終 渋谷凜の全裸健康診断【前半】

次の話




 渋谷凛は飛行機の中で悶々とした。
 ……眠れない。
 アソコが欲求を訴えかけ、沈めたくてたまらなかったが、人目を避けてオナニーをする機会が巡ってくることもなく、膣に切なさを抱えて寝付けない時間を長々過ごす。
 日本への到着は本当にやっとだった。
 新型ウイルスに関する貿易上、空港から自宅へ帰る際にも、必ず検査を受けることになる。

 もしかしたら……。

 凛は期待してしまっていた。
 おかしな性癖が目覚めてしまい、自分を変態だと思うようになったきっかけの、あの全裸健康診断を、また受けることができるかもしれない。出国前の空港では、過去二回ほど現れた肥満男は姿を見せず、女性が手早く済ませてしまったが、日本到着後の入国前なら、また肥満男がいるだろうか。
 彼さえいれば、健康診断は恥辱に満ちたものになる。
 そのことを期待して、検査直前にプロデューサーと別れ、凛は検査室への案内を受けて向かっていく。

「やあ、また会ったね」

 肥満男の顔を見るなり、凛はドキリとしてしまった。
「おや、僕に会えて嬉しい?」
「なに言ってるんですか」
「でも変態趣味に目覚めたでしょ?」
 肥満男の言葉を否定できずに、凛は顔を背けて俯いた。
 前回、自分は肛門と性器を検査されて絶頂する変態であると宣言させられ、また同じ目に遭うことを期待さえしてしまった。期待が叶うとわかった喜びで、心が少しでも舞い上がってしまったことで、自分の性癖が歪みをより強く実感した。
「また、ああいう検査になるんですか?」
 なるべくぶっきらぼうに凛は尋ねる。
「なるね。楽しみでしょ?」
「楽しみだなんて……」
 堂々と認めることはできない。
 そんな自分自身の心が見えた時、凛は思った。もしかしたら、自分から変態宣言をするよりも、人にさせられる方がいいのかもしれない。
 だから口先では言っておくことにした。
「他の人に当たった時は、凄くスムーズでしたけど」
 直接的ではないながら、問題のある検査方法に文句があるようなポーズを取ってみせ、いつでも抗議を吹っかけそうな、睨みがちな目つきさえも装っていた。
 そういえば、肥満男一人だけだ。
 今までは他にも多くの人がいたが、今回はどうしたのか。
「というか、他の人は」
「ああ、今回は僕一人でアイドル渋谷凛を独占しようと思ってね」
「独占って……」
 ストーカーに狙われるのとはまた少し違うだろうが、そのような怖気が走ると同時に、下腹部がきゅっと引き締まる。下品な目論見を持つ男に目を付けられ、それが怖いからこそ嬉しいような、自分のマゾ気質を自覚した。
 体中が期待して、恥辱を楽しみにしてしまっている。
 服を脱がされ、調べられてしまう感覚を想像して、今のうちから下腹部がヒクヒク疼く。
「さ、まずは問診といこうか。ね? 凛ちゃん。そこに座ろうか」
 椅子に座るように促され、凛は肥満男と向き合いながら腰かける。
 すぐさま、視線の質が変わった。繊維の隙間に入り込み、胸を味わってくるような、皮膚をざわつかせる視姦の眼差しで、頭から足にかけてをジロジロと舐め回す。見れば股間が徐々に膨らみ、もう既に恥辱の時間は始まっているのだと肌でわかった。
 だから、凛は驚かなかった。
「この前は気持ちよかったねえ?」
 あからまさにニヤけた顔で、ついこの前のよがりようについて触れてきても、こうなると想定通りの質問なのだった。
「それは、まあ……」
「今回も期待してる?」
「……まさか」
「でも気持ちよかったよね?」
「それは……」
 否定できなかった。
