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  • 渋谷凛 エロエステで絶頂生ハメ! 後編

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     中年はほくそ笑んでいた。
     凛に何度も飲ませているドリンクは、媚薬入りでかつ思考力を低下させる作用がある。肉体が快楽を求めてやまなくなり、頭の方も存分に弱っていることだろう。
     真っ当な思考を失って、しかも全身の感度が上がっていたらどうなるか。
     先ほどの、盛大なイキッぷりが答えである。
    「ところで、オナニーは好きなんですか?」
     乳房に手を置き、揉んでやるが、それを疑問にする様子はない。
    「……たまに、しますけど」
     エステの体裁を捨て、ただ揉んでいるだけなのだが、凛にはもう疑問を浮かべること自体がなくなっていた。
    「好きなんですね」
    「まあ」
     凛は少しばかりの誤魔化しをしただけで、あっさりと肯定してしまう。
    「けっこうする方で?」
    「た、たまに……です……」
     凛は顔を背けた。
    「しかし、毛は剃った方がよろしかったのでは」
     中年は不意に体毛へと話を移す。
    「それはその……忘れてしまって……」
    「脇毛は目立つし、さっきは尻毛もありましたよ?」
     まだショーツを脱いでいなかった時の、Tバックのように尻たぶを丸出しにした際も、毛がいくらかはみ出ていた。
    「うっ……」
     あらぬ部分の指摘までしたことで、凛は羞恥を顔に浮かべる。
    「ところで、まだ物欲しそうな顔をしていらっしゃいますが」
     そう言ってみた瞬間、凛は生唾を飲んでいた。
     まだ快楽を欲しがるだけの体力があるらしい。若い分だけ、体力はあり余っているということか。
    「また気持ち良くなりたいですか?」
     中年ははっきり訪ねる。
     ……こくっ、と。
     凛は緊張じみた硬い顔で頷いていた。
    「指でイキますか?」
    「あのっ、もっと……」
    「もっと、その……」
     何かを言いたいようでいて、言い出せない様子を見るに、指よりも過激な何かを求めているらしい。
     もしや、本番行為だろうか。
     ニヤニヤと愉快な気持ちが止まらなくなり、中年は凛の手を取り股間へ運ぶ。ズボン越しに触らせると、最初こそぎょっとするも、強張った顔ながらに軽い力で包む込み、かすかな力でさすってくる。
    「ご要望があれば、仰って頂いてもいいのですよ?」
     まともな思考よりも、性欲を優先する状態に陥っているはずなのだ。
    「あの、私……」
     いかにも、言いにくそうだ。
    「どうぞ? 仰って下さい」
    「私は、その……さ、最後まで……」
    「最後まで、何でしょう」
     わかっていながら、中年はわざととぼけていた。
     言わせるために、楽しむために。
    「ほ、本番……」
     か細くて、今にも消えそうな声で凛は言う。
    「本番とは? 何の本番でしょうか?」
     表情を抑えようとしていても、どうしても意地の悪い笑みが浮かび上がって、口元がニヤけてしまっている。顔つきをコントロールしきれない。愉快すぎて、楽しすぎて、どうにもならなくなっていた。
    「だからッ、本番っていったら、それしか……」
    「わかりませんね。はっきりと仰って頂かないと」
    「セックス! です」
     凛は半ばヤケになっていた。
    「ほう? 今、なんと?」
    「だから、セックス……挿入して欲しいです……」
    「ほほう? 挿入ですか。これはまた、随分と大胆かつ過激なご要望ですが」
     中年は大袈裟に囃し立て、必要以上におかしくて珍しい要望であるように言っていた。そうすることで、態度によって凛のことを辱め、遊んでいるのだった。
    「そう、ですけど……さっきからおかしくて……我慢が、できなくて……」
    「よっぽど興奮しているわけですね? 最初は普通のエステしかしていなかったのに、そんなになるほど敏感だとは、こちらも想定していませんでしたよ。いやぁ、この店が出来る前からエステは続けてきましたが、ここまで感じてしまうお客様は初めてですねぇ?」
     本当に初めてかどうかは関係がない。
     凛を辱める言葉であれば、どんな台詞でもかけてやる。
    「うぅ……」
     凛の表情が歪む。
    「しかし、度を超した要望ですねぇ?」
     ニヤニヤしながら、簡単には応えられないかのように言ってみる。
    「え……」
     凛に軽い絶望が浮かんだ。
    「どうしても、というなら考えないことはありませんが、簡単には応じかねます」
    「一体、どうすれば……」
    
    「土下座して下さい」
    
     そう頼んだ瞬間だ。
    
    「……え?」
    
     何を言っているのか、言葉が届ききっていない、受け止めきれない顔できょとんとしていた。あまりに突飛なことに聞こえたのか、かえって呆気に取られていた。
    「聞こえませんでした? 土下座をして下さい」
    「ど、土下座って、本気で言ってるんですか?」
    「お嫌ですか?」
    「そりゃ、当然……」
    「しかし、あなたは私に変態チックなオナニーを見られ、エステでは絶頂して、あまつさえ本番行為まで求めてきています」
    「…………」
     ただ事実を並べただけで、反論の余地など欠片もなくなる。
     媚薬や思考力低下の作用など、凛が知るはずもないのだ。
    「それって、どうしてもですか?」
    「どうしてもですね。サービスの域を超えていますから」
     それを言うなら、胸やアソコへの執拗なタッチもまた、性風俗でもないのに行う行為ではないのだが、今の凛はそこまで頭が回らない。
    「……やったら、してもらえますか?」
     恐る恐るも、覚悟を決めつつある様子だ。
    「してくれたら、ですがね」
     一人の少女が、それも立派なアイドルがだ。そこまでして自分のペニスを欲しがっているのかと思ったら、優越感でたまらない。
    「……わかりました。やります。やりますから、お願いします」
     至福の勝利を得た気分だ。
     少女の心を意のままに操り、ついに土下座にまで持ち込んだ達成感は、きっとどんなトロフィーよりも輝かしい。
    「ではお願いします」
     中年の目の前で、凛が姿勢を変えていく。
     正座となって、真っ直ぐに背筋を伸ばし、中年の真正面に座した凛は、これから行う自分自身の行為に今のうちから表情を歪め、恥辱感を浮かべている。
     そして、凛は上半身を傾け始めた。
    「…………」
     何も言葉を発しない。
     瞳を下向きに、目を伏せた表情から、こんな全裸で土下座を行うことへの思いがひしひしと伝わって、見ている中年は興奮する。いかに思考力が低下していても、セックスをねだるために土下座など、あまりのはしたなさに心が締め上げられていることだろう。
     ベッドの上に両手が置かれ、前髪は暖簾のように垂れ下がる。
     あとはそのまま、最後まで頭を沈めていくだけだ。
    「どうか……」
     声が小さい。
     本人もそう思ってか、凛は言い直す。
    
    「ど、どうか、私の体を満足させて下さい……」
    
     声も、まぶたも震えていた。
     硬直しきった表情で目を閉ざし、肩まで震わせながら頭を下げ始める。上半身の角度が変わるにつれ、前髪もベッドシーツへ迫っていき、額がシーツに触れる頃には垂れ広がっていた。
    
    「お願いします。私とセックスをして下さい」
    
     身体が折り畳まれ、綺麗ですべらかな背中と、そこに連なる丸い尻がよく見える。部屋の照明が皮膚を良い具合に輝かせ、スベスベとした光り輝く尻の丸みは、実に美しいものに見えるのだった。
    「いいでしょう。セックスをして差し上げましょう」
     心の底から愉快でならない。
     いかにも楽しげに、機嫌良くコンドームの準備をして、ズボンを脱いだ中年は、装着しつつも土下座を眺める。もう二度と見ることのない、アイドルの土下座という絶景を目に収めるべく、ベッドの周囲を歩んでいき、尻の真後ろにまで回り込んだ。
    「しかし、尻毛が目立ちますねぇ?」
     ここから見れば、真正面に広がる尻の割れ目に目がいって、そこから生える尻毛の一本一本が放射状に縮れている。
    「う……」
     毛の指摘に恥じらう反応が見なくとも目に浮かぶ。
    「剃った方がいいですよ? ここも」
     と、中年は尻毛のうちの一本をつまみ、引っ張って悪戯する。
     ヒクッ、ヒクッ、と、皺の窄まりが反応していた。
    「では仰向けになって下さい」
    「……はい」
     固い動きで身体の向きを変え、ベッドシーツに背中を付ける凛の動きは、たったこれだけのことでたどたどしい。これからセックスを行うことに、いかに緊張しきっているかが、ありありと伝わってきた。
     M字開脚の仰向けがこちらを向くと、びっしりと毛の詰まった陰毛の部位に目がいった。自分の脚を掴んで、しっかりと股を左右に開いているせいか、肛門までこちらを向いた状態で、尻毛も目立つ。
     毛の処理のないアソコにペニスを近づけ、中年は切っ先でワレメを切り裂き、膣口に先端をフィットさせていた。
    「……」
     緊張のあまり、顎が強張り、唇が硬く閉ざされている。
    「いきますよ?」
     対して、中年はそんな凛の反応を楽しんでいた。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅ――――
    
     肉棒が奥へ向かって進軍する。
    「あぁぁ……!」
     凛は大きく仰け反っていた。
    「おや、いい反応ですね? 私も気持ちいいですよ?」
     根元まで押し込んだ中年は、まずはじっくりと、かすかで軽い動きだけで膣を味わう。その熱さと感触をよく確かめ、慣らしたところで弓なりに腰を引き、貫いた。
    「あぁん!」
     ビクっと、凛の背中が弾む。
    「おやおや」
    「あん! あん!」
     かなり大きな喘ぎである。
    「あん! あぁん! あああ! あん! あぁん!」
     絶叫に近いほどの声量で、この部屋は防音性が高いのだが、そうとわかっていても外への漏れが心配になってくる。貫くたびに大口を開け、激しくよがり、腰の弾みも髪を振り乱す動作も勢いが強い。
    「あぁぁん! あん! あん! あぁん! あああああ!」
     簡単に絶頂していた。
     その頃には中年も達し、コンドームの中身を膨らませていたが、まだまだ数発ほどの射精は可能である。
    「さて、一回目は終わってしまいましたが、次はゴムを外してみませんか?」
    「ご、ゴムは……」
     避妊への理性は残っているらしい。
     もっとも、それも淡いものだろう。
    「生の方が気持ちいいですよ?」
     そう耳元へ囁くだけで、凛の瞳はとろけていた。理性など簡単に溶けて消え、快楽を求めてやまないヨダレの垂れた表情で、中年に熱い眼差しばかりを返している。
    「あっ、お願いっ、します……はやくっ、もう一回……!」
    「少々お待ちを」
     中年はコンドームを取り外し、今度は未装着の肉棒を近づけた。
    「んっ」
     快感への期待に、凛の身体が引き締まる。
    「では」
     再び挿入した。
    「あぁあああぁぁぁぁああ!」
     凛は絶叫していた。
     先ほどにも増して、頭に響かんばかりの声量で大きく喘ぎ、中年の鼓膜は揺らされる。
    「あぁああ! あん! あぁん! ああん! ああああああ!」
     かえって、中年の方が驚くほどの、信じられない感じようだ。確かに媚薬を飲ませているが、ドリンクを与えすぎただろうか。それとも薬が濃すぎたか。始めからセックスに持ち込む策略を立て、目論見通りに楽しんでおきながら、つい凛の心配をしてしまう。
    「あぁぁあああ! あああん!」
     それほどの絶叫ぶりに、少しばかり戦慄しつつも、もうこの腰は止められない。
    「あぁぁ! あ! あああ! あああああ!」
     獣じみた絶叫を耳にしながら、中年はひたすらに快楽を味わった。突き込むたびに引き締まり、潰さんばかりに圧してくる膣の感触に意識をやり、ピストンから生まれる射精感を遠慮なく込み上げさせる。
     やがて、限界が近づいてきた。
    「さあ、出しますよ?」
    「ああああ! 来て! 来てぇ!」
    「では――」
     中年は深々と突き刺し、子宮を狙って解き放った。
    
     ドクン! ドクドク! ビュルゥゥウ!
    
     そして――。
    
    「ああああああああああああああ!」
    
     凛は白眼までむいて喘ぎ散らし、何秒も何秒ものあいだ、背中が反り上がるあまりのブリッヂを披露しながら、やがて事切れでもしたようにぐったりと動かなくなっていた。
    「はぁ……はぁ……す、すごい……すごすぎる…………」
     心、ここにあらずのようだ。
     絶頂した凛にとっては、余韻もまた深いものらしく、気持ち良かった感覚に心まで飲み込まれたまま、白眼から戻った瞳は焦点が合っていない。どこを見ているかもわからない目で、幸せの余韻にただただ浸り続けていた。
     さすがの中年も、これ以上は手をつけず、このまま休ませておこうと考えていた。
     想定以上の効果だ。
     ビクビクと震えていた身体のアーチが崩れた時、思わず失神や腹上死の心配をしてしまったくらいである。
    「あと、一回……」
     だが、当の凛からそんな言葉が聞こえると、アイドルを抱ける優越感に流されて、中年としても、あと一回ならと思ってしまう。
    「では……」
    「あの、私……お尻でもオナニーするので、次はアナルを……」
     なんと、そんな要望までしてくるとは。
     ならば遠慮なく、中年は肛門にペニスを突き立てていた。
    
         *
    
     どうして、あんなことをしてしまったのだろう。
     思い返してみれば、何がどうしてアダルトグッズがスパに放置されていたのかの想像がまったくつかない。それでオナニーをしてしまった自分もそうだが、エステにかこつけて胸やアソコを触ってきた中年も、十分におかしかった。
     どうして、ああも判断が鈍っていたのだろう。
     まともな思考さえしていたら、決して体を許すはずなどないのに、凛の記憶の中には自ら土下座までしてセックスを求めた自分がいる。
     実際に気持ち良かった。
     信じられないほどの快感に、気絶しそうなほど何度もイった。
     あの後のセックスは、あと一回などには収まりきらず、何度も求めては精子を受け取り、何回シたかもわからなくなるほど朦朧とした状態で、なおも続けてヘロヘロとなり、疲弊のあまり死人のような顔で帰ったのだ。
     後になって、慌てて妊娠検査をして、その結果に安心した凛であるが。
     ただ体を許したばかりか、避妊まで怠った自分の判断が信じられない。
     だが、そればかりの話ではなかった。
    
