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  • 〈失禁・潮吹き・ハメ潮〉測定によるオーガズム研究科


     
     

     CMNF作品です。
     
     
     タイトルにもオーガズム研究とある通り、挿入シーンもありますが、
     しかし確実に羞恥やCMNFを好む人に響くであろう構成で作られています。
     
     
     
     まず、この作品は三つのステップに分かれているのです。
     
     
     ①性に関する意識調査・面談
     

     
     
     ②写真撮影
     

     
     
     ③オーガズムの研究測定
     

     
     
     面談では初潮の時期や初めてのセックスについて質問し、初体験の相手とはどこでどのようなプレイをしたか。その時の痛み・快感はどうであったか。といったように、性行為にまつわることを詳しく聞きだし、女性はそれらの質問に答えていきます。生理周期、セックスの好きな体位、セックスの頻度や経験人数など、かなり詳しい面談シーンになっているので、話の内容はH関係でありながら、とても調査らしさがあります。
     
     裏を返せば、面談シーンは本当に喋っているだけなので、この時点では裸は一切ありません。
     
     

     写真撮影の直前になると、まずは服を脱いで全裸になるシーンから入ります。
     
     女性はこの時からCMNFに、自分だけが裸という状況の陥り、そんな中でカメラを向けられ、胸・尻・アソコの全てにフラッシュを焚かれるのです。
     

     
     
     そして、研究の名の下に全身をさわさわしていきます。
     
     

     
     やる方に他意はなく、本当に研究目的のために愛撫を施しているのです。しかし、その研究内容がオーガズムである以上は乳房や陰部への刺激を欠かすことは出来ず、しかも資料を残すためにビデオカメラを手にした研究員までもが立っています。
     
     ひとしきり女性を感じさせ、最後には挿入を行うといった構成で通されています。
     
     
     FANZAで購入
     
     


  • スパイ容疑 フォトの身体検査

    
    
    
    
     *第二十巻「夫婦の話」のあと
    
    
         ***
    
    
     オレの名前はソウ。モトラドだ。
     小型車のトランクに積んで持ち運べるように設計された、ちょっと特殊なモトラドだ。もともと車体が小さいが、ハンドルやシートを折り畳むと、さらにコンパクトになる。まあ、速度は出ないけどな。
     オレの乗り主の名はフォト。性別は女。年齢は十七。黒い髪は背中まで長い。
     つい先日、とある夫婦からの仕事を引き受けた。記念写真が欲しいらしかったが、カラー写真の現像が終わる前に、夫の方は亡くなってしまった。依頼主が亡くなるだけでも驚きなのに、実は夫はスパイだったとかで警察が捜査にやって来た。
     そして、奥さんまでもがスパイだった。お互いがお互いに、スパイだと気づかないまま社会的身分を保つために結婚して、スパイ同士で夫婦生活を営んでいたのだ。
     さて、大事なのはここからだ。
     奥さんが逃亡したあと、フォトの鞄からいつの間にか、試し撮りした白黒写真だけがなくなっていた。代わりに鞄のポケットには、何故か大金入りの封筒が入っていた。わざわざ説明するのも野暮な話だが、まあ何だかんだで記念写真は欲しかったのだろう。
     この先が問題だ。
     そう、捜査は終わったはずだった。
     何もかも、めでたしめでたし。
     良い話だったなーと、締め括られたはずだったのに、どういうわけかフォトの体に、再び捜査の魔の手が伸びてきたのだ。
    
    
     あれから、数日後のことだ。
    「フォトさん。ちょっとお話いいでしょうか」
     店の前に一台の車が止まり、チャイムが鳴らされ、フォトが玄関を開けると偉そうな警察がずかずかと踏み込んできた。
     背後に二人。若い部下を引き連れた偉そうな警察は、顔立ちが醜いので醜男とでもしておこうか。
     こいつらは普通の警察ではない。もっとヤバイ連中だ。
     巨大な犯罪や、重大な事件――、それこそ、国家を揺るがすような事件を取り扱う連中。この国ではなんと呼ばれているかは知らないが、いわゆる公安警察だ。
    「あなたから奥さんのもとへ、何かが渡っていることが判明しました」
     白黒写真がバレたわけではないのか?
     いや、もしかしたら、わかっているが余計な真実は伏せているのかもしれない。
     ――え、あの写真が?
     なんて、うっかり口にしようものなら、
     ――おかしいですね。写真、とは一言も言ってはいませんが。
     といった具合だろう。
    「ええっと、ですね。あなたがスパイと断定されたわけではありません。あくまでも容疑の段階ですが、つきましては――」
     醜男はつらつらと用件を述べる。
     つまりはこうだ。
     フォトから奥さんへと、『何か』が渡ったことが判明したので、実はフォトもスパイで、グルだったのではという疑いがかかっている。我々はあなたを疑っていますと、わざわざ伝えに来るなんて、どうぞ警戒して下さいというようなものだ。もしも本当にフォトがスパイで、しかも今から逮捕されるわけでも、軟禁されるわけですらないのなら、逃亡の猶予が出来るというわけだ。
     まあ、本当に逃げるかどうか試そうって腹なのだろうが。
     さらに話を聞いてみれば、どうもそういう目論みではなさそうだった。
    「疑いがかかっているわけですが、確認さえ済めば容疑が晴れるか、もしくは確定します」
     まとめるとこうだった。
     逃げた奥さんを追って情報収集をしていると、この国には過去にもスパイがいたことが明らかとなり、その特徴はフォトとよく似た容姿の少女だったとか。一度は捕らえて、身体検査によって隅々まで調べたが、どうも逃げられてしまったらしい。
     そして、見た目の特徴が似ているフォトがここにいる。
     そりゃあ、調べないわけにはいかない。
     服を脱がせて、以前捕らえた過去のスパイと同じ特徴はないか。つまり、同じ場所にホクロがあったり、そういったことを誤魔化すための整形手術の痕跡があればアウトってわけだ。
     フォトの生い立ちから考えれば、どこにもスパイをやる暇なんざない。
     別に逮捕とはならないだろうが、容疑を晴らす方法が問題だ。
     身体検査。
     全裸にして、隅々まで観察して、穴の奥まで特徴を確かめる。恥じらいある乙女ってものをある意味では殺しにかかっている。
    「おい。違法じゃないのか?」
     と、オレは言った。
    「裁判所から既に令状も出ています」
     ってことは、無理に逆らえばこっちが違法扱いか。
    「わかりました! その検査。受けます!」
     おい、いいのか?
     もちろん、良くないとは言っても、令状には逆らえないが。
    「どうぞ調べて下さい。自分の無実を証明したいです!」
     なんて馬鹿正直な。
     フォトの生まれた国では、『人類皆仲良し』とか、『愛は世界を救う』とか、現実離れした用地な戒律がたくさんあって、おおむね皆がそれを信じていた。
     だからフォトも、真面目に人を神事、人を疑わず、人を騙さず、人を傷つけず、全ての隣人を愛していれば、素敵な人生になるとしんじていたのだ。
     他意のない誠実な身体検査だと信じているのだろう。
     そりゃ、公安のやることだ。屑が素直な人間を騙して、いいようにしてやろうとしているわけではないが、もしも女の裸を見たいだけの屑が公安の中にいたとしても、フォトはその人を信用してしまうだろう。
    
    
     フォトが連れていかれた施設の部屋は、シミ一つない真っ白な壁に床に天井が広がって、いるだけでぼーっと心が病みそうだ。
    「では身体検査を開始します」
     醜男が言う。
    「はい!」
     フォトは素直に返事をしている。
    「ここで全裸になって下さい」
    「わかりました」
     茶色のチノパンに、薄手のセーターを、フォトは何の疑いもなく、だけど恥ずかしそうに脱ぎ始めた。
     醜男以外にいるのは、検査に関わる白衣の男が数人だ。
     醜男はここに立ち会うだけで、女の裸を医学的な意味で観察できるのは、白衣の男達だけなのだろう。
     セーターを脱ぐと、ブラジャー付きの上半身が現れる。チノパンを脱げば、白いショーツの尻が現れる。
    「いひ」
     醜男の奴、嬉しそうに顔色を変えやがった。
    「…………」
    「…………」
     対して白衣の連中は、実に事務的な真面目人間の表情で、フォトの裸を見ても欠片も興奮していない。
     ブラジャーを外して乳房を出すと、パンツ一枚の格好に。
     パンツも脱ぐと、いよいよ一糸纏わぬ姿だ。
     せめて大事な部分は手で隠していたいのが人情だろうに、フォトはバカ正直な気をつけの姿勢で全てを晒している。胸は丸見え、アソコの毛まで見られ放題。白衣どもは真面目だが、醜男の顔つきは、だんだんと言い訳の聞かないいやらしさになっていた。
    「うーむ。いいオッパイだ」
     ぐっと顔を近づけて、醜男はフォトの乳房を品評する。
     隠す気もないとは恐れいるが、フォトもフォトで、それが職務上の必要行為だとでも信じているのか。顔を真っ赤に染め上げて、恥ずかしいのも我慢しながら、どうぞご覧下さいとばかりに背中を反らし、胸を突き出している有様だ。
     どうしたものかとオレは迷ったが、醜男の下心など知らない方が幸せだろうか。
     しかし、こんな奴が公安警察で権力を持っているなんて、スパイが紛れ込んでいるよりも恐ろしい真実じゃないか?
     ポチっと。
     ボタンでも押すみたいに、醜男は人差し指をフォトの乳首に押し込んだ。
    「……ん」
     何やら我慢の声を漏らしたフォトは、醜男のご立派な職務行為を真摯に受け入れ、好きなように乳首を触らせている。
    「さて、調べろ」
     権限は醜男にあるわけだ。
     指示が出てから、初めて白衣の男達は動き出し、今度こそ『仕事』のためにフォトの裸を観察する。ほとんど点検だ。機械整備の人間がメンテナンスを行ったり、出荷前の商品チェックで破損がないかを確かめたり、そういう光景と変わらない。
     いたるところを触られていた。
     うなじに指を当て、肩の肉を掴み、背中を撫で回す。あらゆる部位に顔を近づけ、至近距離から観察する。
    「ホクロの一致は」
     その隣で一人だけ、書類を片手に突っ立っている男がいた。
    「背中、腕、いずれも一致無し」
    「手術の痕跡無し」
     検査を行う面子がそう言うと、そいつは書面にペンを走らせた。
    「乳房を確認します」
     そう言って、白衣の一人が両胸を鷲掴みにして揉みしだいた。
     実によーく確かめていやがる。細やかな指使いで、もっとじっくりいくかと思えば、用など一瞬で済んだとばかりに、すぐに揉むのをやめてしまった。
    「どうですか」
    「豊胸などによる胸ではありません」
    「触感の一致は」
    「書面にあったスパイの乳房の感触と酷似して、もっちりとした弾力にあたるものの、乳首の色合いが異なります」
    「では脚をお願いします」
    「了解」
     どれだけ事務的なやり取りだ。
     それはそれで嫌なものだと思うのだが、フォトは真面目な顔であり続けている。この光景を眺める醜男だけが、楽しいものを見て喜ぶ表情でおいでなわけだ。
     太もも、膝、ふくらはぎ、足の甲から裏側まで、くまなく観察と触診を行うが、スパイとのホクロやアザの一致とやらはいずれも無し。
     しかし、どこまでフォトは正直なんだ。
     だんだんと、体全体が硬直して、表情も見るからにこわばって、まるで痙攣してるみたいに震え始めた。顔の染まりっぷりも、いつの間にか耳まで及んで、もうジュワっと顔から蒸気が噴き出ておかしくない勢いだ。
     それでも、フォトは素直に耐えている。
     真っ直ぐに姿勢を保って、検査を妨げないように背筋もピンと伸ばしている。恥ずかしがったり、手で隠したり、身じろぎすれば、検査がやりにくいはずだと思っているからだ。
    「下腹部に移ります。自分の足首を掴んで下さい」
     本当に配慮がないな。
     フォトがどんな気持ちかわかっているのか。ひょっとして、こいつらは本当に商品か何かの点検と同じつもりでやってるのか。真面目さが勢い余って、恥じらいだとか、人の尊厳といったものを忘れてはいないか。
     しかも、ポーズもまずい。
     全裸の女が自分の足首を掴むってことは、体を前屈状態に折り畳んで、丸出しの尻を高らかに掲げることになってしまう。
    「わかりました」
     言うまでもなく、フォトは素直に従うだけだ。
     尻の割れ目が左右に開ける姿勢だから、フォトの肛門が視線に曝け出されている。醜男はわざわざポジションを移動して、好みのアングルから眺め始める。
    「肛門の皺の数は」
     書類片手の男が尋ねる。
    「確認します」
     と、白衣の一人が尻の穴に顔を接近させた。
     さすがにフォトもやばいだろう。
     あれだけ至近距離に顔があったら、呼吸の息もかかってくるし、じっくりと観察してくる視線の気配も如実に違いない。
     一本、二本などと声に出し、本数をカウントして数えている。
    「本数不一致。色合いも一致しません」
     カウントした本数に対して、書類持ちの男はデータを確認しながら答えた。
    「性器を開きます」
    「サーモンピンクと一致しますか」
    「一致しますが、膣口の形状が異なります」
    「スパイの膣口は数センチ程度の極小の穴でしたが、サイズが違うと」
    「はい。それよりは広く、指が二本以上入ると思われます」
    「了解した」
     とはいえ、これで終わったか?
     顔の目や鼻から始まって、手足の指の一本ずつから、穴の中まで確かめたんだ。しかも不一致が多いのなら、もう十分なはずだろう。
     オレはそう思ったが、
    「待て」
     醜男が余計な思いつきを顔に浮かべた。
    「私がそれを確かめよう」
     なんと、醜男の奴。
     本当に指が二本以上入るかどうか。確かめるために挿入しやがった。
    「んくぅ……!」
     準備無しでの挿入だ。
     フォトは苦しそうな声を上げた。
    「なるほど、まずは一本目」
     醜男はご丁寧に左手を尻に置き、丹念に撫で回しながら、右手の中指を出し入れする。それが済んだら一度引き抜き、人差し指と中指を同時に挿れ、ピストンを行いやがった。
    「あっ、くぅ……!」
     畜生、フォトが嫌がっている。
     もう耐えることはないんだぞ?
     もう我慢しなくていいんだぞ?
    「ほうほう。これはいけない穴ですなぁ?」
     ほれみろ、醜男は下心を隠してもいない。
    「ま、まだ……私の無実は……」
    「ああ、もうちょっとで晴れるよ」
    「あっ、あぁ……ありがとう……ございます……んんぅ……!」
     ありがとうじゃないだろう。
     そいつがやっているのは、もうただの手マンじゃないか。尻をナデナデと可愛がっていやがる左手の動きも、おかしいとは思わないのか。
    「おい!」
     たまらずオレは声を上げた。
    「なんだね?」
    「何もかも不一致。指も入った。別人だってわかっただろう」
    「ま、それもそうだ」
     醜男は不満そうに切り上げて、フォトの膣内から指を抜く。
    「おめでとう。これで君の無実は晴れたよ」
     何がおめでとうだ。
     最後まで偉そうなやつめ。
    「よかった。私、スパイじゃないって!」
     そんなこと、オレは初めからわかっているが。
     最後までフォトは誰一人疑わず、本当に容疑が晴れたことを喜ぶ顔で、この場所から去ることとなったのだ。
     ったく、なんであんな男が公安に?
     この前の連中は、もう少し良心的だったはずなんだが。
     案外、あいつもスパイか?
     というより、組織を内側から腐らせるガンかもしれないな。本当に味方な分だけタチが悪い。いっそ敵か何かの方がマシだろう。
    
