持ちであろうか。
    「本を読んでいたら、自分も同じのを読んでるって、声をかけられました。勇樹は何となく雰囲気が綺麗で、大人しそうで、私もちょっと気になっていたので、向こうから声をかけてもらえて舞い上がっちゃいました」
    「それで、お喋りをするようになって、仲良くなった?」
    「そうです。アドレスも交換して、いつの間に電話もするようになって、そしたら急に映画に誘われました。嬉しくて、初デートだと思って出かけて行って、それから何度か一緒に出掛けましたけど、ちゃんと告白されたのは初デートから一か月後くらいです」
    「へえ?」
    「告白されて、嬉しくなって、目を瞑りました。で、キスしてくれました。あとは、何か月かしたらセックスもするようになって、時間がある時はエッチしながら、普通に恋と勉強を両立しています」
    「先生と彼氏。どっちのおチンチンが大きい?」
    「……せ、先生ですけど? 大きかったら何だっていうんですか」
     愛情値がないと、こういう具合か。
     軽く揺すってやるように、ゆさゆさとまろやかなピストンで刺激を与え、椎名の膣はヒクヒクと反応する。気持ち良さを我慢している表情は、硬くなった乳首に指を絡めてやると、より頬を強張らせて耐え忍ぶ。
    「先生の方が気持ちいいだろう?」
    「だっ、んぅ……だから……なんですか……かっ、関係っ、ないです……」
     喘ぎ交じりにつっかえながら、反抗的な態度は変化しない。デバイスのタッチ操作でもして、ブレインリングの力を借りれば、椎名の頭の中を俺に染めることなど容易いが、そんなことをしなくても俺は色んな生徒で楽しめる立場にある。
     俺が姫川椎名一人に固執する理由がないのは、彼氏さんにとっては不幸中の幸いだろうか。
    「……ゆっ、んんっ、ゆ、勇樹のっ、おチンチンが入ってるとっ、繋がってるってだけで……楽しいんですからね? そりゃ、最初は――で、でもっ、んっ、あんっ、すぐっ、上達してぇぇぇ……くっ、んはぁっ……はあっ、私の弱点がわかったとか、コツがわかったとか言って意地悪な感じで責めて来るようになってきたんです!」
     快感については否定できない。
     しかし、それでも彼氏とのセックスの方が楽しいことを、椎名は殊更に主張していた。嘘を付かせない効果をかけているので、その一つ一つの言葉の全てが、椎名の一途で情熱的な部分を証明していく。
    「なるほど。ちゃんと好きな人とするセックスは楽しいだろうね?」
    「そうです! だ、だからっ、本当にっ、はっ、ああっ、あん! 早くぅっ、くぅぅっ、済ませて下さい! 彼氏いるんで!」
     俺は腰を振りながらも、椎名の顔の横にデバイスを置き、画面上にあるものを表示するように設定した。
    
     なんで! なんで先生なんかで気持ちよくならなきゃいけないの?
     別にこんな上手じゃなくていいのに……。
     性交指導ってだけで最悪なのに、勇樹以外で感じるとか、本当にありえない……。
     やだもうっ、早く終わって?
     あっ、んん!
     感じなきゃいけないなんて……困るよぉ……!
    
     ブレインリングには装着者の心の声を取得する力があり、それを次々と文面に表示することが出来る。
     そして、仮に椎名本人が画面を見ても、誤認催眠で俺を恋人と思い込んでいたように、都合の悪い情報は視覚からカットされ、真っ暗な画面にしか見えないのだ。
    
     あっ、あふっ、むっ、ムカつく!
     勇樹より上手なのが否定できない――気持ちいいの否定できない――。
    
     俺はより大胆なグラインドで抉り抜き、背中が丸く反り返るまでに喘がせた。
    「あぁぁぁ! あっ、あ! あ! あ! あっ、あん! あん! あん!」
     快楽が大きくなればなるほど、より多くの文面が画面を流れる。
    
     な、なんでこんんなにいいの!? こんなの知らない!
     本当に勘弁して! 勇樹以外で喘ぎたくないの!
     いいから! こんな気持ちよくなくていいから!
     ――頭真っ白になりそう――ダメダメダメ!
     勇樹ぃぃぃぃぃ――せ、せめて勇樹の意地悪な声だけでも聴きたいよぉ……!
     あ、あれさえあれば、勇樹に「お前すっげー感じまくりじゃん? どうしちゃったの?」とか「顔がエロエロになってんな?」とか言われながらセックスしてる妄想してイケるのに!
    
     流れ続ける文面を見るに、どうやら自分のセックスを自分で盗聴して、あとで彼氏の好きな台詞を聞いて楽しめるようにしているらしい。特に意地の悪い言葉攻めが椎名の好みで、スマホにもMP3で入っているとか。
    
     い、イカされる! やだ! やだやだ!
    
     椎名は髪を振りたくり、快楽を拒みたがる様子を強めていた。
     その必死に首を左右に動かし、よがりながらも顔を顰める姿さえ眺めていれば、文章など見なくても絶頂直前にあることはよくわかった。
    
     気持ちいいだけでも嫌なのに!
     先生でイク必要なんてないし!
     ヤダっ、やだぁぁっ、なんでイカなきゃいけないの?
     もう無理っ、無理っ、ごめん勇樹!
     イクの我慢できない!
     げ、限界……!
    