    『おっ! おぁああああああああ!』
    
     それは凛のスマートフォンの中で起こる出来事だった。
    『本当に入るとは、散々オナニーに使っていたのですねぇ?』
     映っているのは丸裸の凛自身である。
     それも、アナルセックスの映像だ。
     体位のせいか、正常位と区別がつきにくいが、結合部をよく見れば性器には入っていない。肛門から出入りする肉棒の様子がわかり、動画サイトのタグにも『アナル』というタグが付いているのだった。
    「……」
     家の中で、イヤホンを使って動画を視聴している凛は、偶然にも見つけてしまった自分自身の盗撮動画に生唾を飲み、その時の快感を思い出してアソコの方へと手を伸ばす。
     初めて見つけてしまった時、頭を消し飛ばされたほどの衝撃を受けた。目の前にある画面の中身が信じられず、現実の出来事を夢だと思い込みたい衝動にまで駆られ、やがては恐る恐ると震えた指で再生までしてしまった。
     それが今の凛だ。
     部屋で一人、ベッドに座り、イヤホンをかけて画面を見つめるばかりか、今の凛は服まで脱いで裸でいる。
     その手はアソコに伸びていた。
     そう、凛はオナニーを始めてしまっていた。
    「なんで、私……自分の動画なんか見ながら……」
     盗撮なのに、犯罪なのに。
     しかし、それをネタにして興奮してしまっている自分自身の変態性に、まるで自分には盗撮犯を訴える資格がないような気持ちになる。
    「んっ、んぅぅ……」
     指が気持ちいい。
     膣内に入った二本指が出入りするたび、体中に淡い電気が駆け巡り、皮膚の内側では筋肉がピクピクと反応を繰り返す。
    『おあぁぁ! あぁああ! ああ! ああん!』
    「私、こんなに……」
     凛は食い入るように画面を見ていた。
    『ああああああ! ああああ! あっ、おああ!』
     あまりにも物凄い。
     おぞましいほどに前髪は乱れ、喘ぎ声からツバが飛んでいるのがわからなくもない。背中が大きく弾み上がり、足首が激しく上下している反応は、我ながらいかに快楽に狂っていたかがよくわかる。
    『あぁあああああああああ!』
     全身に高圧電流が流れているような痙攣ぶりに、自分で自分の姿に引く。
     肉棒が抜けた後、肛門が大きく映されると、皺の中から溢れた精液がシーツに垂れ、染み込んでいく光景が流れていた。
     それから、画面は切り替わる。
    『イキましたねぇ? どうします? 続けます?』
    『はい! まだ! もっと!』
    『では四つん這いに』
     今度は両手を突いた姿勢で、相手の姿が見えない状態で挿入され、やはり狂乱じみた声でよがり散らす。
     コメント欄に目がいった。
    
     渋谷凛そっくりじゃない?
     確かに。
     激似? なんてAV女優?
     わからん、誰だろう。
     俺はこれ渋谷凛として見るわ。
     っていうか、実は本人でも驚かない。
    
     コメントの数々を見ている限り、本物の渋谷凛とは思われていないのが不幸中の幸いだが、それでもしきりに名前が出て、似ているAV女優として見られている。たとえ本物だとは思っていなくても、動画を視聴する男達は、そこに渋谷凛を当てはめているのだ。
    「これじゃあ私……」
     本当にAV女優ではないか。
     人々にセックス映像を提供して、男のネタとなって精液を搾り取る。肉棒を握ってティッシュを消費している男達が、十万を超える再生数の中に大勢いるのだ。
     全身が疼く。
     コメント欄や再生数を意識することで、不特定多数の視線を浴びている気分になり、体中が興奮する。オナニーの指は活発となっていき、頭の中には中年の肉棒の感触がありありと蘇る。
    「あ……!」
     いつしか、喘いでいた。
    『あん! あん! あん! あん!』
    「あん! あん! あん! あん!」
     それはまったくの偶然だが、騎乗位へと体位を変えた動画の凛と、今ここでオナニーをしている凛の、過去と現在の喘ぎ声が重なっていた。
    『あん! あん! あん! あん!』
    「あん! あん! あん! あん!」
     動画の中では一心不乱に腰を弾ませ、乳房が上下にプルプルと揺れる様を披露しながら、くねり動く腰つきで肉棒を食している。
     オナニーの指は活発化して、ピストンが激しくなっていた。
     そのピストンの速度が少し、また少し、だんだんと上昇していくにつれ、太ももがモゾモゾと動き回る。
     アソコの中に予感が膨らむ。
    
    「あぁぁ――――――!」
    
     絶頂した。
     潮でベッドシーツを汚し、ぐったりと倒れた凛は、オナニーが気持ち良かった余韻の中で動画に目を映し、ぼんやりと視聴する。
     動画の中の自分が仰向けにされ、ハンドカメラに撮られながら犯されている。
    「こんなことに……」
     気づいてすらいなかった。
     獣の喘ぎを上げながら、全身を痙攣させながら絶頂すると、動画の中の自分が少しのあいだ白眼までむいていた。しかも、肉棒が抜けた後のアソコから、黄金の液まで広がっていて、失神のせいか自覚のなかったお漏らしまで、こんな形で知ってしまった。
     途中で眠ってしまったような記憶はあった。
     その後、起きた後で行ったのが奉仕である。
    『んじゅぅ……』
     映像はフェラチオに進んでいた。
     確か、あの時の中年は、最後のあたりで「お礼」を要求してきたのだ。無理なお願いを聞いてまでセックスに応じた中年に対し、たっぷりと奉仕を行い、感謝の気持ちを表現する。中年はまるで凛にはそうするべき義務があるように言ってきて、あの時の思考が霞んでいた頭では、それらの主張全てが真っ当なものに聞こえていた。
     もしかしたら、お漏らしの後始末をする羽目になり、中年としてはその解消もしたかったのかもしれない。
     だから、動画の中の凛はしゃぶっている。
    『んじゅじゅっ、ずりゅぅ――』
     ベッドの上で直立不動を保つ中年に対し、正座をしながら相手の太ももに両手を置き、頭を前後させながら、生まれて初めて行うフェラチオで『感謝』を表現していた。
     記憶を掘り返せば、やがて口内射精が行われた後の、あの青臭い味も思い出せる。
     動画の中で、ちょうど頭がぴくっと動き、飲んでいる自分自身の様子がわかると、そろそろ終了が近づいていることを悟った。
     再生時間やシークバーを見ても、動画の残り時間は随分と短くなっている。
     最後まで視聴を終えた後、凛はあのエステ店のサイトにアクセスしていた。
    
    「私、本当に何考えて……」
    
     予約画面を開き、担当者の氏名欄にあの中年の名前を書く。
     今の凛にドリンクの効果などない。
     ただ純粋に、本当に、快楽に病みつきになってしまったせいで、指が予約に動こうとしてしまっているのだった。
     
    
    
    


     
     
     


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     日差しが暑い。
     日焼け対策を怠ることなく日焼け止めを塗り延ばし、帽子とサングラスで顔を誤魔化す。本当に顔を隠したければマスクでもすればいいが、これだけでも意外と気づかれる確率は低くなる。
     あとは私服選びの手間を省いて制服を着て、これでよしとばかりに外へ出る。
    
     アイドル、渋谷凛は高級エステサロンへ向かっていた。
    
     今日はスケジュールの空いたオフの日だが、同じ事務所の仲間とは日にちが合わず、一緒には遊べない。母の花屋は定休日なので手伝いも不要らしく、プロデューサーはプロデューサーで忙しい。
     残念ながら凛一人で休みを過ごすこととなり、何をしたものかと数日前から迷っていると、新規オープンとなる高級エステサロンはどうかと勧められたわけだった。オープン記念サービスで最初の一週間は本来価格の半額になるらしく、ホームページで見た店の外観や内装も気に入った。
     だったら、ここでリフレッシュしてみようと決め、凛は電車でエステサロンを訪れたのだ。
     看板のかかった洋館へ足を踏み入れ、大理石の床を歩いて受付へと、ネット予約を行っている旨を告げて手続きを済ませると、待合い用の座席に案内されて、専用のドリンクを渡された。
     店としては、事前に水分を摂って欲しいらしい。
     冷房の効いた屋内で、汗をかく機会があるのだろうかと、疑問ながらもドリンクを口にする。外でいくらか汗が出たので、補給した方が良いことは良いだろう。
     飲み干したが、スポーツドリンクに似た味に、わずかな苦味が混じっていて、思わず薬でも入っていたのだろうかと思ってしまう。
     担当者の準備があるので、しばらくお待ち下さいと言われて五分ほど、ようやく白い清潔な施術着の男が現れて、凛は軽く唖然としていた。
    「どうも、はじめまして。私が今回の担当となります」
     朗らかな中年だった。
     口周りには手入れの行き渡った髭をたくわえ、髪を短く整えた黒髪の中年は、ルックスが良いわけではないが清潔感に溢れている。
    「え、っと。あの、男性ですか?」
     気になるのはそこだった。
     オイルエステによって全身に手を触れるのだから、施術は女性がしてくれるだろうと自然と考えてしまっていた。思いがけず男性が現れたのは、凛にとってそれなりの驚きだった。
    「ああ、これは気がつかず、申し訳ありません! 当店にはまだ女性のエステティシャンがいないもので」
     大きな声で、大げさに謝ってこられると、むしろ凛の方がかしこまる。
    「あ、いえ。ちょっと気になっただけで……」
     男性の前で、専用の水着なりに着替えるのだろうか。
     軽く想像した途端、何故だか下腹部が引き締まった。
    (ん、あれ……?)
     体が熱い。
     少しずつ顔が火照ってきて、頭が微妙にくらついてくる。ものを考えるのが億劫で、何でも適当に済ませたいかのような気分になる。体調が悪いのとは違うこの感覚は何だろう。
    (酔ってる? わけ、ないか。お酒なんか渡されるわけないし)
     あのドリンクのせいだろうか、というところまでには思いが及ぶも、それ以上は思考が進まない。オイルエステを行うのだから、何かマッサージに関係のある効果なのだろうか。
     とにかく、体がうずうずする。
     痒いわけでも、くすぐったいわけでもないが、自分の体が気になって、触りたくてたまらない感じがした。
    「大丈夫ですか?」
    「あ、はい……」
    「当店では極上の快楽を約束します。男性相手では抵抗もあるかもしれませんが、私の施術を受けてみませんか? 後悔はさせませんよ?」
     実に自信に溢れている。
     それなら……。
    「じゃあ、お願いします……」
    「ありがとうございます。ではまず、スパの方にご案内致しますので、そちらでご入浴の後、専用の紙下着に着替えて頂き、マッサージルームで施術開始といった流れになっていきます」
     と、中年は流れを説明する。
    「更衣室の方へ案内しますので、こちらへどうぞ」
    「はい……」
     立ち上がると、くらっと頭の揺れる感覚がした。
     案内の背中へ着いていき、女子更衣室まで辿り着くと、中年はさらに説明を付け加える。
    「スパの方はカップルのお客様なども想定しており、男女共用ですので、レンタルの水着を着用の上でご入浴下さい」
     そんな注意を受け、凛は更衣室へ通される。
     熱にとろけた眼差しでぼんやりと脱衣を始め、凛は入浴へと向かっていった。
    
         *
    
    「さて、様子はどうかな?」
     中年は楽しみそうにモニターをチェックすると、ちょうど映像の中にはワイシャツの胸が映り込み、指でボタンを外し始めていた。
     隠しカメラを設置してあるのだ。
     ボックス棚に脱衣カゴを置き、目印となる札を貼っておくことで、凛をカメラの真正面に導き、思惑通りに服の脱げていく光景にありつくことができたというわけだ。
     パソコンの複数ウインドウで、さらにもう二カ所の、天井からの視点と真後ろからのカメラで映像を記録している。
    「それにしても、アイドルが来るとは思わなかったなぁ」
     予約の名前を見た時は、同姓同名の別人という可能性も考えだが、あの顔立ちや黒髪のヘアスタイルは間違いない。何度かライブ映像を見たことがあるのだが、その渋谷凛のようだった。
     ワイシャツのボタンが外れていくにつれ、チラチラと下着が覗けてみえる。カメラの存在も知らずに、何の疑問もない手つきでシャツが左右に開かれると、水色のブラジャーがあらわとなった。
     爽やかな色合いに、ダークブルーの糸を通した刺繍で花が咲き、別のウインドウに目を移せば、続けてスカートが脱げていく。尻を包むのも水色が現れると、さらに背中に両手が回り、ロングヘアーの下でブラジャーのホックを外し始める。
     よく見れば体毛が未処理らしい。
     ブラジャーを外そうとしている動作で、脇の隙間が見え隠れして、脇毛の存在が伺える。腕の動きによって、やがて数本ほどが手前にはみ出ていた。
     カップが取り去られたその下から、桃色の乳首を突起させた乳房が姿を現す。
    「あらあら、アイドルのオッパイ見ちゃったよ」
     薬が効いているのだろう。
     硬く尖った乳首からは、いかにも指で苛めて欲しそうな、淫気とでもいうべきものが漂っている。触れば簡単に声が出て、感じてしまうことだろう。
     そして、ショーツに指をかけ、周りには誰もいないから、凛は特に躊躇うはずもなしにずり下ろす。
     あとは白い水着に着替え、髪をまとめるだけだ。
     入浴時の水面に髪を浸さないため、ロングヘアーの凛はそれをダンゴのような形にまとめ上げ、ゴムに束ねて固定していた。その最中も胸はカメラに映ってくれたが、水着越しに乳首が浮き出て、突起が丸わかりになっているのだった。
     着替えを済ませた凛は、タオルを抱えてスパの中へと進んでいく。
     別のカメラに切り替えると、他に客のいない事実上の貸切の中で、観葉植物を並べたリゾート風の、爽やかなデザイン空間へと足を踏み入れる姿が映る。お湯を綺麗な水色に見せるため、底のタイルをそのような色にしてある温水プールは、健康やリラックス効果の成分が溶け込んでいる。
     もちろん、媚薬も……。
    「さて、気づくかな?」
     スパの中にはとある『備品』をカゴの中に置いている。なるべくわかりやすいところに、わざとらしくセットしておいたわけだが、果たして中身を覗くだろうか。
     何より、使うだろうか。
     あの受付時に飲ませたドリンクには、思考力を低下させ、さらには媚薬発情効果もある。
     凛はさっそくのようにプールへと近づいて、そこにある小さなカゴへと視線をやる。気になったようで覗きに行くが、それを見るなりぎょっとして固まる様子が伝わってきた。
     どんな顔をしていることか。
     うげっ、と引いているか。は? と、意味のわからないものを見る目でもしているか。できれば表情を伺いたいところだが、残念ながら観葉植物や壁に仕込んだカメラには、角度のせいで顔までは映らない。
     ただ、目が食らいついていることだけは確かで、中年にはそれが面白くてたまらない。
     もっとも、しばらくすると視線を引き離し、なるべく見ないようにしている様子であった。それでも内心では気になるようで、頭がカゴを向こうとする気配が感じられた。
     やがて足先をお湯につけ、プールに浸かり始めていた。そう深くはない、あぐらをかけば肩まで浸かる程度の深さに腰を下ろし、静かに座って過ごしている。
     数分ほど湯の心地に浸っていると、やがて思い出したようにチラチラと、カゴの方を気にし始めていた。
    
         *
    
     凛は全身を疼かせていた。
    「はぁっ、んっ、はぁ……なに、この気分……」
     触れてもいない乳首が硬く、肌中がムズムズと切ないような感覚に見舞われる。
    「どうしたんだろ……この感じ……」
     まるで催眠にでもかかったようにぼんやりと、無意識のうちに自らの乳房に手を伸ばしかけ、はっと気づいて引っ込める。
    「うそっ、私いま何をしようと……」
     自分がしようとしていたことに軽い戦慄を覚え、もう変なことは考えないようにと自制心を働かせる。そのはずなのに胸やアソコに触れたい気持ちが何故だか湧き、ここではまずいと自分に言い聞かせた。
     しかし、一分もしないうちに頭がぼーっと、またしても手を触れかけていた自分に気づいた時、引っ込める勢いで指を乳首に掠めてしまった。
    
    「ひうん!」
    
     とても珍妙な、人に聞かれたら恥ずかしい声が出て、凛は一人で赤らんでいく。
    「……なに、今の」
     凛も年頃の少女だ。そういうことには興味があり、オナニー経験の一度や二度はあるのだが、過去に行った自慰行為など比較にならないほどの快楽が乳房に走った。
     見知らぬ現象でも起こったような衝撃が凛にはあった。
     電流を流された余韻がまだ残っているように、乳房や乳首の内側がピリピリと痺れている。触れれば再び弾ける予感があり、触れたくて触れたくてたまらずに、手が乳房を目指そうとしてしまう。
     駄目、いけない。
     と、そのたびに自制心が働くも、律するたびに数秒のうちに気が緩み、手は動いてしまうのだ。
     どうしてここまで快感なのか、触りたくなるのか、理解できなかった。
     いや、理解できないからこそ、そこにそれらしい理由を作り上げてしまう自分がいた。
    「まさか……」
     凛は半ば青ざめていた。
    
     私って、変態なんじゃ……。
    
     それが凛の抱いた恐れだ。
     家で行うオナニーなど可愛いほどの快感は、きっと外で胸を触ったからだ。オープンから日が浅いからか、凛以外には客がいない。人目に触れる心配こそないとはいえ、本当は誰かに見られてもおかしくない場所で乳首に触れた。
     薬の成分など知らない凛だ。
     自分には露出狂の素質でもあったのではないかと、本気の悩みが胸に湧き、もう決して触れまいと心を固めかけていた。
    「うぅ……」
     だが、切ない。
     そうすれば気持ちいいことがわかっていて、そうするわけにはいかない感覚がもどかしい。
    「どうしよう。も、もう一回だけ……」
     そうだ。
     あと一回、本当に一回だけ触ったら、それで終わりにしておこう。
     押さえきれないあまりに、無理なく我慢よりも多少は発散した方が、結果的にはマシなはずだと、自分を甘やかす考え方が浮かび上がる。
    
     そして、どうせ一回なのなら、それはアソコでもいいのでは?
    
