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  • 優良健康生徒 性機能調査の記録

    優良健康生徒審査会の記録』を元にした二次創作。
     以前受けた地方審査で、多田と芹沢は優勝してしまった。
     全国審査へ進むこととなり、再び羞恥の試練が待ち受ける。
     面談形式の調査で早速のように裸にされ、オナニーについての受け答えをする羽目になる中で、ついには感度調査と称して身体を触られ、胸やアソコを好き放題にされてしまう。何かおかしいと思う頃には、もはや後戻りなどできなくなっており・・・。

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  • 5:審査名目の本番

    前の話 目次

    
    
    
     絶望に震え、泣きたい思いにかられる芹沢綾は、脚を始終M字にしたまま、自分の前に聳える醜い容貌を見上げていた。
     多田に向かって勝ち誇り、獲物にありつこうとしてくる蛙屋は、今に服を脱ぎ捨てる。目の前に裸の男がいることで、芹沢はより強く自分の運命を実感していた。
    (多田くん……)
     せめて多田がよかった。
     願いが叶うこともなく、芹沢の初めてを奪うのは蛙屋に決まってしまった。蛙屋に目を向ければ、元から醜い顔が邪悪に歪み、美味しいご馳走を前に垂らすヨダレが本当に流れている。唇の端から伝った唾液が顎にまで筋を作っていた。
     さらにその下に目をやれば、肥満なせいで膨らむ胸が垂れ下がり、決して清潔には見えない胸毛が密林を成している。腹の脂肪で二重にも三重にも浮き輪ができあがり、下腹部にまで続く縮れた腹毛が不潔感を強めている。
     何よりもアソコの上では、ワレメの近くには、長大な一物がそそり立ち、むわりとした淫気が既に性器の肌にまとわりつく。
    (私……多田くんの前で……)
     嘆きたい思いを堪え、芹沢は受け入れる覚悟を決める。
    (学校代表として来ているんだから……もうするしか……)
    「ところで」
    「っ!」
     切っ先がワレメにあたり、芹沢はぐっと緊張感を高めた。
    「始める前に、挨拶はきちんとしようか」
     蛙屋の歪んだ顔が迫ってきた。
     身体が覆い被さり、丸く膨らんでいる腹があたってくる。腹毛や胸毛の毛先に皮膚がくすぐられ、肌が重なることで感じたくもない体温が伝わっていた。
    「……は、はい。先ほどはお騒がせして、どうも申し訳ありませんでした」
    「うんうん」
    「学校代表として、精一杯頑張りたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします」
     元がしっかりとした生徒であるだけに、受け答えもそつなくこなす。
     しかし、芹沢は心底から思っていた。
    (どうして私が謝ってるの……? これからセックスするのに、私の方がお願いする立場みたいに……こんなの……嫌すぎる……)
    「ちなみに、避妊は事後の錠剤で行うから、コンドームは無し」
    (そんな……!)
     目が震えた。
     だが、心の中でどんなに拒否感があっても、芹沢は審査を受ける側の生徒にすぎない。
    「わかり……ました……お願い……します……」
    「では頂くよ? 君の処女」
     欲望に満ちた目が芹沢に向かって見開くと、次の瞬間には肉棒が入り始める。
     
     ――ずにっ、じゅにぃぃぃぃ……。
     
    「うっ! ぐぅっ、あっ……!」
     切っ先の侵入でワレメは広がり、穴の大きさよりも太いものが潜り込む。幅が太さによって広げられ、それが奥へ奥へと進んでくる。
    「うっ、あうぅぅ……!」
     芹沢は苦しげな声を上げていた。
    「お? はははっ、気持ちいいよ? すっごく」
     見上げた目前、キスをしようと思えば簡単にできる距離に、蛙屋のニタニタとした顔がある。
     動きが止まり、ようやく全て収まっていた。
    (くっ、くるし……本当にこの人のが入って……)
     苦しさと動揺で瞳が揺れる。
    「えー。僕の太さよりも幅が狭いので、少しばかりきついかな? でもね、きゅーって吸われて、抜けなくなるような感じがあるね。うん、狭いと思ったけど、ちょうどいいフィット感だ。ああ、もちろん僕のペニスも加味して記録してね?」
     蛙屋は挿入した心地について発表し、周囲の職員はボールペンで紙を引っ掻く。
    「ところで」
     カエル顔の唇が耳元に迫り、密着度合いが増した分だけ、脂肪の浮き輪も芦沢の身体に押し潰される。体重がかかってくる苦しさも加算され、ますます辛い芹沢に対して、蛙屋は面白おかしく囁き始める。
    「しっかし、多田くんは滑稽だったねぇ?」
    「え……」
     小さな囁き声は、芹沢にしか聞こえやしないだろう。
    「だって見ただろう? あんなに必死になってチンポしごいて、勃たなくてチャンスを逃すだなんて、あー可哀想に」
     それは多田への中傷だった。
    (なんなの……この人……!)
    「まあ君も残念だね? あ、でも写真選びでは僕のチンポが一番って言ってたから、僕とヤれてよかったんじゃない? あーんな、大したことなさそうなチンポよりね」
     ペニスのことで多田をこき下ろし、ニヤニヤとした顔で悪口を囁いてくる。あまつさえ、そんな自分とセックスできて良かっただろうなど、一体どんな神経をしていたらできるのか、理解できない発言だった。
    (な、なんて、処女を奪われた上に、多田くんのことまで悪く言われなきゃいけないの?)
     悪夢のような体験だった。
     こんな男のものが動き始めて、竿が膣壁にこすれてくる。
    「僕の立派なチンポで存分に楽しむといいよ」
     ぞっとするような邪悪さを隠しもしない、達成感に満ちた蛙屋の顔にゾっとする。こんな男が自分の体を楽しんで、味わい、快楽を得ているのかと、たまらなく悔しくなる。
    (楽しむなんて……できるわけ……!)
    「ほーら」
    「あぁ…………くぅ…………んんぅ………………くっ、うぅ………………」
     太いものが出入りする。
     穴よりも太い分だけ、竿と膣壁の密着度は増している。それでも腰が遠のくにつれて肉棒は引いていき、また根元まで埋まってくる。愛液が滑りを良くし、摩擦をなくしてヌルヌルと出入りを容易いものにしていた。
    (お願い、せめて……早く終わって……)
     芹沢にとって、それほど切実な願いはないのだった。
    
         *
    
     多田は万力で胸を締め上げられるような痛みを感じていた。
    (くそっ! なんだよあれは! くそ!)
     折れそうなほどに顎が力んで、多田は歯ぎしりをしていた。
     先ほど、勢いよく椅子を立ち上がったせいなのか、多田が今にも駆け出さないかを監視するため、鋭い目をした職員が脇に二人もついている。何もできない、したとしても止められる。芹沢を助けることはできず、問題を起こしたと学校にも報告される未来しか見えはしない。
    (芹沢っ、芹沢……!)
     二人は岩のように一つに固まっていた。
     覆い被さった醜い身体が、芹沢のスレンダーな体格に向かって、ゆっくりと腰を前後に振りたくる。軽やかなピストンでも痛いのか、苦しいのか、とても感じているとは思えない声が聞こえてくる。
     蛙屋は身体を密着させ、全身で芹沢を味わっている。
    「んんぅ……! んぁっ、くぅっ、んぐぅぅ…………!」
     腰と腰の部分だけが、ピストンのために小刻みに隙間を作り、肉杭が貫くごとに芹沢の苦しげな声が届いてくる。
     アダルトビデオのセックスなら、どんなに興奮できたことだろう。エロ本の裸でも、テレビのお色気シーンでも、多田はよく鼻の下を伸ばしてしまう。
     しかし、目の前で行われるセックスは苦痛だった。
    「ぐぅっ、あぁ……!」
     芹沢の姿を、味わっている蛙屋の姿を見ていられない。直視を嫌って目を伏せても、芹沢の声だけは聞こえてくる。さらには体位の変更を命じる蛙屋の声までして、恐る恐る見てみれば、芹沢は四つん這いに変わっていた。
    「んぅぅぅ……! あぐっ、んんぅあ……!」
     突いた両手はシーツを握り、首でよがって髪を乱し続けている。蛙屋の腰振りに尻を打たれ、身体が前後に揺らされている。姿勢のために垂れ下がった乳房も、揺れに合わせてプルプルと動いていた。
    「ほら、自分で動いてみて?」
     蛙屋は急に動きを止め、そんなことを言い出した。
     芹沢は後ろに向かって、柱のように動かない蛙屋に尻をぶつける動きを始めるが、ゆっくりとした動作に勢いはない。
     
     ぱつ、ぱつ、
     
     小さく聞こえてくる打音は、本当に軽いものだった。
    「ほらほら、しっかりやる!」
     ペチン!
     と、不真面目な子供を叩くかのように、蛙屋は尻に平手をかましていた。
    (こいつ……!)
     蛙屋は芹沢に何の敬意も払っていない。自分が気持ちよければ何でもいいのだ。多田に対して時折向ける表情も、自慢の玩具を見せびらかすものだった。
    「なるほど」
    「てっきり、初めてで感じるタイプかと思ったけど」
    「まあ平均的の反応かな」
     考察を語り、ボールペンでの書き込みをそれでも続ける職員達は、もう何を記録しているのかがわからない。
    「では先ほども伝えたように、事後避妊薬の用意があるので、ナカにたっぷりと注がせてもらうねぇ?」
     蛙屋は嬉々として腰を押し込み、逃がさないように両手でくびれを掴んで密着させ、間違いなく射精していた。中に放出しきった後、すっきりとした顔で引き抜くと、芹沢はぐったりと上半身を寝かせていた。
     もう気力も何もなくなって、起きる気もせずに、芹沢は自分のポーズも意識してなどいないだろう。尻だけが高らかな姿勢のいやらしさは、こんな状況でさえなければ勃起は確実なはずだった。
    「芹沢さん。多田くんにお尻を向けなさい」
     四つん這いのアソコが向けられると、ワレメの中からこぼれ落ちる白濁と、内股のあたりにある血の痕跡にゾッとした。いくら避妊薬を出すとはいえ、躊躇いもなく膣内に注いだ証拠を魔の当たりに、多田は打ちのめされていた。
     とろりと糸を引きながら、白い雫の固まりがゆっくりと、ゆっくりと垂れ下がり、不意にぷちんと千切れてシーツに染み込む。
    「芹……沢……」
     芹沢が自分のものではなくなった。芹沢が傷つけられた。芹沢が穢された。痛かっただろう、辛かっただろう、どんな言葉をかければいいのかも、まるで思いつきはしない。
     多田は呆然としきっていた。
     強烈な光景に心を刻まれ、ただただ絶望を浮かべた眼差しを浮かべることしかできなかった。
    「ここまでの反応ってことは」
    「好きだったのか? 気の毒な話だ」
    「ま、どうせ記憶は消えるんだし」
    「そうだな。俺達が気にすることじゃない」
     職員にとっては多田の反応さえも観察対象で、ショックで放心している様子についても書き込みが行われていた。
     頭が急にくらくらした。
     思考がぼやけ、何故だか何も考えられない。見えない力に脳をかき混ぜられているように、首から上が揺れてしまう。
    (何だ……この感覚…………)
    「ああ、効いてきたみたいだね」
     最後に聞いた蛙屋の声。
     そして、記憶は暗闇の中へと沈んでいった。
     