     椎名は絶頂した・
    「ひぐぅぅぅぅ!」
     何も知らない人間に声だけを聞かせれば、何の悲鳴かと勘違いさせかねない。どこかおかしな声を上げ、極限まで背中を反らした椎名は、上半身の綺麗なアーチで、ビクビクと痙攣じみて震えていた。
     スイッチでも切れたようにぐったりした後、いかにも悔しげな、不満げな表情で、俺から顔を背けてしまう。
    
     最悪……イカされた……。
     イカされたくなかったのに……。
     しかも、まだピクピクいってて元気だし……。
     気持ち悪い……気持ちいいのに気持ち悪いっておかしいけど、なんかやだ……。
     口直しじゃないけど、アソコ直ししたいな。
     勇樹でイキたい。
     いつまで入れてるんだろう。
     終わったなら抜いて欲しいな。
     それとも、まだ続けるのかな。
     やだなぁ……。
     
     何というか、イカせてもなお、俺に対する感情が淡泊なのは、別に寝取りたかったわけでもないのに、若干落ち込みたくなってくる。
     まあいい。
     ブレインリングはシステムのバージョンアップを行ったが、特に不具合なく動作して、心の声を文章表示する機能もスムーズに動いている。
     しかし、個人的にもう少し楽しみたいな。
     ええい、愛情値を弄ってしまえ。
    
     あれ? なんか急に楽しくなってきた? なんで?
     ま、まあいいや。つまんないよりはマシだし。
     勇樹の方が楽しいけどさ。
     おチンチン。入れっぱなしにするなら早く動かせばいいのに。
     でもまたイカされちゃったらどうしよう。
    
     明らかに反応が変わっていた。
     一回、二回と、ほんの軽いピストンで、試しに少しだけ突いてみたところ、ヒクヒクと締め付けるような膣圧が帰って来た。
    「……す、するならすればいいと思います」
     今度は動かないことが不満であるように、椎名はボソっとそう言った。
    
     う、動いた!
     気持ちいいな……声も出そうになってくるし……。
     でも、勇樹ごめん……なんで先生とセックスして楽しいのか私自身さっぱりわからないけど……。
    
     そりゃ、感情指数をタッチ操作一つで弄られたからとはわからないだろう。
     俺は体位を変え、四つん這いの尻に腰をぶつけた。
     きゅっとくびれた腰を片手で掴み、右手では画面をチラチラと伺いつつ、シーツを両手で握り締め、あんあん喘ぐ姿を目で楽しむ。
    「あっ、あん! あん! あっ、せんせっ、いいっ、いいです! あっいい!」
     尻を鳴らす音がパンパン響き、そのうち椎名の方から前後に身体を揺すり始めた。
    
     これ、好きっ、勇樹もよく後ろから、お尻ペンペンしながらしてくれるっ。
     先生は叩かないんだ……。
    
     叩いてみるか。
     俺は左手を振り上げて、尻たぶをぺちんと打ち鳴らす。
    
     うそっ、してくれた!
     ドSモードの勇樹みたいで興奮する!
    
     勇樹みたいで、という条件込みで興奮するあたり、さすがは一途といったところか。
     ペチペチと叩いていると、締まりがよくなり、肉棒が搾り潰されそうな快感に見舞われ、射精感が込み上げる。
    
     あはっ、どうしよう!
     勇樹だったら、このあと仕返しって言って私がお尻叩いてあげて、私がドSになる番だったりするんだけど、先生相手じゃ、ちょっとまずいかな。
    
     カップルで性癖の範囲が広いのは恐れ入る。
     残念ながら、俺がM側に回ることは遠慮させて頂くが、代わりにゴム越しだが射精でもくれてやろう。
    
     ああっ、出てる! 熱いの来てる!
     ――あっ!
     か、軽くイっちゃった……。
     そうだ……お礼しなくちゃ……。
    
     お礼だと?
     俺が肉棒を引き抜くと、すぐに椎名はこちらを向き、コンドームを外しにかかる。精液のよくこびりついた肉棒を舐め始め、せっかくのお掃除フェラを俺は仁王立ちで味わった。
     れろぉぉぉぉぉぉ……と、根本から先端にかけて舐め上げる時、生え際に唇を近づけようとするあまり、椎名の顔面に肉棒を乗せてしまったようになる。根から亀頭へ這った舌先が、チロチロと鈴口をくすぐって、今度は横の生え際に吸い付いた。
     ハーモニカを加えるように、唇に挟んで上下に擦り、ちゅうちゅうと汚れを吸っている。右側を舐め上げている顔が、俺に視線を合わせると、ニカっと可愛く微笑んだ。そして左側も同じように吸い上げて、舐め取って、亀頭のまわりもペロペロと舐め回す。
    
     先生のおチンチンも悪くないな。
     まあ、好きな人が一番だけど。
     先生のことも嫌いじゃないし、楽しい時間になってよかったよかった。
    
     かなりの心変わり。
     いや、俺が書き換えたわけだが。
     面白いのでもっと色々試してみよう。
    
         ***
    
     彼氏への愛情値を消し、代わりに俺への愛情値を最大にした状態。
     ついでに淫乱値も上げている。
    
    「いっぱい奉仕してあげますね! 先生!」
    
     俺がベッドの横から脚を下ろし、そのあいだの床に座らせると、椎名は楽しそうに嬉しそうにパイズリをしてくれた。豊満な乳房で圧をかけ、ヨダレを活性油にしてよくしごき、自分の谷間に顔を埋めるとペロペロと舐めてもくれる。
    「んっ、じゅっ、じゅむっ、ずむっ、じゅっ、ずずずずっ」
     とても頑張っている椎名が、どんな心の声を放っているか確かめた。
    
     先生のおチンチンすごく元気だっ。
     私だって元気になっちゃう。
    
    「勇樹くんはいいのか?」
    「勇樹? えっと、誰でしたっけ?」
    
     これはこれで彼氏が可哀そうなので、後でこの改変は解除してやるが、今ばかりは俺の女として扱わせて頂こう。
    「先生っ、私は対面座位を希望します」
    「いいだろう。自分で跨ってみろ」
    「はい! お任せ下さい!」
     椎名は大喜びで俺に跨り、自分から肉棒を受け入れると、ずっぷりと下の口に咥えて上下に弾み始めていた。
     明らかにキスを求めた表情で、わざとらしく目を瞑り、唇を差し出さんばかりに顎をくいっと突き上げる。そんな椎名の唇を貪ると、向こうから舌を差し出し、だから俺も自分の舌を絡めつけ、ディープキスを楽しんだ。
    
