最終話「バッドエンド」

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 ゴールポイントは屋上に用意されていた。
 全ステージをクリアして、石畳の階段を上がった春菜は、丸裸で青空の下に立つみっともなさに俯きながら、とぼとぼと進んでいく。魔法陣の光を踏み、これで約束通りリトを解放してもらえるのだろうかと期待を抱く。
 春菜が別の場所へと転送された。
 景色が丸ごと発光したような、激しい光に視界が白く塗り潰される。強烈な輝きは徐々に引き、まともに周りの様子がわかるようになってくるなり、春菜は純白のベッドの上にいた。
「どこ?」
 柔らかいシーツの感触を踏んでいる。
 転送の際に綺麗になってか、身体中を汚した粘液は取れていたが、服を着せて貰えていないことに遅れて気づく。
「きゃ!」
 慌てて体を隠し直して座り込む。
 その時だった。
「春菜ちゃん!」
「結城くん!?」
 リトの声だが、部屋の中にリトはいない。
「逃げろ! 逃げてくれ!」
 声だけが届いていることに気づいて、春菜はまず困惑した。この誰もいない部屋で、誰から? 何から? と、呑気なことを思ってしまうが、今までが今までだ。この部屋にも何かいやらしい仕掛けがあるに違いない。
 早く部屋を出た方が良いのかと思ってみるも、全裸で出ていくのは怖かった。
 服も着ないで、そんな思いで足がすくんでいた。
「後ろだ!」
 リトの強い叫びに、ようやく背後に何者かの気配を感じる。ベッドを軋ませる体重の存在と息づかいのわずかな音が、宇宙人の存在を伝えてくる。振り向けばそこにいる恐怖に固まり、春菜は動けなくなってしまっていた。
「クリアおめでとう」
 その声はきちんと背後から、そして肩には白い手が乗せられる。爪が鋭く、プラスチックのように滑らかな肌は、まさしく人間のものではない。
 春菜は震えた。
 声が出ない、体も動かない。
「やめろ! やめやがれ! 春菜ちゃんに手を出すな!」
 リトの必死な声も、春菜の頭には届いて来ない。
 頭が恐怖に染まっていた。パニックの起きた脳には何も入らず、全身が恐慌に支配され、春菜はただその場で震えるだけの存在と化していた。
「人質の解放なんて、ただの口約束だもんな」
 宇宙人は春菜を押し倒した。
「イヤァァァァァ! やめて! やめて!」
 絶叫のような悲鳴であった。
「へへっ、今回は最後までやらせてもらう」
 宇宙人の肉体にも、人間のペニスと変わらない形状のものが生えている。じたばたと暴れ、必死に髪を振り乱し、パニック任せの抵抗をしてくる春菜にヨダレを垂らし、宇宙人は楽しそうに性交を試みていた。
「よく暴れる。元気がいいなぁ」
 両腕を力任せに押さえつけ、挿入しようとする宇宙人だが、暴れる春菜のために狙いは定まらない。それに苛つくわけでもなく、宇宙人はニヤニヤと抵抗を楽しんでいた。
「お、ようやくか」
 やっとのことで亀頭が穴にはまりかけ、先端だけを入れた宇宙人は、そのまま腰を押し込み春菜の初めてを奪い去る。
「あああああ!」
 絶叫と共に背中を反らし浮き上げていた。
「春菜ちゃん! お前よくも!」
 春菜の絶叫に、リトは怒りに声を荒げた。
 しかし、リトはこの場にいない。
「ふん、せいぜいそこで見ていろ」
 あの十字架にかかったまま、リトには映像だけを見せつけて、宇宙人はそうやって楽しみながら春菜のことを犯している。好きな女の子がレイプされる姿をただ見ているしかない、その怒りと悔しさはどんなものかと想像しながら、実に勝ち誇った思いで宇宙人は腰を動かし始めるのだった。
「あ! ああ! やだ! 抜いて! 抜いてぇ!」
 初めての性交に、しかも濡れてもいない膣への出入りに快楽などありはしない。宇宙人だけが一方的に気持ちいいセックスに、春菜は泣きながら汗を浮かべた。全身の脂汗と処女膜の破損でシーツを濡らし、喉が痛むまで絶叫した挙げ句、もう叫び疲れるまで腰は叩きつけられるのだった。
 最後には目が虚ろになっていた。
 心の死んだ表情で、涙だけを流してぼんやりと、横向きの顔でぼんやりと壁を眺めながら、ピストンに身体を揺らされていた。
 