 肛門を調べられて興奮した。性器を調べられても興奮した。変態宣言をされられても興奮し、凛はそれらの体験をオナニーのネタにすらしてしまっている。肥満男の顔を見た瞬間、嬉しくなりさえしている凛は、今こうして言葉によるセクハラをされることにも興奮しつつある。
「答えてごらん? 何に興奮したか。どんなのが良かったのか」
「あの、一応ちゃんとした診断のはず、ですよね」
 新型ウイルスへの対策として、防疫のために行われる検査のはずだ。そこが疎かにされては困ることにふと気づき、だから凛は話を逸らした。
「なら体調について聞こうかな」
 と、肥満男は食事や食欲、生理による調子の変化について尋ねてきて、まともな問診らしい質問に一つ一つ答えていく。
 だが、それらにひとしきり答えきれば、やはりその手の質問に話は戻る。
「で、前はどんな検査に興奮したのかな」
「だから、そういう……」
「何回絶頂した?」
「覚えてませんってば」
「毛は剃った?」
「脇は……」
「脇剃った! 脇は剃ったんだね? 他は?」
「いえ……」
「じゃあボーボーのままだ」
 デリカシーのない嫌な質問をされ、ボーボーなどと面と向かって言ってこられているのに、そこに興奮してしまう。
「そうですけど……」
「なるほどね。じゃあ、僕がいた時の検査で印象に残っているのは何かあるかな?」
「一応」
「教えてくれる?」
「その……。自分で自分の足首を掴む、みたいなポーズの時の肛門検査とか……」
「それが気持ち良かった」
「……はい」
「変態だねぇ?」
「…………」
 否定できず、凛はただ無言で俯く。
「お尻の穴に指が入って感じたのかな?」
「……そうですけど」
「ははっ、感じちゃったかー。それで、後々オナニーとかしたのかな?」
 どこか小馬鹿にしたような、笑いながらの問いかけは、凛の心にヤスリをかける。
「お、オナニーって……」
「必要な質問だから、答えて欲しいな」
 まさか、必要なはずはないだろうが、凛は体を疼かせていた。あれを思い出しながらオナニーしたと白状するのは、変態宣言の一種のようなものである。それをしてもいいという免罪符が与えられ、それに縋って凛は答えた。
 そう、必要な質問だから答えるのだ。
「少しですけど、しました」
 耳まで染めていきながら、凛はオナニーの事実を伝えた。
「へぇぇぇ? したんだ? オナニーしたんだ! 検査されたことをネタにして、オナニーいっぱいちゃった!」
「別にいっぱいじゃ……」
「じゃあ、どれくらいしたの?」
「忙しくて時間もありませんでしたし、一回くらいで……」
「なら、その一回をたっぷり楽しんだのかな?」
「まあ、それなりに……」
 こんな話を面と向かって行えるはずもなく、始終顔や目を背けながら答えていた。
「指は入れたのかな」
「……入れました」
「へへヘッ、そうかそうかぁ」
 いいことを知って嬉しそうな、本当にニヤニヤとしきった顔を中年は浮かべていた。
「その、検査されてる想像しながら、裸になって、脚を開いて……」
「へえ?」
「中身を開いて観察されたり、指を入れられる想像とかしながらしてました」
「ほほほう? ぐびっ、いいこと話してくれるねぇ?」
「……」
 カッと頭が熱くなり、凛は改めて俯く。
「凄くエッチで変態になったてねぇ?」
「必要な質問だっていうから、答えただけですけど」
「うんうん。わかってるわかってる」
 下らない建前だ。
 肥満男はただのセクハラ目的で、凛は変態趣味に目覚めていて、ここにはもうそういうプレイの空気ができあがっていた。新型ウイルスの存在と防疫義務が土台となり、その上に作り上げられた特殊な空気は、検査室ならではのものだった。
「じゃあ、そろそろ脱いでもらおうかな」
 肥満男がいやらしい目をしながら行う指示に、凛は内心で――来た! と、そう思ってしまっていた。