     楽しいっ、楽しいっ。
     ずーっと一緒にいたいな。
    
     俺の背中に腕を巻き付け、強く抱き着いてくるものだから、俺の胸板で乳房が潰れる。ゆさゆさとした上下の動きが、肉棒に刺激を与え、射精感が天へと向かう。
    「出ます? 出ますか?」
     期待に満ちた上目遣いがそこにはあった・
    「ああ、出るぞ?」
    「いっぱい出して下さいね? 出したらお掃除しますからね? 元気があったら二回でも三回でもしましょうね」
     甘えた声で言われると、俺はますます興奮して――。
    
     どびゅッ、どく、ドクドク――びゅるぅぅぅ――。
    
     コンドーム越しの精液で、俺は椎名の膣内を温めた。
     そして、ウキウキとした様子でお掃除を始め、余裕のあった俺の様子に、椎名の方から二回でも三回でも求めて来た。
    
         ***
    
     心のない人形状態でのセックス。
    
    「………………」
    
     さすがに無反応。
     生きているだけで、何の個人的な性格や表情を持ち合わせない。命じれば動くだけの人形に騎乗位をやらせてみると、仰向けの俺に静かに跨り、極めて単調な弾みを見せた。激しさもなく、淡々としている上下の動きで、乳房はプルプル揺れてはいるが、あのはしゃぎっぷりと比べてギャップが凄い。
    「あっ、あぁ……あ……あぁ……あぁぁ……あ……あっ……」
     一応喘いでいるのか。
     実に静かなものだ。
    「気持ちいいか?」
    「はい……気持ちいいです……」
     これもこれで面白いか。
     しかし、タッチ操作一つで設定を切り替え、俺を恋人だと思い込んでいる状態に変更。
    「あぁぁん! 先生! 先生!」
     まさしくスイッチの切り替えだけで、椎名は激しく腰を揺さぶって、キスを求めて自ら前に倒れて来る。俺の胸板に乳房を潰し、ディープキスで舌を貪り、それでいて尻が大胆に弾んで水音がグチュグチュ鳴る。
     ――人形に戻す。
    「………………」
     簡単に目から光が消え去った。
     一度始めたディープキスは、それでも継続されていき、俺の唇を椎名はベロベロと美味しそうに舐め回す。重ね合わせて舌を差し込み、前歯や歯茎を撫で回し、こちらからも舌を出せば絡め合わせる。
     結合部はクチュ……クチュ……と、ゆっくりと持ち上げた尻を、脱力によってすとんと落としてしまう動きが、単調な機械も同然に繰り返される。
    
     恋人モード。
    
    「あぁぁん! せんせっ、先生っ」
    
     人形モード。
    
    「……………………」
    
     ひとしきりの切り替え遊びを楽しんで、俺はたっぷりと射精した。
     十分遊んだし、そろそろ返すか。
    
    
    
    


     
     
     


  • アナルまで診られる彼女

    
    
    
      やっばい。風邪ひいた。
     ってわけでお願いがあるんだけど。
     学校終わったら、家まで迎えに来て?
     できれば病院まで連れてって欲しいな。
    
     ――送信。
    
     彼氏へのメールを送った明瀬エナは、熱のだるさと悪寒に耐えながら、ベッドにもぐり眠りにつく。早く治すためにも、寝よう寝ようとは思うのだが、学校の時間に合わせた普段通りの生活リズムで目が覚めて、それからもう一度寝るというのは、なかなか難儀なものだった。
     恋人の名前は新藤ヒロマ。
     中学では同じテニス部に所属していて、まあ強豪には程遠いが、都大会で何回か勝ち上がる程度の強さはある。関東や全国など夢のまた夢だったが、熱血なことにヒロマはもっと上まで行きたいと日々励み、史上初めて関東大会まで進んだことに驚きを隠せなかった。
     いつの間にかエナは惹かれ、途中敗退で悔しい涙を流すヒロマのことを抱き締めた。
     中学三年から付き合い始め、高校一年になってもうじき一年。
    
     先、進んでもいいよねぇ……。
    
     これだけ長く付き合って、ディープキスまでしかしていない。
     正直に言って、進行は遅いだろう。
     まあ、高校でもお互いにテニスを続け、練習ばかりでデートは少ない。メールや電話だけは毎日するが、テニスにも集中しなくてはいけないヒロマだ。自分が下手に誘った遊んでばかりになってはまずいだろう。
     そんなちょっとした責任感から、なかなか前に踏み出せないが、日々の努力のご褒美ということで、なにかこう、してあげてもいいような……。
     もちろん、風邪が治った後。
     迎えなんて頼んだのも、ハードメニューが続いた末の休みの日であるからだ。
     あいつに風邪は移るまい。
     いや、そもそも、半日もあればちょっとは良くなる。それでも病院にわざわざ行くのは、さすがに熱が高かったから、心配した親がお金を置き、ちゃんと行っておくよう煩く念を押してきたからだ。
     しかし、楽しみだな。
     あいつを呼び出し、あいつの迎えで、病院まで送ってもらう。
     お姫様気分というのも言い過ぎだが、そんな時間が乙女心に待ち遠しかった。
    
         *
    
     今日はテニス部が休みだ。
     地獄のような練習メニューで、いつか身体が壊れそうなほどの負荷を抱え、しかしオーバーワークについてはコーチがきちんと管理している。休みというより、厳密には練習禁止となっているのが今日である。
     エナの風邪が今日だったのは、不幸中の幸いだろうか。
     迎えに行ってやれるから。
     学校が終わるにすぐに校舎を出た新藤ヒロマは、徒歩十五分ほどのエナの自宅へ向かい、インターフォンを押して彼女を呼び出す。
     階段を駆け下りる音が、玄関の外まで聞こえて来た。
    
