エイダ・ウォン 完全ボディチェック




 某企業のエレベーターに、一人の女が乗っていた。
 黒髪の彼女は漆黒のスーツを身に纏い、腰のくびれたラインを如実に示す。スリット入りのタイトスカートは白い太ももを半分ほど露出して、尻はむっちりと膨らんでいる。目を凝らせば、タイトスカートの尻にはV字のような、薄らとしたラインが見える。ショーツのゴムが浮き出たパンティラインだ。
(ここに細菌兵器が隠されているという情報、本当かしら?)
 エレベーターは地下に向かっていた。
 不思議なことに、ボタンは1Fから屋上にかけてのものしかなく、表向きには地下など存在しない。世間から隠された機密エリアに、彼女は足を踏み入れようとしているのだ。
(不穏な噂は以前からあった。実際に機密エリアの存在が判明したのはここ最近。しかもアンブレラを退社した経歴の持ち主が研究をしているとなれば、怪しむのも当然といったところね)
 エレベーターが開いた先には、たった数メートルの一本道を進んですぐ、分厚い電子ロックの扉がある。彼女はまるでメンバーの一員であるように、当然のようにカードキーを通してロックを解き、開いた扉の向こうへ歩む。
 真っ白な壁、真っ白な床が長々と続く、やはり一本道を進む彼女の尻は、タイトスカートの内側でフリフリと左右に動く。
(さて、ここからね)
 一つの部屋に辿り着き、彼女は初めて足を止めた。
 彼女はFBI所属ということになっており、何者かに命を狙われているという博士の護衛を行う。施設への侵入に成功したら、あとは護衛に従事しながら、密かに研究の秘密を暴いて証拠を持ち出せばいい。
 ここまでは順調だった。
 ただ、この地下研究所は外部からの出入りに対してチェックが厳しい。盗聴器を持ち込むのはまず不可能、紙やペンの持ち込みにも制限がかかっており、メモの切れ端一つを持ち出すことにさえ、詳しく理由を尋ねられる。
 ここで受けるボディチェックが一つの試練だ。
 彼女にとって、それ自体は問題じゃない。
 護衛任務の上で必要な拳銃、弾――必要な武器や道具の申請は行っており、許可を得た物品だけは持ち込める。大人しく指示に従い、きちんとチェックを受けさえすれば、侵入への支障はない。
 問題なのは、彼女が女性であり、人としての羞恥心を持ち合わせている点だ。

「エイダ・ウォンだな?」

 一人の検査官が、彼女を待ち構えていた。
「ええ、話は聞いているでしょう?」
 弱みを見せても仕方がない。
「もちろんだ。アンタこそ、ギャーギャー言わないだろうな?」
「当然よ。さっさとして頂戴」
 これから起きることなど、せいぜい蚊に刺される程度のことに過ぎない。そんな余裕の振る舞いを見せながら、彼女はテーブルに所持品を並べ始めた。

