第4話「スライムを叩け!」

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 春菜の格好は体操着とブルマであった。
 消えてくれることのないスクリーンがお尻を映し、割れ目に布がしっかりと埋もれた色気漂う絵を流す。ゴムの部分から尻肉がぷにりとはみ出て、ショーツの白まで見えているのだ。
 はみ出たショーツはレースであった。
 ゴムに沿わせた脚穴の口には、レースによる飾り付けが施され、そのレースがブルマの布から出ているのだ。
「やぁ……」
 小さく悲鳴を上げ、春菜はすぐさま布に指を突っ込み直してやる。
 しかし、いくら下着は隠せても、そもそも布の量が足りない。脚とお尻の境目の、尻山のラインまでは布が届かず、どう伸ばしてみたところで、尻肉がはみ出ているのは直らない。
「こんな……恥ずかしい……」
 春菜は頬を朱色に染めて俯いた。
「さあ、塔の中に入ったら第三ステージが開始になる。今度はモンスター退治だ」
「も、モンスター!?」
 凶悪な爪や牙を想像して、春菜はぶるっと恐怖に震える。
「そんな顔をしなくてもいい。か弱い女の子でもクリア可能になるように調整してある。部屋には武器が用意してあるから、一発当てれば一ダメージ。合計三ダメージ当てればクリアとなり、ゴールの魔法陣が出現する――ただし、今度も全裸になったらゲームオーバーってルールだから、どんな風に服が消えるか、楽しみにしておくんだな」
 不安しかないルールを言われ、赤らみが引いた代わりに青ざめる。全裸にさせられるかもしれない予感に深刻に悩み、内心では震えが止まらなかったが、春菜は塔の入り口へと進んで行った。
 砂色の石畳によって作られた広々とした部屋は、テニスコートほどはあるだろうか。
 そんな部屋の中心に、ぽつりと石のテーブルが置かれている。宇宙人の言っていた武器を目にして近づくが、春菜はそれを困惑気味に持ち上げた。
「ピコピコハンマーって……」
 こんなものでモンスターと戦えというのか。
「競技ルールみたいなもんだ。そんな武器でも、当てれば必ず一ダメージってことになる」
 補足の言葉が届いてきた。
 一体、それではどんなモンスターが出て来るのか。凶悪なものではないように、怖い相手ではありませんようにと祈っていると、不意にそれは降って来た。
 白いスライムだった。
 まるで始めから天井に張りついていたかのように、急にスライムは降って来て、丸い形がぷにりと自重で潰れている。両手を広げて抱えきれるかどうかのスライムは、ぷるっとした見た目だけなら強そうではない。
 だが、触手でも出してきたら、それに身体が絡め取られたらどうなるか。
 不安感を膨らませ、それでも攻撃しないわけにはいかず、春菜はピコピコハンマーを抱えて恐る恐る近づいていく。
 徐々に距離を縮めていった時だった。
 
 ピュッ!
 
 スライムは白い粘液を飛ばしてきた。
「きゃ!」
 木工ボンドのような固まりは、春菜の顔にかかって頬や額に付着する。ヌルヌルと気持ちの悪い感触に寒気が走り、今すぐにでも顔を洗いたくなってくる。
 スライムは飛んだ。
 自分自身の身体を潰していき、薄く平べったく広がって、弾力の利用のように軽々と頭上を飛び越える。後ろへ回り込むついでに、空中で粘液を飛ばしてか、背中にひんやりとしたぬかるみが染み込んで、ある意味本当に背筋に寒気が走る。
「やだ……」
 心の底からの声が出る。
「でも、やんなきゃ」
 春菜はスライムを追った。
 自在に跳び跳ね、自分の身体を壁にも天井にもバウンドさせるスライムは、妙に素早く捉えにくい。ナメクジのように這って進む移動でさえ、人間の小走りほどの速さを出す。そんなスライムを追い回し、近づくたびに粘液を飛ばされる。
 しだいに体操着が透けていた。
「ひゃ! うそ!」
 液が染み込み、ただ濡れただけではない。服だけを溶かす粘液が繊維を薄め、糸の太さや量が減り、実に透けやすくなっている。春菜の着けた下着のピンク色がはっきりと浮かび上がって、柄までくっきりとするのは時間の問題だった。
 背中の肌色がよく見える。ブルマも色が透け始め、紺色と中身のピンクが重なった混色になりつつある。
 
 ぴちゃ!
 