         *
     
    「なんか、最後に書いたっけな。感想文? 論文? 文章苦手だから、苦戦した気がするなぁ」
     不意にそれだけは思い出す。
    「まともな文章が書けないのも仕方がないね。多田くんだし」
    「な! どういう意味だよ!」
    「本の一冊も読めなさそう」
    「あのなぁ、俺だって読むぞ? 漫画くらいは」
    「読書って言わないから――それより、あっち見てみない?」
    「洋服か?」
     審査が終了した後、二人は寄り道をしていた。
     付近の商店街を歩いていると、気になる洋服屋が目に留まったらしく、芹沢は小走りで駆けていく。多田はその後を追いながら、不思議な感覚にもう何度か頭を捻った。
    (本当に何も思い出せないな。なにか書かされたとか、面談形式の審査があったとか、ちょっとした記憶だけはあるのに)
     それは作文に例えるなら、原稿用紙に文章を書いたことだけは覚えているが、何のテーマで、どんなことを書いたのか、詳細な記憶が一切出て来ない状態だった。
     前回が前回であり、だから今回も脱衣の指示はあったのだが、記憶はそこで止まっている。いつ、どのタイミングで裸になったのだったか。面談の時は服を着ていただろうか、それとも既に脱いでいただろうか。
     辛うじて残っている記憶でさえ、そんな残骸も同然の形でしかないのだった。
    
    
    

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  • 4:絶頂測定

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     今度は多田仁志の番だった、
    「では芹沢さん。僕が言う場所を撫でたり揉むようにしてあげてね?」
    「わかりました」
     きっと、抵抗があるだろう。
    (付き合ってるわけじゃないもんな……)
     躊躇う様子がいくらあっても仕方がない。
     ボディタッチは開始され、まさしく全身を触られた。耳の穴、裏側、肩、二の腕、上から順々に身体のパーツをさすり、多田はその都度「気持ちいい」「特に感じません」など答えていく。ここで聞かれているのは性的快感かどうかなので、単にマッサージが良いいいから「気持ちいい」と答えるのは正しくない。
    (だいぶ変な感じだな、これ。くすぐったいし……)
     とはいえ、芹沢が触ってくれているのだ。
     本人には悪いが、つま先にかけてまでのパーツを細かく触ってもらうのは心地が良くて面白いものだった。下着越しの尻を撫でられた時は、前回の審査にあった検便を――お尻の穴にガラス棒を入れる時、調子に乗っていたら逆襲された思い出が脳裏を掠めないこともなかったが。
    (最後に残っているのは……ここも、やるのか……?)
     それには期待感が膨らんだ。
     芹沢の手で触って貰える予感には、まるで希望の光に照らし出されてくるような、幸福に満ちた顔が浮かんでいだ。
    
     ――すけべ。
    
     多田のことを見上げた芹沢の視線は、いかにも呆れきったものだった。
    (まあ、いつもの調子だな)
     先ほどは散々というか、ローターを怖がっていた時も心配だったが、少しは調子が戻って来たのだろうか。
    「ではペニスの方もやるように」
    「……はい」
     ひしひしと緊張が伝わってきた。
    (俺まで緊張するな)
     多田も今まで以上に固くなり、下着に芹沢の手がかかってくると、ぐっと肩が強張った。
     そして、下着が下がり――
    
    「ひゃぁっ」
    
     勃起しきったペニスが跳ね上がると、芹沢は小さな悲鳴と共に肩を縮ませ、恐る恐るのような好奇心でもあるよな眼差しで、それに目を奪われていた。
    「さ、触るからね? 多田くん」
    「……おう、頼むぞ」
     手が近づく。
     遠慮や躊躇いが大いに宿った白い右手は、たどたどしく時間をかけて距離を縮めて、とうとう指先だけを触れさせる。一ミリでも当たった途端に手を引っ込め、見るからにドキドキとした表情で改めて触ろうとしてくる芹沢の姿に、多田も興奮しきっていた。
     芹沢の手がペニスを握った。
    「き、気持ちいい……!」
    「もう?」
    「しょうがないだろ? だって、女の子の手で……」
    「そう、なのね。そういうものか――」
     すぐにボールペンの音が聞こえてきて、そういえば逐一記録を取られるのだと思い出す。見れば蛙屋も、すぐそこでニヤニヤとしながら見つめてくる。考えてもみれば、甘い空気を広げている場合じゃない。
    「では指示通りにお願いするよ」
    「はい」
     蛙屋の指示が始まり、まずは手で前後にしごかれる。当然のように気持ちがよく、すぐに射精感が込み上げたが、残念ながら最後までは続かない。
     亀頭を触って下さい、先っぽを触って下さい、カリ首、付け根、裏側、横の部分。ペニスをありとあらゆる部位毎に分け、細かい指定の元に指や手の平が触れてくる。その全てに快楽はあったが、程度には差があった。
     玉袋の部分もしてもらい、ひとしきり快楽に浸った多田には、一体どれが良かったか、何が一番好きだったかという質問が行われる。
    (芹沢もこういうこと答えたもんな)
     自分の体が細かく暴かれていくのは、居心地のよいものではなかった。男だからまだしもだが、女子にはだいぶきつかったのではないだろうか。
     もちろん、芹沢にも質問は行われた。
     実物のペニスを見た感想、触ってみた感想、相手を気持ち良くしてみた感想、芹沢もあらゆることを喋らされていた。
    
    「では少し休憩にしようか」
    
     ここまでの過程が済んで、休憩時間を迎えることとなる。
     およそ十分ほど、二人は審査から解放された。
    
         *
    
    「まあ、落ち着かないけどな」
     衣類は返してもらっていない。
     どさくさに紛れ、多田の下着も持ち去られた。多田の手で脱がせた芹沢のパンツも、職員に没収され、全過程を終了するまで、もう一着たりとも着ることはできない。
     とりあえず椅子に座って、隣同士にはいるものの、ジロジロ見ると怒られそうで、だからチラチラとしか見ていない。視線をやってみたところで、芹沢はきっちりと腕で覆い隠し、太ももの隙間にも手を入れていた。
    「でも、前回のおかげで少しは慣れてるかも。慣れたくなんてないけど、いきなりこれよりはね」
    「……だな」
     前回も前回で、尿検査や写真撮影など様々だったが、最初のうちは上半身裸で走ったり、身体測定をした程度だ。
     今回はいきなり裸で面談形式、オナニーについて喋らされ、性感帯の調査である。アソコに指まで入れられる体験を、大した段階も踏まずに行われるのは、確かに修羅場をくぐってこそ耐えきれたものだろう。
    「多田くん」
     芹沢は小さな声で尋ねてくる。
    「……さっき、気持ちよかったの?」
     その瞬間、股間がピクっと反応した。
    「そりゃもう! なんたって、初めて女の子に触って貰ったからな! それも芹沢に! 気持ちいいのなんのって、自分の手でするのとこんなに違うのかって、感動したくらいだ!」
     多田はいかに気持ち良かったかを力説する。
    「あ、あら、そう……」
     芹沢は若干引き攣っていた。
    「一生の思い出にさせてもらおう。忘れろと言われても、忘れてなどやらないからな」
     と、断言しつつ……あれ?
     そういえば、記憶がぼんやりとしてくることに多田は気づいた。
     いや、体中を触り、気持ちいい、そうでもない、といったことを答えていた。
     そこまではわかるのだが、芹沢がどんな反応をしていたか、蛙屋がどんな触り方をしていたか、肝心なところがぼやけてくる。もっともっと時間が経てば、全ての記憶が消えていそうな予感がしてた。
    (なんでこんなに早く……)
     その時だ。
    「また、してあげようか?」
    「え!?」
     多田はぎょっとして芹沢を見つめていた。
    「……その、どうせなら、多田くんには色々と責任とって欲しいし」
    「責任って、審査なんだから俺のせいじゃないだろ」
    「そうだけど、それでも裸を見たり、色々したでしょう? せっかくなんだから、責任とって誠意でも見せてくれない?」
    「あのなあ? 土下座でもしろって言うんじゃないだろうな」
    「馬鹿、ちがうから! そうじゃなくて、そういうんじゃなくて――」
     身を乗り出してくる芹沢は、その目に熱っぽいものを宿していた。自分の気持ちを訴えたくてたまらない、そんな何かが宿っていた。
    「芹沢……お前…………」
    「多田くん…………」
     いつの間にか、二人は見つめ合っていた。
     そんな中でも多田は動揺しながら自問する。
    (責任って、ひょっとしてそういうあれなのか? お、俺が、芹沢と? いやいやいやいやいや! けど、芹沢ってスタイルいいし、割と可愛いような――いや、でも急に、くそっ、俺も男らしく決めた方がいいのか?)
     そうだ、その方がいい。
     目の前にやって来たチャンスをみすみす逃すなど、そんなものは男ではない。
    
