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  • 第14話「悲しい痛み」

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     そこにあるのは肉体の痛みではない。
     オナニーをやらされて、屈辱的なお願いを強要され、どこまで人を辱めればいいのかもわからない、最低の先生を相手にして、ただじっと挿入を受け入れなくてはいけない運命を呪いたかった。
     ワレメに塗りつけるかのように、切っ先が上下に動く。
     ベッドシーツに頭を沈め、見上げてみれば、大きな栄光でも掴んだような満足感に満ち溢れた表情がそこにはあった。
    
     ……馬鹿みたい。
    
     心の中で見下すと、少しは感情を保てる気がした。
     しかし、切っ先がワレメを押し開き、そして膣口への進行が始まると、俊樹と付き合った記憶が走馬灯のように駆け巡る。小学五年の時の、初めて助けてもらった時の思い出、デートをするようになった思い出。
     アメリカに行く前の別れと、再会の感動。
     転校初日から今日にかけての、ありとあらゆる思い出の数々が濁流のように押し寄せる。
    「俊樹くん…………」
     無意識に、小さな声で、彼氏の名を口にしていた。
    
    「俊樹じゃないぞ? 先生だぞ?」
    
     そして、邪悪な笑顔が夢音を見下ろしていた。
    
     ずにゅぅうぅぅぅぅぅぅ――――――――。
    
     ついに肉棒が収まったのだ。
     自分自身の指で慣らしてあり、普通よりも広がっていた初体験の穴には、恐れていたほどの痛みはない。
     それは肉体の痛みがないだけだ。
     たとえ誰を好きになり、どんな恋をしても、処女は処置員に捧げる悲劇的な運命が実現して、胸の痛みこそが強かった。
    「ははっ、プレミア女子一〇〇人目だ」
     そんなことを嬉しそうに言ってくるような人間と、アソコで繋がってしまっている。
     ……ひどい。
     人助けなどと言って、この男は制度を利用して楽しんでいる。
     だから、苦しい。
     肉穴の幅より少しは大きいものが入ってるせいで、押し広げられている感覚がアソコにある。腹の内側を空かしたら、ヘソの近くに届いていそうな長さを収められ、そのまま腰が股に触れてくる感触がおぞましい。
     ……こんな時代じゃなかったら。
     心の中には激しい嘆きがあった。
     二人一緒にミイラ症の存在しない時代に生まれていれば、初めてこの感覚を味わうのは、きちんと俊樹との性交だったに違いない。自分の意思で心を許し、迎え入れたペニスであれば、どんなに幸せだっただろう。
     こともあろうに、先生は三脚台のカメラだけでは飽き足らず、しきりにハンドカメラを向けてくる。
    「うーん。これはいい。使い心地も。マンコもプレミアだな」
    「使い心地って……」
     最低だった。
     人を物と見做した発言ができるだなんて、それを心の中だけに留めることさえせず、繋がった本人に聞かせるなんて、一体どこまで酷い先生だというのか。
     悪辣な人格が剥き出しになればなるほど、自分の中に収まるペニスへの不快感は増幅する。こんな男と繋がるために、どうして夢音自身がオナニーを見せびらかし、自ら準備をしなくてはいけなかったのか。お願いの台詞まで強要され、屈辱を強いられなければいけなかったのか。
     ……なんなの!?
     心は叫ぶ。
     ……私っ、悪いことしたの!? 前世で何かしたの!?
     嘆きのあまり、涙の筋まで流れ出し、その雫は髪の中へと消えていく。
     制度を承知で恋愛に燃えたのも、自分なりの考え方を持っていたのも、そこまでは夢音自身の問題だ。お互いに傷つくことはわかっていて、それでも熱々に過ごしてみたい気持ちを優先させた。
     だが、その相手がこんなに酷い先生だというのは、何か罰でも当たったのか。
     制度さえなければ、生涯決して結合することのなかった人格の持ち主が、こうして腹に収まっているのだ。
     先生は一度ハンドカメラを置き、両手で夢音の全身を撫で回す。
     ……気持ち悪い。
     まるで体中に虫が這うのを我慢する思いで、肩や腰を撫で、胸まで揉んでくる先生の手の平に耐え忍ぶ。
    「お前の友達だがな。桜野よりも、お前の方がでかいぞ?」
     人と比べるような品評まで始めていた。
    「マンコの感触も、桜野の場合は締め付けが強すぎて、一回目の時はこっちが痛いくらいだったが、二度目はさすがに楽しめたな。ところが梓川、お前の中はいきなり気持ちいい。名器ってやつだ」
     ついにはペニスが動き始める。