    「待ってたよ! ヒロマ!」
    「うおっ、おい!」
    
     腕を絡めるように飛びついて、実に嬉しそうに微笑んでくる。
    「移ったらどうしてくれる」
    「むしろ移してやる」
     一応、半日もあれば少しは元気になったのだろう。
     ヒロマの身長に合わせ、背伸びしながら飛びつかんばかりのキスをしてくる。柔らかい心地に高揚感を覚え、ヒロマの方からも強く抱き締め、軽く舌を捻じ込み口内を蹂躙する。もはや風邪など気にせず二人の世界に入り込み、お互いの舌に糸を引かせて見つめ合う。
     エナはずっとヒロマを応援してくれている。
     中学の頃に、もっと上まで勝ち進みたいという熱意が沸いた時からそうだった。
     ――いいじゃん! やっちゃいなよ!
     そう言って、練習相手をしてくれた。
     支えとなった大切な存在が、こうして腕の中にいてくれると、たとえ明日世界が滅ぶとしても安らぎが得られるような気さえする。
    「エナ。病院。行くの?」
    「一応ね。今朝はすっごい熱だったし」
    「四十度くらい」
    「うん」
    「マジかよ……」
     心配するのも当然か。
     見ればエナは、既に出かける準備のため、Tシャツとジーパンに着替えている。豊満な胸のサイズがシャツを押し上げ、くびれた腰のカーブがよく目立ち、尻の部分もパンパンに膨らんでいる。
     ……触れてみたい。
     しかし、ディープキスまでは進んでいても、まだ胸を揉むまでいっていない。風邪をひいたばかりのエナに手は出せまい。いつだって、先に進んで肌を曝け出させてやりたい欲望を抱えているが、大切なものを傷つけたくもないヒロマは、ずっと押し倒すことに踏み切れない。
     とはいえ、さすがに交際一年。
     とっくに進展があってもいいはずだ。
     だから、風邪が治って、次に二人きりになる暇ができたら、その時は……。
     などと考えつつ。
     照れくさそうに笑い合い、手を繋ぎ、ヒロマはエナを病院まで導いた。
    
         *
    
     奇跡的に空いていた病院で、受付から程なくして待合室のベンチに座る。
     診察室への出入り口は、ドアの代わりにカーテンをかけ、布一枚で仕切ったものだ。向こう側で診察を受けるオジサンと、診ている医者のやり取りが、ごく普通に聞こえてしまう。プライバシーの観点からして、この作りはどうなのか。
     それに、ここから診察室を覗ける窓がある。
     いや、カーテンによって閉ざされてはいる。向こう側にかかっているので、こちらからの開閉もできないのだが、照明が上手い具合にシルエットを浮かび上げ、だから一度はベッドに寝そべるオジサンが、仰向けで触診を受けた様子がわかってしまった。
     オジサンの診察が終わる頃には人が増え、会社帰りのサラリーマンやTシャツの中年に、大学生ほどの男子がベンチに並ぶ。
     そんな中で名前を呼ばれた。
    「待っててね。ヒロマ」
    「おう」
     エナはオジサンと入れ替わりで、診察室へ踏み込んだ。
     丸椅子に座り、眼鏡をかけた中年医師と向き合うと、すぐに何の来院の理由を尋ねて来る。熱は何度あったのか、昨日は何を食べたか。痛い場所は、だるさはあるのか。問診によって行われる質問の数々に応えていき、そして中年医師は聴診器を手に取った。
     男の手が胸に近付いてくるのは好きではない。
     だが、診察のためにわがままも言っていられずに、シャツの上から当てられる程度は我慢するも、それでは聴きにくかったらしい。
    「ちょっと持ち上げて下さる?」
     少しだけたくし上げ、服の隙間に中年医師の手が入った。
     聴診器のひやりとした感触が、ブラジャーを介した乳房の生え際に当たっている。中年医師はエナの顔や胸を見る様子を欠片も見せない。初めから音にしか興味がなさそうなのは、下心の無さに思えて安心する。
     しかし、シャツに潜った手が動き、谷間の部分に当てようとして来た時、胸にその手が擦れて辺り、中年医師はすぐに腕を引っ込めた。
     エナの胸は、少し大きいのだ。
     シャツをなるべく引っ張っても、胸の中央に聴診器を当てるには隙間が狭い。そのまま聴診を行うには、谷間に手首を挟んでしまうしかなかった。
     さすがに、そうなると困る。
    「失礼。当たってしまうので、完全にたくし上げて頂けます?」
