• タグ別アーカイブ: トゥーサッツ星人の逆襲 ~エロステージへの挑戦~
  • 最終話「バッドエンド」

    前の話 目次

    
    
    
     ゴールポイントは屋上に用意されていた。
     全ステージをクリアして、石畳の階段を上がった春菜は、丸裸で青空の下に立つみっともなさに俯きながら、とぼとぼと進んでいく。魔法陣の光を踏み、これで約束通りリトを解放してもらえるのだろうかと期待を抱く。
     春菜が別の場所へと転送された。
     景色が丸ごと発光したような、激しい光に視界が白く塗り潰される。強烈な輝きは徐々に引き、まともに周りの様子がわかるようになってくるなり、春菜は純白のベッドの上にいた。
    「どこ?」
     柔らかいシーツの感触を踏んでいる。
     転送の際に綺麗になってか、身体中を汚した粘液は取れていたが、服を着せて貰えていないことに遅れて気づく。
    「きゃ!」
     慌てて体を隠し直して座り込む。
     その時だった。
    「春菜ちゃん!」
    「結城くん!?」
     リトの声だが、部屋の中にリトはいない。
    「逃げろ! 逃げてくれ!」
     声だけが届いていることに気づいて、春菜はまず困惑した。この誰もいない部屋で、誰から? 何から? と、呑気なことを思ってしまうが、今までが今までだ。この部屋にも何かいやらしい仕掛けがあるに違いない。
     早く部屋を出た方が良いのかと思ってみるも、全裸で出ていくのは怖かった。
     服も着ないで、そんな思いで足がすくんでいた。
    「後ろだ!」
     リトの強い叫びに、ようやく背後に何者かの気配を感じる。ベッドを軋ませる体重の存在と息づかいのわずかな音が、宇宙人の存在を伝えてくる。振り向けばそこにいる恐怖に固まり、春菜は動けなくなってしまっていた。
    「クリアおめでとう」
     その声はきちんと背後から、そして肩には白い手が乗せられる。爪が鋭く、プラスチックのように滑らかな肌は、まさしく人間のものではない。
     春菜は震えた。
     声が出ない、体も動かない。
    「やめろ! やめやがれ! 春菜ちゃんに手を出すな!」
     リトの必死な声も、春菜の頭には届いて来ない。
     頭が恐怖に染まっていた。パニックの起きた脳には何も入らず、全身が恐慌に支配され、春菜はただその場で震えるだけの存在と化していた。
    「人質の解放なんて、ただの口約束だもんな」
     宇宙人は春菜を押し倒した。
    「イヤァァァァァ! やめて! やめて!」
     絶叫のような悲鳴であった。
    「へへっ、今回は最後までやらせてもらう」
     宇宙人の肉体にも、人間のペニスと変わらない形状のものが生えている。じたばたと暴れ、必死に髪を振り乱し、パニック任せの抵抗をしてくる春菜にヨダレを垂らし、宇宙人は楽しそうに性交を試みていた。
    「よく暴れる。元気がいいなぁ」
     両腕を力任せに押さえつけ、挿入しようとする宇宙人だが、暴れる春菜のために狙いは定まらない。それに苛つくわけでもなく、宇宙人はニヤニヤと抵抗を楽しんでいた。
    「お、ようやくか」
     やっとのことで亀頭が穴にはまりかけ、先端だけを入れた宇宙人は、そのまま腰を押し込み春菜の初めてを奪い去る。
    「あああああ!」
     絶叫と共に背中を反らし浮き上げていた。
    「春菜ちゃん! お前よくも!」
     春菜の絶叫に、リトは怒りに声を荒げた。
     しかし、リトはこの場にいない。
    「ふん、せいぜいそこで見ていろ」
     あの十字架にかかったまま、リトには映像だけを見せつけて、宇宙人はそうやって楽しみながら春菜のことを犯している。好きな女の子がレイプされる姿をただ見ているしかない、その怒りと悔しさはどんなものかと想像しながら、実に勝ち誇った思いで宇宙人は腰を動かし始めるのだった。
    「あ! ああ! やだ! 抜いて! 抜いてぇ!」
     初めての性交に、しかも濡れてもいない膣への出入りに快楽などありはしない。宇宙人だけが一方的に気持ちいいセックスに、春菜は泣きながら汗を浮かべた。全身の脂汗と処女膜の破損でシーツを濡らし、喉が痛むまで絶叫した挙げ句、もう叫び疲れるまで腰は叩きつけられるのだった。
     最後には目が虚ろになっていた。
     心の死んだ表情で、涙だけを流してぼんやりと、横向きの顔でぼんやりと壁を眺めながら、ピストンに身体を揺らされていた。
     
