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  • 第1話「身体測定の始まり 身長計」

    目次 次の話

       

    
    
    
     ――これは悪意ッ!?
    
     剣崎天利には人の悪意を感知する超能力がある。一定の範囲内であれだ直ちに察知し、その場に駆けつけることができるのだが……。
    「……いない?」
     学校、教室。
     不審者の侵入か。あるいは不良生徒の暴力か。そういった危機を想像して駆けつけた天利なのだが、そこには悪意の人間どころか、放課後の居残り生徒の姿もない。窓際から夕暮れの差した無人の教室は、ただただ静寂が漂うだけである。
    「他の場所にも悪意を察知したけれど、そちらは何ともないだろうか」
     保健室へ向かってみるが、そこには何の悪意も無い養護教諭がいただけで、他に出入りした人間はいないという。図書室や視聴覚室、理科室にも足を運ぶが、やはり善良な生徒が読書でもしているか、あるいは誰もいないかのどちらかだった。
    「……おかしい。確かに悪意を感じたと思ったのに、気のせいだった?」
     飛翔能力を持つ天利は、念のために校舎を出た学校周囲まで探ってみるが、やはり悪意を持つ人間の気配はない。
    「やっぱり、気のせいだった?」
     それとも、天利が駆けつけるよりも早く、良心の呵責か何かで、本人が勝手に悪意を沈めたりでもしたのだろうか。
    
     まあ、いいか。
     何もないのなら、それにこしたことはないのだし――。
    
         ***
    
     その日は身体測定だった。
    (あ、朝から服を脱がなくてはいけないなんて…………)
     剛寒市独自の保健法では、測定及び健康診断を受ける学校生徒は、必ずパンツ一枚になることが定められているのだ。
     犯罪都市とさえ呼ばれる治安の悪さのため、生徒を裸にすることで身体の刺青や傷跡を確かめる。どこかで虐待を受けてはいないか、逆にタトゥーなどを刻んで将来犯罪者になる恐れはないかを見極める意図があるという。
     この方法で実際に不審な注射の跡が見つかり、学生に麻薬を売りつける売人発見のきっかけとなったなど、実績が証明されているため、羞恥心の配慮を唱えたところで、これが容易に撤回されることはないだろう。
     もし、通常通り体操着などでの測定に戻るとしたら、剛寒市の治安が改善され、平和が訪れてからの話となるはずだ。
     もちろん男女別。男子に見られる恐れはない。
     けれど、男の担任が平然と女子の着替えを見守り、全員が脱ぎ終わるのを待っているのだ。
    (これはれっきとした検査なのだし、乗り切るしかない)
     既にクラスメイトの面々は脱ぎ始めている。
    (よし、こうすれば脱ぐところは先生から見えない!)
     天利は机の下にしゃがみこみ、背中を向ける形となる。
     まずはブレザーのボタンから外し始めた。前を全開にしてから、両腕の袖を片方ずつ引き抜いていき、脱いだブレザーは膝の上で畳んで机に置く。
     次に脱ぐのはワイシャツかスカートか。
     教卓に座る先生の視線角度を考えて、天利はスカートを選んだ。腰部にあるホックをぱちりと外し、チャックを下げることで緩めると、なるべく他の女子からさえも見えにくいよう、体育座りの姿勢で、だんだんずらしていくような脱ぎ方で、尻から膝へ持ち上げる。そして、膝から足首に向けて下げていき、下半身はパンツ一枚だけとなった。
     ワイシャツのボタンを上から下へ、一つずつ外していく。ブラジャーに包まれた胸がだんだんと姿を現し、白いお腹のヘソまで見えてくる。袖を引き抜くことで下着姿になった天利は、とうとうブラジャーを外すこととなる。
    (みんなも脱いでいるのだし、いくら恥ずかしくたって、私のわがままでクラスに迷惑をかけるわけにもいかない)
     天利は背中に腕を回し、ホックを外す。乳房をぴったりと覆っていたカップに隙間が出来てパカリと浮き、自分が恥ずかしい姿になるのを実感した。肩紐を指でつまみ、羞恥に震えながら左右一本ずつをそれぞれ下げる。
    (だ、誰にも見せたくない……!)
     みんなで同じ格好をしているからか、中にはケロっとしている子もいるが、天利だったら同性にも見せたくない。
    (だ、だ、大丈夫! まだ隠していても良いのだし!)
     自分に言い聞かせた天利は、腕で胸元を覆い隠す。乳房と腕の隙間から、するりと引き抜くようにブラジャーを抜き取って、真っ赤になりながら机に置いた。脱ぎ終わるや否や、胸を両腕でクロスしたまま時間ギリギリまでしゃがみ込む。
    「全員脱いだか? じゃあ、廊下並べー」
     担任の一声が聞こえて、天利は初めてパンツ一枚だけの姿で立ち上がる。
    (この格好で廊下歩いて……測定して……………)
     これから受ける様々な検査内容を思うと、今のうちから耳まで赤く染まってしまう。
     クラスの女子達はぞろぞろと教室を出て行って、天利も続いて戸の向こうの廊下へと歩んでいく。
     脱いだ衣服は机に置いていかなくてはならない。
     この教室に戻るまで、もう服を着ることはできない。
    (ふ、服ぅ……)
     心細さのあまり、天利は一度だけ自分の机を振り向いた。丁寧に畳んでおいた自分自身の制服を切なく見つめ、涙ながらに別れゆくような顔をしながら、天利は廊下へ出て行った。
    
