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  • 深雪 羞恥の定期検査 後編

    前編

    
    
    
     全身検査。
     それは頭の先から足の先までをくまなく調べ、皮膚科系はもちろんガン系のしこりや筋肉の張り等の正常さを確かめるものだ。ここでは三人の検査医が女子生徒を取り囲み、それぞれの手で視診触診を行っていく。
     深雪はコレまで以上に赤くなり、首から上はほぼ別色といえるほどに顔面を熱くしていた。
    (こ、これって一番……)
     至近距離から、三人の男が手で触れながら視診してくるのだ。
     両腕を真っ直ぐ左右に伸ばし、二人がそれぞれの両腕を触って調べている。残る一人は背後へ回り、脇の下へべったりと手を貼り付ける。上から腰のくびれまでへと、ボディチェックを行うように撫でていく。
    (ふあ、あぁぁ……)
     上下に手をスライド往復される刺激に震えた。
    「右腕問題なし」
    「こっちもです」
    「肌は全体的にサラサラですね」
    「ふんわりと柔らかく、羽のわたのように優しい肌です」
     深雪は涙ぐんだ。
     三人の検査医達は深雪の体を事務的に弄くりまわし、合計六本の手がいたるところを這いずり回る。あくまで触診でしかない手が、しかし太ももを揉み始め、うなじをくすぐり、耳まで触れて全身を調べ尽くす。
     まるで拷問だった。
     悪いことなどしていないのに、途中からは頭の後ろで両手を組まされ、そして脇の下から足の裏までベタベタと触られる。体中いたるところに手垢をつけられ、もはや手の当たっていない面積部分など残されないほど、触診は丁寧に行われた。
     きっと兄へ差し出したかった大切な肌だというのに。
     そんな深雪の事情などお構いなしに、女が嫌だと思う部分を検査医は平気で調べ、指先で素肌をくすぐっている。
    「かなり発育がいいですね」
    「筋肉と脂肪のバランスがいい」
    「スタイルも抜群の部類でしょう」
     検査医達は深雪の体をああだこうだと論じていった。
    (こんなに観察して、意見を言い合うなんて……恥ずかしすぎます!)
     深雪は悶える。
    「お手本のようです。教科書に載せたいくらいですね」
    「はっはっはっは」
     軽く、笑われた。
     もちろん、検査医達に深雪を貶める意志はない。深雪の体への感想を疲れた気分を紛らわすために言い交わし、地道な作業疲れをほんの少し癒したのだ。何十人もの検査を受け持つ彼らにとって、深雪がどんな気持ちになっていようと、選りすぐりの美少女であろうと、大勢いる検査対象の一人にすぎないのだ。
     もっと言えば、処理しなくてはいけない仕事の一部だ。
    「乳房に入ります」
    「了解」
     もはや本人の意思などないも同じ。
    「健康的ですねぇ」
    「硬さは?」
    「やはりふわっとした柔らかさで、餅が手に張り付くかのようです」
    「なるほど」
     一人が乳房を両手で掴み、揉み始めた。なんの断りもなく、ただ仕事上のノルマを消化したい検査医は顔色一つ変えずに指を押し込み、皮膚の内側に何かがないかを探している。彼らに卑猥な心は欠片もないが、それだけに業務を淡々とこなしすぎていて、深雪の気持ちに対する配慮や紳士的接し方さえ欠片もない。
    (お兄様……助けて下さい……深雪はこんなのもう嫌です……)
     深雪は唇を噛み締めた。
     男の指が乳房を持ち上げ、プルプルと揺らしてくる。表面を撫でるようにして形をなぞり、乳肌の皮膚を調べてくる。乳首を摘み、グリグリとつねってくる。引っ張ったり、押し込んだりされ、突起した乳首は執拗に虐め抜かれた。
    (お兄様ぁ……)
     身をよじったり、体が逃げる反応をすれば「動かないで下さい」と注意が飛ぶ。胸をいいように扱われながらも、後頭部に手を組んだまま、深雪はひたすら我慢していなくてはならなかった。
    「乳首もコリっとしています」
     そんな情報を声に出される。
    「ええと、いずれも疾患は無しで、それから……」
     そして一人はチェックシートにペンを走らせ、今までの診察結果を書き込んでいる。書類の記入欄には、深雪の乳房や太ももの感触について書く項目もある。その人の語彙力が許す限り正確に、体つきから何もかもまでが記入されている。
    「しかし、やはり綺麗ですね」
    「ボディラインは人一倍優れていそうですしねぇ?」
    「触れた感じも全体的に柔らかく、ふんわりです」
    「なかなかいませんよ。ここまでの子は」
     他意はなくとも、深雪の体つきにまつわる感想が事務的に述べられていた。
    (お兄様……ぐすん……お兄様ぁ…………)
     それでも、耐えることしか許されない。
     深雪にできるのは、この時間が一刻も早く終わることを願うだけである。
    
    「では、臀部及び陰部へ移りましょう」
    
    「……!」
     おもむろにショーツに指をかけられ、深雪は戦慄した。全身に緊張がほとばしり、それでなくとも真っ赤な顔へさらに血流が集まって、心臓は早鐘のようにドクドクと大きな音を打ち鳴らす。
     検査項目は事前に通知されている。初めから内容はわかっていたし、腹を括ってきたつもりもあった。だが、いざこの瞬間を迎えた時、大事な部分が曝け出される危機感に、全身に警戒信号が行き渡り、鳥肌さえ立てながら深雪はごくりと息を飲んだ。
    (嫌ですわ! やはりここだけは……)
     ショーツは最後の砦だ。
     それを履いている限り、乙女の秘密だけは隠してくれる最後の盾だ。これを失えば最大の弱点が外へ晒され、深雪は無防備となってしまう。
     それに対する危機感。
     本能から警戒信号が発令され、深雪はほとんど条件反射的に抵抗した。いや、抵抗といっても抑えはしている。ただ脱がされかけたショーツを手で引き止め、深雪は自分の最後の防壁を失うまいとしていた。
    「どうしました?」
     検査医はそんな深雪を不思議そうに見つめていた。
    「脱がないと検査が進みませんが」
    「ほら、他の子達も待っているんですよ?」
    「あなた一人に時間はかけられないんです」
     口々に言われる。
    「わかっています。わかっていますが……」
     深雪は震えた。
     どうしても、こんな場所を見せなくてはいけないのだろうか。
     晒さなくては許されないのだろうか。
     女に生まれ、この学校に入学したというだけで……。
     悲しい、悲しすぎる。
     羞恥心が胸の内側で膨張し、風船を一気に膨らませていくかのように大きくなる。ただ恥ずかしさという一色だけが、深雪の感情を染め上げている。あまりに酷い恥をかかされて、泣けてきた。
    「司波深雪!」
     注意の声を上げるのは教師である。
    「これは規則なんだ。決まりを守れないようであれば、お兄さんにも迷惑がかかるが?」
    「お、お兄様に……!?」
     深雪ははっとした。校則違反に対しては当然指導が行われる。深雪への厳重注意に伴って、兄妹として同居している兄にも深雪の話をされかねない。問題行動だ、兄からもきちんと言って聞かせるように、といった具合に。
     兄に迷惑をかけることは本意じゃない。
     脱ぐしか、ない。
     泣きたくなるほど嫌なことでも、少し我慢すれば事は過ぎ去る。耐え抜いて、耐え抜いて、耐え忍ぶのだ。
     きちんと、兄の言いつけ通りに。
    「……すみません。恥ずかしくて、つい。きちんと受けますので」
     反省の素振りを見て、教師は一歩後ろへ下がる。
     これから陰部を晒されるのに、それでも謝るのは自分の方である事実を悲しく思った。
    「では改めて」
     検査医はその瞬間、ばっさり。
    「――――っ!!!」
     遠慮無しに一気に引き下げ、心の準備をする猶予もなく、深雪の全てが男達の視線の中へと曝け出された。
     ――カァァァァ!
     と、沸騰せんばかりに首から上がまんべんなく熱くなる。顔から蒸気が出てもおかしくないほど、火照るという言い方では生易しいほどに血流が頭部に集中する。全体的にきめ細かく、美白肌の深雪だが、首を境界線として顔面と両耳だけが真紅に染まっていた。
    (……こんな! こんな人前で生まれたままに姿になるだなんて!)
     あまりの顔の熱さに、額や頬からだけ汗が吹き出た。
     雪をふんわりと積らせたような白い尻は、触れれば崩れそうなほどに柔らかい。あるいは清潔な羽綿のように優しく、大きすぎず小さすぎない控えめなカーブでプリっとしている。
     手前の方では、毛が丁寧に手入れされている。切り揃えられた陰毛は草原の領地を控えめにして、貝の割れ目がくっきりと目に見える。ぷにっ、と微妙な膨らみを持つ皮は、ぴったりと閉じ合わさってラインを明確に浮き出していた。
    (こんなの……深雪は生きていけませんわ……)
     深雪は震えた。
     これは刑罰か何かだろうか。そんなものを受けるほど悪いことはしていないのに、検査医三人と男性教師、合計四人の男に囲まれた状況下で最後の盾を失ったのだ。こんな目に遭わされる人間は、他には捕虜か奴隷くらいだ。
     検査医の顔がアソコへ近づく。
    「陰毛はカットしていますか?」
     そんな質問をされ、深雪は深く俯いた。
    「……はい。手入れはしています」
    「そうですか」
     そっけない。
    「…………」
     特に意味はない。素朴な疑問を何気なく、そして深雪の気持ちなど考えずに投げかけて、答えがわかれば適当に頷いた。ただただ、深雪の心が削られるだけのやり取りだった。
    「では四つん這いになって下さい」
    「……え?」
    「性器及び肛門を検査するための姿勢です。
     事前に説明が行っていると思いますが」
    「……は、はいっ。申し訳ありません」
     どうして自分が謝るのだろう。
     情けのない気持ちになりながら、死にたい気持ちになりながら、深雪は床に膝をつく。そして両手をべったりつけ、全裸でお尻を差し出す犬同然のポーズとなる。
    「では肛門ですが……」
     一人の検査医が深雪のお尻へしゃがみ込み、尻たぶを掴んで割り開く。
    (いやぁぁあぁぁああ……!)
     深雪は強く目を瞑り、歯を噛み締めた。
     親指で押し広げたその間で、桜色の雛菊皺がヒクっと蠢いた。真っ白な尻肌の中央にぽつんと咲いた可憐な色は、およそ排泄気孔とは思えないほど、皺の花びらを放射状に広げている。
     それを検査医は凝視した。
    (うぅ……お尻の穴まで…………)
     ただの視線一つが鋭い針のように深雪へ突き刺さり、肛門をチクチクと痛めつけている。
    「とても綺麗ですよ。黒ずみがないんです」
    「本当ですか?」
    「どれどれ」
     肛門を覗いていたのは一人だったが、今ので残る二人も同時に深雪のお尻を観察し、尻穴の桜色に次々と簡単の声を上げていく。
    「ほほーう」
    「こんな場所がここまで綺麗だなんて」
    「普通は黒ずみがあるはずですが、これは白い肌に桜色を乗せた色感が効いています。
     純白から薄紅色へと変化していくグラデーションのように、美感がありますよね」
     よりにもよって肛門について品評され、激しい羞恥の情動が胸の中身を荒らし出す。頭の中からまともな思考は削がれていき、この恥ずかしさに悲鳴を上げたい、自分の状況を恥じた気持ちだけが深雪の頭を占めていく。
    (……恥ずかしすぎます!)
     深雪の心は叫んでいた。
    (こんなこと……深雪は恥ずかしさで死にそうです……!)
     恥じらいに熱された顔全体に汗が滲んで、皮膚が湿っぽくなっていく。その吹き出た汗が上昇した体温に温められ、いよいよ本当に顔から湯気が出てもおかしくない。
     硬く強く食いしばられた歯は癒着したかのように離れなくなり、瞼も自身の眼球を潰さんばかりに力の限り閉じられる。床に置いた手は握りこぶしとなって、内側に爪を食い込ませるまで強く握られていた。
     体のどこかに力を入れ、硬く震えることによって、深雪はかろうじて耐えていた。
    「性器を開いてみましょう」
     くぱぁ……。
    (んく――んんん……! な、ナカを見られるなんて……!)
     桃色の貝の中身を左右に開かれ、今度は肉ヒダへ視線照射が集中した。ヒクヒクと蠢く陰唇が、包皮に覆われたクリトリスが、まだ男を知らない膣口が観察される。
    「血色はいいですねぇ」
    「ビラの大きさも」
    「おや、処女ですか」
     視診された中身の状態を口にされ、もはや手付かずの恥部は残っていない。全てを余すことなく観察され尽くし、しかし二つの穴への触診はまだ行われていない。一人がチェックシートを片手にペンを構え、もう一人は深雪の背中を押さえて動いても手で固定できるようにポジションを取る。
     そして、診察用のゴム手袋をはめた一人が中指で性器をなぞり、男に触れられる言い知れぬ感覚に背筋全体がゾクっとした。
    (いやぁ……)
     淫らな意思を持たない『触診』は、それでもクリトリスの周囲をそーっと、触れるか触れないかといった微妙さで指の腹を当てている。デリケートな部分を傷めないよう、優しく撫で擦るやり方は愛撫に近いところがあった。
    (嫌ですわ……嫌ですわ……)
     検査医は膣口の周囲をなぞっていき、具合を探る。まだ未使用の入り口に余計な傷をつけない程度に先端を挿し、グリグリと回すようにして触感を確かめる。その刺激が甘い痺れを生み出して、内股のあたりをピリピリさせた。
    「特に何もありませんね」
     検査医はゴム手袋を取り替えて、次は肛門を診るためにワセリンを塗り始める。
    (いひぁ……!)
     ひやっとして、皺が一瞬ヒクンと縮んだ。
    (は、入ってくる……)
     中指が直腸へと進入し、内側を探り出す。肛門から異物が入ってくる違和感と、内部を調査されている心地の悪さ。検査医は指を左右に回転させ、出し入れしつつ触診位置を調整し、指の腹に感じる直腸の触り心地で丁寧に症状を探っていた。
     ズプ、ズプ、ズプ……。
     内部を摩擦するために、指がゆっくりピストンされる。
    (そんなぁ……)
     性器を観察された挙句に尻の穴までほじくられ、頭がどうにかなりそうなほどに猛烈な羞恥が膨れていく。もしかしたら、自分はこのまま恥ずかしさで死ぬのでは。膨大な羞恥心が容量を超えて多量に溢れ、堪えきれない感情量が全身にいきわたり、やがては事切れてしまうのではと、ありえない想像さえよぎってくる。
     ズプ、ズプ、ズプ……。
    (駄目です! もう……もう死にそうです……!)
     ヌプッ。
     それはゼリーを塗りたくった指が抜ける音。
     限界点を越えた時、ようやく指が引き抜かれたのだ。
    「異常なしです」
    「了解」
     これで、直腸検診までが終了した。
    (……た、助かりましたわ)
     羞恥心が死因になるなどないだろうが、深雪自身は本当に死ぬ思いをしていたのだ。やっとの事で解放された安心感で、自分が全裸の四つん這いでいることをつい一瞬忘れてしまう。けれども、安心の直後にすぐに自分の姿を思い出し、薄くなりかけていた赤面濃度は途端に元に戻るのだった。
    