         †
     
     数日後。
     トゥーサッツ星人は広大な銀河を遊泳しながら、一人の性奴隷と、一人の囚人を連れて旅をしていた。何の犯罪も犯していない、罪なき囚人の衣食住の補償を盾にして、リトを牢屋に暮らさせながら、西連寺春菜を性処理に利用していた。
    「おい」
     と、一声。
    「……はい」
     それだけで全裸で現れ、トゥーサッツの一物をしゃぶるまでには、春菜はこの数日でものを覚えていた。口に入れることに抵抗を示さず、そうすることが義務のように、春菜はフェラチオを開始していた。
     大きなスクリーンに映像を流しつつ、ソファの背もたれを倒したトゥーサッツ星人は、春菜の口技を楽しみながら快感に浸る。
    「どうだ。お前の映像を流しているぞ?」
    「……はい。じゅっ、じゅむぅぅ」
    「愛好家によく売れている。嬉しいか?」
    「はい。嬉しいです」
     春菜は死んだ瞳の色をしていながら、上目遣いで表情だけは喜んだように見せかける。トゥーサッツ星人が散々犯し、人質の安全を盾にしたり、暴力の可能性をチラつかせ、脅し続けた成果である。
     もう暴れることはない。
     とっくに反抗心は失われ、ただ従うだけの存在となっていた。
    「このまま忠誠心を示し続ければ、結城リトと会える時間を増やしてやる」
    「ありがとう……ございます……」
    「ケツを出せ」
    「はい」
     春菜はスクリーン前のパネルに手をついて、トゥーサッツ星人に腰を突き出す。命じさえすれば差し出される尻を撫で、トゥーサッツ星人は立ち上がる。白い背中を見ながら挿入して、腰振りを開始した。
    「あん──」
    「いい声だ。もっと鳴け」
    「あっ、あん! あぁん! やっ、いい! 気持ちいいです! 気持ちいいです!」
     きっと、それは命乞いでもあった。
     トゥーサッツ星人の思い通りでいなければ、自分の身も保証されない。自分やリトの身柄を好きにできる立場の相手に、機嫌を損ねたくないがための喘ぎ声には、腰を振れば振るほどいつしか本当の快楽が折り混ざる。
    「おら、気持ちいいか? いいんだろ?」
    「はっ! はい! いいです! いいです──あっ、あ! あ! あ!」
    「肛門ひくひくさせやがって」
     お仕置きとばかりに、ぺちんと一発叩いてみる。
    「やっ! あぁ……すみませ……」
    「いいから喘いでろ」
    「あ! あん! あぁん! あぁん! あ! あぁぁ! あん! あぁん!」
    「出すぞ」
    「はい! どうぞ──あっ、あぁん! だ、出して──くらっ、ふぁいぃぃ……!」
     遠慮なく放出した。
     トゥーサッツ星人は春菜の中に欲望を発散して、すっきりとした顔で春菜を見下ろす。肩で息をした様子の背中は、ぐったりとしたようでいて、気持ちよかった余韻に浸っている。アソコの穴から白濁が流れ落ち、ぽたり、ぽたりと、一滴ずつ床に散らばり、内股には愛液でうっすらとした湿り気が出来上がっているのだった。
    「今度またリトの前でやってやろうか」
    「……はい」
    「お前のご主人様は誰だ?」
    「はい、あなたです」
    「よろしい。それでは続きをやるぞ」
     二人の営みは場所を移してベッドの部屋へと、トゥーサッツ星人は媚びる春菜と絡み合う。存分に楽しみ尽くし、味わい尽くした末に、精にまみれた春菜を背に部屋を出た。
     
    「やっぱり、地球の少女はいいなぁ」
     
     トゥーサッツ星人の宇宙船は、再び地球を目指していた。
     やはり、性癖である盗撮を再び楽しみ、その最後には春菜のように手に入れる。次の標的は誰にしようかと思いを巡らせ、ワープ航行の準備にかかった。
     
    「待ってろよ? 次の獲物ちゃん達」
     
     春菜に続けて、また次の誰かが犠牲になる。
     その時は刻一刻と迫り、トゥーサッツ星人は標的を決めるために地球に下り立つ。
     
     今度は、誰が──
     
    
    
    
    


     
     
     