    
    


  • 入国身体検査の国-キノ-

    
    
    
     森には一本の道があった。
     広大な緑を二つに等分するように、真っ直ぐ通った長い道は、頭上が葉っぱの天井で覆われている。快晴の木漏れ日が暖かく降り注ぎ、風がそよいで心地良い道となっている。
     一台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が、道を真っ直ぐに進んでいた。後輪の両脇と上に、旅に持つを満載している。かばんの脇に引っ掛けられた、銀色のカップが揺れていた。
     運転手は白いシャツに、胸元を開けて黒いベストを着ていた。腰を太いベルトで締めて、右腿にはハンド・パースエイダー(注・パースエイダーは銃器。この場合は拳銃)のホルスターがある。腰の後ろにも、細身の自動式をつけていた。
     黒髪の上に鍔のある帽子をかぶり、ゴーグルをしていた。
     その下の表情は若い。十代の半ばほど。
    「城壁が見えてきたね。キノ」
     走りながら、モトラドが突然言った。
    「ああ、見えた。もう少しで着くみたいだな。エルメス」
     国を取り囲むための城壁が、森の中からドンと大きく聳えている。最初は遠く小さく見えた城壁が、今はだんだん近づいていた。
    「あの国は身体検査が厳しい。だっけ?」
    「厳しくしておくことで、スパイとか悪人の入国を萎縮させる効果がある。とか、前の国にいた人は言っていたな」
    「裸にされて、尻の穴まで探られて、最後は写真もパシャパシャ撮られるってね。すごく恥ずかしそうだけど、キノは受けるの?」
    「……まあ、嫌だとは思うけど、そうしないと入国できないだろうから」
     キノと呼ばれた運転手は、城門へ向けて速度を上げた。
    
    
    「人権侵害よ! 女性にまで全裸を要求するなんて、どうかしているわ!」
     城門外側にある小さな詰め所で、番兵兼入国審査官と、一人の女が言い争っていた。
    「規則は規則ですので」
    「だったら! その規則を作ったのは誰よ!」
    「我が国の政治です」
     女は気性の荒い様子だが、審査官の男は冷静で淡々としている。
    「どうせ政治家が民意を無視したんでしょう? でなければ、そんな横暴で下品でハレンチな身体検査がまかり通るわけがないわ!」
    「規則は規則ですので」
    「じゃあ、どうしろっていうのよ! 他に行ける国もないのに、野宿でもしろっていうの?」
    「ですから、人権や羞恥心などへの配慮のため、旅人にご宿泊頂くための宿が、城壁の外の方にございます」
    「何よそれ! 外で寝ろってこと?」
    「そちらの宿では十分な施設を提供し、料金の方もお安くさせて頂いております」
    「ふん! いいわ! 今日のところはそっちに泊まらせてもらうけど、また抗議に来させてもらうんだから! 待ってなさいよ?」
     怒った女はぷいっと振り向き、すたすたと審査官から去っていく。
    「あら、あなたもこの国はやめた方がいいわよ? とんだ変態なんだから」
     キノに向かって、女はそう言い残した。
    
    
    「移住希望ですか? それとも、旅の途中の一時滞在ですか?」
     女と入れ替わるようにして、キノは審査官の元へ歩み寄る。
     自分達は後者で、三日間の滞在を希望すると伝えた。
    「この国が、精密な身体検査を実施して、衣服や所持品はもちろんのこと、全裸のボディチェックを実施していることはご存知ですか?」
     審査官が、念を押すように尋ねて来る。
     キノは頷いて、
    「何故厳しいのか。理由を聞いても構いませんか?」
     と、尋ねた。
    「旅人が危険な人でないかを調べるのはもちろんですが、主な理由としては、スパイや犯罪者など、悪質な入国者の入国を萎縮させるためですね。この国から数キロほど離れた場所には、我が国を敵視する敵対国がありまして、たびたび工作員を送ってきますので」
    「なるほど」
    「さきほどの女性にも伝えましたが、人権上の配慮という問題もあります。もし全裸で細かい部分まで調べる身体検査を拒否なされたい場合は、城壁の外にも宿を設置しております」
    「わかりました。一日目はそちらへ行ってみようと思います。一日考えて、決心がつくようならまた来ます」
    
    
    「いい宿だな」
     キノが、エルメスから荷物を下ろしながら言った。
     部屋の中は、ふんわりとしたソファに、清潔で柔らかそうな真っ白なベッド。壁には電気スタンドと扇風機が置かれている。
    「そう? なんか普通だけど」
     部屋の隅にセンタースタンドで立つエルメスが答えた。
    「そう、普通なんだよ。普通に綺麗で、ベッドとソファは使い心地が良くて、掃除も行き届いているし、料理も美味しい。普通に充実している」
    「つまり?」
    「城壁の外に建てたにしては、十分に整っているってこと。下手をすれば、他所の国のホテルよりも高級だ」
    「あ、なるほど。身体検査なんて受けられない、って人を外に放り出しておくための宿だから、もっとオンボロで壁も床も穴が開いてて、ベッドもしちゃくちゃで黄ばんでて、そこらじゅうにネズミとか、ゴキブリとかがいるのを期待いてたんだね。残念」
    「いや、別に期待はしてなかったけれど……」
     キノは荷物をベッド脇におろし、ホルスターを外してベストを脱ぐ。
     その時だった。
    「離して! 離しなさいよ!」
     隣の壁の向こうから、さっきの女の声が聞こえてきた。
    
    
     キノが大きな音を気にして部屋を出ると、さきほど審査官に文句を言っていた女が、両脇を二人の番兵に抱えられ、廊下から連れ去られている最中だった。
    「何よ! 何だっていうのよ!」
     女は髪を振り乱して、ひたすら吼えている。
    「あなたにはスパイ容疑がかかっています」
    「スパイ? そんなのデタラメよ!」
    「話はあとで聞きましょう。その際に弁護士を立てることも可能です。一旦、留置所まで同行して頂きます」
     淡々と言って、二人の番兵は女を引きずって行く。
    「どうなされたんですか?」
     もう一人の番兵が廊下が、女の部屋から出てきたのを見て、キノは尋ねてみた。
    「どうもこうもスパイだよ。ま、まだ容疑段階なんだけどな」
     番兵は肩をすくめて呆れながら答えた。
    「先程、入国審査官の方に文句を言っているのを見ましたが」
    「ああ、そういう奴なんだよ。ここから西にある国が、領土を拡大しようと隣国に工作員を送り込むんだ」
    「続けて下さい」
    「服も所持品も全てチェック。全裸になった体にもボディチェックをするような厳しい検査があったら、敵国の工作員にとって都合が悪いから、女性団体のフリをして廃止させようって魂胆なんだ」
    「なるほど」
    「アンタも身体検査は無理って口か? たまにいるんだよな。ま、スパイなのかただ恥ずかしいのかは知らないが、この宿からでも旅に必要な品物は注文できる。注文雑誌みたいなリストがあって、そこから選んで受付に頼めば、わざわざ国の中から商品を運んできてくれる仕組みというわけさ」
    「それは便利ですね」
    「ああ、便利だろう? スパイを萎縮させる上、旅人への対応もきちんとできる一石二鳥だ」
    「中はどんな国なんですか?」
    「どんなって、普通に平和な国だよ。この国では歴史ある建造物が観光地になっていて、それなりに楽しめる酒場とか風俗宿があって、商店街はそこそこ賑やか。これといった特徴らしい特徴は別にない」
    「そうですか」
    「俺は他に仕事があるから、忙しいからこの辺でな。あばよ」
    
    
     二日目の朝。
    「入国してみるよ」
     キノはエルメスに言う。
    「へえ! てっきり、恥ずかしいからもうやめたのかと思ったよ」
    「まあ、そうなんだけれど……。全裸になるなんて、本当は受けないにこしたことはないけど、必要な品物はちゃんと自分の目で見て選びたい」
    「粗悪品なんて掴みたくないからね」
    
    
     入国審査官の元を訪れると、キノは検査用の別室へと案内された。
    「所持品を全てチェックすることになりますので、まずはそちらのモトラドと、かけてある荷物を拝見することになります」
    「分解とかしないでよね」
     エルメスが言った。
    「理由がなければ分解はしないでしょう」
    「武器の持ち込みは制限されていますか?」
     きっぱりと答える審査官に、キノは尋ねた。
    「護身用に携帯自体は許可しています。ただし、種類や口径など、所持している種類に関しては全てチェックし、書類にまとめ、国内で犯罪が起きた時のための捜査資料として、ここに記録が置かれることになります」
    「わかりました」
     キノは持っていたパースエイダーとナイフを全て渡した。
    「こちらへどうぞ」
     さらに別室へ案内された。
    
