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  • 中佐に抱かれるレーナ

    
    
    
    「いい気持ちだ。これくらいの見返りはないとな。ブラディレーナ・ミリーゼ大尉」
     入室したレーナを一目見るなり、デスクの向こうの上官はいやらしい笑みで顔を歪めた。
     草臥れた軍服に無精髭と、およそ平時の軍人にあるまじき風体の上官を、髪一筋の乱れもない完璧な休めの姿勢でレーナは見上げた。
     隙無く着込んだ糊のきいた黒染めの軍服と、一房だけ赤く染めた銀繻子の艶の長い髪。半年前。スピアヘッド戦隊を――生き残りのエイティシックス達を必ず戦死させるための処刑部隊を、力及ばず戦野の彼方に失わせてから纏い続けている、彼らの喪に服する黒衣と、彼らだけに流させた鮮血の色彩。
     命令違反を犯して彼らを援護した廉で、階級は一つ降格になった。投げ与えられた大尉の階級章から、おそらくもう二度と昇進することはない。
    「はぶぅっ、ちゅっ、ずりゅぅぅ……じゅむっ、つじゅぅぅ……」
     レーナの頭は前後していた。
    「迎撃砲。本来の補給物資でない弾頭。装備の自戦隊への供与に、他戦隊への直接指揮。豚どものために余計な手続きの手間を取るのだからな」
    「このためだけに根回しの良いことで」
     中佐はアルコール中毒で淀んだ片目の下に皺を刻む。
    「黙って咥えていろ小娘。大尉風情が、身の程を知れ」
     レーナは薄く、微かに眉間に皺を寄せ、頬を硬く強張らせた。
     こうして中佐は、レーナに身の程を教えているのだろう。
     レーナは今や、東部戦線でトップの<レギオン>撃破率を誇る戦隊のハンドラーだ。そして部下の戦績はそのまま上官の評価にもつながる。“鮮血の女王”と呼ばれるレーナに性的奉仕を強要するに飽き足らず、更に上を望むこの男にとって、自分は決して殺せない『金の卵を産む雌鳥』だ。
    「失礼いたしました、中佐殿」
     静かに、続行。
     皮造りの高級ソファに背中を預け、自分のことは床に跪かせるのが中佐の趣味で、レーナはいつも、軽侮と嗤笑、嫌悪の目を頭上に浴びる。
     エイティシックス如きのために、少佐の地位も幹部候補生の未来も投げ捨てた愚か者。人と家畜の区別もつかないお姫様。あと一年で<レギオン>は機能を停止すると――もう戦争は終わるというのに、豚の妄言に踊らされた『戦争長期化』への備えを唱える道化。ただでさえ絶滅寸前の色つきどもをわざわざ戦闘で潰して回る、残忍非道な鮮血の女王。
     しかも、そのためなら、こうして肉棒まで口に咥える。
     さぞかし、豚と同じに見えるだろう。
    「ちゅぅぅ……じゅっ、ずじゅぅぅ…………」
    「もっと目を見せてみろ」
     上目遣いで視線を上げると、いかにも満足そうな表情で、勝ち誇っている中佐の顔と、真っ直ぐに目が合わさる。
     中佐はいつから画策していたのか。
     レーナを思い通りにすることを――。
     
