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  • 一度はやりたい 女子高の健康診断医


     
     
     
          これは良い検査AV

      きちんと学校検査に徹していて、きちんとフェチマニア向けにできていました。

      医者の前で体操着をたくし上げ、触診で胸を揉まれる光景をたっぷりと楽しめます。

      この作品は7つのパートに分かれていました。

     ○着替え&身体測定
     ○健診パート①
     ○検尿パート①
     ○健診パート②
     ○検尿パート②
     ○健診パート③
     ○個別健診

      健診と検尿がそれぞれ①とか②とかに分かれていますが、
      女優が違うだけで診断方法の違いなんかはありません。
      人数が多いから、それぞれパートごとに区切りをつけながらやっているようでした。

      検尿パートは全てトイレで紙コップに出しているだけなので、
      医者の前で放尿みたいなことはありませんでした。
      (というか検尿③がなかった)

      では詳しいレビュー

      まずは最初の着替えシーン


      お喋りで騒がしい様子の教室で、女の子達が制服から体操着へと着替えていきます。
      何故か首から下ばかりが映っていて、個人の着替えをじっくり見せたり、
      顔が見えやすいようなアングルがなかったのが個人的には気にかかる。

      とはいったものの、ショーツの上にブルマが被さり、
      ゴムの端からプニっとお尻がハミ出るまでの一連の光景は、
      なんだかんだいって見ていて楽しい。



      ↓持ち上げる際にショーツがハミでる。
       でも直すというシーンも見れました。



      身長測っているシーンとかは、イメージ映像風に流れる程度。
      普通に体操着を着ているので、あまり力は入れていなかった感じですね。

      自分の身長聞いて
      「変わってなーい」とか
      「伸びた伸びた!」とか
      「え、変わんない」みたいな

      数字でいちいちはしゃいでいるノリは、学校らしさを出せていたと思います。



      本番は健診パートからですね。

      椅子で順番待ちの生徒が、服を脱がずにブラジャーを外すテクニックを使用。

      そして、医師の前に座るという流れ。



     1:首のリンパ触診
     2:おっぱいにメジャーを巻く
     3:聴診器を当てる
     4:おっぱい触診



      健診パートは全てこの流れです。

      上記で述べました通り、①や②に分けられているけど内容は同じです。

      サディスティックヴィレッジなら、もっとギョウチュウ検査やモアレ検査など、
      他の検査内容をやっているところなんですが、この作品は項目が少ないのが惜しいですね。

     
      とはいえ、おっぱいへの責めがその分なかなか執拗です。

       微妙に位置を変えながら押し込んだり、乳首を責めたりなどしています。




      触診では鷲掴みにして、乳首をつまんでみたり。
      指でさーっと撫でるような触れ方をしたり。
      時間をかけておっぱいを責めていました。




      聴診で1~2分以上
      触診で1~2分以上
      胸囲も何十秒かかけているので、

      全ての女の子が合計五分近くほどおっぱいを出し続けているわけですね。

      最後の個別診断では、気になった子を各自呼び出し。
      それぞれ詳しくチェックするというわけですが、
      ここで再登場するのは4人だけみたいですね。

       まずはおっぱい再チェック

       ショーツを脱いで・・・・・・

      

       四つん這いとなり・・・・・・

      

       丸出しのお尻を『診察』してしまいます。

      

     「お尻の穴見られるの初めて?」
     「……こんなところ見られるの初めてです」
     「じゃあなおさら診てあげないとねぇ?」

      と、羞恥を煽るやりとりがあったのもツボ。

      肛門に力を出し入れさせるプレイがあったのも最高です。

      動画じゃないとわかりにくいかもしれませんが、
      ギューっと力を入れ、そして力を抜いています。

          

      医師の手によってまで開閉されたり、
      じーっと観察されたりしてしまいます。



      恥ずかしそうに隠しているのも可愛らしい。


      この可愛さの子の肛門を観察したかと思うと得した気分になりますね。




      それによく見るとこの子、肛門にホクロあるんですねぇ?

       

      ちなみにこの葉山未来ちゃんだけにおまけセックスシーンがありました。

     FANZAで購入
     
     


  • アソコも調べる! 文香の発育検査記録


     
     
    第1話「有明文香の性癖」
    第2話「下着を見せた体験」
    第3話「発育検査開始!」
    第4話「たまらなく恥ずかしい」
    第5話「検査後の夜」
    第6話「担任の企み」
    第7話「無神経な男子」
    第8話「発育調査面談」
    第9話「剃毛について」
    第10話「オナニーについて」
    第11話「自慰行為への言及」
    第12話「レポート提出」
    第13話「直腸検温」
    第14話「エロス三人衆」
    第15話「レポートとオナニー」
    第16話「いざ脅迫」
    第17話「全裸視姦」
     
     
     


  • スパイ容疑 フォトの身体検査

    
    
    
    
     *第二十巻「夫婦の話」のあと
    
    
         ***
    
    
     オレの名前はソウ。モトラドだ。
     小型車のトランクに積んで持ち運べるように設計された、ちょっと特殊なモトラドだ。もともと車体が小さいが、ハンドルやシートを折り畳むと、さらにコンパクトになる。まあ、速度は出ないけどな。
     オレの乗り主の名はフォト。性別は女。年齢は十七。黒い髪は背中まで長い。
     つい先日、とある夫婦からの仕事を引き受けた。記念写真が欲しいらしかったが、カラー写真の現像が終わる前に、夫の方は亡くなってしまった。依頼主が亡くなるだけでも驚きなのに、実は夫はスパイだったとかで警察が捜査にやって来た。
     そして、奥さんまでもがスパイだった。お互いがお互いに、スパイだと気づかないまま社会的身分を保つために結婚して、スパイ同士で夫婦生活を営んでいたのだ。
     さて、大事なのはここからだ。
     奥さんが逃亡したあと、フォトの鞄からいつの間にか、試し撮りした白黒写真だけがなくなっていた。代わりに鞄のポケットには、何故か大金入りの封筒が入っていた。わざわざ説明するのも野暮な話だが、まあ何だかんだで記念写真は欲しかったのだろう。
     この先が問題だ。
     そう、捜査は終わったはずだった。
     何もかも、めでたしめでたし。
     良い話だったなーと、締め括られたはずだったのに、どういうわけかフォトの体に、再び捜査の魔の手が伸びてきたのだ。
    
    
     あれから、数日後のことだ。
    「フォトさん。ちょっとお話いいでしょうか」
     店の前に一台の車が止まり、チャイムが鳴らされ、フォトが玄関を開けると偉そうな警察がずかずかと踏み込んできた。
     背後に二人。若い部下を引き連れた偉そうな警察は、顔立ちが醜いので醜男とでもしておこうか。
     こいつらは普通の警察ではない。もっとヤバイ連中だ。
     巨大な犯罪や、重大な事件――、それこそ、国家を揺るがすような事件を取り扱う連中。この国ではなんと呼ばれているかは知らないが、いわゆる公安警察だ。
    「あなたから奥さんのもとへ、何かが渡っていることが判明しました」
     白黒写真がバレたわけではないのか?
     いや、もしかしたら、わかっているが余計な真実は伏せているのかもしれない。
     ――え、あの写真が?
     なんて、うっかり口にしようものなら、
     ――おかしいですね。写真、とは一言も言ってはいませんが。
     といった具合だろう。
    「ええっと、ですね。あなたがスパイと断定されたわけではありません。あくまでも容疑の段階ですが、つきましては――」
     醜男はつらつらと用件を述べる。
     つまりはこうだ。
     フォトから奥さんへと、『何か』が渡ったことが判明したので、実はフォトもスパイで、グルだったのではという疑いがかかっている。我々はあなたを疑っていますと、わざわざ伝えに来るなんて、どうぞ警戒して下さいというようなものだ。もしも本当にフォトがスパイで、しかも今から逮捕されるわけでも、軟禁されるわけですらないのなら、逃亡の猶予が出来るというわけだ。
     まあ、本当に逃げるかどうか試そうって腹なのだろうが。
     さらに話を聞いてみれば、どうもそういう目論みではなさそうだった。
    「疑いがかかっているわけですが、確認さえ済めば容疑が晴れるか、もしくは確定します」
     まとめるとこうだった。
     逃げた奥さんを追って情報収集をしていると、この国には過去にもスパイがいたことが明らかとなり、その特徴はフォトとよく似た容姿の少女だったとか。一度は捕らえて、身体検査によって隅々まで調べたが、どうも逃げられてしまったらしい。
     そして、見た目の特徴が似ているフォトがここにいる。
     そりゃあ、調べないわけにはいかない。
     服を脱がせて、以前捕らえた過去のスパイと同じ特徴はないか。つまり、同じ場所にホクロがあったり、そういったことを誤魔化すための整形手術の痕跡があればアウトってわけだ。
     フォトの生い立ちから考えれば、どこにもスパイをやる暇なんざない。
     別に逮捕とはならないだろうが、容疑を晴らす方法が問題だ。
     身体検査。
     全裸にして、隅々まで観察して、穴の奥まで特徴を確かめる。恥じらいある乙女ってものをある意味では殺しにかかっている。
    「おい。違法じゃないのか?」
     と、オレは言った。
    「裁判所から既に令状も出ています」
     ってことは、無理に逆らえばこっちが違法扱いか。
    「わかりました! その検査。受けます!」
     おい、いいのか?
     もちろん、良くないとは言っても、令状には逆らえないが。
    「どうぞ調べて下さい。自分の無実を証明したいです!」
     なんて馬鹿正直な。
     フォトの生まれた国では、『人類皆仲良し』とか、『愛は世界を救う』とか、現実離れした用地な戒律がたくさんあって、おおむね皆がそれを信じていた。
     だからフォトも、真面目に人を神事、人を疑わず、人を騙さず、人を傷つけず、全ての隣人を愛していれば、素敵な人生になるとしんじていたのだ。
     他意のない誠実な身体検査だと信じているのだろう。
     そりゃ、公安のやることだ。屑が素直な人間を騙して、いいようにしてやろうとしているわけではないが、もしも女の裸を見たいだけの屑が公安の中にいたとしても、フォトはその人を信用してしまうだろう。
    
    
     フォトが連れていかれた施設の部屋は、シミ一つない真っ白な壁に床に天井が広がって、いるだけでぼーっと心が病みそうだ。
    「では身体検査を開始します」
     醜男が言う。
    「はい!」
     フォトは素直に返事をしている。
    「ここで全裸になって下さい」
    「わかりました」
     茶色のチノパンに、薄手のセーターを、フォトは何の疑いもなく、だけど恥ずかしそうに脱ぎ始めた。
     醜男以外にいるのは、検査に関わる白衣の男が数人だ。
     醜男はここに立ち会うだけで、女の裸を医学的な意味で観察できるのは、白衣の男達だけなのだろう。
     セーターを脱ぐと、ブラジャー付きの上半身が現れる。チノパンを脱げば、白いショーツの尻が現れる。
    「いひ」
     醜男の奴、嬉しそうに顔色を変えやがった。
    「…………」
    「…………」
     対して白衣の連中は、実に事務的な真面目人間の表情で、フォトの裸を見ても欠片も興奮していない。
     ブラジャーを外して乳房を出すと、パンツ一枚の格好に。
     パンツも脱ぐと、いよいよ一糸纏わぬ姿だ。
     せめて大事な部分は手で隠していたいのが人情だろうに、フォトはバカ正直な気をつけの姿勢で全てを晒している。胸は丸見え、アソコの毛まで見られ放題。白衣どもは真面目だが、醜男の顔つきは、だんだんと言い訳の聞かないいやらしさになっていた。
    「うーむ。いいオッパイだ」
     ぐっと顔を近づけて、醜男はフォトの乳房を品評する。
     隠す気もないとは恐れいるが、フォトもフォトで、それが職務上の必要行為だとでも信じているのか。顔を真っ赤に染め上げて、恥ずかしいのも我慢しながら、どうぞご覧下さいとばかりに背中を反らし、胸を突き出している有様だ。
     どうしたものかとオレは迷ったが、醜男の下心など知らない方が幸せだろうか。
     しかし、こんな奴が公安警察で権力を持っているなんて、スパイが紛れ込んでいるよりも恐ろしい真実じゃないか?
     ポチっと。
     ボタンでも押すみたいに、醜男は人差し指をフォトの乳首に押し込んだ。
    「……ん」
     何やら我慢の声を漏らしたフォトは、醜男のご立派な職務行為を真摯に受け入れ、好きなように乳首を触らせている。
    「さて、調べろ」
     権限は醜男にあるわけだ。
     指示が出てから、初めて白衣の男達は動き出し、今度こそ『仕事』のためにフォトの裸を観察する。ほとんど点検だ。機械整備の人間がメンテナンスを行ったり、出荷前の商品チェックで破損がないかを確かめたり、そういう光景と変わらない。
     いたるところを触られていた。
     うなじに指を当て、肩の肉を掴み、背中を撫で回す。あらゆる部位に顔を近づけ、至近距離から観察する。
    「ホクロの一致は」
     その隣で一人だけ、書類を片手に突っ立っている男がいた。
    「背中、腕、いずれも一致無し」
    「手術の痕跡無し」
     検査を行う面子がそう言うと、そいつは書面にペンを走らせた。
    「乳房を確認します」
     そう言って、白衣の一人が両胸を鷲掴みにして揉みしだいた。
     実によーく確かめていやがる。細やかな指使いで、もっとじっくりいくかと思えば、用など一瞬で済んだとばかりに、すぐに揉むのをやめてしまった。
    「どうですか」
    「豊胸などによる胸ではありません」
    「触感の一致は」
    「書面にあったスパイの乳房の感触と酷似して、もっちりとした弾力にあたるものの、乳首の色合いが異なります」
    「では脚をお願いします」
    「了解」
     どれだけ事務的なやり取りだ。
     それはそれで嫌なものだと思うのだが、フォトは真面目な顔であり続けている。この光景を眺める醜男だけが、楽しいものを見て喜ぶ表情でおいでなわけだ。
     太もも、膝、ふくらはぎ、足の甲から裏側まで、くまなく観察と触診を行うが、スパイとのホクロやアザの一致とやらはいずれも無し。
     しかし、どこまでフォトは正直なんだ。
     だんだんと、体全体が硬直して、表情も見るからにこわばって、まるで痙攣してるみたいに震え始めた。顔の染まりっぷりも、いつの間にか耳まで及んで、もうジュワっと顔から蒸気が噴き出ておかしくない勢いだ。
     それでも、フォトは素直に耐えている。
     真っ直ぐに姿勢を保って、検査を妨げないように背筋もピンと伸ばしている。恥ずかしがったり、手で隠したり、身じろぎすれば、検査がやりにくいはずだと思っているからだ。
    「下腹部に移ります。自分の足首を掴んで下さい」
     本当に配慮がないな。
     フォトがどんな気持ちかわかっているのか。ひょっとして、こいつらは本当に商品か何かの点検と同じつもりでやってるのか。真面目さが勢い余って、恥じらいだとか、人の尊厳といったものを忘れてはいないか。
     しかも、ポーズもまずい。
     全裸の女が自分の足首を掴むってことは、体を前屈状態に折り畳んで、丸出しの尻を高らかに掲げることになってしまう。
    「わかりました」
     言うまでもなく、フォトは素直に従うだけだ。
     尻の割れ目が左右に開ける姿勢だから、フォトの肛門が視線に曝け出されている。醜男はわざわざポジションを移動して、好みのアングルから眺め始める。
    「肛門の皺の数は」
     書類片手の男が尋ねる。
    「確認します」
     と、白衣の一人が尻の穴に顔を接近させた。
     さすがにフォトもやばいだろう。
     あれだけ至近距離に顔があったら、呼吸の息もかかってくるし、じっくりと観察してくる視線の気配も如実に違いない。
     一本、二本などと声に出し、本数をカウントして数えている。
    「本数不一致。色合いも一致しません」
     カウントした本数に対して、書類持ちの男はデータを確認しながら答えた。
    「性器を開きます」
    「サーモンピンクと一致しますか」
    「一致しますが、膣口の形状が異なります」
    「スパイの膣口は数センチ程度の極小の穴でしたが、サイズが違うと」
    「はい。それよりは広く、指が二本以上入ると思われます」
    「了解した」
     とはいえ、これで終わったか?
     顔の目や鼻から始まって、手足の指の一本ずつから、穴の中まで確かめたんだ。しかも不一致が多いのなら、もう十分なはずだろう。
     オレはそう思ったが、
    「待て」
     醜男が余計な思いつきを顔に浮かべた。
    「私がそれを確かめよう」
     なんと、醜男の奴。
     本当に指が二本以上入るかどうか。確かめるために挿入しやがった。
    「んくぅ……!」
     準備無しでの挿入だ。
     フォトは苦しそうな声を上げた。
    「なるほど、まずは一本目」
     醜男はご丁寧に左手を尻に置き、丹念に撫で回しながら、右手の中指を出し入れする。それが済んだら一度引き抜き、人差し指と中指を同時に挿れ、ピストンを行いやがった。
    「あっ、くぅ……!」
     畜生、フォトが嫌がっている。
     もう耐えることはないんだぞ?
     もう我慢しなくていいんだぞ?
    「ほうほう。これはいけない穴ですなぁ?」
     ほれみろ、醜男は下心を隠してもいない。
    「ま、まだ……私の無実は……」
    「ああ、もうちょっとで晴れるよ」
    「あっ、あぁ……ありがとう……ございます……んんぅ……!」
     ありがとうじゃないだろう。
     そいつがやっているのは、もうただの手マンじゃないか。尻をナデナデと可愛がっていやがる左手の動きも、おかしいとは思わないのか。
    「おい!」
     たまらずオレは声を上げた。
    「なんだね?」
    「何もかも不一致。指も入った。別人だってわかっただろう」
    「ま、それもそうだ」
     醜男は不満そうに切り上げて、フォトの膣内から指を抜く。
    「おめでとう。これで君の無実は晴れたよ」
     何がおめでとうだ。
     最後まで偉そうなやつめ。
    「よかった。私、スパイじゃないって!」
     そんなこと、オレは初めからわかっているが。
     最後までフォトは誰一人疑わず、本当に容疑が晴れたことを喜ぶ顔で、この場所から去ることとなったのだ。
     ったく、なんであんな男が公安に?
     この前の連中は、もう少し良心的だったはずなんだが。
     案外、あいつもスパイか?
     というより、組織を内側から腐らせるガンかもしれないな。本当に味方な分だけタチが悪い。いっそ敵か何かの方がマシだろう。
    