    「あとは尿検査だけですね」
    
    (にょ、尿検査……!)
     深雪の表情は絶望に変わった。
     ようやく尻穴から指が抜かれて、つい安心しすぎてしまったが、事前の通知で採尿が行われる事はわかっていた。
     本人の尿であることを確認するため、放尿は検査医の前でとなる。三人もの男と、加えて男性教師が立っている前で、トイレでもない場所で容器の中へ用を足す。立ち会った教師が確かに司波深雪本人の尿であるとお墨付きを与え、それを検査医が病院へ持ち帰る。何らかの症状が判明した場合はその後本人に連絡がいき、健康であれば通達は特にない。
     しかし、尿を出せと言われて出せるとは限らない。相応の尿意が必要なため、事前の連絡でも直後に水分を取るよう指示が出て、朝も紙コップが学校から配られて、利尿性の高い飲料を一人一杯飲んでいる。
     これを終えてこそ、正真正銘の解放なのだ。
    
            ◇ ◇ ◇
    
     ジョォォォォォオオオォォオォォ――――
    
     尿道口から飛び出る黄色の水が、宛がわれた尿瓶の中へ溜まっていく。万が一にも床を汚さないため下にはタオルが敷かれており、尿瓶も大きめのものが使われている。たくさん出すぎて容器から溢れるといった心配はなさそうだった。
     ジョロロロロロロロロ…………。
     プラスチック容器を打ち鳴らしていた水音は、すぐに水面を鳴らす音へと変化していた。
    (こんなこと……こんなこと……)
     深雪が受けている仕打ちは、幼少の子供か赤ん坊扱いそのものだ。
    (こんな……こんな……!)
     赤すぎる顔を両手で隠し、深雪はもはや目の前の相手の顔さえ見れていない。こんなことは現実じゃない、悪い夢だと言い聞かせ、全力で目を瞑っている。瞼を閉じ、歯を食いしばるという行為には、筋力が許す限り最大限の力が込められていた。
     ジョロジョロジョロ――。
     放尿とは一度始まったら止まらない。トイレそのものを我慢しなければ、途中で中断がしにくいものだ。普通の生活を送る分にはそんな事で困る機会はないが、今ばかりはその生理的仕組みが残酷だった。
     ジョォ――ジョォ――ジョォオオオ――。
     深雪は開脚した股を持ち上げられ、そこへ尿瓶を当てられている。まるで一人でおしっこができない年齢のような扱いを受け、その光景を男性教師と余った検査医はまじまじと眺めているのだ。
     しかも、クラスメイトもいる中だ。
     既に先に順番が回っているか、あるいは後で同じ運命を辿ることに決まっているとはいえ、身内が同室にいる状況での放尿は最も耐え難いものである。ぐすん、と涙ぐんだ声が出て、硬く閉じられた瞼の隙間からも水滴が滲んでいた。
    (お兄様……深雪はこんなことをさせられています……)
     ジョロロロロロロロロロ。
     尿の勢いは少しずつ緩んでいるが、まだ止まらない。温かい尿液はみるみるうちに水かさを増し、大きめだった尿瓶の半分を突破している。
    (……人前でおしっこを致しました)
     ジョロ、ジョロ。
     尿が切れ始める。
    (アソコを見られました……お尻に指を入れられました……。そして、おしっこまでしているのです……)
     深雪の心は懺悔のように語っていく。
    (こんな深雪をどうか嫌いにならないで下さい。どうか……)
     ジョ、ジョロ…………。
     放尿が途切れ、溜まっていたものは全て出し切られた。
    
            ◇ ◇ ◇
    
     無事に生きて帰って来れた。
     生死の危険などありもしないのに、家へついてから深雪が感じたのはそんな思いだ。あんな悪夢のような目に遭わされ、それでも一応死なずに済んでいる。
     一応……。
     ただし、深雪の痴態はきっと教師の記憶に刻まれている。いかに医師にそういう感情がないとしても、男性教師はきっと深雪をオカズにするに違いない。そうはっきりと予想できるほど、教師が視姦していた対象はほとんどが深雪だったのだ。
    「お兄様、何でも一つ言う事を聞いてくれるのでしたよね」
    「ああ、そういう約束だったな」
    「……人の記憶は消せますか?」
     例え世界中から今日の深雪の記憶が消えても、歴史そのものは変わらない。拷問も同然だった出来事の数々は他でもない深雪に刻まれている。
     しかも、だ。
     同じ内容の検査は年に一度行われる。
     過ぎ去った悪夢が再びやって来ることは規定事項なのだ。
    
     深雪は負けません。
     それでも、元気を出して頑張ります。
    
    
    


  • 時槻雪乃の精密身体検査(後編)

    前編 中編

    
    
    
     さわ、さわ、
    
     正面の中年医師は、ようやく乳首を離れる。手を下へ、脇下から脇腹までを上下往復で何度も撫で、腹の皮膚と筋肉を探った末に下半身へ移っていく。
     背後の若手医師も、足元にしゃがんでふくらはぎを掴み、膝から下を満遍なく調べて、その手を上にのぼらせた。
    
     さわ、さわ、さわ、
    
     雪乃は今、前後の医師から太ももの表と裏を揉まれている状態にあった。
    「んくぅ…………」
     雪乃は緊張に包み込まれた。
     今の雪乃にはショーツもなく、靴下もない。全裸で全てを晒している。
     二人がしゃがんで太ももに触るという事は、つまり二人の顔面が大事な部分に接近していることを意味している。お尻とアソコが両方とも、前後からの至近距離の視線に晒され、拝まれているのだ。
    
     ジロ……
     じぃぃ……
    
     薄っすらと茂みを生やした初々しい秘所。
     ぷっくりと肉を丸めた柔らかそうな白い尻。
     それらが同時に、顔面至近距離の視線という、サンドイッチ状の挟み撃ちを受ける。恥ずかしい部位に対する、ゼロ距離からの視線は、皮膚に鋭く食い込んで、痛いような気さえしてくる。
    
     ふぅ――
     ふぅぅ――
    
    「――っ」
     前後からの温い吐息が、尻の丸みと秘所の割れ目にそれぞれかかった。
    
     ふぅ、ふぅ――。
    
     息が吹きかかる。
     男の吐き出す、感じたくもない温もりにゾッとする。正面の中年医師を見ればわかる事だが、かかってくる息のせいで、二人の顔が迫ってきている事実を、より強烈に認識させられる。
     じわじわと、雪乃は顔を熱くした。
     赤い顔は沸騰しそうなほどに熱を増し、雪乃の脳をことこと茹でる。ただ恥ずかしいだけの理由で頭がクラクラして、風邪気味の体調不良のように、全身が辛くなった。
    
     さわ、さわ、
    
     追い討ちのように、前後から内股へ差し込まれた手がきわどい位置へやって来る。今にも股下に触れそうな、脚の付け根のギリギリの部分を揉んだ。
    
     もみ、もみ、もみ、もみ、
     
     あまりの熱さに、雪乃は自分の顔の温度を自覚していた。自分の熱気が空気を蒸し、周囲を暑くしている錯覚さえ覚え、暑さにやられたように頭が揺れる。
     一旦、手が離れた。
     中年医師と若手医師の触診行為が、一瞬だけ止まり、雪乃の太ももは解放される。
     次の瞬間。
    
     前後の両手がお尻と秘所に同時に触れ、尻たぶと肉貝が前と後ろでそれぞれ開かれ、恥ずかしい穴が共に覗き込まれた。
    
     雪乃の表情は波打つようにぐにゃりと歪み、怒りとも悶絶ともつかない、頬も唇も変形した顔になる。
    「――――――――――――――っっっ!」
     声にならない叫びが、その顔つきから上がっていた。
     中年医師は親指を使って肉貝を開き、血色の良い陰部の中身を観察している。小陰唇の肉ビラと、突起しかけの陰核亀頭。まだ男を受け入れたことのない、挿入するには狭いであろう膣口の小さな穴。
    「うーん。綺麗だねぇ」
     性器に対するコメントが、雪乃の心を深く抉った。
    「処女のようだし」
     ――うるさい!
    「あー……。クリトリス反応しちゃってる?」
     ――殺すわよ!
     中年医師の発する言葉の一つ一つが、雪乃の心を破裂させんばかりに反応させ、神経を焼くような苛立ちと顔が燃えるほどの羞恥にかられる。
    「こっちも、随分綺麗だなぁ」
    「――――――――――くっ!」
     若手医師の肛門へのコメントが、全てを呪いたくなるほどの膨大な屈辱を注いできた。
     若手医師は両手で尻たぶを鷲掴みにする形で、割れ目を開いて肛門を観察している。綺麗とはいえないこんなところに、情け容赦ない量の視線が注がれる。掴んでくる手の中で、雪乃の柔らかい尻肉は、可能な限り硬く強張っていた。
    「あまり黒ずんでなくて、綺麗なピンク色か」
     ――うるさい!
    「皺の本数は○○本だったかな」
     ――殺す! 殺す!
     雪乃の抱く黒い憎悪は、その目つきと表情に滲み出て、赤面の涙目ながらに、視界にいる限りの男の全てに殺意を剥き出しにしていた。
     どんなに、一般人を殺さない理性はあっても、出来るならこの部屋を丸々と竈に変えたい本心が、雪乃の中でどうしようもなく膨れ上がっている。
     本当は殺せる。それを見逃してやっている。
     そして、恥ずかしいから殺すという、安っぽい怪物になどなるまいとする意地。
     その二つだけが、雪乃の精神を唯一支え、暴走させてはならない感情の荒波をギリギリで抑えている。今にも外れそうな容器の蓋の内側で、外へ出ようと暴れる内容物と、それを抑える蓋の対立のようなものだった。
     その我慢は同時に、こんな連中なんかのための、報われるはずのない苦行ともいえる。彼らへの殺意を抑える意味は、ただ恥ずかしい思いをすることだけなのだ。
    
     負けない……。
    
     雪乃はそれでも、意地を曲げない。
     初めに指示された、頭の後ろで両手を組み、足を肩幅程度に開いたポーズを崩していない。〝普通〟の少女なら、泣いてしゃがみ込みそうだからこそ〝普通〟を捨てた象徴として、耐え抜きたい。
    