    
     キノは全ての衣服を脱いで、一枚一枚をテーブルに置く。
     全裸になって、両手で胸とアソコをそれぞれ隠した。
    「特に何もありませんね」
     審査官はシャツやベストを調べていき、ポケットの中に何か仕込んではいないか。布を二重にすることで、危険物をこっそり持ち込もうとはしていないか。そういうことについて、一枚ずつ丁寧に確かめている。
     さすがに時間がかかるため、衣服を調べているあいだ、キノはずっと全裸のまま両手で恥ずかしい部分を隠し続けていた。
    「こちらはどうでしょう」
     審査官は目の前でショーツを持ち上げ、その柄や色についてコメントを口にする。堅苦しい論評を読み上げるような口ぶりで、地味めなグレーの無地、リボンがついている、まだ少し体温が残っているなど、キノにとっては恥ずかしいことばかりを述べてきた。
     裏返しにして、おりものの染みまでじっくり観察され、キノは真っ赤に染まってしまった。
    「身体を調べます。両手を横に下ろして下さい」
    「……はい」
     キノは気をつけの姿勢を取ると、審査官は肩やうなじに触り始める。腰に太もも、ふくらはぎやアキレス腱。いたるところを撫でたり揉んだり、皮下に何かが隠されていないかを調べ始めた。
     口や鼻、目や耳などにもライトを当てる。
     そして、審査官の手の平はキノの乳房を包み込んだ。
    「あ、あの……」
    「何でしょう?」
    「いえ、早く終わるといいなと思いまして」
    「ええ、じっとして頂ければ、可能な限り早く終わります」
     審査官はあくまで事務的な顔をしているが、キノの控えめな膨らみにべったりと手の平を這わせたまま、何度も何度も指に強弱をつけて揉んでいる。やがて乳首が突起して、審査官の手の内側をつつき始めた。
    「あの……」
    「乳首が立っていらっしゃいますね」
    「……そうでしょうか」
    「はい。とても硬くなっています」
     審査官は乳首をつまみ、つねるようにして弄ぶ。人差し指で何度も上下に弾き続けて、また乳房全体を揉みしだく。しばらく揉んだら、再び乳首に集中して、審査官は十分以上かけてキノの胸を触り続けた。
    「とても、時間をかけるんですね」
    「はい」
    「下心を疑われたりはしませんか?」
    「そうですねえ、女性団体を名乗る声はありますが、敵国にとって都合の悪いものを潰そうとする工作活動でしょう」
    「……そうですか」
     次に性器を調べるというので、審査官の指示に従って、キノはテーブルの上に横になる。天井にM字開脚を向けるようにして、審査官はキノのワレメを指で開いて観察する。
    「よい色合いですね」
    「そう言われましても……」
    「指を入れますので、動かないで下さい」
    「はい」
     審査官は中指を立て、キノの膣口へ挿入する。男の指が膣内へ侵入してくる異物感に、キノはなんとなく身をよじり、恥ずかしさで顔をみるみる赤らめた。
    「血色の良さから、健康的な肉ヒダと言えますし、中身もとても温かい。キノさん。これは名器ですよ」
     といって、審査官は指を出し入れする。
    「あの……」
    「膣壁を調べています」
     審査官は探るような顔つきで、膣内を指の腹で擦っている。
    「……そうですか」
     何かを言いかけていたキノは、諦めた表情で耐え忍ぶ。審査官は指をグリグリと回転させ、膣壁のいたる部分を触りながら、何度も何度もゆっくりと、時間をかけて指を出し入れさせ続けた。
    「四つん這いになって下さい」
     キノは黙って従う。
     審査官は突き出された尻たぶを両手で鷲掴みにして揉み始める。手の平全体に強弱をつけ、丁寧に揉みしだき、尻の感触を味わい続ける。最初は指先で何かを探り、皮膚の内側に隠されたものがないかをチェックしている動きに感じたが、だんだんと単に揉みしだいているだけの手つきになっていた。
    「……うぅっ」
     キノは静かに耐えた。
    「張りがあり、弾力も強く、とても良いですね」
    「……褒められても、困ります」
     それだけ言って、耐え続けた。
     審査官はなおも揉み込んで、しばらくすると撫で回す。手の平全体が触れるか触れないかの加減で、丸い尻の表面を何度も何度も、撫で回す。
     キノの顔は赤かった。
    「さて、ワセリンを塗って……」
     そして、肛門に指を挿入した。
    「あぅぅ…………」
     キノは異物感に声を上げた。
     にゅぷり、にゅぷりと、審査官の指が出入りして、肛門の中身を探っている。
    「いま、お尻にキュっと力が入りましたね?」
    「……いえ」
    「いいえ、確かに入りました。キュンといった具合に引き締まり、あなたの肛門括約筋が私の指を締め付けました」
    「……」
    「さて、これから肛門の皺の本数を数えます。動かないで下さいね?」
    「……はい」
     審査官は指を引き抜くと、四つん這いの尻たぶを両手で鷲掴みにして、ぐっと穴に顔を近づけ至近距離で視姦して、声を出して数え始めた。
    「いーち、にーい――」
     とても元気にカウントを重ね始めた。
    「うぅ……」
    「さーん、しーい」
     無邪気な笑顔で、とてもとても楽しそうに、審査官はキノの肛門の皺の本数を数えていました。
     それが終わると、今度はスリーサイズの測定が始まった。審査官はメジャーを伸ばして巻きつけて、バスト、ウェスト、ヒップの順に計った数値を「○○センチ!」と、いちいち大声で読み上げた。
     ノギスで乳首と乳輪のサイズを測った。
     アソコの割れ目と、クリトリスのサイズも測った。
     肛門の直径も計った。
     写真撮影に移ると、まずは直立不動の姿勢で正面から一枚撮り、その次に左右から撮り、背面からの写真も撮ると、乳房、アソコ、お尻のアップまで写し撮り、肛門さでもを写真の中にきっちり収めた。
    「キノさんのスリーサイズは上から○○センチ・○○センチ・○○センチ」
     審査官は書類に書き込んだ内容を読み上げる。
    「…………」
     キノは全裸のまま、自分の測定データの発表を聞かされていた。
    「乳首は○○センチで、乳輪は○○センチ」
    「……」
    「性器の割れ目は○○センチ! クリトリスは○○センチ!」
    「うぅ…………」
     俯いたキノは真っ赤な顔から煙が出そうなほど、激しく恥らっていた。
    「肛門の直径は○○センチ! 皺の本数は○○センチ!」
    「す、全て知られた……。ボク自身も知らなかったことが全て……」
     やっとのことで服が返され、キノは元の服装に着替えていく。
     その目の前で、審査官は書類をまとめ、カメラを持って検査部屋から出て行った。これらの書類は写真と共に保存され、特に理由がない限り、国が滅びでもしない限り、永遠に破棄されることはないのだとも言っていた。
    
    
    「あなたは旅の人?」
     パースエイダーを腰に吊るした強そうな女の人が、エルメスを引いて歩いていたキノを見つけて声をかけた。
    「ええ、まあ」
    「その通りだよ!」
     キノとエルメスは同時に答えた。
    「ということは、あなたも検査を受けたのね?」
    「……ええ、一応」
     女の旅人は半ば怒っている様子で、
    「私もなの。旅をしていて、補給が必要で、しょうがないから入国を求めたら、あんなに厳しいとは知らなかったわ」
     プンスカと撒き散らす。
    「隣国のスパイ対策と聞いていますが」
    「たぶん、この検査はずっとなくならないでしょうね」
    「といいますと?」
    「そう、スパイ対策よ。だから厳しくしているの。なのにそれを撤廃させようとして、女性団体のフリをした工作員が、声を高々に上げていつもいつも抗議しているのよ?」
    「なるほど、よくわかりました」
     それだけ聞いて、キノはすっかり納得していた。
    「え? キノ。どういうこと」
     エルメスが尋ねる。
    「つまりね、エルメス。こちらの国は女性団体が工作員の集まりだって見抜いているから、撤廃させようとする抗議が続いている限り、ずっとずっと撤廃されないと思う」
    「ほうほう」
    「もし、あの検査方法が緩むとしたら、抗議の声が鳴りを潜めて、スパイへの警戒を緩めてよしと判断が下されて、それからになると思う」
    「じゃあ、そんな日は来ないね!」
    「さあ、わからないけど。来るとしても、ボク達には関係ないくらいの未来だろうね」
    
    
     さて、その国の帰りだった。
    「出国時にも検査はあるというわけですね」
     キノは再び全裸にされ、審査官に体中を触られていた。腰を撫で、胸を揉み、尻へのタッチを行う審査官の手は、全て検査のためのものなので、反発することはそのまま国に逆らうことと同じになる。
    「確かにキノさんですね。いえ、これは本人確認ですので」
     といって、審査官はずっとキノの身体を触り続けた。
    「あの、早くして欲しいです」
    「いえいえ、慎重に確かめる必要がありますから。あ、それとスリーサイズと乳首と乳輪とアソコと肛門のデータを照合しないといけませんね」
    「…………」
     ずっとずっと、イタズラは続いた。
    
    
    「ボクはわからないという言い方をしたけど」
    「うんうん」
    「あれは訂正する。撤廃の日は永遠に来ない」
    「だね! あれじゃあね!」
    
    
    


  • 入国身体検査の国-師匠-

    
    
    
     とある国での出来事です。
     黒髪を伸ばした妙齢の女性が、堅牢な取調室の中で三人の男に囲まれていました。
    「それでは衣服を一枚ずつ脱いでいき、彼へ渡していきなさい」
    「はい。わかりました」
     女性はまずコートを脱ぎ、男の一人へ手渡します。すると男はコート中の布やポケットを調べ出し、何も怪しいものはないとわかるとテーブルへ畳んで置きました。
     次はワイシャツを脱ぎ、上半身の下着姿を晒します。黒いブラジャーに包まれた乳房を見られ、女性はやや顔を赤くします。女性はシャツを男へ手渡しました。
    「恥ずかしいでしょうが、入国審査は厳しくする必要があるんです。そうしないと、いつ敵国のスパイが紛れ込んでくるかわかりませんからね」
     今度はベルトを外しズボンを脱ぎ、女性は完全な下着姿となります。
     男はズボン中を手探りし、何か怪しい物品が仕込まれていないかを調べていきます。やはり何もないとわかると、テーブルの上へ他の衣服と並べて置きました。
    「下着も、なのですよね」
    「そうです。恥ずかしいでしょうが、我慢して下さい」
     すると女性は何も言わずにブラジャーを外し、男へ手渡しました。目の前で下着を調べられているせいか、頬の赤みが濃くなります。しかし、表面ではあくまで平然としていました。
     ブラジャーを調べ終わると、男はパンツを要求します。
    「……早く、済ませてくださいね」
     女性は羞恥心を堪えながら、懸命に平静を保ちながら、パンツを下ろしていきます。
     脱ぎ去った黒のパンツを手渡すと、それも目の前でじっくりと調べられました。布中をべたべた触られ、裏返しにされ、股間部分についたおりものの染みをまじまじと観察されます。長らく弄ばれて、やっとの事で男はパンツを調べ終わりました。
    「では残るはボディチェックです。頭に両手を組んで下さい」
    「はい」
     女性が頭に手を組むと、男は遠慮なく乳房を揉み始めました。
     手術で胸に何かを隠していないか、手で直接調べるためです。
     男は指を深く沈め込み、グニグニと執拗なまでに揉み込みます。最後に乳首を摘み、指先で玉をいじくるかのようにしました。
    「最後に自分の足首を掴み、こちらに尻を向けなさい」
    「……はい」
     女性はさすがに悔しそうな顔をしていましたが、言う事を聞かなければ入国ができません。泣く泣く体を折り曲げ、アソコも肛門も丸見えな恥ずかしい姿勢を作りました。
     男はまず、アソコを調べます。
     肉貝を指で撫で、それから扉を開いて中身を確認します。じっくり眺めたあとで膣に指を挿入し、中に何かが隠されていないかを確かめました。
     最後にお尻の穴です。
     男は尻たぶを鷲掴みにして肛門を開き、じっくり眺めたあとで指を挿入します。
    「くっ……」
     お尻に指を入れられて、女性は屈辱を堪えていました。
     男は何度か指を出し入れし、奥までずっぷり差し込むと中をかき回します。直腸にも何もないことが確認できると、ようやく指を引き抜きました。
    
    「これで身体検査は終了となります。我が国の景色をごゆっくりとお楽しみください」
    
     ここまで恥ずかしい検査に耐えただけの価値があるのか。
     それは実際に国を眺めて見るまでわかりません。
    
    
    


  • 深雪 羞恥の定期検査 後編

    前編

    
    
    
     全身検査。
     それは頭の先から足の先までをくまなく調べ、皮膚科系はもちろんガン系のしこりや筋肉の張り等の正常さを確かめるものだ。ここでは三人の検査医が女子生徒を取り囲み、それぞれの手で視診触診を行っていく。
     深雪はコレまで以上に赤くなり、首から上はほぼ別色といえるほどに顔面を熱くしていた。
    (こ、これって一番……)
     至近距離から、三人の男が手で触れながら視診してくるのだ。
     両腕を真っ直ぐ左右に伸ばし、二人がそれぞれの両腕を触って調べている。残る一人は背後へ回り、脇の下へべったりと手を貼り付ける。上から腰のくびれまでへと、ボディチェックを行うように撫でていく。
    (ふあ、あぁぁ……)
     上下に手をスライド往復される刺激に震えた。
    「右腕問題なし」
    「こっちもです」
    「肌は全体的にサラサラですね」
    「ふんわりと柔らかく、羽のわたのように優しい肌です」
     深雪は涙ぐんだ。
     三人の検査医達は深雪の体を事務的に弄くりまわし、合計六本の手がいたるところを這いずり回る。あくまで触診でしかない手が、しかし太ももを揉み始め、うなじをくすぐり、耳まで触れて全身を調べ尽くす。
     まるで拷問だった。
     悪いことなどしていないのに、途中からは頭の後ろで両手を組まされ、そして脇の下から足の裏までベタベタと触られる。体中いたるところに手垢をつけられ、もはや手の当たっていない面積部分など残されないほど、触診は丁寧に行われた。
     きっと兄へ差し出したかった大切な肌だというのに。
     そんな深雪の事情などお構いなしに、女が嫌だと思う部分を検査医は平気で調べ、指先で素肌をくすぐっている。
    「かなり発育がいいですね」
    「筋肉と脂肪のバランスがいい」
    「スタイルも抜群の部類でしょう」
     検査医達は深雪の体をああだこうだと論じていった。
    (こんなに観察して、意見を言い合うなんて……恥ずかしすぎます!)
     深雪は悶える。
    「お手本のようです。教科書に載せたいくらいですね」
    「はっはっはっは」
     軽く、笑われた。
     もちろん、検査医達に深雪を貶める意志はない。深雪の体への感想を疲れた気分を紛らわすために言い交わし、地道な作業疲れをほんの少し癒したのだ。何十人もの検査を受け持つ彼らにとって、深雪がどんな気持ちになっていようと、選りすぐりの美少女であろうと、大勢いる検査対象の一人にすぎないのだ。
     もっと言えば、処理しなくてはいけない仕事の一部だ。
    「乳房に入ります」
    「了解」
     もはや本人の意思などないも同じ。
    「健康的ですねぇ」
    「硬さは?」
    「やはりふわっとした柔らかさで、餅が手に張り付くかのようです」
    「なるほど」
     一人が乳房を両手で掴み、揉み始めた。なんの断りもなく、ただ仕事上のノルマを消化したい検査医は顔色一つ変えずに指を押し込み、皮膚の内側に何かがないかを探している。彼らに卑猥な心は欠片もないが、それだけに業務を淡々とこなしすぎていて、深雪の気持ちに対する配慮や紳士的接し方さえ欠片もない。
    (お兄様……助けて下さい……深雪はこんなのもう嫌です……)
     深雪は唇を噛み締めた。
     男の指が乳房を持ち上げ、プルプルと揺らしてくる。表面を撫でるようにして形をなぞり、乳肌の皮膚を調べてくる。乳首を摘み、グリグリとつねってくる。引っ張ったり、押し込んだりされ、突起した乳首は執拗に虐め抜かれた。
    (お兄様ぁ……)
     身をよじったり、体が逃げる反応をすれば「動かないで下さい」と注意が飛ぶ。胸をいいように扱われながらも、後頭部に手を組んだまま、深雪はひたすら我慢していなくてはならなかった。
    「乳首もコリっとしています」
     そんな情報を声に出される。
    「ええと、いずれも疾患は無しで、それから……」
     そして一人はチェックシートにペンを走らせ、今までの診察結果を書き込んでいる。書類の記入欄には、深雪の乳房や太ももの感触について書く項目もある。その人の語彙力が許す限り正確に、体つきから何もかもまでが記入されている。
    「しかし、やはり綺麗ですね」
    「ボディラインは人一倍優れていそうですしねぇ?」
    「触れた感じも全体的に柔らかく、ふんわりです」
    「なかなかいませんよ。ここまでの子は」
     他意はなくとも、深雪の体つきにまつわる感想が事務的に述べられていた。
    (お兄様……ぐすん……お兄様ぁ…………)
     それでも、耐えることしか許されない。
     深雪にできるのは、この時間が一刻も早く終わることを願うだけである。
    