    
    


  • 深雪 羞恥の定期検査 後編

    前編

    
    
    
     全身検査。
     それは頭の先から足の先までをくまなく調べ、皮膚科系はもちろんガン系のしこりや筋肉の張り等の正常さを確かめるものだ。ここでは三人の検査医が女子生徒を取り囲み、それぞれの手で視診触診を行っていく。
     深雪はコレまで以上に赤くなり、首から上はほぼ別色といえるほどに顔面を熱くしていた。
    (こ、これって一番……)
     至近距離から、三人の男が手で触れながら視診してくるのだ。
     両腕を真っ直ぐ左右に伸ばし、二人がそれぞれの両腕を触って調べている。残る一人は背後へ回り、脇の下へべったりと手を貼り付ける。上から腰のくびれまでへと、ボディチェックを行うように撫でていく。
    (ふあ、あぁぁ……)
     上下に手をスライド往復される刺激に震えた。
    「右腕問題なし」
    「こっちもです」
    「肌は全体的にサラサラですね」
    「ふんわりと柔らかく、羽のわたのように優しい肌です」
     深雪は涙ぐんだ。
     三人の検査医達は深雪の体を事務的に弄くりまわし、合計六本の手がいたるところを這いずり回る。あくまで触診でしかない手が、しかし太ももを揉み始め、うなじをくすぐり、耳まで触れて全身を調べ尽くす。
     まるで拷問だった。
     悪いことなどしていないのに、途中からは頭の後ろで両手を組まされ、そして脇の下から足の裏までベタベタと触られる。体中いたるところに手垢をつけられ、もはや手の当たっていない面積部分など残されないほど、触診は丁寧に行われた。
     きっと兄へ差し出したかった大切な肌だというのに。
     そんな深雪の事情などお構いなしに、女が嫌だと思う部分を検査医は平気で調べ、指先で素肌をくすぐっている。
    「かなり発育がいいですね」
    「筋肉と脂肪のバランスがいい」
    「スタイルも抜群の部類でしょう」
     検査医達は深雪の体をああだこうだと論じていった。
    (こんなに観察して、意見を言い合うなんて……恥ずかしすぎます!)
     深雪は悶える。
    「お手本のようです。教科書に載せたいくらいですね」
    「はっはっはっは」
     軽く、笑われた。
     もちろん、検査医達に深雪を貶める意志はない。深雪の体への感想を疲れた気分を紛らわすために言い交わし、地道な作業疲れをほんの少し癒したのだ。何十人もの検査を受け持つ彼らにとって、深雪がどんな気持ちになっていようと、選りすぐりの美少女であろうと、大勢いる検査対象の一人にすぎないのだ。
     もっと言えば、処理しなくてはいけない仕事の一部だ。
    「乳房に入ります」
    「了解」
     もはや本人の意思などないも同じ。
    「健康的ですねぇ」
    「硬さは?」
    「やはりふわっとした柔らかさで、餅が手に張り付くかのようです」
    「なるほど」
     一人が乳房を両手で掴み、揉み始めた。なんの断りもなく、ただ仕事上のノルマを消化したい検査医は顔色一つ変えずに指を押し込み、皮膚の内側に何かがないかを探している。彼らに卑猥な心は欠片もないが、それだけに業務を淡々とこなしすぎていて、深雪の気持ちに対する配慮や紳士的接し方さえ欠片もない。
    (お兄様……助けて下さい……深雪はこんなのもう嫌です……)
     深雪は唇を噛み締めた。
     男の指が乳房を持ち上げ、プルプルと揺らしてくる。表面を撫でるようにして形をなぞり、乳肌の皮膚を調べてくる。乳首を摘み、グリグリとつねってくる。引っ張ったり、押し込んだりされ、突起した乳首は執拗に虐め抜かれた。
    (お兄様ぁ……)
     身をよじったり、体が逃げる反応をすれば「動かないで下さい」と注意が飛ぶ。胸をいいように扱われながらも、後頭部に手を組んだまま、深雪はひたすら我慢していなくてはならなかった。
    「乳首もコリっとしています」
     そんな情報を声に出される。
    「ええと、いずれも疾患は無しで、それから……」
     そして一人はチェックシートにペンを走らせ、今までの診察結果を書き込んでいる。書類の記入欄には、深雪の乳房や太ももの感触について書く項目もある。その人の語彙力が許す限り正確に、体つきから何もかもまでが記入されている。
    「しかし、やはり綺麗ですね」
    「ボディラインは人一倍優れていそうですしねぇ?」
    「触れた感じも全体的に柔らかく、ふんわりです」
    「なかなかいませんよ。ここまでの子は」
     他意はなくとも、深雪の体つきにまつわる感想が事務的に述べられていた。
    (お兄様……ぐすん……お兄様ぁ…………)
     それでも、耐えることしか許されない。
     深雪にできるのは、この時間が一刻も早く終わることを願うだけである。
    
    「では、臀部及び陰部へ移りましょう」
    
    「……!」
     おもむろにショーツに指をかけられ、深雪は戦慄した。全身に緊張がほとばしり、それでなくとも真っ赤な顔へさらに血流が集まって、心臓は早鐘のようにドクドクと大きな音を打ち鳴らす。
     検査項目は事前に通知されている。初めから内容はわかっていたし、腹を括ってきたつもりもあった。だが、いざこの瞬間を迎えた時、大事な部分が曝け出される危機感に、全身に警戒信号が行き渡り、鳥肌さえ立てながら深雪はごくりと息を飲んだ。
    (嫌ですわ! やはりここだけは……)
     ショーツは最後の砦だ。
     それを履いている限り、乙女の秘密だけは隠してくれる最後の盾だ。これを失えば最大の弱点が外へ晒され、深雪は無防備となってしまう。
     それに対する危機感。
     本能から警戒信号が発令され、深雪はほとんど条件反射的に抵抗した。いや、抵抗といっても抑えはしている。ただ脱がされかけたショーツを手で引き止め、深雪は自分の最後の防壁を失うまいとしていた。
    「どうしました?」
     検査医はそんな深雪を不思議そうに見つめていた。
    「脱がないと検査が進みませんが」
    「ほら、他の子達も待っているんですよ?」
    「あなた一人に時間はかけられないんです」
     口々に言われる。
    「わかっています。わかっていますが……」
     深雪は震えた。
     どうしても、こんな場所を見せなくてはいけないのだろうか。
     晒さなくては許されないのだろうか。
     女に生まれ、この学校に入学したというだけで……。
     悲しい、悲しすぎる。
     羞恥心が胸の内側で膨張し、風船を一気に膨らませていくかのように大きくなる。ただ恥ずかしさという一色だけが、深雪の感情を染め上げている。あまりに酷い恥をかかされて、泣けてきた。
    「司波深雪!」
     注意の声を上げるのは教師である。
    「これは規則なんだ。決まりを守れないようであれば、お兄さんにも迷惑がかかるが?」
    「お、お兄様に……!?」
     深雪ははっとした。校則違反に対しては当然指導が行われる。深雪への厳重注意に伴って、兄妹として同居している兄にも深雪の話をされかねない。問題行動だ、兄からもきちんと言って聞かせるように、といった具合に。
     兄に迷惑をかけることは本意じゃない。
     脱ぐしか、ない。
     泣きたくなるほど嫌なことでも、少し我慢すれば事は過ぎ去る。耐え抜いて、耐え抜いて、耐え忍ぶのだ。
     きちんと、兄の言いつけ通りに。
    「……すみません。恥ずかしくて、つい。きちんと受けますので」
     反省の素振りを見て、教師は一歩後ろへ下がる。
     これから陰部を晒されるのに、それでも謝るのは自分の方である事実を悲しく思った。
    「では改めて」
     検査医はその瞬間、ばっさり。
    「――――っ!!!」
     遠慮無しに一気に引き下げ、心の準備をする猶予もなく、深雪の全てが男達の視線の中へと曝け出された。
     ――カァァァァ!
     と、沸騰せんばかりに首から上がまんべんなく熱くなる。顔から蒸気が出てもおかしくないほど、火照るという言い方では生易しいほどに血流が頭部に集中する。全体的にきめ細かく、美白肌の深雪だが、首を境界線として顔面と両耳だけが真紅に染まっていた。
    (……こんな! こんな人前で生まれたままに姿になるだなんて!)
     あまりの顔の熱さに、額や頬からだけ汗が吹き出た。
     雪をふんわりと積らせたような白い尻は、触れれば崩れそうなほどに柔らかい。あるいは清潔な羽綿のように優しく、大きすぎず小さすぎない控えめなカーブでプリっとしている。
     手前の方では、毛が丁寧に手入れされている。切り揃えられた陰毛は草原の領地を控えめにして、貝の割れ目がくっきりと目に見える。ぷにっ、と微妙な膨らみを持つ皮は、ぴったりと閉じ合わさってラインを明確に浮き出していた。
    (こんなの……深雪は生きていけませんわ……)
     深雪は震えた。
     これは刑罰か何かだろうか。そんなものを受けるほど悪いことはしていないのに、検査医三人と男性教師、合計四人の男に囲まれた状況下で最後の盾を失ったのだ。こんな目に遭わされる人間は、他には捕虜か奴隷くらいだ。
     検査医の顔がアソコへ近づく。
    「陰毛はカットしていますか?」
     そんな質問をされ、深雪は深く俯いた。
    「……はい。手入れはしています」
    「そうですか」
     そっけない。
    「…………」
     特に意味はない。素朴な疑問を何気なく、そして深雪の気持ちなど考えずに投げかけて、答えがわかれば適当に頷いた。ただただ、深雪の心が削られるだけのやり取りだった。
    「では四つん這いになって下さい」
    「……え?」
    「性器及び肛門を検査するための姿勢です。
     事前に説明が行っていると思いますが」
    「……は、はいっ。申し訳ありません」
     どうして自分が謝るのだろう。
     情けのない気持ちになりながら、死にたい気持ちになりながら、深雪は床に膝をつく。そして両手をべったりつけ、全裸でお尻を差し出す犬同然のポーズとなる。
    「では肛門ですが……」
     一人の検査医が深雪のお尻へしゃがみ込み、尻たぶを掴んで割り開く。
    (いやぁぁあぁぁああ……!)
     深雪は強く目を瞑り、歯を噛み締めた。
     親指で押し広げたその間で、桜色の雛菊皺がヒクっと蠢いた。真っ白な尻肌の中央にぽつんと咲いた可憐な色は、およそ排泄気孔とは思えないほど、皺の花びらを放射状に広げている。
     それを検査医は凝視した。
    (うぅ……お尻の穴まで…………)
     ただの視線一つが鋭い針のように深雪へ突き刺さり、肛門をチクチクと痛めつけている。
    「とても綺麗ですよ。黒ずみがないんです」
    「本当ですか?」
    「どれどれ」
     肛門を覗いていたのは一人だったが、今ので残る二人も同時に深雪のお尻を観察し、尻穴の桜色に次々と簡単の声を上げていく。
    「ほほーう」
    「こんな場所がここまで綺麗だなんて」
    「普通は黒ずみがあるはずですが、これは白い肌に桜色を乗せた色感が効いています。
     純白から薄紅色へと変化していくグラデーションのように、美感がありますよね」
     よりにもよって肛門について品評され、激しい羞恥の情動が胸の中身を荒らし出す。頭の中からまともな思考は削がれていき、この恥ずかしさに悲鳴を上げたい、自分の状況を恥じた気持ちだけが深雪の頭を占めていく。
    (……恥ずかしすぎます!)
     深雪の心は叫んでいた。
    (こんなこと……深雪は恥ずかしさで死にそうです……!)
     恥じらいに熱された顔全体に汗が滲んで、皮膚が湿っぽくなっていく。その吹き出た汗が上昇した体温に温められ、いよいよ本当に顔から湯気が出てもおかしくない。
     硬く強く食いしばられた歯は癒着したかのように離れなくなり、瞼も自身の眼球を潰さんばかりに力の限り閉じられる。床に置いた手は握りこぶしとなって、内側に爪を食い込ませるまで強く握られていた。
     体のどこかに力を入れ、硬く震えることによって、深雪はかろうじて耐えていた。
    「性器を開いてみましょう」
     くぱぁ……。
    (んく――んんん……! な、ナカを見られるなんて……!)
     桃色の貝の中身を左右に開かれ、今度は肉ヒダへ視線照射が集中した。ヒクヒクと蠢く陰唇が、包皮に覆われたクリトリスが、まだ男を知らない膣口が観察される。
    「血色はいいですねぇ」
    「ビラの大きさも」
    「おや、処女ですか」
     視診された中身の状態を口にされ、もはや手付かずの恥部は残っていない。全てを余すことなく観察され尽くし、しかし二つの穴への触診はまだ行われていない。一人がチェックシートを片手にペンを構え、もう一人は深雪の背中を押さえて動いても手で固定できるようにポジションを取る。
     そして、診察用のゴム手袋をはめた一人が中指で性器をなぞり、男に触れられる言い知れぬ感覚に背筋全体がゾクっとした。
    (いやぁ……)
     淫らな意思を持たない『触診』は、それでもクリトリスの周囲をそーっと、触れるか触れないかといった微妙さで指の腹を当てている。デリケートな部分を傷めないよう、優しく撫で擦るやり方は愛撫に近いところがあった。
    (嫌ですわ……嫌ですわ……)
     検査医は膣口の周囲をなぞっていき、具合を探る。まだ未使用の入り口に余計な傷をつけない程度に先端を挿し、グリグリと回すようにして触感を確かめる。その刺激が甘い痺れを生み出して、内股のあたりをピリピリさせた。
    「特に何もありませんね」
     検査医はゴム手袋を取り替えて、次は肛門を診るためにワセリンを塗り始める。
    (いひぁ……!)
     ひやっとして、皺が一瞬ヒクンと縮んだ。
    (は、入ってくる……)
     中指が直腸へと進入し、内側を探り出す。肛門から異物が入ってくる違和感と、内部を調査されている心地の悪さ。検査医は指を左右に回転させ、出し入れしつつ触診位置を調整し、指の腹に感じる直腸の触り心地で丁寧に症状を探っていた。
     ズプ、ズプ、ズプ……。
     内部を摩擦するために、指がゆっくりピストンされる。
    (そんなぁ……)
     性器を観察された挙句に尻の穴までほじくられ、頭がどうにかなりそうなほどに猛烈な羞恥が膨れていく。もしかしたら、自分はこのまま恥ずかしさで死ぬのでは。膨大な羞恥心が容量を超えて多量に溢れ、堪えきれない感情量が全身にいきわたり、やがては事切れてしまうのではと、ありえない想像さえよぎってくる。
     ズプ、ズプ、ズプ……。
    (駄目です! もう……もう死にそうです……!)
     ヌプッ。
     それはゼリーを塗りたくった指が抜ける音。
     限界点を越えた時、ようやく指が引き抜かれたのだ。
    「異常なしです」
    「了解」
     これで、直腸検診までが終了した。
    (……た、助かりましたわ)
     羞恥心が死因になるなどないだろうが、深雪自身は本当に死ぬ思いをしていたのだ。やっとの事で解放された安心感で、自分が全裸の四つん這いでいることをつい一瞬忘れてしまう。けれども、安心の直後にすぐに自分の姿を思い出し、薄くなりかけていた赤面濃度は途端に元に戻るのだった。
    