        ***
     
     レーナは憤然と突き進み、抗議のために入室した。
    「どういうことですか! 中佐!」
    「どうもこうもない。もうじき終わる戦争のために、無駄な投資支援を行うなど、経費の無駄でしかないだろう」
    「<レギオン>は機能を停止しません! この戦争は長期化すると――」
    「ああ、何度も聞いている。豚の妄言を鵜呑みにしたお姫様の言葉はな」
     中佐の視線はねっとりと、レーナの肢体を上から下へと舐め回す。目で唾液を塗りつけて来るのかと感じるほど、恐ろしく気持ちの悪い視線を浴びて、レーナはそれだけで、この男の全ての目論見を察してしまった。
     お人形遊びが大好きなお姫様。豚に入れ込む愚か者。
     だとすれば、レーナに対しては豚も立派な人質になる。
    「……狙いは何ですか」
     レーナは低く、じっと睨んで尋ねた。
    「話が早くていい。つまり、無駄な投資支援を全面禁止する提案を取り下げるには、誰かが上官の機嫌でも取らなくてはいけないわけだ」
    「先に撤回を進めて下さい」
    「ああ、上官の機嫌がよければな」
     これはもう、そういう駆け引きだ。
     レーナがどこまで差し出すか、捧げたとして、中佐は自分の望みを叶えるか。
     屈辱だった。
     階級以外に振りかざすものもなければ、実際に何らかの処分を下す度胸もない、そんな男だと思っていた。
     それが、こんな。
    「……提案を取り下げて頂ければ、中佐には個人的なお礼を致します」
     男のゲスさに頭痛がして、憤り以外のものは沸いて来ない。女性への遠回しな要求など、侮辱としか思えない。尊厳の傷つく思いだが、エイティシックスの思いはこんなものではない。
     エイティシックスを絶滅させはしない。
     やるしか、ない。
    「ほう? どんなだね」
     中佐は見るからに期待の眼差しを浮かべた。
    「内容は中佐の出方しだい、でどうでしょう」
    「そうだな。たった今、この場で機嫌が良くなれば、重い腰も上がるだろう。何せ、取り下げればお礼を致して頂けるのだからな」
     中佐は大胆に要求してきた。
     レーナは全くの未経験で、キスと恋も知りはしない。
    「是非とも、ご機嫌を良くして頂きたいとは思いますが。ところで、前払いを持ち逃げする手口があるそうです」
    「それもそうだ。重い腰を上げてやる努力だけでいい。その代わり、やれ面倒な手続きだの、これからもエイティシックス如きのために手間を取る。そのことについても、何か日頃の感謝はないものかね」
    「待遇しだいです」
    「なら待遇について話をしよう。もっとこっちへ近づいて来い」
     レーナがデスクに歩み寄り、中佐はソファを立ち上がる。背後に回り込み、いやらしい手つきが肩に乗る。それだけで寒気が走り、レーナは全身を強張らせ、表情も引き攣らせた。
    「いい反応だ。何も知らない生娘そのものだ」
    「……そ、それがわかれば、品定めは十分では」
     気丈に振る舞い、きっぱりと言って見せるレーナの声は、若干の震えを帯びていた。
    「いいや、機嫌の方がまだでねぇ?」
     明らかに上機嫌の中佐は、遠慮も無しにレーナの尻に手を置いた。
    「ひっ……!」
     ビクっとして、思わず肩が弾む。
    「何を驚いている? こうなることはわかっていただろう?」