     ゆったりとした出入りによって、ニタニタと夢音のことを味わって、うっとりとしたものを目に浮かべる。
    「お? 動くとますますわかる。亀頭に擦れてくるヒダの感じがいいんだ」
     ぎし、ぎし、ぎし、ぎし。
     ピストン運動のペースが変わるにつれ、ベッドの骨組みまで揺らされて、軋んだ音が聞こえてくる。
     ……お願い、せめて一回きりにして欲しい。
     受精すれば、女の子は免疫を獲得できる。
     できなかった場合、中出しした精液から得られる免疫は一時的なもので、数週間以内に効果はなくなる。
    「こんなことってあるか? 記念すべき一〇〇人目だぞ? それがここまで名器だなんて、こんな出来過ぎた偶然があるか? 神様は俺の味方か?」
     ……ああ、そっか。
     と、神様と聞いた瞬間に夢音は思う。
     運命の神様など、もちろん物の例えとしか思っていないが、もしも存在したら、神様は夢音の気持ちなど考えていない。夢音よりも、目の前にいるゲスな先生を優遇している。そうとでも思わなければ、自分がこんな目に遭う理由を説明できない。
    「ほら、お前も感じていいんだぞ?」
     ……やだ、感じたくない!
     たとえ気持ち良かったとしても、こんな先生なんかに、感じている声や顔など与えたくない。気の小さい夢音にできるのは、せめて快楽を抑え込み、感じまいとすることで、先生が楽しむ要素を少しでも小さくしたかった。
    「……んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ」
     だが、ペースが速まっていくにつれ、夢音のぴったりと閉ざされた唇から、何かを堪えた声が漏れ始める。
     ……エッチな顔とか、声とか、あげるのは俊樹くんだから!
     先生なんかに、先生なんかに。
     そんな気持ちを胸にして耐え忍ぶ。地獄が過ぎ去るのを待つために、天井や壁の模様を眺め、それで時間を潰してやろうと必死であった。膣内で動く肉棒から意識を逸らしたくてたまらなかった。
     喘ぎ声や表情は、俊樹だけのものにしたい。
     それなのに……。
    「あっ、あぁぁ……あっ、んんぅ…………! んあっ、あぁぁ…………!」
     だんだん、声を抑えられなくなってくる。
     慌てた夢音は、両手で必死に口元を押さえ始めるが、それを見た先生はニヤっと喜んでいた。
    「もうそこまでしないと声が出るか? お前、エロいぞ?」
    「んぅ…………んっ、んぅ………………」
     両手の下で、ぴったりと閉じているはずの唇からは、手の平に向かって呻き声を吐いてしまっている。
     夢音は首を横に振りたくった。
     自分がエッチな子になるのは、俊樹のことを考えたり、俊樹の性欲を肌で感じた時だけだ。心を許した相手からの、いつかは繋がっても構わない恋人から向けられた気持ちにこそ、夢音は答えてやりたいのだ。
     ……エッチじゃない、エッチじゃないもん!
    「他の子は一回目は感じないことの方が多い。それがこの様子だ。プレミアマンコな上に、本人も感度が高いとあれば、もう完全にこれはプレミアボディだな」
     先生の揺さぶりは激しくなる。
     嵐のようなピストンの中で、それでも声を抑え続けた夢音だったが、いつしか両手とも力ずくで横へどかされ、唇の力だけで喘ぎを封じるようになっていた。
    「あ! あん! あぁっ、やだ! やだやだ! ああん!」
     それさえ、いつかはできなくなり、気づけば心の中まで嵐の激しさに巻き込まれ、途中からは自分の喘ぎ声など自覚すらできずにいた。
     その激しさが不意に落ち着き、全身から力が抜けて、まともな思考が帰ってくるのは、膣内に射精されたことに気づいてからだ。
    「ほら、赤ちゃんの素だぞ?」
     気持ち悪いことを言いながら、先生は夢音の内側で肉棒を脈打たせ、子宮に向けて放出してくる。精の熱気を内側に感じた夢音は、これで子供が生まれるのだろうかと、そんな感傷に浸っていた。
     ……生まれるんだ。
     こんな人との子供が、国家施設が引き取るとはいえ。
     夢音自身には責任も愛情も持つことができない、これから命へと変化していくものが、子宮の中に出来上がっている。
     肉棒が引き抜かれると、ワレメと切っ先のあいだには、長い白濁の糸が引いていた。
     何十分ものあいだ棒が収まっていた内側から、急に抜き取られて得られるのは、やっとこの男との時間が終わったという、安心ともいえない安心だった。
    「さて、次はお礼をしてもらおうか」
    「まだ……するんですか……」
     もう嫌だ。
     もう、先生となんて……。
    
    
    
    


     
     
     