     ……負けないわ。
    
     最後まで耐え抜き、殺さずに見逃してやったと言うためだけを目標にして、雪乃は殺意を表に出しつつも、言われた指示は守っていた。
     性器と肛門を同時に観察され、二人が口にする視触診の結果のコメントがペンでメモされ、雪乃がそうされている様子を周囲から眺められても、雪乃はこの意地だけは曲げなかった。
    
         †
    
     そうして、二人の医師に体の前後を全て触られた。体中の全ての箇所に、面積を余すことなく、まんべんなく手垢がついたと思えるほど、実に丁寧な視触診だったといえる。
     それも、二人分の手垢が二重にだ。
     若手と中年がそれぞれ触診してきたので、その分手垢は重ね塗りされ、最終的には顔の筋肉や唇までもを調べられた。
     そして二人は、筋肉が多めだとか少なめだとか、そうした情報を二人でその都度声に出し、記録役の医師がペンを走らせ記録した。雪乃の体つきは書面上のデータ化され、女性の情報サンプルとして、医学用の資料として永久に保存されるとのことだった。
     その時代その時代の、できるだけ多くの人の健康データを詳しく集め、医学的な考察に役立てる。
     目的だけなら、正当性があるように聞こえる。同意の上なら恥ずかしい検査もあるのだろうが、雪乃は学校規則という形で強制されてここに来ている。
     不当だと感じないわけにはいかない。
     若手医師と中年医師は、最終的には、雪乃の性器と肛門を両方とも観察したのだ。肩や膝など、面白くなさそうな場所にも丁寧だったが、お尻や肉貝に関しても、じっくりと揉み込んでいる。
     たった一日で、かなりの人数に恥部を見られている。
     耐えてやろうとは決めているが、絶対に不当だとも、雪乃は強く思っていた。
    
         †
    
    「ベッドで四つん這いになり、頭を下につけ、尻だけを高くした姿勢になりなさい」
    
     肛門検査のための指示で、雪乃はまるでお尻を差し出すかのような情けないポーズを取らされた。
     土下座で額をべったり床につけ、膝を立てて尻を上げたら、ちょうどこんな姿勢になる。
     土下座が頭をよぎったせいで、全裸で過ごす悔しさに加え、さらに別の感情が加わった。
     謝る理由もないのに、土下座で頭を下げている。
     被害者はこちらなのに謝罪を要求され、しかもその相手が加害者である時のような、最悪の屈辱感。単に恥部を晒すのとは確実に違う種類の、この屈辱。
     これをもう一段階例えるなら、尻や胸を触ってくるセクハラの犯人が、それがバレて騒ぎになったという理由で、こともあろうか女性側に謝罪をさせる。別にそんなことはしていないのに、女性が色香で誘ったのが悪いということにする。そんな理不尽な被害者に、自分がなったような気分がした。
     このポーズでは割れ目が広がり、肛門が丸見えになるのだ。
     単にポーズを取ったという理由だけで、それだけ理不尽な目に遭った気分になるには十分だった。
    
    「とりあえず、ギョウチュウ検査からやっちゃおう」
    
     ――それって、まさか!
    
     元より、反意を顔に出す以外の抵抗をする気はないが、その上でも、抗議をしたり「自分でやる」という申し出をする隙もないうちに――
    
     ぺたり。
    
     肛門に貼る専用のセロファンが乗せられて、雪乃ははっと全身を強張らせた。トドメを待つばかりの獲物のように、身も心も固くして、ほぼ反射的に、ギョウチュウ検査を人の手でされることを待っていた。
     雪乃はシーツに顔を埋めたまま、尻の背後に立つ男の気配を感じ取る。片手が無遠慮に尻たぶに置かれ、肉を掴まれ、揉まれて、顔を顰めながら雪乃は堪えた。
    
     ぐりっ、
    
     真っ直ぐに伸ばされた指が、肛門に腹を押し当てる。
    
     ぐりっ、ぐりっ、ぐりっ、ぐりっ――
    
     セロファン越しの菊皺を揉まれ、男の指の感触を、雪乃は肛門で如実に感じる。正確には、固いビニールに包まれたような指先の肉と骨の触感が、雪乃の精神を恥辱に染めていた。
    
     ぐりっ、ぐりっ、ぐりっ、ぐりっ――
    
     木の棒を使った火起こしの方法のように、真っ直ぐな指を左右にぐりぐり回転させ、雪乃の肛門を摩擦した。
     果たして自分は、男達の目にどう映るのか。
     尻を持ち上げたこんなポーズで、肛門をいい様に弄られている惨めな光景が、彼らの前にはあるはずだ。人をこんな風に扱って、さぞかし良い気分であろうと思うと、悔しくて悔しくてたまらない。
    
     ぐにぐにぐにぐにぐに――
    
     まるでその指先から、屈辱的感情を注入されているかのようだった。
    
         †
    
     ぬるりとしたゼリー状の塗り薬を指で塗られて、指先の感触と共に、ゼリーで肛門がひんやりした。
     次に行われるのは採便で、お尻の背後にいる医師は、雪乃にガラス棒を挿入しようと構えている。穴に先端を付き立て、直腸に向かって押し進めた。
     ガラス棒に成分を付着させ、保存して持ち帰るための検査方法らしいが、今さっきとどちらが屈辱的かはわからない。先に与えられた屈辱の余韻の上から、もう一度屈辱を与えて加算しているのか。それとも、元からこのくらいの屈辱なのか。
    
     嫌な違和感ね……。
    
     雪乃は瞼を強く閉ざしていた。
     本来なら、肛門は出すものを出す器官である。すなわち、出口といえるはずの穴を入り口にして、体内に異物が差し込まれてくる。
     痛いとか、キツイわけではない。
     ただ、違和感としか言いようのない違和感が、お尻の穴に雪乃の意識を集中させた。否が応でも、ガラス棒の形をはっきりと感じ取っていた。
    
     ヒク、ヒク、
    
     直腸を目指す侵入者に対して、肛門括約筋が条件反射的に反応して、蠢くようにガラス棒を締め付ける。雪乃自身にそんなつもりはなかったが、体内の領域に侵攻される違和感を前に無反応ではいられなかった。
    「ヒクヒクしないようにねー」
     注意され、どこまでも情けない、惨めな気分になる。
     こんなことを指摘してくる最悪のデリカシーの無さも、腹立たしいことこの上ない。
     ガラス棒が引き抜かれる。
     異物が外へ出てくれる、その点に限っては安心する。
     引き抜くと、つぷっ、と水膜の閉じるような音が立ち、検便が終了した。
     これで、少なくとも肛門は終わりのはず。
     と、雪乃は楽観する。
     その時だ。
     ヌプッ、と。
    
     すぐにビニール手袋をした中指が突き立てられ、根元まで挿入され、直腸検診が始められる。
    
     安心した隙を突くような挿入に、少しでも油断してしまった自分を含めて雪乃は恥じる。シーツに深く顔を埋め、布を強く握りながら、直腸を探る指の動きを雪乃は耐えた。
     挿入された中指は、雪乃の中で患部の有無を探している。健康度合いを指先で品評し、人の直腸に点数をつけようと、医師は指に神経を集中しているのだ。
     直腸壁を調査するために、指を回転して横や上を指の腹でなぞっていく。何度も指を捻り直し、診察漏れがないようにしている指の動きが、雪乃には如実に伝わる。
     初めは奥を調査していた指は、しだいに手前、出入り口に近い部分の直腸壁を探り始めた。前後スライドのようになぞりもするため、左右に捻るのに加え、若干のピストン運動も加わっていた。
    
     ずぷっ、ずぷっ、
    
     指の出し入れ。
     高く持ち上げられた尻に向かってのこの光景は、医師が白衣と手袋で真剣な面持ちなのを除けば、そういう肛門プレイの瞬間に見えなくもない。
     そのために尻を捧げて、雪乃が相手のプレイを受け入れている姿として見ようと思えば、視覚的には確実にそう映る。観賞している男達の中には、完全にそういうつもりで、腹の底では役得に歓喜している者も少なからず混じっている。
     もちろん、検査に過ぎないことは事実だ。
     だが、どちらにせよ雪乃は、こうしてお尻の穴を指で犯され、肛門が異物に慣らされている点に違いはなかった。
    
         †
    
     身体のあらゆる部位の検査は完了し、そして肛門にまつわる内容も概ね消化されていく。ギョウチュウ検査と直腸検診を終えた雪乃は、次に仰向けの指示を受け、開脚を強いられているのだった。
    
     四つん這いの方がまだマシじゃない。
    
     仰向けで、脚をM字状に開いて膝を両手で抱える姿勢は、尻が上へ持ち上がる。乳房、性器、肛門。全ての恥部が観賞可能となるポーズは、ただ維持するだけでも雪乃の精神をすり減らしている。
     顔が隠せないのが問題だった。
     確かに今まで表情を隠す機会はなく、赤面っぷりは常に見られ続けていたが、四つん這いのおかげでシーツに顔を埋めていられて、米粒程度には安心できていたのだ。
     不幸の度合いがあまりにも大きすぎて、結局は悲劇だとしかいいようのない、計算の釣り合わない不幸中の幸い。
     しかし、ここまで恥ずかしくて屈辱的な思いをしている最中では、例えミジンコほどの小さな安心の措置だとしても、その方がマシという理由で縋りたくなる。
     だがそれは、雪乃にしてみれば弱さともいえた。
     精神的に屈強さに欠けるから、よく考えればあっても無くても変わらない程度の、目に見えないほどの小さなマシさなんかが黄金に見える。
     そんなものに少しでも縋っていた自身の弱さは、雪乃のとって自戒したいものでしかなかった。
    「もうすぐだからねー」
     まるで子供を慰めるように、中年医師が言う。
     中年といっても、全身視触診の時とは別の人物が、開かれた雪乃の股へ顔を近づけ、性器を眺める。
     いや、医師だけではない。
     雪乃のベッドに集まる全ての男が、同時に見える三つの恥部を上から眺め、品定めでもするような顔をしている。
     忌まわしい連中だ。
     自分の裸を拝む全ての連中に対して沸く殺意を、雪乃は再び表に出し、このポーズのまま睨み返す。
    「この毛はカットして整えてるね?」
     中年医師は茂みを掻き分けるようにして、一本一本を指で摘んで確かめる。
    「…………」
    「鋏かな」
    「……そうですが」
    「整えるのには理由はあるのかな」
    「ない」
     雪乃は必要以上にぶっきらぼうに答えていく。
    「意識調査も兼ねてるから、明確に答えてね。本当に何の理由もなく鋏を入れて、整えてる?」
    「……………………その方が綺麗、って気がしただけ。深い意味も、理由も、ありません」
     殺意の篭った表情で、素直に答えた。
    「まあいいでしょう。可愛い理由だねぇ?」
    「――っ!」
     煽るような口調に苛立った。
    「じゃあ、触るからねー」
     中年医師は指を雪乃の性器へ置き、ぷにっとした恥丘、肉貝を指の腹でなぞり出す。表面を滑っていくような触り方に、秘所がとてもくすぐったい。
     どうしても意識がいった。
     恥ずかしいあまりに下半身に神経が集中し、指の感触に敏感になる。彼の指の腹がどんな形で、どのくらいの面積をしているのか。そんな事がアソコの触覚でわかるほど、秘所への意識の集中は激しかった。
     いっそ考え事でもして、他に意識を移せる器用な精神作業が出来れば楽なのだが、性器を触られるという重大な事態が相手では到底できない。
     意識がそこに縛り付けられ、本当は無視したい感覚をはっきりと知覚せざるを得ない。
     くすぐったさに似たムズムズするような感覚が、下腹部をキツく引き締め熱くする。肉貝をぐるぐると何周もしていた指先は、やがて縦筋をなぞるスライド往復を開始して、ムズムズとした秘所の熱さを増していった。
     感じてなど、いない。
     こんな形で感じるほど、この体は安くない。
     だが、人間の肉体が持つ生理機能は確実に刺激を受ける。雪乃自身はくすぐったいだけだと思っていても、巧妙な指遣いは秘所をみるみる熱くさせ、そこで汗をかきそうなくらいに、火照っていく。
    