         ***
    
    
     廊下移動で測定用の教室へ向かう天利は、両腕のクロスをギュっと固めて乳房を隠す。肩を縮めるようにして、俯ききって廊下の床を見つめながら、天利は重い足取りで歩んでいた。
    (……裸で一列に並ばされて、私達って何なのだろう)
     どんな悪いことをしたわけでもない。
     むしろ、天利は世の中の平和を守っているくらいだが、今この時は誰も彼も関係ない。まるで奴隷市場に向かわされ、これから売りに出されていくような、どこか暗い気分を味わうしかないのだった。
     移動先へ到着すると、体重に身長、スリーサイズの測定が実施される。
     体重計に乗るまでは良かった。
     まだしも、腕で胸を隠していることが許された。
    
     しかし、身長計では両腕を下に伸ばさなくてはならない。
    
     担当する男性教師は、背筋を伸ばした女子に対して、いちいち腹を触っていた。背中を固定させるかのように、押し付けるようにして触り、人の腹に手を置いたままバーを下げ、その都度数値を読み取っている。
    (あんなのセクハラだ)
     列で順番を待つ天利は、目の前で乳房を晒し、お腹を触られるのを気にしている様子の女子達を見て憤っていた。みんなが嫌がっているのに関係なく、全員のお腹を一人ずつ順番に触っているのは、教職員としてどうなのか。
    (あれで悪意がないなんて……)
     刻一刻と、自分の順番が迫ってくる。
     順番がまわれば、天利も同じセクハラを受けるのだ。
     もし死刑執行の列が存在して、そこに並ぶのだとしたら、ちょうどこういう暗い気持ちになるのだろうか。
    (……私の番だ)
     俯いたまま身長計へ向かっていき、赤面しながら両手を下ろす。初めて乳房が視線にさらけ出され、自然と乳首に向けられる視線を痛いほどに感じていた。
    (――は、恥ずかしいィィィィ!)
     天利は羞恥に顔を歪めた。
     頭にみるみる血が上り、脳が沸騰しかねないほどに熱を増す。とてもでないが冷静ではなくなっている天利は、今にも力の制御を失いそうになっていた。
    (暴れれては駄目! 大人しく、大人しく!)
     こんなところで怪力を発揮してしまっては大迷惑になるだろう。天利は必死になって自分に言い聞かせ、暴発しかねない自分自身を抑えていた。
    
