士堂瑠璃 悪徳医師に診察される パート3

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 医師としての良心が今更ながらに働いて、内科医はビニール手袋を取り外す。性器を弄るのはここまでにしようと決めつつも、しかし最後の遊びを閃いた。

 待てよ?
 座薬でも入れてやるか。

 そうと決まれば、早速のように薬を用意して、内科医は改めてビニール手袋の装着を行っていた。
「今から座薬を入れるよ。効き目が早いからね」
「座薬ですか? あ、ありがとうございます」
「じゃあ、ちょっとヒヤっとするからね」
 ポーズの変更はさせていない。
 M字開脚の腰が浮き、反り上がっているだけでも、お尻の割れ目は左右に開き、肛門はよく見えるようになっている。
 内科医はそこに目をやって、指先に取ったジェルの流布を行う。
「んっ」
 肛門を触ったせいか、ひんやりとしたせいか、両方か。
 瑠璃は肩を縮めるような反応を示していた。
 お尻の穴をぐるぐると、周囲をなぞらんばかりにジェルを塗り伸ばしていきながら、グニグニと押し込む力を加えて揉んでやる。
 ひとしきりほぐしてから、座薬を手にして先端を肛門に宛がった。
「では、入れるよ?」
 人差し指で押し込んで、ロケットにも似た形状の白い座薬は肛門の皺へと入り込み、やがて最後まで埋まっていくと、そのまま指の腹を押し込んだ。勢いのままに指さえ挿入しながら、なおも奥まで座薬を押した。
「君に入れた座薬は飛び出やすいから、こうして指で押さえていた方がいいんだ。薬が溶けるまで、一分くらい待つからね」
 そんな説明を行うと、第二関節までを肛門に埋めた指先は、そのまま座薬が出てしまわないための栓としていた。
「一分もですか」
「うん。一分」
 というのは、単なるイタズラ目当てだ。
 内科医は人差し指に肛門の締め付けを感じつつ、指先は腸粘膜のぬかるみに包まれている。

 やっぱ、気が変わった。
 クリトリスも触っとくか。

 もはや診察など関係なしに、空いている左手は性器に伸ばし、親指でワレメをなぞり上げ、愛液でよく濡れているから表面がよく統べる。そのまま他の指ではクリトリスを刺激して、肉豆の突起を可愛がる。
「あっ、あのっ、そこは………………んぅ………………!」
 瑠璃は全身をモゾモゾと蠢かせ、肛門にもキュっと締め付ける反応を示しつつ、目尻や眉間を歪ませる。
「大丈夫。だいぶ薬は溶けてきたからね」
「は、はいっ…………んっ、んんぅ…………! んっ、んぁ…………んぁ…………」
 しだいに声は荒っぽく、かつ淫らに熱っぽい。
 ここまで来ても、未だ医師の指示に対して律儀に従い、M字開脚を維持したままの、両手できちんと自分の膝を抱える瑠璃の素直さにニヤニヤと頬が緩んで、内科医はより技術を駆使してクリトリスを刺激する。
「あっ……! あ、あのっ、それ……! んっ、んぅ……! んぁ……!」
「どうしたのかな」
「そ、それ…………! そのっ、すみませっ…………よ、良くて…………だから…………んぁ……! んぁっ、んぅ……!」
 声はより激しくなっていた。

 ははっ、もう少しか?
 もうちょいだよなぁ?

 キュッ、キュッ、と、感じるにつれて肛門もヒクヒクと反応し、リズムでも刻まんばかりに人差し指を締め付ける。
「あぁぁ……! あっ、あふぁ……!」
 親指でワレメをなぞり、小指と薬指をクリトリスに使う。器用な両立によって二箇所を責め、それが瑠璃を喘がせる。
「あぁぁっ! あっ、あのっ! 本当に――す、すみませっ、おねが――やめ――!」
「大丈夫大丈夫」
 とっくに一分など過ぎていた。
 それでも、内科医は構わず愛撫を続けていく。
「あぁぁ! あぁっ、あっ! あっ、んっ、んっ、んっ!」
 来る。
 もうすぐ、来る。
 そう感じた内科医は、トドメのつもりでクリトリスに指を集中させ、すると瑠璃のモゾつきも激しくなる。見れば足首がよがり反り返り、肩も強張りを繰り返す。前兆が現れている肉体に、クリトリスへの刺激をより強めた。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――!」

 瑠璃は激しく痙攣した。
 痙攣じみて腰全体をびくつかせ、ちょっとした噴水のように何回か、愛液を噴射してシーツを汚す。

 へっ、イカせてやったぜ!
 どんな気分だよ。
 ええ? それとも、こんなことは知ってたか?