     くぱぁ――。
    
     再び中身を暴かれて、雪乃は赤面の色を濃くした。
     神経の敏感な肉ヒダは、良かれ悪しかれデリケートだ。顔を近づけてくる中年医師の視線を感じ取り、それだけで中身を糸でくすぐられるような感覚を味わう。
     ツン、と。
     クリトリスへの軽いタッチが雪乃を襲う。
    「――――――――――っ!」
     予想外の強い刺激に、雪乃は今までにないほど目を丸めた。
     決して、快感だとは思わない。
     こんなことで、愛情も無しに感じはしない。
     だが、神経の集中する敏感な部分への接触で、例え快感ではないにせよ、性器はまるで無反応ではいられない。恥ずかしさと屈辱から、そこばかりに意識がいき、触れてくる指の形が如実に伝わり、視線さえも触覚で察知する。
     視線と触診を受け、神経は鋭敏化した。
     鋭くなり、熱くなった。
     そんな状態のアソコだ。
     どんなに本人が違うとは思っていても、本当の意味で何も感じないことなどありはしない。
     無視したくても、無視しきれず。
     無反応、不感症ではありきれず。
     下腹部がキュンと引き締まり、熱くなる。
     最悪の展開が押し寄せて、雪乃は焦燥した。
     まさか、そんなことにはなりたくない。
     絶対に、嫌だ。
     雪乃の気持ちなどまるで無視して、中年医師の指がクリトリスとトントン叩く。突起したそこを撫でる触診行為で、触れた具合を確かめる。
    「状態良好。えーと、それから――」
     確かめながら、触れた結果の専門的なことを呟く。それらを書類に書き取る職員の姿が、中年医師の背後にあった。
    「膣口は男性未経験ですが、指が一本か二本程度入りそうな程度の入り口ですね」
    「!」
     そんな事を平然と口にされ、雪乃は顔を歪めた。
     先に散々惨めな思いをしてはいるが、自分の性器をリアルタイムで解説され、何度となく感じてきたのと同じレベルの羞恥と屈辱が押し寄せる。
    「最初の面談では、自慰行為では外側を触ることが多かったという事ですが、おそらく膣口の近くは触れているでしょう。確かに自慰経験を積んでいる性器です」
     雪乃のプライバシー意識など無視して、中年医師は性器に対する見解を述べていく。許可を出したわけでもないのに、勝手に解説材料にされるなどたまらなかった。
    「この色合い、血色は良いですし。クリトリスの反応も良好で生理反応も概ね良し。ちょっと膣内も検診しましょう」
     あらゆる観点から語った中年医師は、ビニール手袋を嵌めたその手で、指を膣に挿入する。
     指が入った。
     この大切な場所に他人の指が入っている事実に緊張し、全身を硬直させて表情を強張らせる。
     指先がゆっくり、膣壁の合わさる壁の狭間を侵攻し、膣の最奥を目指していく。医師の指が根元まで埋まり、指の長さが届く限りの一番奥をつつかれた。
     膣壁全体が蠢いて、包み込んだ指の形を確かめる。
     雪乃の意志でしたくてしているわけでは断じてない。快感などとは認めないが、敏感な条件反射で、膣は蠢きキュウキュゥと収縮する。
    
     じわっ、
    
     何かが、滲んだ。
     気持ち良くなどない、断じて違う。
     異物が体内にある違和感とでも言いようの無い感覚だが、それが他人の指である事実が羞恥と屈辱を呼び覚まし、ついでのように汁が出る。
    「あー。これ、膣分泌液出てますねー」
     中年医師は即座に言った。
    
     違う! 感じてない!
    
     雪乃の目はそう叫ぶ。
     だが――。
    
    「濡れてるのか」
    「検査だというのに」
    「けしからん」
    「いえ、生理反応ですから」
    「そういうものか?」
    
     ざわざわと、大人達は小さな声で、雪乃が濡れ始めている事実について話題にする。
     それは雪乃にとって、鞭打ちにも匹敵する拷問だった。
    
    「膣液に違いないんだな」
    「いやぁ、出ちゃったかー」
    「ま、そんなもんでしょう」
    
     一つ一つの言葉が雪乃の心を強く鞭打つ。
     精神的苦痛もさることながら、自分の性情報について目の前で話題にされるという種類の恥ずかしさで、またもや頭が揺れて目眩がしてくる。
     恥ずかしいという理由だけで、こんなにも頭がクラクラするものなのかと。この状況でズレた関心を抱くほど、雪乃は熱っぽくなった自分自身の状態を思う。
     指はしばらく、抜かれなかった。
     最初の数分は栓を奥まで閉じたまま、指を左右に捻る事で膣壁の触感を確かめる。やけに念入りに、真剣な面持ちで行っていたため、これだけで二分か三分は消費していた。
     奥を調べつくして、ようやく指は外側へ動き、中年医師の視点から見たもう少し手前の膣壁が調べられる。中間地点の触感をチェックするため、若干ながら指は前後に揺れ動き、雪乃の膣に刺激を与えた。
    
     こ、この人! こんな――。
    
     単に性的刺激を与える目的なら、もっと普通に出し入れしていることだろう。気にかけたポイントに限って、膣壁の一部分をなぞるための前後の動きは、確かに診察行為に過ぎない。
     だが、膣内で確実に指が動き続けているのだ。
     それがどんなに小さな動きで、医師側に性感を与える目的がないとしても、微量の刺激は時間をかけて蓄積する。
     初めは、汗が滲む程度の量の膣液だった。
     それがもう少し増え、もっと目でわかりやすいほど、雪乃の股は濡れていた。
     まるで汗ばむかのように、膣口から滲み出た汁が股全体をしっとりさせ、蛍光灯の光をキラキラと粒状に反射していた。
     やがて指は引き抜かれ、医師はガーゼで汁を拭き取る。
    「…………」
     黙して受け入れる雪乃。
     だが、全身が震えていた。
     濡れたところを見られた恥ずかしさと、人に股を拭かれる屈辱という理由だけで、体中が痙攣したように震えていた。
    
    「さて、時槻雪乃さん。現在、尿意はありますか?」
    
     そして、その質問内容が次の屈辱内容を暗示していた。
    
         †
    
     ジョオォォォォォォォォ――。
    
     尿検査。
     次の検査に移ると、雪乃の前に尿瓶が用意され、雪乃はその中に向かって放尿を強いられる事となった。
     ベッドでの仰向けで、脚をM字にした姿勢のまま。
    
     ジョオォォォォォォォォ――。
    
     ぴったりと当てられた尿瓶の容器で、透き通った黄金水が順調に溜まっていた。
    「~~~~~~~~っ!」
     こんな形で、衆人環視の前に立つ雪乃は、ほぼパニックといっても差し支えない状態にいた。
     人前で用を足すなど、想像すらしたことがなかったのだ。
     学校の性教育やインターネットの情報で、性行為に関する知識だけなら持っていたが、マニアックなプレイまでの知識はさすがにない。そういう情報に、積極的な興味を持とうとしなかった雪乃は、まさか女性の放尿を見たがる男がいるなど知りもしないのだ。
     かといって、別にこの場にいる男性に特殊性癖者がいるわけではないのだが。
    
     ジョオォォォォォォォォ――。
    
     そういうわけで雪乃は、世の中に人前で放尿を行う機会が存在すること自体、発想すらなかったのだ。
     困惑を通り越して、衝撃。
     尿瓶を当てられた雪乃は、直後は尿が引っ込み、すぐには出せずに時間がかかった。衝撃で真っ白にされた頭が少しずつ思考を取り戻し、一体どんなありえない指示を出されているのかを明確に理解して、さらにしばらくの時間を費やし、ようやく放尿に至っている。
    
     ジョオォォォォォォォォ――。
    
     雪乃自身、もう自分のしていることが信じられない。
     顔の筋肉が許す限界まで、雪乃は強く瞼を閉じ、唇も結んで歯も食いしばる。人間の顔の極限まで赤くなった有様と、可能な限り表情の歪んだ、いっそ面白いほどの顔つきが、そこにはあった。
     雪乃の強いられている、自身の膝を抱えた開脚ポーズ。そのせいで両手とも膝裏を握っているため、そんな羞恥と屈辱が極限まで表に出ている表情を一切隠せず、この状況で唯一可能な、顔を横にして顔面半分をシーツに隠すことだけに全力の限りを尽くしていた。
    
        †
    
     パシャッ、
    
     最後に行われる撮影。
     全身視触診の際に取ったのと同じ、頭の後ろに両手を組んで足を肩幅ほどに開くポーズで雪乃は、カメラの焚くフラッシュとそのシャッター音を一身に受けていた。
    
     パシャッ、
     パシャッ、
     パシャッ、
    
     撮影担当者は乳房を映す。
     最初の数枚は正面から、さらに追加で横から取る。片方ずつをアップで取る。乳首を中心に撮影するため、ズーム機能で乳首だけを拡大して写真に収める。
     女子の発育情報をデータ化する資料として、乳房やお尻といった部位に絞って、雪乃は恥部を撮り尽くされるのだ。
    
     パシャッ、
     パシャッ、
     パシャッ、
    
     乳房だけでも、これで十回以上はシャッター音が切り落とされた。
     瞼を閉じ切り、限界まで顔を歪めた恥辱の象徴そのもののような表情まで含めて、ここでは撮影対象だ。裸を撮られる恥ずかしさの中、女の子がする『表情』さえも、彼らは採取しようというのだ。
    
     パシャッ、
    
     顔面のアップ。
    
     パシャッ、
    
     乳房と顔面をセットで映した一枚。
    
     パシャッ、
    
     頭からつま先までかけて、一糸纏わぬ姿が丸々と収まる一枚。
    
     そんな写真の数々を撮られる雪乃は、さすがに目に涙を溜め込んだ表情になっていて、本当に泣き出していないことがもう奇跡といえるほどの状態に雪乃はある。
    
     パシャッ、
    
     普通の撮影なら、まずもって感じなかったであろう、シャッターとフラッシュに対する激しい心の苦痛。それは本当の胸の痛みを錯覚するほどに、雪乃の胸を抉っていた。
    
     パシャッ、
    
     丸いお尻が撮影される。
     同じ写真を何枚も、お尻に向けてフラッシュを焚く。
     パシャッ、
     パシャッ、
    
     正面から、茂みの生えた性器が撮られる。ある程度カメラを離した一枚から、レンズを接近させた接写をそれぞれ数枚ずつ撮った。
    
    「四つん這いになってねー」
    
     パシャッ、
     パシャッ、
     パシャッ、
    
     桜色の菊皺が、レンズに収まる。
    
    「アソコも開いてねー」
    
     パシャッ、
     パシャッ、
     パシャッ、
    
     開かれた肉ヒダが撮影され、恥部といえる箇所の全てがカメラに収まった。
    
    「はい、終わりだよ」
    「一時間ほど休憩したら、服を返してあげるからねー」
    
     一時間……。
     長いあいだ過ごした時間に加え、さらに追加で一時間、雪乃は男達のいる環境下で全裸で過ごす。
     解放されるまで、ほんの数時間が一週間にも思えていた。
    
     かくして、雪乃の得た『痛み』は、果たして化け物たるための糧となったのか。
    
     それは誰にも、わからない。
    
    
    


  • 無実の罪 万引き身体検査

    
    
    
     その少女はあくまでも毅然としていた。
    「私はやっていません」
     個人経営の雑貨店で、手頃な女子高生を見かけた俺は、万引きを口実として事務所に連れ込んだのだが、想像以上にプライドが高い。頑として罪は認めず、怒鳴ろうがどうであろうが、机を叩き、蹴り飛ばしてまで脅かしても、まるで効果はないのだった。
     名前は湯佐京子。
     十七歳。
     凛として落ち着き払っている京子は、背中に垂れかかる長さの黒髪から、フルーツを思わせるような甘い香りを放出している。香りつきシャンプーなのだろう。非常に姿勢が良く、真っ直ぐ背筋を伸ばして太ももに両手を置いた座り方は、あまりにもきちんとしているので、いっそ万人の手本にしたい。
    「なあ、何故認めない?」
    「この店に入ってから、商品を手に取って眺めることすらしていません。万引きはおろか、不注意によって自分の荷物に紛れ込ませることさえありえません」
    「だったら、どうしてポケットに商品が入っていた?」
    「こちらが聞きたいです」
     ずっと、この調子だ。
     煮えを切らして怒鳴ったときでさえ、微塵も表情を変えずに淡々と「私はやっていません」と繰り返し、机を叩いて大きな音を立てて脅しても、欠片も怖がろうとはしてこない。物を蹴り飛ばす行為を試した時など、「いちいち騒がないで下さい」と、何の感情もなく事務的の述べてのけたのだ。
     こいつは機械か何かだろうか。実はアンドロイドではないか。
     そう思いたくなるほど、どんな手を使っても怯えない。自分は無実である主張だけを無機質に繰り返す。
    