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  • 第13話「屈辱の挨拶」

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     処置室には浴室やトイレが完備され、行為前に身体を清潔にできる。
     既にシャワーを済ませ、バスタオル一枚で待ち侘びていた源一は、やって来た夢音が途端に慌てて赤らむ反応に、待たされた苛立ちも忘れてご機嫌となった。
    「遅かったな。時間は過ぎてるぞ?」
     と、教師らしく注意する。
    「……すみません」
    「彼氏といたのか?」
    「そうです」
    「それはそれは」
     さぞかし、何か色々な話をして、悲劇のヒロインの思いでこの部屋を訪れたことだろう。それを見送る彼氏の気持ちもハードなものに違いない。
    「キスとか、してきたので……。先生にはファーストキスはあげられません」
    「ふん」
     たったそれだけのことが、夢音にとっては精一杯の反抗か。
     だとしたら可愛いものだ。
    「前の事前指導ではお前の合意を得られなかったが、今回は法的な強制力がある。わかっているな?」
    「……はい」
    「命を救うためだ。わかっているな?」
    「はい」
    「勃起や射精には相手の協力が欠かせない。受精させれば目的は達成でも、そこに辿り着くためには色々と道のりがある。理解してるな?」
     要するに、フェラなどの奉仕も命令できるということだ。
    「……はい」
     夢音は顔を暗くして俯いた。
     そもそも、ただ受精させれば済むのなら、スポイトでも使って送り込めばいい。不思議な話だが、実際に男性器を挿入しなければ、免疫の獲得率は低い。これが治療になると発見した人間は、一体どうやって見てけたのか。
    「まずは服を脱げ」
     ハンドカメラを片手に源一は命じた。
    「……は、はい」
     夢音の視線は、他にも三脚台に立てたカメラをあからさまに気にしていたが、確かに処置を行った証明のため、源一は必ず撮影を行っている。
     世の中には、相手の女の子が可哀想で、処置室ではただお茶を飲んで済ませる馬鹿が存在する。あまりにも悲しむので抱けなかったと供述する制度不実施の男が、数年に一人や二人は捕まっている。
     馬鹿馬鹿しい、素直に性欲に従えばいいものを。
     夢音は俯ききったまま、前髪を下に垂らした幽霊の有様で、たどたどしくブレザーのボタンを外していく。紺色の布を脱ぐことで、その下にある白色が剥き出しに、そして脱いだブレザーは力なく床に放り落とされる。衣服を掴む力さえないような、弱々しい握力から離れる落ち方だった。
     その調子でワイシャツを脱ぎ始める。
     ボタンを外すだけの動作に手こずって、やっとのことで外しきっても、今度は脱いでしまうことへの躊躇いをあらわにする。
    「好きなだけ恥じらえ。いい絵になる」
     そう声をかけてやった。
     途端に顔が横に向き、耳だけがこちらを向いたまま、ワイシャツが左右に開かれていく。白いブラジャーが姿を現し、スカートも力なく手放され、下着姿になっただけでも夢音は真っ赤であった。
     ありもしない蒸気が見える気さえしてくる。
     背中に両手を回し、後ろでホックをぱちりと外す。ショーツの中に指を入れ、腰から足首へと下げていく。
     ついで靴下も脱ぎ、全ての衣服が無造作に散乱した後、源一はシャワーを命じた。
     シャワーを済ませた夢音は、わざわざバスタオルなど巻いた上、両手でガードまで固めていた。腰がくの字に折れた滑稽な有様で、ペンギンじみた歩き方でベッドに近づく様子はなかなか笑える。
     いよいよベッドに上がってもらう。
     バスタオルを外すように命じると、夢音は無造作に横たわり、なおも胸とアソコを手で隠したまま石のように固くなっている。ハンドカメラを片手に源一もベッドに上がると、緊張感が増してのことか、体の硬度が増したように感じた。
    「まずは証明記録のため、きちんと正しいポーズで挨拶をしてもらう。いいな?」
     処置室での記録を取らない、性交もしない、数年に一人の馬鹿は、間違いなくチェックシートしか出していない。可哀想だからヤれなかっただ何だのと、そういうケースをなくすためには、きちんと撮影した方がいいのだ。
     そして、証明記録の撮影には作法がある。
     両足をしっかりと広げ、アソコがよく見える形を取ってから、学年や名前を述べるというものだ。
     ただでさえ固い夢音である。
     石化でもしているのかと問いたいほどの、ぎこちなくカクカクとした動きで、ともすれば自分自身の貼り付いた手をアソコからどかすのに、夢音自身が苦戦していた。
     しかも、M字開脚をしようとすると、まるで磁石の反発に似た現象でもあるように、広がった脚が引っ込み閉じてしまう。そんなことの繰り返しで、やたらに時間をかけているものの、源一としてはニヤニヤと楽しんでいた。
    「そんなに恥ずかしいか?」
     へへっ、そうかそうか。
     彼氏はせいぜいキス止まりで、裸を見せたり、触らせたことすらないのだろう。新鮮なうちに皮を剥いた果実のように、とても美味しそうではないか。
    「やっとポーズが決まったな」
     指示を出してから形が出来上がるまで、五分以上は使っていた。
    
     ――まんぐり返しだ。
    
     腰を地面と垂直にしたような、股を天井に向けたポースで、高らかになった尻が源一の腹に寄りかかっている。源一はハンドカメラを向け、全ての恥部を晒した夢音の有様を拝んでいた。
     実にいい。
     まさに顔から火が出てきそうなほど、羞恥の赤らみから熱を感じる。アソコのワレメに連なって、その下には黒ずみの薄い皺の窄まりもある。今にも泣き出しそうな涙目で、頬も唇も歪めた顔つきは滑稽だ。
    「さあ、挨拶をしろ」
     誰が考えたのか。
     クラス、番号、名前だけでなく、他の項目まで含めた挨拶は、処置においては義務付けとなっている。罰則がなく、絶対的なルールではないから、守らない馬鹿もいるようだが、こんな面白いルールを無視するのは勿体ない。
     まず、夢音は両手をアソコにやり、自らのワレメを開く。
     既に極限まで赤面しきった顔に、なおも赤い色素が継ぎ足され、密度を増しているように思えてきた。顔から火がでるほど恥ずかしい、という形容表現の通りの現象が本当に起こったら、このまま焼死体にでもなりそうだ。
     プレミアマンコが開帳され、白桃の色合いをした綺麗な肉ヒダと、肉芽や膣口が丸見えとなった。
    