「ひゃん!」
 粘液の冷たさがうなじに当たり、ひやっとした感触にも悲鳴を上げる。
 不思議と毛には効果がなく、髪に当たった白濁は、女を精で汚した飾りつけそのものと化している。
「もう! お願い逃げないで!」
 やっと追いつき、ピコピコハンマーを振り下ろす。
 その瞬間──
 
「──きゃあああああ!」
 
 まるでバケツの水をかけてくるかのような、多量の粘液が跳ね返り、春菜の体操着にはとうとう穴まで空き始める。溶けることで広がる穴は、粘液を多く吸った部位ほど大きくなり、かからずに済んでいる場所は濡れてもおらず、透け具合と穴の具合はまばらであった。
 しかし、真正面から浴びた以上、ブラジャーの胸は丸出しとなり、そのピンク色にも水分か染み込んで、繊維を蒸発させていた。
「見ないで!」
 我が身を抱き締め、春菜は座り込んでしまう。
「おっと! ゲームオーバーになりたいのか?」
 宇宙人が煽るなり、スライムが接近して粘液を飛ばしてくる。髪に、顔に、胸を覆い隠す腕にも付着して、春菜はますます白濁にまみれていった。
「や! やめて!」
「やめさせるにはあと二回叩くしかないぞ?」
「うっ、ぐぅ……」
 ゲームオーバーになれば、性奴隷にさせられる。
 ここで服を溶かされる以上の恐怖がチラつくことで、春菜は嫌でもピコピコハンマーを握り締め、再びスライムを叩こうと追い回す。
 片腕で胸を隠し、右手だけで握ってようやく追い詰め、また粘液の逆襲が来ないかという躊躇いと抵抗で鈍った動きながらも二回目の攻撃を当てる。
「やあああ!」
 またしても、多量の白濁はかけられた。
 いよいよ上半身はブラジャーのみで、そのブラジャーも肩紐が溶け切れている。後ろ側のホック回りも生地が薄れ、腹や背中の体表を流れ落ちたものがブルマに染みもした。
「やだ……これじゃあ……」
 叩けば必ず粘液でお返しされる。
 あと一発でクリアだが、これ以上露出度を上げられることへの躊躇いで、余計に動きが鈍っていた。追いかける足はおぼつかず、振り下ろす腕は弱々しい。
 スライムのスピードは変わっていない。
 翻弄こそしてくるが、人間の頑張りしだいで追いつける。高すぎず低すぎない、スポーツが苦手でもクリア不能というわけではない難易度だが、肝心の春菜が鈍っているのだ。
 追いつけず、粘液をかけらる一方では、いつかは全裸になってしまう。
 肌の露出が増えるほど、布に命中する確率が減ることだけが、春菜にとって唯一の幸いである。
 ブルマの生地が薄れれば薄れるほど、春菜の中でゲームオーバーの危機感は膨らんでいく。まずは下着姿にさせられて、全裸にされ、そして性奴隷という恐怖が具体的に迫って来るようで、さすがの春菜もこの調子では駄目だとわかっていた。
「やらなきゃ……」
 春菜は賢明なまでに躊躇いを押し込め、ぐっと歯を噛み締め駆けていく。やはり左腕で胸を隠すことはやめられないまま、それでも今までの鈍さが抜け、跳ね回るスライムを追い回す。
 壁際に追い詰めるタイミングが訪れた。
「えい!」
 やっと、三発目の打撃が決まり、案の定の反撃が放たれた。
 
「え? いや! キャァアアアア!」
 
 春菜は悲鳴を上げた。
 スライムは己の全身を粘液にかえ、自分の存在と引き換えにしてでも春菜を白濁まみれにした。精液をバケツいっぱいに溜め込んで、それを頭から被せたような有り様で、たとえ腕で守っていても、液体はスキマに染み込む。
 ブラジャーは蒸発して消え去った。
 ブルマさえも失われ、ピンク色のショーツも生地が薄れ、肌が透けてしまっている。極限まで全裸に近い姿となって、春菜は顔中を赤らめていた。




 
 
 

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