    「では、臀部及び陰部へ移りましょう」
    
    「……!」
     おもむろにショーツに指をかけられ、深雪は戦慄した。全身に緊張がほとばしり、それでなくとも真っ赤な顔へさらに血流が集まって、心臓は早鐘のようにドクドクと大きな音を打ち鳴らす。
     検査項目は事前に通知されている。初めから内容はわかっていたし、腹を括ってきたつもりもあった。だが、いざこの瞬間を迎えた時、大事な部分が曝け出される危機感に、全身に警戒信号が行き渡り、鳥肌さえ立てながら深雪はごくりと息を飲んだ。
    (嫌ですわ! やはりここだけは……)
     ショーツは最後の砦だ。
     それを履いている限り、乙女の秘密だけは隠してくれる最後の盾だ。これを失えば最大の弱点が外へ晒され、深雪は無防備となってしまう。
     それに対する危機感。
     本能から警戒信号が発令され、深雪はほとんど条件反射的に抵抗した。いや、抵抗といっても抑えはしている。ただ脱がされかけたショーツを手で引き止め、深雪は自分の最後の防壁を失うまいとしていた。
    「どうしました?」
     検査医はそんな深雪を不思議そうに見つめていた。
    「脱がないと検査が進みませんが」
    「ほら、他の子達も待っているんですよ?」
    「あなた一人に時間はかけられないんです」
     口々に言われる。
    「わかっています。わかっていますが……」
     深雪は震えた。
     どうしても、こんな場所を見せなくてはいけないのだろうか。
     晒さなくては許されないのだろうか。
     女に生まれ、この学校に入学したというだけで……。
     悲しい、悲しすぎる。
     羞恥心が胸の内側で膨張し、風船を一気に膨らませていくかのように大きくなる。ただ恥ずかしさという一色だけが、深雪の感情を染め上げている。あまりに酷い恥をかかされて、泣けてきた。
    「司波深雪!」
     注意の声を上げるのは教師である。
    「これは規則なんだ。決まりを守れないようであれば、お兄さんにも迷惑がかかるが?」
    「お、お兄様に……!?」
     深雪ははっとした。校則違反に対しては当然指導が行われる。深雪への厳重注意に伴って、兄妹として同居している兄にも深雪の話をされかねない。問題行動だ、兄からもきちんと言って聞かせるように、といった具合に。
     兄に迷惑をかけることは本意じゃない。
     脱ぐしか、ない。
     泣きたくなるほど嫌なことでも、少し我慢すれば事は過ぎ去る。耐え抜いて、耐え抜いて、耐え忍ぶのだ。
     きちんと、兄の言いつけ通りに。
    「……すみません。恥ずかしくて、つい。きちんと受けますので」
     反省の素振りを見て、教師は一歩後ろへ下がる。
     これから陰部を晒されるのに、それでも謝るのは自分の方である事実を悲しく思った。
    「では改めて」
     検査医はその瞬間、ばっさり。
    「――――っ!!!」
     遠慮無しに一気に引き下げ、心の準備をする猶予もなく、深雪の全てが男達の視線の中へと曝け出された。
     ――カァァァァ!
     と、沸騰せんばかりに首から上がまんべんなく熱くなる。顔から蒸気が出てもおかしくないほど、火照るという言い方では生易しいほどに血流が頭部に集中する。全体的にきめ細かく、美白肌の深雪だが、首を境界線として顔面と両耳だけが真紅に染まっていた。
    (……こんな! こんな人前で生まれたままに姿になるだなんて!)
     あまりの顔の熱さに、額や頬からだけ汗が吹き出た。
     雪をふんわりと積らせたような白い尻は、触れれば崩れそうなほどに柔らかい。あるいは清潔な羽綿のように優しく、大きすぎず小さすぎない控えめなカーブでプリっとしている。
     手前の方では、毛が丁寧に手入れされている。切り揃えられた陰毛は草原の領地を控えめにして、貝の割れ目がくっきりと目に見える。ぷにっ、と微妙な膨らみを持つ皮は、ぴったりと閉じ合わさってラインを明確に浮き出していた。
    (こんなの……深雪は生きていけませんわ……)
     深雪は震えた。
     これは刑罰か何かだろうか。そんなものを受けるほど悪いことはしていないのに、検査医三人と男性教師、合計四人の男に囲まれた状況下で最後の盾を失ったのだ。こんな目に遭わされる人間は、他には捕虜か奴隷くらいだ。
     検査医の顔がアソコへ近づく。
    「陰毛はカットしていますか?」
     そんな質問をされ、深雪は深く俯いた。
    「……はい。手入れはしています」
    「そうですか」
     そっけない。
    「…………」
     特に意味はない。素朴な疑問を何気なく、そして深雪の気持ちなど考えずに投げかけて、答えがわかれば適当に頷いた。ただただ、深雪の心が削られるだけのやり取りだった。
    「では四つん這いになって下さい」
    「……え?」
    「性器及び肛門を検査するための姿勢です。
     事前に説明が行っていると思いますが」
    「……は、はいっ。申し訳ありません」
     どうして自分が謝るのだろう。
     情けのない気持ちになりながら、死にたい気持ちになりながら、深雪は床に膝をつく。そして両手をべったりつけ、全裸でお尻を差し出す犬同然のポーズとなる。
    「では肛門ですが……」
     一人の検査医が深雪のお尻へしゃがみ込み、尻たぶを掴んで割り開く。
    (いやぁぁあぁぁああ……!)
     深雪は強く目を瞑り、歯を噛み締めた。
     親指で押し広げたその間で、桜色の雛菊皺がヒクっと蠢いた。真っ白な尻肌の中央にぽつんと咲いた可憐な色は、およそ排泄気孔とは思えないほど、皺の花びらを放射状に広げている。
     それを検査医は凝視した。
    (うぅ……お尻の穴まで…………)
     ただの視線一つが鋭い針のように深雪へ突き刺さり、肛門をチクチクと痛めつけている。
    「とても綺麗ですよ。黒ずみがないんです」
    「本当ですか?」
    「どれどれ」
     肛門を覗いていたのは一人だったが、今ので残る二人も同時に深雪のお尻を観察し、尻穴の桜色に次々と簡単の声を上げていく。
    「ほほーう」
    「こんな場所がここまで綺麗だなんて」
    「普通は黒ずみがあるはずですが、これは白い肌に桜色を乗せた色感が効いています。
     純白から薄紅色へと変化していくグラデーションのように、美感がありますよね」
     よりにもよって肛門について品評され、激しい羞恥の情動が胸の中身を荒らし出す。頭の中からまともな思考は削がれていき、この恥ずかしさに悲鳴を上げたい、自分の状況を恥じた気持ちだけが深雪の頭を占めていく。
    (……恥ずかしすぎます!)
     深雪の心は叫んでいた。
    (こんなこと……深雪は恥ずかしさで死にそうです……!)
     恥じらいに熱された顔全体に汗が滲んで、皮膚が湿っぽくなっていく。その吹き出た汗が上昇した体温に温められ、いよいよ本当に顔から湯気が出てもおかしくない。
     硬く強く食いしばられた歯は癒着したかのように離れなくなり、瞼も自身の眼球を潰さんばかりに力の限り閉じられる。床に置いた手は握りこぶしとなって、内側に爪を食い込ませるまで強く握られていた。
     体のどこかに力を入れ、硬く震えることによって、深雪はかろうじて耐えていた。
    「性器を開いてみましょう」
     くぱぁ……。
    (んく――んんん……! な、ナカを見られるなんて……!)
     桃色の貝の中身を左右に開かれ、今度は肉ヒダへ視線照射が集中した。ヒクヒクと蠢く陰唇が、包皮に覆われたクリトリスが、まだ男を知らない膣口が観察される。
    「血色はいいですねぇ」
    「ビラの大きさも」
    「おや、処女ですか」
     視診された中身の状態を口にされ、もはや手付かずの恥部は残っていない。全てを余すことなく観察され尽くし、しかし二つの穴への触診はまだ行われていない。一人がチェックシートを片手にペンを構え、もう一人は深雪の背中を押さえて動いても手で固定できるようにポジションを取る。
     そして、診察用のゴム手袋をはめた一人が中指で性器をなぞり、男に触れられる言い知れぬ感覚に背筋全体がゾクっとした。
    (いやぁ……)
     淫らな意思を持たない『触診』は、それでもクリトリスの周囲をそーっと、触れるか触れないかといった微妙さで指の腹を当てている。デリケートな部分を傷めないよう、優しく撫で擦るやり方は愛撫に近いところがあった。
    (嫌ですわ……嫌ですわ……)
     検査医は膣口の周囲をなぞっていき、具合を探る。まだ未使用の入り口に余計な傷をつけない程度に先端を挿し、グリグリと回すようにして触感を確かめる。その刺激が甘い痺れを生み出して、内股のあたりをピリピリさせた。
    「特に何もありませんね」
     検査医はゴム手袋を取り替えて、次は肛門を診るためにワセリンを塗り始める。
    (いひぁ……!)
     ひやっとして、皺が一瞬ヒクンと縮んだ。
    (は、入ってくる……)
     中指が直腸へと進入し、内側を探り出す。肛門から異物が入ってくる違和感と、内部を調査されている心地の悪さ。検査医は指を左右に回転させ、出し入れしつつ触診位置を調整し、指の腹に感じる直腸の触り心地で丁寧に症状を探っていた。
     ズプ、ズプ、ズプ……。
     内部を摩擦するために、指がゆっくりピストンされる。
    (そんなぁ……)
     性器を観察された挙句に尻の穴までほじくられ、頭がどうにかなりそうなほどに猛烈な羞恥が膨れていく。もしかしたら、自分はこのまま恥ずかしさで死ぬのでは。膨大な羞恥心が容量を超えて多量に溢れ、堪えきれない感情量が全身にいきわたり、やがては事切れてしまうのではと、ありえない想像さえよぎってくる。
     ズプ、ズプ、ズプ……。
    (駄目です! もう……もう死にそうです……!)
     ヌプッ。
     それはゼリーを塗りたくった指が抜ける音。
     限界点を越えた時、ようやく指が引き抜かれたのだ。
    「異常なしです」
    「了解」
     これで、直腸検診までが終了した。
    (……た、助かりましたわ)
     羞恥心が死因になるなどないだろうが、深雪自身は本当に死ぬ思いをしていたのだ。やっとの事で解放された安心感で、自分が全裸の四つん這いでいることをつい一瞬忘れてしまう。けれども、安心の直後にすぐに自分の姿を思い出し、薄くなりかけていた赤面濃度は途端に元に戻るのだった。
    
    「あとは尿検査だけですね」
    
    (にょ、尿検査……!)
     深雪の表情は絶望に変わった。
     ようやく尻穴から指が抜かれて、つい安心しすぎてしまったが、事前の通知で採尿が行われる事はわかっていた。
     本人の尿であることを確認するため、放尿は検査医の前でとなる。三人もの男と、加えて男性教師が立っている前で、トイレでもない場所で容器の中へ用を足す。立ち会った教師が確かに司波深雪本人の尿であるとお墨付きを与え、それを検査医が病院へ持ち帰る。何らかの症状が判明した場合はその後本人に連絡がいき、健康であれば通達は特にない。
     しかし、尿を出せと言われて出せるとは限らない。相応の尿意が必要なため、事前の連絡でも直後に水分を取るよう指示が出て、朝も紙コップが学校から配られて、利尿性の高い飲料を一人一杯飲んでいる。
     これを終えてこそ、正真正銘の解放なのだ。
    
            ◇ ◇ ◇
    
     ジョォォォォォオオオォォオォォ――――
    
     尿道口から飛び出る黄色の水が、宛がわれた尿瓶の中へ溜まっていく。万が一にも床を汚さないため下にはタオルが敷かれており、尿瓶も大きめのものが使われている。たくさん出すぎて容器から溢れるといった心配はなさそうだった。
     ジョロロロロロロロロ…………。
     プラスチック容器を打ち鳴らしていた水音は、すぐに水面を鳴らす音へと変化していた。
    (こんなこと……こんなこと……)
     深雪が受けている仕打ちは、幼少の子供か赤ん坊扱いそのものだ。
    (こんな……こんな……!)
     赤すぎる顔を両手で隠し、深雪はもはや目の前の相手の顔さえ見れていない。こんなことは現実じゃない、悪い夢だと言い聞かせ、全力で目を瞑っている。瞼を閉じ、歯を食いしばるという行為には、筋力が許す限り最大限の力が込められていた。
     ジョロジョロジョロ――。
     放尿とは一度始まったら止まらない。トイレそのものを我慢しなければ、途中で中断がしにくいものだ。普通の生活を送る分にはそんな事で困る機会はないが、今ばかりはその生理的仕組みが残酷だった。
     ジョォ――ジョォ――ジョォオオオ――。
     深雪は開脚した股を持ち上げられ、そこへ尿瓶を当てられている。まるで一人でおしっこができない年齢のような扱いを受け、その光景を男性教師と余った検査医はまじまじと眺めているのだ。
     しかも、クラスメイトもいる中だ。
     既に先に順番が回っているか、あるいは後で同じ運命を辿ることに決まっているとはいえ、身内が同室にいる状況での放尿は最も耐え難いものである。ぐすん、と涙ぐんだ声が出て、硬く閉じられた瞼の隙間からも水滴が滲んでいた。
    (お兄様……深雪はこんなことをさせられています……)
     ジョロロロロロロロロロ。
     尿の勢いは少しずつ緩んでいるが、まだ止まらない。温かい尿液はみるみるうちに水かさを増し、大きめだった尿瓶の半分を突破している。
    (……人前でおしっこを致しました)
     ジョロ、ジョロ。
     尿が切れ始める。
    (アソコを見られました……お尻に指を入れられました……。そして、おしっこまでしているのです……)
     深雪の心は懺悔のように語っていく。
    (こんな深雪をどうか嫌いにならないで下さい。どうか……)
     ジョ、ジョロ…………。
     放尿が途切れ、溜まっていたものは全て出し切られた。
    
