渋谷凜 全裸健康診断 外伝 ~肛門検査編~




 PCRとは、正式にはポリメラーゼ連鎖反応と言われている。
 これはDNAを複製・増幅させる反応のことであり、限られたサンプルから十分な解析を行うために用いられる手法である。
 これを利用した方法がPCR検査と言われるわけだが、ウイルス検査などを目的とするにあたって、より確実な採取を行うにこしたことはない。

 ――肛門PCR検査。

 防疫の観点から病院に呼ばれ、令状によって強制検査を言い渡されたのは、海外ライブを終了してからのことだった。
 本番に向けて重ねたレッスンの日々を糧にして、大勢の歓声を浴びた瞬間の、体中が熱くてたまらない感覚は、翌日になってもなお余韻として胸に残る。
 熱気が完全には冷めやまないうちに、プロデューサーを通じて令状が届き、渋谷凛は指定の病院を訪れることになる。
 令状を受付に渡し、待合室でしばらく待つと、やがて検査室へと案内され、凛は複数人の医師に囲まれることになる。
 医者が現地人なのは言うまでもない。
「渋谷凛ちゃーん。ライブ見ましたよー?」
 長身の細身医師は、憧れのアイドルを前にしたファンと変わらない純粋な笑顔を浮かべ、心から嬉しそうに握手を求めてくる。
「こらこら、公私は分けておけ」
 口調は軽いがそれを諫めるのは、背の低い小柄医師だ。
「まあいいんじゃないですか? 握手くらいは」
 眼鏡医師はボサボサの頭を掻くむしり、特に関心もなくぶっきらぼうにそう言った。
 この三人の医師を中心に、大学からの研修として、さらに十人もの若者達がこの検査室の中には集まっている。
(見事に男だらけ……とんでもない…………)
 だが、配慮の無さへの憤りより、凛はむしろ興奮していた。
(……駄目だ。私、変態なんだ)
 凛は過去既に何度も裸での身体測定を受け、検診を受け、肛門をほじくるような検査まで体験している。羞恥極まる体験の末、それに興奮する性癖に目覚めてしまい、凛は今のうちから期待に胸を疼かせていた。
 ライブの余韻として残った熱は、少しずつ別の熱さへと変換され、これから起こることへの期待の方に温度を上げる。時間と共に小さくなり、もうじき消えるはずだった心の火は、こうした形で油を注がれ大きくなる。
「あの、握手よろしいですか?」
「構いませんよ? 応援ありがとうございます」
 凛は快く手を差し出し、細身医師の手を握る。
 アイドルと握手をしてしまった事実に、細身医師は感涙に震える勢いだった。手の平に残った感触を握り、いかにも手放したくないように抱き締めていた。
 ファンに喜んでもらえるのは素直に嬉しい。
 だが、思う。
(なるんだよね。裸に)
 ファンである長身医師は、握手どころか凛の裸まで拝み、果ては肛門検査まで行うことになっている。握手やサインどころではない、もっと刺激的な体験をすることになるのだが、こうなると不安になる。
 裸を見せることには、いくらか慣れてしまっている。
 ただ、やはり毛を剃っていない。
 ライブは脇の出る衣装だったため、脇だけはきちんと処理をして、ライブ最中はつるりとしていた。その後は放置したまま伸び始め、既に数センチほどにはなっている。
 陰毛と尻毛に至っては完全な未処理であり、ファンを幻滅させるには十分な毛量を誇っているはずなのだ。
 だから不安だ。
 応援してくれるファンの目線で、体毛をどんな風に思われるか。
「ま、さっそく脱いでもらおうか」
 小柄医師の指示により、凛の脇には脱衣カゴが用意され、衆人環視の中での脱衣を始める。
 水色のジャケットを脱ぎ、シャツをたくし上げる時、四方八方から絡みつく視線は極めて熱い。じりじりと皮膚を焼き、焦がさんばかりの出力で、いたるところにレーザー照射を浴びているかのようである。
 シャツを脱衣カゴの中に畳み、白いブラジャーの姿をあらわにすると、殺到する出力がより強まったように感じられた。
 脇毛はそう目立つ長さではない。
 長身医師はまだ気づく様子はないが、このまま脱いでいった時、果たしてどんな顔をすることだろう。
 ジーパンの留め具を外し、チャックを下げ、凛は両手で下げていく。脱ぎ切ったジーパンを脱衣カゴに、これで完全な下着姿となる。
 純白の生地に白銀の糸を縫い込み、刺繍によって花模様を割かせた下着は、光の反射でちょっとした輝きを帯びている。
 そんなブラジャーを外すため、凛は両手を後ろに回す。
(全員の視線、浴びるのか……)
 何人にわたる視線になるか、凛は数えてなどいない。
 ただ、ゆうに十人は超えている。
 乳房を晒す頃には頬が赤らみ、胸に殺到してくる視線をこれでもかというほど感じていた。見えない何かが這い回り、皮膚をむず痒くさせてくるような感覚が生まれるほど、目という目の数々に胸は舐めまわされていた。
 そして、凛はショーツに指を入れ、引き下げる。
 丸裸で直立する頃には、胸ばかりかアソコにも、そして尻にも視線は集中した。びっしりと生え揃い、毛先も長い陰毛に、尻の割れ目から飛び出た尻毛も、彼らの視線を大いにかき集めているに違いない。
 ファンがいくら幻滅してもおかしくない、未処理の毛量も観察されている。
「こ、これは……」
 握手を交わしたばかりの長身医師も、打ちのめされたような顔をしていた。
(そういう顔をされると、私もちょっと……)
「あーこれこれ、そんなところの毛はお前さんだって何もしとらんだろう?」
 眼鏡医師は凛の毛量にも無頓着で、検査に支障がなければ何でも良さそうな風である。みんながそうあってくれれば救いはあるが、小柄医師に、見学の面々も、誰も彼もが何か思うところのありそうな顔をしていて、それが凛には辛いところだ。