     さわっ、
    
     担当者の手が、天利の腹にべったりと張り付いた。
    (――ヒィィィィィィ!)
     ヘソの下あたりに置かれた手は、指がパンツに触れかねないギリギリの位置だ。そこから、さーっと上までスライドして、乳房に触れるか触れないかのきわどい高さまでやってくる。
    (こんなセクハラァ――――!)
     腹全体に鳥肌が立った。
     ゾワァァァァと、腹部全体の毛穴が開いていき、産毛の一本一本が逆立って、肌の表面にはしっとりとした冷や汗さえ滲んでいた。
    (――これでも悪意がないなんてェ!)
     この男性教師にしてみれば、あくまでも本当に、正確な測定を心がけているだけなのか。
     しかし、乳房の下弦のすぐ真下にある手の平から、男の手の温度は確実に伝わって、熱がじわじわと肌を犯してくる。水がゆっくり染み込むように、ジンとした痺れが皮膚の中まで広がって、乳房の下弦をだんだんと痺れさせていく。
     手が当たりかねないきわどさが、どこまでも自分の乳房を意識させた。
     胸元を意識すればするほど、天利の乳房には神経が集中して、既に乳房の下半分には痺れにも似た感覚が充満していた。
    (は、早く――)
     一秒でも早く終わって欲しいと、天利は切実に願っていた。
    「167センチ」
     数値が読まれ、身長から解放された天利は、すぐさま両腕で隠し直し、ギュっと力を込めることで乳房のガードを固めていた。
     だが、どんなに隠していたところで、次の測定の順番が回れば、固いガードを自ら解いてみせなくてはならないのだ。
    
    
    


  • 羞恥!ユースティティアの赤面体験

    第1話「身体測定の始まり 身長計」

    第2話「スリーサイズとセクハラ教師」

    第3話「内科検診」

    第4話「悪の羞恥組織シェームズ」

    第5話「パンツ当てクイズ」

    第6話「公開ストリップショー」

    第7話「おマンコ開帳とアナル公開」


  • 天利のお礼(円太×天利)

       

    
    
    
     初めて丸藤円太と出会ったのは……。
     いいえ、高校では同じクラスで、中学校も同じだったのだから、初めてというのはおかしいのだけれど、マスクを被った自分と円太が出会ったのは、銀行強盗の人質にされた彼を救った時だった。
     円太は剣崎天利を庇おうとした。
     天利には元から銃弾なんて効かないから、庇われたのを庇い直して、結局は天利が盾となったのだが、あの時は少し驚いた。
     庇うことは過去何度でもあったけど、天利の方が庇われたのは初めてだったから、少しだけ驚いて、少しだけ嬉しかった。
     スーツを作ってくれたのも円太だ。
     思ったよりも派手なデザインで、体のラインが出てしまうのも、肌の露出部分があるのも気になったが、普通の服よりは破れにくい。
    
     ――何かお礼をしなくちゃ駄目だよね。
    
     それは前々から思ったことだ。
     あくまで破れにくいだけで、せっかくのスーツを台無しにして、修繕を頼んだことが何度もある。円太は快く協力してくれているものの、自分ばかりが施しを受けるみたいで、なんだか申し訳ない気がしていた。
     それに……。
    
    「私達が付き合っていたら、不都合なことでもあるの?」
    
     天利と狭が付き合っているのではと、円太が気にかけた時だった。
     円太は叫んだ。
    
    「あッ! あります!」
    (あるの!?)
    「僕にとっては血反吐吐くほど不都合です!」
    (そ、そんなに!?)
    「だって僕は……」
    
     そこから先の言葉はなかった。
     円太はハッと正気を取り戻したように自分の口を慌てて塞いで、だって僕は何なのか、それを聞くことはできなかった。
     だけど、天利はドキンとしていた。
     男の子が人に彼氏がいるのかなんて気にして、もしも天利と狭が付き合っていたら、不都合だなんて言い切るのは……。
     きっと、そういうことだ。
    