     まあ、こいつは本当に無実だけどな。
    
     金で雇った俺の仲間が、女性客の手提げバッグやポケットの中に商品を紛れこませる。巧妙なプロの技術なので人は気づかない。俺が呼び止め、未清算の商品が出てきて初めて、今までの少女達はあらぬ冤罪に慌てふためく表情を浮かべてきた。自己主張の弱そうな、イケそうな女を中心に狙ってきたからだ。
     若干気が強そうだとは思ったが、いつもとは違った雰囲気の少女を狙えば、京子は顔色一つ変えなかった。
     こいつは普通じゃない。
     俺の手口に気づいたわけでもあるまいのに、仮にも商品が出てきたのに、こうも無実の主張を貫けるものだろうか。
    「何故、私のポケットに商品が入っているのですか?」
     と、逆に京子が俺に質問をしたほどだ。
     数ある万引きAVにあるように、脅しに脅して屈服させ、撮影したセックスを大金持ちの仲間に売るのが、この雑貨店を利用した俺の職業ですらあるのだが、ここまで手こずる女は初めてである。
     こんなやり取りを一時間以上は続けているが、それだけの時間をかけて、ようやく京子の感情が読めてきた。
     こいつ、意地になっていやがる。
     俺に対して怒気を含んだ顔立ちは、苛立ちにムっと頬でも膨らませた感じに近い。一見すると無表情でも、観察してようやく感情が見えてきた。
    「ま、なるほどな。商品を手に取ることもしていない。それが湯佐さんの主張だ」
    「はい。私の口からはそれを十二回ほど告げました」
    「数えてたのか? まあいい。とにかくだ。よしんば何かの間違えで、他のお客さんが持っていた商品があなたのポケットに紛れ込んだとしよう。どうやって紛れ込むかは知らないが、そういうことが起きたと過程しよう。だが、そんなものをどうやって証明する?」
    「警察に連絡を行い、指紋を調べれば、私の手が触れていないはずだとわかるはずです」
    「へえ? 警察とか呼んでいいの」
    「私は無実ですので、特に問題はないと考えますが」
     さすがに意思が強い。
     それどころか、他の表情筋は微動だにしないのに、目だけは少しずつ挑発的になり、呼ぶなら早く呼べよと言わんばかりになっていた。
     さて、こうなったら切り札を出すしかない。
    「わかった。ちょっと待ってろ」
     俺は一旦席を外して、一枚の顔写真を持ってきた。
     京子の通う高校の一年生だが、無実の罪で追い詰めるなり、涙ながらに許しを請い、実に素直に俺とのセックスを受け入れていた。いけると踏んだ俺は、ばら撒くという脅しでさらに数回抱いてやり、所属している部活やその成績について聞き出した。
     そいつが言うには、湯佐京子とは書道部のコンクールで賞を取るほどの者らしい。
     県大会のせいぜい何回戦までしか進んでいないが、空手と剣道の経験もあり、現在は茶道部とも掛け持ちしている。よほど日本文化が大好きと見える女は、後輩の顔写真を見て、やっとのことで少しは驚愕を浮かべていた。
    「それは……!」
    「あなたの後輩は万引きをした。きちんと謝罪をして、誠意が伝わったから、ブラックリストの顔写真と引き換えに通報はしなかった。ところが、また同じ学校の同じ書道部の犯行だ」
    「私は無実です」
    「たとえ無実でも、騒ぎにはなるだろ?」
    「……でしょうね」
    「過去にチャラにしたこの子の万引きも、今回のことがきっかけで言うかもしれない。一人くらいならいざ知らず、二人目だろ? 三人目や四人目を出しかねない学校には、きちんと言うことを言わなきゃいけない」
    「…………」
     京子は押し黙った。
     少しずつ、ほんの少しずつではあるが、睨みつけるような眼光が鋭くなり、頬の内側ではおそらく歯を食い縛っている。
    「次の書道コンクールにも影響は出る。今なら謝罪だけで許すが、それでも無実か?」
    「……無実、です」
     やっと、わずかにではあるが主張を躊躇った。
    「無実ね。いいだろう。確かに指紋を調べればわかることだし、あなたが警察騒ぎも厭わないなら、そのまま主張を貫けばいい」
    「…………」
     目が、一瞬だけ横へ泳いだ。
     京子とて、警察騒ぎで部活動に支障が出るのは嫌らしい。結果的に無実が証明できたところで、騒ぎが起きた事実のせいで、理不尽な活動停止もあるかもしれない。世の中というのはそういうものだ。
    「ただね。自分で警察を呼んでも構わないっていうくらいだ。さすがに本当に無実の可能性が出てくるな」
    「無実です」
    「しかし、証明できない。いや、警察が調べればいいんだが、そうしないと証明できない」
    「……早く、呼べばいいじゃないですか」
    「他の商品を取っていないか調べて、何もなければ、俺もあなたの無実を全面的に信じることにしようかな」
     俺はわざとらしく提案した。
    「バッグとブレザーは調べたでしょう」
     その通りだ。
     バッグの荷物は丁寧に漁り、ブレザーも脱いでもらって、ポケットや裏地を調べ尽くした後である。
     それ以上調べるということは、脱衣でもするしかない。
    「これを見ろ」
     次に俺が用意したのはノートパソコンだ。
     インターネットに繋いで、ニュースサイトから過去の万引き事例を出し、商品をブラジャーやショーツの中に隠していた事件を見せる。
    「……何が言いたいのですか?」
     京子の語気は、明らかに怒りで荒れていた。
    「お前が無実なわけないだろ? あの後輩ちゃんの先輩ときたら、同じように万引きしたっておかしくないんだ」
     わざと、後輩の侮辱もかねて煽ってやる。
    「……っ! 無実ですっ!」
     やっとのこと、怒りの感情が表に浮かんでいる。
    「はいはい。だったら、証明してみろよ。ま、有罪っ子ちゃんには出来っこないかー」
    「ふざけないで下さい! 警察を呼べば――」
    「警察とは仲良しなんだ。もしかしたら、白も黒に変わるかもねぇぇぇぇ?」
    「うっ、くぅ……!」
     逆に警察が切り札だと思っていそうだった京子には、今の言い方の効き目が大きいらしい。
    「せっかく後輩の万引きはチャラにしたけど、同じ学校の反抗じゃあなぁ?」
    「あなたという人は……!」
     焦ってる焦ってる。
     自分のせいで、あらぬ騒ぎが巻き起こり、俺の気分一つで後輩の万引きさえも学校中に知れ渡る。後輩が無実だとは知らないから、さしもの京子も戸惑っている。さらに駄目押しで、警察手帳を写真にとった画像を見せてやる。俺の知り合いは実は単なる下っ端だが、白を黒に変えた最低な男だと紹介してやり、京子はますます歯軋りの音を鳴らしていた。
    「ま、そちらの出方しだいでは無実を認めて、逆に俺の方から謝罪するよ。お詫びの品を出しても構わない」
    「…………」
    「どうする? 無実は警察に晴らしてもらうか? それとも、この場で何とかするか?」
     これが最終的な問いかけだ。
     そして、京子は心の中でこの状況を天秤にかけている。
     悩んでいることだろう。自分は無実だ。警察の力がむしろ身の潔白を証明する。そう信じている京子にとって、白が黒に変わる可能性とは、いよいよ冤罪逮捕の恐怖であろう。こうして京子を追い詰めた俺は、ますます強く睨まれていた。
     京子の視線。
     よもや人を呪殺したい勢いの眼差しだ。
    「……いいでしょう。この場で証明してみせます」
     いよいよ腹を括ったか。
     京子は脱ぐ決断をしたのだった。
    
         **
    
     はいはい、脱げばいいんでしょう!? 脱げば!
     この最低男が!
    
     なんて、俺は京子の眼差しを心の中で翻訳してみる。
     一度は調べた紺色のブレザーだが、一旦返したあとなので、脱衣の始まりはブレザーから最後の一枚までということになる。ボタンを外し、ワイシャツの白い姿になるまで時間はかからない。リボンを取るのも、当たり前のようにあっさりだ。
     しかし、次からは露出を伴う。
     ワイシャツにせよ、スカートにせよ、下着が出るのは躊躇うかと思ったが――。
    
     ――キッ!
    
     と、もしも京子が、瞳からビームを飛ばす生物だったなら、この俺を今の一睨みで射抜き殺したことだろう。
    「別に恥ずかしくはありません。無実ですから」
     俺の期待に満ちた表情に気づいてか、強気に振舞う京子の手つきは、迷い無くボタンを外して下から上へと、白い布地が左右に開け、隙間から肌色が見え隠れするにつれ、まずはヘソが一瞬見えた。
     鳩尾まで到達して、ブラジャーの領域にかけてボタンが外れる。
     最後の一つまで解放すると、京子は恨めしそうな視線を俺に向け、こうすれば満足なのだろうと言わんばかりに、堂々と下着越しの乳房を晒してみせた。
     純白のブラジャーだった。
     遠目では無地に見えかねないが、よく見れば刺繍で何かの模様が施され、ふんわりと質の良さげな布でカップやブラ紐が形成されている。例えるなら神界の天使が付けているような、綺麗さや清楚ぶりをイメージしたデザインだ。
     豊満な乳房を中央に寄せ、乳と乳の押し合う谷間が、全ての男の視線を誘いかねない莫大な引力を帯びている。
    「恥ずかしいかな?」
    「別に恥ずかしくはありません」
    「顔、赤いよ?」
    「恥ずかしくはありません」
     明らかに頬を朱色にしていながら、自分は何も感じていないとでも言いたげだ。それを証明したいかのように、さっさと生肩を剥き出しにして、右腕の裾を引き抜く。腕一本分の肌面積が増えると、すぐに左腕からも裾が抜け、京子のワイシャツは俺の手に渡った。
    「何もないな」
     体温の残ったワイシャツをよく調べる。両手で広げ、何か落ちてはこないかと、ゆさゆさと揺すったあとは、ところどころに手を触れて、布地のぬくもりを撫でていく。
    「何もないはずです」
     京子はすぐに、もうスカートを脱ごうとしていた。
     サイドホックを取り外し、ジッパーを下げることで緩んだスカートから、ズボンを脱ぐのと変わらない腰の曲げ方から、内側に納めた脚を一本ずつ持ち上げる。手渡しのスカートを受け取る俺は、下着姿をくまなく眺めた。
     純白のショーツは新品だろうか。
     少しも色のくすんでいない爽やかな白は、まるで天使の羽から編み込んだ布にも思える。ゴム部に沿って腰を囲んだレースの飾りつけも、クロッチを華やかに見せる豪奢な刺繍も、見るからに高級品だ。
     俺はさっさとスカートのチェックを済ませ、下着姿を眺めてやった。
     モデルにも劣らない眩しい肢体だ。
     ふくよかな乳房、引き締まった腰のくびれ、曲線的に整った美脚のライン。
     モジモジと動く両手は、自然とアソコや胸にいき、隠したくてたまらない仕草で、けれど実際には隠すことなく彷徨い続ける。
    「やっぱり、恥ずかしいんだな」
     指摘してやると、京子は慌てて両手を下ろした。
    「だから何も感じません!」
    「そうムキになるな」
    「なってません!」
    「ほら、次はブラジャーだぞ?」
    「わ、わかっています!」
     背中に両手を回した京子は、一瞬ばかりホックを探るが、三秒と待たずに発見して、スムーズにブラジャーを脱いでみせていた。
     しかし、俺は気づいていた。
     脱ぐ直前となるや否や、朱色は耳まで及んでいき、片腕でブラジャーを手渡すときには顔全体が真っ赤である。
    「くぅ…………」
     受け取ると、より恨みのありそうな視線で睨んできた。
     自分のブラジャーを目の前で調べられている気持ちといったらないだろう。両腕でがっちりとクロスを固め、胸だけは完全に隠そうとしている姿も、なかなかに女の子らしくて可愛らしいものじゃないか。
    「どうした? 堂々とするんじゃなかったのか?」
    「別に胸まで見せる必要はありませんので」
    「へえ? しかし、あと一枚だな」
    「……わかっています。いちいち言わないで下さい」
     ショーツを腰から下げるため、両側のゴムに指を引っ掛ける京子は、必然的に胸のガードを解除している。くの字に折れた腰の上半身が、俺に向かって倒れてきて、下向きの乳房が乳首を床に垂らしている。
    「そうそう。次はちゃんと気をつけの姿勢にならないと、このパンツ返さないからな」
    「……くっ!」
     そんな俺にショーツを手渡す屈辱はどんなものだろう。
     包み隠さず、両手を真っ直ぐ下ろして背筋まで伸ばした姿は、瑞々しい乳房の膨らみを惜しげなく晒している。乳首の突起は恥ずかしさのせいだろう。アソコの陰毛は、毛並みが細いためなのか、あまり黒々とはしていない。薄っすらとした灰色の草原が、綺麗な三角形に切り揃えてあるのだった。
     俺の手の平にあるショーツには、当然のように体温が残っている。
    「新品か?」
     左右をつまみ、真っ直ぐ広げ、俺はわざとらしいまでにショーツの柄を鑑賞しつつ、京子の全裸も忘れずに視姦する。
    「買ったのは二週間前です。さほど新品ではありませんが」
    「へぇ?」
     裏返して、日頃アソコの割れ目と接している部分を撫でる。まるで縦筋をなぞる愛撫のようにしてやると、実際に自分の性器を触られる想像がよぎったのだろう。あからさまに顔を顰めた京子は、涙を溜め込んだ怒りの眼差しを浮かべていた。
    「もう十分ですよね……! これで私の無実を認めるという約束です!」
    「ああ、あと少しで認めてやる」
    「あと少し? もう服も下着も全て――」
    「まだ物を隠せる場所は残ってるだろ?」
    「そんなまさか……」
    「アソコの穴と、尻の穴だ。よーく見せてもらうからな」
    「うぐぅぅ……!」
     本当にどんな気持ちだろうな。
     まったく、たまらない。
    
