第13話「屈辱の挨拶」

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 処置室には浴室やトイレが完備され、行為前に身体を清潔にできる。
 既にシャワーを済ませ、バスタオル一枚で待ち侘びていた源一は、やって来た夢音が途端に慌てて赤らむ反応に、待たされた苛立ちも忘れてご機嫌となった。
「遅かったな。時間は過ぎてるぞ?」
 と、教師らしく注意する。
「……すみません」
「彼氏といたのか?」
「そうです」
「それはそれは」
 さぞかし、何か色々な話をして、悲劇のヒロインの思いでこの部屋を訪れたことだろう。それを見送る彼氏の気持ちもハードなものに違いない。
「キスとか、してきたので……。先生にはファーストキスはあげられません」
「ふん」
 たったそれだけのことが、夢音にとっては精一杯の反抗か。
 だとしたら可愛いものだ。
「前の事前指導ではお前の合意を得られなかったが、今回は法的な強制力がある。わかっているな?」
「……はい」
「命を救うためだ。わかっているな?」
「はい」
「勃起や射精には相手の協力が欠かせない。受精させれば目的は達成でも、そこに辿り着くためには色々と道のりがある。理解してるな?」
 要するに、フェラなどの奉仕も命令できるということだ。
「……はい」
 夢音は顔を暗くして俯いた。
 そもそも、ただ受精させれば済むのなら、スポイトでも使って送り込めばいい。不思議な話だが、実際に男性器を挿入しなければ、免疫の獲得率は低い。これが治療になると発見した人間は、一体どうやって見てけたのか。
「まずは服を脱げ」
 ハンドカメラを片手に源一は命じた。
「……は、はい」
 夢音の視線は、他にも三脚台に立てたカメラをあからさまに気にしていたが、確かに処置を行った証明のため、源一は必ず撮影を行っている。
 世の中には、相手の女の子が可哀想で、処置室ではただお茶を飲んで済ませる馬鹿が存在する。あまりにも悲しむので抱けなかったと供述する制度不実施の男が、数年に一人や二人は捕まっている。
 馬鹿馬鹿しい、素直に性欲に従えばいいものを。
 夢音は俯ききったまま、前髪を下に垂らした幽霊の有様で、たどたどしくブレザーのボタンを外していく。紺色の布を脱ぐことで、その下にある白色が剥き出しに、そして脱いだブレザーは力なく床に放り落とされる。衣服を掴む力さえないような、弱々しい握力から離れる落ち方だった。
 その調子でワイシャツを脱ぎ始める。
 ボタンを外すだけの動作に手こずって、やっとのことで外しきっても、今度は脱いでしまうことへの躊躇いをあらわにする。
「好きなだけ恥じらえ。いい絵になる」
 そう声をかけてやった。
 途端に顔が横に向き、耳だけがこちらを向いたまま、ワイシャツが左右に開かれていく。白いブラジャーが姿を現し、スカートも力なく手放され、下着姿になっただけでも夢音は真っ赤であった。
 ありもしない蒸気が見える気さえしてくる。
 背中に両手を回し、後ろでホックをぱちりと外す。ショーツの中に指を入れ、腰から足首へと下げていく。
 ついで靴下も脱ぎ、全ての衣服が無造作に散乱した後、源一はシャワーを命じた。
 シャワーを済ませた夢音は、わざわざバスタオルなど巻いた上、両手でガードまで固めていた。腰がくの字に折れた滑稽な有様で、ペンギンじみた歩き方でベッドに近づく様子はなかなか笑える。
 いよいよベッドに上がってもらう。
 バスタオルを外すように命じると、夢音は無造作に横たわり、なおも胸とアソコを手で隠したまま石のように固くなっている。ハンドカメラを片手に源一もベッドに上がると、緊張感が増してのことか、体の硬度が増したように感じた。
「まずは証明記録のため、きちんと正しいポーズで挨拶をしてもらう。いいな?」
 処置室での記録を取らない、性交もしない、数年に一人の馬鹿は、間違いなくチェックシートしか出していない。可哀想だからヤれなかっただ何だのと、そういうケースをなくすためには、きちんと撮影した方がいいのだ。
 そして、証明記録の撮影には作法がある。
 両足をしっかりと広げ、アソコがよく見える形を取ってから、学年や名前を述べるというものだ。
 ただでさえ固い夢音である。
 石化でもしているのかと問いたいほどの、ぎこちなくカクカクとした動きで、ともすれば自分自身の貼り付いた手をアソコからどかすのに、夢音自身が苦戦していた。
 しかも、M字開脚をしようとすると、まるで磁石の反発に似た現象でもあるように、広がった脚が引っ込み閉じてしまう。そんなことの繰り返しで、やたらに時間をかけているものの、源一としてはニヤニヤと楽しんでいた。
「そんなに恥ずかしいか?」
 へへっ、そうかそうか。
 彼氏はせいぜいキス止まりで、裸を見せたり、触らせたことすらないのだろう。新鮮なうちに皮を剥いた果実のように、とても美味しそうではないか。
「やっとポーズが決まったな」
 指示を出してから形が出来上がるまで、五分以上は使っていた。