    「あとは尿検査だけですね」
    
    (にょ、尿検査……!)
     深雪の表情は絶望に変わった。
     ようやく尻穴から指が抜かれて、つい安心しすぎてしまったが、事前の通知で採尿が行われる事はわかっていた。
     本人の尿であることを確認するため、放尿は検査医の前でとなる。三人もの男と、加えて男性教師が立っている前で、トイレでもない場所で容器の中へ用を足す。立ち会った教師が確かに司波深雪本人の尿であるとお墨付きを与え、それを検査医が病院へ持ち帰る。何らかの症状が判明した場合はその後本人に連絡がいき、健康であれば通達は特にない。
     しかし、尿を出せと言われて出せるとは限らない。相応の尿意が必要なため、事前の連絡でも直後に水分を取るよう指示が出て、朝も紙コップが学校から配られて、利尿性の高い飲料を一人一杯飲んでいる。
     これを終えてこそ、正真正銘の解放なのだ。
    
            ◇ ◇ ◇
    
     ジョォォォォォオオオォォオォォ――――
    
     尿道口から飛び出る黄色の水が、宛がわれた尿瓶の中へ溜まっていく。万が一にも床を汚さないため下にはタオルが敷かれており、尿瓶も大きめのものが使われている。たくさん出すぎて容器から溢れるといった心配はなさそうだった。
     ジョロロロロロロロロ…………。
     プラスチック容器を打ち鳴らしていた水音は、すぐに水面を鳴らす音へと変化していた。
    (こんなこと……こんなこと……)
     深雪が受けている仕打ちは、幼少の子供か赤ん坊扱いそのものだ。
    (こんな……こんな……!)
     赤すぎる顔を両手で隠し、深雪はもはや目の前の相手の顔さえ見れていない。こんなことは現実じゃない、悪い夢だと言い聞かせ、全力で目を瞑っている。瞼を閉じ、歯を食いしばるという行為には、筋力が許す限り最大限の力が込められていた。
     ジョロジョロジョロ――。
     放尿とは一度始まったら止まらない。トイレそのものを我慢しなければ、途中で中断がしにくいものだ。普通の生活を送る分にはそんな事で困る機会はないが、今ばかりはその生理的仕組みが残酷だった。
     ジョォ――ジョォ――ジョォオオオ――。
     深雪は開脚した股を持ち上げられ、そこへ尿瓶を当てられている。まるで一人でおしっこができない年齢のような扱いを受け、その光景を男性教師と余った検査医はまじまじと眺めているのだ。
     しかも、クラスメイトもいる中だ。
     既に先に順番が回っているか、あるいは後で同じ運命を辿ることに決まっているとはいえ、身内が同室にいる状況での放尿は最も耐え難いものである。ぐすん、と涙ぐんだ声が出て、硬く閉じられた瞼の隙間からも水滴が滲んでいた。
    (お兄様……深雪はこんなことをさせられています……)
     ジョロロロロロロロロロ。
     尿の勢いは少しずつ緩んでいるが、まだ止まらない。温かい尿液はみるみるうちに水かさを増し、大きめだった尿瓶の半分を突破している。
    (……人前でおしっこを致しました)
     ジョロ、ジョロ。
     尿が切れ始める。
    (アソコを見られました……お尻に指を入れられました……。そして、おしっこまでしているのです……)
     深雪の心は懺悔のように語っていく。
    (こんな深雪をどうか嫌いにならないで下さい。どうか……)
     ジョ、ジョロ…………。
     放尿が途切れ、溜まっていたものは全て出し切られた。
    
            ◇ ◇ ◇
    
     無事に生きて帰って来れた。
     生死の危険などありもしないのに、家へついてから深雪が感じたのはそんな思いだ。あんな悪夢のような目に遭わされ、それでも一応死なずに済んでいる。
     一応……。
     ただし、深雪の痴態はきっと教師の記憶に刻まれている。いかに医師にそういう感情がないとしても、男性教師はきっと深雪をオカズにするに違いない。そうはっきりと予想できるほど、教師が視姦していた対象はほとんどが深雪だったのだ。
    「お兄様、何でも一つ言う事を聞いてくれるのでしたよね」
    「ああ、そういう約束だったな」
    「……人の記憶は消せますか?」
     例え世界中から今日の深雪の記憶が消えても、歴史そのものは変わらない。拷問も同然だった出来事の数々は他でもない深雪に刻まれている。
     しかも、だ。
     同じ内容の検査は年に一度行われる。
     過ぎ去った悪夢が再びやって来ることは規定事項なのだ。
    
     深雪は負けません。
     それでも、元気を出して頑張ります。
    
    
    


  • 時槻雪乃の精密身体検査(後編)

    前編 中編

    
    
    
     さわ、さわ、
    
     正面の中年医師は、ようやく乳首を離れる。手を下へ、脇下から脇腹までを上下往復で何度も撫で、腹の皮膚と筋肉を探った末に下半身へ移っていく。
     背後の若手医師も、足元にしゃがんでふくらはぎを掴み、膝から下を満遍なく調べて、その手を上にのぼらせた。
    
     さわ、さわ、さわ、
    
     雪乃は今、前後の医師から太ももの表と裏を揉まれている状態にあった。
    「んくぅ…………」
     雪乃は緊張に包み込まれた。
     今の雪乃にはショーツもなく、靴下もない。全裸で全てを晒している。
     二人がしゃがんで太ももに触るという事は、つまり二人の顔面が大事な部分に接近していることを意味している。お尻とアソコが両方とも、前後からの至近距離の視線に晒され、拝まれているのだ。
    
     ジロ……
     じぃぃ……
    
     薄っすらと茂みを生やした初々しい秘所。
     ぷっくりと肉を丸めた柔らかそうな白い尻。
     それらが同時に、顔面至近距離の視線という、サンドイッチ状の挟み撃ちを受ける。恥ずかしい部位に対する、ゼロ距離からの視線は、皮膚に鋭く食い込んで、痛いような気さえしてくる。
    
     ふぅ――
     ふぅぅ――
    
    「――っ」
     前後からの温い吐息が、尻の丸みと秘所の割れ目にそれぞれかかった。
    
     ふぅ、ふぅ――。
    
     息が吹きかかる。
     男の吐き出す、感じたくもない温もりにゾッとする。正面の中年医師を見ればわかる事だが、かかってくる息のせいで、二人の顔が迫ってきている事実を、より強烈に認識させられる。
     じわじわと、雪乃は顔を熱くした。
     赤い顔は沸騰しそうなほどに熱を増し、雪乃の脳をことこと茹でる。ただ恥ずかしいだけの理由で頭がクラクラして、風邪気味の体調不良のように、全身が辛くなった。
    
     さわ、さわ、
    
     追い討ちのように、前後から内股へ差し込まれた手がきわどい位置へやって来る。今にも股下に触れそうな、脚の付け根のギリギリの部分を揉んだ。
    
     もみ、もみ、もみ、もみ、
     
     あまりの熱さに、雪乃は自分の顔の温度を自覚していた。自分の熱気が空気を蒸し、周囲を暑くしている錯覚さえ覚え、暑さにやられたように頭が揺れる。
     一旦、手が離れた。
     中年医師と若手医師の触診行為が、一瞬だけ止まり、雪乃の太ももは解放される。
     次の瞬間。
    
     前後の両手がお尻と秘所に同時に触れ、尻たぶと肉貝が前と後ろでそれぞれ開かれ、恥ずかしい穴が共に覗き込まれた。
    
     雪乃の表情は波打つようにぐにゃりと歪み、怒りとも悶絶ともつかない、頬も唇も変形した顔になる。
    「――――――――――――――っっっ!」
     声にならない叫びが、その顔つきから上がっていた。
     中年医師は親指を使って肉貝を開き、血色の良い陰部の中身を観察している。小陰唇の肉ビラと、突起しかけの陰核亀頭。まだ男を受け入れたことのない、挿入するには狭いであろう膣口の小さな穴。
    「うーん。綺麗だねぇ」
     性器に対するコメントが、雪乃の心を深く抉った。
    「処女のようだし」
     ――うるさい!
    「あー……。クリトリス反応しちゃってる?」
     ――殺すわよ!
     中年医師の発する言葉の一つ一つが、雪乃の心を破裂させんばかりに反応させ、神経を焼くような苛立ちと顔が燃えるほどの羞恥にかられる。
    「こっちも、随分綺麗だなぁ」
    「――――――――――くっ!」
     若手医師の肛門へのコメントが、全てを呪いたくなるほどの膨大な屈辱を注いできた。
     若手医師は両手で尻たぶを鷲掴みにする形で、割れ目を開いて肛門を観察している。綺麗とはいえないこんなところに、情け容赦ない量の視線が注がれる。掴んでくる手の中で、雪乃の柔らかい尻肉は、可能な限り硬く強張っていた。
    「あまり黒ずんでなくて、綺麗なピンク色か」
     ――うるさい!
    「皺の本数は○○本だったかな」
     ――殺す! 殺す!
     雪乃の抱く黒い憎悪は、その目つきと表情に滲み出て、赤面の涙目ながらに、視界にいる限りの男の全てに殺意を剥き出しにしていた。
     どんなに、一般人を殺さない理性はあっても、出来るならこの部屋を丸々と竈に変えたい本心が、雪乃の中でどうしようもなく膨れ上がっている。
     本当は殺せる。それを見逃してやっている。
     そして、恥ずかしいから殺すという、安っぽい怪物になどなるまいとする意地。
     その二つだけが、雪乃の精神を唯一支え、暴走させてはならない感情の荒波をギリギリで抑えている。今にも外れそうな容器の蓋の内側で、外へ出ようと暴れる内容物と、それを抑える蓋の対立のようなものだった。
     その我慢は同時に、こんな連中なんかのための、報われるはずのない苦行ともいえる。彼らへの殺意を抑える意味は、ただ恥ずかしい思いをすることだけなのだ。
    
     負けない……。
    
     雪乃はそれでも、意地を曲げない。
     初めに指示された、頭の後ろで両手を組み、足を肩幅程度に開いたポーズを崩していない。〝普通〟の少女なら、泣いてしゃがみ込みそうだからこそ〝普通〟を捨てた象徴として、耐え抜きたい。
    
     ……負けないわ。
    
     最後まで耐え抜き、殺さずに見逃してやったと言うためだけを目標にして、雪乃は殺意を表に出しつつも、言われた指示は守っていた。
     性器と肛門を同時に観察され、二人が口にする視触診の結果のコメントがペンでメモされ、雪乃がそうされている様子を周囲から眺められても、雪乃はこの意地だけは曲げなかった。
    
         †
    
     そうして、二人の医師に体の前後を全て触られた。体中の全ての箇所に、面積を余すことなく、まんべんなく手垢がついたと思えるほど、実に丁寧な視触診だったといえる。
     それも、二人分の手垢が二重にだ。
     若手と中年がそれぞれ触診してきたので、その分手垢は重ね塗りされ、最終的には顔の筋肉や唇までもを調べられた。
     そして二人は、筋肉が多めだとか少なめだとか、そうした情報を二人でその都度声に出し、記録役の医師がペンを走らせ記録した。雪乃の体つきは書面上のデータ化され、女性の情報サンプルとして、医学用の資料として永久に保存されるとのことだった。
     その時代その時代の、できるだけ多くの人の健康データを詳しく集め、医学的な考察に役立てる。
     目的だけなら、正当性があるように聞こえる。同意の上なら恥ずかしい検査もあるのだろうが、雪乃は学校規則という形で強制されてここに来ている。
     不当だと感じないわけにはいかない。
     若手医師と中年医師は、最終的には、雪乃の性器と肛門を両方とも観察したのだ。肩や膝など、面白くなさそうな場所にも丁寧だったが、お尻や肉貝に関しても、じっくりと揉み込んでいる。
     たった一日で、かなりの人数に恥部を見られている。
     耐えてやろうとは決めているが、絶対に不当だとも、雪乃は強く思っていた。
    
         †
    
    「ベッドで四つん這いになり、頭を下につけ、尻だけを高くした姿勢になりなさい」
    
     肛門検査のための指示で、雪乃はまるでお尻を差し出すかのような情けないポーズを取らされた。
     土下座で額をべったり床につけ、膝を立てて尻を上げたら、ちょうどこんな姿勢になる。
     土下座が頭をよぎったせいで、全裸で過ごす悔しさに加え、さらに別の感情が加わった。
     謝る理由もないのに、土下座で頭を下げている。
     被害者はこちらなのに謝罪を要求され、しかもその相手が加害者である時のような、最悪の屈辱感。単に恥部を晒すのとは確実に違う種類の、この屈辱。
     これをもう一段階例えるなら、尻や胸を触ってくるセクハラの犯人が、それがバレて騒ぎになったという理由で、こともあろうか女性側に謝罪をさせる。別にそんなことはしていないのに、女性が色香で誘ったのが悪いということにする。そんな理不尽な被害者に、自分がなったような気分がした。
     このポーズでは割れ目が広がり、肛門が丸見えになるのだ。
     単にポーズを取ったという理由だけで、それだけ理不尽な目に遭った気分になるには十分だった。
    
    「とりあえず、ギョウチュウ検査からやっちゃおう」
    
     ――それって、まさか!
    