     そんな思考が浮かんで、ありえないとばかりに頭を振る。
    「ダメダメ! まずいから、絶対……」
     もし、アソコなんて触ってしまったら、戻ってこられない予感がする。後戻りできない領域へと足を踏み入れ、もれなく何かが開花してしまう恐るべき予感である。しかし、怖ければこそ、逆に好奇心が膨らんで、手を伸ばしてしまいそうな自分がいた。
     まずい、絶対にまずい。
     危機感は湧いているのに、震えた腕が下へと動き、まるで勝手な意志を持つように自制心に逆らっている。凛の心は必死に呼びかけ、右腕を止めようとしているが、それ以上の本当は触れたい気持ちに動かされ、ただ接近速度を抑えることしかできなかった。
     太ももの隙間に手が入り、そして――
    
    「あぁぁ――!」
    
     凛は全身をビクっとさせた。
    「な、なに……やば……」
     もう一回、もう一回だけ。
    「んんぅ!」
     凄い、こんなに?
     じゃあ、もう一回……これで本当に最後……。
    「あっ! やっぱり、良すぎるっ」
     触れては引っ込め、触れては引っ込め、これで最後、次こそ最後と、結局は繰り返し繰り返し触り続けて、しきりに内股を震わせる。
    「もう我慢が……」
     とうとう凛はオナニーを始めていた。
     公共のお湯の中だとわかっていながら、水着をずらして指を入れ、膣への出し入れを始めてしまう。
    「あぁぁ……! すごっ、すごいぃ……なんでぇ……」
     簡単に取り憑かれた。
     指がピストンにのめり込み、オナニーの世界に沈んで脱出できない。頭の中には甘い痺れが充満して、とろけた目つきで首を反らして快感を貪った。
     そのうちに思い出すのが、あのカゴの中身である。
    「あっ、んふぁ……あ、あれ……使ったら……」
     凛はふと想像してしまう。
     誰かの忘れ物なのか、何なのか。どうして置いてあるかはわからないが、あのカゴの中身はディルドやローターなのだ。その手の玩具があの中に揃っている。
     使ってみたい。
     好奇心と欲望に駆られ、凛は湯から上がってカゴの中身を覗き込む。
    「いや、まずいって。人のだろうし」
     考えてもみれば、アソコに触れるような道具を使い回すのは不衛生ではないだろうか。人が使ったかもしれないバイブなど、他人の歯ブラシで歯を磨くようなものではないか。
     とは、思うのに。
     これなら、布の上から当てられると、凛はピンクローターを手にしてしまう。
     スイッチを入れ、どこか恐る恐るとアソコに当てた。
    「んんんんんん!」
     刺激の強さに肩が縮んで身体も小さく丸まり、ピクピクと震え続ける。スイッチを切り、ローターの振動が止まったことで、初めて凛の震えも止まった。
    「こんなにいいのって、やっぱりスリルが……」
     凛はふと出入り口に目を向ける。
     本当は誰かに見られてしまってもおかしくない、こんな場所でオナニーをすることが気持ちいいのだと、少なくとも本人は思い込んでいる。
    「待って、それは余計に取り返しが……」
     自分自身の発想に、凛は自分で引いていた。
     いくらなんでもありえない。
     しかし、常識的な判断を下そうとする思考の裏には、まるで悪魔の囁きのようにいくつもの思いが浮かぶ。
     どうせ人は来ない、バレる相手なんていない。
     今日だけだ。
     生涯一度きりのスリルを味わったら、明日からただの常識人に戻ればいい。
     そんな考えが浮かべば浮かぶほど、理性的な思考は薄れていく。いつしかカゴの中身に手を伸ばし、数珠のように玉を繋げたスティックを──アナルビーズを握り締め、フラフラと出入り口へ向かっていく。
    「まあ、誰にも知られることなんてないし……」
     だから、大丈夫。
     玩具だって、使い終わった後は何食わぬ顔でカゴに戻して、全てを忘れてエステを受ければいい。オイルエステが終わったら、リフレッシュした気持ちで家に帰って、明日からはまたいつも通りにアイドルとしてやっていく。
    「今回だけ、今回だけだから……」
     凛は出入り口の前で仰向けとなった。
     緊張にごくりと息を飲み、水着をずらして膣にローターを挿入する。尻の部分も布を丸めて、Tバックのようにずらした上、肛門にはアナルビーズを入れるのだった。
    「あっ、あぅぅぅ……!」
     凛は全身を震わせた。
     ローターのスイッチを入れた途端に電流がほとばしり、腰からつま先にかけてがピクピクと反応する。
     もし、目の前から人が出てきたら……。
     見つかれば取り返しがつかないことをしているスリルは、想像以上に快楽をかき立てる。非常識でありえないことをしている興奮に酔いしれて、玩具には飽きたらずクリトリスに指までやって、過去経験のない激しいオナニーに溺れていた。
    「あっ、あっ、あっ、やばっ、イク……!」
     すぐに絶頂の予感を迎え、その時だった。
    
     がらっ、
    
     と、突如として目の前の戸が開き、凛は瞬く間に青ざめていた。
    「うそ……」
     呆然とした。
     心まで石のように固まって、表情さえも目を見開いた驚愕のままに動かなくなり、しばし放心しているのだった。
     青白い顔で、絶望を匂わせながら──。
    
    「い、いえ! 違うんです! これは! これはその──」
    
     思い出したように言い訳を探し、必死に口をパクパクとさせる凛だが、要領を得ない言葉が並ぶばかりで、凛自身さえ何を言っているかがわからない。
     ただ、脚を大胆に開き、ローターとアナルビーズを入れた状態での言い訳など、どう足掻いても説得力などあるはずがない。
    「準備ができたから、呼びに来たわけですが……」
     その男は施術担当の中年だった。
    「あの……私……その……」
     声が、全身が震えた。
     言い逃れできない。
    「なにをしていたのかな」
     当然の疑問を投げかけられ、凛は何も答えられなかった。
    「そのっ、これは、その……」
     ただ口をもごもごさせるばかりで、言い訳さえ思いつかず、それどころか衝撃のあまりにポーズを元に戻すことさえ忘れていた。M字開脚の股を無自覚に晒し続けて、恐るべき恥をかいているのだった。
    
         *
    
     やってしまった……。
     どころの問題ではなく、もはや人権を失ってしまったようなものである。中年からしてみれば、ドアを開けたらM字開脚のオナニー姿があった衝撃は、一体どれほどのものになるだろう。
    「死にたい……」
     あれから、ひとまず玩具を元に戻して、更衣室へと入った凛は、死にたいながらに紙下着へと着替えていた。
    
     ――え、えーっと。とにかく、準備は出来ていますから、紙下着への着替えをお願いします。
    
     中年はかなり困惑しながらも、努めて平静を装いながら、さも何もおかしなものは見なかったような振る舞いだった。本当は何かを言いたくてたまらない感じがひしひしと伝わって、凛にはそれが痛くてたまらなかったが、直接触れられるよりはずっと良かった。
     きっと、親切でそうしてくれたのだ。
     今はその親切に乗っておこう。
    「忘れよう。忘れて、なかったことにしよう」
     それしかない。
     何事もなかったようにエステを受け、何事もなかったようにサービス終了と共に店を出る。全てを忘れて家に帰って、明日からいつも通りにアイドルの仕事をこなす。心の中から排除して、とにかくなかったこととして扱うのだ。
     もう完全にそのつもりで、思い出すたびに頭の中から追い出しながら、凛はバスタオルを身体に巻いていた。
     エステルームに入り、施術用のベッドに上がる。
     それにしても、アソコが切ない。
     先ほどは絶頂直後で、もう少しでイクところで中年が顔を出したのだ。おかげでオナニーを中断している凛の身体は、忘れようとする考えとは裏腹に、切ない感覚を満たしたくて疼いてしまっている。
    「では渋谷凛さん」
     中年は何事もないように振る舞っていた。
    「今回はオイルエステということで、受付の際にも飲んだかと思いますが、こちらの特製のドリンクをもう一度お飲み下さい」
     再びコップを手渡され、凛はそれを受け取った。
     思えば、これを飲んだ後から身体が熱くなり、頭もどことなくクラクラとしているような気がするが、気のせいだろうか。
     いや、まさかだ。
     それは考えすぎだろうと、凛は薄味のドリンクを飲み干した。
    「では開始していきますので、まずはうつ伏せでお願いします」
     と、言われて凛は横になる。
    「タオルの方は外させて頂きますね」
     凛の身体からバスタオルが取り外され、紙下着だけの素肌があらわとなる。剥き出しに近い背中と、ショーツの尻が見えていることに、若干の羞恥を覚えるが、しかし先ほどの方がよっぽどだ。
     あんなオナニーを見られた後で、下着姿が恥ずかしいなど──いや、それでも多少の羞恥心は湧いてくる。
     エステは末端から始まった。
     オイルをたっぷりと手に乗せて、ぬるりとしたものがまずは足から、指の一本ずつやその隙間にかけて丁寧に塗り込まれる。足裏を指圧されるくすぐったさ、ふくらはぎを揉まれる気持ち良さに浸っていると、両脚の膝から下にはまんべんなくオイルがまぶされ、きっと光沢を帯びているはずだった。
     両手に移り、指から手の平にかけてが丁寧に揉み困れ、手首から肘へと向かっていく。オイルをその都度足しながら、じっくりと皮膚に浸透させていく中年の手つきは、実に心地良くうっとりとするものだ。
     手の平の温度も、ちょうど良く温まっていて悪くない。
     手つきに浸っているうちに、凛の目が安らかに細まって、このまま眠ってしまいそうにさえなっていた。
    (うっ、気持ち良すぎる……)
     肘から肩までオイルがまぶされ、両腕が済めば脚に戻って、膝から尻の近くまで手が迫る。今にも尻を触られそうな予感に強張るも、際どいところまで近づくだけで、なかなかはっきりとは揉んでこない。
     尻を通り越して、背中にオイルを広げ始めてきた時には、期待を裏切られたような思いがしてしまう。
    (私、何考えて……)
     お尻を触られたいと、一瞬でも思ってしまった。これでは、さっきまでの変態な自分と変わらない。もうあんな風にはならないと、決めたはずではないか。
    (駄目、変なこと考えない……変なことは……)
     凛は気を引き締めようとする。
    「っ!」
     しかし、その時になって尻に手が来てぎょっとした。
    「はい、失礼します」
     中年は紙ショーツの尻の部分を指で丸めて、まるでTバックのように割れ目に食い込ませてしまう。そのまま尻にもオイルが垂らされ、塗り伸ばされ、凛は全身をゾクゾクさせながら尻揉みの手つきを受け止めていた。
    (あぁ、いぃ……どうしよう……)
     いとも簡単に思考が溶け崩れ、凛は枕の下でヨダレさえ垂らしてしまう。
     興奮していた。
     意識の全てがお尻へいき、皮膚に神経が集中していく。触覚が中年の手を読み取り、頭の中にはイメージが如実に浮かぶ。指の食い込みによって、自分の尻がどんな風に変形して、どんな風に捏ねられているか。鮮明な映像が脳裏に流れた。
    「仰向けになって頂けますか?」
    「……はい」
     その瞬間、凛は心のどこかで胸を揉まれることを想像して、知らず知らずのうちに乳首を突起させていく。体が期待を疼かせて、早く触って欲しい見えない信号を放ってしまう。
     だが、中年がオイルを刷り込むのは腹や肩ばかりだ。
    「ところで」
     ふと、中年は手を止める。
    「先ほどは何をしていました?」
    「え……」
     凛は呆然として固まった。
     てっきり、なかったこととして扱って、触れずにいてくれるものとばかり思っていた事柄に、唐突に触れられた衝撃に目を見開く。
    「あ、あれはその……」
     自分でも驚くほど、声が震えている。
    「オナニー、してたよね?」
    「……」
     何も答えることができずに、凛は瞳を逸らしていた。
    「ローター入れて、お尻の穴にもビーズを挿して、やってましたよねぇ? しかも、隠れてするのではなくて、あんなに見つかりやすい場所で、しっかり股まで広げながら」
     中年は凛の恥を声に出し、ニヤニヤと辱める。
    「どうして、あんな場所であんな真似を?」
     犯罪の取り調べを受けているような、極度の緊張によって、これまでほぐされてきた筋肉が一気に固まる。緩んでいたものの全てが強張り、尋問を受けている気持ちになる。
    「それは……」
     至極真っ当な疑問を投げかけられると、自分がいかにおかしなことをしていたかが突きつけられる。ただでさえ、自分でも変態なことをしてしまったと思っているのに、言葉にされると、異常なことをしてしまった実感がより強まる。
    「どうしてオナニーしていたんでしょうねぇ? 置いてあったものを勝手に使って、ねぇ?」
     中年の言葉が凛を追い詰める。
     冷静で肝の据わった人間なら、自分のことを棚に上げてでも、どうしてあんなアダルトアイテムが置かれていたのかという、そもそもの疑問を提示できただろう。
     しかし、オナニー現場を直接押さえられ、そのことについてはっきりと追求されている身で、とてもでないが言い返すような余裕も度胸もない。
    「あなたは変態ですか?」
     かなり、ストレートだった。
    「…………」
     そして、あんな場面を見られた以上、言い訳のできない凛は、返す言葉もなく口を噤んでしまっていた。
    「どうして何も答えないんですか? ああ、答えられるわけありませんね。だって、言い逃れなんてできないわけですから、認めるしかないわけですよね?」
     心に少しずつ縄を巻かれて、だんだんと締め付けられる苦しさに、赤らむ凛の顔には苦悶が浮かぶ。
    「認めてはどうでしょう? 自分は変態だと」
    「私は……」
     終わりだ。
     認めてしまったら、何かが終わるような気がして、とてもでないが認められない。
    「ほら」
    (駄目、ちがう……私は……私は……)
     認めることを心が拒む。
    「ではブラジャーを外して頂けますか?」
    「え……」
    「大丈夫です。ちゃんとエステの一貫ですから」
     中年は紙ブラジャーをずらしにかかる。
    「えっ、あの……」
     何故だか、凛は無抵抗だった。どうして拒もうとしないのか、自分でもわからないうちにずり上げられ、乳房がぷるっと顔を出し、そのまま脱がされていくのだった。
    (私、どうして……)
     されるがままに脱がされてしまったことで、凛はうっすらと自覚した。
     期待、してしまっている。
     中年に胸を触られ、たっぷりとオイルを塗られることに期待を抱き、乳首が切なく突起している。性的な興奮を自覚して、こんな自分には口答えをする権利などないような気持ちになってしまう。
     瓶を片手に、胸の中央にオイルが垂らされ、ひんやりとした感触が円状に広がっていく。そして、中年の両手が迫り、さも当然のように塗り伸ばし始めた時、甘い痺れが胸に走った。
    「あっ、んぅ……」
     手の平でオイルを塗られ、気持ち良くなった。
    「どうしました?」
    「い、いえ……」
    「では続けますよ?」
    「んっ、んぁ、あっ、やぁ……」
     皮膚の表面にたっぷりと塗り込んで、染み込んだところにさらに垂らして塗り伸ばす。左右の乳房が両の手の平に包み込まれて、指の強弱似よって揉み込まれる。
    「いいオッパイですね?」
     感想を言われ、凛は一気に赤らんだ。
    「それに、アソコにはオイルがつかないようにしているのに、何故だか濡れていらっしゃるようで」
    「そ、そんな……言わないで欲しいです……」
     自分でも自覚していなかったアソコの状態を指摘され、初めて愛液の感触を悟った凛は、この場から消えたいような気持ちに駆られる。
    「変態なのに?」
    「…………」
     変態であることを突きつけられると、凛は何も言えなくなる。
    「いいんですよ? 認めてごらんなさい?」
     乳房にさらにオイルが足され、塗り伸ばされる。
    「だって、そう言われても……」
    「認めれば、真っ当なエステをするより、よっぽど気持ち良くして差し上げますよ?」
     まず、欲求が膨らみ、生唾を飲んだ。
     真っ当ではないエステとはどんなものか、この流れで想像できない凛ではないが、身の危険よりも欲求の方が刺激され、心のどこかで望んでしまう自分自身にぞっとする。
    (私、まさかここで……そんな願望……。嘘、だよね……)
    「どうですか? 自分を変態と認めますか?」
     中年は凛のアソコに指を置く。
    「んっ」
     それだけで、アソコから全身へと刺激が行き渡った。
     ただ置かれているだけ、愛撫などされてもいないのに、じんじんと染み渡る快感から愛液が滲み出ている。紙ショーツが水分を吸い上げて、たっぷりと湿った結果、オイルなど関係無しに指とのあいだに糸が引く。
    「ほら、どうするんですか?」
    「んぅ……」
     刺激は淡い。
     中年は指をかすかに、辛うじての加減で押し込んだり、紙ショーツの表面を撫でているだけで、決定的な愛撫はしてこない。ただ指を置いているだけに近い、見た目にはあまり動いて見えない指遣いでの感覚に、凛は十分に感じていた。
    (こ、このままじゃ……)
    「さあ、どうします?」
     指先が少しだけ活発に、さらに乳首にはもう片方の手が及び、乳輪をなぞるくすぐったい刺激が施される。
    「んっ、んふぅ……ふぁ……」
     二点からの刺激に、凛は悶えを強めていた。
    「さあ」
    「んっ、あっ……」
    「認めますか? 認めませんか?」
    「あっ、うぅ……んぅ……」
     やがて、予感が迫っていた。
     先ほどのオナニーで、中年の登場さえなければ達していたであろう体は、今の今までもどかしかったものを解放し、弾けさせようとしていた。
     イケそう。
     絶頂への期待を、抱いてしまっていた。
    (どうしよ――あっ、も、もうすぐ……!)
     予感がせり上がる。
     アソコで膨らむ見えない何かから、じわじわとした電流が骨盤を通り抜け、背骨に沿って脳髄にまで迫った時、このまま弾けてしまうのだと、イクのだと思っていた。
     だというのに、その時になってだ。
    