     †

 ボディチェックには二人の男がいた。
 テーブルに銃を置き、弾倉を並べていると、検査官に加えてもう一人が部屋に現れ、共に所持品のチェックを開始する。身分証やカードキーまで、一つずつ検めて、まず第一の段階を終了した。
「問題ない。持ち込み可だ」
「了解です」
 検査官の言葉に、もう一人の若い男は敬語で応える。
 さしずめ、彼は検査の補佐官といったところか。
「次はボディチェックだ。詳しく調べさせてもらうぜ?」
 そう言ってエイダに迫る検査官は、ズボンの妙な膨らみを隠しもせず、股間の山をわざわざ目の前で触っていた。ズボン越しとはいえ、男性器に触れた直後の手で、検査官はエイダの身体に手を伸ばす。
「どうぞ? お好きに」
 エイダは平静に振る舞う。
 まずは頭部のチェックであった。
 髪の隙間に何かがないか、頭皮に何か仕込んでいないかのチェックは手探りだ。頭を撫で、髪に手櫛を通していく。まるで診察の場でそうするように、まぶたの裏側まで確かめる。耳の穴をペンライトで照らして覗き、鼻の穴さえ確認した。
「手を挙げろ」
 すっと、エイダは両手を上げる。
「どんな気分だ?」
 検査官は両手でエイダの頬を包み込み、自分を向かせてニヤついた。明らかに下品な笑みで、舌なめずりまでして唇を光らせる。いやらしさを隠しもしない、高圧的な態度を前に、普通は誰もが顔を顰めることだろう。
「手間がかかって、お仕事が大変そう」
「確かに手間はかけさせてもらう」
 検査官の両手は耳へと移り、それぞれの穴に親指を入れて揉みしだく。唇を指で撫で、口を開けるように命じてペンライトで覗き込む。指を突っ込み、歯を一本ずつ触ることまでして、歯茎までなぞって確かめる。
 首から下へのチェックに移ると、まずは両手の上がった脇下を触り始める。手の平をべったり貼りつけ、揉むように確かめた。
 脇穴から肘にかけてを、それぞれさすった。
 両肩に手を置き、スーツ越しの肩肉を揉んで確かめ、二の腕をまんべんなく撫で回す。肘から手首にかけて触っていく。そんなチェックの数々は丁寧に行われ、部位とごとに撫でて揉み、ポンポンと叩くタッチも施され、やっとのことで両腕のチェックは済まされた。
「ブーツと靴下を脱げ」
 検査官が命じると、エイダは黙々と黒いブーツのジッパーを下げ、靴下まで脱いだ素足を床につける。それらがテーブルに置かれるなり、検査官の目配せで補佐官は動き、物品検査に取りかかっていた。
 まるでブランドを確かめる鑑定のようだが、そうやって靴に何かが仕込まれていないか、衣類のどこかに妙なチップが隠れていないか、探り当てるプロというわけだ。
「まだまだ続きがあるぜ?」
 検査官は腰のくびれを両手で掴む。上下にさすり、腰の両サイドから脇下にかけ、手の平を往復させ始めた。
 嫌に時間をかけていた。
 脇腹に食い込む両手は、揉みしだかんばかりに蠢き、脇に近づくにつれ、明らかに乳房に手の平を届かせている。脇下を確かめるフリをして、手のかかと、ともいうべき部位を横乳に及ばせ、検査官は乳房へのタッチを行っていた。
「FBIにしてはオッパイがでかいな」
 ニタニタとした顔を浮かべて、検査官は真正面からじっくりと、スーツの膨らみを視姦していた。
「FBIに胸の大きさが関係あるとは知らなかったわ」
「うっかり乳首を立てないことだな。オッパイに盗聴器が隠れていると勘違いしちまうことになる」
「心配ご無用よ」
「だといいがな」
 検査官は挑発的な眼差しを向け、次に腹部を撫で回す。さらにその下へと、タイトスカートの太ももまで触り始めた。
 あからさまに味わっている。
 どうだ、触ってやっているぞと言わんばかりの、勝ち誇った表情を浮かべて、実にニタニタと太ももを揉む。
「本当に丁寧ね」
 エイダは不快感を目に浮かべた。
「そうだろう? ここも確かめないとな」
 検査官は何ら遠慮もなしに胸に触れ、鷲掴みに揉みはじめる。丹念に指は蠢き、その表情はますます勝ち誇ったものへと変わっていく。
「何もないのがわかったかしら?」
 エイダは静かに目を瞑り、いかにも平静に、弱みなど見せるつもりはなく、平然とした顔を貫き通すつもりでいた。
「そうだなぁ?」
 検査官は背後に回り、エイダの背中を調べ始める。肩甲骨に手の平を押しつけて、背骨をなぞり、腰回りもポンポンと叩く。ひとしきり撫で回し、彼は大きな尻に手を置いた。
「……本当に、しっかりとやるのね」
「当然だろ?」
 尻のカーブに手の平をまとわりつかせ、ぐるぐるとなぞって形状を確かめる。まずは右のしりたぶばかりを撫で回し、続いて左の尻たぶも、何周もかけて回していく。丹念に撫で尽くした上で、