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  • 第1話「トゥーサッツ星人 再び」

    目次 次の話

    
    
    
     朝、通学路。
     夏服の男女が学校へと向かう中、結城リトは西連寺春菜の背中を見た。スクールバッグを肩にかけ、黒髪を揺らす姿に、すぐさま挨拶に駆け寄ろうとして、ふと足を止めてしまった。
     風が吹いたのだ。
     それは実にささやかな風で、木の葉が少し揺れればいいものだった。スカートが捲れる恐れなどなく、多くの女子が気にも留めない中で、春菜だけは咄嗟にお尻を押さえていた。
    「きゃ!」
     と、悲鳴まで上げていた。
     周囲の面々は、不思議そうな怪訝そうな視線を一瞬向け、春菜が何を怖がったか、何に驚いたのかも理解できずに、首を傾げるなりしてそのまま学校へと向かっていく。
     だが、リトにはわかった。
     宇宙人に襲われ、性的な暴力を震われそうになっていたところを、リトは偶然見つけて追い払った。というより、向こうがワープで退却したのだが、もし見つけていなければ、酷いことをされていただろう。
     携帯電話で連絡が回ってきたのは幸いだった。
     先日は台風が接近していて、激しい雨風にリトなどは傘の骨を折られいた。そんな悪天候の中で、春菜がまだ家に帰って来ないと知るなり、いてもたってもいられず、リトは家を飛び出したのだ。
     思えばララの発明品を頼った方が早かったか、その時のリトは無我夢中だった。
     駆けつけた頃には、春菜は既に色んな目に遭わされ、きっと身体中をベタベタ触られてしまったに違いない。
    (クソっ、今度会ったらぜってー許さねー)
     思い出しても腹が立つ。
     そして、それからリトは気づいた。
     階段を上がる時、椅子から立ち上がる時、スカートを気にする際の警戒心が上がっている。後ろの押さえ方には実にしっかりと力が入り、見せまい見せまいと意識している。
     さらには休み時間中。
    「はい! チーズ!」
     教室内で仲良し同士が集まって、携帯で写真を撮った瞬間だ。
    
    「!」
    
     春菜はビクっと肩を弾ませ目を見開き、直ちにシャッター音声の聞こえた方を見るなり、緊張を和らげ肩の力も緩めていた。
    (カメラを怖がったのか?)
     リトはトゥーサッツ星人の犯行を見て知っているわけではない。春菜も詳しくは話したがらず、ただ宇宙人に追われて怖い目に遭ったと聞いている。具体的にどういうことをされたかなど、聞けるはずがなかった。
     写真も撮られたのだろうか。
     そう思うと、ますます腸が煮えくり返るが、あの宇宙人はワープによって消えてしまった。二度と地球には来ないかもしれない。考えれば考えるほど腹が立つ。
    (というか、春菜ちゃんにしてやれることって、なにかないのか? 美柑に相談するか?)
     春菜のために、リトは頭を悩ませていた。
     その時、携帯電話のマナーモードの振動に気づき、リトはメール画面を開く。見覚えのないアドレスから、添付画像付きの一通を開いた時、リトは驚愕した。
    
     春菜の写真だった。
    
     風でスカートが捲れ、下着が見えた瞬間を捉えたものに、リトは一瞬遅れて顔を赤らめ、見てはいけないとばかりに目を逸らす。
     しかし、きっとあの時の犯人からだ。
     本文に目を逸らす移し、書かれた内容を読むに、その文面に歯を噛み締めていた。
     
    『放課後、一人で屋上に来い。仲間には一切知らせるな。仲間に話したことがわかれば、俺は地球に姿を見せず、その上でクラスや教師達に写真をバラ撒く』
     
    『アソコが写ったやつもあるぞ。見たいか?』
     
    『俺は用心深い。仲間に知らせる様子があっても、気取られる様子があってもバラ撒く。しかも知り合いから優先的に送る』
     
     複数届くメールの最後の一通には、監視していることをリト自身に教えるための、ちょうど先程の、携帯電話を手にした瞬間のリトを写した画像が添えられていた。ぎょっとして周囲を見渡すが、何も見当たらず、どんな方法でリトのことを見ているのかはわからなかった。
    (くそ、どうすれば……)
     携帯電話を閉じたリトは、春菜の写真が撒かれるか否かの運命を握らされ、険しい思いで怒りを隠して平静を装った。
     どうしたの? 何かあったの?
     と、そんな質問を誰からもされないように祈って一日を過ごし、やがて放課後を迎えていく。
     