     ピタッ、
    
     と、指が停止していた。
    「え……」
    「どうします?」
     中年は実にいやらしく、意地悪な笑みを浮かべて凛の顔を覗き込んでいた。
    (もしかして、認めないとイカせてくれない?)
    「変態と、認めますか?」
    「そんなこと……」
     なおも躊躇う凛のアソコへと、ほどなくして刺激が再開される。その喜びを感じた凛は、いとも簡単に浸ってしまい、今度こそイってしまおうと快楽に集中する。
    
     ピタッ、
    
     やはり、イカせてもらえずに、指は停止するのだった。
    (駄目なの? 認めないと、このままじゃ……)
     いつの間にか、凛の中でそれは危機感に変わっていた。
     認めなければ、切なくてもどかしい感覚に囚われたまま、悶々としたものを抱えて帰ることになってしまう。それは切実な恐れとなって、どうにかしてイキたい思いが膨らみ、とうとう凛は観念していた。
    「……あの、認めます」
     そうするしかないように、凛はそう口にしていた。
    「おや? 何を認めるのですか?」
     中年は意地悪だった。
     わかっているくせに、はっきりとした言葉で認めなければ、きっとイカせてくれないのだ。恥を忍んでもイカせてもらうか、意地を張って我慢するか、凛は心の中で両者を天秤にかけていたが、答えなど決まっていた。ずっとずっと、イキたくてたまらなくなっていた肉体の、溜まりに溜まった欲求が、とっくの前から天秤を傾けていた。
    
    「……へ、変態です。私はあんな場所でオナニーした変態です」
    
     凛にとって、たまらなく屈辱的な白状だ。
    「おや、それで?」
     しかし、認めたというのに、中年はまだ続きを促してくる。
    「だ、だからその……い、イカせて……下さい……」
     声が震えていた。
     心も、羞恥と屈辱感に震えていたが、こんなことを言わされることへの歓喜も確かにあり、自分がとんでもないマゾヒストであることを否応なしに自覚させられ、凛はその恥じらいに目を瞑った。
    「なら、脱いで頂けますか?」
    「……はい」
     自らショーツを脱ぐようにとまで言われた凛は、快楽と絶頂を求めて脱ぎ始める。一時的に身体を起こし、体育座りに近い姿勢でショーツを腰から移動させ、そして脱ぎきり手放した。
     いや、そればかりではない。
     イキたい思いに憑かれた凛は、仰向けの姿勢に戻るなり、脚をM字に恥部まで晒し、ポーズでもって懇願していた。
    「イカせて下さい……お願いします……」
     自分で取ったポーズながらも、アソコを丸出しに、きっと肛門まで見えている状態に恥じらいが込み上げる。
     だが、自然とそうしていた。
     快感を求めてやまないせいか、自分で疑問に思う暇もなく、淫らな姿を披露して、オスの心を刺激しようと努めてしまっていた。
    「ではお客様のリクエストに応えて、イカせて差し上げましょう」
    「お願いします……クリトリスも……」
    「クリトリスですね? では」
     さっそく、指が置かれた。
    「ひうっ」
     その刺激に珍妙な声が出た。
    「ん? 面白い声ですね」
    (やっ、やばっ、恥ずかし……!)
     クリトリスを触られて、愛撫までされながら、おかしな声が出たというずれた理由で羞恥心が膨らんでいく。
    「毛が濃いですねぇ? 脇もそうですが、剃ってませんね?」
    「それはたまたま……あっ、んぅ……」
     腰が動いて、反射的に刺激から逃げてしまう。
    「はあ、いつもは剃ってるわけで?」
     中年の指はそんな凛のクリトリスを追ってくる。
    「いつもというか、そろそろ半袖を着ることも増えるから……蒸れやすくもなるし……」
     脇毛も含め、剃る気はあるらしい。
    「なるほど、たまたま、まだ剃ってなかったと」
     中年は陰毛についての言葉を並べつつ、もう一方の手をアソコに近づける。
    「んっ!」
     ワレメに指が着た瞬間、凛はビクっと固まった。
     ……来る。
     大きな快感が、今に襲ってくる。
     その予感に緊張して、指の動き出す瞬間はいつだろうかと身構えていると、数秒後にはワレメを上下になぞるタッチが始まって、腰がもぞもぞと悶え始めた。
    「あっ、んぅぅ……!」
     腰が弾み浮かんでいた。
     クリトリスと、その下と、二点へのタッチは激しい快楽となり、電流が流れるような快感に脚が震えた。
    「おや、感度がよろしいようで」
     少しのあいだ上下に動いていた指は、ほどなくして膣口の中へと入り込む。愛液の滑りによって、あっさりと潜り込んだ指先は、慣れた手つきでピストンを行って、凛に激しい刺激を与えた。
    「あっ! あぁぁ!」
     激しく喘いだ。
    「あぁぁぁ! あ! あああ!」
     それは絶叫ですらある。
    「ああああ! ああああ!」
     髪を激しく振り乱し、腰が上下に弾むあまりにベッドが軋む。脚がビクビクと震え、足首もしきりに動く。
    「あぁぁぁぁぁぁ!」
     人が聞いたら、拷問の悲鳴とでも思うかもしれない。
    「おあ! あん! ああん!」
     獣じみてさえいる喘ぎは、明らかに喉に負担をかけながら、唾液の飛沫を吐き出しながら放たれる。
    
    「あぁぁぁぁぁぁぁ──!」
    
     ビクビクと身体を震わせながら、あまりにも簡単に絶頂していた。
     体操のブリッジのように背中を反らし、白目までむきながら、潮吹きで飛び散る愛液がシーツを汚す。白い施術着にも染み込んで、ぐったりと果てた凛は、そのまま肩で息をしながらだらしなくヨダレを垂らす。
    「盛大にイキましたねぇ? 水分出たでしょう? もう一度ドリンクを出しますから、水分を補給して下さい」
    「は、はぃぃ……」
     すぐには起きる気力が湧かなかった。
     一度部屋を出た中年が、ドリンクを片手に戻る頃には、どうにか身体を起こす程度の元気は回復して、コップを受け取りドリンクを飲み干した。
     また、同じ味だ。
    「では本来のエステでおくつろぎ頂き、それで終了としましょう」
     身体へのタッチが再開される。
     そこにはもう、凛を感じさせようとする性的な意思など宿っていなかったが、二の腕を揉む手つきから、それでも普通ではない快感が走っている。
    (まだ、もっと……)
     凛は物足りなさを感じていた。
     もっと、もっと、たくさん感じてたくさんイキたい。
     性欲に駆られる凛の頭は、ますますぼんやりとした霞をかけ、より思考力も低下しているのだった。
    
    
    


     
     
     


  • 終 渋谷凜の全裸健康診断【後編】

    前の話

    
    
    
     内科検診が始まっていた。
     凛の胸には聴診器が当たっていて、肥満男は心音を聴き取っている。それから背中を向ける指示が出て、髪をどかして背中にも聴診を受けたあと、前に向き直っては始まるのが触診だった。
    「では触診を」
     もう、その言葉を聞いただけでもドキリとした期待が湧き、両手が胸に近づく時には、生唾さえ飲んで楽しみに迎え入れ、凛は甘んじて胸を揉まれ始めていた。
    (あぁ……いっ、いい……でも…………)
     自分が変態であることへの思いに、やはり凛は苛まれる。
     ごつごつとした手の平から、肥満男の手汗と温度が伝わって来る。触診として触っていたのは最初だけで、少しばかり調べたあとは、ただ好きなように揉んでいるのが丸わかりで、凛はそれを黙認していた。
     ただの検査、診察の一環。
     心のどこかでは自分にそう言い聞かせ、何もおかしいことはされていない、そういうつもりになりきって、凛はどうにか都合良く楽しんでいる。
    「どうかな?」
    「き、いえ……。その、なんともないです」
     一瞬、気持ちいいと答えそうになり、凛はすぐさま体調の話に切り替える。
    「それはそれは」
     肥満男の指遣いが乳首に集中し始めた。
    「んぅ……」
    「どうしたのかな?」
    「いえ、その……」
    「ほら、言ってもいいんだよ? 体の正常な反応なら問題ないし、それにこっちも誤診しかねないから、情報は正確だと助かるんだよね」
     両手でつまんだ乳首はぐにぐにと、くにくにと、指圧による強弱で揉み込まれ、さらには指先で上下左右に転がされ、乳輪もぐるぐるとなぞられる。触られれば触られるほど、乳首に血流は集中して、敏感に突起していた。
    「あっ、あふ……んっ、んあっ、あふぁ…………」
     甘い痺れが弾け続けて、凛は肩をしきりにくねらせる。
    「あらら、感じちゃってる?」
    「それは……その……んぅ…………」
    「感じてるんでしょ?」
    「…………はい」
    「ははははっ、感じてるか。そうかそうか、気持ちいいんだねぇ?」
     肥満男は実ににこやかになっていた。その手で凛のことを感じさせ、しかも快楽を白状させてやったことの達成感が、彼の顔にはありありと浮かび上がっていた。
    「では立ってみようか?」
     言われ、凛は立つ。
     すぐさま肥満男は前屈みに、凛の下腹部に顔を迫らせ、陰毛を観察してきた。両手で腰を掴んでジロジロと、穴の空くほどじっと見つめて、そんな至近距離からの視姦に凛はアソコを疼かせる。
    (すごい見てる……)
     先ほど、愛液で毛が少し濡れていると言われた。水分で固まって、トゲのような形になった部分が、いくらかあるというのだろうか。
    「ちょっと失礼?」
    「――んっ!」
     凛は肩をビクっと弾ませた。
     急にアソコのワレメに指を当てられ、たったそれだけで全身に電気が走った凛は、思わぬ快感に目を丸め、瞳を動揺させていた。
    (嘘、私……こんなに期待して……)
    「へへへっ、すごーく糸が引くね?」
     触れた指が遠のくと共に、肥満男はそんなことを言ってきて、きっとそれだけ指とアソコのあいだに糸は伸びているのだろう。
     そんな愛液を塗り広げていくかのように、ぬりぬりと、肥満男は凛のアソコを触り始めた。
    「あぁ……んっ、んぁ…………」
     快感に脚がモゾモゾと、膝もくねくねと、体が快楽に反応して動いてしまう。
    「触れば触るほど毛が水分を吸い込むねぇ?」
     肥満男の言うように、蜜が溢れれば溢れるほど、水気は陰毛に広がっていく。下腹部に広く及んだ剛毛に愛液を塗り伸ばし、肥満男の指によってまんべんなく濡れきっていた。
    「指、入れて欲しい?」
    「…………」
     凛は答えない。
     自分から言えるわけがない。自ら望むなどという一種の変態宣言など、おいそれとできることではない。
     やるなら黙ってやってくれた方が、凛にとってはありがたいのだ。
    「どうなのかな? 検査、して欲しいのかな?」
     それをしきりに尋ねてきて、肥満男は凛自身に望みを言わせようとしてきている。
    「……」
     ……言えない。
    「答えて欲しいな」
    「す、すみません。検査はして欲しいですけど……」
    「指は入れない方がいい?」
    「その……」
     一体、なんと言ったら願望通りに指を入れてもらえるのか、頭の中ではそんな画策さえ始めつつある凛は、また改めて自分の変態性を思って俯く。
    「あっ、くぁぁ…………」
     ワレメを撫でる指先の活発さで、刺激によって腰が震えた。
    「うーん。では今の状態を聞こう。医学的にいって正確な情報が必要なので答えて下さい。あなたは今、感じていますか?」
    「言わせるなんて……感じて、ますけど……んぅっ、んぅ…………」
    「では気持ちいいと」
    「は、はいぃぃ…………んくぅ…………」
    「わかりました。ところで、指を挿入するとより正確に検査できますが、あなたは指の挿入を望みますか? 望みませんか?」
    「それは…………」
     一体どうしたらいいのか。
     感じながら、甘い声を吐きながら、凛は悩んだ。
    「さあ、どうする?」
     ニヤニヤとした肥満男の目論見はわかっている。凛自身に指を欲しがる台詞を言わせ、それで喜ぼうという魂胆だ。
     乗っても、いいのかな……。
     と、自分の中にあるマゾヒズムが、魂胆に乗ろうという考えを浮かべるものの、理性ではそれを否定する。
     違う、自分はあくまで検査のために服を脱ぎ、セクハラな医師のやり方にも従っているのだと、そんなことを言い聞かせる。
     どうする、どうする、どうしたら――。
     悩みに悩み、答えを出せない凛に向け、肥満男の言葉は繰り返される。
    「どうする?」
     どうしよう。
     指、指、指……入れて欲しい。
     検査と称して指を入れ、きちんと触診をするのは少しだけで、あとはただ遊ぶためだけの指の出し入れとなっていく。だけど、それも診察かもしれないのだから、下手な抗議ができずに何も言えず、じっと押し黙ってばかりとなる。
     そう、そんな自分を想像して、凛はさらに興奮する。
    「検査のため、ですよね」
     凛は確認の言葉を出した。
    「もちろん」
    「検査のためなら、指を入れても、今までを思うと今更ですし」
     遠回しな言い方だけで済ませようとした。
    「では入れて欲しいということかな?」
     だというのに、肥満男はあくまで正しく確認しようとしてくるのだ。
     もう、こうなったら……。
    「わ、わかりました。入れて……欲しいです……検査のために…………」
     最後に一言を付け加え、凛は条件付きで言葉で認めた。
     あくまでも検査のために、正しい診察結果を求めて、指を入れて欲しいのだ。決して悪戯されたい気持ちからではないことを、表向きには伝えようとしているのだった。
    「もっと正直になったら?」
    「正直って、だって検査……」
    「もうちょっとこのまま調べてみるかなぁ」
    「んっ、んぅ……んぅぅ…………んっ、んっ、んぁ…………」
     一向に指を挿入することはなく、延々と表面だけを弄り回す。陰毛に染み込む愛液の量は増え、時間が経てば立つほどヌルヌルになりながら、しかしこれ以上の刺激はない。もっと欲しいところを、ここまでしかしてもらえない切なさに、凛は唇を噛み締めていた、
     このまま、入れてもらえなかったら……。
    「……わかった。わかりました。指、入れて欲しいです」
     観念したように凛は認める。
    「へえ?」
     認めたのに、肥満男は入れようとしてこない。
    「あの……」
    「君はせっかくマゾなんだし、入れて欲しいんだったら、もっといいお願いの仕方をしてみて欲しいなぁ」
    「なんですかそれ。いいから早く――」
    「全裸土下座」
    「は……」
     何を言っているのか。
     いくらなんでも、するわけがない。
     元々、こうして全裸になることさえ、新型ウイルスという背景が生み出した極めて特殊な状況だ。だからこそ、おかしな性癖の芽生えを凛は自覚することになったのだが、本当にそこまでして辱めを受けたいものだろうか。
     さすがに……。
     と、凛は思う。
    「指、あげないよ?」
    「そんな、ちょっと――」
     何かを言いかけ、凛は即座に口をつぐむ。
     指を入れてもらえないことが、まるでそんなに困ることのように言うなど、我ながらどうかしている。
     そこまで変態にはなれない。
     全裸土下座などという、とても正気とは思えない案に乗り、尊厳も何もかも投げ打つなど、できるはずがない。
    「ふむ、じゃあ少し待っててね」
     肥満男は急に凛への愛撫を――いや、触診をやめ、軽く手を拭くなり検査室の外へと出てしまう。こんな裸で置いていかれて、凛は脱衣カゴに畳んだ自分の衣服に目を向けるが、まだ途中なのに着るわけにもいかず、大人しく待っていた。
     やがて、肥満男は戻ってきた。
    