 パンッ、パンッ、

 何度か叩き、衣服越しの打音が鳴った。
(くっ、最低ね……)
「何もなさそうだなぁ? ただ、いいケツだってのはよくわかった」
「あらそう、済んだかしら?」
 エイダはいかにも飽き飽きとしてみせていた。
 小さく鼻を鳴らすや否や、尻たぶに指が食い込み、ぐにっと強く揉まれてしまう。内心では顔を顰め、それを本当の表情に出すことはなく、表面上のエイダはケロッとしていた。
(下らない。可愛く嫌がれば満足なの?)
 いい加減にして欲しい気持ちが膨らむ。
 検査官は意地でもエイダから面白い反応を引き出したいのか、一度は離れていったと思いきや、一つの機材を握っていた。
「金属探知機を使う」
 検査官は大きな虫眼鏡のような形の器具を用意して、黒いリングの部分をエイダの体中にかざし始めた。
「飽きないわね」
 何の反応もするわけがない。
 今のところ、テーブルに並べた以上の所持品を本当に持っていない。必要な情報を突き止めたら、証拠品の持ち出しは後から計画するつもりだ。
「おやぁ?」
 ところが、金属探知機は反応した。
 ブザー音が鳴っていた。
「どういうこと?」
「それはこっちの台詞だろ? オッパイに何を隠してる?」
 検査官はニタニタと笑っている――わざとだ。
 意図的に鳴らしたのだ。
「何もないわ」
「ま、誤作動ってこともあるが、念のためだ。脱げ」
 そう、そのためだ。
 きっと好きなようにブザーを鳴らせる仕掛けなのが、悪巧みの顔から伝わってきた。
「呆れたわ。その探知機、後で調べたいわね」
「後でな。まずは脱ぐんだ」
 検査官は強気になって、ニッタリと、優位の立場を楽しんでいる。
(まずいわね……)
 エイダはスーツのボタンに指をかけ、上着一枚を脱ぎ去ると、上半身に白いブラウスの生地が輝く。脱いだものを受け取るため、補佐官がすぐ近くにまでやって来るので、仕方なく手渡した。
 今度はブラウス越しの胸に金属探知機がかざされて――ビィィィィ、と、ブザー音声は鳴り響く。
「それもだ」
(まったく、本当にまずいわ……)
 エイダはブラウスを脱ぎ始める。
 上から順に、ボタンを一つずつ外していると、検査官はそれをまじまじと眺めた。後ろでも向こうと思ったが、身動きの気配を出した途端に「そのままだ」と言ってくるので、見られながら脱ぐしかない。
「もっとゆっくり脱いでもいい」
 ストリップを楽しんでいるのは明らかだ。
「遠慮するわ」
 赤いブラジャーが覗けるまで、時間などかからない。エイダはさっさと脱いでみせ、実にあっさりと上半身はブラジャーのみに、ワインレッドの下着を露出する。
 単なる赤ではない。
 三原色の赤をわずかに暗くしたような、小さなアクセントのかかった色合いで、サテン生地の表面は滑らかな光沢を帯びている。そんなワインレッドをベースに、中央には黒いリボンが咲き、そしてより黒に近い、暗い赤色の刺繍によって薔薇の飾り付けが行われていた。
(きっと裸にされる)
 エイダの抱く危機感はそれだった。
 今までけろっと、平然としてみせていたエイダでも、武器のない状態で、抵抗するわけにもうかない立場で脱がされるのは辛いところだ。FBIの身分でここにいて、厳しいボディチェックの内容にも合意した扱いで、下手に逆らうわけにもいのだ。
「さて、これ以上鳴らないといいなぁ?」
 楽しくてたまらない表情で、検査官は金属探知機をタイトスカートにかざし始める。アソコにぐっと近づいて、脚もひとしきり調べられ、エイダは薄らと汗を浮かべる。
(スカートは脱がずに済めばいいのだけど)
