続 渋谷凜の全裸健康診断【後編】

前編




 羞恥を煽ることにより、渋谷凜の頭はかき混ぜられていた。
 全身の観察と共に、毛の生え具合についてコメントを聞かされて、さらには最初の診断での絶頂についてさえ、肥満男によって暴露されたのだ。記憶から消したいような、あらぬ過去を晒されながら、お尻までペチペチとされる屈辱に、かえってアソコが反応する。
(私、本当に……変態……)
 もう、気持ち良くなってしまっていた。
 このままアソコと肛門の検査をされたら、またしても感じることになり、きっと絶頂の宣言もさせられることになるだろう。恥辱の未来を想像するに、興奮してしまう自分に対する思いに溢れ、変態となった自分をどう捉えていいのかもわからない。
 自分自身の足首を掴んだままに、凜は床ばかりをただ見つめる。
「そーいえば、薬物の持ち込みとかで、肛門と性器の検査厳しくナッテマス」
 審査官が告げてきた。
「お尻からクスリが出ちゃった例が最近あったし、厳しくするよう通達があってね」
 肥満男の声があったと思えば、キャスターのタイヤが転がる音で、何かの器具が運ばれてきたことがわかった。
(薬物なんて……)
「まずは肛門から調べるからね」
 ビニール手袋をはめる音がして、次の瞬間にはヒヤッとしたジェルが皺の上に乗ってくる。ぐるぐると、ぐにぐにと塗りつけられ、ジェルに呑まれた尻毛も指の動きに合わせて渦を巻く。
「あぁ……やっ、やばっ、これ……」
 凜は否応なしに自覚してしまった。
 これだ。
 これを求めていたのだ。
「あぅぅ……んっ、んぁ……!」
 ジェルを丹念に塗り込まれ、そのまま指が突き立てられたかと思えば、ずにゅぅぅぅぅ──と、内側に挿入されていく。内部を探られる快感に喘ぎ、お尻で悶える凜は、脚の筋肉までピクピクとさせているのだった。
「オヤオヤ? 気持ち良さそうですね」
「ちが──そんなわけ──」
 口では咄嗟に否定する。
 しかし、漏れ出る声に、お尻の反応。快感を隠し通せるわけがなかった。
「アソコが濡れているのはわかっているよ」
「ほほう? タシカニ濡れてマス」
 肥満男が喜んで指摘するなり、審査官はアソコを覗き込んでくる。視線を感じるに、ますます辱しめを受ける感覚は強まり、下腹部は喜びを高めてしまう。
「はぁぁ……くっ、ん…………」
「気持ち良さそうだねぇ?」
 煽らんばかりだ。
「あっ、やぁ…………」
 もはや否定も返せない。
 根本まで指が埋まって、お尻に拳が当たっている。ほじくるような動きに対しては、こんな場所を調べられているのだという感覚が強まり、ピストンされれば陵辱されている気持ちになる。このままでは肛門でイカされそうな予感さえして、無意識のうちに締め付けていた。
 ピストンを肛門括約筋で食い止めたいような、あるいは逆に反応を伝えてイキそうなアピールがしたいのか、凜自身にもわからない。
「さて、イクのかな?」
「はっ、くぅ……! だめっ、やば……!」
 愛液は内股にまで流れ出し、凜の感じぶりは誰の目にも明らかになっていた。
「──っと」
 そんな時に指が抜け、凜はかえって困惑する。
 イケそうだったのに……。
(い、いや! なに考えてんの!)
 凜は首を横に振り、あらぬ考えを頭から追い出そうとした。そんなことをしても、しっかりとこびりつき、払いようのない気持ちはすっかり奥まで浸透している。
(やっぱり、私もうおかしいんだ……)
「うんうん、イカずに済んだみたいだね?」
 そんな声をかけられるに、わざと遊んでいたのだと凜には伝わる。
「では次は肛門鏡デスネ」
「はい。お願いします」
 肛門鏡は審査官がやるらしかった。
 最初の時の、肛門に器具が入った感覚を思い出し、改めて下半身が疼いてしまう。体が期待してしまっている。早く欲しい、早く、早くと、お尻から急かす気持ちが放出され、もしも本当に伝わっていれば、男二人でどんな満面の笑みを浮かべていることか。
「デハデハ」
 審査官の手で、新しくジェルが塗られる。
「さぁて、イクかな?」
「一回目の診察と同じことシテ、どのくらいでイクかも見てますからネ?」
 絶頂さえも記録されると伝えられ、全身が甘い快感にぞわぞわした。身体中に期待の信号が行き渡り、アソコが絶頂の準備を始めてしまっていた。
 そして、男の親指ほどある太さ器具が、凜の肛門目掛けて突き立てられ、それはずっぷりと埋まり始める。
 