     ――とある一人の男を引き連れて。
    
     凛は戦慄していた。
     いや、まさか、どうして――。
    
    「やあ凛ちゃん」
    
     肥満男が連れてきたその男は、いかにも上等なスーツを着て、オールバックをワックスで固めたガタイの良いハンサムな男だ。
     だが、見た目や体格など問題ではない。
     彼は、彼は……。
    「僕も是非、見てみたいな。君の全裸土下座」
    「そ、そんな! 何を!」
    「いいだろう? 僕の趣味に付き合っておくれよ」
     ハンサム男はニヤっと笑い、唇の隙間から真っ白な歯を輝かせる。
    
     ……枕営業の相手なのだ。
    
     凛が処女ではない理由。
     初めて全裸健康診断を受けた時、肥満男は凛に処女膜がないことを残念がっていたが、その理由である男を、一体いつどこでどうやって突き止めたのか。凛にはさっぱり想像がつかない。
    「彼の趣味で毛をびっしりにしているそうだねぇ?」
     肥満男は言ってくる。
    「彼と関係を結ぶ前は、きちんと剃ったりしていたのかな? 脱毛だって考えてたりして。でも、彼の交渉力に乗せられて体を許すようになった後は、剃ってはいけないと言われているんだよね?」
    「そう、ですけど……」
    「さぁて、そんな彼の命令だよ?」
     既に勝利を掴んだような、勝ち誇った笑みを肥満男は浮かべていた。
    「やっ、でも……土下座って……」
    「いいだろう? 僕のお願いだ」
     ハンサム男までもが凛のことを追い詰める。
     こうなっては後がなかった。
     一糸纏わぬ姿をして、男の方は服を着ている。こんな身分差でもつけられたような、衣服の有無によって格差のついた状態では、精神的にも男の方が優位である。医師としての立場を持つ肥満男と、凛と肉体関係のあるハンサム男とあっては、どんどん反発の心が萎えていく。
     強い者には意見が言えないかのように、凛の心は萎れているのだ。
     そうやって、心が崖っぷちに立たされて、もう後がない心境に陥る凛は、いよいよ観念するしかなくなっていた。
    「わ、わかった! わかりましたから! します。すればいいんでしょう?」
     とうとう凛は承諾した。
    「へへっ、やったぁ」
     表情が下品な肥満男。
    「さあ、見せておくれ」
     顔つきだけは品を保つも、人の全裸土下座を楽しみそうにしているハンサム男。
    
     ――さすがに、泣きそう……。
    
     二人の前で膝をつき、いよいよ土下座をしようとして、凛の目尻に涙が浮かぶ。
    「検査のお願いと、変態宣言を聞かせてね?」
     もはや肥満男に検査の建前はないというのか。
    (なんで私、ドキドキしてるの?)
     その事実にも泣きたくなる。
     正座の姿勢に近づいて、座った分だけ視界も下がると、そんな凛のことを見下ろす二人の位置は相対的に高くなる。それはそのまま、格差の広がるであるかのように感じられ、自分がどんどん惨めになった。
    (なんで私……興奮してるの……)
     ごくりと、息を呑む。
     喜んでしまっている自分がいる。
     床に両手を置いた途端、胸の奥から何かが込み上げ、下腹部さえも熱くなる。しかし、尊厳を投げ打つようで、涙目の粒は大きく育ち、凛は今にも泣き出しそうになっていた。
     上半身を傾けて、しだいしだいに頭を床に近づける。
     ついに凛は土下座した。
    「私は、私は……変態です……」
     ヤスリで削るかのように心が磨り減る。
    「どうか指を……」
     額をつけて、凛は涙をこぼし始めた。
    「指をどうして欲しいんだい?」
     ハンサム男は尋ねてくる。
     曖昧な言葉は許さず、よりはっきりと言わせるつもりなのだ。
    「ゆ、指で……私のアソコとお尻の穴を調べて下さい……」
     凛は泣き出した。
     こんな懇願をさせられて、心をすり減らすどころでなく、かつて経験したことのない惨めさに胸が強く締めつけられた。
    「あーあーあー。僕さ、本当にファンだったのに。ショックだなー。信じられないなー」
     最初に全裸土下座を言い出したのは自分だというのに、肥満男はショックだなんだと凛のことを嘲っている。いかに楽しそうに人を見下し、娯楽のように蔑んでいるかなど、直接顔を見るまでもなくよくわかった。
     感情が膨らみ、全身が震えた。
     大粒の涙が溢れ出し、額が床に触れての、顔と床との隙間には、ポタポタと雫が落ち始める。
    「みっともないな」
    「みっともないみっともない」
    「ありえるかな? こんなアイドル」
    「ファンやめようかなー」
     ナイフを突き刺し、肉をえぐり出すかのような言葉をかけられ、もはやそちらの方が全裸よりも辛いほどだ。
     凛は泣きじゃくった。
     惨めさと悲しさで、声を上げて涙を流し、しかしそんな凛をハンサム男はニヤニヤと眺めていた。後ろ側に回り込み、土下座のために折り畳まれた腰つきと、丸い尻の形を目で楽しみ、そして尻の割れ目に見える毛を視姦していた。
    
         *
    
     しばらくの時間を置いて、泣き止んだ凛の目の周りは、未だ涙に腫れて赤いままだった。
    「ではこちらへ」
     凛は診察台に導かれる。
     さすがに泣き止むまでは待ってもらえたが、本来ならば立派な仕事だ。肥満男が欲望を現場に持ち込んでいるだけで、普通は速やかに効率的に済ませたいところだろう。肥満男がいなかった時の検査は、実際にスムーズなものだった。
    「仰向けで、アソコと肛門が見えるようにお願いね」
     肥満男が診察台を指すと、純白のシーツがかかったそこには枕があった。薄い枕を腰に敷き、角度を調整して、見えやすくするためらしい。
    (はぁ、私ってもう……)
     あれだけ泣いた後なのに、恥ずかしいポーズを取って、視姦されることを楽しみにしている自分がいる。そんな歪みきった自分の性癖を自覚して、もう笑うか呆れるかしかなくなっていた。
     どの道、こんな場でもなければ、変態欲を満たすことはできない。
     凛は診察台に横たわると、言われるままにM字開脚を行った。自分で自分の膝を抱えるようにしながらも、しっかりと左右に広げ、腰の下にある枕で肛門の角度も上がっている。向こうからすれば、胸、性器、肛門の、全ての恥部を同時に視姦できるというわけだ。
     肛門の穴を囲んだ尻毛の濃さと、愛液を吸い込んだ陰毛は、よく見ればうっすらと繋がっている。肛門と性器のあいだにも、いくらかの毛を生やした道のりが続き、二カ所の草原は接続されていた。
    「ああ、凛ちゃん。君はこんな検査を受けていたんだね?」
     まるで演劇の役者が身振り手振りを交えて嘆くかのようだったが、顔ではチラチラと凛の裸を眺めてニヤついていた。
    「では始めていくよ?」
     肥満男は凛の下半身に顔を近づけ、医療用のビニール手袋を嵌めた手で、性器を左右にくぱっと開く。中身を見られる恥ずかしさは、もちろん慣れたものではあっても、あっけからんとはしていられない。
    (今の私って、どれくらい赤いんだろう)
     凛は静かに思う。
    (そこまで真っ赤じゃないと思うけど……)
     全ての恥部を見せるポーズ自体、何をされてもおかしくないような、本当に無防備に弱点を晒している感覚になる。心許ない状態で性器を見られ、中身の『視診』を受ける感覚は、やはり人前で堂々とは認めたくないが、興奮してしまうのだ。
    (全裸土下座の後だし、もう認めてもいいのかな……)
     と、凛は悩む。
    (……いや、いやいや)
     あれはやらされたのだ。
     好きでやったことではない。変態宣言も言わされただけだ。自分から進んでやってみせたわけではないから、つまり堂々と表立って認める必要はない。
    (そう。私はノーマル)
     そんな変態趣味はない。
     それなのにこういう目に遭うのがいいのであって、だから自分は変態ではないと、普通の人間だと、自分で自分を騙している必要がある。
    「クリトリスが元気だね?」
     肥満男が肉芽をくすぐる。
    「ひゃん!」
     腰の中で電流が弾けた。
    「あらま、感じちゃってますか」
     肥満男はクリトリスを刺激して、凛はその気持ちよさによく喘ぐ。
    「いい顔だねえ?」
     ハンサム男も実にご機嫌そうに凛の顔を眺めている。
    「あっ、あぁ……あぁぁぁ…………!」
     苦悶しているような、悩ましげな顔をして、凛は愛液を溢れさせていく。シーツが水分を吸い込んで、シミがしだいに広がっていた。
    「では念願の指でも入れようか」
     肥満男の指が挿入され、今こそ期待の叶う喜びが凛には浮かんだ。嬉しそうに染まった表情は、直ちに気持ちよさそうな乱れたものに立ち戻り、唇の端からヨダレが垂れる。
    「あっ、うぅ…………!」
     一本、指が入っている。
     凛はその指を力強く咥え込み、決して離したくないかのように締めつけるが、愛液のよる滑りの良さで、あまりにもあっさりとピストン運動は行われた。指の出入りに凛は首でもよがり始めて、脂汗の浮かんだ頬には髪が貼りつきさえしていた。
    「あっ、あっ、あぁぁぁ……あぁぁぁ…………!」
    「おや? イキそうだね? 凛ちゃん」
     ハンサム男が予兆を読み取った瞬間に、まるで予告通りのように凛の身体は痙攣した。小刻みに上下に震え、イキ果てた疲弊の息遣いで肩も上下させていた。
    「はあっ、はぁ……はぁ……」
    「気持ち良さった」
     肥満男の問い。
    「……はい」
     凛は素直に答えてしまう。
     その直後、ハンサム男はチャンスとばかりにひどくにやけた。唇がU字に変形しそうな勢いで顔立ちを豹変させ、ここぞとばかりに意地の悪い言葉の数々を浴びせ始める。
    「おいおい、凛ちゃん? これは検査であってセックスではないはずだ。いくら変態イズムが刺激されたからといって、アイドルがそんなことでいいのかい?」
     アイドルが、アイドルなのに、そのような言い回しは喉を絞められるように苦しく、聞くに窒息しそうでありながら、しかし興奮してしまう。
    「次は両方に入れるからね?」
     そして、肥満男は指をピースの形にして、上下の穴の両方に挿入した。
    「くぁぁぁ……あっ……あっ…………」
    「ライブはどうだった?」
    「あっ……ら、ライブって……」
     こんな状態で行われる質問に凛は戸惑う。
    「実は僕もチケットを取っていてね。だから、向こうの空港に回り込んだんだけど、あんな検査を受けたとは思えないくらい、しっかりとイベントをこなしていて、さすがはプロだなーって思ったもんだよ」
     肥満男はライブの感想を述べてくる。
    「ほんと、最初はアイドルには興味なかったけど、たまたまハマった渋谷凛に、こうして指間でハメているんだ」
     まるで世界でも手にしたような満足そうな面持ちで、肥満男は指を出し入れしてみせる。
    「あっ、やぁ……」
    「どうだったの? ライブ」
     肥満男は繰り返し尋ねてくる。
    「あっ、んぅ……ら、ライブは上手くいったと思います。ちゃんと力を出して歌えて……んぅぅ……」
    「上手くいったと自分でも思うわけね?」
    「あぁぁっ、んっ、一応……」
    「なら、イこうか」
     肥満男の指がここぞとばさりに活発になり、凛は呆気なくイカされた。
    「あ! あぁぁ!」
     全身がビクビクと、アソコからは潮も吹き出し、喘ぎと共に凛は滑稽な表情まで晒していた。膝を抱えているために、ヨダレの垂れたみっともない顔を隠すこともできず、二人の男は大喜びで無様な顔を鑑賞した。
    「凛ちゃーん。そういう顔、初めて見たなあ?」
    「へへへへっ、またイッたね? あーあー凄い顔だ」
     指がゆっくり抜かれていく。
     もう済んだのかと思いきや、肥満男は新しくビニール手袋を嵌め直し、今度は肛門だけに指を入れてきた。
    「あぁぁぁぁ……」
     二本だった。
     肥満男の太い指が、それも二本も入った分だけ、凛の肛門は拡張されている。口を半開きにみっともなく感じる顔は、当然のように鑑賞対象となったまま、そして肛門へのピストンは開始されだ。
    「ところでセックスはするんだよね?」
     好奇心に満ちた目で、肥満男は尋ねてくる。
    「あっ、んんんんっ、それは……」
    「するでしょう?」
    「します……けど……んぅぅ……」
    「滞在中もしたの?」
    「は、はいぃぁ……」
     性生活に関わる具体的な質問までされながら、指のピストンは止まらない。
    「自分からも話しましょう。凛ちゃんはですね」
     と、ハンサム男は実に楽しげに語り始めた。滞在中は何回セックスして、ベッドの上ではどんな風に乱れていたか。どんな体位で悦んだか。凛のことを抱いていた張本人の口から次から次へと暴露され、フェラはしたのか、バックからはどれだけしたか、包み隠さず語ってしまうせいで、凛自身が話を伏せておきたくても、次々に夜の内容は流れていく。
    「アナル開発もしたことがあってね」
     ハンサム男が自慢げにした時だ。
    「確かに、よく広がるものねえ?」
     肥満男は一瞬だけ指を抜き、三本に増やして入れ直した。
    「おあぁぁ……おっ、んおっ、あぁぁ……」
     怨霊が呻くようなおかしな喘ぎが出て、凛は口を両手で塞ぎたくなってくる。膝さえ抱えていなければ、きっと反射的にそうしていたが、凛は生真面目にも指定のポーズを守っていた。
    「ま、とりあえず今回も異常はないね。すぐイクみたいだけど」
     肥満男は笑いながら指を動かし、そのピストンによって凛はよがった。
    「あっ! あぁぁぁぁ――――!」
     背中を浮き上げ、またしても凛はイク。
    「検査は終了しているのですか?」
    「ええ、まあ」
    「ではせっかくです。あと何回かイカせてあげて下さい。凛ちゃん、喜んでるみたいなので」
     ハンサム男の提案に全身がゾクゾクした。
     まだ遊んでもらえることに、辱めを続けてもらえることに、鼻息を荒げて興奮してしまっといた。
    