     †
 
 数日後。
 トゥーサッツ星人は広大な銀河を遊泳しながら、一人の性奴隷と、一人の囚人を連れて旅をしていた。何の犯罪も犯していない、罪なき囚人の衣食住の補償を盾にして、リトを牢屋に暮らさせながら、西連寺春菜を性処理に利用していた。
「おい」
 と、一声。
「……はい」
 それだけで全裸で現れ、トゥーサッツの一物をしゃぶるまでには、春菜はこの数日でものを覚えていた。口に入れることに抵抗を示さず、そうすることが義務のように、春菜はフェラチオを開始していた。
 大きなスクリーンに映像を流しつつ、ソファの背もたれを倒したトゥーサッツ星人は、春菜の口技を楽しみながら快感に浸る。
「どうだ。お前の映像を流しているぞ?」
「……はい。じゅっ、じゅむぅぅ」
「愛好家によく売れている。嬉しいか?」
「はい。嬉しいです」
 春菜は死んだ瞳の色をしていながら、上目遣いで表情だけは喜んだように見せかける。トゥーサッツ星人が散々犯し、人質の安全を盾にしたり、暴力の可能性をチラつかせ、脅し続けた成果である。
 もう暴れることはない。
 とっくに反抗心は失われ、ただ従うだけの存在となっていた。
「このまま忠誠心を示し続ければ、結城リトと会える時間を増やしてやる」
「ありがとう……ございます……」
「ケツを出せ」
「はい」
 春菜はスクリーン前のパネルに手をついて、トゥーサッツ星人に腰を突き出す。命じさえすれば差し出される尻を撫で、トゥーサッツ星人は立ち上がる。白い背中を見ながら挿入して、腰振りを開始した。
「あん──」
「いい声だ。もっと鳴け」
「あっ、あん! あぁん! やっ、いい! 気持ちいいです! 気持ちいいです!」
 きっと、それは命乞いでもあった。
 トゥーサッツ星人の思い通りでいなければ、自分の身も保証されない。自分やリトの身柄を好きにできる立場の相手に、機嫌を損ねたくないがための喘ぎ声には、腰を振れば振るほどいつしか本当の快楽が折り混ざる。
「おら、気持ちいいか? いいんだろ?」
「はっ! はい! いいです! いいです──あっ、あ! あ! あ!」
「肛門ひくひくさせやがって」
 お仕置きとばかりに、ぺちんと一発叩いてみる。
「やっ! あぁ……すみませ……」
「いいから喘いでろ」
「あ! あん! あぁん! あぁん! あ! あぁぁ! あん! あぁん!」
「出すぞ」
「はい! どうぞ──あっ、あぁん! だ、出して──くらっ、ふぁいぃぃ……!」
 遠慮なく放出した。
 トゥーサッツ星人は春菜の中に欲望を発散して、すっきりとした顔で春菜を見下ろす。肩で息をした様子の背中は、ぐったりとしたようでいて、気持ちよかった余韻に浸っている。アソコの穴から白濁が流れ落ち、ぽたり、ぽたりと、一滴ずつ床に散らばり、内股には愛液でうっすらとした湿り気が出来上がっているのだった。
「今度またリトの前でやってやろうか」
「……はい」
「お前のご主人様は誰だ?」
「はい、あなたです」
「よろしい。それでは続きをやるぞ」
 二人の営みは場所を移してベッドの部屋へと、トゥーサッツ星人は媚びる春菜と絡み合う。存分に楽しみ尽くし、味わい尽くした末に、精にまみれた春菜を背に部屋を出た。
 
「やっぱり、地球の少女はいいなぁ」
 
 トゥーサッツ星人の宇宙船は、再び地球を目指していた。
 やはり、性癖である盗撮を再び楽しみ、その最後には春菜のように手に入れる。次の標的は誰にしようかと思いを巡らせ、ワープ航行の準備にかかった。
 
「待ってろよ? 次の獲物ちゃん達」
 
 春菜に続けて、また次の誰かが犠牲になる。
 その時は刻一刻と迫り、トゥーサッツ星人は標的を決めるために地球に下り立つ。
 
 今度は、誰が──
 




 
 
 

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