全裸検査のある世界 第01話「千奈美と彼氏」

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 検診及び測定の実施される当日――。

 平沢千奈美はため息をついていた。
「はぁー……」
 深く、ため息をついた。
 どうして、裸で検診を行うのかについては、生きていれば必ず先生から聞かされる機会がある。過去の病例多発事件なんかも、学校で見せられたドキュメンタリー映像を介して知っていて、その恐ろしさについても学んでいる。
 だから、検診自体に文句は言えない。
 言えないけれど……。
「はぁ……」
 言いたい。
 だって、せっかく付き合っている彼氏がいて、ハダカで彼を喜ばせてあげる未来はいつだろうかと想像していた。真摯な愛を受け取って、大好きな相手のモノを感じ取りたい乙女の夢というものがあった。
 ……あんまりだ。
 せめて、もう少し待ってはもらえないのだろうか。
 どこまでも、憂鬱な気分に浸っていた。

 これはその数日前。

「ねえ、今って何考えてる?」
「え!? ええっと、何だろうな」
「エッチなことでしょ」
「は! そんなこと……ねーし……」

 唐突な言葉を受け、斉藤健一は自信のない小さな声を漏らしていた。
 この恋人と――平沢千奈美と付き合い始めたのは中三の十二月からで、今年の四月から晴れて高校生となり、四ヶ月目の関係に差し掛かっている。四ヶ月もあればいい加減にキスはしているし、手を繋いだり抱き合ったり、その程度のことも経験済みだ。
 しかし、まだエッチだけはしていない。
 お互いの家を訪れたり、その時には都合良く両親不在だったり、チャンス自体は今までに何度かあったが、強引なことをして嫌な思いをさせたらと、怖がらせてしまったらどうしようかと憚られ、内心ではやりたいてと思っていても、実際に押し倒す度胸はまだなかった。
 千奈美は初めての彼女だから、いつどのタイミングで手を出せばいいものか、健一にはわからないのだ。
キスまではどうにかなったが、その先がなかなか駄目だ。
「健一? 焦ってるねー」
「焦ってない焦ってない」
「うそ」
「……はい。嘘です」
 追求され、健一は素直に認めてしまった。
 千奈美はとても魅力的だ。
 大人しそうな地味めな顔は、派手さには欠けるが整っている。下手な美人よりも手の届きそうなタンポポというべきか。あまりアイドルチックな可愛らしさの女の子より、平凡な自分の身の丈に合っている気がして話しやすい。
 教室でも少しばかり大人しくて、華やかな女子達とはしゃぐように喋るより、同じく文化系の大人しいタイプと付き合っていて、好きな本だとかの話をしている。健一にもいくらかの読書癖があるので、共通の趣味もあって楽しい。体育会系のように声が大きかったり、馬鹿騒ぎをする男子グループの煩いノリが苦手だから、割りに静かなタイプの千奈美とは、一緒に過ごしていても本当に落ち着くのだ。
 外見だけなら、他に魅力的な子はたくさんいたが、華やかな女の子よりも千奈美のことが気になったのは、やっぱり性格の一致が大切だ。パソコンでAV女優でも見る分には、顔だけで選ぶことも多かったが、クラスメイトに関して言えばルックスが理由で惚れたことは一度もなかった。
 もちろん、全くもって興味ゼロかとまでいったら、多少は嘘だが。誰だってそこにアイドルのような容姿の持ち主がいたら、最低限『多少』は興味が沸くものだろう。
 けれど。
 きちんと惚れたのは、千奈美だけだと思った。
 だから、告白した。
 まさかOKをもらえるとは思わなかったが、その場で慌てふためいた千奈美から、やがて静かに頷く形で返事を貰って、受験前の時期にたった数回だけのデートをした。
 同じ高校志望だったため、合格発表は一緒に見に行ったのだが、嬉しくも二人一緒に合格が決まったことで、その日嬉しかった盛り上がりで帰り際にキスをした。
 それから、今日になるまで何度かのキス経験。
 中学卒業から高校の入学前という空白期間のデートで、映画館や遊園地で手を繋いだ。一緒に夜景を見ながら抱き締めあった。
 どこまで進んでいるかといったら、千奈美とはまあそんなところだ。
 当然、キスよりも先のことにも興味がある。
 千奈美の部屋に招いてもらって、ワンピース越しのお尻を気にしていたら、その視線がバレて追求されたというわけだ。
「白状しましたね」
「はい。しました」
 千奈美はとてもお尻が大きいのだ。
 丸く膨れ上がったお尻がワンピースを上へ持ち上げ、座った床の上へと潰れるように広がっている。腰のくびれたカーブから、巨尻の曲線にかけたラインは綺麗なS字で、その体格を見るだけでも、いかに良いお尻をしているのかと想像させられる。
「……何か、したい?」
 千奈美は迷ったような考え込むような顔をして、極めて神妙な顔で尋ねてくる。
「それはその……。したくない、なんていったら明らかに嘘になるわけで」
「だよね。男の子だし」
 そして、さらに考え込む。
 額に親指を当て、悩みに悩んだ眉を潜めた表情で、何分も何分も静かに思考を巡らせている。
「…………」
 健一は黙って待った。
「斉藤健一君」
 やはり真剣な顔で、真っ直ぐに健一を見つめていた。
「はい。なんでしょう」
「……しよっか」
「――え?」
「キス」
「き、キスか……」