         *
    
     数日後だ。
     事務所の中でヒソヒソと、何か凛のことを噂にしているような、妙な空気を感じたが、プロデューサーや他のアイドルの仲間達は、特別に接し方を変えてきているわけではない。まるでいつも通りなのだが、何ら変化のない裏に、凛の知らない何かが隠れているような、そんな気がしてならなかった。
     その正体を悟ったのは、とある動画の存在を偶然にも知ってしまったからだ。
    
    『渋谷凛、激似!』
    
     SNSで話題になっていたせいか、ふとした拍子にネット上に流れる噂に気づき、凛は恐る恐るの検索で、何度かキーワードを変えながらも、その大本に辿り着いた。
     アダルト動画サイトだった。
     まさか、そんなはずは……。
     あるはずはない、流出などするものか。
     そうは思ってみたところで、自分そっくりの動画サムネイルを目にした途端、凛はいよいよ心臓を早鐘のように打ち鳴らし、緊張の冷や汗を噴き出していた。
     怖い、見たくない。
     もしも本当に流出動画が出ていたらという恐怖を強く抱くが、だからこそ確かめずにはいられなかった。真実を知ることが怖いのに、何かに憑かれたように動画を再生しようとしてしまっていた。
     そうせずにはいられない心理が働いていた。
    「…………」
     震える指で、恐怖と共に再生する。
    
    「――――っ!?」
    
     凛は戦慄した。
     黒い線で目隠しが行われているものの、十分な画質の映像で、黒髪ロングの少女が丸裸で身体測定を受けている。身長計で背筋を伸ばし、アソコにはびっしりと毛を生やした女の子の特長は、否定のしようがないほどに凛に似ていた。
     本人からすれば、陰毛の具合や乳輪など、自分だと判別できてしまう部分が多かった。
     しかも肥満体格の男がいるとあっては確定だ。
    
     全裸検査の内容が流出している。
    
     しかも、他の動画を再生すれば、凛そっくりな声で喘いでイキ散らし、何度も全身をビクビクとさせていた。
    
    「うそ…………」
    
     凛が抱える絶望は計り知れない。
     だというのに……。
    
     さらに数日後、差出人不明の郵送物が届いていた。
     それは肥満男がいた際の、過去三回分の盗撮を編集したもので、目線による目隠しや性器のモザイクもなく、全てがくっきりと写り込んでいた。
    
    「んっ、あぁぁ……」
    
     そして、凛はオナニーをしていた。
     全裸となり、ベッドで脚を開きながらの、先ほどまで再生していた動画を思い出しながらの、恥辱まみれの記憶に頼ったオナニーだった。
    「あぁぁ――!」
     イッた。
     腰がピクピクと震えた直後、潮吹きの雫が舞い上がり、ベッドシーツや床へと散る。
    
     私、本当に、本当に変態なんだ……。
    
     盗撮され、それを流出されたり、送りつけられてさえ興奮する自分にショックを受け、凛は打ちのめされていた。
    
    
    


     
     
     


  • 終 渋谷凜の全裸健康診断【前半】

    次の話

    
    
    
     渋谷凛は飛行機の中で悶々とした。
     ……眠れない。
     アソコが欲求を訴えかけ、沈めたくてたまらなかったが、人目を避けてオナニーをする機会が巡ってくることもなく、膣に切なさを抱えて寝付けない時間を長々過ごす。
     日本への到着は本当にやっとだった。
     新型ウイルスに関する貿易上、空港から自宅へ帰る際にも、必ず検査を受けることになる。
    
     もしかしたら……。
    
     凛は期待してしまっていた。
     おかしな性癖が目覚めてしまい、自分を変態だと思うようになったきっかけの、あの全裸健康診断を、また受けることができるかもしれない。出国前の空港では、過去二回ほど現れた肥満男は姿を見せず、女性が手早く済ませてしまったが、日本到着後の入国前なら、また肥満男がいるだろうか。
     彼さえいれば、健康診断は恥辱に満ちたものになる。
     そのことを期待して、検査直前にプロデューサーと別れ、凛は検査室への案内を受けて向かっていく。
    
    「やあ、また会ったね」
    
     肥満男の顔を見るなり、凛はドキリとしてしまった。
    「おや、僕に会えて嬉しい?」
    「なに言ってるんですか」
    「でも変態趣味に目覚めたでしょ?」
     肥満男の言葉を否定できずに、凛は顔を背けて俯いた。
     前回、自分は肛門と性器を検査されて絶頂する変態であると宣言させられ、また同じ目に遭うことを期待さえしてしまった。期待が叶うとわかった喜びで、心が少しでも舞い上がってしまったことで、自分の性癖が歪みをより強く実感した。
    「また、ああいう検査になるんですか?」
     なるべくぶっきらぼうに凛は尋ねる。
    「なるね。楽しみでしょ?」
    「楽しみだなんて……」
     堂々と認めることはできない。
     そんな自分自身の心が見えた時、凛は思った。もしかしたら、自分から変態宣言をするよりも、人にさせられる方がいいのかもしれない。
     だから口先では言っておくことにした。
    「他の人に当たった時は、凄くスムーズでしたけど」
     直接的ではないながら、問題のある検査方法に文句があるようなポーズを取ってみせ、いつでも抗議を吹っかけそうな、睨みがちな目つきさえも装っていた。
     そういえば、肥満男一人だけだ。
     今までは他にも多くの人がいたが、今回はどうしたのか。
    「というか、他の人は」
    「ああ、今回は僕一人でアイドル渋谷凛を独占しようと思ってね」
    「独占って……」
     ストーカーに狙われるのとはまた少し違うだろうが、そのような怖気が走ると同時に、下腹部がきゅっと引き締まる。下品な目論見を持つ男に目を付けられ、それが怖いからこそ嬉しいような、自分のマゾ気質を自覚した。
     体中が期待して、恥辱を楽しみにしてしまっている。
     服を脱がされ、調べられてしまう感覚を想像して、今のうちから下腹部がヒクヒク疼く。
    「さ、まずは問診といこうか。ね? 凛ちゃん。そこに座ろうか」
     椅子に座るように促され、凛は肥満男と向き合いながら腰かける。
     すぐさま、視線の質が変わった。繊維の隙間に入り込み、胸を味わってくるような、皮膚をざわつかせる視姦の眼差しで、頭から足にかけてをジロジロと舐め回す。見れば股間が徐々に膨らみ、もう既に恥辱の時間は始まっているのだと肌でわかった。
     だから、凛は驚かなかった。
    「この前は気持ちよかったねえ?」
     あからまさにニヤけた顔で、ついこの前のよがりようについて触れてきても、こうなると想定通りの質問なのだった。
    「それは、まあ……」
    「今回も期待してる?」
    「……まさか」
    「でも気持ちよかったよね?」
    「それは……」
     否定できなかった。
     肛門を調べられて興奮した。性器を調べられても興奮した。変態宣言をされられても興奮し、凛はそれらの体験をオナニーのネタにすらしてしまっている。肥満男の顔を見た瞬間、嬉しくなりさえしている凛は、今こうして言葉によるセクハラをされることにも興奮しつつある。
    「答えてごらん? 何に興奮したか。どんなのが良かったのか」
    「あの、一応ちゃんとした診断のはず、ですよね」
     新型ウイルスへの対策として、防疫のために行われる検査のはずだ。そこが疎かにされては困ることにふと気づき、だから凛は話を逸らした。
    「なら体調について聞こうかな」
     と、肥満男は食事や食欲、生理による調子の変化について尋ねてきて、まともな問診らしい質問に一つ一つ答えていく。
     だが、それらにひとしきり答えきれば、やはりその手の質問に話は戻る。
    「で、前はどんな検査に興奮したのかな」
    「だから、そういう……」
    「何回絶頂した?」
    「覚えてませんってば」
    「毛は剃った?」
    「脇は……」
    「脇剃った! 脇は剃ったんだね? 他は?」
    「いえ……」
    「じゃあボーボーのままだ」
     デリカシーのない嫌な質問をされ、ボーボーなどと面と向かって言ってこられているのに、そこに興奮してしまう。
    「そうですけど……」
    「なるほどね。じゃあ、僕がいた時の検査で印象に残っているのは何かあるかな?」
    「一応」
    「教えてくれる?」
    「その……。自分で自分の足首を掴む、みたいなポーズの時の肛門検査とか……」
    「それが気持ち良かった」
    「……はい」
    「変態だねぇ?」
    「…………」
     否定できず、凛はただ無言で俯く。
    「お尻の穴に指が入って感じたのかな?」
    「……そうですけど」
    「ははっ、感じちゃったかー。それで、後々オナニーとかしたのかな?」
     どこか小馬鹿にしたような、笑いながらの問いかけは、凛の心にヤスリをかける。
    「お、オナニーって……」
    「必要な質問だから、答えて欲しいな」
     まさか、必要なはずはないだろうが、凛は体を疼かせていた。あれを思い出しながらオナニーしたと白状するのは、変態宣言の一種のようなものである。それをしてもいいという免罪符が与えられ、それに縋って凛は答えた。
     そう、必要な質問だから答えるのだ。
    「少しですけど、しました」
     耳まで染めていきながら、凛はオナニーの事実を伝えた。
    「へぇぇぇ? したんだ? オナニーしたんだ! 検査されたことをネタにして、オナニーいっぱいちゃった!」
    「別にいっぱいじゃ……」
    「じゃあ、どれくらいしたの?」
    「忙しくて時間もありませんでしたし、一回くらいで……」
    「なら、その一回をたっぷり楽しんだのかな?」
    「まあ、それなりに……」
     こんな話を面と向かって行えるはずもなく、始終顔や目を背けながら答えていた。
    「指は入れたのかな」
    「……入れました」
    「へへヘッ、そうかそうかぁ」
     いいことを知って嬉しそうな、本当にニヤニヤとしきった顔を中年は浮かべていた。
    「その、検査されてる想像しながら、裸になって、脚を開いて……」
    「へえ?」
    「中身を開いて観察されたり、指を入れられる想像とかしながらしてました」
    「ほほほう? ぐびっ、いいこと話してくれるねぇ?」
    「……」
     カッと頭が熱くなり、凛は改めて俯く。
    「凄くエッチで変態になったてねぇ?」
    「必要な質問だっていうから、答えただけですけど」
    「うんうん。わかってるわかってる」
     下らない建前だ。
     肥満男はただのセクハラ目的で、凛は変態趣味に目覚めていて、ここにはもうそういうプレイの空気ができあがっていた。新型ウイルスの存在と防疫義務が土台となり、その上に作り上げられた特殊な空気は、検査室ならではのものだった。
    「じゃあ、そろそろ脱いでもらおうかな」
     肥満男がいやらしい目をしながら行う指示に、凛は内心で――来た! と、そう思ってしまっていた。
    