    「さ、三年A組……出席番号、二番……。梓川夢音、です。
     処女で、キスしかしたことはありません」
    
     ハンドカメラのモニターには、尻の穴から顔までが綺麗に収まっている。
    「オナニー経験、有りです……。それから、生理は危険日で、一回で赤ちゃんができるかもしれません……」
    「ではオナニーはいつからしている?」
    「それは、その……」
     夢音は顔を背ける。
    「こっち向け、答えろ」
     強めに言うと、背けた顔が向き直る。
    「小五から……」
     消え入りそうな小さな声で夢音は答えた。
    「早いなぁ? 何かきっかけはあるのか?」
     さながら楽しい尋問だ。
    「きっかけなんて、わかんないです。覚えてなくて……」
    「転校初日の時から、桃井俊樹は既に彼氏だったんだよな。ってことは、実際はいつから付き合ってたんだ?」
    「しょ、小五……」
    「ほう?」
    「告白は再会した後ですけど、私としては付き合ってるくらいの気持ちで……。それで、俊樹くん、アメリカに行くって言い出したから、一度は別れて……」
     なかなか良い言質を取った。
    「彼との始まりも、オナニーの始まりも小五となると、オナニーのきっかけは彼氏じゃないか? 妄想するようになったんだろ」
    「そっ、そんなこと……」
    「目が泳いだぞ? 正直に答えろ」
    「…………はい。その通りです」
     まるで隠してきた罪について問い詰められ、もう隠す気力がなくなり懺悔を始めたかのような、いけないことを打ち明ける顔だった。
    「指は何本まで入る」
    「三本…………」
    「入れてみなさい」
    「それはっ、その……許して下さい…………」
    「馬鹿を言うな。いきなり挿入したら痛いだろ? これはお前のためなんだ。お前の気持ちいいポイントを知っているのはお前自身だ。自分のためにも、痛みが和らぐように自分の指でほぐしなさい」
     もっともらしい風に言ってみせながら、気弱な夢音をそうやって制御する。
    「はい……わかりました…………」
     アソコに右手がやって来て、まずはワレメの表面を撫で始める。くすぐるような優しいタッチでスイッチを入れ、やがて人差し指から薬指にかけ、三本を束ねた指が潜り込む。ワレメを左右に広げつつ、あっさりと入った後は、その出し入れが始まった。
    「気持ちいいか?」
     と、尋ねる。
    「……っ」
     その答えは、頬をピクっと歪め、瞳を逸らすというものだった。
    「このままオナニーしながら答えてもらう。初めて指を入れたのはいつか覚えているか?」
     オナニーの強要など、もうルールで決まった内容ではない。
     源一が好きでやらせている内容だ。
    「……その、覚えてないです」
    「答えろ」
    「ほっ、本当にっ、だって私、お風呂では石鹸を塗った指を入れてたことがあって……本当は良くないって知るまで続けてて、小さい頃からなので、本当に覚えてなくて…………」
    「その頃までは、泡立てた指を入れ、中まで洗うのは良いことだと思ってたんだな?」
    「小三か、小四くらいで、本当は駄目だって知りました。正確には覚えてないので、初めて指を入れた時期は本当にわかりません」
    「わかった。だが、オナニーのために指を入れたのは覚えているんじゃないか?」
    「それも正確には……」
    「時期だけでいい」
    「しょ、小五……」
    「小五で桃井俊樹と仲良くなって、それからオナニーするようになったってことは、その時点でセックスの知識はあったってわけだ」
    「は、はい……」
    「で、妄想の種には彼氏を使ったのか?」
    「……そうです」
    「最初から気持ち良かったのか?」
    「そんなこと……。最初はあまり感じなくて、ただ好きな人と繋がるって想像が素敵だと思っていただけで……」
    「ただのエッチな妄想じゃなくて、仲良しな時間を過ごす妄想だと?」
    「そうです」
    「だが、だんだん気持ち良くなったりはしなかったか?」
    「……一応」
    「週に何回くらいする?」
    「三・四回です」
    「多いな。エッチな子だ」
     特に一般的な平均を知っているわけではないが、夢音を辱めるためには、データがあろうとなかろうとエッチ呼ばわりする方が面白い。
    「……そ、そんな……ずっとじゃないですっ。したい気分と、そうじゃない気分の時があって、まったくしない時期もあります。気分になった時期だけです」
     だから自分はそこまでエッチではないという、必死な言い訳をしているらしい。
     だが、律儀に出し入れを続けていた三本指は、だんだんと湿り気を帯びている。見え隠れするたびに、皮膚が粘液をまとっている。
     くちゅり、くちゅりと、少しずつ水音も聞こえて来た。
    「ではムラムラには浮き沈みがあっても、する時は週に三回から四回か」
    「そうです」
     息も乱れ始めていた。
     人前でオナニーをするだけでも、きっと羞恥で脳が弾けそうな心境だろう。顔が燃え続けているほどの感情がひしひしと伝わるが、その一方で身体は感度を増し、とうとう腕で口元を隠し始める。
    「いいか? 梓川、お前は先生を受け入れるためにオナニーしているんだ。痛みが和らぐように、きちんとほぐし、濡らしておく準備をしてるんだ」
    「…………」
     夢音は何も答えない。
     ただ、何かを言いたいような目だけが源一に向き、そのあいだにも指の動きは止めていない。
    「彼氏とはどこまでした?」
    「キス、まで……」
    「そうか。裸は見せたか?」
    「いえ……」
    「なら、そのオッパイも、尻の穴も、全部俺が初めて――ああ、検査があるか。医師の目はともかく、検査以外では俺が初めて見ているわけだ」
     愛液が増えれば増えるほど、美味しそうな料理の匂いがしてきたように、源一の口内にはヨダレが溜まる。
     よほど効いたのか。
     かけてやった言葉の数々に、夢音には苦悶が浮かんでいた。
    「あ、あの……いつまで…………」
     こんなことは早くやめたい思いが見え隠れする。
    「そうだな。そろそろ挿入してもいい頃だ。お願いしてみせろ」
    「え……」
    「俺は命を救ってやる立場だ。命の恩人だな。その恩人に対して、失礼のない態度で挿入をお願いしろと言っている」
     愉快だった。
     心の底から愉快でならない。
     一体どこの世界なら、こんな命令を合法的にできるだろう。ここまで楽しい特権を味わえるのなら、生まれ変わっても処置員になりたいものだ。
    「お願いします。い、入れて……下さい……」
    「オチンポという言葉を使って、もう少しだけ具体的に言ってみなさい」
     まるで国語の作文テストのように、源一は出題を行った。
     夢音は一瞬凍りついていた。
     源一の命令は、頭にマグマの詰まった激しい羞恥でさえも、少しのあいだは凍るほどい、衝撃的なものだったらしい。
     しかし、氷はみるみるうちに溶けていき、恥じらいがたっぷりと塗られた表情へと立ち戻る。
    「お、オチン…………その、絶対に言わなきゃ駄目ですか?」
    「駄目だ」
    「…………」
     よほど抵抗があるらしい。
     少しのあいだ押し黙り、涙目を浮かべて沈黙に沈んでしまうが、そうしなければ許さない圧を顔でかけているうちに、やがては観念したらしい。
     心の中で、抵抗感との戦いを済ませ、やっとのことで夢音はねだった。
    