「ん! んひぁ──!」
 
 凜はイった。
 アソコから、軽い霧吹きのようにピチャッと、愛液を解き放っていた。
「挿入だけでイキました!?」
「凜ちゃーん? 記録しておくね?」
 二人して、嬉々としていた。
 いや、それだけではない。
 忘れがちだが、ここには見学者も並んでいて、凜のイキ姿を見るなりヒソヒソと話し始める。会話の内容まではわからなくとも、絶頂を面白がっている雰囲気だけはよくわかり、頭が熱くなっていく。
「ところで、今のは本当に絶頂? 痛かったとかじゃなくて?」
 ……わざとだ。
 わかっているくせに、勘違いがあっては誤診に繋がるというそれらしい理由から、本当に絶頂なのかを尋ねてきている。
 屈辱と恥ずかしさで、感嘆には答えられない。
「言わないと、診断を完了したことにできないよ?」
 そう煽られ、凜は心を決めた。
(前だって言ったことだし、慣れたし、問題ない……)
 心の中で強がりながら、凜は口を開いていく。こんなポーズのまま、お尻に器具まで入った有り様で、どこまでも惨めな思いで宣言する。
 
「アイドル渋谷凜は……し、診察で……絶頂します…………」
 
 その瞬間だった。
「ははははっ! そんな言い方わざわざしなくても、ただ性的な快感だったかどうかだけでよかったのにれ!」
 ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、と、肥満男は面白おかしいもので喜びながら、凜のお尻を叩いてきていた。
「そんな……!」
「ジャパニーズ・ヘンタイ」
 審査官にまで笑われた。
 惨めだ。
 どうせ入国管理の権限を盾に、いやらしい言い方をさせられると思ったのに、だから一回目のようにきちんとはっきり、自分の名前まで口にしての宣言だった。
 それをコケにされたのだ。
「ではコノママ」
 審査官は肛門鏡で内部を探る。
「へえ」
 肥満男はモニターに映る腸壁を見て、好奇心かもわからない感嘆の声を吐く。もちろん病気の類いの有無も、薬物の違法な持ち込みも、必要なチェックはしているが、それ以上に彼の意識は凜の感じる様子にある。
「あっ、くぅ……! くふっ、あぁ……!」
 肛門鏡が蠢くだけで、良いセックスでもしているように喘いでいた。
「これ検査ナンデスケドネー」
 審査官はいかにも困った言い方で、診察でよがる凜に対して、おかしなものでも見る目を向ける。そんな視線が突き刺さってくることが、声色から感じ取れていた。
 マゾヒズムが刺激された。
 いやらしい変わり者に対する視線を感じ、どんな顔をされているかを思えば思うほど、チューブをくわえた肛門に快楽が拡散していく。お尻の筋肉にまで甘い感覚が染み渡り、アソコが疼いて全身がビクついた。
「オーウ。今のでイったのですか?」
 蔑む声。
 凜の視界にあるのは、床と自分自身の髪だけだが、それでも審査官の人を嘲る顔が頭に浮かぶ。
「……はい」
 悪いことをして、責められ説教をされている気持ちになって、凜は小さな声で答えた。
「いけないね?」
「イケマセーン」
 二人して、悪いことのように言ってくる。
「では悪い子には、分娩台で次の検査を受けて頂きましょう」
 そう聞いただけで、次の検査をアソコが歓迎してしまう。喜びを示さんばかりに愛液が流れ、心の底では嬉しい気持ちで、表面にはそんなものは出さないように、凜は分娩台へと移っていった。
 