         **
    
     そして、俺の目の前には尻があった。
     自分で自分の足首を掴む前屈姿勢で、美尻を高らかに突き出してある。人権配慮の進んでいなかった時代の身体検査か何かでしか、きっと人にこんなポーズを取らせる機会はなかったことだろう。
     実に気分がいい。
     人をこんな風に扱うのは、他者の尊厳を玩具にしている実感がわいてくる。
     身体を折り畳んだ体勢では、自動的に割れ目が開け、肛門が丸見えだ。黒ずみの薄い雛菊皺は、桜の色を暗くして、艶やかな紫に仕立てたような色合いだ。放射状の皺が心なしか、一種の可憐な花とさえ思えてきた。
     お尻の穴にこんな例えをするのもあれだが、和の風情さえ醸し出されている。
     そもそも、京子の美白肌自体が、澄み渡った自然界に優しく積もるふんわりとした雪のようであり、そこに紫色の桜の花びらを飾り付ければ、和の芸術が出来るかもしれない。汚いはずの排泄器官なんぞに、それだけの雰囲気が宿っていた。
     そんな肛門の下には、いじらしく中身を閉じたワレメがある。
     まるで身持ちの固い清楚なお嬢様が、生涯を誓い合うただ一人の男性のためだけに、大切にしてあるような性器である。土手の丸みといい、一本筋の通りも素晴らしい。
     習字で『一』という漢字を書くだけでも、止めや跳ねなどの技巧一つで見栄えが変わると、俺の小学時代の教師が語っていた。京子のマンコはまさしくそれだ。たかが一本の直線ごときが、微妙な深みや太さの変化を帯びて、たちまち妖艶な芸術品へと変わってしまう。
     こんなマンコであろうと中身を開けばグロテスクな中身があるなんてことが信じられない。
     いや、案外肉ヒダでさえ、この分なら芸術性じみた風情ある外観かもしれない。
    「どうせ開いたりするんでしょう……!?」
     物凄い語気の荒さだ。
     今にも怒り散らし、破壊神として全てを破滅に導く前兆じみた恐ろしさすら感じるが、それほどまでに屈辱を溜め込みながら、こうして情けの無いポーズを晒している。全ての主導権は俺にあるのだ。
    「そうそう。下手な動きしたら、シャッター押しちゃうからな」
    「……なっ!?」
    「お? 動いた?」
    「動いてません!」
     こんな姿を撮られるなんて、もはや拳銃を突きつけられて、生殺与奪を握られている気持ちと何一つ変わりはしない。
     しかも、この部屋には初めから隠しカメラが設置してある。
     さきほどのノートパソコンにも、映像録画機能があり、京子が気づいていないだけで、今のやりとりでさえ、データとして残っているのだ。
    「しっかし、ケツと喋っている気分がするなぁ?」
     俺は人差し指を接近させ、丸い尻肌をそーっと、触れるか触れないかの際どさで撫でてやる。
    「っう……!」
     ――嫌よ!
     とでも叫んだように、俺の指を跳ね退けんばかりに尻が左右に動いたのは、まさしくボディランゲージに他ならない。俳優は表情だけでなく、身振り手振りといった挙動によっても感情表現を行うが、京子は尻の振り方一つで主張したといっても過言ではない。
     尻たぶに両手を置いた。
    
     ――きゅぅぅっ、
    
     皺を内側に巻き込む窄まりで、肛門が小さく縮んだのは、撫で回しを始めた瞬間だった。
     尻肉に力が入り、強張ったのだ。
     今にも歯茎が壊れるほど、きつく歯を食い縛ってでも耐えているであろう京子は、全身の筋肉さえも激しい感情で力ませている。脚の筋肉まで硬直で震えているのが、プルプルとした微妙な振動から尻肉に通じている。
     いかに我慢しているのか。それが尻でわかった。
     本当は怒鳴り散らしたり暴れだしたい人間が、気持ちを抑えてはいるものの、肉体は震えているといえばいいだろうか。
     お尻がそうなるなんて面白すぎる。
    「しっかし、プリプリしてんなぁ?」
    「そんなことをしていないで、早く私の無実を……」
    「だから見てるじゃないか。可愛い可愛いお尻の穴を」
    「くぅ……!」
    「まあ、お望み通りアソコの中身を見てあげるとするか」
     俺は指で性器を開く。
    
     くぱぁぁぁ……
     
     と、開けた中身は薄桃色の美肉であった。
     どうして、こんなところまで綺麗に見えてしまうのか。生々しいビラの部分から、尿道やクリトリスの部分まで、果ては肉棒を入れるための膣口までもが、まだこの世の穢れを何一つしらない乙女のように佇んでいる。
     黒ずんでいないのだ。
     今にも爽やかな桃の香りでも漂いそうな色合いが、粘膜を纏ってキラキラと、光の反射で輝いてすらいる。
    「へえ? マンコは無実みたいだな。もちろん処女という意味で!」
    「う、うるさいですよ……」
    「へいへい。商品が隠れていないかチェックしますよー」
     そう言って、俺は親指をどけ、ぴったりと閉じ合わさった性器を眺める。割れ目の筋に指を這わせて上下に擦り、愛撫から開始した。
    「なっ! 何を……!」
    「いきなり指を入れたら痛いだろ? 親切に濡らしてあげているんだ」
     俺は恩着せがましく言ってやった。
     さも上の立場から、広い心で優しくしてやっている態度である。
    「やめ……」
    「大人しくしてろ。これが済んだら無実を認めるからな」
     じっくりと揉みほぐし、狭間から愛液が出るまで刺激を与える。
     ひとりきり濡れた性器に中指を挿入して、俺はピストンを開始した。
    「あっ、くぅ……!」
    「なんだ? 気持ちいいのか?」
    「そんなわけ! むしろ痛いわ! もっと丁寧に出来ないのかしら?」
    「ほう? そんなに気持ち良くなりたいか」
    「ふざけないで! そんな意味なわけ――」
     しかし、感度は十分に良いらしい。
     処女のくせに感じやすいということは、オナニーで鍛えたマンコか?
     あー楽しい。
     空いている左手を尻たぶに置き、触感を味わいながら、ありもしない盗品をよーく探す。
    「ふーむ。この辺りか? それともこっちか?」
     膣壁をかき回し、指の腹で右も左も、色んな角度を確かめる。膣の温度で俺の指は温まり、出し入れを繰り返すごとに粘膜を帯びていき、やがては愛液によって皮膚の表面は完全にコーティングされていた。
    「むっ、くぅ……!」
    「おいおい。やっぱ別の意味で有罪だよなぁ?」
    「何が言いたいんですか……!」
    「あくまでも検査だぞ? 濡れすぎだって話だよ」
    「……っ! 調子に乗ったことを言わないで下さい!」
    「すまんすまん。んじゃ、もーちょっと詳しく、じっくりと確かめるぞ?」
     俺は丹念に指を出し入れして、京子に刺激を与えていく。
    「くむぅっ、んぅぅ……!」
     どうにか堪えているような、歯を食い縛った喘ぎ声が、たまらなく良い声に聞こえてくる。
     よりペースを上げていき、もう片方の手でクリトリスまで愛撫する。快感に脚を力ませる京子は、肛門をヒクヒクさせながら――。
    
    「くあぁぁぁあ……!」
    
     やがて絶頂に果てていた。
    「ははは! 楽しかったぜ?」
    「……でしょうね。下衆男」
     もう立っている力もない京子は、そのまま床に倒れ込み、まるで全力疾走後であるような荒い息で肩を上下させながら、始終俺を睨んでいた。
     着替え直して、ショーツを履いて――。
     ここから出て行く時も、最後の一睨みとばかりに、肩越しにキッと鋭い視線を送り、競歩選手さながらの早歩きでさっさと立ち去っていくのだった。
    
     さーて、今回の映像はいくらで売れるかな。
     儲けが楽しみでならん。
    
    
    
    


  • 検査官の男とリズベット

    
    
    
    
     服を脱いだその体は、驚いたことに女であった。
    
     俺の住む町は巨大な防壁で囲まれている。東西南北にそれぞれ一箇所、合計四つある門だけから、町への出入りは可能である。
     防衛対策というものだ。
     高く分厚い岩の壁なら、ここいらの魔物ではよじ登れないし、やれオークやオーガの怪力をもってしても破壊はできない。おまけに門には常駐兵が置かれており、万が一にも侵入を試みる魔物がいたなら、直ちに討伐へ出動できる仕組みであった。
     ここを通ることができるのは、まず町から旅立つ手続きをした町人。許可証を持った商人や国の重要人物たち。
     そして、身体検査を受けた旅人だ。
     異国のスパイや人に化けた怪物なんて紛れ込んでは、町の損害になってしまう。未然に防止するためには、全裸に剥いて危険物の持ち込みを確認し、検査に従った者のみに入門を許可するのが一番いい。
     それはわかっている。重要な仕事だ。
     しかし、旅人とは多くが男だ。
     こんな場所の仕事に就かされた俺は、ホモでもないのに男の裸を検査して、見たくもない尻穴まて確かめなくてはいけないのだ。同性愛者の専門職にでもすればいいのに、何たって元は騎士団志望の俺が末端の汚れ仕事を受け持つ羽目になるのだか。
     もっとも、例えどんなに吐き気がしても、数ヶ月以上も続けていれば、嫌でも慣れるというのが人間だ。
     初めは精神的苦痛で鬱病になりかけたが、今となっては淡々と心を殺し、まるで商人が物品の品質確認でもするような気持ちでこなせるようになっていた。
     男の裸なんてと思うから、苦しいし吐き気がする。
     物体をチェックする仕事と思えば、いくらか気が楽になる。
     この切り替えができるか否かが、身体検査官の向き不向きを分けるらしい。悲しいことに俺は向いてしまっているわけだ。
     そんな俺の前に現われたのは、リズベットという旅の剣士を名乗る少年だ。
     彼は女と見間違えるような美少年で、ショートカットの髪の長さは少女に流行るヘアースタイルとよく似ている。随分と細身の綺麗な奴だと思っていた。
    「この町へ来た目的は?」
    「ボクは旅人として自由に生きています。この辺りで宿を取り、賃金を稼いで食料を補給すること。それから観光地なんてあれば、観てまわりたいと思っています」
     凛々しい声も、少年にしてはやや高めだ。
     この時点で、確かに違和感はあった。
     だからといって、普通は性別なんて疑うだろうか。世の中には女っぽい男もいるし、逆に男と見間違えるほどの男臭を漂わせた筋肉女も存在する。だいたい、背もそれなりに高かったんだから、誤解しても当然だろう。
     単純に線が細くて、女性的なルックスの少年なだけだと思っていた。
    「よくある理由だ。ま、こんな面談調査は形式上のもんだから、身体検査さえパスすれば基本的には町に入れる」
    「他の町では精神鑑定まで受けましたが」
    「ああ、他所ではやるらしいな。うちでは導入されてないから、あとは身体検査だ」
    「それも国や町によって基準がそれぞれですね。ここではどこまで脱ぐのでしょうか」
     誰だって、好きで尻の穴まで調べられたい人間はいない。
     せいぜい下着姿まで脱いで、簡単な衣服チェックで終わる程度のものを期待するのも、人として自然な気持ちだろう。
    「悪いがこの町では全部だな。規則だから破れない。ま、わかってくれ」
    「……わかりました」
     リズベットはまず腰のベルトを取り外して、金貨を入れるための布袋や護身用の剣をテーブルに置いていく。肩にかかったマントを脱いで、皮製の軽量鎧を上半身から取り外す。旅人が重量装備で歩くわけにはいかないから、軽さと丈夫さを兼ねた皮鎧というわけだ。
     あとはシャツもズボンも脱ぎ去って、リズベットは全裸になるだけだ。
     そこで俺は気がついた。
     妙に恥じらうのだ。
     シャツを脱ごうという直前で、頬のほんのりと染め上げて、俺の方をチラチラ見る。
    「どうした?」
    「脱いでいるあいだは向こうを向いてもらえるといいのですが」
    「駄目だ。その手を使って、検査官の背中を刺した盗賊の犯罪者が過去にいる。同じ事例を出さないための決まりで、必ずこちらを向いた状態で、正面から向き合ったまま脱ぐんだ」
    「そうですか。それもそうですね。わかりました」
     やけに悲しそうな、何かを諦めたような声だった。
     確かに男だって、人前で好きで脱ぐことはないだろう。上半身ならともかくとして、下まで含めて裸になり、これから検査を受けるだなんて、躊躇う気持ちが沸くのも自然なことだ。
     しかし、そうじゃなかったのだ。
     俺は何かを勘違いしていた。
     リズベットが泣く泣くシャツをたくし上げると、膨らんだ乳房を潰すためのアイテムが、いわゆるサラシというものが、その胸には巻かれていたのだ。
    「お、お前……! 女か……!」
    「……はい」
     恥ずかしそうにリズベットは答える。
    「何故、男の格好を?」
    「男装をした方が、野党やオークに襲われる確率が減るものですから」
    「なるほど、それもそうか……」
     俺は納得した。
     妙に線が細くて声も高くて、女性的な少年に見えたのは、リズベットが初めから女だったからなのだ。
     それも年頃の少女だ。
    「女性でも、規則に例外はありませんか?」
    「す、すまん。脱いでくれ」
    「わかりました」
     リズベットは羞恥の込み上げた赤い顔で、たどたどしくサラシを解き、膨らみかけの可愛らしい乳房をあらわにする。
     ズボンを脱ぐと、そこにはショーツと呼ばれる下着があった。ピンク色だ。リズベットは恥ずかしいのを我慢しながら、腰から膝へ、足首へと、だんだんとショーツを下げていき、一糸纏わぬ姿となった。
     なんてことだ。
     旅のために男装をして、性別を偽る女が存在するとは聞いていたが、何ヶ月働いても女の検査をする機会はなかったので、そんなものは迷信だと思っていた。
    