     *

 首のリボンをまず取り去る。
 脱衣カゴにリボンを置くと、セーターのボタンを外し始める。私服もいくつか持って来ている凛だったが、その選んだ服の一部に学校用のセーターがあった。それを脱ぎ去ることで、ワイシャツの白い姿を晒し、そしてワイシャツのボタンを外し始めた。
「あらあら、アイドルが肌を晒しちゃうなんて」
 肥満男は楽しそうだった。
「今日はどんな下着かな?」
「青、ですけど」
 しだいにはだけていくワイシャツから、チラチラと青色が覗けて見える。外れたボタンの数が増えるにつれ、だんだんとヘソまで見え、ついにはワイシャツを脱ぎ去った。
 凛の身に付けた青いブラジャーは、黒い薔薇を縫い付けたダークなデザインだっ。影絵のようなイバラが茂り、花びらが散りばめられたカップの中央には、漆黒のリボンがよく目立つ。
 スカートを脱ぎ始めた。
 ホックを外し、チャックを下げると、緩んだスカートはあっさりと凛の足下に輪を広げ、そして凛は下着姿を晒していた。
 ショーツはTバックだった。
 フロントも布が少なく、三角コーンのような形の布の、ちょうど三つの角に黒い柄の縫い付けが施され、両側はヒモで結ぶタイプである。
「あらあら、やっぱり剃ってないねぇ?」
 肥満男の顔が近づいた。
「や……」
「毛がいっぱいはみ出てるよ?」
 指摘された瞬間に、頬に火花が弾けたような熱が走って、凛は素早く顔を背ける。 布面積に対して毛が多いのだ。
 はみ出た毛は布によって踏み倒され、寝かされた毛先という毛先の数々が、様々な縮れ方をしてびっしりと、ブラシのように並んでいる。あるいはムカデ、ゲジゲジと例えても良さそうだった。
「後ろを向いてごらん?」
 凛が身体の向きを変えれば、鼻先が皮膚に触れてきそうな気配を尻で如実に感じられ、呼吸の熱気も当たって来る。
 言うまでもなくはみ出た毛は、Tバックのヒモに根元を倒されつつ、尻のカーブに剃って毛先を伸ばし、ストレートの中に縮れた歪な形が幾本も混ざっていた。
「やっぱり毛まみれだ」
 指が触れ、凛はピクっと腰で反応する。
「アイドルなのにボーボーすぎるね」
 指先が尻肉の下弦をくすぐり、四指で左右の尻たぶをプルプルと持ち上げて、弾ませんばかりに弄ぶ。触られていることで皮膚が疼き、さっそくのように体が反応を示し始める。それに気づいてか、肥満男は悪戯にくすぐり始め、凛は腰をモゾモゾとさせ続けていた。
「ほら」
 毛をつまみ、軽く引っ張る。
「うっ」
「ほれ、ほれ」
 しきりに引っ張る遊びがマゾヒズムを刺激して、凛の興奮度合いを高めていく。
「ケツ毛ボーボーなんて、ファンが知ったら本当にどう思うかな? 僕だって最初は驚いたんだし、他のファンなら気絶しちゃうかも」
「そんな……別に、見せることなんてありませんし……」
「前向いて」
「……はい」
「ブラ、外そうか」
 粛々と指示に従い、凛は背中に両手を回す。ホックをぱちりと外したあと、あっさりとブラジャーを手放してみせていた。
 もう十分に脱ぎ慣れて、裸も晒し慣れている。
 せいぜい、パンツを見られた程度の気持ちでしかないのかもしれない。羞恥心を完全には失ってはいないのだが、性器や肛門の検査が始まって、初めて全裸らしい羞恥心がこみ上げてくるのだろう。
「乳輪デカいねえ?」
 身体の特徴について、ズケズケと声に出してくる。