     よし、俺は芹沢と――。
     そんな決意を固めた時。
    
    「はーい、休憩時間終了。ってあれ? お二人とも、大事な話でもしてた?」
    
     空気を読まず、ノックも無しに入り込んでくる蛙屋に、二人はバネで弾かれたように離れ離れに、勢いよく椅子に座り直していた。
    
         *
    
     蛙屋平吉は二人の空気を察していた。
    (なるほど? 青春だねぇ?)
     元々、顔立ちは醜い。
     頭頂部からは髪の毛が抜けており、唇は妙に長い。脂肪による膨らみで、ふっくらとした頬とたるんだ首により、顔の形は三角形に近い。さらには腹にも二重三重の脂肪による浮き輪があり、外見には良いところが一つもない。
     それが下品な気持ちを抱え、いやらしくジロジロ見つめてくれば、思春期の女の子が余計に引くのは当然だった。
     芹沢に目を向けると、心なしか警戒して見えた。
    「では次の審査を行うので、芹沢さんはベッドで仰向けに、多田くんはそこの椅子にでも座っていてもらおうかな」
     蛙屋はベッド横の椅子を指す。
    「は、はあ……」
     面白くなさそうな顔で、多田は椅子に腰を下ろしていた。
     まあ、そうだろう。
     気になる女の子が目の前で別の男に触られたら、誰だっていい気分はしないものだ。逆に蛙屋には優越感が込み上げて、楽しくてたまらなくなってくる。
    「これから行う調査も、性的機能にまつわるものなのでね。さっきまでのようにきちんと受けてね」
    「……はい」
     いかにも緊張している芹沢の元に、蛙屋もまたベッドに上がった。
    (さて、そろそろ食べ頃かなぁ?)
     調査というより、まるで本当の性行為でも始めるように覆い被さり、舌なめずりでじゅるりとヨダレの音を鳴らす。
    「あの……」
     警戒と不安が膨らんでか、芹沢の声は震えていた。
    「なんだい?」
     そんな芹沢に顔を近づけ、眼差しには欲望をありありと浮かべていく。
    「審査……ですよね……?」
    「そうだよ? だから何も問題ない、大丈夫だよ?」
     慰めんばかりに、べったりと頬に手の平を貼り付け撫でてやる。かえって緊張している様子だったが、蛙屋はそんなことは意に介さない。
    「これから君を感じさせ、絶頂させたりする。まわりのみんなはストップウォッチで計ったりして、イクまでの時間を調べたり、イク回数をカウントしたりする」
     蛙屋は頬に這わせた手で顎を撫で、首から鎖骨へ伝っていき、やがて乳房を揉み始める。張りがあって柔らかいものを手に味わい、楽しんでいると、固い突起がぶつかるようになってくる。
     芹沢は汗ばんでいた。
     蒸し込んだ空気の中にでもいるように、肌の表面はしっとりと、粘着して皮膚がかすかに貼り付いてしまう。
    (おやおや、そんなに嫌がらなくてもいいんだよ?)
     緩みきった表情で全身を撫で回し、腹のまわりや腰のくびれに、太ももまでよく味わう。身じろぎのような反応が見え隠れしてくると、下の方に指をやり、ワレメをなぞって糸を引かせた。
     そのままアソコに手指をまとわりつかせ、ワレメをなぶり、クリトリスの突起を指の感触で確かめる。
    「あっ…………」
     声が聞こえたところで、本格的に攻め始めた。
     指を挿入した。
    「あ……! あぁ…………!」
     刺激に驚いてか、目が見開く。
    「あぁぁぁ…………! やっ、あっ、あぁ……!」
     ピストンを開始すると、はっきりとした喘ぎが轟く。先ほどまでの調査では、実のところ手加減していたが、もう弱点は見つけてある。
     軽やかに出し入れして、芹沢の反応を操った。
    「あぁぁ…………やっ、やぁ…………め、あぁ…………!」
     指を軽く弓なりに、弱点を圧したり引っ掻くように攻めながら、感じている顔を鑑賞する。左手では胸を揉み、ヨダレを垂らしていたぶった。
     
    「――――――あっ!」
     
     イっていた。
     背中が浮き、肩が見るからに強張るなり、ぐったりと脱力していた。
    「三分十六秒」
    「背中が浮く反応、足首にもピンと伸びていた感じあり」
    (あらあら、真面目に記録なんてしちゃって。まあ君達はそれが仕事だもんねえ?)
     蛙屋は指を止めずに攻め続けた。
     クチュクチュと水音は目立ち始め、シーツも濡れてきている中で、やがて再び芹沢は絶頂した。
    「あぁぁぁ――――!」
    「一分十二秒で二回目に到達」
    「腰が左右に震えた反応」
     まだまだ、これからとばかりに蛙屋は芹沢を攻めた。休みなど与えず指を動かし、数分もすればまた絶頂、さらに数分でまた絶頂、連続で何回イクかを試していた。
    (ま、僕も仕事の範囲はこなすけどね)
    「あぁぁぁ! あぁぁぁん!」
     芹沢の背中はまたしても浮き上がり、太ももはビクついていた。
    「7回目」
    「十分以内で随分イキましたねぇ?」
     周りの職員達は関心していた。
     生真面目に書き込みを行い、ストップウォッチを数人がかりで操っている。一度イってからまたイクまでの間隔を計測し、何分間で何回イったかも記録している。
    「八回目」
     そのうち、芹沢は懇願してきた。
    「おっ、あぁぁぁ…! あっ、おっ、お願い――しま――もうっ、むりっ、ゆるひ――ああっ!」
     許しを乞い始めたところでまたイった。
    (ごめんねぇ? 悪いけど、連続何回までいけるかの測定だからさぁ!)
     蛙屋は大いに遊んだ。
     バスケットボールで実績を持つ優等生の体力で、どこまで絶頂を繰り返せるか。様子を見ながら愛撫を継続して、平気だと判断すれば、本人が無理だと言い出しても続けていく。
    「ええっと、許しを乞うような言葉――っと」
     職員は無情なもので、芹沢の様子がいかに変化していくかも、淡々と観察していた。多田がそわそわしているだけで、他に蛙屋を止めようと思う者はどこにもいない。
     
    「十八回」
     
     絶頂で水分が不足して、本格的に疲労が溜まってきたところて、限界のラインを迎えたものと見なして蛙屋は手を止める。手足を投げ出し、だらしなくヨダレまで垂らして寝そべる芹沢には、もう学校代表としてきちんとしている余裕も残っていない。
    (とりあえず、水を飲ませて休憩させるか。どうせすぐに体力は戻ってくる)
     この先のお楽しみは後に残してベッドを降りる。
     次に行うべきは多田への審査だが、男の身体を調べるなど面白くもなんともない。しかし、仕事は仕事なので仕方なく、蛙屋は多田に命じた。
    「君には何回連続で射精できるかの調査を受けてもらうよ? 健康な少年の射精回数データを作るそうだからねぇ?」
    「あの……芹沢は……」
     どうやら、女の子が気がかりでならないらしい。
    「大丈夫だよ? 一旦休憩してもらって、そのあいだに君の審査だ」
    「……はい。お願い、します」
     多田への案内は職員が行った。
     専用のコップを手渡し、量も調べる旨を告げ、芦沢の裸を見ながらしても構わないと許可まで出す。まるで芦沢の貞操に関してこちらに権利があるような言い方に、むっとした様子を見せていたが、それしきでの減点は勘弁しておくことにした。
     多田はオナニーを行う。
     疲弊した裸の前で、椅子に座って、黙々としごいて射精を繰り返す。
    「出ました」
     と、出すたびに報告させながら、職員達は回数を記録していき、最後には多田の精液を溜めたコップを持ち去った。
     これで多田も消耗したことだろう。
     立ち上がって気をつけの姿勢を命じると、肉棒はだらしなく垂れ下がり、表情にも覇気がない。
    「うんうん、よく頑張った」
     さて、芹沢の様子はどうだろう。
     体力が戻った様子で、ぼんやりとしていた瞳に光が戻っているのだった。
     
         *
     
     多田は疑念を抱いていた。
    (いくらなんでも、おかしくなかったか?)
     欲望にまみれた顔で覆い被さり、芹沢をイカせ続けていた時の蛙屋は、とても審査のためにしているようには見えなかった。
     しかし、周りの職員は淡々と記録を取り、絶頂時の様子まで書き込んでいた。審査する側と、される側の関係もあり、おかげ疑問については言い出せなかった。
     とにかく、面白くなかった。
     芹沢があんなカエル男に弄ばれ、いいようにされているなど、本人はどんな思いでいただろう。
    「では審査も終盤だ。次に入ろうか」
    (ま、またかよ!)
     多田の前で、蛙屋は再びベッドに上がった。
     しかも、ズボンは雄々しくテント張りに、鼻息の荒い興奮した顔に見下ろされるなど、芹沢はどんな心境でいるだろう。
    「脚をM字に、アソコをしっかりと出しなさい」
     蛙屋は鼻の下を伸ばして命じた。
    「………………はい」
     今にも消え入りそうな声で、芹沢は震えながら答えていた。
    (芹沢…………)
     多田の前で脚が広がる。
     蛙屋の目線で見れば、自分の腰のすぐ近くに開帳された性器はある。胸を隠すことなく、腕はしっかりと気をつけの姿勢となり、背筋も真っ直ぐに横たわる芹沢は、こんな時でさえきちんとしていた。
    「これから行う審査は、今までよりも覚悟がいるね」
    (覚悟? いったい芹沢をどうする気だ?)
     自分はどんな光景に耐えなくてはいけないのか、芹沢はどうされてしまうのか。多田の位置から、芹沢の横顔しか見えないが、本人は多田以上に不安や緊張を膨らませ、瞳を震わせているはずだ。
     
    「本番行為。つまりセックスをしてもらいます」
     
     一瞬、頭が真っ白になった。
    「そんな……」
     絶望に震えた声が聞こえた時、驚愕で固まってばかりいた多田は、さすがに勢いよく立ち上がる。
    「ま、待って下さい!」
     気づけば大声を出していた。
    「いくら審査でも、それはさすがに……!」
     冗談じゃない。
     責任を取れなんて、とても遠回しだったけれども、芹沢は自分の思いを伝えてきた。多田もそれに応え、芹沢と付き合ってみせようと考えていた。
     