     ――いや、俺は女の裸を検査したぜ?
    
     かつて、同僚が酒を飲みながら自慢してきた。
     あの時は信じなかったが、今ならそいつを信じることができそうだ。
    「気をつけの姿勢で、指示がない限り動かないように」
    「は、はいっ」
     直立不動を保ったリズベットは、羞恥に歪んだ表情を浮かべて、胸もアソコも隠す事を許されない恥ずかしい状況を堪えていた。
     下の毛は薄い。三角形に整った草原は、薄い灰色の奥に肌色をチラつかせている。割れ目は綺麗に閉じており、いかにも男を知らない初々しい感じを漂わせていた。
     へへっ、こいつ上玉じゃないか。
     いや、俺は真面目な男だ。検査官の立場を利用して、少女を手篭めにしたとあっては、この町の評判にも響く。
     しかし、規則の範囲でなら、いつもより丁寧に検査をやっても、何ら問題ないだろう。
    「手術によって、皮下に物を埋め込む手口が存在するので、全身を手で確認する」
    「……は、はい。どうぞ」
     リズベットの声は震えていた。
     手を伸ばし、指先から肌に触れると、さらにビクンと肩を弾ませ、必死に目を瞑って堪え始める。
     俺はマニュアルに沿って顔やうなじに手を這わせ、腕や脇、背中や腰も調べていく。
     次に胸を揉んだ。
    「…………んっ」
     リズベットは驚くような喘ぐような声を上げ、全身を硬直させる。
     この手の平に収まる感じは素晴らしい。ふんわりと柔らかくて、しだいに突起してくる乳首が手の中央に当たってくる。乳首を指でつまんでやると、逃げるような身悶えで方をくねくねと動かし始めた。
    「動くんじゃない」
    「ごめんなさいっ」
     目に涙を溜め込んだ表情がたまらない。
     顔が完全に真っ赤じゃないか。
    「いいか? まだまだかかるからな」
    「……はいっ」
     さらに太ももを揉みしだき、膝やふくらはぎを確かめた俺は、台の上で仰向けになるようにと指示を出す。
     そして、両足を持ち上げた。
    「ひっ…………!」
     可愛い悲鳴が上がるのも当然だ。
     何せ、開脚した両足が天を向き、アソコの割れ目も肛門も、それに乳房も、全ての恥ずかしい部分が見えるポーズを強要したのだ。
    「そのまま自分の膝を抱えるように」
    「……………………はい」
    「次は尻だ」
    「んくぅ…………!」
     俺は尻たぶを鷲掴みにして、たっぷりと揉みしだく。
     アソコの中身を指で開けば、綺麗なピンク色の肉ヒダが、膣口を小さく開けている。この形状は環状処女膜というやつか。
     尻の穴も黒ずみがなく、綺麗な桜色から放射状の皺が伸びている。ここまで綺麗だと、排泄気孔であっても不潔なイメージが沸いて来ない。
     俺は指を入れた。
     膣内に物が隠されていないことを確かめるため、長く伸ばした一本の指を上から突き入れ、ゆっくりと沈めていった。
     温かくて、粘液のぬかるみが指全体にまとわりつく。
     俺は探るように指を動かし、膣内を調べ込んだ。膣壁をなぞるようにして、ゆったりとしたピストンで出し入れする。とっくに何もないのがわかっていても、なおも俺は時間をかけて女性器を探り続けた。
     指を抜いた後も、再度広げて膣口をじっくり拝む。
     クリトリスをツンツンついて、そのうち突起しないかと確かめる。
     割れ目を上下になぞるように愛撫する。
    「あとは尻の穴か」
     乙女としては、アソコと肛門のどちらが恥ずかしいだろう。
     男としては性器を触る方が楽しいが、少女への羞恥心としては肛門に賭けたい。
     よし、もっと恥ずかしがらせてやろう。
    「いきなり入れると痛いから、ちょいとマッサージをするぞ」
    「え? あ、はい……」
     そんな馬鹿な、と言わんばかりの顔をしていた。
     かといって、服を着ている俺の前で、自分はまんくり返しの状態では、精神的に意見を言い張る気力はなかったのだろう。
     リズベットは諦めたように横を向き、これからされることに耐えるため、唇を内側へ丸め込んで目を瞑った。顔の筋力が許す限りの限界まで、強く強く目を閉じているようだった。
     俺は肛門に指を触れ、グニグニと揉んでやる。
    「うぅ…………」
     リズベットは胸の上で両手を組み、指にまで力を加え、辛抱強く耐えていた。
    「肛門括約筋に力を入れろ」
    「……それは何故ですか?」
    「ほぐすためだ。肛門に指を挿入するのは意外と痛い。うちに支給されているジェルは出来が悪いから、ほぐす措置が必要なんだよ」
    「……わかりました」
     リズベットはより一層諦めの気持ちを深め、お尻の穴に力を入れる。
     ヒクンと皺が引き締まった。
    「力を抜け」
    「……はい」
     小さく絞られた肛門は、即座に緩んで皺を伸ばした。
    「それを繰り返して、肛門をパクパクさせろ」
    「そ、そんな……」
    「やれ」
    「……わかりました」
     肛門が動き始めた。
     力んでは緩み、力んでは緩み、その都度皺が引き絞られる。小さく皺を縮めた肛門は、力が抜かれるたびに元の形へと緩んでいき、またすぐに力が入ってキュっと締まる。
     その光景を見ているのが面白かった。
     何がって、表情だ。
     こうして恥ずかしい真似をさせ、ヒクヒク動く肛門を視姦していると、耳まで真っ赤な顔から存在しない湯気さえ上がって見えてくる。顔中の筋肉が強張った表情は、いかにも「恥ずかしい!」と叫びを上げており、普通の人生を歩んでいれば、まず味わうことはなかったほどの羞恥に苛まれているのがよくわかる。
     そんな恥じらい顔を隠したいかのように、必死になって横を向こうとしていた。もし自分の膝を抱える指示が無ければ、その両手も顔を隠すために使っていたことだろう。
    「こっちを向け」
     俺はそう言う。
    「…………はい」
     リズベットはその首から上だけが変色したといってもいいほどの赤面顔を俺に向け、目を合わせるのが気まずいように、視線だけを左右に泳がせていた。
     本当にいい眺めだ。
     尻もアソコも、恥ずかしがる表情も、全てが拝み放題だ。
    「そろそろか」
     肛門を指でツンと突き、リズベットは顔を歪めて腰をくねらす。
     俺は指を挿入した。突き立てた指を肛門へと沈め、指の根元までを埋め込むと、マニュアル通りに中に物が隠されていないかを探り始める。時間をかけて調べ込み、やはり何もないのがわかっても、俺は丁寧な検査をやめなかった。
     やめるどころか、指をピストンしてみた。
     少しでも長く、恥ずかしそうな表情を見てやるために、ずっと出し入れし続けた。指を入れた状態のまま、再び肛門に力を入れる指示を出し、締め付ける力を確かめたり、肛門検査を済ませた後も、検査ミスの防止と言ってもう一度体中をベタベタ触り、お尻を重点的に揉みしだいた。
     リズベットはどんな気持ちでいただろう。
     男装なんて旅の護身目的に過ぎないだろうが、ここでは自分が女であることを嫌というほど証明され、この俺に時間をかけて遊ばれる
     人の尊厳を弄ぶのは、とても優越感のあることだった。
    
    
    
    


  • 某校での処女検査

    
    
    
     この学校には処女検査が存在する。
    
     校則が厳しい関係上、女子生徒の性は学校側で管理される。
    
     もしも経験有りなら、直ちに個人面談が行われ、相手はどこの誰で、どういう付き合いの末に行為に達したか、性交渉の際に避妊はしたか。そういった質問が執り行い、その生徒の性経験が真摯な付き合いによるものかどうかを審査する。
    
     検査方法はまず、女子生徒を一人ずつ個室へ呼び出すことから始まる。
    
     生徒は担当教師の見ている前でスカートの中から下着を脱ぎ、たとえ相手が男だろうと一時的にショーツを手渡し、検査中は預けなくてはならない。
    
     次に分娩台に座らせる。
    
     初めは背もたれ付きの椅子のようになっている分娩台だが、両脚を添える部分が自動的に可動する仕組みになっているため、女子生徒の足はM字のように開かれる。両足を固定するためのベルトが付属しているので、検査中は一切の身動きが取れない。
    
     肘かけの部分にもベルトがあるので、両腕さえも動かせない。
    
     また、背もたれの頭の部位は特別な形状をしており、U字型にへこんだ枕は、座っている女性の顔を正面向きのまま固定する仕組みである。つまり女子生徒は顔を背けたり俯いたりということが出来なくなり、ただ前だけを向き続けなくてはならないのだ。
    
     そして、一連の様子は三脚に立てたビデオカメラによって撮影される。男性教師に秘所を除かれる最中の顔が、十代女子の羞恥心を紐解くための学術資料として採取され、赤く染まった顔や恥じらいによる表情の歪みは、全て学者達の手に渡るのだ。
    
     準備が整うと、男性教師はまず、デジタルカメラを女子生徒の秘所へと接近させ、割れ目の部分を撮影する。次に指で中身を開き、膣口を観察することで処女か否かを確かめる。中身の写真も学術資料とされるため、撮りやすいように両側をテープで固定し、そして乙女の秘密は画像データとして保存されていく。
    
     この際、使用するカメラは検査用に用意された貸し出し品であり、本来ならばデータは私物化できない仕組みである。三脚のビデオカメラも同様だが、この程度の対策など、とうの昔に形ばかりのものと化している。
    
     教師が自前のカメラを用意して、複数の写真を撮影しても、生徒側にはそれが貸し出し品なのか私物なのかは判断できない。ビデオカメラも同様で、複数の学会に提出するため、各場所からの貸し出しだと言い張れば、実際にそういうケースもあるため、生徒側から審議を確認することは不可能だ。
    
     よって、男性教師は提出用の画像を撮影したのち、私用の写真までもを記録に残し、女子生徒の秘所を自宅で使用している。
    
     これが発覚したケースは今のところ存在しない。
    
     今後事例が出るにせよ、それは全国でもほんの数件に収まるに違いない。
    
    
    
    


  • 性器検査の存在する世界(ショート)

    
    