     †
 
 あられもない姿である。
 仰向けよりもいくらか角度のついた背もたれに背中を預け、座板にお尻を乗せた凜は、両足を専用の台に固定され、M字開脚を強いられていた。お尻の下に敷いたシートで、下半身の角度はやや上向きに、きっちりと脚の左右に広がった有り様は、無惨とも卑猥とも言えるだろう。
「うーん。まずは改めて」
 肥満男の顔が迫る。
 今にも貪りついてきそうな至近距離に、すぐそこに男の顔が来ている感覚が堪らない。羞恥で頭が熱くなるほどアソコは疼き、そして濡れたところを見られていると思っただけでも余計に気持ちよくなってくる。
「ワタシもよろしい?」
「ええどうぞ」
「デハデハ」
 審査官と入れ替わり、今度は別の頭が迫った。
「オーウ。毛はワレメの回りとかにもちょっと来てるんデスネ? 小陰唇はみ出てます。ちょっと大きい」
 性器の見た目を声に出して解説される。
(やだ……)
「中身、見ましょう」
(やっ……)
 ワレメを開かれ、覗き見られて、自分の全てを透かされているような、何も隠し事が出来ないような気になってくる。汁気が溢れ、それがワレメから尻のワレメに流れていけば、尻毛に絡みついてしまう。
「うーん! クリトリス大きいデスネ? お芽めでてマース!」
 そんなことを明るく言われ、自分では自覚のなかったクリトリスの突起を暴かれたと思うと、みるみるうちに脳が煮たって沸騰する。
「では所持品検査も兼ね、触診ヤリマス。ワタシも医者ですからネ」
 目の前でビニール手袋をはめ、アソコに指を入れる準備をしてくる。膣内をほじくられることがわかっただけで、子宮がヒクっとした。ご馳走を前にじゅるりとヨダレが流れるように、愛液が改めて滲み出ていた。
「凜サン。婦人科検診も過去二回やってますネ?」
「それは、まあ……」
「イクかやどうか確かめます。急に反応変わったらおかしいからデス」
 もっともらしい理由を付け加え、審査官は指を差し込んできた。
「うぅ……!」
「どうです?」
「アタタカイですねー。あ、いまヒクってしましたヨ」
 肥満男が感触を尋ね、審査官はその実況をする。
「んっ、あぁ……! くっ、あっ! あっ!」
「気持ち良さそうデスネー」
「症状はどうです?」
「健康問題無しヨ。ただ愛液いっぱいナノネ。くちゅくちゅ音が鳴りマース」
 証拠を示すようにして、審査官は指を活発に出し入れする。
「あっ! あっ……!」
 すぐにでも決壊が迫り、凜は大いに仰け反った。
 