     お礼、しなきゃ……。
    
     メールを送った。
    
    『スーツを作って貰っている日頃のお礼がしたいです。
     明日、丸藤君の家に行ってもいいですか?』
    
     すぐに了解の返事が来た。
     どんなお礼にしようかな。
    
         ***
    
     お礼って! どんなことをシてくれるんですか!?
     僕の家にって、期待していいんですかァァァ!
    
     丸藤円太はそわそわしていた。
     女の子からのお礼なんて言われたら、それも家に来てもいいかなんて言われたら、何かはしたないことを期待してしまう。
    (待て待て、剣崎さんだってそんないきなり! きっとお菓子か何か……)
     落ち着かない気持ちでいると、インターホンの音が鳴る。
    (き、来た!)
     円太は玄関へ駆けていき、直前で深呼吸をして、息を落ち着けてから剣崎天利を迎え入れた。
    「ど、どうぞ」
    「……お邪魔します」
     天利は遠慮がちになりながら、そっと靴を脱いで上がってくる。
    「どうぞ。こちらへ」
     円太は部屋まで案内して、女の子と二人きりである事実に胸を高鳴らせた。
     どんなお礼なんだろう。
     もしかして、エッチな……。
     いやいや! それはない!
     期待と不安が入り混じり、円太はごくりと息を呑んだ。
    「あの……これ…………」
     天利が差し出してきたのは、菓子折りの包み箱であった。
    「ど、どうも! ありがとうございます!」
     受け取る円太。
    「……」
    「……」
     あっさりとお礼が済んで、話題がなくなってしまう。
     一体、何を話せばいい?
     こういう時の話題は?
     えーと、えーっと……。
    「そうだ! スーツの修繕が終わったから、ちょっと着替えてみてよ!」
    「うん。じゃあ、廊下で着替えようかな……」
    「ぼ、僕が廊下にでますから! 着替え終わったら呼んで下さい!」
     部屋を飛び出した円太は、ドア越しに耳を澄まし、天利の着替える衣擦れの音に意識する。しゅるりと布の擦れる音は、ブレザーを脱いだあたりか。ばっさりと床に落ちるのは、スカートを脱いだ瞬間に違いない。
     ということは、そろそろ下着姿になっていて……。
     スーツに着替えるために、ブラもショーツも脱ぎ去って、一時的に全裸になる頃合いだ。
    (け、剣崎さんのハダカ…………)
     想像するだけで、勃ってしまう。
     ズボンの内側で肉棒が硬くなってきた。
     もう、着替え終わる頃だろうか?
    「いいよ? 丸藤君」
     声が聞こえて、円太はそっと部屋へと戻る。
    
     ヒーロースーツの剣崎天利に円太は見惚れた。
    
     やっぱり、似合う。
     90センチもあるバストはツンと上向きになっていて、乳房の丸みが如実なまでに浮き出ている。股間部分は少しばかりサイズを調整させてもらったので、目を凝らしてみれば、ワレメが見えないこともない。
    「ぴったりだね。剣崎さん」
    「う、うん! ありがとう!」
     マスクの下から見える天利の頬は、どことなく赤らんでいた。胸の谷間は出ているし、おヘソや太腿も見えているから、少し恥ずかしいのかもしれない。
     ああ、勃起する。
     膝から足先にかけてはスーツが覆っているけれど、太ももの内股部分に関しては、肌が綺麗に露出している。股間を覆う部位の周りは、脚の付け根のVラインまで出ているから、股の露出はかなりきわどいものなのだ。
     しばし天利のスーツ姿を眺めていた円太は、その時になってふと気づいた。
    
     ぱ、パンツだ!
    