     *

 まずは身体測定の開始となり、凛は身長計の土台に足を合わせて、柱には背中をつける。胸もアソコも隠すことなく、ピンと背筋を伸ばして顎も引き、あとは頭上にバーを下ろしてもらうだけの体勢となっていた。
「ほれ、私が計ってやろう」
 眼鏡医師が真横に迫り、凛の腹に手を置いた。
(せ、セクハラ……いや、痴漢かな……)
 数秒ほどさりげなく、かすかにさすってきた上で、凛の頭にバーを下ろす。頭皮にそれが触れた時、同時に手の位置も上がって来た。腹にべったりと張りついて、皮膚を揉むようにしていた手は、下から乳房を持ち上げんばかりにぶつかってきた。
(わざとだ。絶対)
 乳で遊ばれ、恥辱感が膨らむと同時にかえって興奮してしまう。
 乳首が突起して、触れればいつでも感じる状態が出来上がり、体中が火照ってウズウズとしてきている。
「身長は一六五センチ、っと。書いておいてね」
「はいはい。やってますとも」
 眼鏡医師の声に応じて、小柄医師は仕方なさそうに書類への書き込みを始めている。
 身体測定から始めるのは、データ作成の一環らしい。
 新種のウイルスが検出された場合、保有者の身体データを統計用の記録として取り込んで、データベースを作成する。例として、もしも背が高いほど感染確率が高いなど、身体の特徴と関連性があったなら、そこから研究が進むといったわけである。
「次は体重計ね」
 眼鏡医師は体重計を指す。
 凛はそちらに向かって行き、すぐさま乗り上がる。
「五二・九キロ」
 デジタル目盛りに表示された数字を眼鏡医師が読み上げ、それを聞いた小柄医師がやはり書き込む。
 その傍らで、長身医師が呆然としていた。
「ちがう………………」
「またそんな顔をしてお前さんは。違うとはなんのことだ?」
 眼鏡医師は呆れきっていた。
「公式プロフィールと…………」
「なに? それがそんなに大変なことか? どれほど違うかは知らんが、体重なんて毎日のように減ったり増えたり、誤差なんていくらでもある」
「誤差なんかじゃ…………」
「激しいレッスンがあるんだろう? いくらでも痩せるし、太るんじゃないか? 移り変わることくらいある。公式プロフィールの数字だって、計った当時は正しかったんじゃないのか?」
 ショックを受ける長身医師に対して、ファンでも何でもないのだろう眼鏡医師は、心底どうでも良さそうにしていた。
「公私分けろと言っただろう。ショックを受けたきゃ、帰ってからにしろ」
 小柄医師としても、長身医師の様子を鬱陶しそうにしているのだった。
(でも…………)
 凛は思う。
(……ちょっと、申し訳ない)
 握手で喜んでもらい、本当に嬉しそうにしていた先ほどまでの顔を思い返すと、体重も違っていれば、体毛だって未処理の自分で申し訳ない気持ちになってくる。
 続けてスリーサイズの測定だ。
 メジャーを持つ眼鏡医師の前で、凛はそっと両手を水平に広げていた。軽く抱きつくようにして、今にも本当に密着しそうな迫りようで、眼鏡医師の顔は胸に近づく。メジャーが背中に沿い合わさり。乳房の上に目盛りが重なる。
 ついでに脇を覗き込み、毛の具合を見た眼鏡医師が、そのままチラリと長身医師を見た様子までは、凛も気づいていなかった。
 指は当然のように当たっていた。
「…………」
 凛は何も言わない。
 目盛りを合わせようとする際、さも手こずってみせながら、何度か乳首に擦りつけてきたことにも、指が乳房に食い込んでいることにも、何も言わない。
「八二センチ」
 読み上げた内容を書き込むボールペンの音が聞こえた。
 メジャーが緩み、そのままウエストに移動する。ヘソの近くに合わさった目盛りへと顔が近づき、読み上げられる。
「六二センチ」
 声に出すなり、次のヒップへ移っていく。
 緩んだメジャーを直そうと、眼鏡医師は改めて抱きつくように、後ろ側へと両手を回す。そのついでのようにして、にぎっ、と、尻たぶを握られた。
(っ!)
 軽く驚くが、凛はやはり何も言わない。
 無駄に数秒ほど撫で回され、その行為を誰が咎めることもなく、せいぜい長身医師が何か反応していたくらいだ。巻きつくメジャーの目盛りは性器の近くで、ふんわりとした草原のふくらみを潰しながら合わさった。
 アソコに顔が迫っている。
 その落ち着かない感覚に、凛は顔の赤らみを強めていた。
「八五・三センチ」
 スリーサイズの計測が終了する。
 三つの数字が書類に書き込まれたところで、凛は次の内科検診のため、椅子の上に座らされることとなる。