     元より、反意を顔に出す以外の抵抗をする気はないが、その上でも、抗議をしたり「自分でやる」という申し出をする隙もないうちに――
    
     ぺたり。
    
     肛門に貼る専用のセロファンが乗せられて、雪乃ははっと全身を強張らせた。トドメを待つばかりの獲物のように、身も心も固くして、ほぼ反射的に、ギョウチュウ検査を人の手でされることを待っていた。
     雪乃はシーツに顔を埋めたまま、尻の背後に立つ男の気配を感じ取る。片手が無遠慮に尻たぶに置かれ、肉を掴まれ、揉まれて、顔を顰めながら雪乃は堪えた。
    
     ぐりっ、
    
     真っ直ぐに伸ばされた指が、肛門に腹を押し当てる。
    
     ぐりっ、ぐりっ、ぐりっ、ぐりっ――
    
     セロファン越しの菊皺を揉まれ、男の指の感触を、雪乃は肛門で如実に感じる。正確には、固いビニールに包まれたような指先の肉と骨の触感が、雪乃の精神を恥辱に染めていた。
    
     ぐりっ、ぐりっ、ぐりっ、ぐりっ――
    
     木の棒を使った火起こしの方法のように、真っ直ぐな指を左右にぐりぐり回転させ、雪乃の肛門を摩擦した。
     果たして自分は、男達の目にどう映るのか。
     尻を持ち上げたこんなポーズで、肛門をいい様に弄られている惨めな光景が、彼らの前にはあるはずだ。人をこんな風に扱って、さぞかし良い気分であろうと思うと、悔しくて悔しくてたまらない。
    
     ぐにぐにぐにぐにぐに――
    
     まるでその指先から、屈辱的感情を注入されているかのようだった。
    
         †
    
     ぬるりとしたゼリー状の塗り薬を指で塗られて、指先の感触と共に、ゼリーで肛門がひんやりした。
     次に行われるのは採便で、お尻の背後にいる医師は、雪乃にガラス棒を挿入しようと構えている。穴に先端を付き立て、直腸に向かって押し進めた。
     ガラス棒に成分を付着させ、保存して持ち帰るための検査方法らしいが、今さっきとどちらが屈辱的かはわからない。先に与えられた屈辱の余韻の上から、もう一度屈辱を与えて加算しているのか。それとも、元からこのくらいの屈辱なのか。
    
     嫌な違和感ね……。
    
     雪乃は瞼を強く閉ざしていた。
     本来なら、肛門は出すものを出す器官である。すなわち、出口といえるはずの穴を入り口にして、体内に異物が差し込まれてくる。
     痛いとか、キツイわけではない。
     ただ、違和感としか言いようのない違和感が、お尻の穴に雪乃の意識を集中させた。否が応でも、ガラス棒の形をはっきりと感じ取っていた。
    
     ヒク、ヒク、
    
     直腸を目指す侵入者に対して、肛門括約筋が条件反射的に反応して、蠢くようにガラス棒を締め付ける。雪乃自身にそんなつもりはなかったが、体内の領域に侵攻される違和感を前に無反応ではいられなかった。
    「ヒクヒクしないようにねー」
     注意され、どこまでも情けない、惨めな気分になる。
     こんなことを指摘してくる最悪のデリカシーの無さも、腹立たしいことこの上ない。
     ガラス棒が引き抜かれる。
     異物が外へ出てくれる、その点に限っては安心する。
     引き抜くと、つぷっ、と水膜の閉じるような音が立ち、検便が終了した。
     これで、少なくとも肛門は終わりのはず。
     と、雪乃は楽観する。
     その時だ。
     ヌプッ、と。
    
     すぐにビニール手袋をした中指が突き立てられ、根元まで挿入され、直腸検診が始められる。
    
     安心した隙を突くような挿入に、少しでも油断してしまった自分を含めて雪乃は恥じる。シーツに深く顔を埋め、布を強く握りながら、直腸を探る指の動きを雪乃は耐えた。
     挿入された中指は、雪乃の中で患部の有無を探している。健康度合いを指先で品評し、人の直腸に点数をつけようと、医師は指に神経を集中しているのだ。
     直腸壁を調査するために、指を回転して横や上を指の腹でなぞっていく。何度も指を捻り直し、診察漏れがないようにしている指の動きが、雪乃には如実に伝わる。
     初めは奥を調査していた指は、しだいに手前、出入り口に近い部分の直腸壁を探り始めた。前後スライドのようになぞりもするため、左右に捻るのに加え、若干のピストン運動も加わっていた。
    
     ずぷっ、ずぷっ、
    
     指の出し入れ。
     高く持ち上げられた尻に向かってのこの光景は、医師が白衣と手袋で真剣な面持ちなのを除けば、そういう肛門プレイの瞬間に見えなくもない。
     そのために尻を捧げて、雪乃が相手のプレイを受け入れている姿として見ようと思えば、視覚的には確実にそう映る。観賞している男達の中には、完全にそういうつもりで、腹の底では役得に歓喜している者も少なからず混じっている。
     もちろん、検査に過ぎないことは事実だ。
     だが、どちらにせよ雪乃は、こうしてお尻の穴を指で犯され、肛門が異物に慣らされている点に違いはなかった。
    
         †
    
     身体のあらゆる部位の検査は完了し、そして肛門にまつわる内容も概ね消化されていく。ギョウチュウ検査と直腸検診を終えた雪乃は、次に仰向けの指示を受け、開脚を強いられているのだった。
    
     四つん這いの方がまだマシじゃない。
    
     仰向けで、脚をM字状に開いて膝を両手で抱える姿勢は、尻が上へ持ち上がる。乳房、性器、肛門。全ての恥部が観賞可能となるポーズは、ただ維持するだけでも雪乃の精神をすり減らしている。
     顔が隠せないのが問題だった。
     確かに今まで表情を隠す機会はなく、赤面っぷりは常に見られ続けていたが、四つん這いのおかげでシーツに顔を埋めていられて、米粒程度には安心できていたのだ。
     不幸の度合いがあまりにも大きすぎて、結局は悲劇だとしかいいようのない、計算の釣り合わない不幸中の幸い。
     しかし、ここまで恥ずかしくて屈辱的な思いをしている最中では、例えミジンコほどの小さな安心の措置だとしても、その方がマシという理由で縋りたくなる。
     だがそれは、雪乃にしてみれば弱さともいえた。
     精神的に屈強さに欠けるから、よく考えればあっても無くても変わらない程度の、目に見えないほどの小さなマシさなんかが黄金に見える。
     そんなものに少しでも縋っていた自身の弱さは、雪乃のとって自戒したいものでしかなかった。
    「もうすぐだからねー」
     まるで子供を慰めるように、中年医師が言う。
     中年といっても、全身視触診の時とは別の人物が、開かれた雪乃の股へ顔を近づけ、性器を眺める。
     いや、医師だけではない。
     雪乃のベッドに集まる全ての男が、同時に見える三つの恥部を上から眺め、品定めでもするような顔をしている。
     忌まわしい連中だ。
     自分の裸を拝む全ての連中に対して沸く殺意を、雪乃は再び表に出し、このポーズのまま睨み返す。
    「この毛はカットして整えてるね?」
     中年医師は茂みを掻き分けるようにして、一本一本を指で摘んで確かめる。
    「…………」
    「鋏かな」
    「……そうですが」
    「整えるのには理由はあるのかな」
    「ない」
     雪乃は必要以上にぶっきらぼうに答えていく。
    「意識調査も兼ねてるから、明確に答えてね。本当に何の理由もなく鋏を入れて、整えてる?」
    「……………………その方が綺麗、って気がしただけ。深い意味も、理由も、ありません」
     殺意の篭った表情で、素直に答えた。
    「まあいいでしょう。可愛い理由だねぇ?」
    「――っ!」
     煽るような口調に苛立った。
    「じゃあ、触るからねー」
     中年医師は指を雪乃の性器へ置き、ぷにっとした恥丘、肉貝を指の腹でなぞり出す。表面を滑っていくような触り方に、秘所がとてもくすぐったい。
     どうしても意識がいった。
     恥ずかしいあまりに下半身に神経が集中し、指の感触に敏感になる。彼の指の腹がどんな形で、どのくらいの面積をしているのか。そんな事がアソコの触覚でわかるほど、秘所への意識の集中は激しかった。
     いっそ考え事でもして、他に意識を移せる器用な精神作業が出来れば楽なのだが、性器を触られるという重大な事態が相手では到底できない。
     意識がそこに縛り付けられ、本当は無視したい感覚をはっきりと知覚せざるを得ない。
     くすぐったさに似たムズムズするような感覚が、下腹部をキツく引き締め熱くする。肉貝をぐるぐると何周もしていた指先は、やがて縦筋をなぞるスライド往復を開始して、ムズムズとした秘所の熱さを増していった。
     感じてなど、いない。
     こんな形で感じるほど、この体は安くない。
     だが、人間の肉体が持つ生理機能は確実に刺激を受ける。雪乃自身はくすぐったいだけだと思っていても、巧妙な指遣いは秘所をみるみる熱くさせ、そこで汗をかきそうなくらいに、火照っていく。
    
     くぱぁ――。
    
     再び中身を暴かれて、雪乃は赤面の色を濃くした。
     神経の敏感な肉ヒダは、良かれ悪しかれデリケートだ。顔を近づけてくる中年医師の視線を感じ取り、それだけで中身を糸でくすぐられるような感覚を味わう。
     ツン、と。
     クリトリスへの軽いタッチが雪乃を襲う。
    「――――――――――っ!」
     予想外の強い刺激に、雪乃は今までにないほど目を丸めた。
     決して、快感だとは思わない。
     こんなことで、愛情も無しに感じはしない。
     だが、神経の集中する敏感な部分への接触で、例え快感ではないにせよ、性器はまるで無反応ではいられない。恥ずかしさと屈辱から、そこばかりに意識がいき、触れてくる指の形が如実に伝わり、視線さえも触覚で察知する。
     視線と触診を受け、神経は鋭敏化した。
     鋭くなり、熱くなった。
     そんな状態のアソコだ。
     どんなに本人が違うとは思っていても、本当の意味で何も感じないことなどありはしない。
     無視したくても、無視しきれず。
     無反応、不感症ではありきれず。
     下腹部がキュンと引き締まり、熱くなる。
     最悪の展開が押し寄せて、雪乃は焦燥した。
     まさか、そんなことにはなりたくない。
     絶対に、嫌だ。
     雪乃の気持ちなどまるで無視して、中年医師の指がクリトリスとトントン叩く。突起したそこを撫でる触診行為で、触れた具合を確かめる。
    「状態良好。えーと、それから――」
     確かめながら、触れた結果の専門的なことを呟く。それらを書類に書き取る職員の姿が、中年医師の背後にあった。
    「膣口は男性未経験ですが、指が一本か二本程度入りそうな程度の入り口ですね」
    「!」
     そんな事を平然と口にされ、雪乃は顔を歪めた。
     先に散々惨めな思いをしてはいるが、自分の性器をリアルタイムで解説され、何度となく感じてきたのと同じレベルの羞恥と屈辱が押し寄せる。
    「最初の面談では、自慰行為では外側を触ることが多かったという事ですが、おそらく膣口の近くは触れているでしょう。確かに自慰経験を積んでいる性器です」
     雪乃のプライバシー意識など無視して、中年医師は性器に対する見解を述べていく。許可を出したわけでもないのに、勝手に解説材料にされるなどたまらなかった。
    「この色合い、血色は良いですし。クリトリスの反応も良好で生理反応も概ね良し。ちょっと膣内も検診しましょう」
     あらゆる観点から語った中年医師は、ビニール手袋を嵌めたその手で、指を膣に挿入する。
     指が入った。
     この大切な場所に他人の指が入っている事実に緊張し、全身を硬直させて表情を強張らせる。
     指先がゆっくり、膣壁の合わさる壁の狭間を侵攻し、膣の最奥を目指していく。医師の指が根元まで埋まり、指の長さが届く限りの一番奥をつつかれた。
     膣壁全体が蠢いて、包み込んだ指の形を確かめる。
     雪乃の意志でしたくてしているわけでは断じてない。快感などとは認めないが、敏感な条件反射で、膣は蠢きキュウキュゥと収縮する。
    
     じわっ、
    
     何かが、滲んだ。
     気持ち良くなどない、断じて違う。
     異物が体内にある違和感とでも言いようの無い感覚だが、それが他人の指である事実が羞恥と屈辱を呼び覚まし、ついでのように汁が出る。
    「あー。これ、膣分泌液出てますねー」
     中年医師は即座に言った。
    
     違う! 感じてない!
    
     雪乃の目はそう叫ぶ。
     だが――。
    
    「濡れてるのか」
    「検査だというのに」
    「けしからん」
    「いえ、生理反応ですから」
    「そういうものか?」
    
     ざわざわと、大人達は小さな声で、雪乃が濡れ始めている事実について話題にする。
     それは雪乃にとって、鞭打ちにも匹敵する拷問だった。
    
    「膣液に違いないんだな」
    「いやぁ、出ちゃったかー」
    「ま、そんなもんでしょう」
    
     一つ一つの言葉が雪乃の心を強く鞭打つ。
     精神的苦痛もさることながら、自分の性情報について目の前で話題にされるという種類の恥ずかしさで、またもや頭が揺れて目眩がしてくる。
     恥ずかしいという理由だけで、こんなにも頭がクラクラするものなのかと。この状況でズレた関心を抱くほど、雪乃は熱っぽくなった自分自身の状態を思う。
     指はしばらく、抜かれなかった。
     最初の数分は栓を奥まで閉じたまま、指を左右に捻る事で膣壁の触感を確かめる。やけに念入りに、真剣な面持ちで行っていたため、これだけで二分か三分は消費していた。
     奥を調べつくして、ようやく指は外側へ動き、中年医師の視点から見たもう少し手前の膣壁が調べられる。中間地点の触感をチェックするため、若干ながら指は前後に揺れ動き、雪乃の膣に刺激を与えた。
    
     こ、この人! こんな――。
    
     単に性的刺激を与える目的なら、もっと普通に出し入れしていることだろう。気にかけたポイントに限って、膣壁の一部分をなぞるための前後の動きは、確かに診察行為に過ぎない。
     だが、膣内で確実に指が動き続けているのだ。
     それがどんなに小さな動きで、医師側に性感を与える目的がないとしても、微量の刺激は時間をかけて蓄積する。
     初めは、汗が滲む程度の量の膣液だった。
     それがもう少し増え、もっと目でわかりやすいほど、雪乃の股は濡れていた。
     まるで汗ばむかのように、膣口から滲み出た汁が股全体をしっとりさせ、蛍光灯の光をキラキラと粒状に反射していた。
     やがて指は引き抜かれ、医師はガーゼで汁を拭き取る。
    「…………」
     黙して受け入れる雪乃。
     だが、全身が震えていた。
     濡れたところを見られた恥ずかしさと、人に股を拭かれる屈辱という理由だけで、体中が痙攣したように震えていた。
    
    「さて、時槻雪乃さん。現在、尿意はありますか?」
    
     そして、その質問内容が次の屈辱内容を暗示していた。
    
         †
    
     ジョオォォォォォォォォ――。
    
     尿検査。
     次の検査に移ると、雪乃の前に尿瓶が用意され、雪乃はその中に向かって放尿を強いられる事となった。
     ベッドでの仰向けで、脚をM字にした姿勢のまま。
    
     ジョオォォォォォォォォ――。
    
     ぴったりと当てられた尿瓶の容器で、透き通った黄金水が順調に溜まっていた。
    「~~~~~~~~っ!」
     こんな形で、衆人環視の前に立つ雪乃は、ほぼパニックといっても差し支えない状態にいた。
     人前で用を足すなど、想像すらしたことがなかったのだ。
     学校の性教育やインターネットの情報で、性行為に関する知識だけなら持っていたが、マニアックなプレイまでの知識はさすがにない。そういう情報に、積極的な興味を持とうとしなかった雪乃は、まさか女性の放尿を見たがる男がいるなど知りもしないのだ。
     かといって、別にこの場にいる男性に特殊性癖者がいるわけではないのだが。
    
     ジョオォォォォォォォォ――。
    
     そういうわけで雪乃は、世の中に人前で放尿を行う機会が存在すること自体、発想すらなかったのだ。
     困惑を通り越して、衝撃。
     尿瓶を当てられた雪乃は、直後は尿が引っ込み、すぐには出せずに時間がかかった。衝撃で真っ白にされた頭が少しずつ思考を取り戻し、一体どんなありえない指示を出されているのかを明確に理解して、さらにしばらくの時間を費やし、ようやく放尿に至っている。
    
     ジョオォォォォォォォォ――。
    
     雪乃自身、もう自分のしていることが信じられない。
     顔の筋肉が許す限界まで、雪乃は強く瞼を閉じ、唇も結んで歯も食いしばる。人間の顔の極限まで赤くなった有様と、可能な限り表情の歪んだ、いっそ面白いほどの顔つきが、そこにはあった。
     雪乃の強いられている、自身の膝を抱えた開脚ポーズ。そのせいで両手とも膝裏を握っているため、そんな羞恥と屈辱が極限まで表に出ている表情を一切隠せず、この状況で唯一可能な、顔を横にして顔面半分をシーツに隠すことだけに全力の限りを尽くしていた。
    
        †
    
     パシャッ、
    
     最後に行われる撮影。
     全身視触診の際に取ったのと同じ、頭の後ろに両手を組んで足を肩幅ほどに開くポーズで雪乃は、カメラの焚くフラッシュとそのシャッター音を一身に受けていた。
    
     パシャッ、
     パシャッ、
     パシャッ、
    
     撮影担当者は乳房を映す。
     最初の数枚は正面から、さらに追加で横から取る。片方ずつをアップで取る。乳首を中心に撮影するため、ズーム機能で乳首だけを拡大して写真に収める。
     女子の発育情報をデータ化する資料として、乳房やお尻といった部位に絞って、雪乃は恥部を撮り尽くされるのだ。
    