     床の上には脱いだ制服が畳んであり、丁寧にまとめられたブレザーとスカートのその上には、ショーツとブラジャーのセットが置かれていた。
     ――星柄だ。
     円太が初めて天利のパンツを見た際のあの柄だ。
    「ん? 丸藤君? なに見てるの?」
     円太の視線に気づいた天利は、下着をよりにもよって上に置いてしまっていた過ちに初めて気がつき、カアァァァっと顔を赤らめた。
    
    「――――イァァァァァァァァァァ!」
    
     猛烈なビンタを食らったのは言うまでもない。
     頬に大きな腫れ跡が出来てしまった。
    
         ***
    
    「ご、ごめんなさい! つい気が動転してしまって……」
    「大丈夫だよ。僕ならほら、この通り!」
     このくらいなら、円太が初めて剣崎天利と――つまり、マスクを被ったユースティティアとしての天利と顔を合わせ、星柄のパンツを見てしまった時に体験している。あの時のビンタに比べれば、まだまだ加減が出来ていた方じゃないか。
     そんなことより、もっと別の問題があった。
     これはマズイ!
     これは気まずい!
    
     よりにもよって、隠し持っていたAVのパッケージを見られてしまうだなんて!
    
     ビンタの威力で本棚に背中をぶつけ、その中身が崩れ落ちる際、密かに購入したアダルトBDも同時に落ちてしまった。
     どんなエッチなAVか?
     G○GAという某レーベルより発売され、正義のスーパーヒロインが敵に陵辱されている内容の作品だ。戦隊ものや宇宙刑事、魔法少女に仮面美少女など、実に様々な種類のヒロインがパッケージに映し出され、敵怪人や戦闘員の肉棒をハメられている。
     当然、天利の視線はそのパッケージに気づいていた。
     というより、いくつものBDパッケージが床に散乱していては、この数を咄嗟に隠すことなんて不可能だった。
    「ま、丸藤君……その…………」
     引かれただろうか。
     当然だ。
     だって天利自身が町を守るヒーローなのに、いつもスーツを直してくれる協力者が、実はそんなエッチな動画を見ていたなんて……。
    
     ――丸藤君って、こんな趣味だったの?
     ――もしかして、私のこともそんな目で!
    
     なんて言われてもおかしくない!
    「ええと! これはその! これは僕のじゃなくて、実はお父さんのもので――」
    「だ、大丈夫だよ!」
    「……へ?」
    「何ていうか。男の子がそういうのに興味あるっていうのは知ってるし、世の中には色んな趣味があると思うから……」
     気を遣ってくれているのだろうか。
     天利は円太の趣味を糾弾しないつもりらしい。
    「で、でも! 引いたりしない? だって僕はこういうので……」
    「何も思わないってことはないけど、私だって小さい頃は変わった子で、だから……」
     そうだった。
     天利は前に話してくれたが、不思議な能力があるせいで、小さい頃は意地の悪いことを言われたり、色々問題があったという。けれど、兄のいる病院が火災に巻き込まれ、その救出に向かった際に目覚めたのだ。
     ――世界には天利にしか救えない命がある。
     兄の言葉を受けたことで、自分の力を正しい方向に使っている。
    「け、剣崎さん! こういう動画の時は、敵に破れたヒロインなんて楽しんでますけど、僕は実在する本物のヒーローにまで負けて欲しいとは思ってませんから!」
    「そうだよね。わかってる」
    「むしろ! 実際だったら純愛とかラブラブ路線がいいと思います! 陵辱なんて作り物の動画だけでお腹いっぱいです!」
     って! なにを言っているんだ!
     僕は何を言っているんだ!
    「すみません! なんでもありません!」
     円太は慌てて自分の口を塞いでいた。
     ああ、もう駄目だ!
     せっかく、天利は気を遣ってくれたのに、今のは完全にアウトだ。これで引かれないわけがない。とんでもない過ちを犯してしまった。
     だが……。
     そうでもなかったらしい。
     いや、そうでもあるのか?
    「そ、そうだ! 今日のお礼はまだお菓子を持ってきただけだから、他にも何かお礼をした方がいいよね! 何がいい?」
     慌てて話題を変えるかのように、天利は言った。
    「え? ええと……」
    「何でも言って? 今なら何でも聞くから!」
    「な、何でも?」
    「うん。何でも」
     気のせいか?
     天利はどこか甘くとろけたような眼差しで、上目遣いで円太のことを見ている気がする。そんな表情で接近され、下から覗き込むようにされると、心臓がバクバクと高鳴るじゃないか。
    「本当に何でも?」
    「本当に何でもだよ。だって、丸藤君にはこれからも協力して欲しいから、もっと仲良くならないといけない気がするもの」
     天利の両手が、円太の胸板に置かれている。身体を接近させ、大きな乳房が円太の身体に触れかけになっている。
     円太のズボンの内側はもはやテント状にすらなっていた。
    「でしたら、その……。嫌だったら言って下さい。ベッドに横になって欲しいです」
    「わかった」
     そうして、天利はベッドに横たわった。
    
