中学剣道少女 第16話「オナニーインタビュー」

前の話 目次 次の話




  やっとのことで数百人が麗華の体に触れ終わり、その肉体には一層の疼きが溜まりこんでいた。膣の奥から今にも爆発しそうなほどの熱い唸りが沸きあがり、麗華はソコに触れたい欲求にかられていく。
 どれほど麗華が自慰行為を望んでいるか。
 それは空腹の限界を迎えた人間に料理を差し出し、しかしなおも食べずに我慢をしているような、禁欲どころでない苦行に麗華は耐えているのだ。少しでも気を抜けば、これほど大勢の目の前だというのに手が勝手に動きそうになる。
 麗華は強い意思の力を振り絞り、自分の両手に見えない鎖をかけていた。それほどの我慢をしていなければ、もはや限界だった。
「では次にこの年頃の生態についてインタビューを行いましょう」
 講師がマイクを向けてくる。
 生態、などとまるで生物の研究扱いだ。
「麗華さん。オナニーはしますか?」
 直球な問いかけに麗華は真っ赤に染まりあがった。
 恥ずかしいだけではない。あまりにもプライベートな質問に、羞恥と共に怒りが込み上げ、無礼に対する叱責を飛ばさずにはいられなくなる。
「どうしてですか? セクハラだと思いますけど」
「今更何を言いますか。これも学習のうちなんですがね」
「何が学習ですか。散々触られて……。こっちだってもうたくさんなのに」
 麗華は自分を嬲った手の数々を思い出す。
 隅から隅まで撫で尽くされ、体中の皮膚の全てを侵略される気分だった。今度は自慰行為というさらなる秘密に講師は踏み込み、麗華の精神にまで踏み入るつもりなのだ。
「いえね? それでもやってくれないと困ります」
「……何故」
「少女というものを少しでも把握するためです。自慰行為も立派な生物の行動でしょう? こうしてインタビューから統計を取り、オナニーはおよそ何歳から始まるのかを測定します」
「だから、それに何の意味が……」
「人は一体いつごろから性に目覚めるのか。生物の研究には重要でしょう? オナニーを基準の一つとして考えようというわけですが、麗華さんも当然しますよね?」
「それは……」
 麗華は顔を背けた。
 まるでしている前提のような物言いが気に入らない。まるでお前はいやらしい子だと言われているような気分になり、麗華は顔で不快感を示していた。
 しかし……。
「真面目にやってくれる?」
 医学生の女の声が麗華を叱責した。
「俺達だって真面目なんだ」
「立派な授業なんだよ」
 明らかなセクハラなはずなのに、むしろ麗華の方が悪いような空気が満ち溢れる。やはり従わなければ解放もありえないのだ。
「……すみません。ちゃんと答えます」
 麗華は屈辱に震えた。
「では今一度、オナニーはなさいますか?」
「……一応」
「どれくらいしますか?」
「……週に二、三回ほどです」
 講師の質問には遠慮がない。答えるたびにシャープペンシルが紙を引っ掻く音がそこら中から耳をくすぐり、自分の答えが大勢にメモに残されているのが感じ取れる。身体のデータに留まらなず、プライベートさえもが計測され、資料のように収集されているかのようだ。
「どのようにオナニーなさいますか?」
「どのように、って……」
「例えば何か道具は使いますか?」
「いえ、道具は別に……」
「では基本的に手でオナニーしているということですね。いつ頃から、どのような触り方をしているのか。パンツの上からか、それとも直にしているのか。あなたのオナニーについて始まりから丁寧に語ってください」
 そして、麗華はマイクを握らされた。
 学校でも来客が呼ばれ、生徒達の前で自分の体験談を語り聞かせるような授業内容が行われたことがある。小学生の頃は老人の戦争体験、中学では震災の体験談を聞かされ、それについての感想文を提出するような授業だった。
 今回は麗華自身が語り聞かせる側に回り、医学生数百人の前で自分のオナニーについてを喋るのだ。全裸で体中を見られながら、性生活についてを赤裸々に語らなくてはならない。あまりに恥ずかしい状況である。
「私はその……。初めてしたのは小六で、十一歳の時でした。その頃には一応性行為の知識もあって、好きな人とかはいなかったんですが……。それでも少し興味があって、触ったらどうなるんだろう、っていう好奇心がきっかけだったと思います。それでその……」
「ふむ、十一歳の頃からエッチなことへの好奇心があったということですね」
 講師はわざわざ恥ずかしい言葉に置き変えてくる。
「ええ、まあ」
「それ以前からは興味はなかったんですか? 十一歳になった途端にいきなりエッチな子になるわけじゃないでしょう?」
「それは……。知識はあっても自分はまだ小学生だから、昔はなんていうか、『ふーん?』といった具合で自分は関係ないような顔をしていました。だけど、無意識のうちに興味はあったのかもしれません。おそらくなんですが、性に対する好奇心は成長期が近づくにつれてほんの少しずつ膨らんでて、それで……小六のいつ頃だったかまでは覚えていませんが、そのくらいの時から触ってみたいような、しかし、やっぱりはしたないのでやめておこうか、などと葛藤が生まれ初め、最終的には……」