    「お願いします。先生のオチンポを、その……。わ、私のアソコの穴に挿入して下さい……」
    
     一体、どんな感情に締め付けられてのことだろう。
     表情がこれまでにないほど激しく歪み、果てしない恥辱を全身から放出している。屈辱でならない、心の底から悔しがる信号が放たれて、見ているだけで心の色合いを受信したような気にさせられる。
     親の仇にでも奉仕しなければ、きっとここまでの恥辱を感じることは難しい。
    「よし、ではそろそろ」
     挿入の準備に入ろうと、源一は夢音に体勢を変えさせる。まんぐり返しから、ただの仰向けでのM字開脚へと移り変わると、いよいよ先端をワレメに当てて、処女を味わいにかかっていく。
    
     ずにゅぅうぅぅぅぅぅぅ――――――――。
    
     本人の指でそれなりに慣らされて、普通の処女よりもあっさりとスムーズに肉棒が収まると、夢音は涙の粒を浮き上げていた。
    
    
    


     
     
     

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  • 第12話「処置室へ」

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     六月、初旬。
    「もう、か……」
     処置の時期が決定され、六月から八月のあいだまでには妊娠をするように、梓川夢音の運命は決定された。
     処置室は地下にある。
     部屋の場所がわかりやすいと、そこに出入りする女子生徒の姿を目撃した生徒は噂を立てるだろう。そんな配慮から、そこそこに人の出入りはあるが、目立ちすぎることのない保健室の、さらにドアを開いた地下階段を降りていけば、壁や床がコンクリート造りとなった無機質な廊下が続いている。
     長い一本道が数十メートルは続く廊下には部屋番号の札がかかったドアがあり、この内側で処置は実施されるのだ。
    「夢音」
     左手を握ってくる彼の手に力が籠もる。
    「俊樹くん……」
     お互い、きっと葬式のように暗い。
     もちろん、わかっていて付き合い続けた。清く健全な付き合いで、少しはいやらしいタッチもあったが、この日を迎えるまでのあいだ、ほとんど真面目に交際した。
     いっぱい、キスだけはしてきている。
     お互いの舌を貪り会うような激しいものまで、目一杯に愛し合ってきた二人のあいだには、確かな絆が結ばれている。
     だからこそ、わかる。
     無表情に見える俊樹だが、本当は胸を抉り抜かれるような痛みで苦悶している。それは夢音も同じであり、窒息しそうな苦しさで息もできない。
    「俺達の気持ちが強い証拠だな。でなきゃ、こんなに痛くない」
     手を繋いだ方とは逆の手で、俊樹は胸に手を当てていた。
    「うん。でもね、後悔はしてないよ」
     夢音も自分の胸に手を当てる。
    「俺も、後悔ってわけじゃない。傷つくのも上等、愛し合ってやるって、ずっとそんな感じだった」
    「楽しかったよね」
    「ああ、楽しかったし、今後も楽しもう」
    「うん。処置が全部終わったら……」
     そうすれば、性の自己決定権は晴れて本人に回って来る。恋人とのセックスが法で縛られることはなく、堂々と肉体関係を結べるのだ。
     そのための手続きだと思おう。
     そう思うことで、心の均衡を保とう。
    「着いちゃったな」
     とうとう、指定の部屋番号に到着した。
    「ずっと着かなくてよかったのに」
    「ああ」
    「入らなきゃいけないんだね。この部屋に……」
     ここに担任の先生が待っている。
    「本当は行かせたくない」
    「制度じゃなかったら、俊樹くんなら私のことを攫ってくれるよね」
    「まーな」
     俊樹はそういう人だ。
     転校初日でクラス全員の前で宣言を行い、先生に腕を引っ張られた時も、声をかけて止めてくれた。だったら、制度でさえなければ、きっとこれから一緒に逃げる。
     でも、逃げられない。
     ミイラ症の恐怖が頭を掠める。みるみるうちに人が干からび、死んでいく様を目撃したショックは、本当は今でも胸に残っている。
     その恐怖がある以上、行くしかない悲しみばかりが溢れてくる。
    「そろそろ、行くね」
     夢音がそう言った瞬間だ。
    「夢音!」
     俊樹は急に夢音の腕を掴み、強引に引っ張っていた。夢音のことを壁に押しつけ、力尽くで奪うかのように、突然の獣となって唇を貪っていた。