     中佐の手がレーナの軍服スカートを撫で回すと、皮膚と布地を擦り合わせ、すりすりと静かに聞こえる音が、この静寂な部屋の薄く広がる。
     丈を掴んで持ち上げて、黒いストッキングに包まれた白いショーツが現れる。中佐はストッキング越しを鷲掴みに、ぐにぐにと揉み回し、その手が急に離れたあと、股間を尻に押し付けながら抱きついた。
     軍服の胸を両手で揉み、勃起したものを擦り付けて、レーナはこの恥辱に耐え忍ぶ。レーナにあるのは知識だけ、経験については花も恥じらう乙女と同じ。思春期の少女には耐え難い、かなりの嫌悪に鳥肌が立つ。
     レーナはじっと唇を噛み締めていた。
    「わかるかね? ミリーゼ大尉。君のおかげではち切れそうだよ」
     肉棒を意識させられ、その硬さや大きさを嫌でも想像させられる。
    「これが何とかなれば、今日中にでも取り下げるかもしれないな」
     どうするべきか。
     頭の奥から必要な知識を引き摺り出し、手でする方法に思い至ると、レーナは振り向く。どうしても、気持ち悪さのせいで、不機嫌に振り払ってしまったが、すぐに仁王立ちの中佐の下へ膝をつく。
     中佐はニタニタと笑っていた。
     レーナに奉仕をやらせることで、まるで自分が絶対勝者となる瞬間を、今か今かと待ち侘びているかのようだ。
     馬鹿馬鹿しい、どう負けたわけでもない。
     上官に便宜を図って頂くための交渉で、少しばかり方法が汚いだけだ。
     しかし、純情なレーナが、触ろうと思ったから触れるわけでも、意を決したから直視できるわけでもない。ズボンがテント状に膨らんでいるだけでさえ、それと正面から見つめ合うのは恥ずかしい。触るだなんて余計に考えられないことだ。
    「どうした。小娘にはいささか話がきつすぎたかね?」
     見上げればそこには、嘲るような挑発の笑みが浮かんでいた。
     ここまで来て、やっぱり恥ずかしいからと何も出来ず、エイティシックスへの支援も援護も出来なくなってこそ、レーナにとっては敗北だ。
    「そんなことはありませんので」
     ムっとしてレーナは、思い切って手で触る。ズボン越しの、知識でしか知らない硬さと、手の平に伝わる熱気に顔を赤らめ、レーナは乙女のように俯く。
     とにかく、奉仕を始めた。
     ズボンの表面をすりすりと、優しく撫で続けているだけ、拙いというにもほどのある奉仕。技量など関係なく、これをやらせている事実のみで、中佐は必要以上にニヤニヤしていた。
    「いじらしくてたまらないね。ミリーゼ大尉」
     人を甘く見ている。
     どうせ処女の小娘には、手でするくらいが、それもズボン越しがせいぜいだろうと、上機嫌でいながらニヤニヤと、中佐はレーナを見下ろしている。
    「ご満足頂けますか」
    「そうだな。出すものを出せば腰も軽くなるでしょう」
    「……了解しました。中佐」
     レーナはベルトの金具を外し、緊張に震える指で、チャックを下げ、ズボンもトランクスもずるりと下げる。
     肉棒がそそり勃った。
     剥き出しの、実物を見る機会がないから、知識でしか形状を知らなかったもの。それが今は目と鼻の先にあり、亀頭がレーナに突きつけられる。
    「どうした? 大尉」
     躊躇っていると、乙女のいじらしさにか、中佐はさらにニヤけた顔を歪ませた。
    「なんでもありません」
     きっぱり言って、レーナは肉棒を握ってしごく。生まれて初めての感触と、こんな男に奉仕している事実に顔は歪んで、思わず触れた手をすぐさま引っ込めたくなるレーナは、ぐっと堪えて続けていた。