            ◇ ◇ ◇
    
     無事に生きて帰って来れた。
     生死の危険などありもしないのに、家へついてから深雪が感じたのはそんな思いだ。あんな悪夢のような目に遭わされ、それでも一応死なずに済んでいる。
     一応……。
     ただし、深雪の痴態はきっと教師の記憶に刻まれている。いかに医師にそういう感情がないとしても、男性教師はきっと深雪をオカズにするに違いない。そうはっきりと予想できるほど、教師が視姦していた対象はほとんどが深雪だったのだ。
    「お兄様、何でも一つ言う事を聞いてくれるのでしたよね」
    「ああ、そういう約束だったな」
    「……人の記憶は消せますか?」
     例え世界中から今日の深雪の記憶が消えても、歴史そのものは変わらない。拷問も同然だった出来事の数々は他でもない深雪に刻まれている。
     しかも、だ。
     同じ内容の検査は年に一度行われる。
     過ぎ去った悪夢が再びやって来ることは規定事項なのだ。
    
     深雪は負けません。
     それでも、元気を出して頑張ります。
    
    
    


  • 深雪 羞恥の定期検査 前編

    後編

    
    
    
      定期検査を迎えた当日。
    「嫌ですわ。検査だなんて……」
     登校前の朝になって、深雪は達也の胸元へ縋りついた。
     助けを求めるような上目遣いを向けられて、どうしたものかと困り果てる。我が儘を聞いてやりたいのは山々だが、ここで深雪の願いを叶えても、本人のためになりはしない。
     兄として、言って聞かせなくてはならないところだ。
    「仕方ないだろう? 深雪」
    「ですが……」
    「それが学校で定められた規則なんだ。
     俺にはどうにもできないし、お前自身のためにも検査は受けた方がいい」
     深雪は実に悲しげな表情になり、それを見た達也は胸を締め付けられた。
     妹にきちんと検査を受けさせるのが兄の役目とはわかっているが、問題の検査の厳しさを思うと深雪が可哀想なのも否めない。
     国立魔法大学の付属教育機関である第一高校は、魔法技能師育成の為の国策機関だ。
     この学校のノルマは、魔法科大学、魔法技能専門高等訓練機関に、毎年百名以上の卒業生を供給すること。
     供給を安定させるためには、大切な一科生徒の健康は学校側が責任を持って守らなくてはならない。
     世の中には恐ろしい病気が存在する。医療科魔法の発展により、病気による患者の死亡率は激減しているとはいえ、決してゼロではない。いくら治療魔法が優れていても、自覚症状のないケースでは、本人が病気に気づかない。知らず知らずのうちに病気が進行し、気づいた頃には手遅れという事態を防ぐには、定期的な健康診断以外に手段はない。
     一科生徒が何らかの理由で魔法を使えなくなったり、退学した場合の穴埋め要因として二科生徒がいるとはいえ、やはり一科生徒を卒業させるに越したことはない。万が一の病気は検査で対処できるのだから、しておこうというのが学校側の考えだ。
     残念ながら、検査内容は非常に徹底的だ。診察のため、誤診を防ぐため、どんな小さな病気も見逃さないため、検査を受ける生徒には脱衣が要求される。医師の目線から細かく肌を観察し、わずかな皮膚病さえも早期発見早期治療を心がける。
     必ずしも女医の都合がつくとは限らないので、男の医者が女子生徒の裸を『診る』ケースはザラである。
     定期検査とはいえ、深雪は他人に肌を見せることに抵抗があるのだ。
     だから複雑だ。
     何があっても妹を守るのは達也にとって絶対事項だが、一時の羞恥心から妹を守った結果として、万が一の病気を見逃しては意味がない。
     せめて、達也自身が医者になれば深雪の心も救われるだろうか。
     いや、兄が妹の裸を見ればいいという問題ではない。仮に達也が検査担当に成り代わるような真似が出来たとして、赤の他人よりも家族の視線の方がより恥ずかしいはず。今回ばかりは言うことを聞かせるしかない。
    「検査なんて受けたくありません!
     だって、はしたない姿を晒すだなんて破廉恥じゃありませんか!」
     妹は兄の胸元へ縋りついたまま、体を押し付けながら喚いてくる。
    「深雪、医者という存在に他意はない。
     彼らにはあくまで診察という気持ちしかないぞ?」
     達也はくびれた腰へ手を回し、するりと撫でて抱きとめた。
    「ですが……」
    「医者は患者の身体を診察対象として認識している。
     治療すべき症状を探り、適切な処方を施すに過ぎない」
    「わかっています。わかっていますが……」
     頭でわかっても、気持ちで納得できない、といった素振りだ。
    「ではこうしようか。
     お前がきちんと検査を受けたら、深雪の言うことを何でも一つ聞いてやろう」
     提案した瞬間、深雪の表情がパッと輝いた。
    「な、なんでも!? 本当ですか!」
    「……あ、ああ。あまり無理を言われても困るが、大抵のことなら何でも聞くよ」
    「でしたら、夜中に添い寝をして頂いてもいいのですね?」
     玩具を与えられた子供のように深雪は喜ぶ。
    「何故そんな……。まあ構わないが」
    「一緒にお風呂に入って頂いてもいいのですね?」
    「それは……どうだろうか……」
     そんな事を本気で要求されたら、水着でも着させて凌ぐくらいしか思いつかない。
    「深雪は今のお兄様の言葉を絶対に忘れませんよ?
     今から撤回しても、もう遅いのですからね」
     深雪はきっぱりと言う。
    「……だろうな」
     本気で何を要求してくるかわからない深雪を前に、達也は半ば苦笑いして汗を流した。
     さて、どうしたものか。
     添い寝か風呂までなら一線を保てるとして、もし、もっと生々しい願いを言われたら、果たして約束を守らないと深雪は怒るだろうか。
     添い寝、風呂。
     あるいは別のスキンシップ。
     せいぜいその程度で済むことを達也は願った。
    
            ◇ ◇ ◇
    
     深雪は自分の格好を気にしながら、尻をぺたりと椅子に乗せ、教室に着席していた。両腕で胸を覆い、肩を縮めて、自分の惨めさに震えながら下ばかりを見つめている。深雪以外の女子生徒も深雪とほぼ同じ状態だ。
    (このようなはしたない格好で教室にいるなんて。
     学びの場で罰当たりな気がしてしまいますわ……)
     深雪は自分の惨めさに打ちひしがれた。深雪以外の教室にいる限りの女子生徒も、全く同じ気持ちを抱いている。
     この学校の定期検査では、効率を最優先する関係上、女子生徒であろうとショーツ一枚になるよう指示される。
     もちろん男女別々に実施され、女子の検査が行われる最中、男子生徒は一定エリア内への立ち入りを禁止されるが、仲間内の視線がなければ気持ちが軽減されるわけではない。こうして脱衣の指示を受け、裸体を強要されること自体、女子生徒に屈辱感を与えるには十分だ。
     よって深雪も、他の生徒も、今は服を着ていない。
     そして、その時。
     教室の戸を開いて、男性教師が現れた。
    「ようし、みんな集まったな」
     男が教卓についたことで、深雪はますます頭を落とした。
     効率を考えての裸だが、時おり恥ずかしがって脱がない女子がいるという。それでは逆に時間を浪費するため、女子生徒がきちんと指示に従い、ショーツ一枚になっているかの確認に来たのだ。
     今の高校に担任という制度はなく、授業などは端末によって行われるが、女子の裸という観点からデジタル機器は使われない。もし端末画面を通じて女子の裸を確認すれば、画面を録画ないしキャプチャする事で、生徒の猥褻なデータが保存される恐れがある。教師自身による犯行もそうだが、何よりも外部からのハッキングを防ぐためにはアナログが一番だ。
     よって、男性教師がわざわざ女子の教室へ赴いた。盗撮を防ぐためのアナログでありながら、しかし女性教師を出す配慮はない。裸見たさに男性教師がジャンケンをしていた事実など、深雪には知る由もない事だ。(とはいえ、今のところ盗撮事件は起きていない)
    「起立!」
     教師の指示で、生徒達は一斉に立ち上がる。
    「気をつけ!」
     両腕で胸をガードしていた生徒の面々は、躊躇いながらも腕を横へ下ろしていき、よそよそしく姿勢を正した。
    (……ああ、惨めです)
     ぐったり頭を下げながら、顔を赤くして深雪も気をつけの姿勢を取った。こんな姿にさせられて、腕で胸を隠すことだけが、この状況での唯一の羞恥心を和らげられる行為だが、教師の指示一つによってそれさえも封じられた。
     起立、気をつけで背筋を伸ばしたショーツ一枚の女子達を眺め、教師は一人一人の顔をゆっくりと確認しながら、きちんと脱いでいることを確かめる。
     特に教師の目を引くのは、深雪の裸体だ。
    (……あの先生、こちらを見ていらっしゃるわ)
     深雪は初々しく、しかし悔しげに恥らった。
     できることなら、初めて肌を見せる相手は兄が良かった。それをどこの馬の骨とも知らない教師に見られるなど、無念で無念でたまらない。今すぐにでも逃げ出したいくらい、この状況が嫌で仕方がなかった。
     深雪はふんわりと雪を積もらせたような肌をしている。きめ細かく、粉雪がキラキラ光るような雪原の素肌に、芸術的カーブをなす腰のくびれ。プルンと丸く膨らむ、マシュマロのように柔らかい乳房からは、可憐な桜色の乳首が突起していた。
     ショーツはどこまでも白に使い薄緑色だ。淡いエメラルドに輝くような布の生地には、グリーンのレースが通され、優美で華やかに大切な部分を包んでいる。おしゃれ感がありながらも派手すぎず、むしろ大人しく見える。清楚な深雪に良く似合ったショーツである。
     それを、教師は眺めた。
    (どうして深雪ばかりを……)
     深雪はみるみると赤面し、まともに前を向けなくなり、俯いた。教師はここぞというばかりに裸をチェックし、気に入った子の裸体を網膜に焼き付けているが、ひときわ美麗な深雪に視姦が集中するのは当然のことだった。
    「では廊下に並んで移動する。全員、外へ出ろ!」
     女子達は再び胸を覆い隠して、ゾロゾロと教室を抜けていく。廊下で一列に並び、深雪もその順番の中に加わり、廊下移動が開始された。
    (こんなのってありませんわ……)
     深雪は嘆いた。
     服を着た男の背中に、ショーツだけの女子がついていく。教師は裸の生徒を連れ歩く優越感に浸り、深雪達は奴隷のように扱われる惨めさに打ちひしがれる。腹、腰、内股。本当なら衣服に包まれている部分に風の通気が触れ、自分が裸であることを余計に実感させられた。
    (こんなのって……)
     脱衣指示には靴下も含まれるため、深雪を守る布は完全のショーツのみ。生徒はそれぞれスリッパを履き、肩を縮めながら無言で歩く。深雪はただ、奴隷の烙印を押された気分を味わいながら、悲しい気持ちで歩みを進めた。
     こんな検査は嫌がる女子は必ずいる。抗議の声が上がった事も過去にはあるが、効率良く生徒の健康を管理するのも学校の義務だとして、それらはことごとく一蹴されてきた。
     この学校には入学した頃から優等生と劣等性が存在する。
     しかし、女子生徒の優等生の立場の裏には、定期検査での辱めを受ける対価があった。
    