「あぁ──!」
 
 潮が審査官の白衣に振りかかり、濡らした染みを作ってしまう。
「イキましたねー」
「やぁ……」
 イったことを言葉にされ、凜は恥じらい、目の前の審査官から、自分をイカせた男から目を逸らす。
「一応カクニン。今のは絶頂でよろしい?」
「……はい」
 そう答えることも恥ずかしかった。
「ダブルチェックとして、僕も触診するよ」
 ポジションを入れ替わり、今度は肥満男がくちゅくちゅと、凜のアソコから愛液を掻き出した。活発なピストンはもはや性的な責めに他ならず、数分も経たないうちに凜は絶頂を迎えていた。
「あぁぁぁ──!」
 仰け反り、ビクつく凜に対して、二人の男が向けてくるのは、面白おかしいものを楽しむ視線に過ぎない。
「またかぁ」
「またデスネー」
 呆れんばかりに肩を竦められ、凜はますます情けない気持ちになる。
「っと、まだまだ」
 次に肥満男が行うのは、アソコと肛門に同士に指を入れる方法だった。ピースの形で上下の穴に狙いを済まし、挿入は行われる。
「はぁ……! くっ、ん!」
 二ヶ所への異物感が侵入して、凜は喘いだ。
「ん? アソコもお尻も、キュウキュウ反応してるね?」
 そんなことを言いながら内部を探り、しばらくすればピストンが始まっていく。指の出入りに足首がよがり、喘ぎ続ける凜は、またしても数分以内に絶頂していた。
「イキましたねー」
 審査官はどうやら紙に書き込み記録している。
「うんうん、ナカまで震えてるのがよくわかるよ」
 肥満男も満足そうだ。
 凜が腰を痙攣させ、膣肉は肛門までピクピクと震えているのが、肥満男の指にもよく伝わっているようだった。
 さすがに、もう終わる。
 ここまでやれば十分に違いない。
「次はこれね」
 そう思った凜に対して、クスコを見せびらかしてくる肥満男と、そこ隣に並ぶ審査官は、実に意地の悪い、悪魔が笑うそのものの笑顔を向けていた。
 銀色の、クチバチのような器具が入り込む。
 金属のひんやりとした固い感触を膣に感じて、凜自身の温度が器具の表面を温める。操作によってクチバチが開いていくと、穴の幅は広げられ、膣穴を肉眼で覗きやすい、視診に最適な状態が出来上がる。
 まずは肥満男がペンライトを片手に覗いてきた。
(普通にアソコ見られるより……やばい……)
 羞恥心で体温でも上がってか、凜は赤らんだ額から汗を浮かべる。
「血色がいいね? うねうねしてて、ピンク色の表面に細かく血管が走っているのがよくわかるよ」
(じ、実況……しないで……!)
「ワタシもチェックしまーす」
「はい、どうぞ」
 まるで自分のものを譲るように、肥満男はポジションを明け渡し、今度は審査官がペンライトで中身を照らす。子宮の入り口まで見られていそうな、秘密を暴かれている感覚に、凜の頭は沸騰を続けていた。
 脳が煮え立ち、脂汗が額に吹き出す。
「子宮の口がミエマスね」
 本当に見えていることを教えられ、凜はますます汗を流した。
「じゃあ、カメラ付きの器具を入れるよ?」
 肥満男は棒状の器具を握っていた。先端にカメラを取り付け、膣内を確かめる。医療用の道具だが、どうしてなのかモニターが凜の目の前まで運ばれてきた。
「あぅぅぅぅ!」
 挿入され、モニターに映像が現れる。
 まさに肉の壁だった。スーパーに並ぶ生肉の色合いに似て、壁と壁の閉じ合わさった肉穴は、挿入によって割り開かれ、レンズの押し当たった部分がそのまま画面を占めている。器具が前後にピストンすれば、映像もそのまま前後して、遠ざかっては奥へと迫る。
「どうかな? 自分のアソコを覗く気持ちは」
「あぁ──くぁっ、ううう──!」
 全身が興奮して、アソコが愛液を垂れ流す。肉壁から分泌されているものが、ちょうどピストンの滑りを良くしてしまい、水音と凜自身の喘ぎは高まっていた。
 
「あ──────」
 
「あーあー」
「一体何回イクんですか?」
 その手でイカせておきながら、二人して凜のことを馬鹿にしてくる。ケラケラとからかう笑いの視線が刺さり、恥辱感でならなかった。
「あなたのイった回数、記録しましたカラネ?」
「よかったねー。いっぱいイケて」
 惨めだった。
 こんなにも惨めで、情けのない思いを味わうなど、この人生で想像したこともなかった。
 