 麗華は自分の過去を思い出す。
 今でもそうだが、当時は性に対する漠然とした罪悪感を抱いていて、エッチなことは何となく悪い事のように思っていた。だからこそ、興味を持つ自分は悪い子なのだろうかと悩みながらも、膨れ上がる好奇心を前に十一歳当時の麗華は一つの言い訳を見つけてオナニーをした。
 ――アソコが何だかムズ痒い。
 あくまで痒いから触るのであって、決していやらしい目的などではない。そう自分に言い聞かせながら、当時の麗華はパジャマのズボンを脱ぎ、パンツの上から事実上のオナニーを行っていた。その時は圧倒的な快楽などなかったが、指先で触れるくすぐったさが妙に気持ちいいような心地がして、これなら痒さを和らげられるじゃないかと自分に言い訳をしながら麗華は布越しの恥丘を撫で擦っていた。
 そして、それらの過去さえ講師の度重なる質問により喋らされ、十一歳当時の性に対する悩みの全てを記録として写し取られた。
 心無しか、当時のようなムズ痒さを今も感じる。
「なるほど、最終的に好奇心に勝てなくなって、十一歳の時に初めてオナニーをしたというわけですね。誕生日は何月ですか?」
「八月です」
「ということは、確かに昔の正確な時期などいちいち覚えてはいないでしょうが、少なくとも四月から八月のあいだに起こったできごとだというのがわかります。小六の四月から八月のあいだ――その時期に黒崎麗華さんは初めてのオナニーを行いました」
 講師はその都度話をまとめ、マイクで大々的に発表する。
 そして麗華にマイクを返し、続きを喋らせるのだ。
「最初はその一回で終わりました。性に対して漠然とした罪悪感があったので、言い訳をしながら自慰行為に走ったことにも自己嫌悪の気持ちが沸いていたからです。けれど、やはり正確な時期は覚えていないのですが、それから冬になったあと、再び同じような葛藤から自慰行為に走りました」
「冬が二回目ということですね。何月かも思い出せませんか?」
「少なくとも、十一月か十二月です。正月を過ぎた当たりに三回目を行いましたので、だから二回目の時期はそのあたりになります」
「最初と二回目では間隔が開いていますが、二回目と三回目では間隔が縮まりましたね。これには理由はあるのでしょうか」
「考えが変わってきたんです。授業で必要な知識を与えらられることもありますが、少女漫画にも中には性描写を取り入れた作品があって、それで性に触れる機会が多かったとでもいいますか……。おかげで性について考えることもあって、好きな人のために体を捧げるのも立派な愛情表現の一種なのだろうなと、これも漠然とではありますが、思いました」
「つまり、性を受け入れたと」
「少しだけ……。やっぱり、好きな人がいなかったせいもあって、まだまだ自分には関係ないだろうと思いつつも……。しかし、一応その……出会いみたいなものに対する願望自体はあるわけで……。いつになるかもわからない話ですが、三回目はそのときの事を考えながら触りました。全て下着越しです」
「素敵な王子様を想像しながら、甘い夜の妄想にふけったということですね?」
「ええ、まあ……」
 麗華は俯く。
 オナニーを我慢し続けている麗華の膣は蜜を垂れ流し、もはやお漏らしのように座っているベッドシーツに濡れシミを作っている。太ももから膝にかけてがしっとり濡れ、水を吸った肌の箇所が大気の動きで涼しく感じた。
 自分の今までのオナニーを思い出し、今すぐにでも性器にその時の快感を与えたいと欲求が膨れている。人前であるにも関わらず、気を付けなければ手が自然と太ももの上に乗っかって、さらに内股へと忍びかけていた。
「それから、直接触るようにはなりましたか?」
「中学一年になったばかりの時、四回目で実際に指が触れたらどうなるのかと興味が沸いてしまっていて……。それで、四月か五月のあたりでまた触りました」
「五回目は覚えていますか?」
「五回目もそれからすぐで、漠然とした罪悪感というものがだんだん薄れていました。あくまで自分一人で完結する行為にすぎないので、誰の迷惑でもないと結論がついたからです」
「では今では堂々とオナニーを?」
「堂々と言われると困りますが……。それに罪悪感がなくなったからといって、部活や勉強のことがあります。私は自分がダラしない生活にふけることが許せません。鍛錬は日々積まなければならないので、普段の私生活を目標通りにこなせたらしてもいい。といった具合に、自分へのご褒美感覚でしています」
「ほほう。人は相応の報酬を出すとやる気を発揮するといいますからね。しかし、この黒崎麗華さんの場合はもっぱら強い自制心を持って真面目な私生活を送り続け、週二回から三回行うオナニーもスケジュールで計画的に行っているもの。ということですね?」
「……はい。そういうことです」
 自慰行為を組み込んだ日常のスケジュール……。
 もちろんカレンダーにオナニーなどと書き記すわけではないが、頭の中にはきちんとそうメモを取っているのだ。
 一体、それは人々の目にはどう映るのだろう。
 感じたくもない奇妙な不安感が胸を渦巻き、麗華を包みこんでいた。