            ◇ ◇ ◇
    
     第一に行われるのは内科検診。
    「司波深雪です。よろしくお願い致します」
     深雪は礼儀正しく会釈をしてから、内科医の前に置かれた丸イスへ腰掛ける。ショーツの尻がぺたりと潰れ、もじもじと手遊びでもするように恥らった。
     診察が開始され、乳房の狭間へ聴診器が当てられる。金属の冷気が皮膚に染み、深雪の恥じらい顔が染まっていく。
    (男性の手がこんなに近くに……)
     ふんわりとした優しい膨らみの隙間に手を置かれ、今にも接触してきそうな緊張で深雪は硬くなる。真っ赤な顔を強張らせ、緊張で上がった心拍数が内科医の耳に伝わっていた。
    「息を吸って?」
    「すー……」
    「吐いて」
    「はー……」
     内科医な淡々と呼吸を取らせ、聴診器の音に集中している。美しい乳房に関わらず、彼は医師としての診察を真っ当するのみだ。
     しかし、立ち合いの教師の視線がある。
    (み、見てますのね……)
     深雪のちょうど横に立つ男性教師は、遠慮も無しに深雪を見下ろし、上から乳房を眺めていた。舐めるような視線が這い回り、深雪は悲劇を嘆く気持ちに浸っていた。
     じぃ、と。
     まるで自分には見る権利があると言わんばかりに、男性教師は腕を組んで胸を張り、やや偉そうな顔で深雪の胸を凝視する。堂々とした視姦で、誤魔化したり、目を背ける素振りは一切なかった。
    (お兄様でもない殿方にこんなにも肌を……)
     深雪は顔を歪める。
     ただ、胸を見られる恥ずかしさだけではない。緊張か、生理現象か。深雪の淡い乳首は突起しており、摘めばコリコリしているのがわかるほど、最大限に尖っているのだ。
     体が反応してしまっている。
     それを見られる。
     屈辱に重ねて、二重の羞恥が深雪を苦しめ、顔つきはこれ以上ないほど歪んでいった。羞恥心を叫ぶ赤面の表情が手に取るようにわかった。
    (こんなことに耐えろだなんて、お兄様は残酷ですわ)
     聴診器が胸元を動き、今度は右乳の下へ当てられる。それが左乳の下、それぞれの乳房の真上と、移動を繰り返す。ひとしきりペタペタ動いた後は、背中を向けるように言われて深雪はくるりと丸イスを回転させる。
    「深呼吸お願いします」
    「すー……はー……」
     横目でチラチラ、教師の視線を気にしながら、深雪は大きく息を吸って呼吸した。
     ひとしきりの聴診が済むと、内科医はうなじへ手を伸ばしてリンパを調べ、問診で最近の体調や生理は順調かなどの質問を行い、それらが終了した所で第一の検査からは解放された。
    
            ◇ ◇ ◇
    
     第二、第三の検査。
     眼科検診、耳鼻科検診では胸を隠していられたのが幸いだ。診る場所は顔にあるので医師の視線が乳房へ当たることはなく、そして腕をどかす必要性もない。
     視姦から身を守れる安心感があった。
     だが、次の検査を思うと頭が下がる。
     次はモアレ検査が控えているのだ。
    
            ◇ ◇ ◇
    
     モアレ検査は脊柱検査・側わん症検査とも呼ばれ、骨格の歪みを調べるものだ。骨盤から背中全体にかけて、背骨や肩の肩甲骨が正常に整っているかを確かめ、もしも歪みが確認されれば、専門家の指示に従い矯正しなくてはならない。
     検査方法はモアレ式体型観察装置による撮影検査、または視触診。
     学校によって、どちらか、または両方が採用されている。
     脊柱側湾症の多くは小学四年から中学三年に発生するとされ、学校健康診断においてもその時期に検査が実施される場合が多い。深雪が通うのは高校だが、注意が必要な時期が過ぎた女子生徒達にも、念には念をとこの学校では検査を行う。
     そもそも健康診断自体が、自身に病気がないかを念のために確認する行為だ。実際に症状が発見される人数比は少ないが、その少数を炙り出すことに意味がある。
    「司波深雪さん」
    「はい」
     順番がまわり、名前を呼ばれた深雪は列の先頭から前へ出る。
     視触診を受けるため、深雪は検査担当医に背中を見せた。
     ここでは視触診と撮影による検査の両方が導入されているが、まず初めに行うのは視触診の方である。そちらを終えてから、同じ室内にある別の列へ並び直し、そして撮影を受けてもあれ検査は終了となる。
     深雪はその視触診の段階だ。
     直立で姿勢を正し、背筋を真っ直ぐ伸ばす。その正面に男性教師は堂々と立ち、深雪の全身を頭の上からつま先まで、思うままに眺め始めた。
    (そんな場所から……)
     深雪は赤らんだ。教師が存分に視線を突き刺し、胸とショーツを凝視し、目を怖いほど大きく見開いている。だというのに、検査中である深雪は勝手に動くわけにはいかず、背筋を伸ばした姿勢をきちんと保たなくてはならない。
    「動かないで下さいね?」
    「……は、はい」
     声も震えた。
     モアレ検査を担当する男が、深雪のきめ細かな白い背中に顔を近づけ、背骨が歪んでいないかを調べ始める。触診のために手をあてて、皮膚の内側を探る手つきで真っ直ぐ骨を辿っていく。指のくすぐったさに身悶えし、息が当たってくるのに甘く疼くような鳥肌を立てていた。
     後ろで背中を観察する男と、前から深雪を眺める教師。
     両面焼きのように前と後ろを視線で焼かれ、それでも耐えることしか許されない。
    「前屈して下さい」
    「……はい」
     腰をくの字に折り曲げて、担当者は肩甲骨をチェックした。もしも骨格に異常があれば、背中を前へ倒した際の肩の高さが左右でズレる。しかし、特に異常のみられない深雪の肩甲骨は正常に整っていた。
     すると、まず視触診は終了する。
     問題の撮影での検査へ移ることになり、列へ並んだ深雪はやがて順番を迎える。
    「では、撮影板の方へ背中を合わせて下さい」
     撮影での検査にはモアレ式体型観察装置という専用機器が使用され、背中の画像を審査することにより歪みの有無を正確に判断する。その際に透明な撮影板へ背中を合わせ、両足はきちんと揃えて気をつけの姿勢を取る。
     今、撮影位置についた深雪の背中へ向け、撮影者がカメラを覗いている。検査専用のカメラとはいえ、機材を知らない生徒にとっては、それは普通のカメラを三脚台に立てて女子の裸を撮影する光景に見える。
     長い黒髪は前へどけ、深雪はきちんと背中を露出した。
    「ショーツを下げて下さい」
     深雪の中で、緊張感が一気に高まった。
     骨格の検査は尾てい骨にかけてまでを調べるため、履いているものを一定の位置まで下げる必要がある。尻たぶを丸ごと出す必要はないが、半分は露出しなければ、尾てい骨の位置には届かない。
     当然、教師は深雪の尻を楽しみにしている。
    (……お兄様はきちんと検査を受けるようにおっしゃりました。
     これはお兄様の言いつけなのです。深雪はきちんと我慢します)
     ただ兄を想うことで心を保ち、嘆きたい気持ちを堪えながら、深雪は両手でショーツをずらしていく。下げられていく布地から尻の割れ目が顔を出し、その直線のラインはみるみる長さを伸ばしていく。
     やがて、半分。
     深雪の可愛いお尻が綺麗に半分、ショーツのゴムに締められ、その部分だけ潰されながら露出した。
    
     じぃぃぃぃぃぃぃぃ……。
    
     教師が、撮影者が、お尻を見ている。
     一人ははしたない気持ちで、一人はただ検査を真っ当する気持ちで、どちらにせよ視線は深雪のお尻へ集中し、あまつさえカメラのレンズが向いている。ただの視線が針で刺される苦痛に感じて、深雪は硬く歯を食いしばる。
    
     パシャ!
    
    (……と、撮られましたわ)
    
     パシャ!
    
    (――に、二枚目!?)
    
     パシャ!
    
    (深雪のこんな姿を……)
    
     背面の画像なので顔は写らず、用が済めば削除されるが、だからといって裸にカメラを向けられて良い気持ちはしなかった。
    
    
    
    
    


  • 千斗いすずの身体検査

    
    
    
    
     これは千斗いすずにとって、かつての体験――。
    
         †
    
     いすずは古くからの部門の家の出身だ。
     今ではこの甘ブリに務めているが、その前は魔法の国メープルランドで近衛兵をやっていた。
     兵士であった以上、当時の軍規は厳しかった。
     何せ身体検査の際は女だろうと全裸になり、頭の上から足の指先まで、それこそ体中をくまなく調べていく。国をお守りする兵士に健康問題があっては務まらないから、普通の診察や健康診断なんかより、よほど詳しく診るわけだ。
     検査官の元へ入室して、服を脱ぐ。男性担当者が見守る中で上下とも白の下着姿となり、まじまじとした視線を気にしながらブラジャーを取り外す。ショーツを脱ぐことで丸裸となったいすずは、それでもいたって平然としてみせた。
     地上の言葉でポーカーフェイスというのだったか。
     いすずはそういう顔をしてみせながら、胸やアソコを隠そうとする気配すらなく、きちんと両手を下に伸ばして、気をつけの姿勢で背筋を正していた。
     もちろん平気なわけがない。
     自分はどうも、非常事態の時ほど冷静に振舞える気質のようだ。だから過剰に恥ずかしがって喚くような真似は決してしないし、すぐそばで爆弾が爆発しても、顔色一つ変えずにいられるだろう。
     しかし、これほど恥ずかしいことはない。検査を実施する担当者は男性医で、立ち合うためにもう一人の男がいる。検査の進行に合わせて書類を記入する係として、さらにもう一人いるから、合計三人に囲まれていることになる。
     服を着た異性の中で、それも密室で、自分だけが全裸だなんて落ち着かない。誰にも見せたことのない胸が名も知らぬ男の視線を浴び、お尻やアソコにも痛いほどに突き刺さる。死ぬほど落ち着かないし、そわそわする。何より、恥ずかしさで死にそうだ。
     相手も仕事でやっていることはわかるのだが、きっと欠片の下心も持つなというのは無理な話で、事務的な表情をした裏では何を考えているのかわからない。
     いや、見慣れているから、もはや何も感じなかったりするだろうか。
     せめて、そうであって欲しい。
     いずれにせよ、三人の男の視線は全ていすずに集中していた。
    
    
     最初は目や鼻の検診から始まり、歯を診たあとで、だんだん肌を調べていく。呼吸器や心臓のために聴診器を使い、側弯症を調べるために背骨と骨盤を観察する。
     それから、胸郭異常のチェックで触られる。
     男が淡々と、いすずの胸を揉む。べったりと包むようにしてきた男の手が、自分の乳肌に指を沈めて、乳房を調べている。皮膚を調べるために表面をそーっと撫で、乳輪に指を当ててぐるぐるまわる。乳首を押したり、摘んで引っ張ったりもした。
     下から持ち上げ、ぷるぷる揺らし、乳揺れの観察までされてしまった。
     とても辛いものがあった。
     腕や足、腹や背中も含めて、まさに全身の視触診を受けるのだから、乳房だけでは終わらない。両腕を触れまわされる分にはまだいいが、そこが終われば別の箇所を触られて、腰のくびれも撫でられる。
     アソコとか、お尻といった箇所も、当然やられる。
     男が自分の背後にしゃがみ、お尻に顔を近づけた挙句に尻たぶを鷲掴みしてきた時には、より恥ずかしい気持ちになった。
     お尻の穴まで見られてしまう。
     いすずの尻の丸みに合わせ、表面をひとしきり撫で込んだ後は、さらに指を沈めていたる箇所を揉み込んでいく。まずはまんべんなく揉みしだき、あとは上の方から下の方まで、摘むような揉み方でチェックを進めたあとは、とうとう肛門の視触診だ。
     割れ目を開くことでお尻の穴をじっくり見られ、指でぐにぐにと触られる。門なんかに男の指の感触があるなんて、いすずには全く信じられないことだった。
     いっそ死にたい。
     だが、これを耐えても性器の確認が待っている。
     今度は茂みを掻き分けるようにされ、秘所の割れ目を指でなぞり上げられた。中身を開いて観察し、血色を確認している。
    「問題ありませんね」
     まるで商品の状態チェックであったかのように、男は事務的な顔でそう述べた。
    「あとは直腸を確認しますので、壁に両手をついて下さい」
    「…………こうかしら」
     いすずは冷静な顔つきで従ってみせたが、やっぱり平気なわけがない。
     全裸のまま尻を思い切り突き出す姿勢だなんて、果たして何の恥じらいも抱くことなくやれる女が世の中にいるのだろうか。
     男は医療用手袋をはめた指にワセリンを塗り、滑りをよくした指先を肛門に突き立てる。
    「んっ、んぅ……」
     尻に異物が入り込む違和感に、喉を引き絞ったような呻きが漏れ、男の指が根元まで挿入された。
     いすずは今、かなりの屈辱を体験しているのだ。
     そして、尻穴に指の入った光景を、残る二人の男もまじまじと眺めている。こんな自分の状況を思うと、恥ずかしいやら情けないやら、そんな感情で溢れて頭がどうにかなりそうだ。
    
     ずぷっ、ずぷぅ……。
    
     穴を出入りしながら、男は指先で腸壁を探っている。
     それは完全に、品質チェックを行う仕事の顔だ。
     この場にいる三人の男性の気持ちは、家畜の健康管理でもしている気分にすぎないのだ。
    
     ずぷ、ずぷ……。
    
     いすずは必死に堪えていた。
     壁にあてた両手を拳に変え、爪が食い込むほどに力を加えて震わせて、唇を丸め込んだ表情で耐え忍んだ。
    
     ぬぅぅ――。
    
     と、指が抜かれる。
    「終了です」
     一瞬、力が抜けて、くたりと倒れそうになる自分がいた。
    
    
    


  • 妖精弓手の身体検査

    
    