     淡々として作業的な、仕事の邪魔になるからどけてくれという、それ以外の意思を全く感じられない物言いだった。
     それに、やや大きめの声。
     エナがシャツを持ち上げて、胸を出し切ることが、外で待つみんなにも聞こえてしまう。
    (嫌だなぁ……)
     渋々。
     白いブラジャーの胸を出し切るために、シャツをたくし上げていく。
    (……はあっ、嫌だ)
     自分の手で露出を行い、人に見てもらう行為を好きにはなれない。
     いくら性的な気持ちが皆無でも、一応男の視線が乳房に刺さる。きっとエナのこの光景は、待合室にも伝わっている。自分の彼女が医者に胸を出しているなど、ヒロマも決して良い気分ではいないだろう。
     だいたい、他の患者さんの頭の中に、エナのこうしている姿があるかと考えると、それもまた面白くない。
    「発疹が見受けられますね? 皮膚科を受診されたことは?」
     聴診器を当てようとするなり、何かに気づいて胸を凝視し、そんなことを訪ねて来る中年医師の表情は、ただ仕事の上で気づいたことを確認しようとするものに過ぎない。何らいやらしさのない、視姦には程遠い視線とはいえ、その目ははっきりとエナの胸を眺めていた。
    「え? いえ……」
    「では――」
     胸のあたりに痒みは、痛みは、といった質問が開始され、一向に聴診が行われないせいで、かといって勝手に隠すのもどうかと思えて、胸を出しっぱなしにした挙句だ。
    「シャツとブラジャーを脱いで頂けますか?」
    「……へ?」
    「上半身裸です。お願いしますね」
     そう言いつつ、この中年医師がエナの裸に無関心なのはよくわかる。
     しかし、機械でも動物でもない、れっきとした人間相手に、だから羞恥心が湧かないかといえばそうでもない。だいたい、やはり声の大きさで、カーテンの向こう側にも、エナがこれから脱ぐというのが伝わっている。
    (嘘……本当に嫌なんだけど……)
     エナは泣く泣く脱ぎ始め、脱衣カゴへとシャツを置く。
     背中のホックに腕を回すと、中年医師は正面からまじまじと、早く仕事を進めたくて待ち構える。事務的な視線を気にしつつ、ヒロマにも見せたことのないおっぱいを、無念にも曝け出してはブラジャーもカゴに置く。
     丸っこさのある、大きく張りのある乳房が、真正面から中年医師の視線を受け止める。
     おっぱいを見ているが見ていない。
     いくら物理的な視線が突き刺さっても、症状を調べることだけに、中年医師の持つ全ての興味が注がれている。上半身裸の指示にも関わらず、そこにセクハラの意思は存在しないと、問答無用で納得させるだけの事務的な表情がそこにはあった。
    (エロ医者ではないんだろうけど……)
     真面目な診察なだけに、隠したり、恥ずかしがることは失礼だという気持ちが働く。ならば堂々と背筋を伸ばしていなければならないが、彼氏に裸を見せたことがなく、羞恥心の強い高校生の年頃には、やはりこの状況には辛いものがあった。
     左胸の生え際。
     エナにそうした知識はないが、医者としては心尖という部位に当てたい。何となく、その部分に当てることに意味があると悟ったエナは、そうはいっても驚きに目を丸めた。
    「――うっ!」
     乳房を持ち上げたのだ。
     手の平の先端で、四指を束ねて掬い上げてやるように、ほんの少しだけ垂れのあった左乳房を上へとどかし、そこに聴診器が当たって来る。
    (やば……い……さすがに、ヒロマに悪い……)
     診察だ。診察だとわかっている。
     それに意味があるのなら、彼氏に悪いと言い張って、医者を困らせるのもまずい。
    (我慢、我慢、我慢……)
     これくらい、冷静に耐えられる。
     幸い、手はすぐに離れていき、胸の真ん中に当てて音を聴く。
    「触診しますね」
     聴診が終わって、次の一言がそれだった。
     エナは聞くに引き攣った。
    (そ、それって、おっぱい揉むってことじゃ……!)
     中年医師の手が伸びた。
     ヒロマにも揉ませたことのない乳房が、名前も知らない男に触れられることに対して、拒否反応が全身の神経に行き渡る。
    (……嫌っ!)
     だが、逃げられない。
     れっきとした診察の場において、エナのおっぱいはあえなく鷲掴みにされていた。
    