「尻はどうかなぁ? 大丈夫だといいなぁ?」
 尻に金属探知機をかざし始めて、エイダの恐れたブザー音声はすぐさま鳴った。
「あ、あら、おかしいわね」
「ボタンとかチャックに反応してる可能性もあるからなぁ? だが、反応があった以上は調べざるを得ないよなぁ? こっちにゃあ、職務上の責任があるからなぁ?」
 つまり、脱げということだ。
 エイダは仕方なくタイトスカートの留め金を外し、自分が無防備になっていく感覚を味わいながら、下へ下へとやっていく。
 ショーツも同じくワインレッドで、黒いフロントリボンを縫い付けつつ、より暗い赤を使った薔薇の刺繍が飾り付けとなっている。刺繍の下にある生地は、やはり滑らかな光沢を帯びていた。
「それで、ここまで脱がせてご満足?」
 エイダは気丈に振舞っていた。
「どうした? 顔が赤いぞ?」
 そんなエイダを検査官は煽る。
「気のせいね。大したことないわ」
「だったら下着も脱いでみるか?」
「あら、どうして?」
「両手を上げろ」
 煽ってみても、どうしても涼しい顔を崩さない。頬が少しばかり染まった程度のエイダに対し、不満なような、関心した様子で、流れを切っても腕を上に上げさせる。
「で? まだなの?」
 エイダの目は、早く終われと言わんばかりのものだった。
「まったく、大したもんだなぁ?」
 わざとらしく褒めながら、検査官はエイダの胸を揉む。ひとしきり指を動かし、ほくそ笑む検査官に対し、エイダは睨まんばかりの眼差しを返している。
「あなたに揉まれても、盗聴器なら出ないわ」
 遠回しに乳首は突起しないと、検査官の手では感じないと言ってのけ、そんなエイダの言葉が彼をむっとさせていた。
「なるほど、少し待ってろ」
 検査官は急にエイダに背中を向け、この部屋から去って行く。
 一体、何を考えて出て行ったのか。
(どうせロクなことじゃないわね)
 何があったところで、最後まで涼しい顔をしていてやろう。
 そう考えるエイダの前に、ようやく検査官が戻ってくると、彼は今まで以上に愉快でならない楽しげな表情を浮かべていた。
「それで? なんだっていうの?」
 嫌な予感にエイダは眉を顰めていた。
「薬物使用の疑いがある」
「どういうこと?」
「なんでも、麻薬捜査で浮上した情報が俺達の元に来ていてな。東洋人の女には気をつけなくちゃいけないらしい。アジア系は薬物検査必須だそうだ」
 本当だろうか。
 嘘の口実ではないかとエイダは疑う。
「困った話ね。早く潔白を証明してくれる?」
 しかし、嘘を追求できる立場でもなく、エイダはそう言うしかなかった。
「そこに両手を突け」
 検査官はテーブルを指す。
 言われるままに体重を預け、尻を突き出す。エイダは無防備な尻の向こうに男の気配を感じつつ、検査官からすれば剥き出しの背中がそこにある。ブラジャーがかかった白い素肌に連なって、くびれのカーブを成した腰から、大きな尻へと続いていく。
「採尿だ」
(やっぱり、最低ね)
 尻に手が置かれ、エイダは恥辱を顔に浮かべる。
 検査官はショーツの生地をよく味わい、滑らかなサテンが覆う尻を揉む。さらに生地をずらしてやり、生肌を剥き出しに、まるでTバックのように丸出し同然にしてしまう。大きな尻の谷間で紐のように細く絡まり、捻れたサテン生地の光沢は、美尻の良い飾りつけとなっていた。
「いい肌だ。茹で卵が綺麗に剥けた時のようにツルツルに光ってやがる」
「そ、それはどうも……」
 さしものエイダも、頬の染まりは桃色程度では済まなくなり、しだいにはっきりとした赤へと近づいていく。