 どうして羞恥心が薄かったか。
 露出慣れの理由でもあったのか、とっくに性交経験済みの少女だったのか。
 いや、処女膜の気配はあったので、未経験だと思うのだが。
 まったくもって、無頓着な理由はわからないが、内科医にとってはどうでもいい。期待外れと思いきや、やっぱり十分に楽しめて、盗撮カメラを仕掛けた分だけ得られた収穫は大きいものだと感じていた。
「はぁ…………はぁ……………………」
 瑠璃はぐったりとしていた。
 肛門から指を引き抜き、クリトリスへの愛撫もやめると、心ここにあらずといった放心ぶりで足を投げ出し、しばしは起き上がる気力もなさそうだった。

 それから、しばらく――。

 数分も休めば起き上がる気力を取り戻したようで、瑠璃は診察台から身を起こす。
「さあ、降りて」
 降りるように促すと、瑠璃は床に置いていた靴を履く。全裸に靴下、そして靴まで履いた姿にフェチなものを感じつつ、内科医はベッドシーツを指して言う。
「見てごらん?」
 黒縁眼鏡のレンズから、その瞳が内科医の指す場所へと移っていくと、瑠璃の表情にはさすがの羞恥が浮き上がっているようだった。
「ご、ごめんなさい!」
 瑠璃はすぐさま頭を下げた。
 全裸の女子高生が自分に頭を下げることの優越感にニヤけつつ、改めて内科医自身も目を向ける。
 そこにあるのは、白いシーツの上に広がる愛液の染みだ。コップの水でもこぼしたように濡れた生地には、噴射によって出来た細かな飛沫の痕跡も見受けられる。オシッコというわけではないが、自分のアソコから出た液体が人のベッドを汚した事実は、さぞかし恥じらいを刺激するものであろう。
 目の前の医師に、ベッドの持ち主に、とても顔向け出来ないかのように俯く瑠璃は、腹の当たりで両手の指を絡め合わせてモジモジといじらしく萎れている。不安そうな上目遣いがレンズ越しに向いてきて、それは許しを請うかのような目つきであった。
「大丈夫。お漏らしくらいは許してあげるよ」
 内科医はわざとそんな言葉を選ぶ。
「お、お漏らし……」
 瑠璃は恥辱に引き攣った。
「そう。君はお漏らしをして、病院のシーツを汚した。だけど問題ない。君は病人としてここに来たんだ。座薬がすぐに効くと思うけど、三日分の薬も出すから、あとは処方箋を貰って、薬局に行って、おうちでゆっくり休むことだね」
「はい……すみません………………」
 恥じ入るような、どこかに消えてしまいたそうな声を聞き、今頃になって興奮してきた内科医は、ふと意地悪な提案を思いつく。
「ま、どうしても申し訳ないっていうなら、お尻ペンペンでもさせてもらうけど?」
 お漏らしをしてしまい、そのお仕置きとしてスパンキングである。そんな体罰を受けた経験のある子供は、今の時代にいるものだろうか。いなくとも、お尻を叩くという趣味趣向の存在くらいは、知っているものかもしれない。
「それは……その………………」
 お尻など叩かれるのは、いくら無頓着でも抵抗があるだろうか。
 かといって、シーツを汚してしまったことへの気持ちもあり、瑠璃の視線はしきりに愛液の染みを気にしている。迷い続けている瑠璃は、しどろもどろになりながら、とうとう自ら観念してきた。
「本当にすみません。でも、できればあまり強くしないで頂けると…………」
 不安そうな上目遣いを向けて来る全裸女子高生。
 ますます興奮する内科医は、ゲスな心が表情に浮かばないように気をつけながら、ゆっくりと指示を出す。
「いいかい? なら、僕が膝を立てるから、君は足の上に腹這いになるんだ。四つん這いみたく、お尻を高くして、お仕置きしやすいように」
 内科医に従って、瑠璃は素直に指示通りに、床に座した立て膝の太ももに腹を置く。靴と靴下だけは履いた全裸が四つん這いに、まさに手元でお尻を掲げる。安産型の豊満なヒップが部屋の照明に輝いて、白く眩しく見えてきた。
「いくよ」
 内科医が言う。
「は、はい……」
 不安な声が返ってくる。
 内科医は腕を振り上げ――――――

 ぺちん!