     *

 内科検診も眼鏡医師が行った。
 椅子に座って向かい合い、ペンライトで喉の中身を覗き込む。下のまぶたを裏返し、血色を確かめる。それらが済めば、次に眼鏡医師の顔は乳房に近づき、ジロジロとした観察が始まっていた。
「健康的なものだね。血色も良好」
 眼鏡医師は嬉しげに、楽しげに、右の乳房をじっくりと、次に左もじっくりと、順々に凝視した上、聴診器の準備を始める。
 胸の中央に当たって来ると、眼鏡医師は聴診の音に意識をやる。
 しばらくはぺたぺたと、聴診器の位置が何度か変わり続けて、左胸のあたりにも当たってきた。
 内科検診は滞りなく進んでいる。
 しかし、ここでは肛門まで調べると聞いている。進めば進むほど、その瞬間が近づくということであり、期待と不安は胸に膨らむ。
(色々、されちゃうかも……)
 内心では身構えていながら、それが楽しみなようでもある。肛門に指でも入れられ、ほじくられる瞬間を思っただけで、太ももが無意識のうちに擦り合わさり、体が期待感を滲み出してしまっている。
「触診するからね?」
 眼鏡医師は乳房を揉み始めた。
 両手で遠慮無く鷲掴みに、遠慮無く捏ね始め、指の蠢きによって凛の乳房は変形を繰り返す。五指が食い込めば、その隙間から乳肉がはみ出るかのようになり、潰さんばかりのタッチでは上下から圧縮される。手の平を押しつけるような揉み方によっても潰されて、凛の乳房はあらゆる揉み方によって、それに応じた変形を続けていた。
 その様子を小柄医師は横合いからまじまじと、真剣なのかギラついているのか、何とも言い難い視線で観察している。
 そして、長身医師の目は、凛と眼鏡医師とを行き来していた。
「んぅ…………んっ、んぅぅぅ………………」
 揉まれるうちに乳房にスイッチが入ってきて、徐々に甘い痺れの気配が出る。
(感じそう。いや、もう気持ちいいか。まだ少しだけど、このままいったら、胸だけで声が出るかも)
 乳首の突起に、眼鏡医師はとっくに気づいているだろう。
「へぇ? なるほど? ふーん?」
 何をどう納得しているわけなのか。
 この乳房を揉むことで、どんな医学的な意見が出てくるのか、凛にはまったく想像もつかない。あるいは単に楽しくて揉んでいるだけで、本当は触診などとっくに済んではいないだろうか。
「んっ、んぅぅ…………んっ、んぅ………………」
 まだ、明確な声は出ない。
 しかし――。