     こうしていれば、いずれ精液というものが出る。
    「しかし、出るまで時間がかかりそうだなぁ?」
    「困ります。平時とはいえ、いつ<レギオン>が――」
    「こちらはいくらかかっても構わない。早く済ませたいのは君の都合だ」
     まさしく、このタイミングでだ。
    『聞こえてっか? ハンドラー・ワン』
     首に嵌めたままのレイドデバイスが起動して、一瞬手を止める。
    「キュクロプス。――<レギオン>ですね? 状況は?」
     知覚同調を通じて届く、パーソナルネーム<キュクロプス>ことシデン・イーダー大尉の伝法な声。レーナの指揮下、“女王の家臣団”と呼ばれつつある戦隊の戦隊長だ。
    『遠方に敵機確認。あの距離なら三十分以内に戦闘になりそうだ』
    「迎撃砲の射程内に入るまで待機。二十分以内にこちらから繋ぎますので、それまでに各自迎撃耐性を整えて下さい」
    『了解だ、女王陛下。待ってるぜ』
     知覚同調が切れる。
    「この調子で二十分以内には出せないなぁ?」
     中佐は間髪入れず煽ってきた。
    「それはそちらの都合です。少なくとも十分後にはここを出させて頂きます」
     さすがに奉仕をやめかけるが、中佐はレーナの頭を掴み、逃げようとするのを制していた。
    「いいのかね? せっかく交渉が上手く行っていた途中を放棄して」
    「また改めて時間を取りますので」
    「いいや、今だ。でなければ、わかっているな?」
    「しかし……」
    「口ですればいいだろう。幸い時間はある」
     仕方がない。乙女心ある少女にとって、本当は仕方がないで済む話でないが、スピアヘッド戦隊の彼らは、生き残れと、言ってくれた。戦い、行き抜けと信じてくれた、もういない彼らに応えるために。口を使ったところで死ぬわけでなし。
     ぺろりと舐め上げ、舌で鈴口を責め始めた。触るだけでも抵抗がある、肉棒に唇を当てるだけでもかなり嫌なところを、レーナは辛抱強く堪えてチロチロやる。これでは間に合わないと感じて、意を決して奥まで咥え、頭を前後に動かした。
    「――じゅっ、じゅむっ、じゅずず、つぷっ、ちゅぅぅ」
     レーナなりに、早く済ませたい一心で、頭の動きに合わせて手コキも忘れず、懸命に舌を這わせてみた。唇に力を加えてみた。前後運動の速度を変え、一秒でも早く射精してもらうことだけを考えていた。
    「ミリーゼ大尉の懸命なる働きを称え、これより特別な報酬を与えよう」
     もちろん精液こと、特別に飲ませてやるとでも言いたいわけだ。
     こんな男の精液と、泥水と、小便のどれかなら、どれが一番マシかと本気で迷う。どれにしようと、しかしエイティシックスの境遇に比べれば、さほど問題にはなるまい。そう思うことでレーナは意地を保っていた。
     色濃い精が放出され、レーナの口内に熱く広がる。青味の強い、青臭い味に顔を顰め、ごくりと喉を鳴らしレーナは、屈辱を飲み干し、唇を引っ込める。
     本当に嫌な味だ。中佐が勝利の笑みを浮かべている。
     だが、これで。
     おいたの度が過ぎない限り、何をやらかそうが庇ってくださる。
    「中佐殿の小さな野望達成。おめでとうございます」
     せめてもの言葉で反撃した。
    「ふん」
    「では、失礼いたしました、中佐殿」
     優雅に、敬礼。
     管制室へ足早に向かうため、レーナは中佐の下を後にした。
     