     それこそ、どんな告白をしようかさえ――。
     
     しかし、ふと我にかえってみれば、多田はまわりの職員に取り押さえられていた。自分は一体、どんな行動に出ようとしていたのか。
     全身の力が緩んでいき、すると職員も離れていく。
    「多田くん? 君も優良健康児としてね、仮にも全国まで来た身だもの。本来なら、ペアの男子に任せるところなんだけど、無理でしょ?」
     いかにも困ってみせる顔をして、蛙屋は見下した視線を送る。瞳の向けられた先を悟った多田は、自分の肉棒がふにゃりと柔らかいことに気づいて戦慄した。
    (まさか、まだ元気さえあれば、俺の役目だったのか!?)
     勃発できなくなっているのは、睾丸の中身がなくなるほどの射精回数をこなしたからだ。それさえなければ、自分に活力がないわけがない。言い訳が頭に並び、声を上げかけるも、それがいかに格好のつかないことか。
    「芹沢さん。君も、いいね?」
    「で、でも! 私まだ初めてで!」
     芹沢は必死の思いを訴えていた。
     誰だって、こんな形で初体験を済ませたいわけがない。
    「いいかい? 君達は学校代表としてここに来ている。普通ではできない審査のために、全国から選りすぐりの生徒を選抜してここに集めた。僕達だって、忙しい中で時間を割き、わざわざ集まってきているんだ」
     まるで芹沢こそが聞き分けのない我が儘を言っているかのように、蛙屋は厳しい顔で説教を始めていた。
    「君達のことはただの個人としては見ていない。『芹沢綾』ではなく、『幸町第四代表の芹沢綾』として見ている。多田くん、もちろん君も同じだ」
     そして、この本番行為がいかに必要なことかを説き始めた。
     初体験は誰もが恐れるものであり、痛みはどれくらいか、血はどれほど出るか、初めてペニスを受け入れる気持ちはどんなものか。そういったデータを取るためであり、それらは今後の性教育に必ず役に立つものだと、身振り手振りまで交えて演説する。
    「君達は日本全国の多くの子供達の先輩となり、遠回しながらも力になれる立場なんだ。わかるかね?」
    「…………はい」
     芹沢の萎縮しきった声からは、心の底から納得しているわけではない、やっぱり許して欲しい気持ちがひしひしと伝わってくる。
    「では、いいかね?」
     その問いに、芹沢は顔を背ける。
     困ったものを見る顔で、次はどんな言葉で説教すべきか、蛙屋は考えているに違いなかった。
    「お願い……します…………」
    「うん?」
    「多田くんがいいです…………お願いします……どうか……多田くんに……チャンスを……」
    (芹沢……!)
     ご慈悲を求める切実なものがそこにはあった。
     一瞬、蛙屋の顔は冷たくなったかと思いきや、みるみるうちに悪巧みを思いついた邪悪なものへと変わっていく。
    「チャンスをあげて、それで多田くんが駄目だったら、その時はわかっているね?」
    「……はい。その時は受け入れます」
    「いいよ? なら減点は無しにして、多田くんの行動も不問にしてあげよう。ただし、多田くんは僕を力ずくで止めようとしたかもしれない。それを不問にするのに、優しくて簡単なチャンスはあげられない。ただ、ルールは物凄くシンプルだ」
     蛙屋が多田を見た。
    (な、なんだよ……)
     向けられる表情は、いかにも人を嘲るものだった。できもしないことを必死でやろうと、無駄な努力をしている姿をはたから指差し馬鹿にするような、笑いものにしてくる顔だった。
    「多田くん」
    「……はい、なんでしょう」
    「いまから十秒で勃発すること」
    「十秒って……!」
     無理に決まっている。
     そう思った時には、蛙屋は楽しくて楽しくてたまらない様子でカウントを始めていた。
    「九! 八! 七!」
    「くそっ、こうか!」
     多田はすかさず一物を握り、全力でオナニーを始めていた。目を血走らせ、必死の形相でしごく姿が、どれだけ滑稽だろうと構わない。
     それで芹沢を守れるなら――。
    「四! 三! 二!」
     声がだんだん大きくなっていた。
     多田の肉棒は柔らかいまま、どうしても固くならない。
    「一!」
     やっと、半勃ちのそのまた半勃ち、半々勃ちほどの固さになるが、とても間に合わない。
     
    「ぜろぉぉぉぉ! 残念だったねぇ!」
     
     人が一生懸命していたことを、真正面から煽り倒して馬鹿にする。相手が目上の大人でさえなければ、学校代表の立場でさえなければ、確実に殴りかかるほどの、怒りを刺激してくる声と顔から、多田の頬には唾まで飛んできていた。
    「そんな……」
     だが、怒りや屈辱よりも、チャンスを掴めなかったショックに放心した。まるで惜しくもない、達成できた可能性などありもしなかった事実に打ちのめされ、がくっと崩れるように多田は椅子に腰を落とした。
    「も、もう一回……」
     本当に力のない、魂の抜けきった声だった。
    「だめぇぇ! 残念でした! 君の好きな芹沢綾ちゃんは、僕がじっくり具合を確かめるので、せいぜい楽しく見守ってね?」
     勝ち誇った勝者が負け犬を見下していた。
     多田は打ちのめされた。
     呆然としていた。
     止めることのできないセックスが目の前で開始され、多田はそれを見守ることしかできないのだ。
    
    
    