 ――まんぐり返しだ。

 腰を地面と垂直にしたような、股を天井に向けたポースで、高らかになった尻が源一の腹に寄りかかっている。源一はハンドカメラを向け、全ての恥部を晒した夢音の有様を拝んでいた。
 実にいい。
 まさに顔から火が出てきそうなほど、羞恥の赤らみから熱を感じる。アソコのワレメに連なって、その下には黒ずみの薄い皺の窄まりもある。今にも泣き出しそうな涙目で、頬も唇も歪めた顔つきは滑稽だ。
「さあ、挨拶をしろ」
 誰が考えたのか。
 クラス、番号、名前だけでなく、他の項目まで含めた挨拶は、処置においては義務付けとなっている。罰則がなく、絶対的なルールではないから、守らない馬鹿もいるようだが、こんな面白いルールを無視するのは勿体ない。
 まず、夢音は両手をアソコにやり、自らのワレメを開く。
 既に極限まで赤面しきった顔に、なおも赤い色素が継ぎ足され、密度を増しているように思えてきた。顔から火がでるほど恥ずかしい、という形容表現の通りの現象が本当に起こったら、このまま焼死体にでもなりそうだ。
 プレミアマンコが開帳され、白桃の色合いをした綺麗な肉ヒダと、肉芽や膣口が丸見えとなった。