 もみっ、もみっ、もみっ、もみっ、

 指が動き続けていることで、乱れかけとなった息から、喘ぐ気配のようなものは出てしまう。明確な声とは言い難い、息を吐き出す際にたまたま声らしきものが聞こえる程度の、本当にただの気配だけである。
「…………」
 長身医師は何も言わない。
 だが、ファンとしては思うところがあってのことか、だんだんと眼鏡医師の顔ばかりを見るようになっていた。
 その様子に眼鏡医師も気づいたのだろう。
「なんだ? 変な顔して。ははーん? お前さん、やってみたいんだろう」
「いえ、そんな……」
「なーに、遠慮するな。そんなにやってみたかったなら、始めからそう言えば良かったんだ」
 眼鏡医師は席を立ち、遠慮の様子ばかりを見せる長身医師を、それでもそこに座らせる。
 相手が変わり、凛の乳房に長身医師の手が触れた。
「んぅ………………」
 手の大きさが違う。
 体格の違いのせいか、眼鏡医師よりも指が長く、少しだけ太い。
「こ、これが……」
 感動しているかのようで、体毛への思いを振り切っているわけでもない。まだ思うところのありそうな顔をしながら、それでも指は夢中で動く。
(んっ、気持ちいい……これ、もう絶対触診じゃ…………)
 触診としての用はとっくに済んでいてもおかしくない。
 それでも、まだ調べるところが残っているように、指の蠢きは止まることを知らずに繰り返され、ついには乳首への集中的なタッチが始まった。
「あっ……!」
「し、失礼。我慢して頂けると」
「……はい。大丈夫、です」
 急に喘いでしまったことで、周囲の見学者のざわつきが感じられた。
 気恥ずかしくなり、赤らみを強めて目を伏せるが、下を向いた先に見えるものは、自分自身の乳首が指先で転がされている光景だ。
 二本の人差し指により、上下左右にクリクリと責め抜かれる。くすぐるようなタッチで四方八方を向かされて、甘い痺れが乳房の内部を駆け巡る。乳輪をぐるぐるとなぞられて、今度は親指と人差し指の力でつままれ、引っ張られ、もうここに触診を受けているという感覚は残っていない。
 ただただ、愛撫されていた。
「んっ、んぁぁ…………あっ、んぅぅぅぅ………………」
 肩がモゾモゾと、しきりに動いてしまう。
「い、痛いですか?」
「……いえ、痛くはないです」
 気持ちいいなどとは言い出せず、代わりにますます顔を火照らせた。
「感じているってところだろうな」
 言えなかったことを眼鏡医師が言ってしまい、長身医師な彼に対して驚くが、当の凛が恥ずかしそうにしてしまう。カッ、と頬から火を噴くような、顔から何かを放出してしまうような反応に長身医師も気づいていた。
 言葉にこそしていないが、本当に感じているのだと、様子や反応によって伝えてしまったも同然である。
「感じて……渋谷凛が……」
 何を思ってか、指遣いが活発となり、乳首への責めは激しくなる。
「あっ、んぅぅぅ……! あっ、んふぁ……!」
 気配だけだった喘ぎ声は、息の乱れに応じてしだいに明確な声となり、凛の表情も快感に染まった悩ましげなものとなっていく。
「渋谷凛が……!」
 アイドルをこの手で感じさせる経験など、普通はできるものではない。
 興奮してしまった長身医師は、またしても乳房全体を揉みしだき、執拗なまでに指を蠢かせる。揉むどころか、表面をじっくり撫で回し、感触を必死になって覚え込む。下から掬い上げるようにして、プルプルと揺らして遊ぶことまでする。
 ありとあらゆるタッチをやり尽くし、やっとのことで長身医師が検診の席を立つ頃には、乳房にはすっかり甘い痺れが充満しきっていた。
 今改めて乳首に触れば、静電気が弾けるように快楽が走るだろう。
 すっかり性感帯のスイッチが入り、アソコも期待の湿気を広げている。明確な愛液こそ出ていないが、ワレメの表面には蒸し蒸しとした温かいものが浮かび上がり、陰毛にかけてまでしっとりと、水分の気配は広がっている。
 ここから先は、いよいよ肛門からサンプルの採取が行われる。
 診察台を指し示され、凛はそこで四つん這いになるのであった。