         *
    
     皮膚の色合いから考えられるのは……心音や熱の様子から、風邪には違いなく、しかしこの張りの中に何かしこりが隠れている可能性も……。
     中年医師の頭にあるのは、そんなものだった。
     おそらくEカップかFカップのあたりだろうが、彼女の乳房が何センチであろうとも、そこに性的な好奇心はない。ただ頭の中にある数々の症例と、こうして揉んでいる乳房の感触を照らし合わせ、誤診のないようにしっかりと『診る』ことしか考えてはいない。
     脇下から横乳へと続く筋肉に、べったりと手の平を当て、リンパ節を確かめる。
     五指を存分に躍らせ、揉み心地をチェックして、そのうちに手の平の中央に乳首の突起が硬くぶつかる。乳輪をなぞり、乳首をつまむと、明らかに何かを我慢した表情で、唇を大きく丸め込むが、医師としては何より仕事を済ませることが先決だ。
     この女子高生の後にも、まだ他の患者が控えている。
     迅速に済ませ、客を回したい考えが頭を掠めるに、時間をかけざるを得ない理由が見つかることで、顔には出さないが、心の底ではため息をついた。
    
         *
    
     自分の彼女が上半身裸の指示を受け、おっぱいを揉まれまでしていることは、新藤ヒロマの元にも伝わっていた。
     隣に座るサラリーマンが、中年オヤジが、大学生ほどの男も含めて三人とも、どこか前屈みになっている。こいつらの頭の中には、エナが触診を受ける場面の妄想がありありと浮かんでいるのは明白だった。
    (くそっ、こいつら……)
     どうにかしたいとは思っても、覗こうとでもしない限りは糾弾できない。
     人の頭の中身を勝手に決めつけ、俺の彼女を妄想のネタにするなと怒っても、そんなことをしても無用なトラブルに発展するだけなのだ。
    「ベッドで仰向けになって下さい」
     中年医師の声はここまで聞こえた。
     窓ガラスの向こう側で、カーテンにはエナが横たわろうとするシルエットがくっきりと動いている。仰向けとなった乳房の形が、自重によって少しだけ潰れつつ、ツンと天井に乳首を突き出しているのが浮かんでいた。
     男達の視線が一点集中していることは空気でわかる。
     さらに順番待ちの患者が増え、三十代の男が二人も加わるなり、乳房に気づいて視姦する。
    (エナ……)
     乳房への触診は続いていた。
     中年医師のシルエットが、その胸へと両手を伸ばし、揉みしだく。それがいかに医学的に理に適った触れ方で、症状を探るべくしての手つきであるかなど、知識もなければ影しか見えないヒロマにはわからない。
     きっと診察なのだろう。
     だが、こうも揉まれるところを見せつけられ、胸が万力で潰されているように痛い。
    「痛みや違和感はありますか?」
    「いえ……」
    「こちらはどうですか?」
     まるでクレーンゲームのアームの先端だけでつまもうとするように、中年医師の五指が乳首の部分に集中する。シルエットであろうと、影の形を見ればそのくらいのイメージはつく。指圧による強弱をつけ、引っ張り、押し込み、いいように乳首を刺激しているのだ。
    「んっ、ん……ん……」
    「どうしました?」
    「い、いえっ、大丈夫……です……」
     その声にヒロマは唇を噛み締める。
     この場の空気が嫌に静かで、どことなくギラついている。中年医師がどうであれ、ここに待つ男達が、シルエットを性的な目で見ているのは疑いようがない。
    「こちらに痛みはありますか?」
     今度は腹の方を指で押して訪ねていた。
     何の病気だったか、風邪だったか、腹部へのそういう触診なら、ヒロマにも覚えがある。
     やはり、普通に診察だ。
     乳房にも、きっと何かあったのだろう。
    「脚のリンパを診ますんで、ちょっと失礼しますね」
     中年医師のシルエットが、エナの下半身に向かって動き、そしてチャックを下げる際の金属の歯が、左右に開けていく音は、すぐにヒロマの耳にも届いてきた。
    「一瞬お尻を上げて下さい」
     そんな言葉の次に聞こえる衣擦れの音で、ジーパンを下げているのもわかる。
    (くそっ、どれくらい下げた? 全部は脱がしてないだろうけど、パンツまで見えて、ほぼ裸にされてるじゃねーか……)
     そういえば、脚の付け根の部分を揉むことで、リンパの触診を行う方法があったはず。エナはそれをされている。中年医師の手の平が、太ももの内側の、それもアソコに近い位置へと当てられているはずなのだ。
    (畜生……)
     診察だ。診察なのだろう。
     しかし、それでも……。
    
         *
    
     乳首は硬く突起しきり、ジーパンは膝まで下がっている。ショーツ一枚の裸と違いのない姿にさせられ、せめて胸だけでも両腕のクロスで隠し、リンパ節への触診に耐え忍ぶ。
    (外の人達……見てるのかな……)
     このベッドに寝ていると、カーテンのシルエットで待合室まで様子がわかると、さっきまで順番待ちをしていた明瀬エナにはわかっている。こうして仰向けになっているのも、中年医師が触診をしてきていることも、外に伝わっているはずだ。
    (お願い……誰も見ないで……スマホ弄ったり本読んだりしてて……)
     切実な願いを抱き、カーテンからの視線をどうしても意識する。
     先ほども、ベンチソファのぎしりと軋んた音がして、待合室の方で人が増えたことがエナにはわかった。一体何人が見ているのか。もしかしたら、本当にスマホを弄って何も気づかない人がいて欲しいが、きっとそうはいかないのだ。
    (うぅぅぅぅ…………)
     中年医師の触診にも震える。
     両手で太ももを包む手が、マッサージとしては心地よく指圧を加えて来るが、ショーツの生地に触れるかもしれないギリギリの位置に指があっては、エナは緊張で全身をまんべんなく強張らせてしまう。
    (パンツ見せるのも、初めてはヒロマが良かった……)
     悲しげに顔を背け、赤く染まった耳が真っ直ぐに天井へ向けられる。どこでもない、何を見るわけでもない方向へぼんやりと視線を向け、肌をする音さえ響く静寂の中で、じっと診察の終わりを待つ。
    
     すり、すりっ、すり、すり、すりっ、すり……。
    
     それは皮膚と布とが擦れる音だった。
    (やっ、ちょっと……!)
     ショーツの内側で閉じ合わさった肉貝の、本当に端っこだけに、中年医師の上下に動く手が擦れている。悶えるように全身が反応して、より強く我が身を抱き締め、頬も唇も強張らせるエナは、下腹部の熱い感覚に焦っていた。
    (何っ……? この感じ……まずい……)
    「どうしました?」
     本気で首を傾げる中年医師。
    「い、いえ? 大丈夫です」
     明らかに声が上ずってしまった。
     人並みにエッチなことへの好奇心はあり、彼氏が出来てからは、いずれはヒロマとセックスをするのだと想像して、週に何度かは自慰行為をしているのだ。自らの指で鍛えた感度は、この程度の摩擦でもじわりと来て、エナの下腹部はきゅっと熱く引き締まる。
    (まずい、まずい、まずい、まずい――)
     エナは内股気味に太ももを引き締め、肩でモゾモゾと身悶えする。
     そして、中年医師の顔を見やれば、そんなエナの反応にどこか不思議そうな顔でいた。自分はただ診察をしているだけなのに、どうして感じた素振りを見せているのか。まるで理解していない、どこかきょとんとした目でさえある。
    (や、やば……このままじゃ……)
     下半身に何かが集まる。
     それは尿意に似ているが、そうではない。
     もっと別の……。
    
     じわぁぁぁぁ……。
    
     白いショーツのアソコ部分に、みるみるうちに染みが広がり、それが中年医師のどこか驚いた視線を引き寄せる。それは高校生にもなってお漏らしをする人間を目撃して、信じられないものを目撃したような、驚愕の色さえ浮かぶ表情だった。
    (そ、そんな……! うそっ、なんで、わたしっ、ぬ、濡れ……!)
     温かいお湯を滲ませたような熱感で、エナのショーツはぬかるんでいる。
     もう泣きたかった。
     いくら違うものを漏らしても、オシッコを見られた気持ちと変わらない。ヒロマとエッチしてこうなるなら、一体どれほどよかったか。診察室の真面目な医療の現場において、こんなところで濡れてしまったエナの方がおかしいのだ。
    「大丈夫ですか?」
    「ごめんなさい……」
    「替えの下着を持って来ましょうか?」
     中年医師が言った途端である。
    