         ***
    
     い、いいのか?
     本当に触ってしまって……。
     仰向けになった天利に向かって、上から覆いかぶさる姿勢になったはいいものの、緊張しきった円太は触るに触れないままでいた。
    「……どうしたの? 丸藤君」
    「いえ、その……」
    「……これって、そういうお礼が欲しいってことだよね。何も……しないの……?」
     ひどく顔を赤らめながら、恥ずかしそうに顔を背けて、天利は小さな声でそう言った。
     か、可愛い!
    「よろしいのでしょうか」
    「少しだけだよ?」
    「は、はい!」
     円太はたどたどしく手を伸ばした。
     天利のスーツは背中が全て丸出しになっていて、脇の下から腰にかけての身体の左右のラインも、肌が露出しきっている。ヘソの周りを丸く刳り貫く構造も含めれば、かなりの肌面積といえるだろう。
     まず、脇下の胸の横あたりの位置をちょんと触った。
    「――――んっ」
     反応するような声は出すが、嫌がるような素振りは無い。
    「さ、触るからね?」
    「……うん」
     左右の腰を両手で撫でると、天利は腰をくねらすように反応した。くすぐったさから逃げようとしているような、だけど触られるのが恥ずかしいようでもある赤面顔が、円太から目を逸らしていた。
    「恥ずかしい?」
    「ちょ、ちょっと……」
    「嫌じゃない?」
    「なんとか……平気……だよ……?」
     力なく笑う天利は、拳を握り締めていた。自分の力を抑え込み、じっと堪えているような姿を見て、円太は察した。
     我慢してくれているんだ。
     天利は羞恥や激憤といった感情で、つい力のセーブを忘れてしまう。気が動転して周囲に迷惑をかけてしまうクセがあると話していたが、そうならないように耐えているのだ。
    「胸も揉むからね?」
    「う、うん」
     天利はコクっと頷く。
     円太は左右のスーツ越しの乳房に両手を乗せ、柔らかな弾力の中に指を埋め込む。
    「すごい! こんなに張りがあって、プニプニだなんて!」
     指に強弱をつける揉み方をしていると、弾力が指を力強く押し返す。それが面白くて何度も揉み込み、円太は天利のおっぱいに熱中していた。
    「恥ずかしいィ……!」
     羞恥心の強い天利は、目に涙を溜め込んで、堪えることに必死になっていた。暴発しそうな自分の力を押さえ込み、円太に暴力を振るわないように耐えている。マスク越しとはいえ、表情が恥じらいで歪んでいるのがよくわかった。
    「ごめん。でも僕……!」
     我慢できなくなった円太は、内股をさすり始めた。
     やっぱり、太腿も柔らかい!
     内股を揉みしだいた円太は、アソコに触れるか触れないか、ギリギリのきわどいラインを指でなぞった。
    「ひぅぅぅぅぅ…………!」
     反応している姿が可愛い。
    「剣崎さんは強いから、やっぱり本当にヒーローとシてるみたいで、僕はもうたまらないんです!」
     円太は秘所の愛撫を始めた。
    「そ! そこはァ――!」
     スーツを介したワレメの感触が円太を興奮させ、ズボンの内側にある逸物を限界まで勃起させていく。指で上下にワレメをなぞり、もう片方の腕では胸を揉む。二箇所に対する愛撫のうちに、やがて天利の秘所は濡れ始めていた。
    「僕は剣崎さんの全てが欲しいです」
    「そんなに欲しいの? 私のことが?」
    「はい! 欲しいです!」
     すると、天利は迷うような素振りを見せた。何かを考え込み、答えを出しかねるような顔をしてから、やがて恥ずかしそうに天利は言う。
    「……いいよ?」
    「え? い、いいって……」
    「私をあげる。欲しいんだよね?」
     信じられない。
     まるで夢だ!
    「本当に? 本当にいいんですか!」
    「うん」
    「全てですよ! 本当に何もかも!」
    「……あげるよ?」
     いじらしく、天利は言った。
    「貰います! 是非貰います!」
     興奮で理性の飛んだ円太は、瞬く間に服を脱ぎ捨て、ズボンを脱いでギンギンの肉棒をあらわにした。限界まで硬くなり、血管の浮き出た逸物は、ピクリピクリと蠢いて、秘所を欲するような淫気を放っている。
     円太は股間部分の布をずらし、両手で尻を持ち上げるようにして、揉むようにしながら肉棒をあてがった。
    「うぅ……」
     緊張でか。動揺してか。全身を強張らせた天利は、自分が暴れることがないように、ベッドシーツをより強く握り締める。
    「入れるよ?」
    「……うん」
     頷く天利。
    