「さ、三年A組……出席番号、二番……。梓川夢音、です。
 処女で、キスしかしたことはありません」

 ハンドカメラのモニターには、尻の穴から顔までが綺麗に収まっている。
「オナニー経験、有りです……。それから、生理は危険日で、一回で赤ちゃんができるかもしれません……」
「ではオナニーはいつからしている?」
「それは、その……」
 夢音は顔を背ける。
「こっち向け、答えろ」
 強めに言うと、背けた顔が向き直る。
「小五から……」
 消え入りそうな小さな声で夢音は答えた。
「早いなぁ? 何かきっかけはあるのか?」
 さながら楽しい尋問だ。
「きっかけなんて、わかんないです。覚えてなくて……」
「転校初日の時から、桃井俊樹は既に彼氏だったんだよな。ってことは、実際はいつから付き合ってたんだ?」
「しょ、小五……」
「ほう?」
「告白は再会した後ですけど、私としては付き合ってるくらいの気持ちで……。それで、俊樹くん、アメリカに行くって言い出したから、一度は別れて……」
 なかなか良い言質を取った。
「彼との始まりも、オナニーの始まりも小五となると、オナニーのきっかけは彼氏じゃないか? 妄想するようになったんだろ」
「そっ、そんなこと……」
「目が泳いだぞ? 正直に答えろ」
「…………はい。その通りです」
 まるで隠してきた罪について問い詰められ、もう隠す気力がなくなり懺悔を始めたかのような、いけないことを打ち明ける顔だった。
「指は何本まで入る」
「三本…………」
「入れてみなさい」
「それはっ、その……許して下さい…………」
「馬鹿を言うな。いきなり挿入したら痛いだろ? これはお前のためなんだ。お前の気持ちいいポイントを知っているのはお前自身だ。自分のためにも、痛みが和らぐように自分の指でほぐしなさい」
 もっともらしい風に言ってみせながら、気弱な夢音をそうやって制御する。
「はい……わかりました…………」
 アソコに右手がやって来て、まずはワレメの表面を撫で始める。くすぐるような優しいタッチでスイッチを入れ、やがて人差し指から薬指にかけ、三本を束ねた指が潜り込む。ワレメを左右に広げつつ、あっさりと入った後は、その出し入れが始まった。
「気持ちいいか?」
 と、尋ねる。
「……っ」
 その答えは、頬をピクっと歪め、瞳を逸らすというものだった。
「このままオナニーしながら答えてもらう。初めて指を入れたのはいつか覚えているか?」
 オナニーの強要など、もうルールで決まった内容ではない。
 源一が好きでやらせている内容だ。
「……その、覚えてないです」
「答えろ」
「ほっ、本当にっ、だって私、お風呂では石鹸を塗った指を入れてたことがあって……本当は良くないって知るまで続けてて、小さい頃からなので、本当に覚えてなくて…………」
「その頃までは、泡立てた指を入れ、中まで洗うのは良いことだと思ってたんだな?」
「小三か、小四くらいで、本当は駄目だって知りました。正確には覚えてないので、初めて指を入れた時期は本当にわかりません」
「わかった。だが、オナニーのために指を入れたのは覚えているんじゃないか?」
「それも正確には……」
「時期だけでいい」
「しょ、小五……」
「小五で桃井俊樹と仲良くなって、それからオナニーするようになったってことは、その時点でセックスの知識はあったってわけだ」
「は、はい……」
「で、妄想の種には彼氏を使ったのか?」
「……そうです」
「最初から気持ち良かったのか?」
「そんなこと……。最初はあまり感じなくて、ただ好きな人と繋がるって想像が素敵だと思っていただけで……」
「ただのエッチな妄想じゃなくて、仲良しな時間を過ごす妄想だと?」
「そうです」
「だが、だんだん気持ち良くなったりはしなかったか?」
「……一応」
「週に何回くらいする?」
「三・四回です」
「多いな。エッチな子だ」
 特に一般的な平均を知っているわけではないが、夢音を辱めるためには、データがあろうとなかろうとエッチ呼ばわりする方が面白い。
「……そ、そんな……ずっとじゃないですっ。したい気分と、そうじゃない気分の時があって、まったくしない時期もあります。気分になった時期だけです」
 だから自分はそこまでエッチではないという、必死な言い訳をしているらしい。
 だが、律儀に出し入れを続けていた三本指は、だんだんと湿り気を帯びている。見え隠れするたびに、皮膚が粘液をまとっている。
 くちゅり、くちゅりと、少しずつ水音も聞こえて来た。
「ではムラムラには浮き沈みがあっても、する時は週に三回から四回か」
「そうです」
 息も乱れ始めていた。
 人前でオナニーをするだけでも、きっと羞恥で脳が弾けそうな心境だろう。顔が燃え続けているほどの感情がひしひしと伝わるが、その一方で身体は感度を増し、とうとう腕で口元を隠し始める。
「いいか? 梓川、お前は先生を受け入れるためにオナニーしているんだ。痛みが和らぐように、きちんとほぐし、濡らしておく準備をしてるんだ」
「…………」
 夢音は何も答えない。
 ただ、何かを言いたいような目だけが源一に向き、そのあいだにも指の動きは止めていない。
「彼氏とはどこまでした?」
「キス、まで……」
「そうか。裸は見せたか?」
「いえ……」
「なら、そのオッパイも、尻の穴も、全部俺が初めて――ああ、検査があるか。医師の目はともかく、検査以外では俺が初めて見ているわけだ」
 愛液が増えれば増えるほど、美味しそうな料理の匂いがしてきたように、源一の口内にはヨダレが溜まる。
 よほど効いたのか。
 かけてやった言葉の数々に、夢音には苦悶が浮かんでいた。
「あ、あの……いつまで…………」
 こんなことは早くやめたい思いが見え隠れする。
「そうだな。そろそろ挿入してもいい頃だ。お願いしてみせろ」
「え……」
「俺は命を救ってやる立場だ。命の恩人だな。その恩人に対して、失礼のない態度で挿入をお願いしろと言っている」
 愉快だった。
 心の底から愉快でならない。
 一体どこの世界なら、こんな命令を合法的にできるだろう。ここまで楽しい特権を味わえるのなら、生まれ変わっても処置員になりたいものだ。
「お願いします。い、入れて……下さい……」
「オチンポという言葉を使って、もう少しだけ具体的に言ってみなさい」
 まるで国語の作文テストのように、源一は出題を行った。
 夢音は一瞬凍りついていた。
 源一の命令は、頭にマグマの詰まった激しい羞恥でさえも、少しのあいだは凍るほどい、衝撃的なものだったらしい。
 しかし、氷はみるみるうちに溶けていき、恥じらいがたっぷりと塗られた表情へと立ち戻る。
「お、オチン…………その、絶対に言わなきゃ駄目ですか?」
「駄目だ」
「…………」
 よほど抵抗があるらしい。
 少しのあいだ押し黙り、涙目を浮かべて沈黙に沈んでしまうが、そうしなければ許さない圧を顔でかけているうちに、やがては観念したらしい。
 心の中で、抵抗感との戦いを済ませ、やっとのことで夢音はねだった。

「お願いします。先生のオチンポを、その……。わ、私のアソコの穴に挿入して下さい……」

 一体、どんな感情に締め付けられてのことだろう。
 表情がこれまでにないほど激しく歪み、果てしない恥辱を全身から放出している。屈辱でならない、心の底から悔しがる信号が放たれて、見ているだけで心の色合いを受信したような気にさせられる。
 親の仇にでも奉仕しなければ、きっとここまでの恥辱を感じることは難しい。
「よし、ではそろそろ」
 挿入の準備に入ろうと、源一は夢音に体勢を変えさせる。まんぐり返しから、ただの仰向けでのM字開脚へと移り変わると、いよいよ先端をワレメに当てて、処女を味わいにかかっていく。

 ずにゅぅうぅぅぅぅぅぅ――――――――。

 本人の指でそれなりに慣らされて、普通の処女よりもあっさりとスムーズに肉棒が収まると、夢音は涙の粒を浮き上げていた。