    『夕方まで待て』
     
     一言だけのメールを読み、リトはどうにか時間を潰し、夕暮れの差し掛かるオレンジ色の教室で窓を眺める。
     
    「……結城くん?」
     
     そっと声をかけられ、リトは振り向いた。
    「は、春菜ちゃん!?」
     携帯電話の中に入った画像を思い出し、リト自身が後ろめたいわけでもないのに、目を合わせられずに顔を逸らした。
    「その、忘れ物があって……。結城くんはどうして?」
     教室に残っていた理由を聞かれても、本当のことは答えられない。
    「え? えっと、オレも! オレも忘れ物しちゃって」
     まるで苦しい言い訳で、隠し事ができていない。怪しいからと追求されればボロが出そうで、リトは密かに焦りを抱える。
    「そっか。同じだね」
     疑う様子もなく、まずはホッとした。
     それから、胸のあたりに拳を作ってモジモジしたような春菜の可愛さに、見ていてリトはどきりとする。
    「あ、あぁ……」
     何か、気の効いたことが言いたかった。魔法ような言葉で春菜を慰め、悪夢の体験を取り除いてやりたかったが、都合の良い台詞が浮かばない。ただただ口をパクパクと、あわあわと、何かを言おう言おうとしているだけで、実際には何一つ言えもしなかった。
     だが、春菜は何かが嬉しい様子で少し笑った。
    「へへっ、優しいね。結城くん」
    「お、オレ! あいつ絶対に許さない! 今度出てきたらぶっ飛ばすから!」
     やっと言えた言葉がそれだった。
    「うん、ありがとう」
     笑顔だった。
     良かったのだろうか、間違っていなかったか。不安を抱えていたリトの胸中は、春菜の柔らかな表情によって和らいでいた。
    (なんかオレの方が慰められた気がする)
     とさえ、リトは感じていた。
    「あのね? ズボンってどう思う?」
    「え? ズボン?」
     急な問いに脈絡が掴めず、リトはやや困惑する。
    「今日ね。制服でズボンの女子を見かけたから、そういうのもいいかなって」
     すぐさま意図が掴めた。
     あんな写真が届いたということは、犯人は他にも何枚も同じように撮っているのだ。写真を撮るような真似をされたから、ズボンの方がガードが高くて安心だと、春菜は思うようになっているのだ。
     ますます、犯人のことが許せなくなっていた。
    「いいんじゃないか? 春菜ちゃんなら、きっとズボンも似合うし、有りだと思う!」
     そう答えた時、ポケットの中で携帯電話が振動して、リトはズボンの中からすぐさま取り出す。
     
    『今から来い』
     
     いよいよだ。
    「ごめん! 用事みたいだ! また明日!」
     そう言い残して、リトは教室を駆け出した。
     そのまま屋上へ駆け上がり、飛び込む勢いで出ていくと、テレポートを使って瞬時に宇宙人は現れる。
     白い肌──それもシリコンかプラスチックのような質感で全身を覆い、頭髪というものをきっと元から生やしていない、手足に鋭い爪を生やした宇宙人が、リトの目前に立ってはタブレット端末の画面を起こし、春菜の写真を見せびらかしてくるのだった。
     
         †
     
     西連寺春菜は黒いスパッツを穿いていた。
     あれから、ちょっとした風が気になったり、一人きりでいる時にすれ違う男にその都度警戒心が沸いてしまう。朝の登校時にも少しの風で後ろを押さえ、悲鳴まで上げてしまったせいで、かえって目立ち、そちらの方が恥ずかしいような体験までしてしまった。
     階段を上がる時も、必要以上にお尻に意識がいった。
     下から男子の声が聞こえただけで、覗かれたり、捲られる危険が頭をよぎって、しっかりと後ろを両手で押さえていた。スパッツを穿いているのに、見えることを警戒していた。
     そんな時だ。
     ズボンを穿く女子を見かけ、あれなら……と、春菜は感じたのだ。
     強風の日にスカートを見たがる男の視線は、ズボンに変えるだけで阻止できる。ただ急にズボンにしたら、周りはどう思うだろうと、リトには聞いてみてしまった。
    (心配、かけてるよね……)
     自分を思ってくれるリトの気持ちが、嬉しくもあり申し訳なくもある。有りだと言ってくれたリトの言葉は嬉しかったが、急に変えたら周りに色々と聞かれることになるだろう。クラスの子はみんなスカートなのに浮くかもしれない。
     スカートをやめるか、やめないか、悩みながら家での時間を過ごした春菜は、パジャマに着替え、あとは寝る前に少しばかり勉強をやっておこうと、机にノートを広げていた時だ。
     メールが届いた。
     見知らぬアドレスの表示に、間違いか迷惑メールか、どちらかだと思った春菜だが、不穏な件名にメールを開かざるを得なかった。
     