    
     冒険者とは所詮、信用や信頼がなければ無頼漢に過ぎない。
     そして冒険者ギルドで扱っている商品とは、信用と信頼に他ならない。
     信用と信頼を得るために、ギルドがいかに冒険者を管理しているかのポーズがいる。
     それが定期の身体検査だ。
    「なッ、何よ! 男だけって!」
     信じられずに喚く声。
     検査対象は妖精弓手だった。
     しなやかな全身を狩人装束で覆い、背には大弓。
     見目も麗しい細見の女だ。
     その耳は、まるで笹歯のように長く伸びている。
    「女は担当から外れたのだ」
    「色々と都合というやつだ」
    「何、ただの検査だ。気にする必要はない」
     男達は二十人近い。
     別に妖精弓手がどうということではない。
     しかし、個人で力を持つ冒険者が、その気になって暴力で抵抗すれば太刀打ちできない。
     誰であれ、対策として人数を入れ、さらには依頼で雇った冒険者まで立ち合いにつける。
    「オルクボルグ! なんでアンタまでいるのよ!」
    「頼まれたからだ」
     こんな場所でも鎧を纏い、兜も脱がない男がそこにいる。
    「親切な俺がフォローするけど、こいつは昇級の査定に立ち会うと思っていたらしいぜ」
     この場で一番ニヤけている雇われ男は、女の裸目当てに依頼を受けた。
     信用や信頼を損ない、昇格の芽を失うが、雇われ男はそれでも裸を見たがる人間だった。
    「本当でしょうね?」
     疑いの眼差しを、妖精弓手はゴブリンスレイヤーに向ける。
    「以前。受付嬢に頼まれたからな」
    「ふーん? 一応信じてあげるけど、知り合いまでいるっていうのに……」
     身体検査においては脱衣が要求されている。
     巻尺で胸囲などを計測し、穴の中身を調べて、記録に書き込み書類を作る。
    「俺も知り合いに見られた」
    「オルクボルグも?」
    「受付嬢だ」
    「そ、そう……」
     諦めて脱ぐしかない。
     妖精弓手は背中の大弓と、腰の矢筒をテーブルに置く。
     首の結び目を解き、マントを外した。
     ブーツを片方ずつ、グローブも片方ずつ、生の手足が曝け出される。
    「お? お?」
     雇われ男は明らかに期待の眼差しを浮かべた。
     ここから先は、一枚脱ぐたびに露出度が上がっていく。
    「そんなに珍しい? これだから男って」
     妖精弓手は嫌そうな顔をする。
    「俺はアンタみたいな美人が来るって聞いて依頼に飛びついたぜ」
    「最低……」
     美人が脱ぐのに、注目しない男はいない。
     露骨にニヤけるのは雇われ男一人だが、この場の男達も内心期待を膨らませる。
     妖精弓手が衣服の丈を持ち上げ、脱ぎ去っていく瞬間を誰もが見逃すまいとする。
     視線の重圧をひしひし感じ、脱ぎにくくなる一方だ。
    「余計なお世話かもしれんが」
     ゴブリンスレイヤーが言う。
    「余計な口を開くべきではない。降格や依頼停止処分を受ける可能性がある」
    「へいへい。なら黙ってますよ。へへっ」
     ゴブリンスレイヤーのおかげで、雇われ男のお喋りはなくなるが、顔つきは同じ。
     ニヤニヤして、妖精弓手の脱衣に好奇心を膨らませている。
     一応お礼は言うけどと、ぶつぶつと呟きながら、妖精弓手はいよいよ脱ぐ。
     視線という視線の中で、だんだんと丈を持ち上げていく。
     上半身はブラジャー一枚となった。
    「別に大したことないわよ? どうせただの検査だもの」
     ベルトを外し、下も脱ぎ、妖精弓手は完全な下着姿。
     上下とも、下着は薄緑だ。
     頬に朱色が差し掛かり、それが耳にも広がっていく。
     声は少し震えていた。
    「こんなのさっさと済ませてやるわ」
     ブラジャーの留め具を背中で外し、妖精弓手は控え目な乳房を露出した。
    「~~~~~~っっっ!?」
     いざ晒せば、妖精弓手は想像以上に顔を歪め、赤面の色を濃くしていた。
    「大丈夫か。熱っぽいぞ」
    「うるさいわよ! オルクボルグ!」
    「すまん」
    「あなたも黙ってて頂戴」
    「そうしよう」
     ゴブリンスレイヤーは黙り込む。
     次が最後の一枚だ。
    「さ、さてっ、あとはこれだけねっ、これ脱いだらさっさと済ませて頂戴っ」
     そう言って妖精弓手は腰をくの字に、緑のパンツに指をかけるが、なかなか脱がない。
     いや、脱げないのだ。
     乳房を晒しただけでさえ、空気が丸ごと一変した。
     最後の一枚を失えば、男達の視線がより強く、雇われ男もよりニヤける。
     しかし、ここまで来て脱ぐに脱げず止まったままでは、余計に長引く。
    「ふん! どうってことないわよ!」
     そう主張する妖精弓手の頭は沸騰している。
     パンツを下げ始めれば、尻に視線が集中していく。
     腰をくの字にした脱ぎ方が、後ろに向かって少しずつ尻を見せているのだ。
     パンツが下がるにつれ、尻の割れ目の線が伸び、露出度愛が上がっていく。
    「さ、さあ! 脱いだわ! すぐ! さっさと済ませて!」
     完全な丸裸となり、妖精弓手の両手は自然に動き、大事な部分を覆い隠す。
     アソコを手の平にぴったり覆い、腕で乳房を力強く守っている。
     太ももまで強く引き締めていた。
     この中の誰か一人にでも、アソコを見られる可能性をなくそうとする。
     肉体がそのように動くのだ。
     強張った肩が高らかに持ち上がり、唇の周りにある表情筋肉が強く力む。
     頬も硬く、目は涙ぐむ。
     そして、赤く染まりり上がった首から上は、まるで生まれつき肌の色が違うかのよう。
    「隠していては時間がかかりますよ?」
     男達の中から、一人が言った。
    「わかってるわよ!」
     妖精弓手は自分の両腕を動かせない。
     隠そう隠そうとする思いは強く、体がなかなか動かない。
     ただ気をつけの姿勢を取るだけで、妖精弓手にとっては重労働になっていた。
    「これで文句ないでしょ!?」
     平らめの、控え目な乳房から乳首が尖る。
     あれほど隠したワレメの部分も、男達の視線の中に晒されている。
     妖精弓手は無数の視姦の中に放り込まれた。
     じいっ、じぃぃぃっ、じっ、じい、じぃぃ――二十人以上の目。
     ありとあらゆる視線が、妖精弓手の表情と身体を見比べる。
     乳房を眺め、アソコを見る。
     尻の丸みを観察する。
    
    *
    
     これからブラジャーが見えようというところで、その顔は赤らみ始める。
     腰はくの字に折れ、知らず知らずのうちに後ろへ尻を突き出してしまう。
     ――と、こういったことを彼は速記していく。
     検査の記録係なのだ。
     妖精弓手の言葉、表情、様子は何もかも書く。
     記録係のペンは踊るように走り抜け、妖精弓手の指先一つの挙動も見逃さない。
     面白い、楽しいに決まっているからだ。
     男の裸ばかりで飽き飽きしていた。
     そんな時、妖精弓手のような美貌の裸体に浮かれないはずがない。
     妖精弓手の裸体がいかに艶やかで良いものか。
     記入係は力の限り書き尽くす。
    「ああもう! 時間かけないでよ!」
     巻尺でスリーサイズを測ろうとする男に、妖精弓手は喚いていた。
     誰だって、この面白い時間を早急に切り上げるのは、勿体ないと思うはず。
     男はゆっくりとにじり寄り、胸に巻尺を巻き付けたあと、目盛り合わせに手間取った。
     わざと、手こずってみせているのだ。
    「こんなのいつまで……」
     巻尺によって隠れた乳首が、乳輪だけをはみ出させる。
     やっと数字が読まれると、記録係は当然書き込む。
    「――!?!?!?!? こ、声が大きいわよ!」
     バストサイズを大声で発表されたことで、目を大きく見開き、パチクリさせた。
     面白いくらいの動揺だ。
     続けてアンダーバストとウェストの計測。
     もちろん、若干手こずってみせている。
    「本当にいちいち……!!!」
     数字を読めば、そのたびに妖精弓手の顔は歪んだ。
     表情がコロコロと移り変わって、わかりやすく恥じらう。
     そんなもの、見ていて飽きないに決まっている。
     ヒップサイズを測る時だ。
    「――ひィっ!?!?」
     尻にぺたりと手を置く測定者の行動はナイスと思った。
     触られた瞬間の、何よりもびっくりした顔。
     それに、背筋を反らさんばかりにピンと伸ばす反応。
     傑作じゃないか。
    「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと……ッ!?」
     顔つきが慌てふためき、口を大きくパクパクさせる。
     尻をよく可愛がり、撫でている男の手つきの、なんとねっとり厭らしいことか。
     どんな感触がするだろか。
     きっと、とても柔らかい。
     こちらからは尻が見えないのが実に惜しい。
     が、指をぐにっと食い込ませ、揉むことまでしているはずだ。
    「いい加減に――」
     怒った妖精弓手が、咎める言葉を放ちかけると、その瞬間にすっと手が離れた。
    「むぅ……」
     何も言えなくなり、黙る妖精弓手の、ムスっとした顔の可愛さ。
     尻に巻尺を巻き付け、ヒップサイズを読まれる直前になると、妖精弓手は目を伏せる。
     ぐっと真横へ瞳をやり、俯いている妖精弓手は、まるで判決を下される前の罪人だ。
     大きな声で発表されることを覚悟していた。
    「――――っっっ!!!」
     そして、読まれた瞬間の、ぐっと唇を引き締めた顔もなかなか。
    「これでスリーサイズは済んだぞ?」
     と、ピシっと尻を叩かれると、いい音がここまで聞こえて来た。
    「やめなさいよ……ッ!?」
    「まあまあ。あとは乳首と性器と肛門の計測だけだ」
     妖精弓手には非情な宣告も同じだろう。
     そう聞かされただけで、うぐっ、と息を呑んでいた。
    「オルクボルグ! ここで見たもの聞いたものは全部忘れること!」
     矛先はゴブリンスレイヤーに向けられる。
    「善処しよう」
     彼はただ淡々と返すのみ。
     どうせ忘れやしないだろう。
     知り合いの裸を見て、記憶に焼き付けようとしない男はいない。
     記入係はぐっと期待を寄せ、さらなる計測の場面を待ち構えた。
     
          *
     
     測定者の男は定規を片手ににじりよる。
     物の長さを測るだけの道具。
     今の妖精弓手には、これが剣や弓のように恐ろしいはずだ。
    「や……嫌……」
     ともすれば、後ずさりをして逃げ出しそうな妖精弓手に興奮する。
     自分に怯える女の、なんといいことか。
     女を襲うやれ盗賊だのゴブリンだのは、きっとこんな気持ちに違いない。
     ある意味、冒険の方がマシではないか?
     こちらが野蛮な小鬼なら、向こうは好きに反撃すればいい。
     身体検査の場で、それはできない。
     逃げることもなく、戦うこともなく、定規を持つ男の接近をただ受け入れる。
    「測るぞ? 動くなよ?」
     ぺたりと、小さな胸に定規を当てた。
     薄らかな山が定規の形に沿って潰れ、乳輪の部分に目盛りが合わさる。
     ここまで迫れば、口付けさえできるほど、妖精弓手の顔は目前。
    「何よ……」
     顔を反らしきっている妖精弓手の、尖った耳の先っぽが、測定者を向いている。
     その「何よ」という問いに向け、測定者は乳輪の直径を発表した。
    「……ッッ」
     歯を食い縛っている様子がわかる。
     拳も握り締めていた。
     さらに乳首のサイズも測り、次は下の方の計測だ。
    「立ったままでは測りにくいな。テーブルで横になって、脚を広げるんだ」
    「んな……ッ!? で、できるわけ……」
     さらに追いつめられた顔をして、頬を引き攣らせる。
    「さっさと済ませたいんだろう?」
    「それは……そうだけど……」
    「やるしかないな」
    「あ、ははっ、本当に……最悪……ッ!」
     もう笑うしかないといった心境なのか。
     テーブルに乗り上がり、その上で仰向けになる。
     男達が総じて一歩距離を詰め、より見世物らしくなっていく。
     妖精弓手は両腕でがっしりと胸を隠す。
    「何よッ、いいでしょ別に!」
     測定者がその挙動を伺うと、こちらは何も言っていないのに喚いてきた。
     自分もテーブルに迫りつつ、わざと横へどいてやる。
     しっかりと閉じた脚が左右に開く瞬間を、みんなに見てもらおうという計らいだ。
     今、妖精弓手は再びアソコを隠している。
     足首がクロスのように重なり合い、その下に隠れて性器は見えない。
     一度視線から保護したものを、再び視姦に曝け出すのは辛いだろう。
    「何よみんなして。そんなに見なくてもいいじゃない……!」
     妖精弓手は目に恥辱を浮かべ、一筋の涙までこぼしていた。
    「早く済まそうじゃないか」
    「だから、わかってるわよッ!」
     見せればいいんでしょ! と、やけくそに開脚する。
     その解放の瞬間を大勢で目撃し、大勢の目がワレメを各々の記憶に刻む。
    「ところでオナニーをしたことはあるか?」
    「はぁ!?」
     目が大きく見開かれ、驚いた顔で妖精弓手は喚き散らす。
    「あるか?」
    「あるわけないでしょ! 何聞いてんのよ!」
     さて、この瞬間だ。
    「嘘だな」
     一人の男が言う。
     ここには《看破》を使う男もいる。
    「やめなさいよ! 奇跡をつかってそんな質問!」
    「これは面白い。ゴブリンスレイヤーとの性交を妄想してオナったのか」
     その小鬼殺し本人がいる中での暴露である。
     いっそ全員が見知らぬ他人であった方が、いくらかラクだったろうに。
    「いやぁぁぁぁ! 聞かないで! 聞かないでオルクボルグ!」
    「善処しよう」
    「兜の下の素顔を知っているらしいな。それで、エロい目で見るようになったか」
    「実は俺も見たことあるぜ。ゴブリン一匹、金貨一枚の後にな」
     雇われ男は実に久々に口を開いた。
    「なかなかの美形らしいな」
    「そりゃあ、妄想のネタの一つにもしようものか」
    「はははは」
     妖精弓手のオナニーを肴に雑談の輪が広まっていく。
     それでいて、足を閉じようとする気配があれば、必ず誰かが注意した。
     誰もがアソコを眺める。
     測定者だって眺めている。
     妖精弓手のこの性器が、まさにオナニーに使われたものだからだ。
    「いいから! いいから早く終わりなさいよ!」
     必死に喚いていた。
    「その通りだ」
     その時、ゴブリンスレイヤーが言う。
    「身体の計測と聞いている。オナニーについて尋ねるのは何故だ」
    「なあアンタ。あいつはお前でオナニーしてたんだぜ?」
     雇われ男がゴブリンスレイヤーの肩に絡んだ。
    「そうらしいな」
    「もっと知りたいとは思わないのかよ」
     悪ガキが優等生をイタズラに誘おうとする嫌らしい笑みそのもの。
    「何をだ」
     ゴブリンスレイヤーの表情はうかがい知れない。
     そもそも、素顔は兜の中にある。
    「は、何をって。指は挿れるのかとか、どんなプレイの妄想かとか」
    「性欲。好奇心。いいだろう。そういうものが俺にもあることは認めよう」
    「だろ?」
    「だが、今回の身体検査には関係がない。俺が受けた依頼は検査への立ち合いだ」
     淡泊な反応に、さすがの雇われ男も白けていた。
     それが伝染したように、他の男達も冷めていく。
    「さて。ま、続きといくか」
     気を取り直し、測定者はアソコのワレメを定規で測る。
     その数字を大きな声で発表する。
    「くっ――!!!!」
     それに妖精弓手は顔を歪める。
     今度は中身を開いた。
     なるほど、いい色合いをしている。
     綺麗なピンク色の中身は、膣の奥から滲む愛液で、キラキラと輝いている。
     クリトリスのサイズを測り、膣口の直径も読み上げた。
     性器について調べ尽くされ、妖精弓手の頭は沸騰している。
     検査マニュアルによれば、あとは穴の中にも――。
    