     *

「改めて見ると、まあびっしりだねー」
「まったくだが、支障はないからどうでもいいな」

 デリカシーのない感想を口にする眼鏡医師と、その隣の小柄医師は、尻毛など些事に過ぎないとばかりの態度である。機会さえあれば乳房に触れ、セクハラめいたことをしてくる眼鏡に対して、小柄医師は目の前の凛の裸に特別な興味を示していない。
 見学に集まる面々の顔もそれぞれだ。
 あからさまな顔もあるなら、患者をそういう目で見てはいけない、真面目な使命感で取り繕う顔もある。
 周囲がどうであれ、清潔なシーツを掛けた診察用ベッドの上で、丸裸で四つん這いとなる渋谷凛の姿がそこにはあった。
(みんなの……みんなの視線が……たぶん、ここにいる全員……)
 三人の医師に加え、全ての見学者が凛の後ろ側に位置を取り、おかげで凛は全員に対して尻を向けている形である。
 肘をつき、上半身を低めた四つん這いから、尻の割れ目が開けて見え、肛門の周囲に生えた黒い放射状の毛の集まりが伺える。
 これから行う内容は肛門検査だ。
 ならば、自然とそこに視線は集まる。
 毛まみれの肛門に対して、それぞれの胸の中には何か感想があることだろう。アイドルなのにここは汚い、見えない部分はこんなものか。そういった思いはもちろん、アイドルなど関係無しに引き攣っている者もいるのだろう。
 尻の穴を見せる。
 ただそれだけでも、純粋な羞恥心は大きく膨らむ。ついでのように性器も丸見えのはずであり、耳まで染まり上がる凛であるが、そこにみっともないものを見られる恥ずかしさが重なるのだ。
(剃れるものなら、剃ってはいるんだけど……)
 枕営業の相手が毛を好むため、凛にそれは許されていない。
 水着撮影の直前、ライブで着る脇の出る衣装など、体の露出度に応じて脇毛なら剃る機会があるだけだ。
「カメラの準備は」
 小柄医師の声がスタッフに問いかける。
「準備完了です」
 凛に向け、カメラが回されているのだ。
 医学解説用のビデオとして、三脚台を使った固定カメラと、二人ほどいるハンドカメラのスタッフにより、三つものカメラによって凛の体は撮られている。こうしている今にも、凛の下半身は秒刻みで動画時間を延ばし、メモリーで容量を増やしているのだ。
「ま、せっかくだ。お前がやったらどうだ?」
「あ、はい。では是非」
 内科検診では遠慮のあった長身医師も、何か吹っ切れてのことなのか、小柄医師に振られるなりあっさりと引き受ける。
「では凛さん。これから綿棒を挿入して、粘膜の採取を行います」
「わかりました」
 期待と緊張を帯びて、少しだけ震えた声で凛は答える。
 その直後、包装ビニールを破く音が聞こえ、綿棒の準備がされたのだと凛に伝わる。形状は耳かき用の綿棒と変わらないだろうが、医療用の意図で作られた綿棒は、長身医師の気配と共に後ろに迫った。
 近づいて来る足音と、ベッドに腰が当たった小さな小さな衝撃で、お尻のすぐそこに立つ長身医師の存在が凛にはわかる。四つん這いの姿勢を利用して、股の向こう側を覗き込めば、自分自身の影の向こうに白衣が見えた。
 ぺたりと、尻たぶに手が置かれる。
「んぅぅぅ…………!」
 凛の肛門は敏感だ。
 その近くに手が来ただけで、まるで肛門が期待感をあらわにしたように、甘い痺れを発していた。凛にそうしたつもりはなくても、肛門の方が勝手に信号を解き放ち、自分を愛撫してくれとアピールしてしまったかのようだった。
 すりすりと撫で回してくる手つきが感じられ、すぐには綿棒を入れてこない。
 しばらく撫でれば、そのすりすりとした手つきは止まる。止まりこそすれ、離れることはないままに、もう片方の手が綿棒を入れるために近づいた。
「んあっ!」
 肛門に触れられた途端、ピリっと電気が走ったようにヒクついた。
「どうしました?」
 綿棒は反射的に離れていた。
「す、すみません……敏感なので……」
 消えたいような恥ずかしさに頬を震わせ、小さな声で凛は答える。
「そうでしたか。てっきり、痛いのかと」
「いえ、痛くはないので、大丈夫……です…………」
 反応はしてしまうので、大丈夫というには語弊がある。
 だが、腫れているのでも、特別な疾患があるのでも何でもなく、感度の高ささえ差し引けば何も問題のない箇所だ。
 そこに改めて綿棒が触れてくる。
「んっ、んぬぁっ!」
 声は出てしまうが、堪え抜く。
 肛門をヒクヒクと蠢かせてしまいながらも、潜り込んでくる綿棒をどうにか皺の中に咥え込み、さながら尻尾でも生やしたような形が出来上がる。
 そして、凛はしばらくこのままとなった。
 この国で流行っているという新型ウイルスがいる場合、ある程度の時間をかけなければ、綿棒に定着しないと聞く。確実な付着を待つための時間は一分以上にわたるもので、その一分間のあいだ、凛の尻に手の平は置かれたままだった。
 この最中、撫で回す動きは再開して、長身医師はすりすりと楽しむ。
 ようやく綿棒が抜かれても、また次の綿棒が差し込まれる。
 挿入時には、やはり皺に擦れてきて、凛は甘い声を上げてしまう。定着を待つ時間のあいだも尻たぶを撫でられ続け、二本目の綿棒が終わるなり、三本目の綿棒が出て来た時には、一体いつになったら終わるのかがわからなくなってきた。
(い、いや……いいけど……!)
 凛は興奮していた。
 十人以上の男達に囲まれて、視線を一身に浴びながら、肛門に綿棒を入れられている。撮影までされている。この状況に体はどんどん熱くなり、脳の温度まで上がってくるかのようである。
「次は指を挿入します」
 さすがに身構えた。
 こうした扱いにかえって病みつきになり、心の底では求めるようになっている凛は、かえって喜ぶくらいである。指を入れてもらえるのはいいのだが、堂々と喜んでしまっては、ここにいる男達は一体どんな顔をすることか。
 表面的には惨めな扱いに耐え忍び、地獄の終わりを待つか弱い少女でなくてはならない。
「では」
 ビニール手袋を嵌めた手で、まずは肛門にジェルが塗られる。
「んぅぅ!」
 声を上げてしまうのは、ひんやりとしたものが触れてきたせいもあるが、それ以上に肛門をぐにぐにとマッサージされる気持ち良さだ。指が押し当てられた瞬間に、ひどく甘ったるい痺れが尻から全身に拡散して、両手の指までぴくりと反応してしまっていた。
「んっ、んぁぁ……あっ、あぅ……んぅっ、んぅぅぅ…………」
「凛さん? あの、医学者向けに公開されますから、一応声は抑えた方がいいですよ?」
 長身医師がまったくの善意で告げてくる。
「んあっ、す、すみませ――んぅっ、んぅぅぅ……!」
 抑えているつもりだ。
 しかし、抑えきれないものが溢れて、乱れきった息遣いに乗って喘ぎが出る。