     パシャッ、
     パシャッ、
     パシャッ、
    
     乳房だけでも、これで十回以上はシャッター音が切り落とされた。
     瞼を閉じ切り、限界まで顔を歪めた恥辱の象徴そのもののような表情まで含めて、ここでは撮影対象だ。裸を撮られる恥ずかしさの中、女の子がする『表情』さえも、彼らは採取しようというのだ。
    
     パシャッ、
    
     顔面のアップ。
    
     パシャッ、
    
     乳房と顔面をセットで映した一枚。
    
     パシャッ、
    
     頭からつま先までかけて、一糸纏わぬ姿が丸々と収まる一枚。
    
     そんな写真の数々を撮られる雪乃は、さすがに目に涙を溜め込んだ表情になっていて、本当に泣き出していないことがもう奇跡といえるほどの状態に雪乃はある。
    
     パシャッ、
    
     普通の撮影なら、まずもって感じなかったであろう、シャッターとフラッシュに対する激しい心の苦痛。それは本当の胸の痛みを錯覚するほどに、雪乃の胸を抉っていた。
    
     パシャッ、
    
     丸いお尻が撮影される。
     同じ写真を何枚も、お尻に向けてフラッシュを焚く。
     パシャッ、
     パシャッ、
    
     正面から、茂みの生えた性器が撮られる。ある程度カメラを離した一枚から、レンズを接近させた接写をそれぞれ数枚ずつ撮った。
    
    「四つん這いになってねー」
    
     パシャッ、
     パシャッ、
     パシャッ、
    
     桜色の菊皺が、レンズに収まる。
    
    「アソコも開いてねー」
    
     パシャッ、
     パシャッ、
     パシャッ、
    
     開かれた肉ヒダが撮影され、恥部といえる箇所の全てがカメラに収まった。
    
    「はい、終わりだよ」
    「一時間ほど休憩したら、服を返してあげるからねー」
    
     一時間……。
     長いあいだ過ごした時間に加え、さらに追加で一時間、雪乃は男達のいる環境下で全裸で過ごす。
     解放されるまで、ほんの数時間が一週間にも思えていた。
    
     かくして、雪乃の得た『痛み』は、果たして化け物たるための糧となったのか。
    
     それは誰にも、わからない。
    
    
    


  • 時槻雪乃の精密身体検査(前編)

    中編 後編

    
    
    
     時槻雪乃の通う学校では、毎年、精密身体検査が実施されている。精密というように、普通の測定や診断と比べて、遥かに詳しく全身を調べるものだ。そんなものを好きで受けたがる女子はいない。いや、男子だって恥ずかしい。
     乳房の測定、性器の観察。
     プライバシーを著しく侵害する検査内容が、毎年当然のように実施されている。人権団体や女性団体あたりが抗議に来てもおかしくないような検査方法が、利権を持つ大人達の手によって、特例として認められていた。
     入学前までの雪乃はそんな事など露も知らず、入学後になって初めて、そういう検査があるらしいことを耳に挟んだ。
     そんな検査の対象に、雪乃は選ばれていた。
     ほぼ、生贄だ。
     どこぞの医学界だか、大学だかと契約を結んでいる関係上、学校は毎年一人の生徒を差し出し、検査を受けさせなくてはならないらしい。そこで、大抵の教師は気弱でものを断るのが苦手そうな生徒を狙うが、どこでどう根回しがされたのか。
     初めは別の誰かが話を持ちかけられていたらしいのが、情報を手にした女子達が団結し、率先して別の生徒を対象にするよう教師達へ呼びかけたのだ。あの子はやめて、可哀想。他にふさわしい子がいるはず。という風に。
     そうして、クラスから差し出されたのが時槻雪乃。
     雪乃を提供する変わりに、自分達の安全を保証してもらう。
     つまりは、雪乃は生贄なのだった。
    「あーあ。大変そうね」
     ひそひそと片隅で、女の子達が交わしている言葉が聞こえる。
    「検査対象なんでしょ?」
    「引き受けたの?」
    「らしいよ」
    「よくやるねー」
     教室にいるクラスメイトの多くは空気のように雪乃を無視するが、無視できない者は明らかに疎ましげな、あるいは好奇の視線を雪乃へ向けたりする。そんな一部の、雪乃に対して陰口を叩く女子グループが、それらの言葉を交わしていた。
    「アソコとか調べるんでしょ?」
    「なにそれ、拷問じゃん」
    「問題になんないのかなー。絶対おかしいよねー」
     それらの言葉を風のように無視して、雪乃は頬杖をつく。
    「……」
     ただ黙々と、窓の外を眺めて過ごしていた。
     雪乃は、クラスメイトを含め学校の全てを、空気のように扱おうとしていた。皆からも、自分が空気のように扱われることを望んでいる。
     そうすれば、お互い楽だろうに。
    「そういえば、先輩が検査受けたらしいんだけどさー」
    「嘘、どうだったの?」
    「やっぱりね。いっそ死にたくなる思いだったって」
     そんなひそひそ声が、嫌でも雪乃の耳をつく。
    「酷いねー」
    「裸とかなるんでしょ?」
    「ありえないって」
     女子達が話題にしている精密身体検査の対象に、今は雪乃自身がなっているのだ。自分の数日後の未来に関係のあることだけに、腹の底では無視したくても、聞こえてくる言葉の数々がどうしても耳の奥まで響いてくる。
    「受けるの、あいつで良かったね」
    「本当にねー」
     自分達でそう根回しをしたくせに、まるで他人事のようにホッとしている。
     本当ならもっと、腹立たしい。
     ちっとも怒りが沸かないといえば嘘になる。拷問的らしい身体検査に人を叩き込んでおきながら、自分達でした根回しも忘れて、さも自然とそうなったかのように振舞う。何も思うところがないといえば嘘になる。
     だが、雪乃はそれを甘んじて受け入れていた。
     所詮、雪乃は『普通』の幸せを捨てていて、クラスメイト達は普通の世界に生きている。言って見れば別の世界に生きている連中など、会話すら、するだけ無駄だ。
     こうした雪乃の態度は、明らかにクラスメイトとの軋轢を生んでいるが、雪乃はそんな軋轢から生まれる痛みをも、自らの糧にしようとしていた。
    
     ――この痛みがある限り、<断章>の痛みも忘れない。
    
     苦痛や恐怖。かつて遭遇した<泡禍>の中で、心に焼きついたトラウマに類する感情をくみ出す事こそ、自分の中の悪夢の<断章>を紐解くプロセスだ。
     クラスのこうした、雪乃に対する反感や敵意も、全ては雪乃にとってそれらの感情を忘れないための糧となる。孤独の中で過去を反芻し、ただひたすらに自分を切り刻み続けることが、化け物と戦う化け物であるために、雪乃に必要なことだったのだ。
    
         †
    
     検査当日の時槻雪乃は、誰も生徒のいない、教員も限られた人員しかいない日曜日に登校した。余計な生徒達が初めからいない日曜日なら、わざわざ男子を追い出したり、無関係なクラスメイトを隔離する配慮が必要ない。そうした日程による配慮自体が、これから行う検査の恥ずかしさを暗示するようで、さしもの雪乃も気が重くなっていた。
     学校とは煩わしい義務だ。
     しかし、義務教育でもない高校に雪乃は通い続けている。伯父と叔母に対する、ほぼ唯一といってもいい負い目が雪乃にはあるからだ。
     三年前の忌まわしい災禍により、孤児となった雪乃を、それが当然であるかのように、伯父と叔母は引き取ってくれた。二人はやや気弱なところがあるものの、穏やかな人格者で、とても良くしてくれている。
     そんな二人が雪乃の幸せを願って、せめて高校を、できれば大学にまで行って欲しいと思っている。
     ただそれだけが、雪乃が高校に通っている理由だった。
    
         †
    
     いつものように上履きに履き替え、しかしクラスではなく、身体検査用に指定された別の教室へと雪乃は足を運んだ。
     がらん。
     戸を開き、教室に踏み入る。
     検査用に机の並べ替えられた教室には、幾人もの関係者が集っていた。机を横並びにした席に、まるでこれから、面接でも行うような雰囲気で座っている中年たち。
     白衣を着た、検査を担当するであろう数人以上の医師。学校内でも何度か見かけた覚えのある男性教師。あらゆる種類の男性が集まっていた。
    「…………っ」
     雪乃は歯噛みした。
     脱衣の必要性があると聞く検査だというのに、立ち会いの関係者全てが男性だけで構成されている。都合良く女性を用意できるとは限らないにせよ、これだけ何人もの関係者が集まるのなら、一人くらいは女性がいても良さそうなものだ。見渡す限り、若手に見える男から中年まで、年齢がバラけている以外に女性らしき姿はどこにもなかった。
     十人以上いる男達の中で、自分一人だけが女の子。
     普通の少女なら、狼の群れに放り込まれた羊の気分を味わうところだが、雪乃はそれを良しとしない。化け物と戦う化け物たる己が、こんな事で緊張したり萎縮するなど、雪乃にとってあってはならない。
     これしきを恐れるほど、程度の低い存在じゃない。
     風船のように膨らむ緊張感を、雪乃は胸の内側で封殺した。
    「市立一高一年四組。時槻雪乃です」
     挨拶する。
    「えー。では時間も勿体無いことだから、早速、市立一高の精密身体検査を始めるとしよう」
     一人の男が、事務的にそう言った。
     そして、別の男がさらに指示する。
    
    「では、衣服を脱いで下着のみになりなさい」
    
     淡々と告げられる指示に、雪乃は一瞬固まった。
    「……ここで、ですか?」
     つい、雪乃は質問を口にしていた。
     裸になるらしいことは、事前の説明で知っていた。断ったり、抗議の言葉でも唱えたかったのは山々だったが、クラスでも孤立している雪乃が、仲間の声も借りずに、一人で学校制度に楯突くためには並々ならない決意がいる。そうするより、それを『痛み』として受け入れる道を選んだ雪乃は、決して積極的な気持ちなどないにせよ、こうして検査を受けに来ていた。
     しかし、ここまで配慮の欠片もないことまでは、想像していなかったのだ。
     例えば、脱衣を行う場合。
     どこか別室で服を脱ぎ、バスタオルでも巻いて移動する。あるいは衝立を用意して、そこで脱ぐ。肌を出すのは必要な場合に限られて、いきなり脱がされることはないだろうと、正直なところ甘く考えていた。
     その想像が、一言で覆されたのだ。
    「ええ、ここで脱いでください」
     当然のように告げられる。
     そして、雪乃を取り囲む男達全てが、無言のプレッシャーを雪乃にかけていた。
     早くしろ、時間が押している。
     声無き声が、その表情と部屋全体の空気から、雪乃には痛いほど伝わっていた。
    「どうぞ」
     と、教師が脱衣カゴを足元へ置いてくる。
     それもまた、プレッシャーに感じられた。
    「……わかりました」
     いいだろう、脱いでやる。
     彼らは所詮、普通の世界に住む別の生き物。雪乃は<泡禍>と戦う<騎士>であり化け物だ。ならば、別の生き物に裸を見られるなど、犬や猫に見られるのと変わらない。
     雪乃はそう強がり、気丈なまでにさっさと脱いでみせようとしていた。
     雪乃はセーラー服のスカーフを抜き、脇腹あたりにあるボタンを外す。こんな事は何でもない、余裕であるとアピールするかのように、雪乃は実に早々に上を脱ぎ去る。
     スカート、靴下まで、まるで時間をかけずに普通に脱ぐ。捨てるかのようにして、脱衣カゴへと叩き込んでいた。
     だが、雪乃は確実に赤面していた。
     カァァァアア――!
     顔面全体が面白いほどに変色し、首を境界線にして、頭と胴体がほぼ別色と化している。
    「ふんっ」
     トマト顔で鼻を鳴らす雪乃が、本当は恥ずかしがっていることなど誰の目にも明らかだった。
     狼の群れで無防備になっているようなものだ。
     一人だけ服を脱いでいる状況下で、本当に何も思わず、無心を貫くことなど不可能だった。
     そこへ、雪乃だけに聞こえる亡霊の声。
    『……うふふふふ、可愛い雪乃』
     三年前に家族を惨殺して死んだ、雪乃の姉、時槻風乃。
    『花も恥らうウブな乙女が気丈に振舞うその姿。とても、とても傑作よ?』
     歌うような不快な声を、雪乃は硬い表情で無視する。
    『それに、黒なのね』
    「……るさい」
     下着の色をわざわざ声で指摘され、雪乃は呻くように小さく口の中で呟いた。
     雪乃の下着は黒い。
     ゴシックロリータを戦闘衣装のようにしている雪乃は、<騎士>として活動する際、なるべく下着にもこだわる。普段からゴシック風のものをつけているのだ。
     黒い布地全体を、白いレースで飾ったブラジャー。肩紐もほとんど白レースになっており、ショーツも同様の華やかさで白いリボンを生やしている。両側をリボン結びで止めるタイプになっているので、紐を少し引っ張れば、簡単にはらりと落ちてしまうショーツだった。
    「ブラジャーを外しなさい」
     厳格な指示者の命令。
     雪乃は自分に躊躇いを許さずに、恥じらいを胸の内側に封印した、唇を内側に丸めて何かを堪える表情で、背中のホックを外してブラジャーを取り外す。
     曲線の丸い、陶器のように白い美乳が曝け出された。スベスベと、あるいはサラサラしていそうな乳肌は、その頂点で乳首をツンと尖らせている。新鮮で、甘く柔らかそうな果実の香りを放って見えた。
    
     じぃぃぃぃ……
    
     十人以上の男達が放つ、四方八方からの視線は、間違いなく胸や尻へと向けられる。ここにいる男性は、建前上れっきとした検査の名目で来ているが、心の底では役得を楽しむ気持ちを抱いている。
     真面目な男が、少しは興味を持ってしまったり。
     あるいは、初めから好奇心だけで見学に来ている者。
     様々な種類の視線が雪乃を包囲し、全身をくまなく、目だけで撫で回す。
     見ているのは、何もいやらしい部分だけではないのだろう。
     左腕に巻きつけられた包帯と、そこに薄っすらと滲んでいるリストカットの痕跡。嫌でも目立つ部分だが、あえてそこに触れる大人はいなかった。
    
     ドクッ、ドクッ、ドクッ……
    
     雪乃の耳に聞こえるのは、自分自身の心音だ。
    
     ドクッ、ドクッ、ドクッ……
    
     舞台の本番でも迎える直前のような、否、そんなものは比べ物にならない途方も無い緊張感が雪乃の全身を硬直させ、鼓膜を心臓の音で満たしていた。
     雪乃はそっと、目を瞑る。
     ここにいる男達は一人残らず、普通の世界に暮らす自分とは違う生き物だ。自分と同じ生き物なら、動物に見られて恥ずかしいなど、雪乃の目指す化け物はそんな安いものではない。
     もっと、この程度では何も感じない。
     完膚無きまでの、化け物だ。
     そうであるためだけに、膨れ上がる羞恥心を胸の内側に封じ込めて堪えていた。
    「……ぬ、脱ぎました。早く進めて下さい」
     今にも震えそうな声に意志を込め、赤面ながらも、真っ直ぐな瞳で雪乃は言う。
    「これより、面談形式での意識調査を行います」
     一人の男が、説明を開始した。
    「事前にお渡ししたプリントで、既にいくつかの項目について質問を行っていますが、ここではその内容を元により詳しい事情をお聞かせ願います」
     口調も、表情も、ひどく堅苦しく事務的だった。
     雪乃の正面で机を並べ、書類を広げてボールペンを片手にしている男達が、面談形式の担当者だ。五人もの中年男性が横並びになり、それぞれが厳格な面持ちで、まるで会社の面接でもするような硬い雰囲気を放っている。制服さえ着ていれば、本当に入試面接にしか見えない光景だったはずである。
    「自慰行為の経験について、有りの方に○がついていますね」
    「……」
    「では何歳の頃から、どのような方法で主に自慰行為を行っているのか。具体的に説明しなさい」
     雪乃は一瞬、口をつぐんで、心の準備を整えた。
     学校で、精密身体検査を受けるようにと担任から頼まれ、とうとう了承してしまった雪乃は、その日の間に書類調査用のプリントを渡されている。そこには自慰経験や初潮の時期などについて尋ねる質問があり、『はい』か『いいえ』に○をつけるか、時期年齢を記述するなどして回答している。
     中年男性達の手にあるのは、きっとそのコピーだ。
    「初めては、○歳の時で……。それから、最初は下着の上から触って……。慣れてきてから、中に手を入れた。……と、思います」
     自分で嫌になるほど、たどたどしい受け答えになった。
     これが普通の質問で、普通の面談だったなら。
     例えばやっていた部活でも聞かれ、当時はどんな活動をしていたかを答えるような、常識的な内容だったら。スラスラとはいかずとも、ここまで気が弱そうな、すっかり肩の縮んだ声が出るようなことはなかったはずだ。
     気の小さそうな震えた声を出してしまった、自分自身の声帯が呪わしい。
    「なるほど。クリトリスに触れたり、中に指を入れるなどは」
    「いいえ」
    「道具。例えば鉛筆で擦る、バイブを購入するなどは」
    「……ありません」
    「手、のみを今も昔も使用していると」
    「はい」
    「では、初めてアソコに手を触れようと思ったきっかけは何かありますか?」
    「それは……」
     と、雪乃はきっかけについてまで語っていく。
     もはや面接だの面談だのというより、取り調べを受けている気分に近い。ここまで来て、制度や規則を相手に逆らえず、ほぼ強制的に質問への返答を要求される。心が折れたという理由でここにいるつもりは断じてないが、何かの理由で取調室にでも閉じ込められ、警察に調査を受けている気持ちに近い。
     どう考えても、脱衣の必要性のない内容を、裸でやらされているせいだ。
     こういう扱いを受ける犯罪の容疑者が、実際にどこかにいるかもしれない気がしていた。
    