         ***
     
     よって、中佐との関係はそれ以来続いている。
    「あむっ、ちゅっ、ちゅぶ――ちゅ――ずりゅぅ――ちゅぅ……はっ、ぷむぅ……」
     時間さえあれば呼び出され、レーナは真っ当な職務を理由に大半の誘いを蹴るが、週に数回以上は帳尻を合わせ、フェラチオやおさわりの遊びに応じている。最近では報告書を読み上げるのも、尻や胸を触られながらだ。
     もう何回目かも数えていない、不本意なフェラチオにレーナは励む。中佐は快楽にうっとりとして、ソファの背もたれに背中を預ける。時折視線を寄越せだの、先っぽだけをペロペロしてみせろと言って来るので、レーナはそれに従っていた。
    「んじゅぅ――ぢゅっ、ずぢゅぢゅぅ……ちゅっ、ぷ……あぁむぅぅ……」
     膨らんで破裂しそうな、大きな亀頭で息が苦しい。頭を前後にしていると、顎への負担感が蓄積して、疲れによってもやめたくなる。休みたいから吐き出して、亀頭だけを舐め回し、唇で唾液を塗るようにしていると、中佐の方からここまででいいと言ってきた。
    「さて、そろそろ純潔を頂こうと思ってな。机で横になれ」
     デスクをベッドの代わりにして、高級木材の板に背中を乗せると、ちょうどぴったり、レーナの腰から頭まで、上半身が綺麗に収まる。だらりと落ちる両脚を、中佐は掴んで持ち上げて、M字開脚の姿勢をレーナに取らせた。
    「やれやれ、せっかくの白銀種が」
     良家の血筋について言葉で触れ、それがエイティシックスに入れ込む嘆かわしさを、こんなところで遠回しに言ってくる。
    「中佐殿。早めに済ませて頂けると助かります」
     こちらはあなたと違って忙しいと、そんな素振りで言ってみせ、すると中佐は鼻を鳴らし、仕返しのように唇を奪ってきた。
    「んぅ……! んぅ……んんん……んん…………!」
     体重をかけ、強引に押し当ててくる苦しさに、長いまつげにけぶる大きな瞳が閉ざされる。捻じ込まれた舌が口内を蹂躪し、中佐の唾液の味が伝わる。ロマンスの欠片もないキスに、心の底ではレーナは嘆いた。
     黒染めの軍服を撫で回し、服の上から愛撫してくる中佐は、ボタンを手にかけはだけさせ、下着もずらしてレーナの乳房を直接揉む。
     スカートから覗く太ももの、白い眩しさに通るラインは、ロングソックスを吊り上げるためのガーターベルトだ。
     M字開脚の姿勢では、スカートが下着を隠すことはなく、上等な銀糸で編まれた、煌びやかな輝きを帯びたショーツが見えている。割れ目に沿って、中佐の指が絡みつくと、芋虫が身をよじるかのようにして、レーナの秘所は刺激を受けた。
    「……んっ、んふっ、ああっ」
    「濡れてきているな。ミリーゼ大尉」
    「あぁぁ……あふぅ…………」
     ショーツは湿り気を帯び、肉体が高まれば高まるほど、愛液に濡れてシミが広がる。上品なショーツはそうして汚れ、十分に濡れたところで中佐はそれを脱がせる。秘所を離れるショーツとアソコのあいだに、愛液の糸が引き、レーナの花園はあらわとなった。
    「では挿入して差し上げよう」
     突き立てられた肉棒にレーナは身を硬くする。入り口にぶつかる亀頭の感触に、いよいよ来るのだと覚悟を決め、歯を噛み締めて受け入れる。
    「うっ……! くっ、うぐぅ……うぅぅ……!」
     処女膜に亀裂が走り、穴の狭さも強引に広げられ、レーナは苦悶の表情を浮かべた。
     入りきらない袋の中に無理矢理詰め込み、ギュウギュウ詰めにしているようなものだった。
    「ははっ! いい締め付けだ! さすがは初物だ!」
     中佐の腰使いがレーナにぶつかり、腰から首まで、一突きごとに揺すられる。背中がわずかに反り返り、腹が真上に浮き上がり、乳房は振動によってプルプルと上下に動く。少女らしい白雪の美貌は染まり、淡い唇から苦しげな声が漏れ続ける。
    「あっ、うっ、うぅっ、うっ、くっ、んっ、んぅ……!」
     脂汗が、濃く浮き出た。
    「へっ、へへっ、はははは!」
    「くっ、ふぁ! ああ……! あうっ、んぁぁ……!」
     レーナの瞳に映るのは、むしろ中佐こそが豚だった。下品な笑みで快楽を貪り、本能のままに腰を振る。人の形をした豚とは、権力を利用して、こんなことをしている中佐の方だ。
    「良家のマンコは上等じゃないか! 豚どもとは大違いだぁ……!」
    「ま、まさか……!」
    「人権のない人の形をしたものだ! 喰わないわけがないだろぉ?」
     自分の体を使っているのは、こんな男か。そう思うとやりきれない。だが、エイティシックス達はもっと――。
     それでも、シン達は誇りを持って。
     だから自分も負けないように、辛抱強く、レーナは陵辱に耐えていた。
     生き抜くために、エイティシックスを絶滅などさせないために。
    
    
    

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  • 知覚同調性交(レーナ)

    
    
    
    『ミリーゼ少佐。今どちらにおられますか?』
    「自室で休んでいますが」
    『お暇なようでしたら、少々お礼をと思いまして』
    「お礼? 何のお礼ですか?」
    『人間もどきのエイティシックスにいつもご丁寧なご挨拶。そんなミリーゼ少佐に感謝の気持ちを送りたいのです』
    