「あーあー。何も知らなかった頃の僕は、もっと美しいピンク色を想像していたのに」
 あからさまに残念がった言葉まで聞かされて、凛は屈辱を噛み締めていた。その割に肥満男はニヤついて、乳房を拝むことができて嬉しそうでならない顔をしている。
 喜んでいるくせに、言葉では嫌みを言うのだ。
「毛がボーボーな上にデカい乳輪か。まったく、なかなかだねえ?」
 言いたいことを言いながら手を伸ばし、乳房に軽いタッチをしてくる。ぷにぷにと、表面に指を押し込む触り方に反応して、乳首に血流が集まった。
「あれれ? 感じてるのかな?」
 突起してきた乳首を見て、肥満男はますます嬉しそうだった。
「す、少し……」
「少し? ははっ、少し感じてるんだね?」
「本当に、少しですから」
 凛はそう言って目を瞑り、肥満男の手つきに身を浸す。こんな悪戯をされている状況を、建前では嫌がりながらも内心では楽しんでいた。
「ショーツも脱いで、渡してくれる?」
「……どうぞ」
 おかしな話かもしれないが、全裸経験を積んでいるおかげで、脱ぐことよりもそれを手渡すことの方に抵抗を感じていた。
 だが、疼く。
 肥満男にショーツを与えることで、相手の変態欲を満たさせることでの興奮を覚えてしまう。
「うんうん。脱ぎたては体温が残っていていいねえ?」
 肥満男はプレゼントが嬉しいように裏返し、クロッチの部分をあからさまに撫で始める。間接的にアソコを愛撫されている感覚に、凛は指でワレメを撫でられる感触を必要以上にありありと想像していた。
 太い指が表面をさすり、愛液が出れば出るほど滑りが増す。
「けっこうシミがあるね? オリモノの痕跡がよくわかるよ?」
 匂いでも嗅ぎそうなほどに顔を近づけ、肥満男はシミの観察を行った。
「アイドルはトイレに行かないみたいな幻想あるらしいけど、だったらこんなシミの付いたパンツもどうなのかな? ファンがショックを受けるんじゃないかな? ほら、僕は医者だからいいけどさぁ」
 肥満男はことあるごとにアイドルという言葉を使い、凛の心をぷつぷつと針で刺していくような、嫌な言い方をしてきている。
「パンツとか、普通は見せないから、関係ありませんし……」
 反論こそしてみせながら、凛のワレメには既に愛液の気配があった。まだ一度も触られてはいないのに、先ほどの想像や今の言葉で体は反応していまい、しだいしだいに感度が働き始めている。
 眠っていた感度が起きて、性感帯が活発化する感覚が凛にはあった。
「どうしたの?」
 彼は勘付いたのだろうか。
 もう濡れ始めていることが、バレているのかいないのか。ドキドキとした気持ちの中で、凛が抱く願望は、できればバレていて欲しいというものだった。
「ど、どうも……」
「興奮してきた?」
 肥満男に問われた途端、凛はドキリとして顔を背ける。
「ボーボーでびっしりな毛の中には、もう愛液が出始めていたりして」
 図星を突かれ、心臓が飛び出そうになった。
 本当にバレているのだろうか、それとも今のは冷やかしに過ぎないのか。気づかれていて欲しいような、違うような、どちらとも言い切れない気持ちを抱え、凛はドキドキとしながら固まっていた。
「そろそろ身体測定しようか」
 しかし、バレていたのか違うのか、はっきりすることもないままに、肥満男は次にステップを進めていった。