     ジュプゥゥゥゥゥゥゥゥ――――。
    
     天利の中へと、亀頭を埋め込む。
    「――き、気持ちいい!」
     円太の先端を飲み込んだ膣口は、結合部の端から愛液を漏らしながらも、同時に破瓜の薄っすらとした血を流している。
    「――痛っ、うぅぅ……」
    (剣崎さんは初めてだったんだ。この人の初めてを僕が……!)
     円太の胸には充足感が満ち溢れ、挿し込んだ肉棒をさらに奥へと進めていく。拙いグラインドは、天利の狭い膣壁を押し広げ、内側から圧迫して拡張していた。ぬかるんだ肉壷の窮屈さは、そのまま逸物への刺激となっていた。
    「ま……丸藤……くん………………」
     破瓜の痛みだろうか。
     マスクをかけた額から、天利は脂汗を浮かせている。悩ましいような、狂おしいような声を絞り出し、大きく息を荒げている。
    「痛いですか?」
    「大丈夫。私って丈夫だもの」
    「じゃあ、このまま動きますからね?」
     奥まで埋めた肉棒をゆっくり引き抜き、亀頭が抜け落ちそうな直前で腰を留める。円太の肉竿はべったりと愛液をまとい、ぬかるみが光を反射する光沢を帯びていた。
    
     ズニュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――――。
    
     腰を埋め込む。
    「あぁ――くあぁ――――――!」
     天利は髪を振り乱す。
    
     ズルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――――。
     ズニュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――――。
    
     抜けそうになる直前まで引き抜いていき、また腰を押し戻す。スローペースのピストンで快楽を深く貪り、膣壁のヒクつく感じをたっぷりと味わう。
    「んぁ――あぁぁ――! いひぁぁ――あぁっ!」
     蕩けるようだ。
     熱い膣壁のぬかるみが、肉棒を潰さんばかりに締め付ける。挿し込んだままで止まってみると、脈打つようなヒクつきが肉棒全体を責め立てて、円太は今すぐにでも果ててしまいかねない射精欲求にかられていた。
    「んくっ……ひぁ……んぁぁぁ…………」
     天利は歯を食い縛った奥から喘ぎを漏らす。
    