    「初潮の時期は○歳の○月とありますが、この時の気持ちを覚えている限り語って下さい」
    「胸の膨らみ始めで感じた事、思ったことを語りなさい」
    「陰毛が生えたのは○歳の時とありますが、初めて自分の成長に気づいた時はどう思いましたか」
    
     書類を元に、女の子なら誰でも感じる、その時の気持ちについてを語る要求。
     雪乃がそれらを述べていくと、中年男性達は素早くペンを走らせて、書き取っていく。犯罪者が取り調べの供述を目の前で記録されたら、まさにこんな気分がするかもしれなかった。
     さながら囚人が受ける扱い。
     なるほど、いっそ死にたくなる。
     だが、普通を捨てた者がそれではいけない。こんなことで、たかだか意識調査を受けただけで、鬱に陥ることなどあってはならない。
     雪乃にあるのは、自分自身に対する戒めだった。
    
         †
    
     疑問があった。
    「……」
     面談調査から次の測定へ移り、身長計で背筋を伸ばしていた雪乃としては、何か思わずにはいられない。
     どうして、初めから脱ぐ必要があるのか。
     先ほどの質問調査も、身長の計測も、どちらも脱衣の必要性は全く皆無だ。脱がなくても出来ることをまとめてやって、脱衣の必要がある内容は、全てその後にでもして欲しい。それを事前に脱がされ、裸でいる時間が無駄に長引いているのだ。
     純粋に、納得できない。
     納得がいかないまま、指示通りに身長計に足を乗せ、顎を引いて背筋を伸ばした、気をつけの姿勢を取っている。しかも、測定を行う男が、背中をしっかりくっつけるためと言わんばかりに腹に手を当て、押している。ただ押すというより、皮膚を揉んでいるようでもあった。
     不快なセクハラを交えてバーを下ろされるのが、雪乃をますます不機嫌にしていた。
     こうして腹を触るばかりか、座高では肩を触られ、体重計では正面からまじまじ見られた。ただ脱がせるに飽き足らず、注ぎ込む視線の量にも配慮はない。表立ってニヤついていないだけで、彼らは十分に胸を眺めていた。
     身長を初めとする身体測定を担当するグループのことごとくは、全て男性教師である。雪乃にとって、どうでもいい人物には変わりはないが、学校内で幾度となく顔を見かける相手に裸を見られる。そこに何の感情も沸かないわけがない。
    「○○センチ」
     バーを読み上げ、教師が告げる。
     別のもう一人の教師が、書類に数字を書き取っていた。
     そしてまた、別の教師がメジャーを手にして、雪乃の胸へと巻きつける。
    「トップバストは○○センチです」
    「……」
     理科教師、数学教師、英語教師。
     授業のたびに顔を見る教員が、こうして胸を測ってくる。
     雪乃は他人に無関心を貫いているが、彼らは今後、雪乃を見るたびに今日の出来事を思い出し、こっそりニヤニヤするのだろう。先程の性情報や今測っているスリーサイズが、ことごとく男の妄想のネタにされ、使われるのかと思うと気が重い。
     せめて服を着せて欲しい。
     切実な思いが募り、声を荒げて抗議したいほどの気持ちになってはいる。しかし、雪乃がずっと周囲の一般人から距離を置くために作り上げてきた他人への無関心が、それについて声を上げることを阻んでいた。
     腰にメジャーを巻かれる。
    「ウェスト、○○センチ」
     尻に巻かれる。
    「ヒップ、○○センチ」
     スリーサイズが全て知られた。
     自慰行為の経験や、初潮や陰毛の生えた時期までもを知ってしまっている教師達は、もう随分と雪乃の情報を握ったことになる。脅迫やセクハラに使えるであろう秘密を、ことごとく手に入れられ、弱みでも握られたような、かなりの居心地の悪さを覚えてくる。
    『皿に置かれたご馳走と変わらないわね』
     風乃が言った。
    『目の前にある美味しい果実を、彼らは思うままに箸で摘んで味見しているわ。その真っ赤な顔で、強がっている表情は、どんな味がするのかしらね』
    「……るさい」
     口の中だけで、かすかに呟く。
    『ふふっ』
     風乃は薄笑いを浮かべるだけだった。
    
         †
    
     より精密な情報を集めたいらしいこの検査は、スリーサイズだけには留まらず、他のあらゆる部位にまでメジャーを当てて長さを読み上げ続けていた。
    「右人差し指○○センチ」
     というように。
     あらゆる箇所の長さを測る。
     気恥ずかしかった。
     もちろん、裸でいる時点で気がどうにかなりそうだが、腕だの膝だのの長さまで測る。自分でも知ることのなかった情報を調べられるのは、裸体を見られるのとはまた違った、別の気恥ずかしさが沸いてくる。
     駄目だ、堪えろ。
     自分はこの程度ではないと、雪乃は耐える。
     太ももにメジャーを巻かれるのも、乳首と乳輪の大きさを測るために、胸に指が当たってくる不快感も、全て『痛み』だ。これら全てが、糧となる。
     やるならやれ、用が済んだら帰るだけだ。
    「――っ!」
     直後、雪乃は驚いたような険しい顔で目を丸め、諦めたように目を伏せる。
     ショーツが下げられたのだ。
     あまりにも突然、スッ、とショーツは膝へ下ろされ、大切な下腹部は丸晒しになっている。アソコにも、お尻にも、男達の視線は集中し、これで雪乃の全てが見られた。
    「~~~~っっっ!」
     普通の裸ですら、初めて人に見せているのだ。その日のうちに秘所まで見せるなど、刺激と衝撃の強い体験だ。これでも無心でいられるほど、雪乃の羞恥心は安くはない。
    「尻の割れ目は、と……」
    「!」
     次に教師がしてきたのは、割れ目に沿ってメジャーを当ててくることだった。
     目盛りを固定するための親指が、割れ目の上端、尾てい骨のあたりを強く押す。お尻のカーブへ向かってメジャーは伸び、狭間へ食い込み、下腹部のほぼ真下へと目盛りは合わされた。
     雪乃は全身を硬直させた。
     男の指が、性器のすぐそこにあるのだ。
     今にも触れてきそうなきわどい位置で、しかも男の顔が股下を覗いている。
    
     じぃぃぃぃ
    
     目盛りの数字を見るために、太ももの隙間が覗かれる。
     恥ずかしい!
     さすがの雪乃も、歪んだ顔が叫んでいた。
     ……恥ずかしすぎる。
     仮に日常生活でスカートを覗かれたとしても、下着がある以上はここまでの気持ちにはならないだろう。その日、一日は気分が悪くなるだろうが、パンツを見られてトラウマ並みのショックに至ることはまずありえない。
     だが、これは十分にトラウマになり得るレベルだ。
    「――くぅっ、うぅ…………!」
     胸を深く抉り取るほどの、鋭い羞恥が雪乃の心に刃を立てて、突き刺されたような精神の苦痛に雪乃は悶える。恐ろしく不機嫌に見えるほど表情を強張らせ、頬を硬くし、真っ赤な顔で肩を震わせていた。
    「○○センチ」
    『へえ? そうなの』
     男性教師は事務的に、風乃の声は好奇心たっぷりに、それぞれの言葉が雪乃の鼓膜に突き刺さる。
     ひどく恨めしくなった。
     尻の割れ目の長さなど、一体どこでどう役に立ち、活用する機会のある情報なのか。どうしても無駄にしか思えない、そして恥ずかしすぎる測定が、恨めしくなってくる。
    「ここからは少し測りにくいので、少し姿勢を変えましょう」
    「さ、時槻。足を肩幅に開いて」
    「それから、足首を掴むんだ」
     つまり、下腹部が無防備になる姿勢。
    「…………」
     雪乃はすぐには従えず、さすがに躊躇った。口をつぐんだまま数秒以上は下を向き、早くしろ、と注意され、同じ指示をもう一度出されるまでは、動けなかった。
     安くなる気がした。
     これがそういう検査で、従わなければ終われないのはわかっている。ただの少女一人にどうにかできる制度や規則でもない以上、受け入れるしか道がない。
     そうとわかっていても、言われたから、はいそうですかと従順に性器を曝け出せるほど、雪乃のプライドは安くない。
     動物に裸を見られたからといって、別の生き物を相手に恥らうなど無駄だし無意味だ。
     しかし、動物相手に従わされ、乙女にとっての大切な場所を勝手気ままに観察されるなど、到底許せることではない。こんなことまで受け入れたら、人としての尊厳やプライドまでもが安物と同じになる気がして、出された指示には即座には反応できなかった。
     だが、結局はやるしかない。
     ――……殺す。
     心の中でだけ、呟く。
     膝にかかった黒ショーツが、ぴんと伸びる程度に、足の幅を広げる。
     腰を折り曲げ、腕を下へ、足首を掴む。
    「~~~~~~っっっ!」
     尻に集まる視線に顔を歪めた。
     雪乃の取ったこのポーズは、折れ曲がった腰から下腹部の全てが丸見えになってしまう。茂みを生やした綺麗な秘所と、薄紅色の肛門が、測定者の視線を受け止めている。
     尻穴さえ丸見えだ。
     恐ろしく、屈辱的だった。
     向こうの指示とはいえ、自分でこんなポーズを取るなど、自ら恥部を見せつけているようなものだ。犯罪者の取り調べですら、こんなことは普通はあるまい。まるで尊厳を無視した扱いは、不服どころの問題ではなかった。
    「ではでは、肛門から性器までの距離は。と」
     必要性のわからない箇所を測るため、メジャーがそこへ当てられる。
    「――くっ、くぅ!」
     雪乃は歯軋りした。
     目盛りを指で固定するため、男の親指が肛門に乗せられ、ぐりぐりと押し込むようにしてくるのだ。
     こいつ……!
     雪乃の姿勢からでは、自分の尻は見えない。ただ親指が押し付けられる感触だけが肛門を襲い、恥ずかしいあまりに意識がいき、ぐにぐにと皺を揉むようにしてくる指つきが、嫌というほど如実に伝わった。
     そしてメジャーの目盛りが、女性器の割れ目の先端へあわせられる。肛門と性器の距離という、雪乃には到底理解できない情報が、書類へと書き取られた。
     記録係がペンを走らせる姿など見はしないが、静かな部屋で、ペン先が紙を引っ掻く音が耳に伝わる。乳首の直径も、乳輪の大きさも、普通なら測ろうとも思わない箇所の数字が書かれている事実を、そのペン先の音が雪乃に痛感させていた。
     そして、こんなポーズで、恥ずかしい部分を測定されている有様を、そのさらに周囲にいる男達が眺めている。恥部を見られること自体の恥ずかしさと、惨めな扱いを観賞される二重の羞恥が雪乃の顔を赤くしていた。
    「うぅ…………」
     目尻から涙が滲みそうになってきて、雪乃はそれをぐっと堪えた。目の下の頬肉に力を入れ、表情を歪ませ、雪乃は力いっぱい、屈辱を堪えた。
     今度は性器に沿って、メジャーが当てられる。
    「――っ!」
     決して、人に触れられることなどありえない場所。肉体関係まで進んだ恋人でもいなければ、絶対に明け渡すことなどありえない大事な部分を、直径を測るなどという目的のためだけに触られている。
     完全に指が当たっていた。その温度と感触が、嫌というほどアソコに伝わる。
     いや、メジャーが肉貝に触れているだけでも、想像を絶するほどの不快さが雪乃を襲っていた。
     例えるなら、汚物でも喰わされるような屈辱。あるいは全裸で靴でも舐めさせられるほどの屈辱。そんな例えが現実味を帯びるほど、この性器測定という行為は、羞恥と屈辱で雪乃をひどく苦しめていた。
     本当に、涙が出そうだ。
     だが、こんなことで、泣いてたまるか。
     泣けば、それは敗北だ。
     せめて、ここで負けてやる程度の存在にだけは、なりたくないしなってやらない。
     不幸中の幸いで、今なら顔を見られる心配のない雪乃は、強く強くまぶたを閉じた。筋力の許す限り強く引き締め、眼球が潰れるほど強く閉じきり、思う存分に涙を堪えた。
     ただ存分に堪えることだけが、今の雪乃にある『不幸中の幸い』であった。
    「縦の長さ○○センチ」
     数字が書き取られると、向きが変わる。
    「横の長さ、○○センチ。片方につき○センチですね」
     今度はメジャーを横に這わされていた。
    「じゃあ、あとは」
    「中身ですね」
     そう聞いて。
    「……っ!」
     雪乃は戦慄した。
     既に十分にプライドを傷つけられ、人間扱いされないことの屈辱を味わっている。外側のサイズを取られただけでも、いっそ死にたいほどのところを、その上さらに、肉貝の中まで覗こうというのだ。
    「んじゃあ、お願い」
    「はーい」
     二人の男のやり取り。
     しっかり測定しやすいために、肉貝を開く係と、測る係に別れての分担作業となったのだ。
     一人の教師が、前屈状態の背中から腕を回し、下腹部へと手の平をべったり乗せる。太ももの付け根あたりが掴まれ、その指先が秘所の皮肉に触れ、雪乃はビクンと、バネで弾むかのように肩を跳ねさせ、すぐに全身を硬直させた。
    ――見られる。
     危機感を前に、雪乃は動けなかった。まるで銃口でも向けられて、引き金を引かれる瞬間、死の危機を前にしながら、恐怖で体が動かないかのような状態。
     ただ、中身を見られるという危機感だけに頭が満たされ、それだけが全身を支配し、関係のない全ての思考が一層されていた。逃げよう、抵抗しようという、そういう考えが浮かびさえもせず、ただ見られるのを待つばかりと化していた。
     アソコへと触れかけている指に、力が入る。
     肉貝を開くために。
     指が皮膚に押し込まれて、雪乃はますます硬直する。
     そして。
    
     くぱぁ……
    
     血色の良いサーモンピンクの肉ヒダが、数人以上の教師の視線に晒される。
    「――――っっっ!」
     歯肉が潰れかねないほど、雪乃は強く、歯を食いしばった。
     もっとも敏感な部分に触れてくるメジャーの気配に、ただでさえ強張っている雪乃は、さらに足首を掴む手に力を込め、自身に爪を食い込ませていた。
    