 大きく音が鳴るように意識して、強すぎず弱すぎず、絶妙な加減を狙って叩く。実に良い打音と共に、プルっとした振動が尻肉を揺らしていた。

 ぺちん! ぺちん!

 音を鳴らすことが肝心だと思っている。
 より大きく響くことこそ、相手にスパンキングの気持ちを与える気がする。自分はお尻を叩かれているという実感が音として鳴り渡り、その顔が恥辱に濡れるような気がする。

 ぺちん! ぺちん! ぺちん!

 アザを作るわけではない、ただヒリヒリと痺れはするであろう力で、音の出やすい位置や手の形を探り探りに、内科医は腕を振り上げ叩き続ける。

 ぺちん! ぺちん! ぺちん!
 ぺちん! ぺちん! ぺちん!

 叩かれている瑠璃の気持ちを想像する。
 あれほどまでに無頓着で、れっきとした診察と思い込んだ少女である。叩かれる分には何も感じていないだろうか。

 ぺちん! ぺちん! ぺちん!
 ぺちん! ぺちん! ぺちん!

 叩くたび、叩くたび、プルっとした振動が魅惑的に尻肉を揺らしている。

 ぺちん! ぺちん! ぺちん!
 ぺちん! ぺちん! ぺちん!

 これだけ叩いた内科医は、いい気になって尻を掴んで撫で回す。ほのかに赤らみ、ヒリヒリとしてきたであろう尻肌へと、産毛を辛うじて撫でるタッチで、手の平全体を使ってくすぐらんばかりにしていくと、瑠璃のお尻は強く大きくモゾついていた。
「どうだい? 気分は」
「反省が身に染みました」
「痛かったかな?」
 ぐにっと、尻肉をしっかり掴み、内科医は揉み回す。
「……いえ、ちょっぴりしか痛くなかったので」
「なら加減は間違っていなかったようだ。安心したよ」
 そう言いながら、尻肉を指で味わい、ひとしきりの欲望を満たしてから、ようやくになって瑠璃のことを解放する。
 着替えを許して、元の格好に戻させて、改めて診察の終了を告げる。
「ありがとうございました」
 軽い会釈の角度で頭を下げ、瑠璃は最後にお礼を言って立ち去った。
 あとは受付で処方箋を貰い、薬局で代金を支払い、薬を受け取り、真っ直ぐ家に帰るだろう。

「さて、と」

 まだまだ患者は来るかもしれない。
 それら患者はうら若き女性ばかりでなく、特に見たくもない男性や、さらに老人達がいくらでも来る。どうでもいい連中を映すつもりはないので、暇のあるうちに盗撮カメラの録画を停止させていく。
 容量やバッテリーは十分だが、映像時間が長大になりすぎると、何台ものカメラから編集するのは手間になる。
 やがて、さらに数人ほどの患者の相手をして、内科医は仕事を済ませた。

 ――その晩。

 暗がりの部屋で、内科医は高級なソファに腰を沈めて、大画面のモニターに映し出される映像編集を行っていた。
 ある意味、創作趣味だろうか。
 何台ものカメラ。ありとあらゆる角度から患者を映した幾つもの動画ファイル。
 この数多くの素材をつなぎ合わせて、より見ていて楽しい内容へ編集しつつ、長いばかりではない、序章からゆっくりと起承転結の承を重ねて、満を持して見所となるような、楽しい構成に向けて切り貼りを行っていく。
 無編集にも『需要』はあるので、単に無意味な時間を切り捨てただけの、味気ない動画も作っておくが、あまり内科医の趣味とはいえない。
 やはり、素材の活きる編集をするのが楽しい。
「特に、絶頂シーンとスパンキングは最高だよな。川でマグロが釣れたくらいの大収穫じゃねえかよ」
 内科医はお尻を叩いた場面を再生した。

 ぺちん!