     †
 
「こんなの……見せないで下さい……」
「こんなのじゃないよ。君の体だよ」
 
 凜は自分の下半身を見せられていた。
 分娩台で開脚をしたままの、アソコばかりか肛門まで映す形でカメラを介し、モニターには凜自身の恥部が大きくアップされている。先程までのジェルが残って、愛液も垂れた尻毛は水分によって束ねられ、皮膚にべったりと張り付いている。
 陰毛も汗と愛液を吸い込んで、肌と密着しているのだった。
 肥満男と審査官で、二人して視姦していたのは、一体どんな光景なのかがはっきりとわかり、凜は画面を直視できずに目を背ける。
「よーく見なさい。これがアイドル渋谷凜のね、イキまくった下半身なんだから」
 そんな言い方までしながら、凜に直視を強要してくる。
「ところでデスネ?」
「形式的な確認なんだけど、さっきも言ったように厳しくやるよう通達が出ていてね?」
「イキまくったのはわざとですか?」
 審査官が行う質問を凜は理解できなかった。
「どういうこと、ですか……」
 イクのにわざとも何もない。イッたフリなら演技で行う余地はありそうだが、本当の絶頂をコントロールすることなど凜にはできない。もしできるなら、イカないようにした方が、むしろここでかく恥は減らせる。
 いいや、きっと自分は減らさない。
 一回目の頃ならいざ知らず、今の自分はもう……。
「違法な物品を誤魔化すため、わざとイキまくったんじゃないか? ってことだよ?」
「ありえない……」
 つい反射的な言葉で、凜は即座にそうこぼした。
 だいたい、仮に何かしら隠し持っていたところで、ここまで調べて出て来ないわけがない。なおも疑うつもりなら、レントゲンか何かで胃袋を調べるべきだ。
「形式的なカクニンでーす」
「診察でイク変態なのか、そうじゃないのか。口頭で確認が取れればいいってわけ」
 もう理由などなんでもいいらしい。
 凜に屈辱的な台詞さえ言わせれば、きっと何だっていいのだ。
「変態って、認めるから……イッた……から……」
 モニターから瞳を逸らしつつ、男二人とも視線が合わないように、恥を堪えて小さな声で宣言する。たったこれだけのことで体は疼き、凜はどうしようもなく知ってしまう。こんな風に扱われ、性的に喜んでしまう性癖は、もう完全に芽生えてしまったのだ。
「せっかくだから、さっきみたいに『アイドル渋谷凜は』って、きちんとした宣言にしてみない?」
「いいデスネー」
 盗撮されていることを、この部屋がカメラにまみれていることを凜は知らない。
 知ってさえいれば、まだしも拒んだことだろう。
 しかし……。
 
「アイドル渋谷凜は……性器と肛門を検査されて、それでイッちゃう変態です……認める……認めるから……」
 
 宣言を済ませた時、凜を見下ろしながら、二人の男は邪悪に歪んだ顔立ちで勝ち誇っていた。アイドルを完全に屈伏させ、征服を果たしたかのような喜びに歪んでいるあまり、本当は人間のフリをした本物の悪魔が存在して、その魔法で従わされていたのではないかと、妄想じみたことさえ考えてしまった。
 
     †
 
 ライブは成功した。
(あんな思いまでして入国して、それで失敗なんて! 絶対にありえない!)
 それが全てであった。
 人生最大の屈辱に耐え、羞恥を乗り切り、変態宣言までさせられながら、それでもライブの準備を進めて開催したのだ。あんな思いまでして行うライブとは何なのだろうと、疑問さえ抱いた凜だったが、会場を盛り上げた熱気をそのまま肌に感じると、初めてのライブで覚えた高揚感を思い出していた。
(まだ体が熱い……)
 ライブ後は観光の休暇で数日間滞在して、帰国予定を迎えて空港を訪れる。
 やはり、出国前にも検査はあり──
 
(駄目だ……。やっぱり、楽しみになっちゃってる。変態とか言われても、もう否定できないんだ……)
 
 変わってしまった自分を思い、検査室への案内を受ける。
 ところが、そこにいた面々は、あの時の審査官とは別人で、肥満男さえおらず、そもそも担当者は気遣いと申し訳なさに満ちた女性であった。
「ごめんなさいね。仕事なの。こちらからは断れなくて……」
 いかにも仕方がなさそうに、罪の意識さえ抱えながらも取り組んでいた。
 基本的な項目は一回目や二回目と変わらない。全裸となり、全身の視診を行い、アソコや肛門さえも覗かれたが、羞恥や屈辱を煽る言葉はかけてこない。指をアソコに入れたついでにピストンしてイカせようとしてこない。
 だから当然、隠しカメラも存在しない。
 あまりにも手早く済まされ、かえって驚いてしまった凜は、悶々としたものを抱えて飛行機に乗る。
(いや、まだだよね)
 日本到着後、空港でも検査はある。
 大丈夫、まだチャンスはある。
 そうまで残念がる自分に気づき、凜は座席で目を伏せた。
 
 もう、本当に……。
 ……私、変態だ。