 ずにゅぅぅぅぅぅぅぅ………………。

 指が挿入されてくることで、異物感を内部に感じた凛は、入り込んでくる際の指と肛門の摩擦で快楽に翻弄された。
「んあっ、あぁぁ……! あぁぁぁ……!」
 声など抑えようがなかった。
 肛門が雷の発生源であるように、神経を内側から引き裂かんばかりの快楽電流が尻や下腹部を打ちのめし、筋肉をビクビクと震わせる。肛門も当然蠢き、ヒクヒクとした収縮で指をリズミカルに締め付けていた。
 根元まで埋まってきた指の感じに意識がいき、快楽へと集中力が引っ張られ、凛の頭は内部の指でいっぱいになっていく。
「んっ、んっ! んっ、んぁっ、あぁぁ……! あっ、あぁぁ……!」
「凛さん?」
「す、すみませ――んあっ、あ! ほ、ほんとにっ、敏感で……あぁぁ……!」
「そうですか。わ、わかりました」
 長身医師がアイドルにどこまで幻想を持っていて、どの程度まで現実と割り切っているのか、凛には知ることができない。
 わからない分、凛の頭には勝手な想像が膨らんでいた。
(幻滅されてるかも……あぁ……あっ、んぅぅ…………!)
 尻毛を生やした上、肛門で感じて喘ぐ。
 その声も我慢できない。
 渋谷凛のいやらしさを思い知り、幻想はひび割れて、何か汚いものを見るような目を向けてくる。ひょっとするなら、肛門の柔らかさでアナル経験の豊富さに気づき、アナルオナニーのことも見抜くかもしれない。あるいはアナルセックスの経験があると思うだろう。