 自分自身では見ることのできない角度から、腕を振り上げ叩いた瞬間を鑑賞した。
 まるで正面に撮影する人間がいたかのようなアングルで、内科医自身の片膝を突いて座った姿が映し出され、脚に腹這いとなっている瑠璃は、尻を高らかに掲げている。

 ぺちん! ぺちん! ぺちん!
 ぺちん! ぺちん! ぺちん!

 白いお尻が衝撃に揺らされて、プルプルと振動を続ける有様までもしっかりと、モニターの中には映っていた。
「これらを高く売って――へへっ、へへへ――――――――」
 その瞬間だった。

「――――――――――っ!」

 突如、うなじに何か静電気の弾けたような、鋭く鈍い衝撃が伝わって、内科医は一瞬にして目を血走らせる。眼球が飛び出そうなほどに大きく見開き、ぱっくりと開いたまま閉じることのなくなった口からよだれが垂れる。
「いくらなんでも、おかしいです」
 聞こえて来た女の声。
 自分の背後に、いつからか何者が立っていて、その仕業でうなじに何かの衝撃が走った。何かの凶器で刺されたのだと理解はしたが、それを最後に内科医の意識は途切れた。もう二度と目覚めることのない、永遠の闇の中へと沈んでいた。

     ***

 依頼内容は少女連続行方不明の犯人を始末すること。
 その依頼者は、父と母。

 行方不明の情報を集めるうち、とある病院に通った十代から二十代までの患者が、実に半数以上の割合で失踪していることを掴んだ。
 依頼を受けることで殺しを引き受け、悪党を消し去る闇稼業の者に取っては、たまたま体調管理を怠って、病院へ行く羽目になるというのは、タイミングが良いといえば良い話だ。
 患者が消えることまではわかっていた。
 その可能性は五割から六割ほどで、必ずしもは消えていないが、何か病院に裏があることは間違いなかった。
 実際、診察を受けてわかった。

「患者の盗撮です」

 セーラー服の士堂瑠璃は、駅に設置されているベンチに腰掛け、隣に誰が座っているでもないのに話していた。
「彼は盗撮した映像を売っていました。買い手も誘拐や脅迫を行う犯罪グループで、買い取った動画をそのまま脅迫の材料に使ったりしていたのでしょう」
 瑠璃の座るベンチというのは、背中合わせの形で後ろ側にも、同じくベンチが置かれている。あいだに看板を挟みつつ、瑠璃の他には誰も座っていないと思いきや、そちら側には一人だけ、眼鏡をかけた若いスーツの男がいた。
「彼は誘拐や強姦に直接関与したわけではない。しかし」
「黙認していました。自分が脅迫材料を提供しているのも、わかってやっていたんでしょう」
「ところで盗撮映像ですが、警察が押収し、アップロードされてしまったものに関しても、サイト運営者に警告の文書を送るようです。もっとも、海外にサーバーが置かれたものが消えるかはわかりませんが、まだ流出していなかった映像がこれからアップされることはないってことですね」
「そうですか。それはよかったです」
「誘拐・脅迫グループも、謎の怪死を遂げて原因不明。事件と事故の両面から調査を行うそうです」
 電車の時間が近づいて、間もなくやって来るというアナウンスが流れてくる。それを聞くなり瑠璃はベンチを立ち上がり、決して振り向くことはないまま、背後へ向けた言葉を去り際に放っていた。
「じゃあ普通の高校生に戻ります」
「はい。私も弁護士の務めに戻りますよ」
 言葉通りに、お互いにただの一般人として、瑠璃はホームで電車を待ち、開いたドアの中へと消えて行く。男もやがて、乗車予定の電車を迎えて消え去った。

      †

 利己的あるいは理不尽に命を奪い、法の目を逃れたり、法で裁ききれない悪党はいにしえより存在する。そして残された人達の真摯な願いと、精一杯の報酬で、そいつらを始末する者達も存在する。
 名を変え、形態を変え存続する。
 その者達の現在の通り名は――――

 闇狩人やみかりうど