         *
    
     首のリボンをまず取り去る。
     脱衣カゴにリボンを置くと、セーターのボタンを外し始める。私服もいくつか持って来ている凛だったが、その選んだ服の一部に学校用のセーターがあった。それを脱ぎ去ることで、ワイシャツの白い姿を晒し、そしてワイシャツのボタンを外し始めた。
    「あらあら、アイドルが肌を晒しちゃうなんて」
     肥満男は楽しそうだった。
    「今日はどんな下着かな?」
    「青、ですけど」
     しだいにはだけていくワイシャツから、チラチラと青色が覗けて見える。外れたボタンの数が増えるにつれ、だんだんとヘソまで見え、ついにはワイシャツを脱ぎ去った。
     凛の身に付けた青いブラジャーは、黒い薔薇を縫い付けたダークなデザインだっ。影絵のようなイバラが茂り、花びらが散りばめられたカップの中央には、漆黒のリボンがよく目立つ。
     スカートを脱ぎ始めた。
     ホックを外し、チャックを下げると、緩んだスカートはあっさりと凛の足下に輪を広げ、そして凛は下着姿を晒していた。
     ショーツはTバックだった。
     フロントも布が少なく、三角コーンのような形の布の、ちょうど三つの角に黒い柄の縫い付けが施され、両側はヒモで結ぶタイプである。
    「あらあら、やっぱり剃ってないねぇ?」
     肥満男の顔が近づいた。
    「や……」
    「毛がいっぱいはみ出てるよ?」
     指摘された瞬間に、頬に火花が弾けたような熱が走って、凛は素早く顔を背ける。 布面積に対して毛が多いのだ。
     はみ出た毛は布によって踏み倒され、寝かされた毛先という毛先の数々が、様々な縮れ方をしてびっしりと、ブラシのように並んでいる。あるいはムカデ、ゲジゲジと例えても良さそうだった。
    「後ろを向いてごらん?」
     凛が身体の向きを変えれば、鼻先が皮膚に触れてきそうな気配を尻で如実に感じられ、呼吸の熱気も当たって来る。
     言うまでもなくはみ出た毛は、Tバックのヒモに根元を倒されつつ、尻のカーブに剃って毛先を伸ばし、ストレートの中に縮れた歪な形が幾本も混ざっていた。
    「やっぱり毛まみれだ」
     指が触れ、凛はピクっと腰で反応する。
    「アイドルなのにボーボーすぎるね」
     指先が尻肉の下弦をくすぐり、四指で左右の尻たぶをプルプルと持ち上げて、弾ませんばかりに弄ぶ。触られていることで皮膚が疼き、さっそくのように体が反応を示し始める。それに気づいてか、肥満男は悪戯にくすぐり始め、凛は腰をモゾモゾとさせ続けていた。
    「ほら」
     毛をつまみ、軽く引っ張る。
    「うっ」
    「ほれ、ほれ」
     しきりに引っ張る遊びがマゾヒズムを刺激して、凛の興奮度合いを高めていく。
    「ケツ毛ボーボーなんて、ファンが知ったら本当にどう思うかな? 僕だって最初は驚いたんだし、他のファンなら気絶しちゃうかも」
    「そんな……別に、見せることなんてありませんし……」
    「前向いて」
    「……はい」
    「ブラ、外そうか」
     粛々と指示に従い、凛は背中に両手を回す。ホックをぱちりと外したあと、あっさりとブラジャーを手放してみせていた。
     もう十分に脱ぎ慣れて、裸も晒し慣れている。
     せいぜい、パンツを見られた程度の気持ちでしかないのかもしれない。羞恥心を完全には失ってはいないのだが、性器や肛門の検査が始まって、初めて全裸らしい羞恥心がこみ上げてくるのだろう。
    「乳輪デカいねえ?」
     身体の特徴について、ズケズケと声に出してくる。
    「あーあー。何も知らなかった頃の僕は、もっと美しいピンク色を想像していたのに」
     あからさまに残念がった言葉まで聞かされて、凛は屈辱を噛み締めていた。その割に肥満男はニヤついて、乳房を拝むことができて嬉しそうでならない顔をしている。
     喜んでいるくせに、言葉では嫌みを言うのだ。
    「毛がボーボーな上にデカい乳輪か。まったく、なかなかだねえ?」
     言いたいことを言いながら手を伸ばし、乳房に軽いタッチをしてくる。ぷにぷにと、表面に指を押し込む触り方に反応して、乳首に血流が集まった。
    「あれれ? 感じてるのかな?」
     突起してきた乳首を見て、肥満男はますます嬉しそうだった。
    「す、少し……」
    「少し? ははっ、少し感じてるんだね?」
    「本当に、少しですから」
     凛はそう言って目を瞑り、肥満男の手つきに身を浸す。こんな悪戯をされている状況を、建前では嫌がりながらも内心では楽しんでいた。
    「ショーツも脱いで、渡してくれる?」
    「……どうぞ」
     おかしな話かもしれないが、全裸経験を積んでいるおかげで、脱ぐことよりもそれを手渡すことの方に抵抗を感じていた。
     だが、疼く。
     肥満男にショーツを与えることで、相手の変態欲を満たさせることでの興奮を覚えてしまう。
    「うんうん。脱ぎたては体温が残っていていいねえ?」
     肥満男はプレゼントが嬉しいように裏返し、クロッチの部分をあからさまに撫で始める。間接的にアソコを愛撫されている感覚に、凛は指でワレメを撫でられる感触を必要以上にありありと想像していた。
     太い指が表面をさすり、愛液が出れば出るほど滑りが増す。
    「けっこうシミがあるね? オリモノの痕跡がよくわかるよ?」
     匂いでも嗅ぎそうなほどに顔を近づけ、肥満男はシミの観察を行った。
    「アイドルはトイレに行かないみたいな幻想あるらしいけど、だったらこんなシミの付いたパンツもどうなのかな? ファンがショックを受けるんじゃないかな? ほら、僕は医者だからいいけどさぁ」
     肥満男はことあるごとにアイドルという言葉を使い、凛の心をぷつぷつと針で刺していくような、嫌な言い方をしてきている。
    「パンツとか、普通は見せないから、関係ありませんし……」
     反論こそしてみせながら、凛のワレメには既に愛液の気配があった。まだ一度も触られてはいないのに、先ほどの想像や今の言葉で体は反応していまい、しだいしだいに感度が働き始めている。
     眠っていた感度が起きて、性感帯が活発化する感覚が凛にはあった。
    「どうしたの?」
     彼は勘付いたのだろうか。
     もう濡れ始めていることが、バレているのかいないのか。ドキドキとした気持ちの中で、凛が抱く願望は、できればバレていて欲しいというものだった。
    「ど、どうも……」
    「興奮してきた?」
     肥満男に問われた途端、凛はドキリとして顔を背ける。
    「ボーボーでびっしりな毛の中には、もう愛液が出始めていたりして」
     図星を突かれ、心臓が飛び出そうになった。
     本当にバレているのだろうか、それとも今のは冷やかしに過ぎないのか。気づかれていて欲しいような、違うような、どちらとも言い切れない気持ちを抱え、凛はドキドキとしながら固まっていた。
    「そろそろ身体測定しようか」
     しかし、バレていたのか違うのか、はっきりすることもないままに、肥満男は次にステップを進めていった。
    
         *
    
     身長計に足を乗せ、柱に背中を当てて姿勢を正す。
     計測を行うため、凛の真横に立つ肥満男は、ニヤニヤと腹に手を当ててきていた。まるでずれないように押さえてやるためであるように、しかし決して必要のない接触を行っている。凛は何も言わずに受け入れるどころか、こんなセクハラを期待さえしていた。
    (私……本当に変態に……)
     自分の性癖を実感する。
     汗ばんだ手に撫でられ、揉むような動きで皮膚をくにくにとやられている感覚がたまらない。明らかに乳房を目指して上へと動き、そのまま下乳を持ち上げてくるのに興奮する。逆に下へとスライドして、小指で陰毛を絡め取る仕草で感じてしまう。
     頭の上にバーが触れ、数字を読むためとばかりに顔が近づく。
    
     ふー……ふー……。
    
     と、黒髪の狭間に覗けて見える白い耳へと、肥満男の熱い息は吹きかかる。それが耳穴に流れ込み、広がる吐息の感触は頬にさえ触れ、本当ならばもっと怖気に震えるところだ。
     体が喜んでしまう。
    「身長は一六五センチ。変化無しだねぇ?」
     囁く肥満男の唇は、耳に触れる直前にまで迫っていた。
     耳を舐められてしまうのかと、凛はそんな予感に強張ったが、そうはならずに手の平の方が上へと動き、乳首をつつく。
    「んっ」
     首が縮み、反射的に俯いてしまった。
    「へへっ、計り終わった後だからいいけど、動かないようにねぇ?」
    「……はい」
     身長計を降りる。
     その瞬間に凛は尻を掴まれていた。
    「ほら、次はこっちだ」
     まるでエスコートをするように、尻へと手を回したままに、肥満男は凛のことを体重計まで導き始める。凛はそれに従い進んでいき、体重計の台へ上がっていくと、すぐに数値は現れていた。
    「こちらも変化なし。太ったりはしてないんだねぇ?」
    「しませんってば」
    「へえ? カロリーとか色々考えてるのかな?」
    「そりゃ、多少は……」
    「よ! えらい!」
     称えんばかりの言葉をかけながら、ペチ! ペチ! と、その手でお尻を叩いてくる。軽い力で音を鳴らされ、凛はその屈辱感に身を浸す。
    「さぁて、今度はスリーサイズだねぇ?」
     肥満男がメジャーの用意をした瞬間から、乙女のプライベートな数字がまたしても暴かれるのだと、凛は全身を疼かせていた。この短期間で変化などないとは思うが、繰り返し確かめられている感覚が興奮を招くのだ。
    「では腕を左右水平に」
     そう言われ、両手を広げる。
    「お? ほほっ、へぇ?」
     まず肥満男が行ったのは、脇の下を覗き込む行為であった。
    「あ、あの……」
    「いやね。脇毛がはみ出てないもんだから、気になってね? そっかー。なるほどなるほど、剃ったってさっき言ってたもんねぇ?」
     ライブで脇の見える衣装を着るため、その時までは毛の痕跡などわからないツルツルな状態にしてあった。ところが濃い毛は生え始め、一ミリか、二ミリか、触れればジャリジャリとした感触のありそうな太いものが顔を出し、剛毛の気配を漂わせている。
    「うーん。ま、これならアイドル失格ではないかなぁ?」
     失格などと口にしてくる不快感を凛はただ噛み締める。
    「ではバストから」
     まるで抱きつくようにして、肥満男は凛の背中にメジャーを引っかけ、乳房の上に目盛りを合わせてくる。今にも密着されそうな距離感に緊張しきり、ただただ硬直しているばかりの凛は、乳首の先に肥満男の膨らんだ胸が触れてくるのを感じ取る。
     そして、メジャーは巻きついた。
     大きな乳輪の上に目盛りは合わさり、肥満男はその数値を読み取った。
    「八二センチ。今まで通り」
     締め付けが緩むと、メジャーは腰へと移される。
    「今回はお腹引っ込めるとか駄目だよ?」
     以前の発覚したことについて、肥満男は前もって言ってくる。
    「も、もうしませんし」
    「ならいいんだよ? さて、ええっと、こちらも変化無しっと……」
     肥満男はさらにそのままメジャーの位置を変え、お尻に軽く食い込んできた。巻きつく先で目盛りが合わされば、びっしりと生え揃い、伸びきった剛毛の中にメジャーは埋もれる。
    「あらあら」
     あからさまに呆れた声が上がった。
    「毛が長いもんだから、目盛りが見えなくなっちゃった」
    「他の場所で合わせたら……」
     そう口では言ってみるものの、アソコのすぐ近くに指があり、陰毛をネタにされながら弄られていることで、凛は興奮してしまっている。
    「ほれほれ」
     肥満男はメジャー越しにくすぐり始めた。
    「うっ、ちょっと……」
    「ほれほれほれほれ」
    「あっ、くぅぅ……」
     メジャーの上を左右に往復し続ける指先は、その動きによって絶えず陰毛を掻き分けている。長々とした毛先はどくことがなく、元の形に戻ろうとする力によって、すぐさま目盛りを隠してばかりだ。
    「うっ、い……」
     いい、気持ちいいと、つい白状しそうになる。
     しかし、凛はそれをぐっと堪え、自分の変態性は押し隠した。
    「湿っているのがわかるよ? ワレメから出て来た愛液で毛が固まって、さっきからずっと興奮していたのがバレバレだねぇ?」
    「そ、そんな……」
     凛は一気に赤らんだが、願望通りにバレていた興奮も相まって、頭の中で熱が高まる。
    「でも計測を進めないとだし、そろそろ数値を見ようねぇ?」
     と、やっとのことで肥満男は数字を見る。
    「うんうん。こちらも変化無し、と」
     スリーサイズの全てをチェックしたところで、肥満男は今になって書類への書き込みを始めていた。凛の元から離れたかと思ったら、テーブルに置いていた書類にボールペンを走らせ、今までの数値を記入しているのだった。
    「では次に進んでいきましょう」
     アソコが悶々としている中で、肥満男は椅子を指す。
     性器や肛門の検査はまだ先であることに、半ば絶望したような、がっかりとしたような、楽しみが先延ばしにされた思いを抱え、凛は椅子に腰掛けるのだった。
    
    
    
    


     
     
     


  • 続 渋谷凜の全裸健康診断【後編】

    前編

    
    
    
     羞恥を煽ることにより、渋谷凜の頭はかき混ぜられていた。
     全身の観察と共に、毛の生え具合についてコメントを聞かされて、さらには最初の診断での絶頂についてさえ、肥満男によって暴露されたのだ。記憶から消したいような、あらぬ過去を晒されながら、お尻までペチペチとされる屈辱に、かえってアソコが反応する。
    (私、本当に……変態……)
     もう、気持ち良くなってしまっていた。
     このままアソコと肛門の検査をされたら、またしても感じることになり、きっと絶頂の宣言もさせられることになるだろう。恥辱の未来を想像するに、興奮してしまう自分に対する思いに溢れ、変態となった自分をどう捉えていいのかもわからない。
     自分自身の足首を掴んだままに、凜は床ばかりをただ見つめる。
    「そーいえば、薬物の持ち込みとかで、肛門と性器の検査厳しくナッテマス」
     審査官が告げてきた。
    「お尻からクスリが出ちゃった例が最近あったし、厳しくするよう通達があってね」
     肥満男の声があったと思えば、キャスターのタイヤが転がる音で、何かの器具が運ばれてきたことがわかった。
    (薬物なんて……)
    「まずは肛門から調べるからね」
     ビニール手袋をはめる音がして、次の瞬間にはヒヤッとしたジェルが皺の上に乗ってくる。ぐるぐると、ぐにぐにと塗りつけられ、ジェルに呑まれた尻毛も指の動きに合わせて渦を巻く。
    「あぁ……やっ、やばっ、これ……」
     凜は否応なしに自覚してしまった。
     これだ。
     これを求めていたのだ。
    「あぅぅ……んっ、んぁ……!」
     ジェルを丹念に塗り込まれ、そのまま指が突き立てられたかと思えば、ずにゅぅぅぅぅ──と、内側に挿入されていく。内部を探られる快感に喘ぎ、お尻で悶える凜は、脚の筋肉までピクピクとさせているのだった。
    「オヤオヤ? 気持ち良さそうですね」
    「ちが──そんなわけ──」
     口では咄嗟に否定する。
     しかし、漏れ出る声に、お尻の反応。快感を隠し通せるわけがなかった。
    「アソコが濡れているのはわかっているよ」
    「ほほう? タシカニ濡れてマス」
     肥満男が喜んで指摘するなり、審査官はアソコを覗き込んでくる。視線を感じるに、ますます辱しめを受ける感覚は強まり、下腹部は喜びを高めてしまう。
    「はぁぁ……くっ、ん…………」
    「気持ち良さそうだねぇ?」
     煽らんばかりだ。
    「あっ、やぁ…………」
     もはや否定も返せない。
     根本まで指が埋まって、お尻に拳が当たっている。ほじくるような動きに対しては、こんな場所を調べられているのだという感覚が強まり、ピストンされれば陵辱されている気持ちになる。このままでは肛門でイカされそうな予感さえして、無意識のうちに締め付けていた。
     ピストンを肛門括約筋で食い止めたいような、あるいは逆に反応を伝えてイキそうなアピールがしたいのか、凜自身にもわからない。
    「さて、イクのかな?」
    「はっ、くぅ……! だめっ、やば……!」
     愛液は内股にまで流れ出し、凜の感じぶりは誰の目にも明らかになっていた。
    「──っと」
     そんな時に指が抜け、凜はかえって困惑する。
     イケそうだったのに……。
    (い、いや! なに考えてんの!)
     凜は首を横に振り、あらぬ考えを頭から追い出そうとした。そんなことをしても、しっかりとこびりつき、払いようのない気持ちはすっかり奥まで浸透している。
    (やっぱり、私もうおかしいんだ……)
    「うんうん、イカずに済んだみたいだね?」
     そんな声をかけられるに、わざと遊んでいたのだと凜には伝わる。
    「では次は肛門鏡デスネ」
    「はい。お願いします」
     肛門鏡は審査官がやるらしかった。
     最初の時の、肛門に器具が入った感覚を思い出し、改めて下半身が疼いてしまう。体が期待してしまっている。早く欲しい、早く、早くと、お尻から急かす気持ちが放出され、もしも本当に伝わっていれば、男二人でどんな満面の笑みを浮かべていることか。
    「デハデハ」
     審査官の手で、新しくジェルが塗られる。
    「さぁて、イクかな?」
    「一回目の診察と同じことシテ、どのくらいでイクかも見てますからネ?」
     絶頂さえも記録されると伝えられ、全身が甘い快感にぞわぞわした。身体中に期待の信号が行き渡り、アソコが絶頂の準備を始めてしまっていた。
     そして、男の親指ほどある太さ器具が、凜の肛門目掛けて突き立てられ、それはずっぷりと埋まり始める。
     