         *
    
     いやぁぁぁぁぁ! 指がっ、指が入って来る!
     濡れたアソコは簡単に指を呑み込み、きゅっと下腹部が引き締まる。
     ――そんなとこ、なにもないわよぉぉ……。
     膣内に収まる指の存在が、妖精弓手の意識をごっそりとかき集める。
     太く、立派で、関節が骨で膨らむ指だ。
     膣壁をなぞり、探られると、こんな大勢の中で妖精弓手は乱れかねない。
     お願い……やめて……!
     感じている姿を誰にも見られたくなんてない。
     妖精弓手のまぶたはぎゅっときつく閉じ合わさり、開く気配はどこにもない。
     しかし、クリトリスに指が当たった途端だ。
    「――ひっ」
     甘い痺れが弾け、驚いて目を開くと――。
    
     じぃぃぃぃぃぃ……じぃ……。
     ジィィィ――。
     じっ。じっ。じろっ。
     ジィィ――ジィ……じぃ……。
    
     たくさんの視線が、自分に降り注がれているのを目の当たりにした。
     テーブルで仰向けの、それも脚を開いた姿を、集まってみんなで眺める。
     覗き込んで来る顔という顔が、ニヤっと歪んでいた。
     私……こんなにたくさん見られて……。
    「よし、次だな」
     測定者が指をアソコから引き抜くことは、妖精弓手にとって救いにならない。
    「四つん這いになってもらうぞ」
    「~~~~~っ!?!?!?」
     頭が破裂するほど感情が膨らんで、妖精弓手は顔中から汗を噴き出す。
     顔の汗だけで、首から上の肌一面がまんべんなくしっとりしていた。
     赤面の生み出す熱が、どこか汗を蒸発させているようで、顔から蒸気が出て見える。
    「す、すぐ……すぐ……終わるっ、わよ……ね……?」
     どこか壊れた声を履き、妖精弓手は身体を返す。
     四つん這い。
     それも、胸と頭は低くして、尻だけを高くせよとの要求だ。
     ――こんなお尻見せびらかすみたいなポーズってある!?
     尻の割れ目が開け、肛門が丸見えとなる体勢は、そこに視線を集中させる。
     ――やだっ、お尻の穴が……!
     視線という視線の数々を感じれば感じるほど、妖精弓手の肛門はヒクっと動く。
     ぺたりと手の平が乗せられて、妖精弓手はぶるっと震えた。
     生温かい、測定者の手が、がっしりと尻肉を掴む。
     次にあるのは定規の固い感触と、そう来れば直径が発表された。
     ――お尻の穴まで測られて……もう死にたいわよぉ……!
    「最後に肛門の皺の数を数える」
    「な、何よそれ!」
     そんなっ、まだこの格好でいろって!?
     じょ、冗談じゃ……。
    「ゴブリンスレイヤー。しっかりと立ち合ってやれ」
    「わかった」
     冗談じゃないわよ!
     尻の真後ろの位置に、鎧を着込んだ気配が立つ。
     身内にさえ、肛門がよく見えている状態で。
    「一、二、三、四、五、六――」
     カウントが行われ、皺の本数まで知られることとなった。
    
         *
    
     オルクボルグは何もかも知っている。
     あの名も知らぬ男達も……。
     嫌、嫌すぎるわよ……こんな……誰か全員の記憶を消してよぉ……。
    
    
    


  • ハミィの全裸検査

    
    
    
      広大な宇宙の中では、惑星同士で行う星間戦争といった危険宙域も存在する。
     そこへ足を踏み入れてしまったキュウレンジャーから、一人の戦士が囚われの身となってしまった。
    
     ハミィ。
     カメレオングリーン。
    
     敵対国の兵士ではないかと疑われ、圧倒的兵力によって捕獲された彼女の状況は、既に変身アイテムを奪われて、何人もの兵士から銃口を向けられている。
    「脱げ」
     命じるのは司令官の立場にある男だ。
    「こんなところで脱げとか、超ウケるんですけど?」
     ハミィが反抗的な態度を見せるや否やだ。
     司令官は指と顎で合図を出し、一人の兵士に発砲を促して――
    
     パァン!
    
     まるで膨らませたビニール袋を力強く叩いて破るかのような、しかし確実に鼓膜を貫く銃声が響いた時には、ハミィの衣服で肩口が破けていた。
    「これは脅しではない。こちらとしては君を今すぐ射殺しても構わないのだよ。情報を吐いてくれそうな捕虜は他にもいくらかいるからね」
    「だから私は――」
    「脱げ」
     ハミィの反論は重々しい一言によって封殺される。
     わざわざ戦争地域に踏み込んだのは、そこにキュータマがあるとの情報を掴み、手に入れるべくしてのことにすぎない。戦争には関わりを持たないハミィだが、それを決めるのは本人ではなく嫌疑をかけた側の者達だ。
     脱ぐしかなかった。
     まずはジャケットから、そして中に来ていた服にスカートと、順々に衣服を手放すごとに、露出した肌に絡む視線はいやらしい熱気を帯びる。
    「ひひっ」
    「ふへへへへっ」
     ハミィを包囲している兵士達は、一様に薄笑いを浮かべていた。
     もちろん女性の脱ぐ姿が面白いのもあれば、ハミィを疑っている側からすれば、敵兵を辱めているようで気分も良いのだ。
    「下着もだ」
     ショーツとブラジャーだけを残して手を止めると、あくまで全裸を求める司令官は、再び発砲合図を出そうとする素振りを見せる。
     そうなれば、ブラジャーも外すしかなかった。
    「ほう?」
    「なかなかじゃねぇか」
     カップの中身がこぼれると、兵士達は口々に感想を投げかける。大きい、形が良い、乳首の色が良い悪い。スタイルを品評してくる数々の言葉と共に、実に多くの兵士が妄想の中でハミィの陵辱を始めている。
     ああしてやりたい、こうしてやりたい。
     たっぷりと欲望を含んだ視線が、ハミィの裸体に殺到しているのだった。
    (うっ、超ハズいんですけど……)
     大勢に視姦されながら最後の一枚まで脱ぎ去るなど、乙女心ある女子にはそれだけで拷問に匹敵する。ショーツのゴムに指をかけ、震える腕で下ろしていくと、白い生尻にも視線が集中して、見えない無数の針で刺され続けているような気分にさえ陥っていく。
    「隠すことは許されない。頭の後ろで両手を組み、足は肩幅程度に開け」
    「マジで最悪すぎ……」
     アソコの割れ目や毛の部分も視姦に晒され、ハミィのことをぐるりと囲む全方向から、兵士達は思い思いの部位を目に焼きつけ、その大半がニヤニヤしている。
    「検品しろ」
     司令官が命じると、一人の兵士が前に出る。
     そして、ハミィが脱いだ服を調べ始めた。布を二重にして内側に隠したものでもないか、仕込んである武器や道具はないか。ジャケットやスカートまでは良かったが、それがブラジャーにもなると、ハミィはより一層の羞恥に囚われた。
    「ブラジャーにはまだ体温が残っていますが、この可愛らしい柄以外に怪しいところはありません」
     体温などという解説。
    「パンツは」
    「はい。パンツにも体温が残っています。それと、おりものの痕跡とみられるシミがついていることから、ある程度使い込まれたものと推測できますが、特に物を仕込んでいるといったことはないようです」
    「そうか。では下着はもらっておこう」
     脱ぎたてのショーツは司令官のポケットに押し込まれ、残る他の衣服でさえも、他の兵士達に分配される。元の服装が二度と戻ってこないことを意味する状況は、恐ろしいほどに心もとないものだった。
    「よし、調べろ」
     兵士が迫り、ハミィの身体をまさぐり始める。
    (ううっ、嫌だぁ……)
     ボディチェックのための手つきが、脇から肋骨を撫で回し、腹や腰の肉も揉み、当然のように胸まで包み込む。特に乳房の確認は入念で、じっくりと手の平でカーブをなぞり、揉み込む指で具合を味わう。
     五指で両方の乳首を包むようにつまんで、グニグニと指圧しては引っ張って、さらには人差し指で押し込んだ。指先で上下に弾き、また指圧しては引っ張って、再び乳房を揉みしだくなどして用心深い『検査』に徹する。
     秘所まで入念になぞられた。
     割れ目の一端に指を置き、下から上へとかき上げる。すりすりと擦り始めて、愛液が指に絡んでくると、膣内を探るための挿入まで行われる。
    「んっ……くぅ…………」
     ハミィは表情を歪めた。
    「よーく調べろ。そこに物を隠した過去の事例はいくらでもあるからな」
    「もちろんです」
     根元まで差し込んだ指で、兵士は膣壁をよく撫でる。調べるための手つきから、すぐに愛撫へと変わっていき、完全な指のピストンとなってハミィに刺激を与えていく。
    「はぁ……くぅっ……これで検査とか…………」
    「物を隠している痕跡はありませんが、非情によく愛液が出ています」
    「続けろ」
    「はい」
     何もないことがわかっても、指の出し入れを続ける兵士は、もう片方の手でクリトリスまで触り始めた。
    「あ……!」
     腰がくの字に折れるなり、司令官が片手を上げる。それが合図となって、周囲の銃口が発砲の気配を見せて脅しかける。
    「今のは抵抗か?」
    「そんなわけ……」
    「なら、なんだ。どうして妙な反応を見せた」
    「そんなの…………!」
    「説明しろ! 今の反応は何だ!」
     誰もが期待していた。
     わかりきった答えが、誰もが想像している通りの回答が、ハミィ本人の口から声として発せられるのを、一人残らず待ちわびている。
    (マジで激オコなんですけど……)
     怒りと屈辱。
     そして、何よりも羞恥の感情にかられるハミィは――。
    
    「…………感じた反応、だから」
    
     その瞬間だ。
    
    「ハッハッハッハッハ! ウケる! マジでウケる!」
    「感じたってよ!」
    「本人のお墨付きだ! こりゃ間違いねえ!」
    「だいたい、この状況で濡れるっつー時点でおかしいから」
    「超ウケるー!」
    「ほんっとウケるわー!」
    
     どこまでも人を馬鹿にした大喝采が、ハミィの心を深々と抉り取る。
    (もうやだ! なんでこんなことに!)
     ハミィの心境に構う者などいやしない。
    「次は尻の穴だ」
     司令官からの無情で楽しい命令。
    「おい! 自分の足首を掴め、肛門を見せびらかすポーズを取るんだ」
     本当なら意地でも従うわけがない。けれど変身できない状況で、ハミィをいつ射殺しても構わない姿勢の連中相手に、もはや少しでも逆らおうなど考えられるはずもない。
     だからハミィはポーズを取る。
     身体を二つに折り畳み、立ち姿勢だったハミィが自らの足首を掴んだなら、丸い尻が高らかに持ち上がり、この姿勢では割れ目の中身もよく見える。放射状の皺の集まりが誰しもの視線に晒され、気が狂うほどの恥ずかしさにハミィの頭は沸騰しきった。
    「では失礼して」
     表面の滑りを良くするため、ゼリーを塗った指先が、ハミィの尻穴に潜り込む。先端からずっぷりと、第一関節から根元までゆっくりと、ゆっくりと、指の全てが入りきると、兵士は中身をよく調べた。
    「何もありませんね。穴に力が入って、いちいちキュっと締め付けてくる以外は」
     いらぬ解説。
    「ははっ! 超ウケる!」
     笑う衆人環視。
     散々に遊ばれ尽くしたハミィが迎える運命は、捕虜として囚われの身となって、兵士達の休養に使われ続けることだ。
     仲間に救出されるまで、どれほど使い込まれたか。
     ハミィは決して語らない。