    『結城リトは預かった』
     
     まるで人質を取ったような一文に不安になり、恐る恐る添付画像を開いた時、春菜は顔面蒼白になっていた。
     
     リトが十字架に捕らわれ、その隣にはあの時の宇宙人が立っていた。
     
     画像はまだ付いている。
     そちらを見るなり、今度は赤くなって目を背けた。
    「やっ」
     声さえ上げていた。
     二枚目の画像は、あの強風大雨の中で、スカートが大胆に捲れ上がった春菜自身のものだった。
     
    『お前を監視している。下手なことをすれば身の安全は保証しない』
     
     その証拠のように、警告のメールにあった添付ファイルは、今度は今ここにいる春菜を背後から写したとしか思えない、パジャマで椅子に座った後ろ姿の画像だった。
     春菜はすぐさま振り向いた。
     ハエが飛び抜ける黒い小さな影が見えた気がしただけで、誰もおらず、何もない。しかし、改めて画像を見れば、カメラを持った透明人間がいなければ説明がつかない。
     
    『誰かに話しても、察知されても、結城リトの安全は保証しない。一人で指定の場所まで来てもらう』
     
     春菜は恐怖した。
     間違いなく、あの時の宇宙人の犯人だ。それが再び春菜を標的に、リトのことまで巻き込んで、どこかへ呼び出そうとしている。行けばロクな目に遭わないことは明らかだが、こうしている今にも監視されて、ララにもヤミにも相談できない。
    「どうしよう……結城くん……!」
     春菜だけの力でどうにかなるはずはない。
     だからといって、リトを見捨てることも考えられず、恐慌していた春菜は、次に届いたメールに震えながら目を通す。日時と場所を指定した内容で、行かなければリトの命は保障されない。
     ……行くしかないんだ。
     他に方法など思いつかず、春菜は言いなりの道を選ぶのだった。
    