    「ん! んひぁ──!」
     
     凜はイった。
     アソコから、軽い霧吹きのようにピチャッと、愛液を解き放っていた。
    「挿入だけでイキました!?」
    「凜ちゃーん? 記録しておくね?」
     二人して、嬉々としていた。
     いや、それだけではない。
     忘れがちだが、ここには見学者も並んでいて、凜のイキ姿を見るなりヒソヒソと話し始める。会話の内容まではわからなくとも、絶頂を面白がっている雰囲気だけはよくわかり、頭が熱くなっていく。
    「ところで、今のは本当に絶頂? 痛かったとかじゃなくて?」
     ……わざとだ。
     わかっているくせに、勘違いがあっては誤診に繋がるというそれらしい理由から、本当に絶頂なのかを尋ねてきている。
     屈辱と恥ずかしさで、感嘆には答えられない。
    「言わないと、診断を完了したことにできないよ?」
     そう煽られ、凜は心を決めた。
    (前だって言ったことだし、慣れたし、問題ない……)
     心の中で強がりながら、凜は口を開いていく。こんなポーズのまま、お尻に器具まで入った有り様で、どこまでも惨めな思いで宣言する。
     
    「アイドル渋谷凜は……し、診察で……絶頂します…………」
     
     その瞬間だった。
    「ははははっ! そんな言い方わざわざしなくても、ただ性的な快感だったかどうかだけでよかったのにれ!」
     ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、と、肥満男は面白おかしいもので喜びながら、凜のお尻を叩いてきていた。
    「そんな……!」
    「ジャパニーズ・ヘンタイ」
     審査官にまで笑われた。
     惨めだ。
     どうせ入国管理の権限を盾に、いやらしい言い方をさせられると思ったのに、だから一回目のようにきちんとはっきり、自分の名前まで口にしての宣言だった。
     それをコケにされたのだ。
    「ではコノママ」
     審査官は肛門鏡で内部を探る。
    「へえ」
     肥満男はモニターに映る腸壁を見て、好奇心かもわからない感嘆の声を吐く。もちろん病気の類いの有無も、薬物の違法な持ち込みも、必要なチェックはしているが、それ以上に彼の意識は凜の感じる様子にある。
    「あっ、くぅ……! くふっ、あぁ……!」
     肛門鏡が蠢くだけで、良いセックスでもしているように喘いでいた。
    「これ検査ナンデスケドネー」
     審査官はいかにも困った言い方で、診察でよがる凜に対して、おかしなものでも見る目を向ける。そんな視線が突き刺さってくることが、声色から感じ取れていた。
     マゾヒズムが刺激された。
     いやらしい変わり者に対する視線を感じ、どんな顔をされているかを思えば思うほど、チューブをくわえた肛門に快楽が拡散していく。お尻の筋肉にまで甘い感覚が染み渡り、アソコが疼いて全身がビクついた。
    「オーウ。今のでイったのですか?」
     蔑む声。
     凜の視界にあるのは、床と自分自身の髪だけだが、それでも審査官の人を嘲る顔が頭に浮かぶ。
    「……はい」
     悪いことをして、責められ説教をされている気持ちになって、凜は小さな声で答えた。
    「いけないね?」
    「イケマセーン」
     二人して、悪いことのように言ってくる。
    「では悪い子には、分娩台で次の検査を受けて頂きましょう」
     そう聞いただけで、次の検査をアソコが歓迎してしまう。喜びを示さんばかりに愛液が流れ、心の底では嬉しい気持ちで、表面にはそんなものは出さないように、凜は分娩台へと移っていった。
     
         †
     
     あられもない姿である。
     仰向けよりもいくらか角度のついた背もたれに背中を預け、座板にお尻を乗せた凜は、両足を専用の台に固定され、M字開脚を強いられていた。お尻の下に敷いたシートで、下半身の角度はやや上向きに、きっちりと脚の左右に広がった有り様は、無惨とも卑猥とも言えるだろう。
    「うーん。まずは改めて」
     肥満男の顔が迫る。
     今にも貪りついてきそうな至近距離に、すぐそこに男の顔が来ている感覚が堪らない。羞恥で頭が熱くなるほどアソコは疼き、そして濡れたところを見られていると思っただけでも余計に気持ちよくなってくる。
    「ワタシもよろしい?」
    「ええどうぞ」
    「デハデハ」
     審査官と入れ替わり、今度は別の頭が迫った。
    「オーウ。毛はワレメの回りとかにもちょっと来てるんデスネ? 小陰唇はみ出てます。ちょっと大きい」
     性器の見た目を声に出して解説される。
    (やだ……)
    「中身、見ましょう」
    (やっ……)
     ワレメを開かれ、覗き見られて、自分の全てを透かされているような、何も隠し事が出来ないような気になってくる。汁気が溢れ、それがワレメから尻のワレメに流れていけば、尻毛に絡みついてしまう。
    「うーん! クリトリス大きいデスネ? お芽めでてマース!」
     そんなことを明るく言われ、自分では自覚のなかったクリトリスの突起を暴かれたと思うと、みるみるうちに脳が煮たって沸騰する。
    「では所持品検査も兼ね、触診ヤリマス。ワタシも医者ですからネ」
     目の前でビニール手袋をはめ、アソコに指を入れる準備をしてくる。膣内をほじくられることがわかっただけで、子宮がヒクっとした。ご馳走を前にじゅるりとヨダレが流れるように、愛液が改めて滲み出ていた。
    「凜サン。婦人科検診も過去二回やってますネ?」
    「それは、まあ……」
    「イクかやどうか確かめます。急に反応変わったらおかしいからデス」
     もっともらしい理由を付け加え、審査官は指を差し込んできた。
    「うぅ……!」
    「どうです?」
    「アタタカイですねー。あ、いまヒクってしましたヨ」
     肥満男が感触を尋ね、審査官はその実況をする。
    「んっ、あぁ……! くっ、あっ! あっ!」
    「気持ち良さそうデスネー」
    「症状はどうです?」
    「健康問題無しヨ。ただ愛液いっぱいナノネ。くちゅくちゅ音が鳴りマース」
     証拠を示すようにして、審査官は指を活発に出し入れする。
    「あっ! あっ……!」
     すぐにでも決壊が迫り、凜は大いに仰け反った。
     
    「あぁ──!」
     
     潮が審査官の白衣に振りかかり、濡らした染みを作ってしまう。
    「イキましたねー」
    「やぁ……」
     イったことを言葉にされ、凜は恥じらい、目の前の審査官から、自分をイカせた男から目を逸らす。
    「一応カクニン。今のは絶頂でよろしい?」
    「……はい」
     そう答えることも恥ずかしかった。
    「ダブルチェックとして、僕も触診するよ」
     ポジションを入れ替わり、今度は肥満男がくちゅくちゅと、凜のアソコから愛液を掻き出した。活発なピストンはもはや性的な責めに他ならず、数分も経たないうちに凜は絶頂を迎えていた。
    「あぁぁぁ──!」
     仰け反り、ビクつく凜に対して、二人の男が向けてくるのは、面白おかしいものを楽しむ視線に過ぎない。
    「またかぁ」
    「またデスネー」
     呆れんばかりに肩を竦められ、凜はますます情けない気持ちになる。
    「っと、まだまだ」
     次に肥満男が行うのは、アソコと肛門に同士に指を入れる方法だった。ピースの形で上下の穴に狙いを済まし、挿入は行われる。
    「はぁ……! くっ、ん!」
     二ヶ所への異物感が侵入して、凜は喘いだ。
    「ん? アソコもお尻も、キュウキュウ反応してるね?」
     そんなことを言いながら内部を探り、しばらくすればピストンが始まっていく。指の出入りに足首がよがり、喘ぎ続ける凜は、またしても数分以内に絶頂していた。
    「イキましたねー」
     審査官はどうやら紙に書き込み記録している。
    「うんうん、ナカまで震えてるのがよくわかるよ」
     肥満男も満足そうだ。
     凜が腰を痙攣させ、膣肉は肛門までピクピクと震えているのが、肥満男の指にもよく伝わっているようだった。
     さすがに、もう終わる。
     ここまでやれば十分に違いない。
    「次はこれね」
     そう思った凜に対して、クスコを見せびらかしてくる肥満男と、そこ隣に並ぶ審査官は、実に意地の悪い、悪魔が笑うそのものの笑顔を向けていた。
     銀色の、クチバチのような器具が入り込む。
     金属のひんやりとした固い感触を膣に感じて、凜自身の温度が器具の表面を温める。操作によってクチバチが開いていくと、穴の幅は広げられ、膣穴を肉眼で覗きやすい、視診に最適な状態が出来上がる。
     まずは肥満男がペンライトを片手に覗いてきた。
    (普通にアソコ見られるより……やばい……)
     羞恥心で体温でも上がってか、凜は赤らんだ額から汗を浮かべる。
    「血色がいいね? うねうねしてて、ピンク色の表面に細かく血管が走っているのがよくわかるよ」
    (じ、実況……しないで……!)
    「ワタシもチェックしまーす」
    「はい、どうぞ」
     まるで自分のものを譲るように、肥満男はポジションを明け渡し、今度は審査官がペンライトで中身を照らす。子宮の入り口まで見られていそうな、秘密を暴かれている感覚に、凜の頭は沸騰を続けていた。
     脳が煮え立ち、脂汗が額に吹き出す。
    「子宮の口がミエマスね」
     本当に見えていることを教えられ、凜はますます汗を流した。
    「じゃあ、カメラ付きの器具を入れるよ?」
     肥満男は棒状の器具を握っていた。先端にカメラを取り付け、膣内を確かめる。医療用の道具だが、どうしてなのかモニターが凜の目の前まで運ばれてきた。
    「あぅぅぅぅ!」
     挿入され、モニターに映像が現れる。
     まさに肉の壁だった。スーパーに並ぶ生肉の色合いに似て、壁と壁の閉じ合わさった肉穴は、挿入によって割り開かれ、レンズの押し当たった部分がそのまま画面を占めている。器具が前後にピストンすれば、映像もそのまま前後して、遠ざかっては奥へと迫る。
    「どうかな? 自分のアソコを覗く気持ちは」
    「あぁ──くぁっ、ううう──!」
     全身が興奮して、アソコが愛液を垂れ流す。肉壁から分泌されているものが、ちょうどピストンの滑りを良くしてしまい、水音と凜自身の喘ぎは高まっていた。
     
    「あ──────」
     
    「あーあー」
    「一体何回イクんですか?」
     その手でイカせておきながら、二人して凜のことを馬鹿にしてくる。ケラケラとからかう笑いの視線が刺さり、恥辱感でならなかった。
    「あなたのイった回数、記録しましたカラネ?」
    「よかったねー。いっぱいイケて」
     惨めだった。
     こんなにも惨めで、情けのない思いを味わうなど、この人生で想像したこともなかった。
     
         †
     
    「こんなの……見せないで下さい……」
    「こんなのじゃないよ。君の体だよ」
     
     凜は自分の下半身を見せられていた。
     分娩台で開脚をしたままの、アソコばかりか肛門まで映す形でカメラを介し、モニターには凜自身の恥部が大きくアップされている。先程までのジェルが残って、愛液も垂れた尻毛は水分によって束ねられ、皮膚にべったりと張り付いている。
     陰毛も汗と愛液を吸い込んで、肌と密着しているのだった。
     肥満男と審査官で、二人して視姦していたのは、一体どんな光景なのかがはっきりとわかり、凜は画面を直視できずに目を背ける。
    「よーく見なさい。これがアイドル渋谷凜のね、イキまくった下半身なんだから」
     そんな言い方までしながら、凜に直視を強要してくる。
    「ところでデスネ?」
    「形式的な確認なんだけど、さっきも言ったように厳しくやるよう通達が出ていてね?」
    「イキまくったのはわざとですか?」
     審査官が行う質問を凜は理解できなかった。
    「どういうこと、ですか……」
     イクのにわざとも何もない。イッたフリなら演技で行う余地はありそうだが、本当の絶頂をコントロールすることなど凜にはできない。もしできるなら、イカないようにした方が、むしろここでかく恥は減らせる。
     いいや、きっと自分は減らさない。
     一回目の頃ならいざ知らず、今の自分はもう……。
    「違法な物品を誤魔化すため、わざとイキまくったんじゃないか? ってことだよ?」
    「ありえない……」
     つい反射的な言葉で、凜は即座にそうこぼした。
     だいたい、仮に何かしら隠し持っていたところで、ここまで調べて出て来ないわけがない。なおも疑うつもりなら、レントゲンか何かで胃袋を調べるべきだ。
    「形式的なカクニンでーす」
    「診察でイク変態なのか、そうじゃないのか。口頭で確認が取れればいいってわけ」
     もう理由などなんでもいいらしい。
     凜に屈辱的な台詞さえ言わせれば、きっと何だっていいのだ。
    「変態って、認めるから……イッた……から……」
     モニターから瞳を逸らしつつ、男二人とも視線が合わないように、恥を堪えて小さな声で宣言する。たったこれだけのことで体は疼き、凜はどうしようもなく知ってしまう。こんな風に扱われ、性的に喜んでしまう性癖は、もう完全に芽生えてしまったのだ。
    「せっかくだから、さっきみたいに『アイドル渋谷凜は』って、きちんとした宣言にしてみない?」
    「いいデスネー」
     盗撮されていることを、この部屋がカメラにまみれていることを凜は知らない。
     知ってさえいれば、まだしも拒んだことだろう。
     しかし……。
     
    「アイドル渋谷凜は……性器と肛門を検査されて、それでイッちゃう変態です……認める……認めるから……」
     
     宣言を済ませた時、凜を見下ろしながら、二人の男は邪悪に歪んだ顔立ちで勝ち誇っていた。アイドルを完全に屈伏させ、征服を果たしたかのような喜びに歪んでいるあまり、本当は人間のフリをした本物の悪魔が存在して、その魔法で従わされていたのではないかと、妄想じみたことさえ考えてしまった。
     
         †
     
     ライブは成功した。
    (あんな思いまでして入国して、それで失敗なんて! 絶対にありえない!)
     それが全てであった。
     人生最大の屈辱に耐え、羞恥を乗り切り、変態宣言までさせられながら、それでもライブの準備を進めて開催したのだ。あんな思いまでして行うライブとは何なのだろうと、疑問さえ抱いた凜だったが、会場を盛り上げた熱気をそのまま肌に感じると、初めてのライブで覚えた高揚感を思い出していた。
    (まだ体が熱い……)
     ライブ後は観光の休暇で数日間滞在して、帰国予定を迎えて空港を訪れる。
     やはり、出国前にも検査はあり──
     
    (駄目だ……。やっぱり、楽しみになっちゃってる。変態とか言われても、もう否定できないんだ……)
     
     変わってしまった自分を思い、検査室への案内を受ける。
     ところが、そこにいた面々は、あの時の審査官とは別人で、肥満男さえおらず、そもそも担当者は気遣いと申し訳なさに満ちた女性であった。
    「ごめんなさいね。仕事なの。こちらからは断れなくて……」
     いかにも仕方がなさそうに、罪の意識さえ抱えながらも取り組んでいた。
     基本的な項目は一回目や二回目と変わらない。全裸となり、全身の視診を行い、アソコや肛門さえも覗かれたが、羞恥や屈辱を煽る言葉はかけてこない。指をアソコに入れたついでにピストンしてイカせようとしてこない。
     だから当然、隠しカメラも存在しない。
     あまりにも手早く済まされ、かえって驚いてしまった凜は、悶々としたものを抱えて飛行機に乗る。
    (いや、まだだよね)
     日本到着後、空港でも検査はある。
     大丈夫、まだチャンスはある。
     そうまで残念がる自分に気づき、凜は座席で目を伏せた。
     
     もう、本当に……。
     ……私、変態だ。