     じぃ、
    
     覗かれている。
     尻の穴さえ丸見えであろうこの状態で、添えた目盛りを読むために、測定者が雪乃のアソコを覗いている。
    「膣口~センチ」
    「小陰唇~センチ」
    「陰格亀頭~センチ」
    「陰核包皮~センチ」
    「尿道~センチ」
     女性器を形成する全てのパーツに、メジャーの目盛りは順々に合わされていき、数値情報をことごとく暴かれ、大きく声に出されて発表された。
    「……うっ…………ぐぅ…………このぉ…………」
     苦痛だった。
     自分でも知るはずのなかった情報を抽出され、わざわざ大きな声に出されるのは、日記を人に朗読されるなんて例えでは生温い。
     もっと恐ろしいほどの、それを死因にできそうなほどの屈辱感と恥ずかしさで、雪乃の全身は満たされていた。一生記憶に残りそうなほど、ただ数字を発表されるだけが強烈だった。
    「肛門の直径~センチ」
    「~~~~~っっっ」
     尻の穴にまで、メジャーを握る指は添えられた。
     さらに。
    「あとは肛門の皺の数か」
    「じゃあ、数えるよー」
    「……!」
     雪乃はただ、戦慄していた。
     恥辱だけに満たされていた雪乃の全身に、より一層の羞恥と屈辱の感情が注ぎ込まれた。満タンのコップに水を注ぎ続ける時のように、減ることのない羞恥と屈辱がドバドバ溢れ、体中が恥ずかしさに濡らされた。
     そんな雪乃の感情を示すかのように、汗が滲む。
    
     ぐにっ。
    
     尻が鷲掴みにされ、割れ目が手で押さえられた。
     性器の中身が視線から解放された変わりに、この姿勢なら初めから見えているはずの肛門のために、両手の平が尻たぶの上へと移されたのだ。
     しっかりと指が食い込み、指の狭間から尻肉がプニっとはみ出ている。あからさまに揉んでは来ないが、お尻を触られているショックで意識が尻に集中し、ほんの少しの手の動きも、雪乃には敏感に感じ取れた。
    「はい、どうぞ」
     自分の体を、お尻の穴を、まるで雪乃自身には所持権がないかのように、身勝手に明け渡す。そんな台詞。
    「えーと? 一、二、三――」
     本数を数えるための、カウントが始まった。
    「四、五、六、七……」
     肛門を見られている。
     じっくりと、至近距離から。
     自分のお尻の真後ろに、男性教師の顔はある。自分でも見ることのない穴の形と、皺の本数が、こんなどうでもいい人間によって暴かれるのだ。
     そして、雪乃がそうされている有様を、周囲にいる関係者達が観賞している。
    「八、九……」
     カウントが進む。
     雪乃が思うのことは、ただ一つだ。
     ――やめて欲しい。
     肛門の皺の数など、知りたくもない。
    「十、十一、十二……」
     しかし、無情にもカウントは進んでいく。
     その本数もまた、嫌に大きな声で発表され、書類へと書き取られた。
    「肛門の皺の本数。○本!」
     そんな言葉に耳を突かれた瞬間、いっそ死にたいような思いにかられた。
     いや、いっそ殺したい。
     その気になれば焼き払える連中など、いっそ本当に炭にでも変えてやりたい。
    「はい、終了ね」
     今まで雪乃の恥部を見ていた測定者は、おもむろにショーツを掴み、膝に絡んでいたそれを一気に持ち上げ、雪乃の尻へと履かせ直した。
    
    「…………………………っ」
    
     雪乃はただうな垂れ、与えられた屈辱を噛み締めた。
     最後の最後で、人にパンツまで履かされた。
    「はい、もう立っていいよ」
     ペチッ、ペチッ。
     尻を叩かれた。
     それは苦難を終えた相手を励ます、本来なら肩でも叩いて、よくやったぞ、と努力を讃えるような叩き方だが、それを尻たぶに向かってされたのだ。
     トドメを刺された気分でしかない。
     測定と名の付く拷問をやっとの事で切り抜けたと思ったら、あと一つだけ試練が残っていたような、思ってもみない扱いを追加で受けた。
     それが、強烈すぎる羞恥の余韻をあと少しだけ色濃くして、身を焼かれるような思いだけが雪乃に残った。
     もう、真っ平だ。
     たかが検査でと思ったが、普通を捨てて化け物であろうとする雪乃とて、この扱いであっけからんとしていられるほど、常識的なプライドまで消えてはいない。
     真っ平だが、まだ項目は残っている。
     その事実が、雪乃の気持ちを暗くして、心をすっかり純粋な黒へと染めていた。
    
    
    


  • アンジュの身体検査

    
    
    
     その女、アンジュの尻穴が指に撫ぜられていた。
    
     身体検査という理由で、全裸に剥かれ、テーブルの上に上半身を寝かしつけられたアンジュは、尻を無防備に突き出す形となっている。手枷で両手を封じられ、抵抗を許されないアンジュは、他人の手で肛門に触れられるという恥辱を問答無用に味わっていた。
     もちろん、アンジュは叫んだ。
    
    「……やめなさい! やめろォ!」
    
     必死に声を上げていた。
    
    「私はミスルギ皇国第一皇女・アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギなるぞ!」
    
     だが、この世界でノーマに人権は認められない。皇女としての権限も、人としての尊厳も剥奪される。ノーマであったことが発覚して、アルゼナルへと連れて来られたアンジュは、身分ばかりか本名さえも取り上げられ、想像を絶する扱いをまさに受けている。
    
    「――いや、お前は今からアンジュだ」
    
     アルゼナルの総司令官、ジルは冷酷にそう述べた。
     そして機械の義手で、何の配慮も遠慮も無く、肛門へ指を押し付けグリグリとほじり始めたのだ。
    「――いやぁぁあああ!!!」
     恥辱のあまりの絶叫だった。
     アンジュは皇国皇女として生まれ育ち、元々は人気者で、自分がノーマであるなど想像もしていなかった。こうして監獄まで連行され、検査を受ける憂き目にあっても、未だに何かの間違いだと信じてやまず、所持品の指輪を没収される際には、監察官に向かって「触るな」「下級役人の分際で」と暴言まで吐いている。
     そして、プライドも高い。
     そんなアンジュが、肛門の皺をなぞられているのだ。
    
     ぐに、ぐに、ぐに、ぐに……。
    
     と、機械義手の冷たい指先で、揉みほぐすかのように弄っている。
    「――やめろ! やめろと言っている! やめろォ!」
     喚くのも当然だった。
    「お前の尊厳を奪ってやる。ここに来たということがどういうことなのか。今のうちから学ぶといい」
     ジルはそう言って、両手で尻たぶを鷲掴みに、親指で肛門を広げられる。
    「――ひぃっ!」
     アンジュは急速に赤面して、溜め込んでいた涙をこぼした。
    「ほう? これが皇女様のケツの穴か」
     放射状に皺を広げる窄まりが、容赦なく視線に晒される。アンジュの肛門は、まるで視姦に耐えかね喘ぐかのように、ヒクヒクと収縮を繰り返した。
    「――み、見るな!」
     肛門括約筋に力が入り、皺が縮まる。
     そして、力が緩んで、縮まっていた皺が伸びる。
     力み具合で皺の窄まり方が変化して、ヒクヒクと肛門は蠢き続けた。
    「人の……人のこんな場所を!」
     アンジュは暴れようと体を揺するが、手枷で両手が使えない状態だ。抵抗など意味をなさない。ただ手間取るというだけで、結局は全ての検査は遂行されると決まっているのだ。
    「意外と黒ずんでるな。皺は何本だ? 数えてやろう。いち、に、さん、し……」
     嬉々として本数を声に出して数え始めるジルの声に、全身が総毛立ち、アンジュは限界まで赤くしきった顔をさらに熱くして苦悶した。
     アンジュはただ皇女に生まれ育っただけでなく、十六歳のうら若き乙女でもある。羞恥心の高い年頃に、突如として身分を剥奪された挙句に、肛門をまじまじと観察されているのだ。
    「十六本か。エマ、記録しておけ」
    「そうしましょう」
     監察官のエマ・ブロンソンは、書類に記録を書きとめる。
    「こんなことをして! こんなことをしてタダで済むと――」
    
     ベチン!
    
     尻をぶたれた。
     スナップの利いた手首から、しなやかに繰り出されたビンタが、尻たぶをプルンと揺らす。
    「タダで済むから、こんなことをしている」
     ジルは冷酷に言った。
    「お前に尊厳はない。お前の方こそ、あまり楯突くとタダでは済まなくなるかもな」
    「……ぐぅっ!」
     アンジュは屈辱に飲まれるしかなかった。受け入れきれない事態へのショックと、裸に向かれた衝撃と、尻穴を弄られる羞恥と屈辱だけが、アンジュの心内を満たしていく。それ以外の全てが頭から追い出される。
     やめろ! やめろ!
     それしかない。それだけをアンジュの心は叫んでいる。
     そして、この場所はそんな些細な感情などまるで無視する。
    「さて、検査だったな」
     ジルは中指を挿入し、肛門の中身をほじり、直腸の中を探るように動き回る。直腸壁のいたるところをなぞり尽くし、調べている。
    「……あっ……あぁ……あっ………………」
     心と、尊厳そのものを掻き乱されているようだった。
     尻穴に感じる機械義手の硬い冷たさと、それが直腸へ侵入して中身をほじくってくる違和感は、まるで心をねじ伏せ蹂躙してくるかのようで、一秒たりとも耐えられない。耐えられないのだが、だからどうするということもできず、アンジュはひたすら、屈辱に対する喘ぎを漏らした。
     ずぷっ、ずぷっ――。
     肛門を侵略され、
    「やめ………やめ………ろ…………このぉ………………!」
     アンジュはただ悔しがるだけの声しか出せない。
    「どうだ? 皇女様。ケツ穴をほぐされる気分は」
     ジルはわざとらしく皇女と呼ぶ。
    「お、おのれぇ……」
    「ん? どうだと聞いているんだ」
     指をゆっくり、深く出し入れしてみせた。肛門を意識させ、指が出入りしている実感を与えていく。ジルの機械義手の指がどんな形で、どんな長さか。どうでもいい情報が尻でわかってしまうほど、嫌でもそこに意識が集中した。
    「このぉ……!」
     指が根元まで埋め込まれ、直腸にずっぽり収まる。それがゆっくり、ひどくゆっくり引き抜かれ、指の先端ぎりぎりまで抜かれたところで、再び内部へ侵攻してきて、何度も何度も執拗に出入りばかりを繰り返した。
    「……くっ、ううっ」
     アンジュはただ、涙を流す。
    「おっと、下の穴も調べないとな」
     ジルは肛門から指を抜き、次は膣口を探り始める。未だ男を知らない、処女の穴にまで容赦無く挿入され、アンジュは心底実感した。
     ここでまともな扱いは受けられない。
     本当に身分を剥奪され、このような扱いをされるのだと、膣内に入り込む機械義手の指の触感から身に染みた。
     だが、何かの間違いだ。
     きっと、ミスルギ皇国からの解放命令が届くはず。
     そして、決して赦さない。
     皇女であるアンジュにこのような扱いなど、絶対に赦さない。
     きっと、制裁を……。
     その時のことばかりをぼんやりと夢見て、虚ろな目で、アンジュは膣内検査を受け続けた。
    
    
    
    


  • 薙切えりなの肛門検査

    
    
    
    
     ――遠月茶寮料理學園。
    
     薙切えりなの通う名門料理学校では、食品を扱う以上は最低限の衛生管理が行われる。生徒は定期的に検便を行って、病原菌を検査するのだ。
     ほとんどの場合、自室で検査キットを使用して、それを提出すれば話は終わる。実際に検査に引っかかる生徒はそういないが、わずかな確率で検査にかかり、徹底検査を受ける羽目になる生徒も中にはいた。
     それがよりにもよって薙切えりなであろうなど、知っている生徒は本人以外には一人もいない。プライバシーの配慮のため、本人及び保護者くらいにしかそんな情報は伝わらないようにされていた。
    (全く、どうしてこの私が)
     えりなは検査に引っかかり、肛門科で詳しく調べてもらうように通告された。医者であろうと人にお尻を出すなど不服以外の何者でもなかったが、だからといって、まさか自分が食品衛生を損なうなど、やはりあってはならないことだ。
    
     えりなは腹をくくって肛門科を受診する。
    
     待合室で番号で呼び出され、診察室で問診を執り行う。日頃の食生活や体調管理に関する受け答えを行って、いよいよ肛門を診られる時が来た。
    「それでは診察台の方へお願いします」
     えりなは横向きに寝転がる。
     目を瞑り、覚悟を決めた時だった。
    「四つん這いでお願いします」
    「……え?」
     てっきり、横向きでも構わないと思っていた。えりなは前もって診察について調べていたのだが、わざわざ恥ずかしい姿勢にならずとも、きちんと診てもらえるとあったはずだ。
    「薙切えりなさん、ですよね。あなたほどの人を相手に誤診などあってはなりません。ここはより正確な診察がしたいのです」
     医者は淡々とそう述べた。
    (他意はなさそうね)
     少しでもいやらしい気持ちがあれば罵倒を浴びせてやるところだが、事務的にしか見えない医者を何となく信用した。傍に看護婦もついている。女性の患者を診る場合、セクハラ防止のために女性を置いておく規則があるからだ。あくまで診察、何も心配はないはずだ。
     どの道、覚悟は決めてきた。
    「ええ、そういう事なら仕方がないわね」
     えりなは四つん這いの姿勢を取り、頭は枕に寝かせて、お尻を高く突き上げた。
    「ただし、これで誤診なんてしたら首が飛ぶと思いなさい?」
     しっかりと釘を刺し、恥ずかしさを堪えようと目を瞑り、枕に顔を埋め、軽く拳を握った。
    
    
     なんて面白い光景だろう。
     表面的には事務的に接している医者であるが、心の中は別だった。学園では女王のごとく振舞っている薙切えりなが、こうして人にお尻を差し出している。スカートを捲くり上げると、純白のショーツが丸出しになった。
    (いい尻だ)
     布が内側から膨らんだむっちりとした尻肉だ。
     医者はショーツを下げていき、少しずつ顔を出していく生尻を眺める。肉付きの良さといい、肌の質感といい堪らないが、肛門も綺麗な桜色だ。
    (さて)
     医療用のビニール手袋をはめ、手始めに菊皺をツンツンつつく。
    「ひっ……」
     可愛い声で鳴きながら、皺をキュっと収縮させた。
    「表面の方を触診しますよ」
    「え、ええ……」
     皺を一本一本なぞりつけ、グニグニと指を押しつけマッサージを施した。外部の方は問題ない。ただ、せっかくの機会だ。診察をこなすだけでなく、肛門を揉まれるえりなの反応を確かめておく必要があった。
    