     ――え?
     ――替えって……。
    
     外からの小さな声が、エナの耳まで届いてきた。
     この人の声が大きいから、だいたい防音性も悪いから、替えの下着などという言葉が漏れて、エナが何故だか濡れたことが、見知らぬ男やヒロマにまで伝わっている。
     エナは必死に首を振った。
     そんなことをしても、濡れたアソコを否定できるわけではない。起きてしまった出来事は変わらない。しかし、横に振らずにはいられない。
    「汚れるといけないので」
     中年医師はジーパンに手をかけて、膝に絡んだそれを完全に脱がしきる。
     ショーツ一枚のみの姿にされ、エナは滑稽なほど表情を歪めていた。
    
         *
    
     こんなことで濡れるとはさすがに予想外だな。
     まったく、他にも患者は残っているんだ。
     こいつだけに時間をかけたくない。
     しかし、気になる点もあるからな。
     はぁ……やれやれ……。
     もう少し調べるしかないか。
     誤診などあってはならんからな。
    
         *
    
    「……え?」
    「替えって……」
     ヒロマの隣に座る男の二人が、中年医師の言葉を聞くなり、ついつい思わずといった風に反応して、どこか無意識のうちに呟いていた。
     心中穏やかではいられない。
    (し、下着が濡れたのか? パンツだよな?)
     どういうことだ?
     何故、パンツが濡れる?
     この歳でさすがにお漏らしはしないだろう。もし完璧に漏らしたら、尿の香りはここまで漂う。指がアソコに当たるか、どうにかして、ちょっとした刺激で、微妙に出してしまったということなのか。
    (いや、なに考えてんだ! 俺は馬鹿か!)
     ヒロマはエナを心配する。
     とにかく、少しばかり下着が濡れ、エナはどんな心境でいることか。何よりも、ヒロマと同じベンチソファに座る男達は、誰もが満面のニヤけぶりを発揮していた。
    (こいつら……!)
     ジーパンを脱がせる衣擦れの音で、エナが下着一枚のみにされたとわかり、憤りでヒロマは拳を握り締める。
    「直腸からの診察を行いますので、四つん這いになって頂けますか?」
    (尻の穴ってことじゃないか!)
     シルエットが身体を持ち上げると、犬のようなポーズに変わる。両手をついて、中年医師にお尻を向けてしまった体勢で、垂れ下がった乳房の先から乳首の形もくっきりしている。
     肩のあいだに頭を落とし、うなだれきったエナの心境が、ヒロマに痛いほど伝わった。
    (恥ずかしいよな……こんなの……)
     エナを純粋に思う心。
     だが、もっと黒く煮えたぎる思いも湧く。
     もちろん、ニヤけていやがるこいつらに対しての感情ではあるのだが、いくら診察とはいえ中年医師に対しても、嫉妬の炎は大きくなる。
    (だいたい、俺だって見たことないのに!)
     当然の感情だった。
     乳房を暴かれ、ショーツを暴かれ、ヒロマが知らないものを次々見ている。
     そして、今度は四つん這いの尻に手を伸ばし、ショーツまで下げようとする中年医師のシルエットがそこにはある。手の動きで、太ももに絡む位置まで下がったことが伺えて、次には尻たぶを掴みさえする。
    「直腸検温です。しばらくそのままでいて下さい」
     尻に向かって蠢くシルエットが、さっと後ろへ離れると、体温計を尻尾のように生やした影があらわとなった。
    (え、エナ……)
     屈辱すぎる。
     あたかも自分自身が同じ目に遭っているように、他人に尻の穴まで見られ、物を挿入されることの恥辱がヒロマの胸に急速に膨らんでいた。
    
         *
    
     お尻を向けるだけでも恥ずかしかった。
     それがショーツを下げられて、尻たぶを掴まれまでして、肛門をはっきりと見られた上で体温計を挿入された。
     尻尾を生やしたままの明瀬エナは、拳をぎゅっと握り締め、目に涙を浮かべている。これ以上ないほどの赤面はトマトと形容するに相応しい。熱で沸騰しそうな頭は、パニックによって思考回路が乱れている。
    (あぁぁ……! こんなっ、こんな……!)
     直接ではないだけで、ヒロマや他の知らない男達にも、自分のこんな姿を見られているも同然だ。
     体温の測れた音が鳴り、体温計が引き抜かれる。
    「頭は下にしちゃって下さい」
     尻だけが高いポーズとなり、まるで下半身を差し出しているかのようだった。
     肛門が丸見えの、そのすぐ真下には性器のワレメも丸出しとなっての、こんなにも大胆に差し出すポーズが、シルエットだろうと何人にも見られている。
     ヒロマ以外にさえ……。
    (ごめんっ、ごめんヒロマ……!)
     ぺたりと、左の尻たぶに、中年医師の左手が置かれ、エナはぶるりと震えて顔を歪める。
    「肛門括約筋の反応を診ますので、動かないで下さいね」
     クリトリスを摘ままれた。
    (あ……ッ!)
     放射状の皺の窄まりは、ヒクっと力んで収縮する。
     中年医師のやることは、つまりこうやってお尻の穴を反応させ、ヒクヒクと蠢く様子を眺めることだとわかるなり、まるで頭の中身がみるみるうちに蒸発していくように、羞恥によって煮立った脳から蒸気が立つ。
    (無理無理無理無理! な、ちょっと! こんなの無理だよ!)
     指の強弱によって、クリトリスへの刺激が甘い痺れとなって迸り、さながら肛門で呼吸でもしようとしている光景がそこに生まれていた。
    
     ひくっ、ひくんっ、ヒク、ひくっ、ヒク、ひゅくっ、ヒキュゥゥ――。
    
     縮んでは緩み、縮んでは緩む。
     それがクリトリスへの刺激によってコントロールされている。
    (み、見ないでっ、見ないで――無理っ、これ無理、無理無理――!)
     羞恥心によって思考回路がショートして、脳神経のどこかが焼ききれそうに、お尻の穴を見られる恥ずかしさが激しく頭脳を循環していく。それはパイプの太さに見合わないほどの容量とも言え、あまりにも速い流れに摩擦で擦り切れそうでさえある。
    