 ずぷっ、じゅぷっ、にゅぷっ、ちゅぷっ、

 指のピストンが行われた。
「あっ、んぅぅっ! んっ、んっ、んっ、んあぁっ、あっ、あん!」
 その出入りによって、活性油に使われたジェルが泡立ちながら、ヨダレで汚い音を立てるのにも似た水音が鳴ってしまう。ピストンの感覚ばかりか、聴覚によっても恥辱感を高められ、凛は尻で大いに悦んだ。
(だめっ、気持ちいい! 本当に――駄目だっ、もっとして欲しく――なっちゃう……!)
 ピストンによる快楽で、いつしか愛液が滴っていた。
 尻が高めに、上半身は少し低めた姿勢のため、ワレメから滲み出るものは、アソコから腹部にかけて流れていく。その際に陰毛に差し掛かり、だから愛液が草原に染み込んで、水気を吸った毛先が固まり尖っていく。
 内股の皮膚も伝って流れ出し、滴の固まりが膝へ向かおうとしていた。

「んぅぅぅぅぅ――――!」

 さらにはイった。
 自分でも予兆がわからず、実は存在していた絶頂スイッチが急に押されてしまったように、凛は前触れもなく痙攣していた。頭が内側から破裂して、衝撃波でも放ったようなビクつきさえあった。
 そして、次の瞬間には見るからに愛液の量が増え、ポタポタと、シーツの上にはいくつかの水滴が、長い長い銀の糸を引いて落ちるのだった。
「あれま、まさか絶頂までするとは」
(……っ!)
 眼鏡医師の声に、凛は引き攣る。
「まったく、破廉恥な娘だ」
(……っ!!!)
 呆れたように言う小柄医師にも、凛は激しく顔を歪める。
「イった?」
「……っぽいね」
「そっか。そいうこともあるのか」
「感度高かったんだろうな」
「アナル経験のある患者や被験者に当たれば、こういうこともありえるわけだ」
「まあ、これも教訓として覚えておこう」
 見学者のあいだでも、凛の絶頂に対する声がヒソヒソと広がって、わざとなのか何なのか、わざわざ日本語で語られた私語の中には、呆れも嘲りも、こんなことでも見学で学んだ教訓の一つとしようとする声も聞こえて来た。
 指が引き抜かれ、一瞬のあいだだけ、ぽっかりと開いた肛門はそのまま直径を広げていた。指の太さに合わせた幅まで、本当に一瞬だけだが開いたままの時間があった。