「なあ、お前もそう思うだろう?」
 検査官は補佐官に話を振っていた。
「もちろん」
「この美人から採尿するんだ。もっと見えやすいところに来たらどうだ?」
「本当ですか? では遠慮なく」
 嬉しそうな若い声が近づくことで、エイダにとって尻の背後の気配が二つに増える。丸出しと変わらない尻に意識がいき、痛いほどの視線を感じた。
「始めるぞ」
 検査官がしゃがむと、肌に感じる気配はより強まる。アソコのあたりに、大切な部分の布に指が来るなりエイダは強張り、身体中が警戒心を高めていく。
 布がずらされた。
(まったく、こうなるなんて……)
 まるでレーザーに焼かれるような視線の熱を感じるエイダは、テーブルに置いた両手を拳に変えて握り締め、顔の赤らみを懸命に堪えていた。
「ちゃんと見えるか?」
「ええ、問題なく」
 脚のあいだに何かが添えられ、肌にぶつかる紙製品の感触は紙コップだ。しかも検査官は放尿を二人で楽しむため、自分の身体が邪魔にならないように、ポジションの調整までしているのだ。
「さあ、出すんだ」
(……冗談じゃないわ)
 誰が好きで放尿などするものか。
 しかし、そうせざるを得ない立場に歯を噛み締め、エイダは恥部に意識をやる。出そう出そうとは思ってみても、最後に水分を摂ったのはいつだったか。緊張で引っ込んでしまうせいもあり、なかなか出ない。
(どうしてこんな恥を……)
 二人もの男に見守られ、放尿のために踏ん張るなど、こうも格好悪く情けない話があるだろうか。アソコを視姦されるだけでさえ、心が恥辱に締め上げられ、脳がどうにかなりそうだ。
「どうした。FBIは小便の出し方も知らないか」
「……っ! 急には出ないだけよ!」
 こんな形で煽られて、エイダは声を荒げた。
「出ないなら出やすくするしかないなぁ?」
 その瞬間だ。
「っ!」
 性器に指が伸びてきて、エイダは目を見開いた。
 検査官はワレメを撫でて、クリトリスへの刺激を始めたのだ。肉芽は少しずつ突起していき、性感をくすぐられたエイダは、しだいに尻を悶えさせ、感じた素振りを見え隠れさせていく。
 検査官の指には愛液がまとわりつくようになっていた。それが滑りを良くすることで、エイダが受ける刺激は強まり、快感を隠せなくなっていく。
「気持ちいいのか? FBI」
「べっ、別に……」
「あ、耳が赤くなってますよ?」
「ほーう?」
 気丈な振る舞いを許さないかのように、補佐官が嬉しそうに指摘して、検査官はお得な情報を知って満足そうな顔をしていた。
「気持ちいいんでしょうねぇ?」
「だろうなぁ?」
(本当に……! この人達は……!)
 一体どれほど喜んだり、勝ち誇ったりしているのか、それを思うだけでも苛まれ、やり場のないも気持ちが心の中で暴れていた。
「尿道はこのあたりか? ここを刺激してやんないとなあ?」
 ワレメに潜む尿道口を探り当て、そんなところまで指先で揉み始める。
「あっ、くぅ……」
 声が漏れかけていた。
 エイダには決壊が近づいていた。引っ込んでいたはずの尿意が徐々に膀胱に膨らんでいた。
「お? 糸が引いたぞ?」
 検査官は指とアソコのあいだに糸を引かせる。
「引いてますねー」
 補佐官もまじまじとそれを眺めた。
「くぅ……んぅ…………」
 感じているとも、屈辱を堪えているとも知れない、呻きか喘ぎかもわからない声が漏れていた。
「出る時は、ちゃんと言うんだぞ?」
 ぺちんっ、と、そんなことを言いながら検査官は尻を叩いた。
 冗談ではない。
 自分の口から放尿を宣言して、しっかりと見てもらうなど、もはや重い軽罰だ。