    「と、俊樹……く……んっ、んちゅぅ…………」
     舌をねじ込み、唾液を流し込んでくる激しいキスも、もう初めてではない。最初は驚いた夢音も、すぐに目を細めて受け入れて、自らの舌を差し出す。
     長い、長いあいだキスをした。
     もしかしたら、これだけで一時間は過ごしてしまったかもしれないほど、本当にじっくり貪り合い、やっとのことで顔を離すと、俊樹の口周りは唾液まみれだ。
    「よごれてるよ?」
     ヨダレを注意するなんて、子供に注意をするかのようで夢音は苦笑した。
    「夢音こそ」
    「ばか。よごしたのは俊樹くんだよ」
     夢音はすぐにハンカチを出そうとするが、その前に俊樹のハンカチが現れて、人の手でヨダレを拭いてもらうことになる。
     自分の方が子供みたいなことになってしまった。
    「俺の痕跡を付けた」
    「……うん」
    「拭いておくけど、染み込ませた」
    「染み込みました」
    「約束する。処置の最中もお前のことは好きだし、全てが終わったあとも、ずっと一緒にいよう。高校生になっても恋人同士でいよう」
    「約束だよ? 俊樹くん」
    「ああ」
     今度こそ、夢音はドアの前に立つ。
     ドアノブに手を伸ばしかけ、しかし最後にもう一度だけ、俊樹に熱っぽい視線を送って、目で唇を求めていた。
     お別れの挨拶として、軽いキスで唇が触れ合う。
    「また、明日ね? 俊樹くん」
    「また明日」
     別れを済ませ、今度は本当にドアノブを掴んだ夢音は、あの担任が待つ部屋の中へと入っていく。ドアが閉ざされる最後の一瞬まで、本当に最後まで夢音のことを見送る視線に振り向き、夢音は微笑みを返していた。
     妙な疑問だ。
     戦争に行くわけでもないのに、必ず生きて帰りたい、おかしな気持ちが湧いている。生き死にのある話ではないのに、まるでもう二度と会えないかもしれないような、それこそ俊樹がアメリカへ行ってしまった時ほどの悲しみが溢れてくる。
    「ああもう、やだな」
     頬に流れる涙の粒を指で拭う。
     そして。
     担任、稲田源一が待つ場所へと夢音は進んだ。
    
    
    
    


     
     
     

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  • 第11話「運命を思って」

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     恐怖と緊張に飲まれ、先ほどの梓川夢音は何も逆らえなかった。
     まず、心が硬直してしまう。
     もっと目上相手にはっきりとものが言えたら、ああして腕を引っ張られることはなかったはずだ。
     あのままなら、きっと色々とされていた。
     あのタイミングで現れた桃井俊樹の存在は、まさしく救いの神だった。
     先生は噂通りだ。
     毎年、クラスの女子全員とやろうとする。一人一人品定めして、価値の高い子と低い子に分けている。悪い噂を夢音は信じていなかった。噂というもの自体、信憑性があるものだとは思っていなかった。
     だが、本当に稲田源一は嫌な男だ。
     常日頃から女子生徒にいやらしい視線を向け、処置員だから実際に手を出して妊娠までさせる。
    
     あんな人の子供を生むなんて……。
    
     制度による妊娠は、結婚して生む子供とは別に考えるように小さい頃から教えられ、その通りの価値観を持つ人間も少なくない。
     現実として、中学三年の時期に生んでも育てられない。
     命に責任を持てないのに、それでも生ませなくてはならない制度下では、処置で生まれた子供は国の施設が預かる。それが普通であり当然だと学ばされ、クラスの中にも施設出身の子はいくらかいる。
     それはいい。
     いつか妊娠する身としては、処置で孕むという現実に、そうした教えに縋って折り合いをつけている。
     きっと、時代特有の価値観だ。
     ミイラ症がなかった時代の、今とは異なる価値観に小説を通して触れ、昔の常識や倫理を知っている夢音にとって、捨てる前提で生むかのようで、とても酷いことに思えてしまう。
     では先生の子供を受け入れ、育てたいかと言われたら、それは想像もしたくない。施設制度に縋るしかないし、そのつもりではいるものの、一体先生はどう考えているのだろう。
     避妊無しでするのなら、それは命を作る行為だ。
     生まれる命について、どう考えているのか。
    