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  • 3:蛙屋による感度調査

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     内容は次の審査に移っていった。
     あれから、質問形式の調査はさらに行われ、多田にも数多くの質問が振られた。それを書き留める紙も一枚や二枚ではないだろう。ほとんどが性にまつわるもので、多田の場合は主に勃起について、オナニーについてのものだった。
     芹沢にもオナニーの質問は行われ、どういった時に自慰行為の気分になるか、そんなことをひとしきり言わされていた。
     それらが済み、審査内容が移ってのことだ。
    「では多田くんの方を向く形で、ベッドから足を下ろし、座った姿勢になって下さい」
     そうなると、多田と芹沢は正面から向かい合う。
     ベッドをベンチ代わりにした座り方で、芹沢はきちんと背筋を伸ばし、両腕を横に垂らしている。審査の場で指示のない行為をしたり、流れを妨げることはできないから、乳房を隠すことはできないのだ。
    「これから性的刺激にまつわる調査を行っていく」
     蛙屋もベッドに上がった。
    「…………っ!」
     ベッドに上がるだけでも驚くのに、多田が戦慄を浮かべるのは、蛙屋が芹沢に密着したからだった。背中に身体をくっつけて、肩や二の腕をさすり回して、その手つきはどう見てもセクハラだ。
     しかも、蛙屋の顔まで多田を向く。
    「にひぃ」
     笑っていた。
     玩具が自慢でならないような、勝ち誇った表情を多田に投げかけ、そんな蛙屋を前に多田は歯を食い縛る。何か大事なものを取られている感覚に陥って、眩暈がしてきそうだった。
    「多田……くん………………」
     芦沢は助けを求めたいかのような目をしていた。
     本当に求めるわけにもいかず、押し黙って俯く芹沢を見ていると、多田は衝動にかられてしまう。どうにかしてやらなければ、守ってやらなければ、何故だかそんな気持ちが湧き、かといって相手は公の人間だ。
     問題を起こすわけにもいかず、多田は膝に拳を握り締める。
    「芹沢さん。現在、乳首は突起しているかな?」
     耳に顎をぶつけんばかりの位置に、頬ずりでもするように蛙屋の顔はある。イボの多い頬が当たって、芹沢は大いに引き攣りかけていたが、懸命になって平静を装い、何も言わずに耐えている。
    「突起は……していないです…………」
    「了解。では君、ストップウォッチ。それから多田くんは、もっとオッパイに顔を近づけて、乳首の状態を観察するように」
     蛙屋は職員の一人と多田に指示を出す。
    「は、はい」
     多田は前のめりになり、芹沢の胸に顔を接近させた。
    「では乳首が突起するまでの時間を計測するので、芹沢さんは動かないように、多田くんは乳首が大きくなったら『ストップ』と声を出すように」
     乳首の突起? 計測?
     多田に確認をさせるということは、愛撫をする役目は蛙屋か。
    (ペアは俺じゃないのかよ……)
     どこか納得がいっていない。
    「では開始」
     すぐに蛙屋の手は乳房へ動き、背後からの愛撫が横乳をくすぐり始める。
    「うっ、うぅ………………」
     ぞっとした顔になる芹沢は、産毛を辛うじてくすぐるタッチに身じろぎする。快楽よりもくすぐったさの方がありそうだ。
    (なんだよ……これ……)
     審査ためとはいえ、性的に感じさせ、乳首を固くする目的で触っているのだ。しかも多田はその手つきを間近で観察させられる。横乳をくすぐるだけのタッチだが、芹沢の胸が他の男に触られている光景は辛かった。
    (本当は……俺が揉みたいのかよ……)
     何かを自覚してきた多田は、ひたすら強く歯を食い縛っていた。
    「す、ストップ」
     乳首が成長してきたところを見て、多田は小さく口にした。
     しかし、蛙屋の手は止まらない。
    「あの、ストップって……」
     止まるどころか、蛙屋は乳房を鷲掴みに揉み始め、その手つきに芹沢も震えていた。見るからに目が驚き、瞳に動揺が浮かんでいた。それでも耐える義務があるかのように、芹沢はきちんと堪え、何も言わずに受け入れている。
    「ストップウォッチは止めたでしょ? で、何秒?」
    「五十二秒です」
     蛙屋の問いに、職員の声が答える。
     すぐさま書き込みの音が聞こえてきた。
    「では乳房の感度について尋ねるので、全て正直に答えるように」
    「はい」
    「現在、この揉み方に快楽はありますか?」
    「少しだけ、痛いような……」
    「へえ? なら、これでどう?」
     蛙屋の手つきそのものは変わらないが、加減が緩む。
    「これなら、少し……感じます…………」
     気持ちいいと伝える恥ずかしさか、消え入りそうな声で芹沢は答えていた。
    「乳首にいこうか」
     今度は乳首を上下に転がす指遣いで、左右の人差し指が振り子のように弾き続ける。芹沢は肩で身じろぎをしながら息も荒げ、何かを我慢したような色気ある表情に染まっていく。
    「か、感じます……」
    「これは?」
     触り方が変わり、つまんで指圧に強弱をつける。
    「……感じます」
    「これはどう?」
    「感じ、ます」
    「これは?」
    「……はい。気持ちいいです」
     乳輪をなぞるやり方、下乳を掬い上げるような揉み方、くすぐるタッチ、がっちりと揉みしだく手つき、様々な方法で触りながら、蛙屋はその都度尋ね、芹沢は答えていく。そのたびに書き込みも行われた。
    「多田くん。揉んでみたいかね?」
     ご馳走を分けてやっても構わないかのように蛙屋は尋ねてきた。
     その瞬間、芹沢と視線が重なる。
     何とも答えにくい質問だったが、審査の場なのだと言い聞かせ、迷った挙げ句に多田はきちんと回答した。
    「……はい。男なので、目の前におっぱいがあったら、それは」
     なるべく無難な答え方に納めていた。
    「へえ?」
    (な? なんだよ、へえって)
     そこに浮かんだ蛙屋の表情は、いかにも意地悪く笑ったものだった。下品で邪悪で、人を見下してやまない優越感に浸りきったものだった。自慢の玩具をお前に貸すわけがないだろうと言いたげな、勝ち誇った態度を前に、多田は歯ぎしりしていた。
    「次は性器の感度を調べるので、多田くんは芹沢さんのパンツを脱がせてあげて下さい」
     ――え?
     と、そんな顔を芹沢は浮かべ、次にはもう目を伏せている。
    (くそっ、なんかおこぼれ貰ってるみたいだ……)
     多田は歯ぎしりしたい思いで、それでもパンツに手を伸ばせばドキドキする。温かい下着の感触に思いを馳せ、ゴムに指を潜らせ引き下ろす。脱ぎたてを手に入れると、さっそくのように蛙屋は次の指示を出していた。
    「足を思いっきり、大きく、M字に開いてね」
     一体、芹沢はどんな思いでいるだろう。
     後ろから抱きつかれ、こうしている今でさえ乳揉みの手が動いている。好きなように触られながら、脚まで開くように命じられ、多田に見せびらかす形になるのだ。
    (っていうか、おかしくないか?)
     先ほどまでは、感度についての質問も行われ、調査の一環なのはわかっていた。
     だが、今はもう揉んでいる必要がない。不必要に乳房を掴み、指を動かし続けているのは、いくらなんでも欲望のためにしか思えない。
    (そんなこと……ないよな……)
     不安を募らせる多田の目前で、芹沢は開脚していた。
    (うおっ)
     思わず魅入ってしまう。
     脚がM字になることで、丸見えとなる綺麗なワレメは、目を逸らそうにも逸らせない。視線を寄せ付ける凄まじい吸引力で、多田の瞳を釘付けにする。
    「アソコを開いて見せてあげるように」
    「……っ! は、はい」
     ただでさえ真っ赤な顔が、余計に染まり上がったかのようだ。
     芹沢は震えた手をアソコにやり、ワレメを左右に開いていく。桃色の肉ヒダが開帳され、芹沢の顔つきが見るからに羞恥に染まる。もうこれ以上は赤くなりようがないほどの赤面に、それでも赤色が継ぎ足され、密度が増したかのようだった。
    「多田くんはアソコに顔を近づけて、君はまたストップウォッチね? クリトリスが突起するまでの時間を計測するよ」
     蛙屋の手がアソコへ移る。
    (こっちまでやるのかよ……)
     多田は言われるままに顔を近づけ、生々しい性器の有様に目を引かれる。こんな風になっているのかという関心と、ここにペニスを入れるのかという想像と、クリトリスを包む包皮の部分にも目がいった。
     蛙屋は包皮のまわりを人差し指で愛撫して、その刺激のせいか芹沢は腰をモゾモゾとさせ始める。指の腹が触れるか触れないのタッチのようで、皮に包まれていた小さな芽は、少しずつ姿を現していた。
    「す、ストップ」
     先ほどに同じく、多田は静止の言葉をかける。
     やはり、蛙屋の指は止まらない。
    「十二秒です」
     職員が計測した声により、ストップウォッチだけが停止した。
    「早いねぇ?」
     蛙屋は耳に息を吹き込むように囁いた。
    「そ、そうでしょうか……あっ……」
     芹沢は震えていた。
     蛙屋は卑猥な感情がありありと伝わる醜い顔で、舌なめずりまで行っていた。自らの唇を端から端までじゅるりと舐め、左手は未だに乳房を掴み、右手はクリトリスを攻め続け、芹沢は見るからに嫌がっていた。
     ――いやっ、むり……。
     顔が悲鳴を上げていた。
    (止めた方がいいのか?)
     そんな考えがよぎったものの、ここで問題を起こすということは、学校の名に傷をつけるということだ。
    「みんな同じ方法でやっているけど、毎年もう何十秒かかかるのが普通かな? 感じにくい子だと何分もかかったり、緊張でまったく突起しないなんてこともあるけど、君の身体にはスケベの素質があるみたいだね」
     恥辱的な言葉を囁かれ、芹沢は責め苦を受ける面持ちになっていた。
    「ありがとう……ござ……います……」
     一体、どんな気持ちだろう。
     審査のために貴重な時間を割いて頂き、仮にも褒めて下さる大人に対して、芹沢の立場ではきちんとお礼を言わなくてはならない。こうした態度も評価対象になるからだ。
    「では続けて全身のあらゆる部位に対する感度調査を行っていくので、一度仰向けになるように」
     やっとのことで蛙屋は離れていくが、次の内容に移るに過ぎない。
     芹沢が横たわり、蛙屋もベッドを下りる。
     次はいたるところに触り始めた。
    「ここは?」
     耳に触れ、揉み始める。
    「感じます」
    「ここは?」
    「感じます」
     そんな形で、手の平に触れ、肩に触れ、腹や腰のくびれを撫でる。太ももに触り、膝や足首まで、性感帯になりそうな場所から、そうでもなさそうな部分まで、くまなく触って確かめる。
    「特に、感じません」
     膝だの、かかとだの、固い部分ではそう答えていた。
    「うつ伏せになってね」
    「はい」
     芹沢の身体が裏返る。
     髪のかかった白い背中と、ボールのようなカーブを成した尻に目がいく。
     今度はマッサージでも始めるように、背中をまんべんなく触り始めた。
    「どうかな?」
    「感じます」
     芦沢が答えると、蛙屋の手はうなじに移る。
     そこをくすぐり始めた途端、肩がもぞりと動いて見えた。
    「うなじは?」
    「感じます」
    (そこもか……)
     芹沢の性感帯が明らかになっていくのは面白く、耳が無意識のうちに鋭くなる。脳が活発に情報を取り込もうとしているが、それをやっているのは蛙屋だ。
     この手で暴いているなら、もっともっと良かったのに。
    「さてさて、次はお尻だね」
     蛙屋は楽しそうに尻たぶに両手を近づけ、指先でくすぐる刺激を開始した。
    「……あっ」
     小さく喘ぎ、腰がぴくっと、一瞬だけ浮き上がる。
    「ははっ、可愛い反応だ。感じたかな?」
    「……はい」
    「ならこれは?」
    「それは、ちょっと力が……」
    「このくらいなら」
    「それなら、気持ちいいです……」
     お尻の肉をぐにぐにと、存分に揉みしだく指で捏ねられるのは、加減が柔らかい方が気持ちいいらしい。
    「次は四つん這いになってもらえるかな?」
     芦沢のポーズが変わり、尻が持ち上がっていく。
     多田の位置から見れば、両手を突いた芹沢の乳房が垂れ下がり、下向きに生える形になる。耳の真っ赤な様子がわかり、芹沢が一体どれだけ恥じらっているかが伝わった。
    「さて、なるほどね。これがあなたのお尻の穴だ」 
     蛙屋は腰の真後ろに回り込み、尻たぶに両手を置いて覗き込む。多田もかつては見たことのある排泄器官は、今このポジションから見えることはなく、蛙屋の顔が尻に接近している光景だけが多田の目前にはあるのだった。
    「~~~っ!!!」
     歯を深く食い縛り、顎の震えた横顔が、垂れ下がった髪の隙間に見えていた。
    「うんうん、清潔だね? では遠慮なく」
     蛙屋は良い子を褒めてやるように言いながら、人差し指でツンツンと穴をつく。
    「くぅ…………うぅ………………」
     赤面しきった顔から、熱気まで伝わってきそうな勢いだ。ストーブで温まるかのように両手をあてたら、真冬の冷えも取れたりしないかと、あり得ないことを考えてしまう。
    「感じるかな?」
    「はっ、はいぃ……」
     ツンツンとやる指に対して。
    「これは気持ちいい?」
    「……はい」
     グニグニと指を押し込む様子は、きっと皺の回りを揉んでいた。
    「はい、芹沢綾はアナルでも感じる素質があるね。きちんと記録しておくように」
     本当に、本当にどんな気持ちだろう。
     公の記録に性感帯のことを書き込まれ、肛門が気持ちいいことまで明らかにされてしまう。誰もが秘密にしていたいはずのものを暴いて、どこか本人の知らないところで資料にされたり、誰かがそれを読んだりする。
     その物凄さを思うに、しかし多田は感じていた。
    (芹沢の裸を見られるのはラッキーだけど……)
     前回の終了後にも思ったが、こんなことになるのなら、優勝なんてしない方がよかったではないか。多田の気持ち以上に、芹沢はもっと切実にそんなことを思っているはずだ。
    