    
     恥ずかしい……。
     えりなは顔を赤くして、これは医療だと言い聞かせ、じっと辱めを堪えていた。肛門を見られるばかりか触診され、指でつつかれなぞられる。尊厳を奪われ羞恥のどん底に落とされるような、今にも怒鳴って医者を殴りでもしてやらないと気が済まないような、途方もない屈辱にえりなは耐えた。
    「痛みなどはありますか?」
     医者に聞かれる。
    「……ないわ」
     羞恥で声が震えて上ずってしまい、えりなは自然とか細く答えた。
    「では内部を触診しますね」
     指を入れやすくするためのジェルを塗られ、肛門にひやっと冷気が走る。皺の一つ一つをなぞるように丁寧に塗りたくられ、恥辱を堪えながら指の挿入を受け入れた。
     医者は指を左右に回転させ、内側を探っている。尻穴内部に異物が蠢く違和感と、こんな場所を調べられ、優位の立場を奪われている不安感に包まれる。傍で見ている看護婦も、この男の医者も、二人ともきちんと服を着ているのに、えりなだけがお尻を曝け出している。こんな形で不利な立場に置かれるのは、どうしようもないほど心もとない話だった。
    (早く……! 早く済ませて頂戴!)
     心の中で叫びを上げた。
     ただ指が尻穴で回転するだけでなく、医者はピストンもさせてきていた。指を出し入れすることで、ジェルがネチョリとネバっこい水音を立て、静かな診察室にその聞こえるか聞こえない程度の微妙な音を響かせる。
    (遊んでいるの? そのなわけ――ないわよね)
     疑惑を抱くも、ドクターハラスメントを防ぐための看護婦だ。そんなはずはない、その方が患部を探りやすいだけだろうと頭の中の疑惑を振り払い、とにかく恥を我慢する。
    「大丈夫よ? 何もおかしいことはしていないから」
     えりなの心中を察してか、看護婦が優しく述べてきた。
    「わ、わかっているわ!」
     厚意に対して、えりなは声を荒げてしまう。
    「私は好きで我慢しているわけではないのよ? この私が衛生環境を損なうなどあってはならないから、こうして恥を忍んでいるの! 早くその触診を済ませて頂戴!」
     荒げたついでに、医者にまで当たって怒鳴りつけた。
    「焦ったちゃ駄目です。誤診なんてあっちゃいけないでしょう?」
    「当然よ!」
    「できる限りやりますから、もう少し堪えて」
     宥めるような口調で諭されて、えりなはますます恥ずかしい気持ちになった。これでは子供がわがままをたしなめられているようではないか。
    「わかっているわ! ちゃんとやるように釘を刺したかっただけよ!」
     言い捨ててから、えりなは静かに口を閉じる。
    「もちろん、ちゃんとやりますとも」
     それから、医者は随分長く肛門触診を続けてきた。指を挿入されたまま、指腹で内側を探られ、ピストンされ、執拗に弄られながら、四つん這いの姿勢からでもたまたま見えた壁掛け時計をえりなは眺めていた。
     一分、二分……。
     それだけ経って、まだ終わらない。
     五分、六分……。
     長い時間が経過しても、ずっと指を抜いてもらえず探られ続け、終わる気配のないまま仰向けになるよう指示されて、そんな姿勢から直腸診は続行された。
     上から腹部を押すようにしながら診察したいらしかったが、仰向けでは当然開脚せざるを得ない。閉じていては診察できない。股が丸見えの状態にならざるを得ず、そんな状態で腹部を手で圧迫されながら、えりなはかれこれ十分以上は耐えていた。
     アソコは手で隠していたが、こんなポーズで大事な部分を手で覆うなど、格好悪いことこの上ない。たまらない屈辱だ。看護婦に視線をやるもニッコリと笑い返してくるのみで、医者のこの診察を止めてくれる様子はなかった。
     最終的に十五分は経っただろうか。
     ようやく指を引き抜いてくれたかと思いきや……。
    「四つん這いに戻ってください」
     無常な一言だった。
    「まだだというの?」
     泣きたい思いで再びお尻を差し向ける。
    「しかし、症状が見えてきました。綿棒で直腸粘膜を採取して、最終確認を行います。それから、ちょうど点滴のような感じで点滴薬を打って、その後は経過観察です」
    「そう。早くして頂戴」
    「ええ、なるべく」
     綿棒を差し込まれ、採取はすぐに終わってくれた。医者は一旦部屋を離れ、採取した細菌を確認して症状を確認し――。
     それから点滴を持ってきた。
     お尻の穴に挿れる関係で、注射針は使わない。ただ、それに近い形のスティックを肛門へ挿入し、チューブに繋いで液体薬が肛門へ流れ込むようにするというのだ。えりなの尻からプラスティックチューブが生えるような形となり、尻尾を植えられた気分がして顔を歪める。
    「それで、これはすぐに終わるのかしら?」
    「ええ、三十分ほどで」
    「三十分? まさか、三十分もこのままでいろというの?」
     冗談じゃない。こんな格好から解放されたい。
    「まあ、これで最後ですから。我慢して下さい」
    「そ、そんな……」
    「液体ですから、一応お尻はそのままで、姿勢は変えないようにお願いします。薬が漏れてしまっては台無しですからね」
    「そんなことを言われても……」
     このまま長時間の放置だなど、まるで地獄ではないか。えりなはすがるような思いで看護婦を見るが、やはりニッコリ笑い返されるだけで、何をフォローするでもない。ただ、頑張ってねと一言添えてくるだけだった。
    
    
    
    


  • 風鳴翼 入院中の羞恥

    
    
    
    
    「防人の生き様、覚悟を見せてあげるッ! あなたの胸に焼き付けなさいッ!」
    
     立花響の前で見せた絶唱により、敵装者を撤退に追い込んだ風鳴翼は、その大きな負荷を受けて入院を余儀なくされた。
     翼が運び込まれた二課医療施設は、表向きは総合病院の体裁を取っている。私立リティアン音楽院高等科に隣接しており、戦場で傷ついたシンフォギア装者を治療する以外にも、ノイズによる負傷者や死亡者についのデータを収集している研究機関としての側面も持つ。
     一命を取り留めたはいいものの、意識を取り戻した後も、しばらくは自分では起き上がることすらできない日が続いた。
     ベッドから天井を見上げるばかりの生活上、風呂やトイレの行き来も自由にならない。
    (奪われたネフシュタンも取り返せず、これはとんだ生き恥だ)
     今の翼は薄い検査着を着ているだけで、簡単にはだけてしまうような衣服の中身は、医師らによって用意されたブラジャーとオムツのみである。心もとない格好もそうだが、性器に挿入された導尿カテーテルが、ベッド下にある尿入れ袋に繋がっている。
     動けない患者への措置だ。
     まあそういうものだろうと理解も納得もしているが、女子には辛いというのは変わらない。
     何よりの屈辱は身体の清掃だ。
    「おはようございます。風鳴さん」
     朝、中年の看護婦が現れる。
     いつもは彼女が、翼の身体をタオルで拭くのだが、今日に限っては若手の男性看護師を引き連れていた。
    「そちらの方は……」
    「あら、言っていなかったかしら? 最近こちらに配属になったんだけど、彼はまだまだ看護経験が足りないから、ここで実践経験を積んじゃおうってわけ」
    「は、はあ……」
     声にも顔にも出さないが、翼は心中穏やかではいられない。
     風呂に入れないからタオルで拭くのだ。当然のように裸になり、乳房や尻といった部分にも手が回る。
     それを男が……。
     そう考えるだけでも、翼の頬は既に朱色に染まりつつあった。
    「というわけで、私がここで見ているから、手際良くやってみせて頂戴」
     看護婦の指示を受け、男性看護師は翼の検査着に手をかける。
     ただ紐を解き、左右にはだけるだけで、簡単に人を裸にできる構造だ。簡素な白い下着姿は簡単にあらわとなり、隙間を通して導尿カテーテルを挟んだオムツ姿も見えている。肌を出すだけでも恥ずかしいのに、人の手で脱がせてもらうというのは、まるで幼児が母親からされるような世話をこの歳で受けている気持ちがしてならない。
     ブラジャーを取られる以上に、オムツを取ってもらうことが苦痛だった。
     動けない患者への措置――わかる。頭では十分にわかる。
     しかし、オムツは赤ちゃんが穿くものという概念を誰しもが抱いている。翼自身も、もしかしたら看護婦や男性看護師も、本当は赤ちゃんのものなのだと思いながら、今の翼の姿を拝んでいるのかもしれない。
     排便付きのそれを取り上げられる苦痛に耐え忍び……。
     丸裸にされるまで、そう時間はかからなかった。
    「いい? いくら患者さんが綺麗でも、見蕩れちゃ駄目よ?」
    「わかってますって」
     人の裸をネタにして、冗談めかした表情を浮かべる看護婦の方が、よほど言葉によって翼を辱める。
     しかし、触れてくるのは男の指だ。
     まずは顔から、温かい濡れタオルでオデコや頬を綺麗にする。顎や首元から、肩に二の腕に鎖骨といった部位が終われば、次のターゲットは乳房となる。
    (とんだ恥だ……)
     乳肌を拭くタオルの感触に歯噛みして、ひたすら顔を横向きに背ける翼は、どうするでもなく恥ずかしい時間を去るまで待つ。
     ただ、そうするしかない。
     これは看護的な『措置』なのであり、患者を辱める目的はない。不衛生では体に悪いのだから、一人で風呂に入れるまでは仕方がない。せいぜい、一日でも早く動けるように回復するのを祈るだけだ。
    (この身が剣なら、手入れを受けていると思えばいい)
     そう考えることで、翼はこの羞恥に耐えていた。
     タオル越しの指で乳輪をなぞり、乳首まで綺麗にしてくる男性看護師が、腰のくびれや太ももまで拭いている。
     うつ伏せになる際は、二人がかりの補助を受け、やっとのことでひっくり返り、背中もタオルで拭かれていった。
     当然、お尻も……。
    (くぅ……ッ!)
     顔を枕に埋め込みながら、尻肌に乗るタオルの熱気を感じ取り、さらにタオル越しの男の手でさえ如実に感じ、撫でるように拭かれていた。
     一人でトイレに行けないお尻の汚さなど想像もしたくない。
     ならば自分で拭きますと申し出るほど、身動きが取れるだけ回復しているかといえば、していないからこんな世話をされている。そんな口が利けるだけ体力が戻っていれば、一体どんなに良いかと無念でならない。
     だから、もうタオルによって撫でられているより他はない。
     次は仰向けに戻った。
     陰部を洗いやすいようにするため、脚を大胆にM字に開き、アソコがよく見えるポーズを披露するのだ。どう考えても乙女がやるべきではない格好にさせられて、その両脚とも看護婦の手で押さえつけられている。
    (……なんという生き恥かッ!)
     無念のままに秘所に視線を浴びているしかない。
     お尻の下にシートを敷き、ボトル入りの適温の湯をかけていくことで、陰部を少しずつ綺麗にしていく。ガーゼにお湯を染み込ませ、外側は石鹸を泡立てて洗ったが、中身はお湯をかけるだけで汚れを流す。
     きちんと綺麗になっていることを確かめるための視線が――。
    
     じぃぃぃぃぃぃぃぃ…………
    
     よく膣口を覗いた上で、ガーゼの面を変えながら、実に丁寧に拭き取っている。
    「陰部が終わったら肛門部よ?」
    「わかってますって」
     今度は尻の割れ目へと、新しいガーゼの指が入り込む。
    (くッ、この体が十全になれば、こんな思いはしなくて済む……ッ!)
     お尻の穴まで触れられている事実に、翼はすっかり耳まで染め上げていた。
    「もう少しですからねー」
     放射状の窄まりに沿って、皺の隙間まで綺麗にしようと、中心から外側に沿って一本ずつ丁寧に拭いていく。円を描く拭き方で、さらに皺の周りを綺麗にすると、その清潔具合を確認するため、顔がぐっと接近した。
    
     じぃぃぃぃ……
    
     肛門に浴びる視線により、水が沸点に達する静かな泡立ちのように、翼の頭はしだいにふつふつと煮え滾り、存在しない蒸気が上がるほどに熱い赤面となっていく。
    (それでも恥ずかしいッ! 防人の私がこんなッ!)
     まだ汚れが気になったのか。
     再度、ガーゼ越しの指が伸びてきて、尻の穴をツンツンつつく。
    (うう……ッ!)
    「はい。終わりですよー」
     その後はまたオムツを穿かされ、惨めな姿で検査着を羽織ることになる。
     早く良くなりたい。
     翼の思いはとてもとても切実だった。
    
         **
    
     一人で歩けるまでに回復しても、まだ十全とは言い切れない。
     数々の検診を受け、経過を確かめるのは当然だが、分娩台で股を開いて性器を視触診されるなど、恥じらいある女子の心を深く抉り取るようなものである。
    (やっぱり、恥ずかしいものね)
     どこか諦めきった気持ちで、指で大きく開かれた肉ヒダに視線を浴びた。
     今、翼の下半身は、婦人科にあるようなカーテンに仕切られ、その向こう側で医師が粘膜を視診している。
    
     じぃぃぃぃぃ……
    
     相手の姿が見えないからこそ、気配に敏感になった素肌が、如実なまでに視線を感じ取っている。一体何センチの距離まで顔が近づき、膣粘膜のどんな部位を見ているのか。どれほど膣口を覗いているのか。必要以上によくわかった。
     そして、自覚していた。
     自分が濡れていることを……。
    (こんなはしたない……ッ!)
     例えば愛する異性とのセックスなら、むしろ濡れて当然だろう。
     しかし、医療に過ぎない中で、少しでも愛液が滲み出るのは、まるで自分がいやらしい反応をアピールしてしまっているようで心もとない。
    (バレていなければいいけど――)
     診察で濡れたと医師に伝われば、一体どんな目で見られることか。
     だが、ムズムズとした甘い痺れは止まってくれない。
    「入れますからね」
     一言の断りから、すぐに指が挿入された。
    (んっ、くぅぅ……)
     指という異物が、膣壁の狭間に入り込む。もう片方の手で腹を押さえ、触診として中身を探る手つきには、愛撫のようないやらしさこそないものの、翼の頬を染め上げるには十分すぎるほどだった。
     指が抜かれる瞬間だ。
    「んっ、ふぁ…………」
     声が出てしまった。
     ――まずい!
     バレただろうか。感じたことに気づかれただろうか。
    「大丈夫ですよ。よくあることですから」
    (気づかれている……!)
     もう頭が沸騰した。
     アソコを布か何かで拭き取っているのは、きっと愛液を拭っているからだ。
    (くッ! こんなところで死にたくなるとはッ!)
     そんな場所を拭いてもらうというのも、それが濡れたからだというのも、何もかもが恥ずかしくてたまらない。
    
         **
    
     さらに翼を恥らわせるのは肛門の検査である。
     四つん這いのポーズで腰を突き出し、胸や頭は下につけ、尻だけを高らかに掲げる卑猥極まりない姿勢を要求されたのだ。
    「こちらをご覧下さい」
     一人の研究者がモニターを操作すると、巨大画面にはお尻の穴が投射される。
    「そして、右側が現在の肛門の状態です」
     つまるところ、絶唱による負荷のかかった初期状態と、治療の進んだ現在のお尻の穴の画面上に並べて比較している。過去の肛門は画像だが、現在の肛門に関しては、まさに翼の後ろに三脚カメラを立てたリアルタイム映像である。
     何人も何人も、数々の男の視線が、お尻の穴を眺めているのだ。
    「各種内臓から直腸にも負担がかかっていたことで、肛門の状態もご覧のように荒れが見受けられましたが、現在ではこのように綺麗なものとなっています」
     という切り出しから始め、その研究者は学術的な見解を長々と述べている。まるで教材を元にした大学の講義か何かだ。
     教材として扱われることもそうだが、この十分以上かかる講義の最中、翼はずっと尻を突き出したままでいることを強いられていた。
    「では風鳴さん。お尻の穴に力を入れてみて下さい」
    (何故そんなことを……)
     しかし、研究に協力するのも役目だ。
     枕に埋め込んだ顔から、密かに涙を零しながら――
    
     ――きゅぅっ、
    
     自分の肛門など見たくもない。
     だから翼自身にはわからないが、画面映像の中にあるお尻の穴は、皺の長く伸びていた状態から、まるで穴の内側に巻き込むように小さく窄まり、尻山の筋肉が内側へ閉じようとする動きと共に収縮した。
     こんなことから何か学術的な説明ができるらしく、これを題材に講義を続ける。
    「というわけで、そのまま力を出し入れして下さい」
     どれだけ恥を晒せばいいのだろう。
    
     ――きゅぅっ、きゅぅっ、きゅぅっ、きゅぅっ、きゅぅっ、
    
     小さな窄まりとなる肛門は、力を抜くと同時に瞬間的に、元の形に戻ろうとする力によって放射状の皺を伸ばしている。
    
     ――きゅぅっ、きゅぅっ、きゅぅっ、きゅぅっ、きゅぅっ、
     ――きゅぅっ、きゅぅっ、きゅぅっ、きゅぅっ、きゅぅっ、
    
     絶えず動き続ける尻の筋肉のため、お尻全体がプルプルと、ゼリーを細やかに振動させているかのような揺れを披露している。その中央でお尻の穴は、脈拍を打つようなリズムで淡々と力の出し入れを繰り返した。
    「ご覧下さい」
     研究者が、軽い力でペチペチと、翼のお尻を叩いていた。
     それは自慢の愛車を誇るような、あるいは可愛い孫を見せびらかしたいような、自信があって仕方のない教材を披露する気持ちから、研究者自身も気づかないうちにさりげなく叩いたわけである。
     どんなに本人に悪気がなくても、翼にはたまったものではない。
    (……叩かれたッ!)
     翼はますます涙ぐんだ。
    (早く戦場へ戻りたい……ッ!)
     その思いの切実さは、もはや雲を貫いてもおかしくないほど、この場で一気に高められていくのであった。