     ひきゅぅぅぅう……っ、ひきゅっ、ひくっ、ひくっ、ひく――。
    
     恥ずかしさが死因になりそうなほどの有様は、歪みに歪んだ表情として現れて、エナの顔つきはぐにゃぐにゃの一言で表現できる。口周りの筋肉で、唇が面白いほど波を打ち、頬も面白おかしく動いている。眉間に皺が寄っては離れ、まぶたが激しく力んでいる。
     肛門括約筋の動きをチェックするのは、実に一分に満たない時間に過ぎなかった。
     しかし、永遠と思われた地獄から、やっとのことで解放された気にまでなり、その安心もつかの間に、中年医師は透明なビニール手袋を嵌めていた。
     医療向けの、触診時に衛星のことを考えて装着するものだ。
    (ひぐっ、なっ、なっ! まだあるの!?)
     ひんやりとしたゼリーを乗せた指が、肛門の周りをぐにぐにと、皺を一本ずつなぞるように丁寧に塗りたくる。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅぅぅぅ……。
    
     肛門に指が入り込む感触に、エナの頭で火花さえ弾けていた。
     根本まで埋まった指に、内部を探られ、エナはもう、ただ全身から恥じらいの信号を放出するだけの存在でしかなくなっている。
    (やばいっ、やばっ、やだ駄目無理無理っ、無理――!)
     ベッドシーツを力強く鷲掴みに、足の指まで力んでいた。
    
         *
    
    【中年医師】
    
     やはり、腹に触診した時のあの感じ……。
     まあ薬で十分か。入院はいらん。
     が、となると、この女子高生にまだ時間を使う必要が。
     はぁっ、仕方あるまい。
    
    
    
    【サラリーマン男性】
    
     うわっ、マジでエロいな。
     四つん這いでアナル弄られまくってんのか。
     っていうか、ここ肛門科じゃないよな?
     いや、エロいからいいや。
    
    
    
    【中年オヤジ】
    
     さて、と。スマホでも弄るか。
     実はこれ、動画撮る時も音が鳴らないアプリがあるんだよな。
     どこで手に入れたっけ?
     まあいい、どうせカーテンに移った影だけなんだ。
     どうせ誰だかもわからないんだし。
     撮っとけ撮っとけ。
    
    
    
    【新藤ヒロマ】
    
     なんだよ、なんなんだよ。
     みんなエロい目で見てやがんのか。
     た、ただのシルエットだろ!
     くそっ、このオヤジ動画まで!
     注意してや――いや、待てよ……?
    
         *
    
     隣のオヤジがスマートフォンを動画モードにしているのが、横目にちらりと見えた時、それを注意してしまえば、その声がエナにも聞こえるはずだと気づき、声を出そうとしかけて躊躇った。
     だったら、黙って見ているしかないのか。
    「座薬を挿入しますね」
     一度は抜かれた指が、再び肛門へ押し込まれていく。
     腕と尻の影が一つとなり、カーテンの上では一体だった。
    「このまま一分ほど、溶けるのを待ちますよ」
     医師の目から見たエナの姿が、どうしても脳裏に浮かぶ。
     あれだけ丸い尻のフォルムを正面から拝んでいるのだ。さぞかし征服欲を刺激する物凄いアングルに違いない。エナのそんな姿を拝む権利があるのは、仮にも彼氏という立場の、世界でも新藤ヒロマただ一人だ。
     ここにいる連中は、本来何の権利もない。
     それが、こんな風に晒されて……。
    「はい。いいですよー」
     中年医師が指を抜き、手袋を外す動作のあと、次に両手を太もものあたりに伸ばしていた。何かを持ち上げているシルエットの動きを見るに、最初に下げたショーツを穿かせ直したことは明白だ。
     しばらく、いや、数秒間、きっとエナはフリーズしていた。
     色々とわけがわからなくなってしまって、もう終わったこともわからなかったのだ。
    「いいですよ?」
     改めて告げる医師は――ぺちっ、と。
     エナのお尻を叩いていた。
     あまりにも悪意のない、やった本人は自分がセクハラをしたことに気づいてもいないであろう、ただただ診察は終了しました旨を告げたいという、それ以上でもそれ以下でもない、ペチンという一撃が、さらにもう一度だけ加えられ、エナはそうして跳ね起きた。
     高速で着替える気配が、衣擦れの音によって伝わる。
     心を読める超能力者などでなくとも、一刻も早く自分の衣服を取り戻し、裸の状況から抜け出そうとする気持ちのたっぷりとこもった衣擦れは、エナが一体どれだけの感情に溺れて赤らんでいたかを如実なほど伝えて来た。
     何の露出もしていない、ただ座っていただけのヒロマが、それでも少し赤面するほど。
     カーテンの向こうから出て来るエナは、お湯の中から取り出した直後の、存分に蒸気を纏った茹でトマトのようになっていた。
     そんなエナへと視線が集まる。赤面しきった面白い顔を見るために。
    
     カァァァァァ――!
    
     もう赤くなる場所は残ってもいないのに、それでも赤くなろうとしているエナの顔は、いずれは破裂してしまうのではないかと思え、いてもたってもいられずヒロマは立つ。正面から抱きとめて、この背中でエナの姿を男達の視線から隠してやった。
     エナはそれに縋りつき、ヒロマもその背中を抱いて、病院から連れ出していく。
    「辛かったな」
     一声、かけた。
    「……ごめんね。ありがとう」
     そんなエナの声に胸が締め付けられた。
     あんな思いをして、それてもエナは、ヒロマに対する罪悪感を覚えているのだ。診察だから仕方がないというのに、それなのに……。
     エナ、エナが大切だ。
     これからも、ずっと大事にしていこう。