         *
    
     芹沢綾はよく自覚していた。
     自分達は学校の名を背負ってきているのであり、きちんとこなせば内申点は有利になるが、逆に問題を起こせばどうなるか。
    (そうよ……前の時は放尿させられたり……た、多田くんに……お尻の穴にガラス棒を入れられたり、その時よりはまだいいじゃない……よくないけど……)
     今度は再び仰向けに、またしてもM字開脚のポーズを指示されていた。
     先ほどは多田に見せびらかす形で、今回は蛙屋に晒け出すように、芹沢は言われた通りの脚を開き、しっかりとアソコを出していた。
     自ら無防備なポーズを取り、弱点を丸晒しにしている心許なさ。裸で過ごすだけでも恥ずかしいのに、胸も性器も隠すことを許されない羞恥感。何よりも蛙屋という男は、芹沢のことをいやらしい目で見ていや。
     事務的な感覚で、仕事だからそうしているに過ぎない分には、よくはないがまだマシだ。
     しかし、見るからにニヤニヤして、必要を超えて触ってくる男が相手では、嫌なものが余計に嫌になってくる。先ほどの感度調査も、乳首の突起を測定したのに、突起にかかる時間が判明してもなお揉み続けてきた。
     欲望を満たす目的を仕事に持ち込み、楽しんでいる気がしてならない。そんな相手の前で取るM字開脚のポーズは、調査や診察のために晒け出すより不安が大きい。
     そもそも、たとえ卑猥な意識を切り離してもらえても、ベッドを囲む職員達で、一体何人に見られているか。
     様々な感情に締め上げられ、胸の中身が圧迫されている。
    (とにかく、恥ずかしがってる場合じゃない……!)
     審査を最後まで受けきらなければ、この恥ずかしさから抜け出すことはできない。
    「次はアソコを中心にしていくからね」
    (また……多田くんの前で感じさせられる……)
     性器のすぐ手前まで、カエルによく似た顔立ちが迫る。仰向けから少しでも首を上げれば、そこに迫ったいやらしい顔が見えてしまう。
    (こんな近くで……凄くジロジロ……)
     見ないようにしていても、静かな部屋の中では耳さえ澄ませば呼吸の音が聞こえてくる。そこに顔があり、いかに至近距離からの視線が突き刺さっているかが実感できる。
    「ではまず、これはどうかな?」
     二本の指で、Vラインをなぞってきた。
     性器には直接触れない、脚の付け根にあたるラインは、ちょうど陰部と脚の境界線だ。性器に触られるまで、あと何ミリかしかない部分をさーっとなぞられ、甘い刺激がほとばしる。
    「き、気持ちいい……です……」
     苦しげに答えるのは、もちろん快感を口にする恥ずかしさもあった。蛙屋の手や指が気持ちいいと認めるのは恥辱でならないが、苦しい理由は他にもある。
    (多田くんに知られる……私の感じるところ……)
     すぐ傍らに座る多田の視線も、当然のように芹沢の身体中を舐め回し、人の感じる姿も拝んでくる。
    (どうせ、ちゃっかり集中して記憶してるんでしょ? 多田くんのスケベ)
     心の中で文句を言う。
     本人に届くはずもなく、視線はひたすら注がれ続ける。
    「ワレメをなぞっていくよ」
    「あっ、うぅ……ん……」
     抑えなければ声が出そうで、芹沢は唇を固く結んだ。しかし、指がワレメを上下往復する刺激に、脚がかすかな反応を示してしまう。
    「気持ちいい?」
    「……はい」
     恥辱を塗りつけられる思いで芹沢は答える。
     ふと、横目に多田を見てみると、不満なような悔しいような、歯を食い縛って堪える様子が伺えた。
    (た、多田くん……)
     まさか、辛いのだろうか。
     この身体が他の男に触られて、感じさせられていることで、多田の心は痛んでいる。
    (多田くん……私のこと…………)
    「指、入るよー」
     無慈悲な異物感が膣口に潜り込み、芹沢の中で出入りを始める。既に愛液が出ているのか、ピストンは滑りよくスムーズで、ヌルっとした抜き差しが刺激となって、内股全体に甘い痺れを走らせる。
     指が根元まで埋まってくると、そのまま股に拳があたる。
    「気持ちいいかな?」
     蛙屋はピストンながらに訪ねてきた。
    「……は、はい」
     気をつけて返事をしなければ、喘ぎ声まで一緒に出そうだ。
    「自分でオナニーするのと、どちらが気持ちいい?」
    「なっ! それは――そのっ、こ、こちらの……方が……」
     答えにくくてならない質問に、心底消えたい思いで答え、芹沢は恥じ入った。
    
     ニタァァァァ――
     
     と、大きな手柄が嬉しくてたまらない、顔が緩んで仕方のない表情がそこにはあった。
     やはり、欲望を持ち込んでいるのだ。
    (こんな……いやらしい人なんかに……)
     まるで痴漢に快感を与えられ、痴漢相手に気持ちよさを認めなくてはならないような屈辱が込み上げる。
     そして、ボールペンが紙を走っている音に、自分の今の情報が記録されているのだと実感する。
     指が抜かれた。
     ひとまず、これだけは終わったのだろうかと、うっすと期待した芹沢は、次の瞬間にゾッとして青ざめていた。
    「あの……それは……」
     震えた声だった。
    「ご存知ない? ピンクローターっていうんだけど」
     蛙屋はにんまりと、その手にピンク色の器具をぶら下げていた。小さな卵形の、大きさは親指程度の物体から伸びたコードを蛙屋はつまみ、見せびらかしているのだった。
    「い、入れるんですか……?」
     芹沢は恐れていた。
     以前、オナニー指導を受けるまでは、自分の指を入れることさえ考えたことはなかったのだ。あれから正しい自慰は覚えたものの、器具を入れるというのはまだまだ未知の体験だ。
    「そうだよ?」
    「どうしても……ですか……?」
    「おや、嫌なのかい?」
     蛙屋の目に、嫌味なものが浮かび上がった。
    「それは……その……」
     痛くはないのか、本当に問題はないのか。
     不安が底から沸き上がった。
    「あの……」
    (多田くん!?)
    「それ、痛かったりとかするんじゃ……」
     いかにも恐る恐るなものだったが、多田が自分を守ろうとする言葉をかけてくれている。
    (多田くん……見直したけど……)
    「大丈夫。痛かったら、すぐにやめるから」
     審査内容を押し退けることなど、できはしない。
     あまり無理を言いすぎれば、減点される恐れもあるのだ。
    「けど……」
     食い下がろうとする多田。
    「多田くん?」
     しかし、むしろ蛙屋こそが多田を諫めた。多田も減点の恐れをわかってか、それ以上はなにも言えずに引き下がる。
    「では失礼して」
     蛙屋の手で、ローターが押し込まれた。
    「んくっ、んぅ……」
     痛くは――ない。
     少しばかり安心したが、卵形の異物感が気にかかる。器具の挿入ということに抵抗があったのだが、ひとまずは平気だと思った途端、蛙屋がスイッチを入れた。
    「――いっ! ぎぃっ」
     おかしな声が出た。
    「芹沢……!」
     多田も身を乗り出していた。
     突如として、ローターがブルブルと振動を始めたのだ。激しい振幅が膣壁に衝撃を与えてくる。内側で電流が弾けるような痛みに涙して、すぐさまスイッチは切られていた。
    「いっ、痛かったです……!」
     芹沢は訴えていた。
    「はい、最大は痛かった。では『中』レベルなら」
     蛙屋は気にも留めずにスイッチを入れ直し、先ほどよりは弱い振動が膣壁を震わせる。先ほどの打ちつけられるような感じと違い、表面を震わされる感じに近かった。
    「ま、まだ……少し…………」
    「では『小』に変更」
     勢いがより落ちて、微弱な振動は完全に表面だけを震わせる。ローターに与えられた振幅で膣内は小刻みに揺れ続け、ようやく痛みもなくなっていた。
    「大丈夫です……すみませんでした……」
    「いいのいいの。で、気持ちいい?」
    「……はい」
    「僕の指、オナニーでの指、そしてローター。比べてみてどうかな?」
    「一番は……か、蛙屋さんの指で……二番がオナニーで、ローターは三番目です…………」
    「こうした器具との相性は悪そうだ。角オナの経験者なら、もっとこういうので喜ぶと思ったんだけど、当てが外れたらしいね」
    (ま、まるで実験動物扱いされたみたい……)
     こんなM字のアソコが丸見えの格好で、器具まで使われ惨めだった。
     ローターが引き抜かれ、穴がラクになったことにはホッとするが、同時に蛙屋は「そのままポーズを崩さないように」と指示を出す。
    (格好だけでも、普通の仰向けに戻りたいのに……)
     せめてもの願いを叶えてもらえない、芹沢はそんな悲しさに暮れていた。
    「では多田くん」
    「はい」
     蛙屋は多田に話を振る。
    「今まで僕が行って来た刺激の中で、どんな芹沢さんの姿が興奮したと思う?」
    (それって、私が気持ち良くなった姿の品評ってこと!?)
     今のままでも、自分の顔がどこまで赤くなっているのか、芹沢自身には想像もつかない。数々の刺激を試され、この触り方はどうか、この部分はどうかと聞かれ続けただけでも恥ずかしかった。
     全ての回答が記録され、多田にも聞かれていたのだ。
     どんどん秘密を握られていく感覚に、胸が締め上げられるようだった。
    「それは急に聞かれても……。どれもエロくて、よくわからないです。選べないというか」
    「はっはっはっ、それはわかるよ? じゃあ、こうしよう。何か一つでも感想を思いついたりしないかな? これも性的好奇心にまつわる心理調査で、立派な資料になるんだ」
    「はい、ええっと――指を入れている時とか、ローターが弱になった時もそうなんですけど、ムズムズするのを我慢しているみたいな、そんな姿を見てると、感じてるんだなーってことがわかって燃える気がします」
    (~~~~っ!)
     自分の示していた反応が具体的な言葉にされ、評価まで下される恥辱感に、芹沢は表情で悶えていた。
    
    
    
    