    「ねえ、俊樹くん」
    
     そっと、夢音は声をかけた。
    「ん?」
     目の前に座る俊樹の視線が、夢音を向く。
     デート中だった。
     あれから、俊樹の手で引っ張られ、約束通りにショッピングモールに出かけた上、オシャレなカフェで丸いテーブルを挟んでいる。カップに注がれた美味しいコーヒーを啜りつつ、二人きりの時間を楽しむ夢音なのだが、嫌な目に遭った直後もあって、ふとした拍子に源一の顔や声が脳裏を掠める。
     あんな人とのセックスが未来には待ち受けている。
     今は考えたくない、処置のことも……。
    「私達、付き合ってるよね」
    「当たり前だ」
     断言してくる。
     だが、これは一度も確認したことがない。
    「中学生での恋愛って、どう思う?」
     言葉にすると、今の自分達をそのまま疑問視して聞こえそうで、思わぬ受け取り方をされはしないか不安があったが、一度は聞いておきたかった。
     どう、答えるだろう。
     少しのあいだ、俊樹は沈黙に沈む。静かにまぶたを閉ざし、カップの中に残ったコーヒーを飲み干すと、その瞳が改めて夢音に向く。
    「未来を気にするか、過去を気にするかだよな。俺はたぶん、未来を気にした上で、そのあと過去も受け入れなきゃいけない」
     そう聞くと、やはり自分の恋愛観に人を巻き込み、辛い思いを背負わせているような気もしてくる。
    
    「でも、それがわかってようとなんだろうと、好きなもんは好きだ」
    
     俊樹の視線には夢音を貫く熱があった。
    「そっか。そうなんだね」
     夢音は安心した。
     処置前のうちに燃やす恋愛感情の方が、制度の後よりきっと純粋なものだと、自分はそう考えていたからいいが、相手が同じ考えとは限らない。俊樹の気持ちを聞けたことで、心にあった曇りは晴れ、この人となら一緒にいられそうだという気持ちはより固まる。
    「好きなもんは仕方ない。恋愛は処置が済んでからって考え方の子がアメリカにいたけど、それ待ってたら、お前みたいに可愛い子は他の男に取られかねない」
    「もう……」
    「だから、もし夢音が恋愛は高校生から派なら、予約でも入れたと思う」
    「それ、どっちみに告白じゃん」
     そんな風に夢音が苦笑した時だ。
    「それと――」
     まだ、何かあるらしい。
     一体何だろうと、夢音は静かに待ってみるが、照れ臭そうな言いにくそうな、はっきりとしないたどたどしさで、俊樹は急に目を泳がせる。
     俊樹のこんなところ、滅多に見ない。
     きっと、彼女である自分しか、そうそう見る機会のない顔だ。
    
    「キスしよう」
    
     心臓が飛び出るほどにドキリとして、夢音は赤らんだ。
    「き、キス……」
    「お前の唇、くれ」
     真剣な眼差しだった。
     心の底から何かを求め、実現したい熱意を宿す瞳に、ならば夢音も心を決める。
    「…………うん」
     夢音は静かにぎこちなく、しかし内心では舞い上がりながら頷いていた。
    
     キス? 俊樹とキス?
     本当に?
     本当に本当に!?
    
     …………
     ……
    
     その夜、満月の下で唇を重ね合わせた。
     月の綺麗な場所を知っていたらしい。
     山の自然公園で手を繋ぎ、夜景を眺め、視線を移せば大きな月が輝く下で、自然と空気が切り替わり、二人のあいだにしか存在しない独自の世界が生まれていた。
     心が一つに溶け合って、お互いのするべきことがわかっていたかのように抱き締め合い、長い長い時間のあいだ、二人は唇を重ね続けた。
    
     だが、次の日だ。
    
     制度による性交時期が決定され、担任からその通知を渡された。
    
    
    


     
     
     