     じゅぷぅぅ――つぷっ、ずちゅ――ずりゅっ、んにゅぅぅ――ちゅぶぅ――。
    
     静かな部屋の中には、二人が絡み合う粘着音が、まるで口内でヨダレの汚い音を立てるかのように響いている。
    
     ぬぶぅぅぅ――ずにゅぅぅ――ずるぅぅぅぅ――。
    
     天利は堪えるように目を瞑り、眉をしかめながらも、赤く染まった頬を快感に緩めつつあった。挿入直後は痛がっていたが、どうやら少しずつ慣れていき、感じる始めているようだ。
    「ま、丸藤君……気持ち良い?」
     円太の顔色を気にしたように、天利はそっと尋ねてくる。
    「はい! すごく気持ち良いです!」
    「……そっか。嬉しい」
     マスク越しの笑顔で、天利は表情をとろんと緩めた。
    「僕も嬉しいです! 剣崎さんとできて!」
     円太はピストン運動のペースを速める。
    
     ――ずちゅ! ずちゅ! ずちゅ!
    
     粘液の絡んだ水音もリズムを上げ、肉棒の出入りに合わせて天利は腰をくねらせる。ぬるりとした肉壁との摩擦が、肉棒を溶かすような快感を生じさせ、根元の芯から先端にかけてまでが熱くなる。
    「――ま、丸藤君! 丸藤君!」
    「はい! 剣崎さん!」
     天利と視線を合わせると、天利は懇願するような切ないような表情を浮かべ、涙ながらの小さな声でこう言った。
    「んぁ――あっ、まっ、丸藤君のこと――抱き締めさせて――!」
    「ほ、ほ、本当ですか!」
    「――――お願いィ! ひあぁ――かっ、加減ッ、するからァァ! ああん! お願い――しますゥ!」
     もし、天利が加減を間違えれば、円太は軽く圧死するだろう。
     それでも、ギュっと抱き締めあいたいと、天利はそう懇願している。
     円太がその願いを拒むわけがなく、飛びつくような勢いで彼は自分の上半身を天利に対して密着させた。
    「剣崎さん!」
     円太が抱きつく。
    「――ま、丸藤くぅん!」
     天利の腕が背中にまわり、円太をきつく抱き締めた。
    「出ます! もう僕――出ます!」
    
     ――ずちゅん! ずちゅん! ずちゅん! ずちゅん!
    
     絶頂へ向け、円太はさらにペースを速める。
    「うん! いいよ! 出して――丸藤君のォ――!」
     その瞬間だ。
    
     ――キュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
    
     肉棒を締め付ける膣圧が、恐ろしいほどまでに強まって、射精直前だったペニスから精液を搾り出した。
    
     ――ドクゥゥゥン! ビュッ、ビュルゥ――ドクン!
    
     脈打つごとに白濁を吐き出して、円太は天利の膣内に注ぎ込む。肉棒を引き抜くと、溢れんばかりの精液がドロリと流れ、ベッドシーツを汚していた。
    「とても、気持ち良かったです。剣崎さんとできて、すごく光栄です」
    「私はビックリしちゃった。お礼のつもりが、物凄いお返しになっちゃった」
    「す、すみません!」
    「別にいいよ。私も嬉しかったもの」
     起き上がった天利は、円太に唇を重ねてくる。
     円太は驚いたように目を丸め、やがてゆっくりまぶたを閉じる。自分の唇に神経を集中し、天利の唇の柔らかさをじっくりと感じるようにしながら、円太の方からも顔を押し付け、長いあいだキスをした。
    
    
        ~終~