     *

 何故だかポーズの変更を求められ、凛は仰向けのM字開脚となっていた。
 ポーズを変えた意味は何かあるのか、どうして仰向けの必要があるのか、何ら説明は行われず、しかし凛は興奮ながらに従った。
「あぁぁ……! あっ、あぁぁ……!」
 ガラス棒を入れられていた。
 三本も綿棒を入れ、採取を済ませたはずなのに、まだ挿入行為が続く上、長身医師によって中身をほじくられている。細いものが出入りする感覚に肛門が痺れ、アソコが蜜を滲ませて、数分後にはぷしゃっと、ちょっとした潮まで噴いていた。
「またか」
「エロいんじゃないの? あの子」
「ぶっちゃけ、興奮してない?」
 見学者の囁きから聞こえる声という声は、しだいに凛を蔑む色が強まり、あからさまな好奇の目まで向くようになっていた。
 しかも、ハンドカメラを上から向けられている。
 手で撮影しているスタッフが二人はいるが、そのうちの一人は長身医師の背後から、もう一人は凛の横合いから、それぞれのポジションからレンズを向けている。絶頂の瞬間を間違いなく撮られていることがわかってしまい、凛の表情は恥辱に歪む。
「ほれ、何人か。ものは経験、採取をやってみろ」
 眼鏡医師が見学者の中から数人を引っ張り出し、長身医師と交代させて、粘膜採取の実践をやらせ始める。自分が練習台として扱われ、そこに凛への確認は行われない。意思など考慮されない感覚は、かえって興奮を煽るものだった。
 見学者の手で綿棒を押し込まれ、尻から白いものを生やしたまま一分以上はそのままに、ただただ視線だけが注がれ続ける。
 次の見学者も、また次の見学者も、凛の肛門を覗き込み、挿入する。
 ウイルスの定着を待つあいだ、その一人一人が凛のアソコを見下ろしたり、顔や胸を眺めてから、やがて綿棒を抜いて去っていく。
 ふと、思った。
 トイレには何時間も前に行っており、腸内は清潔だと思うのだが、もしも内側に汚れがあり、それが付着していたら……。
 最初に三本もの綿棒を使い、今も繰り返し採取を行うのは、もしやそのせいではないかと不安になった。
(やっ、やだ……それはさすがに……)
 そんなことはあって欲しくはない。
 しかし、もしも今までの綿棒を一本でも汚していたら、それはとっくに医師達の手に渡り、見られてしまっていることになる。
 裸にはある程度慣れている。肛門に指が入るのも初めてではない。
 それでも、そんなことだけはありませんようにと願う切実な気持ちを胸に、凛はあと数本の綿棒を受け入れ続けた。

     *

 これは数ヶ月後のことである。
 凛を映した医療用の映像には、顔にモザイクがかけてあり、さらには現地の言葉で解説が行われている。
 その内容は主にウイルスの特性と、綿棒への定着に時間がかかる旨、指を入れることでどんな症状を発見するかといった説明の数々である。それは医療従事者のあいだだけに配布され、主に参考教材のように扱われていたのだが、しかしそれは流出した。
 海外の動画サイトにアップロードされたものが、やがて日本のアダルトサイトでも紹介され、不特定多数の男の知るところになったのだ。

『んぅぅぅぅぅ! んっ! んぅぅぅぅぅ!』

 映像の内容は――長時間にわたる動画に含まれるシーンの一つは、M字開脚の少女に指を挿入するものだった。
『んっ! んっ! んっ! んっ!』
 あれから、見学者達の手によって、今度は肛門に指を何度も入れられて、その際の映像を編集によって切り出したものが、医療参考用の動画には使われていた。
『んぅぅぅ! んぁっ、あぁぁっ!』
 少しばかり加工してある声で喘ぎ続ける。
 様子だけを見るなら、明らかに肛門を愛撫しているアダルト映像に他ならないが、喘ぎ声などないかのように、現地語のナレーションでは淡々と医学的な解説が続いている。
『あん――!』
 凛は絶頂して潮を噴いていた。
 それでもなお、ナレーションによる説明は淡々と事務的で、絶頂などお構いなしに、肛門にウイルスがあった場合の話を展開している。
 この動画を見た日本人のほとんどは、映っているのはアジア系の外国人だと思っていた。解説に用いられる言語も、映っている人間も日本人ではないせいで、ならば少女も現地に暮らす人なのだろうと、大抵の人は先入観から思ってしまう。
 顔にモザイクがあることと、声の加工のおかげもあって、渋谷凛だと気づくファンはほとんどいないといってもいい。
 しかし、実は一瞬だけ編集ミスがあった。
 最初は四つん這いのポーズを取り、途中から仰向けのM字開脚に変わったわけだが、その姿勢変更の際、たった一瞬だけモザイクが外れている。映り込んだ素顔の半分近くは隠れており、映り方も小さいため、幸いにも特定には至らない。
 だが、こう感じた男は少数ながら存在する。

 ――渋谷凛に似ている。

 そのため、映っているのは実は日本人では、と思う動画視聴者は少なからずいたのだが、これを本当に渋谷凛だと思っている男はいない。
 ただし、凛として見る行為には使われている。
 渋谷凛激似をまとめたアダルトブログの記事などには、他にも並ぶ動画と共に、この動画もまた紹介されているのだった。