     *

 身長計に足を乗せ、柱に背中を当てて姿勢を正す。
 計測を行うため、凛の真横に立つ肥満男は、ニヤニヤと腹に手を当ててきていた。まるでずれないように押さえてやるためであるように、しかし決して必要のない接触を行っている。凛は何も言わずに受け入れるどころか、こんなセクハラを期待さえしていた。
(私……本当に変態に……)
 自分の性癖を実感する。
 汗ばんだ手に撫でられ、揉むような動きで皮膚をくにくにとやられている感覚がたまらない。明らかに乳房を目指して上へと動き、そのまま下乳を持ち上げてくるのに興奮する。逆に下へとスライドして、小指で陰毛を絡め取る仕草で感じてしまう。
 頭の上にバーが触れ、数字を読むためとばかりに顔が近づく。

 ふー……ふー……。

 と、黒髪の狭間に覗けて見える白い耳へと、肥満男の熱い息は吹きかかる。それが耳穴に流れ込み、広がる吐息の感触は頬にさえ触れ、本当ならばもっと怖気に震えるところだ。
 体が喜んでしまう。
「身長は一六五センチ。変化無しだねぇ?」
 囁く肥満男の唇は、耳に触れる直前にまで迫っていた。
 耳を舐められてしまうのかと、凛はそんな予感に強張ったが、そうはならずに手の平の方が上へと動き、乳首をつつく。
「んっ」
 首が縮み、反射的に俯いてしまった。
「へへっ、計り終わった後だからいいけど、動かないようにねぇ?」
「……はい」
 身長計を降りる。
 その瞬間に凛は尻を掴まれていた。
「ほら、次はこっちだ」
 まるでエスコートをするように、尻へと手を回したままに、肥満男は凛のことを体重計まで導き始める。凛はそれに従い進んでいき、体重計の台へ上がっていくと、すぐに数値は現れていた。
「こちらも変化なし。太ったりはしてないんだねぇ?」
「しませんってば」
「へえ? カロリーとか色々考えてるのかな?」
「そりゃ、多少は……」
「よ! えらい!」
 称えんばかりの言葉をかけながら、ペチ! ペチ! と、その手でお尻を叩いてくる。軽い力で音を鳴らされ、凛はその屈辱感に身を浸す。
「さぁて、今度はスリーサイズだねぇ?」
 肥満男がメジャーの用意をした瞬間から、乙女のプライベートな数字がまたしても暴かれるのだと、凛は全身を疼かせていた。この短期間で変化などないとは思うが、繰り返し確かめられている感覚が興奮を招くのだ。
「では腕を左右水平に」
 そう言われ、両手を広げる。
「お? ほほっ、へぇ?」
 まず肥満男が行ったのは、脇の下を覗き込む行為であった。
「あ、あの……」
「いやね。脇毛がはみ出てないもんだから、気になってね? そっかー。なるほどなるほど、剃ったってさっき言ってたもんねぇ?」
 ライブで脇の見える衣装を着るため、その時までは毛の痕跡などわからないツルツルな状態にしてあった。ところが濃い毛は生え始め、一ミリか、二ミリか、触れればジャリジャリとした感触のありそうな太いものが顔を出し、剛毛の気配を漂わせている。
「うーん。ま、これならアイドル失格ではないかなぁ?」
 失格などと口にしてくる不快感を凛はただ噛み締める。
「ではバストから」
 まるで抱きつくようにして、肥満男は凛の背中にメジャーを引っかけ、乳房の上に目盛りを合わせてくる。今にも密着されそうな距離感に緊張しきり、ただただ硬直しているばかりの凛は、乳首の先に肥満男の膨らんだ胸が触れてくるのを感じ取る。
 そして、メジャーは巻きついた。
 大きな乳輪の上に目盛りは合わさり、肥満男はその数値を読み取った。
「八二センチ。今まで通り」
 締め付けが緩むと、メジャーは腰へと移される。
「今回はお腹引っ込めるとか駄目だよ?」
 以前の発覚したことについて、肥満男は前もって言ってくる。
「も、もうしませんし」
「ならいいんだよ? さて、ええっと、こちらも変化無しっと……」
 肥満男はさらにそのままメジャーの位置を変え、お尻に軽く食い込んできた。巻きつく先で目盛りが合わされば、びっしりと生え揃い、伸びきった剛毛の中にメジャーは埋もれる。
「あらあら」
 あからさまに呆れた声が上がった。
「毛が長いもんだから、目盛りが見えなくなっちゃった」
「他の場所で合わせたら……」
 そう口では言ってみるものの、アソコのすぐ近くに指があり、陰毛をネタにされながら弄られていることで、凛は興奮してしまっている。
「ほれほれ」
 肥満男はメジャー越しにくすぐり始めた。
「うっ、ちょっと……」
「ほれほれほれほれ」
「あっ、くぅぅ……」
 メジャーの上を左右に往復し続ける指先は、その動きによって絶えず陰毛を掻き分けている。長々とした毛先はどくことがなく、元の形に戻ろうとする力によって、すぐさま目盛りを隠してばかりだ。
「うっ、い……」
 いい、気持ちいいと、つい白状しそうになる。
 しかし、凛はそれをぐっと堪え、自分の変態性は押し隠した。
「湿っているのがわかるよ? ワレメから出て来た愛液で毛が固まって、さっきからずっと興奮していたのがバレバレだねぇ?」
「そ、そんな……」
 凛は一気に赤らんだが、願望通りにバレていた興奮も相まって、頭の中で熱が高まる。
「でも計測を進めないとだし、そろそろ数値を見ようねぇ?」
 と、やっとのことで肥満男は数字を見る。
「うんうん。こちらも変化無し、と」
 スリーサイズの全てをチェックしたところで、肥満男は今になって書類への書き込みを始めていた。凛の元から離れたかと思ったら、テーブルに置いていた書類にボールペンを走らせ、今までの数値を記入しているのだった。
「では次に進んでいきましょう」
 アソコが悶々としている中で、肥満男は椅子を指す。
 性器や肛門の検査はまだ先であることに、半ば絶望したような、がっかりとしたような、楽しみが先延ばしにされた思いを抱え、凛は椅子に腰掛けるのだった。