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  • 2:裸の面談調査

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     当日、審査会場。
     各県から集まった代表が揃った中に、多田と芦沢はいた。。
    「来ちまったな……」
    「う、うん」
     予感の通り、全国に進んでしまった。
     既に受け付けも済ませ、体育館に集合している面々は、指示に従い整列を済ませている。二人も列の中に混ざって姿勢を正し、ほどなくして大人による挨拶が始まった。開会式の言葉が長々と紡ぎ出されて、その末に都道府県ごとに指定の教室へ移動するように指示が出る。
     それぞれの行き先へ散らばり廊下に出て、多田と芦沢もまた進んで行く。
     芦沢はドアをノックして入室するなり、大きな声で挨拶を行った。
    「はじめまして、幸町第四の芹沢と多田と申します。本日はよろしくお願いします」
    「よろしくお願いします!」
     お手本のような角度で腰を折り曲げ、礼を行う芹沢の隣で、多田も同じく頭を下げて挨拶を行った。
    「元気な挨拶だね。いいよいいよ?」
     二人の審査を担当するのは、言っては悪いがカエルのような男であった。
    「僕は蛙屋平吉といいます。どうもよろしく」
    (本当にカエルっていうのか)
     失礼なことを思ってしまう多田なのだが、蛙屋は本当に両生類の顔つきで、やけに唇の長さがある。おにぎりに近い三角形の頭の形は、肥満で頬や首が膨らんでいるせいか。肌中にイボが盛り上がり、目つきもギョロっとしているところが、まさしくカエルそのものだ。
     白衣を羽織った蛙屋は、何人もの職員を引き連れていて、その全員が男だった。
     芦沢にはまた辛い時間になるだろう。
    「では早速ですが、お二人には服を脱いで頂きましょう」
     やっぱりか、というのが多田の感想だった。
     脱いだものはこの中に、とばかりに二人の元に袋が渡され、しばらくは衣服とお別れになる覚悟をした。前回の審査でも、途中で衣類は没収され、終了まで返却はされなかった。
     男の多田はまだしも臆せず脱ぎ始めるが、芹沢の方は少しばかり躊躇している様子があった。
    「こっち見ないでよ?」
    「お、おう」
     お互いに背中を向けて脱いでいくが、多田は背後から届く衣擦れの音を大いに意識した。また芹沢の裸を見ることができる。あの引き締まった肉体を目に焼き付け、乳房を眺めるチャンスがきっと来る。
     いやらしい期待にニヤけつつ、多田は下着を残すのみとなる。
    「おっと、パンツはまだ穿いていていいからね?」
     いきなりフルチンにならなくていいらしい。
     しかし、制服を詰めた袋が職員によって持ち去られ、次の瞬間には後ろから、芹沢の小さな声が聞こえてきた。「あっ」と、遠くへ行ってしまう自分の衣服に、今にも手を伸ばして追いかけたいかのような気持ちが伝わってきた。
    (もう、裸なんだよな? パンツしか穿いてなくて――)
     芹沢には悪いが、早く後ろを向きたい。
    「さて、脱いだところで、あれを用意しもらえるかな?」
     蛙屋は職員に指示を出す。
     すぐさま、一人の男が盆に紙コップを乗せて運んできて、多田と芹沢にそれぞれ手渡す。飲めということらしいので飲んでみるが、妙な苦みのある味は、何かの薬なのだろうか。
    「医療検査用の薬品でね。効果が出るまで時間がかかるから、そのあいだにまずは面談から初めていこう」
     蛙屋を中心に、テーブルに男が並ぶ。
     さらに周りにも職員は並び立ち、前から、横から、後ろから、全ての角度から裸を見られている状態で、多田と芹沢も並んでいた。
    「では面談を開始する」
    「はい、よろしくお願いします」
    「よろしくお願いします」
     芦沢が真っ先に声を出し、多田もそれに続いていた。
     まさか、人前で芦沢を視姦するわけにもいかない。顔は真っ直ぐ前を向き、瞳だけを動かし芦沢の裸を見ようにも見えにくい。(くそっ、他の人達はみんな堂々と見てるのに)
     多田は悶々としていた。
     どうも面白くない。ここに集まる大人達は、あくまでも審査のために見ているだけだ。何も問題はないはずなのに、どうしてもそわそわする。
    「多田仁志くんだったね」
    「はい」
    「前回、君は面談の際に床オナをしたと答えており、正しい自慰行為を教わっているとか」
    「その通りです」
     隣に芦沢がいるのに自慰行為について聞かれるのは、何とも落ち着かないものがある。
    「どうかな? その後は教わった方法で励んでいるかね」
    「そうですね。膣内射精障害になるかも、とか言われてしまって、きちんとしないとまずいなと思っているので」
    「なるほどね」
     多田の受け答えに、蛙屋をはじめとした面々はしきりに紙にペンを走らせ、書き込みを行っている。
     蛙屋が聞いてくるのは、まずはこうしてオナニーについてが中心だった。他には前回の審査はどうだったか、今回全国に進んでどう感じているか、様々な質問が行われた。
    「では芦沢綾さん」
    「はい」
    「あなたも前回の面談では、角オナ――いわゆる角にアソコを押しつけるという、一般的ではない方法でオナニーをしていると答えているね。その後は教わった通りのオナニーをしているかね」
    「……はい。して、います」
     かなりの躊躇いを感じたが、芦沢はそう答えた。
    (芦沢のオナニー……)
     つい想像してしまう。
     芦沢でも下着を脱ぎ、アソコを弄ることがあると思うとゾクゾクする。クリトリスも触るのか、穴に指を入れるのか、是非とも知りたいと耳に意識を集中する。
    「現在、週にどれくらいしているかね」
    「二、三回ほど……」
    「ほう? きちんとしているようだね? なら普段はどんな風にしているのかな?」
     正式な調査で聞いているのだ。
     秘密にしたくてたまらないであろうことを白状し、職員はそれを書き留める。そんなデータを取られる芦沢の気持ちを思うと、顔がどんなに赤いだろうかと好奇心がくすぐられる。
    (くっ、見たい……!)
     そして、多田が見たいものを蛙屋は拝んでいるかと思うと腹が立つ。
    「……はい。普段、始めは下着の上から触ることが多く、しだいに興奮してきたところでクリトリスを触ります。膣分泌液が出そうだと思ったところで下着を脱ぎ、クリトリスをはじめとしてワレメの部分を直接触り、指に液が絡んできたら膣口への挿入を行います」
     生々しい情報を多田は耳に焼きつける。
     すらすらと答えているようでいて、声が震えているのも無理はない。何しろ、多田に全てを聞かれている。多田だって自分のオナニーを話すことには躊躇いがあったのに、女の子なら尚更だ。
    「日頃、絶頂は?」
    「いえ、しないです」
    「膣口とクリトリス、どちらが好き?」
    「それは……どちらとも……」
    「道具を使った経験。例えば物を入れたり、ブラシで擦るなどの経験は?」
    「それも……ないです……」
     何をしていて、何をしていないのか、芦沢のオナニーが少しずつ正確になっていく。
    「どんな体勢が多いかな?」
    「……仰向け、だと思います」
    「その際、脚は開いていますか?」
     ごくりと、多田は生唾を飲む。
    (ど、どうなんだ? エロいポーズとかでするのか?)
     耳への集中力が増していき、もはや一語たりとも聞き逃さない。
    「あ、脚は……最初は閉じていて……気持ちよくなくと、だんだん……」
     聞いていて、多田も興奮した。
     芹沢が裸で寝そべり、下着を脱いで、だんだんと足が広がり、ついにはM字となる光景をありありと浮かべ、顔がにやつきそうだった。
    「多田くん。想像したかね?」
    「うぐっ」
     なんていやらしい質問だろう。
     しかし、答えなければならないのか。
    「どうなのかね? 多田くん」
     蛙屋のねっとりした目付きの一方で、芹沢の怒った顔も想像できる。
    「た、多少は……」
     苦しい思いで多田は答える。
    「多田くん……」
     横から、小さな声で、怒りと羞恥のどちらで震えたかもわからない声が届いた。
    (しょうがないだろ! 俺は聞かれたことに答えただけだ!)
    「思春期の少年らしくて大変よろしい」
     蛙屋はとても満足そうな顔を浮かべていた。
    (よろしくないだろうな、芹沢的には)
     今のやり取りさえも書き取られ、多田にもよろしくない気持ちはあったが、芹沢の大胆な秘密を知ることができて最高だ。
     最高なのだが、やはり……。
    (俺以外が芹沢の裸見てるの、やっぱなんかな……)
     悶々とした思いは止まらない。
     どうしてこうも、気になるのか。
    「では面談形式はこのくらいにして、次の審査に移りましょう。少々準備がありますので、五分後に指定の教室へ向かって下さい」
    (まさか……)
     このパターンには覚えがある。
    「あのー。服は……」
     覚えがありながら、わかっていながら、多田は恐る恐る訪ねてみる。
    「ああ、服は終了後に返却するから、そのままでよろしく」
     あっけからんとした顔で、蛙屋は答えるのだった。
    