 もしかして、ひょっとしてと思ったら、そういうわけでもなく、既に何度もしているキスの方を切り出された。長いタメで期待を煽られていただけ、さすがに少しがっかりした。
 まあ、そういう千奈美のイタズラだったのだろう。
「へへーん。何だと思った?」
 千奈美は小悪魔っぽく笑っていた。
 まんまとからかわれたわけだ。
「いや? そういうことだろうなと思ったし」
「本当?」
「思ったからな?」
「じゃあ、そういうことにしといてあげる」
 千奈美はおもむろに立ち上がり、すると半開きの傘にも似たスカートの広がりが、大きな尻の盛り上がりによって面積を拡張する。
「千奈美」
 健一も立ち上がった。
「うん」
「好きだ」
「もう一回」
「好き」
「あとねー。百回くらい言って欲しい」
「喉が枯れるって」
 腰に両手をまわしていくように、健一は千奈美を抱き寄せる。千奈美の顔は上目遣いで健一を向き、口付けを求めるためにその瞳を閉ざしていた。
 そこへ、健一は唇を重ねた。
 唾液のぬかるみを帯びたお唇同士が、その粘性の水分でぴったりと密着して、生温かい感触が互いの深くまで浸透していく。
 口が離れる気配はない。
 もう一分以上が経っていても、鼻で息をしている二人はお互いを求め合ったまま、千奈美は彼を抱き返す腕により一層の力を込めている。それに応じるようにして、健一も背中を強く抱き締め、苦しいほどまでに締め付けた。
 そして、やっと唇が離れる。
「健一?」
 甘い声だ。
「うん?」
「触るだけなら」
 どこか、決意が篭っていた。
 受け入れる覚悟を決めてくれたのだ。
「……ありがとう」
 背中をさすっていた手を動かし、下へ下へとスライドさせる。そこに触れる直前となって、本当に触ってもいいのかという躊躇いから、健一は今一度目で尋ねる――いいか? と。千奈美はコクンと頷いていた。
 健一は両手の指を全て広げて、巨尻の上にべったりと貼り付ける。
 まるでほどよく空気を抜いたゴムボールだ。ふんわりとした柔らかい塊は、少し力を込めただけで、左右の五指が沈んでいく。指に強弱をつけて揉みしだくと、むっちりと肉の詰まった感触が手の平全体に伝わる。試しにいきなり力を抜いて指を離せば、尻の元の形に戻ろうとする弾性が働いて、プルンと弾けるように振動していた。
 すぐに勃起した。
「……はぅ」
 抱き締めあった密着で、健一のペニスに気づいた千奈美はピクンと肩を弾ませる。健一の胸に顔を押し付け、重心を預けて健一に身を任せた。
「すげぇ……」
 ワンピースの布地表面を撫で回すと、お尻を包むショーツの生地を手に感じた。指先でゴムの部分を見つけてなぞっていき、割れ目に五指を差し入れ上下にさすった。
「……恥ずかしい」
「けど、デカくて柔らかい」
 太ももの付け根にある垂れの部分から、指で持ち上げるようにして、千奈美の尻をぷるぷると揺らしてやる。まるで皮膚が波打つようによく揺れて、下から上へのウェーブで持ち上がった肉がプルンと落ちる。
 そんな振動が、プルッ、プルッ、と。
 揺らさば揺らすだけ、千奈美の巨尻は振動した。
「健一だって、大きい」
 自分ばかり恥ずかしくて、何か言い返したいかのように千奈美は言う。
「……だね」
「男の子って、あれだよね。その、抜かなきゃ駄目?」
 自分にも役目があって、真っ当するべきかと迷った顔で、千奈美は健一に上目遣いを向けて尋ねた。
 いけるのだろうか?
 今なら、この少し先まで……。
「できるなら、そうしたい」
「そっか。私まだ、裸は恥ずかしくて、他にどうすればいいかな」
 ドキリとした。
 自分は一体何をするべきなのか。その判断を健一に委ねているのは、男としてのこちらの願いがいくらか叶うということだ。
 試したいことはたくさんある。
 それが今、できるのか?
「手で、するとか」
 恐る恐る言ってみた。
 すると――。
「して欲しい?」
 千奈美の上目遣いが、健一を真っ直ぐ射抜く。
 できるのだ。
 今まで夢に見てきたプレイの一つが行える。ただ性的な欲望が叶う嬉しさは当然だが、それ以上に千奈美が自分のために何かをしたいと思っている。喜ばせたいと思って、覚悟を決めた眼差しを向けている。
 ドクンと、心臓が弾み上がった。
 それは証拠になるのだ。
 千奈美がどこまで自分を好きでいてくれて、だからこそ相手のためになることをしてくれるのかと、好き合っている証となる。
 以前までなら、エロスは単なるエロスだった。
 しかし、こうして一人の女の子を向き合ってみてみると、エッチが一つのコミュニケーションになるという、考えてみれば当たり前の事実に気がついて、健一はもっと本当の意味で興奮していた。
 自分の気持ちを行動で示して、尽くそうとしてくれている事実。
 千奈美が、健一を性的に喜ばせたいと思っている事実。
 それらがたまらなくて、ズボンの中にある肉棒の膨らみは、もはや血管が破裂せんばかりにまでなっていた。
「ああ、して欲しい」
「仕方ないから、してあげる」
 千奈美は恥ずかしそうに苦笑して、ズボンの膨らみへ手を近づけ、その右手をペニス間際の腹の上まで運んでいった。
 これから、その手が股間を握る。
 健一は生唾を飲み込んで、躊躇いと恥ずかしさで立ち止まった手首を掴む。決して強引にはしないようにと、力を加えすぎない程度の握力で、ゆっくりゆっくりと、優しく股間へ導いていき、千奈美の手の平を肉棒に乗せた。