     エイティシックス。有色種を差別する蔑称。
     まだスピアヘッド戦隊の担当となる前、これはとある部隊の隊員と起きた出来事だ。
     戦場にて<ジャガーノート>で戦うエイティシックスの通信手段には、知覚同調と呼ばれる画期的システムが使われる。
     理論上、五感のどれでも同調できる。
     基本的には聴覚が利用され、体感的には電話や無線機と大差がないので混乱も少ない。声での通信を受けたヴラディレーナ・ミリーゼ――通称レーナは、少しばかり迷い、一分少々の時間をかけて考え込んでから、ようやく『お礼』に応じてみた。
     皮肉や冷ややかさのようなものが入り混じり、向こうが何かしらを企んでいそうなことは理解していた。知覚同調は聴覚の共有だが、同調に際し互いの意識を経由している以上、顔を合わせている程度の感情は伝わる。
     馬鹿正直にプレゼントでも期待したわけではないが、果たして直接顔は合わせない、現実には戦場と安全圏で離れ離れの場所にいる相手に何ができるか。まさか白系種への報復のためだけに自傷行為など、そんなことを考えるわけもないだろう。
    『触覚を繋いで頂ければわかります』
     その状態で自殺でもされれば、痛覚の共有が恐ろしいが、さすがにそれはないだろう。
     だから、繋ぐ。
     彼が指定した一人の女子隊員に――その途端だった。
     すぐに身体が火照った。動悸が激しくなり、繋いだ相手である女子の、恍惚としたよがる感情まで伝わる。
    「――ひゃうん!」
     レーナは自らの股を手で押さえ、おかしな声で鳴いていた。
    『ははははっ、どうですか? 少佐ぁ!』
    「あぁぅっ! あっ、あぁぁ……!」
     まさか、そんな。
     きっと、そのためだけに、よほど丁寧に温めていたに違いない。空気にも触れたくないほど敏感に仕立て上げ、女の一人や二人は簡単に無力化する。
     快楽の共有だ。
    「なっ! なにをなさるのですか!」
     通信の向こうで、公然と行われている情事に顔を赤らめ、レーナは思わず怒鳴りつけた。
    『なにって、我々は少佐に良い思いをさせたいのですよ。だからみんなで協力して、いつもお世話頂いている少佐殿には気持ちよくなって頂きたいと』
    「そ、そんなことは――あぁっ! あん!」
    『そんなことは、なんですか?』
    「――それは――だ、だからぁ……! あっ、んんん!」
     一対一の性交かと思ったが、身体中をまさぐる目には見えない感覚は、全身という全身の素肌を撫で回す。一体何人でそうしているのかわからない、もしかしたら十人以上で愛撫している手の数々が、その触覚がレーナを襲っていた。
    『おやおや、ご満足頂けているようですねぇ?』
    『ではもっとサービスしましょうか』
    『この辺りなんて如何です?』
     体感的には、手首だけを切り取った数多い手の平が、全身にペタペタと張り付いて、それぞれ自由に揉んで撫でてとしているようなものだった。五感共有である以上、衣服の存在など無視して、皮膚に直接それがある。
     耳にうなじに、背中の部分と、指先でそっと触れられればゾワっとするところが、産毛だけをくすぐるように撫でられている。胸を揉んでくる手は一人分だけではなく、両方の乳房が鷲掴みのされているばかりか、乳首にも手二つ分の指が来て刺激してくる。
     尻も大胆に撫で回され、アソコに至っては指まで挿入されていた。
    「や、やめな……さ……あぁ……!」
     もう立っていられなくなり、レーナは自分のベッドへ倒れていく。
    『そろそろ挿れて差し上げましょうか』
    「え!? そんな――ま、待っ――――」
     全ては幻の感覚にすぎない。本当に処女を失うわけではない。
     けれど、だからといって。
    「ああぁあああああああああ!」
     初めて肉棒で貫かれる感覚は、十六歳の乙女には衝撃が強すぎた。
    『いい声ですねぇ? 本当に少佐とヤったらどんな感じがするんだか』
     小刻みに腰を振り、現実に交わっている女子の喘ぎ声も通信で聞こえている。
    「んむっ!」
     そして、硬く大きな熱気が、その幻の感覚が口内に入り込むと、現実の女子隊員が一体何を咥えたのかなど簡単にわかった――フェラチオだ。さらに手足の触覚で、床に触れている部分に合わせて姿勢を変えると、レーナのポーズは女子隊員と同じ四つん這いとなる。
     前後から挿入されている感覚に、実物を咥えたわけでもないのに太さに合わせて口を開き、快感に支配されるままとなっている。
    「んん! んんん!」
    『出しますよ? 少佐』
     そして、口内に放出され、尻にもかかる熱い液体は――それが幻だと忘れ、思わす本当に体にかけられてしまったような、混乱による動揺にレーナは震えた。
    『どうでしたか? 少佐。とてもよかったでしょう』
    「はぁ……はぁ……貴方達…………」
     そう、現実の体験ではない。幻の体験。
     それでも、レーナはやり捨てられた事後によく似て、ぐったりと倒れ込んでいた。
    
    
    

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