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  • 第10話「最低の担任」

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     その日の放課後、稲田源一は廊下に一人の生徒を見かけた。
     ちょうど、トイレから出て来たらしく、女子トイレの方角からこちらへ向かってくる女子生徒は梓川夢音らしい。
    「あ……」
     これからすれ違おうとしている途中、きっと小さな声で反応をしていたが、気まずい顔でそのまま源一の元に歩いてくる。性器検査の立ち会いを受けた手前、できれば避けたいのだろうが、しかしあからさまに背中を向けることもできず、仕方なしに進んで来ている。
     廊下の床ばかりを見つめ、源一とは視線を合わせないように、さっさとすれ違ってしまおうとする早足を見て、源一は声をかけてやる。
    「よお、梓川」
     名前を呼べば、肩がピクっと動いていた。
    「……なんでしょうか」
    「図書室にでも行ってたのか?」
    「本、返したかったので」
    「ほう、読書はいいことだ。ところで、今日は恥ずかしかったなぁ?」
     検査に話題を及ばせると、ただでさえ俯いた顔がますます下向きに、前髪が暖簾のように垂れ下がる。
    「クラスのみんなは俺が孕ませるんだ。体の様子はきちんと見ておきたかった」
     返す言葉など思い浮かんでは来ないのだろう。
     聞かされるまま俯き続ける夢音に、源一は嬉々として思いを口にする。
    「処置員ってのはいい。若い命を俺の手で……いや、ナニで救うんだ。人助けはヤリがいがある。お前だって、発症は嫌だろう?」
     こちらは相手の命を握っている。
     ワクチン体質に生まれ、こんなにも楽しい仕事にありつけるとは、最高すぎる運命だ。
    「ところで、お前は桃井俊樹と付き合ってるんだったな」
     源一は夢音の肩に手を置いた」
    「……やっ」
     きっぱりと嫌がることができない夢音の、とても小さく拒もうとする声は、ちょっとした物音でかき消されてしまいそうなものだった。
    「顔を見せろ」
     不安そうでならない面持ちで、夢音の視線が源一を向く。
    「彼氏がいるところを悪いが、制度だから受けてもらう。処置員の仕事は随分とやってきたが、お前はプレミア女子の記念すべき一〇〇人目だ」
    「プレミアって……」
    「俺が個人的に気に入っている女子だ。見た目、スタイル。まあ基準は気分次第だが、レアリティの高い女子をプレミア女子ってことにしている。お前は文句なしのプレミアだ」
    「そ、そんな……ゲームみたいに……」
     ショックに目が丸くなっていた。
    「文句でもあるか?」
    「だって、女の子はみんな悩んだり、悲しんだり、色々してるのに……」
    「なに、仕事はきちんとするさ。大量の処女を相手にしてきたプロだ。きちんと手ほどきしてやるから安心しろ」
     肩に置いていた手を滑らせ、ブレザー越しの豊満な乳房へ移してやる。
     ぎょっとした驚愕の瞳が揺れ、きっぱりと拒むことのできない性格からか、何かを言おうと口は開きこそするものの、目上の大人を相手に中学生女子は萎縮する。
    「今から、事前に練習するか?」
     なかなかの揉み心地を味わいながら、源一は問う。
    「だ、大丈夫……です……」
    「何が大丈夫だ? 時間はあるから大丈夫という意味か?」
    「ちが……」
    「ちょうど、体調不良とかで処置の予定が空いてたんだ。梓川、変わりに事前指導をしてやる」
     そうと決まれば、源一は夢音の手首を掴み、力ずくでも引っ張って、校内にある処置室へ向かおうとした。
     一番綺麗な性器だったのだ。美しい桃色の表面に光沢を散りばめた一品は、まさしく芸術と言える。見た目も、胸の大きさも気に入っていたが、性器の美しさを込みにして、梓川夢音はプレミア女子というわけだ。
    「あ、あの……わたしまだ……」
     必死に言い訳を探し、逃れようとしているが、掴まれた手首を引き離す勇気はない。こちらが大きく出ていれば制御は簡単だ。
     さて、どう楽しむか。
     予定のない処置で妊娠させると、後々の報告処理が面倒だが、本番無しでも遊ぶことは十分できる。
    
    「先生」
    
     ところが、そんな源一の背中に声をかけ、せっかくの盛り上がりを台無しにしてくる下らない男子がいた。
    「ん? ああ、桃井か」
     冷や水でもかけられたようだ。
    「俺の彼女に何か用ですか?」
     やれやれ、格好いいことだ。
    「なに、ちょいと事前指導を――」
    「正式な処置なら法的な強制力があるけど、事前指導は合意がないと問題になる。って、聞いたことあるんですけど」
    「もちろん合意だが?」
     と、源一は断言する。
     長年、担任を務めつつ処置員もこなしてきた源一は、似たような経験が数回ある。オドオドとした彼氏がぎこちなく食い止めようとしてきたが、こうして断言すれば一蹴だった。
    「いいえ、言えないだけす。目上に強く出るのが苦手で、肝心な時でも逆らいにくい。俺達の年頃はそういうものです」
    「ちっ」
    「夢音を離してくれませんか?」
     男尊女卑の権化のような制度下でも、女性の権利について小うるさい団体は存在する。下手な知恵を回されては面倒だ。
     人の命を握る立場は強いが、問題が大きくなれば、それを潰したり口止めに回るのが手間になる。
    「いい彼氏じゃないか」
     邪魔者への感情は押し殺し、源一は急に真っ当な教師を演じた。
    「このあとデートなんですけど」
    「わかったわかった。ま、せいぜい楽しんでくれ」
     ここは潔く手を離し、夢音を俊樹に引き渡す。
     遊べなかったのは苛立つが、考えようによっては哀れなものだ。制度があるにも関わらずの交際など、本気であればあるほどお互いに傷は深まる。
    「行こう。夢音」
     今度は俊樹が手首を掴み、夢音を引っ張る。
     カップルの背中を見送り、仕方がないのでまた別の処置に備えることにした。
    「ま、いいさ。今回はな」
     どうせ、夢音とはヤることになるだ。
    
    
    


     
     
     

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