「……出るわ」

 しかし、エイダはそう告げる。
 その瞬間だ。

 ――チョロッ、

 少しだけ飛び出た黄金液が、何滴かコップの底に落ちたのをきっかけに、数秒後には放尿が始まった。最初はコップの底が水に叩かれ、溜まれば溜まるほど、水面を叩く音へと変わっていく。
(……くぅっ、こんな……見られながらなんて……人生で始めてよ!)
 脳が沸騰せんばかりの激しい恥辱で、とうとう耳まで真っ赤に染まる。首から上が綺麗に赤面しきったことで、エイダは顔さえワインレッドと化していた。
 放尿が途切れる頃には、紙コップには十分な量が溜まっていた。
「拭いてやるよ」
 この上、検査官はウェットティッシュを用意して、その手でエイダのアソコを拭く。排泄の世話を他人にされる屈辱で、エイダの顔はますます歪み、拳は固く強張っていた。
「たっぷり出たな。気持ち良かったか?」
「……そうでもないわ」
「嘘をつけ、こんなに出たんだ。マンコだって、エロ汁で糸を引いていたじゃないか。感じまくっていたんだろ?」
 こんな言葉を聞かされながら、ウェットティッシュがワレメの部分に押し込まれ、前後に動き続けてくる。
(こいつら……! 本当に、本当に……!)
「最後だ。下着も全部脱げ」
 まるでトドメを刺されるかのようだった。
「…………最低」
 小さな声で吐き捨てつつ、エイダは二人の男を振り向く。
 優越感に浸った満足そうな男に対し、エイダは真っ赤な顔を下に向け、固く歯を食い縛り、顎を力ませ震わせていた。
 背中のホックを外し、ブラジャーを脱ぐと、補佐官がそれを取り上げる。
 ショーツの方は検査官が取り上げた。
「なるほどなぁ?」
 持ち主の目の前で、ショーツの生地を裏返す。検査官は手の平の上でクロッチをすりすりと可愛がり、宝物でも愛でるように摩擦した上、顔に近づけわざとらしく匂いを嗅ぐ。
「衣類も検査する。別室へ持っていけ」
「はい」
 ひとしきり楽しんだ挙げ句、検査官は補佐官にショーツを任せる。補佐官は他の衣服も全て畳んで一つにまとめ、この部屋の外へと持ち出していった。
 ブーツや靴下すらなく、完全な丸裸で、エイダはそこに立っていた。
「お? もう少し早く突起していれば、盗聴器を疑ったのになぁ?」
 検査官は乳首に手を伸ばし、指先で悪戯する。
「やめて頂戴。まだ終わらないの?」
 エイダはその手を払い退けた。
「なに、次で最後だ。足を肩幅ほどに開き、自分で自分の足首を掴め」
 それは尻を高らかにして、恥部を曝け出すための、前屈に近いポーズである。身体を二つに折り畳み、床に頭を近づければ、下半身に強い視線を感じるのは当然だった。
 検査官がしゃがむなり、アソコと肛門のすぐ近くにまで顔の気配は迫る。至近距離からジロジロとした視線を感じることで、肌を炙られているような、火傷しそうな熱を味わい、さらには指で性器を開かれる。
「小便したばかりにしては綺麗じゃねーか」
 検査官はまじまじと肉ヒダを眺め、指まで挿入して膣内の調査を始めた。
「んぅ…………くぅ………………」
「なんだ? 感じてるのか?」
 膣内に物を隠していないか、そのための挿入だったが、根元まで埋め込み何も出て来ないとわかるなり、悪戯目当てのピストンが行われる。
「あっ、んぅ……そんなこと…………」
「ははっ、気持ちいいくせに」
 指は引き抜かれていくが、本当の最後が残っている。
 検査官はガラス棒を用意していた。
「ほら、もうちょっとだ。頑張れよ?」
 尻たぶに片方の手を置き撫でながら、検査官はジェル付きのガラス棒を突き立て挿入していく。肛門の中身さえ調べられ、エイダの抱える感情は言い知れない。
(くっ、こんな……! こんなの……!)
 エイダは全力で目をつむっていた。筋力の許す限り極限の力でまぶたは閉ざされ、頬は面白いほどに強張っている。顎が震えるまで歯を強く食い縛り、自ら足首を掴む握力も、爪が食い込まんばかりであった。
「終わりだ。良かったなぁ?」
 尻をペチペチと叩きつつ、検査官はガラス棒を引き抜く。
 ちょうど、補佐官が衣類を抱えて戻って来た。
(まったく……やっと解放されるわ……)
 恥辱感を引きずりながら、テーブルに置かれた着替えに手を伸ばす。すぐにショーツを穿こうと思ってみると、妙な具合に顔を顰めた。
「これは……」
 エイダは引き攣っていた。
 青臭い香りのする妙な液体が染み込んで、ショーツの裏地がまんべんなく湿っていた。べったりと貼りついた液体は、もう水分を吸収しきれなくなった布地の上に乗り、ぷるっとした白濁として揺れていた。
 精液だった。
 衣服を調べると言いながら、人の下着をこんな風に使ったのだ。
「穿け」
 検査官の声に、エイダは彼を睨み返した。
「……言い趣味。一生忘れないわ」
「いいから穿くんだな。よく温まってるぞ」
 検査官はもちろん、こんなものを持って来た補佐官も、エイダにニヤニヤとした視線を送っている。白濁に濡れたショーツを穿く瞬間を、今か今かと楽しみに待っている。
 本気でわからない。
 排泄物に手を突っ込むのと、これを穿くのと、一体どちらがマシなことか、エイダには本当にわからない。
「…………」
 無言のエイダは、静かに二人を睨む。
 ニタニタとした視線に見守られ、不快感に身震いしながら、エイダはショーツに足を通した。不潔なものを身につける拒否感で、肌中に鳥肌が立ち、こんなものを穿こうとしている指さえ震えた。

 にちゅり――

 と、穿いた途端に、ワレメの肌に白濁が広がって――

 ぞわぁぁぁぁ――

 毛穴という毛穴が広がった。
 全身、全ての体毛が逆立っていた。
 ショーツと肌の隙間で潰れ、白濁はアソコの表面に広がって、ねっとりとした嫌な温度が皮膚に伝わる。何人分ともしれない量は、ワレメの隙間から膣に入りそうな予感さえして、背筋に寒気も走っていた。
「穿いたな? 着替えが済んだら通っていいぞ?」
「次回もボディチェックを行いますので、そのつもりで」
 二人の男が浮かべる表情は、楽しくてたまらなかった、とても満足しきったもので、逆にエイダは屈辱と不快感を抱えながら、さっさと着替えてこの先へと進んでいく。ショーツの中身がいつまでもいつまでも気になって、いっそ脱いでしまいたかった。

 こんな状態で、エイダは博士の護衛という表向きの任務に就く。
 研究所の秘密を探るのは、半ば仕返しのような気持ちで取り組むこととなるのだった。
 



 
 
 

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