         †
    
     トゥーサッツ星人はリベンジを試みていた。
     前回地球に来た時は、途中のいいところで結城リトが駆け付け、このままでは仲間の宇宙人も後から現れるだろうと危険を感じて撤退した。
     このまま手を引き、向こう数年は地球に近づかないことさえ考えていた。
     しかし、地球の少女の写真や動画は愛好家が高値で買う。販売ルートから高い収益を得たトゥーサッツ星人は、格安の異界惑星の土地を手に入れ、とある趣向を思いつくなりどうしても試したくなったのだ。
     ワープ装置でアクセス可能。
     加えて、スライム、ドラゴン、魔法など、地球の例えでいうなら異世界ファンタジーに酷似した環境をしており、地球人にもトゥーサッツ星人にも大気成分による害はない。セッティングさえ行えば、最高の環境で春菜を辱しめることができるだろう。
    「キッシシシシシシ」
     宇宙船の中。
     巨大なスクリーンに惑星の様子を移し、森や空に魔物の行き交う映像を眺めていたトゥーサッツ星人は、その白い顔を肩越しに振り向けた。
    「お前! 春菜ちゃんをどうする気だ!」
     そこには結城リトを十字架に捕らえていた。
     金属の十字に、手足を封じる枷のリングも分厚い鉄で出来ている。さらには透明なドーム状のカプセルまで被せてあり、よしんば十字架から抜けたところで、弾丸もレーザーも通さない強化ガラスがリトを閉じ込めているわけだ。
     高いワープ設備を使ったので、デビルーク星の女王がリトやララの不在に気づいても、この場所の特定には一週間以上はかかるだろう。
    「お前を人質にして、ゲームに参加してもらうのさ」
    「ゲーム?」
    「服を溶かすスライム! 服を切り裂くかまいたち! 女という女を悶絶させる触手の群れ! ステージごとに試練を用意して、クリアを目指してもらおうってわけだ!」
    「ふざけんな! そんなゲームやらせられるか!」
     リトは必死になってもがき始め、腕を枷から引き抜こうと必死になる。
    「嫌でも参加してもらう。もっとも、西連寺春菜がお前を見捨てたり、監視を無視して仲間に太助を求めようとしたら、その瞬間にこの宇宙船は遥か遠くの銀河にワープし、そこでお前を奴隷商人に売り渡す」
    「くそっ、なんてやつだ……」
    「春菜が最後までゲームをクリアしたら、解放するかどうか考えてやる」
     守る気のない口約束をしながら、トゥーサッツ星人はモニターに目を戻す。
     現在のこの宇宙船は別世界の惑星付近だ。
     だが、ワープゲートを開いているため、そこから通信を繋げることで、地球の様子をハエ型カメラで確認できる。架空のアドレスを作り、地球の折り畳み式携帯電話にメールを送ることさえ容易い。
    「春菜ちゃん!」
     リトの声。
     モニターの中に映る春菜は、夜の公園の中にいた。メールで指定した日時の通り、砂場の中心に立ち尽くし、この後はどうすればいいのかがわからない様子で携帯電話を握っている。
    「へへっ、可愛い服だな」
     清楚なワンピースだった。
     真夏は夜でも気温が高いのか、肩を剥き出しにしたワンピースは、薄い水色に花模様のプリントを散らし、スカートの丈は膝の近くにまで及んでいる。腰の帯でウェストを調整するのか、そのような紐が腰横でリボン結びに、それがまたアクセントとなってファッション性を高めている。
     履いているのはお出掛け用のサンダルだろう。確か地球の化粧品には、爪に色を塗るものがあったはずで、靴下を履かない素足の露出は、そんなファッション効果も狙えそうだ。
    「どれ」
     公園には大気操作の装置を仕掛けてある。といっても、ただ強い風を起こすだけ、それ以外の何もできないマシンだが、宇宙船のパネルにある無数のボタンの一つを押すと、たちまちスカートが持ち上がった。
    『きゃ!』
     さぞかし驚いたことだろう。
     スカート捲りのためだけの、まさに真下から上に向かって吹き上がる風の柱が、髪もスカートもコウモリ傘のように浮き上がらせ、反射的に前を守った春菜だが、後ろはもろにカメラに映った。
    「スパッツか」
     モニターに大きく映し出された尻は、スパッツの黒い布地にぴったりと覆われたものだったが、直ちに後ろにも手が回り、それは隠されてしまっていた──もっとも、前後を必死に押さえても、手の当たっている範囲だけが下半身についたまま、残る範囲の全ては捲れ上がっているのだった。
    「お前! 何しやがるんだ!」
    「少しイタズラしただけだろう?」
    「許さないぞ!」
    「ふん、お前に何ができる。これからもっと過激になるんだぞ?」
     画面の中では風がやみ、スカートがふんわりと脚のまわりに落ちていく。とっく風が過ぎ去っても、なおもスカートを押さえたまま、アソコとお尻のそれぞれから手を離そうとしなかった。
     瞳はチラチラと左右を伺い、また風が来ないかと警戒している。
    「頼む! 春菜ちゃんには何もしないでくれ!」
    「他の子ならいいのか?」
    「そういうわけじゃ……ないけど……」
    「ま、せいぜい自分の好きな子の色んな姿を楽しむことだな」
     トゥーサッツ星人はコンピューターを操作して、日本語の文字情報を春菜の携帯電話へ飛ばしてやる。向こうからするば、メールが届く形で処理されることになるはずだ。
     携帯電話が振動しても、春菜はスカートから手を離したがらない。かといって、人質を抱えた犯人からのメールを、春菜の立場では無視もできない。
     左手だけはスカートに残す形で、まるでまだ強風に備える必要があるかのように警戒しながら、春菜はメールを開いていた。先程の風がトゥーサッツ星人の仕業であるなど、春菜にはわからないだろうに、本人にとってはただの自然な風への警戒心のはずだが、スパッツがありながら切実そうだ。
     メールを読んだ春菜は息を飲み、表情を見るに覚悟を決めようとしていた。
     内容は簡単だ。
     これかはワープ装置で異世界へ行ってもらい、数々のステージに挑戦してもらう。全ステージをクリアしたら結城リトを解放し、二人一緒に無事に地球に帰してやることを説明する文面である。
    「さて、最初のステージにご招待だ」
     春菜の足元に、砂場の中にワープ装置を隠してある。
     ボタン一つ押すだけで、春菜やハエ型カメラに加え、ワープ装置本体もろとも転送され、それぞれ設定されたワープ先に出るように調整してある。機材とカメラは宇宙船の中に、春菜は異界惑星に転移した。
    
    
    


     
     
     

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