         †
    
    「――久しぶりね。これ」
    「お、おう」
    「別に懐かしむ気なんてないけど」
    「そりゃそうだよな」
    
     二人は廊下を歩んでいた。
     途中、同じように下着一枚の姿で歩く、他校の男女ペアを見かけたり、すれ違ったりしていきながら、多田と芦沢のペアも指定の教室に到着する。
     まだ数分ほど準備に時間がかかるというので、仕方なくベンチソファに腰をかけ、呼ばれるまで待つことにした。
    「多田くんは内心嬉しいんじゃない? 女の子の裸が見られて」
    「うっ、どうかな……」
     図星を突かれ、多田は隣の芦沢から目を逸らす。
     芦沢は腕でがっしりと胸を隠し、見えないように守っているが、二本の腕では下着まではカバーできない。そもそも、胸やお尻が隠れたところで、全裸に限りない露出度で肌が見えているのなら、もう十分に興奮ものだ。
    「さっきだって、私の方をチラチラと気にしていたでしょ」
    「うぐっ」
    「わかるんだからね?」
    「わ、悪いか! 男はそういうものだ!」
    「そうね。そういうものね」
     見下すような冷たい視線を感じてみれば、芹沢の視線は多田の下着に向いていた。中身が大きく膨らんで、当分は元の大きさになど戻りようのない股間に対し、芹沢はいかにも呆れた顔を浮かべていた。
    「……仕方ないだろ?」
     本気で軽蔑してはいないだろうか。
    「大丈夫よ。わかってるから、心配しないの」
    「そ、そっか……」
     ひと安心する多田は、何をここまでホッとしているんだろうと、我ながら思っていた。女の子に嫌われるのは確かにショックが大きいが、自分はどうも、他ならぬ芦沢に嫌われることを恐れている。
    「ねえ、多田くん」
    「なんだよ」
    「終わったら、寄り道でもする?」
     芹沢の急な誘い。
    「おやおや、真面目なクラス委員長からそんな提案が出るとはな」
     口先では煽らんばかりに言っていながら、多田は正直に言ってドキドキしていた。思わぬ誘いに舞い上がってしまいそうな自分を抑え、努めて冷静な男を演じていた。
    「だって、電車で遠出なんて、あんまりしないでしょ? 別に帰り時間を決められているわけじゃないし、予定通りに終われば十分に余裕りそうじゃない」
    「確かに、寄り道の時間はできるだろうな」
    「どう? さしあたって問題のない提案だと思うんだけど」
    「乗った。一緒に色々と見てまわろう」
     負けじとばかりに――自分でも何を競っているかはわからないが、多田の方からも、誘うような言葉を使ってみる。
    「そ、そうね」
     芹沢の頬が、少し赤らんでいた。
    (ん? いや、こんな格好だしな)
     ジロジロ見ていたら悪いだろうか。
     見たくて見たくてたまらない思いに相反して、ジロジロ見ては嫌がるのではないかという恐れも沸いて来る。前回だったら、例えば身長計で身長を測った際、胸を晒すように仕向けさえしていたのに、今の自分にあの時と同じことができるだろうか。
    「ねえ、ところでさっき、何してたっけ」
     不意に芹沢は尋ねてきた。
    「は? なにって、面談形式の審査だろ?」
    「それはそうなんだけど、何を聞かれたっけ? って聞いてるの」
    「ああ、そっか。ええっと、確か変な薬を飲んで、それから…………」
     あれ? おかしいな?
     と、多田は首を傾げた。
    
    「さて、そろそろ準備が済んだ頃だ」
    
     疑問を抱きかけた時、蛙屋は二人の前に現れた。
    「部屋に入ろうか」
     蛙屋が先を行き、ドアを開いて入って行く。
    「い、行くわよ。多田くん」
     芹沢はすぐさま立ち上がり、多田もそれに続いて入室した。
    
         *
    
     ようやく、堂々と芦沢の乳房を拝む機会が訪れた。
     次に始まる審査の内容で、まず指示が告げられて、芦沢は室内に用意されていた白いベッドに横たわる。多田はそのすぐ隣に座らされ、まるで病人のお見舞いに来たかのような形である。
    
     多田くん……ジロジロ見すぎ…………。
    
     そんな声が聞こえて来そうな、何かを言いたげな目つきが多田を向くが、多田はニヤっとした表情で返してやる。すると芦沢はむっくり膨れ、わざとらしく瞳を背けた。
     やはり、いい胸だ。
     スレンダーな体格で、ふんわりとほどよいものが聳え立ち、自重で潰れるかのような変形も控え目だ。
     芹沢の心境は今、どんなものだろう。
     多田に蛙屋に、何人もいる職員達にも囲まれて、みんなの視線が乳房やパンツを行き来している。展示品にでもなった気分だろうか。
    「さて、これから行うのは、性機能についての審査だ」
     多田の向こう側で、蛙屋が芹沢の腹に手を置いていた。
    (くそっ、こいつ……羨ましいぞ……)
     触り心地を味わって、いやらしい手つきでヘソの周りを撫でている。ぐるぐるとした手つきでゆっくりと、ゆっくりと、時間をかけて回っている。
    「では始めに、芹沢さん。あなたは今、どんな気持ちかな?」
    「それは……大勢の人に囲まれていて……全員が男の人なので……とても恥ずかしく、緊張もしています…………」
    「男性器。つまり、ペニスに対する好奇心はあるかな?」
    「なっ、なにを――」
     おかしな質問に芹沢はぎょっとして、多田も目を丸めていた。
    「これは性に対する心理調査も兼ねているんだ。正直に答えるように」
    「……はい。では答えます。男性器に対する興味は、あると思います」
     芹沢が答えた途端、多田の隣に立つ男は、バインダー留めの紙にボールペンを走らせる。
    「あるんだね?」
    「性に対する好奇心はありまりますので……ただ、性器の挿入は……初めては痛いんじゃないかという不安があり、それに女の身ですから、こうした何でもない時でも、性暴力への恐怖も無意識のうちにあると思います。だから、私の男性器に対する気持ちは、興味があるような、怖いような、というものだと思っています」
     芦沢が行うしっかりとした受け答えに対しても、記入に夢中な男は素早くペンを走らせ続け、紙を引っ掻く音が多田の耳にはせわしなく届き続けていた。
    「では次に男性器の写真を貼ったパネルを用意して、どのペニスが一番良いと思ったり、興味をそそられたか。逆に怖いなーと感じたか。そういうことを答えて欲しい。どのペニスにも番号を振ってあるので、番号で答えてくれて構わないからね」
     蛙屋がそう言うと、職員が何枚かのパネルを脇に抱えて運んでくる。そこにずらりと、生の男性器が写されているというわけだ。それを目の前に見せつけられ、芹沢はカッと赤くなり、反射的に顔を背けていた。
    「しっかり見るように」
    「は、はいっ、すみません」
     芦沢は視線を向け直す。
    「いいかな? 怖いでも、そそられるでも、何でもいい。目を引かれたり、気持ちを揺さぶられたりするものを最低でも三つ答えて欲しい」
     職員が見せつけているパネルは何枚かが重ねられ、それは紙芝居のように一枚ずつ順番にスライドしている。
     二枚、三枚、四枚――十秒は置きつつ入れ替えて、最後の一枚まで見せきった時だった。
    「一番何かを感じた順から、順番に三つ答えて欲しい」
     蛙屋がニッタリ笑う。
    「三十番、五十一番、四番の順に、それぞれ思ったことがあります」
    「では四番のペニスから」
     男性器に対する感想を言わされる気持ちは、一体どんなものなのだろう。
    「はい。特に理由はないのですが、他の写真に比べて歳が近そうというか、何となく同世代のもののように見えました。なので親近感みたいなものが湧いた気がします」
     すらすらと答えながらも、どことなく目が何かを訴えている。
    
     ――何? 何なの? この質問!
    
     多田からすれば、芹沢の顔からそんな声が聞こえて来そうだ。
    「五十一番のペニスはどうだった?」
    「どの写真も、その……ぼ、勃起……していたので、一番大きい状態のものを撮っているのだと思います。そうした中で、五十一番は他に比べて小さくて、細くて、本人には失礼ですが、情けない感じがしました」
    「いいよ? そういう感想も正直に聞きたい。そういう心理調査だからね」
     まとめると、今のところ四番のペニスには良い感想が、五十一番のペニスには悪い感想がついたことになる。
     すると、三十番はどうなのだろう。
     そもそも、ペニスの写真を多田は見せてもらっていない。職員は芹沢にだけ見せていた。芹沢が何を答えても、写真の中身がわからないから残念だが、そこは想像で補うのだ。
    (芹沢。お前の感想、みんな頭に叩き込むからな)
     多田が脳を可動させていると、蛙屋は最後の質問を開始した。
    「一番何かを感じたのは三十番のペニスだね?」
    「はい」
    「では答えて下さい」
    「どの写真も血管が浮き出たり、太かったりしましたが、三十番は特に血管がよく目立って、太さも際立っていた気がします。筋肉が詰まっていそうで、一番逞しい男性器のように思えました」
     こうして、芹沢による順位付けは済まされた。
     もっとも、五十一番は情けないという評価なので、実質四番が二番手で、三十番が一番手ということか。
    「種を明かすと、四番は多田くんの写真なんだ」
     蛙屋は急にペニスの持ち主を明かしてきた。
    「な……!」
     驚愕の多田。
    「えっ、多田くん!?」
     芹沢も目をぱちくりさせ、多田に視線を合わせていた。
     確かに、前回の審査で写真撮影はあった。審査会に関わる人間なら、多田のペニスを持ち出すことも可能だろう。
    「そして、三十番の逞しくて立派なペニスは、恥ずかしながら僕の写真」
    「そう……なんですか……?」
     今度は蛙屋に対する驚きの瞳を浮かべ、芹沢は気まずいような居心地の悪いような、妙な感覚がしてならない顔つきになっていた。
    「そうなんです。ねえ? 多田くん。凄い偶然だけど、ペニスの評価は僕が勝ったねぇ?」
     プライドを傷つけてくる言葉に、多田はぐっと歯を噛み締める。
     物凄い偶然だ。
     何十枚もあった写真から、この場にいる人物のものを当ててしまった強運は、宝くじに当たったようなものである。数の多い職員ならまだしも、多田と蛙屋だけをピンポイントに拾い上げたのは、奇跡としか言いようがない。
    (なんなんだよ……この悔しい感じ……)
    「どうかな? せっかくなので君の心理も調査しよう。僕のペニスに評価が負けて、どういった気分かな?」
    「……そ、その……身内というか、クラスメイトというか。芹沢から貰った評価なんで、自分が勝ちたかった、みたいな気持ちはありますね」
     答えるなり、やはり多田の心境さえも、バインダーの中に書かれている。
    「現在、多田くんは勃起していますか?」
     その質問は、遠回しに芹沢の裸に興奮しているか聞くようなものだ。
     正直に答えるしかない。
     こういう審査の場で、嘘はまずい。
    「……しています」
    「僕もしています。みんなはどうかな? 勃起している人間は、一度挙手をして欲しい」
     全員の手が上がった。
    
     ――うそっ。
    
     と、そう呟くかのように、ぞっとした芹沢が唇を動かしていた。
     自分を囲む全ての男が興奮しているのだ。事務的な表情で、職務をまっとうしているだけとはいえ、腹の底では芹沢をどうにかしたい、触ったり挿入したりしてみたい、欲望の数々が渦巻いている。
     芹沢にしてみれば、不安を強く煽られるはずだ。
    「芹沢さん。それだけ、あなたの裸は魅力的なようだ」
     蛙屋が言い聞かせるなり、ますます芹沢の表情は歪んでいく。聞きたくないかのような、しかし審査の場で耳を塞ぐわけにもいかない中で、その顔は恥辱に濡れていた。
    
    
    
    

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