    
     こういう検査が常識になったのは、性の低年齢化に伴う性病の低年齢化を恐れてか。あるいは邪な政治家が少女を恥ずかしい気持ちにさせたいのか。
     さすがに後者はないにしても、こうした検査の導入が必要なほど、性経験有りと見られる女子生徒は増えているのだろうか。低年齢化は事実にしても、そこまで大げさに男性経験のある子供は増えたのだろうか。
     若者の事情に疎い沢峰新造としては首を捻るばかりだが、どちらにせよ課せられた仕事はこなすまでなので、細かいことはどうでもいい。
     高校、保健室。
    「よろしくお願いします」
     クラスと名前を告げた一人の少女が、新造の前で恥ずかしそうにスカートをたくし上げ、履いているパンツを見せつけた。
    「はいよ」
     新造は当然のようにパンツに手をかけ、膝までずり下げ、少女の秘所を確認する。陰毛の茂みを指で掻き分け、割れ目を指でなぞりつける。
     少女の顔は羞恥に歪み、こんな場所を触られている精神的な負担のせいか、涙ぐんだ目からは今にも雫がこぼれ落ちそうになっている。肩は震え、スカートを上げている両手もぷるぷる揺れる。どんなに辛く恥ずかしい思いに耐えているのか、ありありと伝わってくるようだ。
     良識的な大人なら同情でもして罪悪感を覚えるだろうか。
     女を苛めるサディストならば、その少女の顔には嗜虐芯をくすぐられるのだろうか。
     新造にとってはどちらでもない。
     少女が泣こうと特別な感情は何ら沸いてこない。ただ、淡々と仕事をこなすのみである。過剰に恥ずかしがられたり、泣き出されたら検査にならないので、無駄な手間がかからないことを祈るくらいだ。
     ひとしきり外側をなぞったあとは割れ目を開き、肉ヒダの状態を確認する。性経験はおそらくない。膣口は狭いので指を挿入するのはやめておき、淫核亀頭の視診と触診を済ませてからパンツを履き直させる。
    「……ありがとうございました」
     少女は涙ぐんだ震え声でお礼を言い、その場をそそくさと去って行く。
     そして、次の生徒がクラスと名前を告げてスカートを捲るのだ。
     女性器検査。
     それが常識となったのはいつからだったか。
     長年医者をやっている新造は、健康診断の時期になると校医として学校へ呼ばれ、毎年のように性器検査を担当している。
     特別な感情は何もない。
     若かりし頃はそれでも性的興奮を覚えていたが、婦人科検診などをこなす職業上、女性器なんてものはどうしても見慣れてしまう。簡単には拝めない秘密の場所などでは決してなく、新造にとっては日常的に検査を行う診察対象以外の何でもなかった。
     スカートから見えるパンツも同じこと。
     薄桃色の無地を見たとき、そういえば少年時代はピンク色の下着が好みだったのを思い出したが、ただそれだけだ。毎年のように見ているものに特別な感動はない。今の自分は下着ごときには興奮しないのだな、などと感慨にふけりつつ、性器を検査するためにずり下げていく。
    「――ひっ」
     いきなり下げたせいかビクッとされたが、どうでもいい。
     あと何人分の検査をすれば帰れるだろうかと考えながら、新造は事務的に陰毛具合を確かめる。指で茂みをかき回し、割れ目のラインをなぞりつけ、肉貝を揉むようにして触診する。中身を開くと性経験有りと見られる膣口だったため、中指を挿入して膣壁を指腹で探りまわしてから検査を終わる。
    「……ありがとうございました」
     やはり、憂鬱で元気のない声だった。
     この検査を受ける少女に共通するのは、無地で目立たない下着を着けて来ることだ。
     医者の前でスカートをたくし上げ、下着を下げてもらうこの検査方法のせいだろうが、見られることがわかっていながら派手なパンツを履く少女はいない。
     経験上ゼロではないが、多くは純白無地を履いており、それ以外には薄ピンクや水色などの無地が多い。とにかく柄というべき柄はなく、無地という無地尽くしだ。よしんば無地以外の子がいたとしても、ちょっとした刺繍が入る程度で、比較的に大人しい柄しかない。
     性器の状態は様々で、肉貝のぴったり閉じた子もいれば、鶏のとさかのようにビラがはみ出た少女もいる。
     手入れのない密林を見せるのが恥ずかしくてか。ほとんどの陰毛はある程度整えられ、切り揃えられている。中には剃って来る子もいたり、逆に手入れのない子もいるが、整えている少女に比べて少数派だ。
     次の生徒がやって来る。
    「……羽野凜です。よろしく……お願い……します――」
     一見気の強そうな彼女だが、初めから声が震えていた。
     声に震えが混じっていたり、やけに元気のない憂鬱そうな子など珍しくもなんともない。自分の大事な性器を見せるのだから、恥ずかしいのは当然なのだろう。
     しかし、羽野凜はどちらかといえば悔しそうだ。
     スカートを捲る瞬間も丈を握る手が震え、爪でも食い込ませているのではと思うほどに拳を固め、歯軋りまでしながら躊躇いがちにたくし上げた。
     本来の男性なら、これはどれほど興奮するはずだった光景だろう。
     スカートをたくし上げ、純白無地のパンツを見せつけている羽野凜は、目に涙を溜め込みながら肩を震わせ、歯軋りで奥歯を摺り合わせている。悔しそうなことこの上ない赤面顔をした少女ほど、本来ならそそるものはないだろう。
     もっとも、新造はそれでも仕事を済ませることしか頭にない。
     純白無地のパンツを膝まで一気に引き下ろし、貝の閉じきったような美観ある性器をチェックした。
     陰毛は剃り落とされ、つるりとしている。
     刃を入れたことによる皮膚の痛みや細かな切り傷でもないか、新造は顔を近づけ視診するのだが、目でわかる範囲で外傷は見られない。皮膚病に順ずる疾患もなく、健康そのものといって良かった。
     ただ変わっていることといえば、割れ目の隙間から滲む分泌液が、若干ながらも性器を湿らせていることだ。
     見られて感じているということか。
     いや、正確には診られてか。
     ということは、触診の際に羽野凜は性的刺激を受ける可能性が極めて高い。指からなる刺激で膣分泌液を分泌させ、新造の指に絡み付いてくることが想定できた。
     手が汚れることになってしまうが、元より診察用のビニール手袋は一度使ったら取り替えているので衛生面は問題ない。いくら感じやすい体質でも、診察だけでよがり狂うような女もいないだろう。
     よって、検査に支障はないと考えられる。
     新造は性器へ触れ、割れ目を撫でる。
    「――んっ! くうぅぅぅ……」
     触れた瞬間に羽野凜は肩を弾ませ、喘ぎを堪えた。声を出さないようアゴを閉じ、膝を震わすようにしながら耐え始める。
     我慢をしてくれるのはありがたい。
     もし、膝が必要以上にガクガク震えていたなら、触診が行いにくく時間がかかる。新造が受けた彼女に対する感情は、強い刺激に耐える姿を見てなお、それだけだった。
     触診では指の腹を使って上下に撫でる。
    「――くっ、くうぅぅ……く……」
     割れ目に沿って中指を動かしていると、羽野凜はみるみるうちに膣分泌液を漏らし出す。ぬるりとした粘性の液が活性油となり、指を滑らせやすくはなるが、皮膚と指とのあいだに余計な壁が出来る形となって、誤診を招く可能性もある。
     ガーゼでアソコを拭き始めると、彼女はより悔しそうに顔を歪める。医療行為の一環に過ぎないわけだが、そこまで悔しいことだろうか。新造はなんら性感情を抱いていないが、それでも過度な羞恥を抱かれるのは不思議な気持ちだ。
     再び割れ目を上下に撫で、中身を守る包皮の触感を確かめる。まんべんなくチェックするため、貝の片側につき数回以上は往復し、見過ごしのないように触診していく。
    「――くっ、くふぅぅ……」
     羽野凜は声を我慢し、ただ熱い吐息だけを漏らしている。
     初々しい肉芽が突起してきたので、そこもじっくり触診した。
    「――ふはぁぁ……ん……くう……」
     羽野凜はやがて溜め込んだ涙をこぼし、泣きながら睨んでいた。新造をというわけでなく、ただただ他人にこんな場所を触れられること自体が悔しくて、彼女は睨むような表情をしてしまっているようだった。
     所詮は診察なのだから、もう少し割り切れないものだろうか。
    「――あっ」
     中身を開くと、とうとう明らかな喘ぎが一声響く。
     羽野凜は悔し泣きのまま羞恥に歪み、二度と声は出すまいと歯を噛み締める。より気合いを込めて声を我慢するつもりだろうが、触診は終了したので無意味なことだ。肉ヒダから尿道口と膣口を確認し、陰唇を視診したところで検査は終わる。
    「お疲れ様」
     新造は淡々とパンツを履き直させた。
     彼女は即座にたくし上げていたスカートから手を離し、丈の内側へパンツを隠す。
     そして。
    「――あ、あり……」
     蟻。
     新造の頭に浮かぶのは虫の名前だが、もちろん彼女はそんな単語を呟こうとしているわけではない。
    「――ありが……とう……ごさい…………ました………………」
     途切れ途切れの小さな声だ。
     そういえば、忙しいなか来て頂いている医師に対して、生徒は立場上お礼をきちんと述べなくてはいけないのだったか。羽野凜ほど不本意そうに述べた者はいなかったが、その他大勢の子も決して好きで述べている雰囲気ではなかった気がする。
     性器を見せた相手にその事でお礼を述べる。
     なるほど、よくわからない。
     学校側はそのように指導しているようだが、こちらは生徒十数人を相手に素早く仕事を済ませなくてはならないので、いちいちお礼を言ってもらえたかどうかなど新造は気にしない。あくまで学校の依頼を受けたのであり、生徒個人から検査を頼まれているわけではないので、礼儀上のお礼は学校から言ってもらえれば十分だ。
     そこは生徒に礼儀を覚えさせる意味合いなのだろうから、それもまた構わないが。
     とにかく新造は仕事を消化していった。
    
    
    


  • エッチな学園性活/身体測定-女性器検査

    前の話 目次 次の話

    
    
    
    
     次は男子みんなの視線の中で女性器検査だってさ……。
     あたしはこれまでの恥辱で内心ボロボロ、プライドもズタズタにされた気分だったけど、生徒の立場では、ただただ一秒でも早く終わるのを願うしかないってわけ。
     で、全裸のまま廊下を移動する羽目になり――。
     そして、女性器検査のあたしの番が回ってきた。
    「じゃあ内診台に座ってね」
     医者はさっきの人とは違うらしく、あたしは密かに安心した。
     いや、本当には安心できる状況じゃないけどさ、あのいやらしい笑みを浮かべたおっさんよりは、今の医者の方はマシっちゃマシに思える。
     あたしは内診台に座った。
     コレ、最初は椅子みたいな形をしてるけど、変形するんだよね。アソコを診察するために、両足を固定できるようになってて、んで、起動させると両足部分が持ち上がる。
     あたしは内診台の機能にゆっくりと開脚をさせられ、大股開きを晒した情けない格好となった。
     あんまりにも卑猥な状態で、しかも両足は固定されている。開脚と同時に、お尻の角度も少し上がっちゃったから、きっと尻穴まで見えてしまっている。
     コレ、四つん這い並みに恥ずかしい。
     あとは確か、背もたれの部分も後ろに倒れて、ちょうどベッドみたいな感じになるはずなんだけど……。
     背もたれが可動する気配は一切なかった。
     どーせ、オッパイが見えやすいようにしてるんだろうね。サイアク。
     でも医者が何も言ってこないから、あたしは両腕で胸を隠していた。
    「咲夜ー? マンコは丸見えだぜえ?」
     野次馬となって群がる男子の一人が、腹の立つ言葉を投げてきた。
     このぉ、好き勝手に人の体を見まくりやがって!
    「じゃ、咲夜ちゃん。触診するからねー?」
     医者はあたしのアソコに屈みこみ、指で性器の貝を弄ってくる。人差し指の一本が、穴の入り口周りをぐるぐる撫で、それから貝の割れ目を上下するようにして動いてくる。
     この医者はあくまで診察といった雰囲気で、少なくとも変な目では見ないでくれてるんだけど……。
     野次馬の男子共は、あたしがアソコを弄られる姿を見て、実に嬉しそうににやつきまくっている。
     こんな連中の視線に晒されていると思うと泣けてきて、あたしは俯いた。
     自分の股に、診察とはいえ男が顔を近づけ、しかも指で弄られている。そんな状況が猛烈に恥ずかしい。
    「ちょっと開くからねえー」
     医者はあたしの股に両手をあて、親指で性器を開帳する。
     これでピンクの肉ヒダまで見られてしまった……。
     男子達の角度からは、医者の頭が邪魔になって見えないのだろう。背伸びしたり、身体を横に曲げたりして、こぞって覗き見ようとしてくる。
    「おっしゃ! ちょっと見えた! ピンク色だ!」
    「お前ずりぃよ! そこ変われ」
     と、見えやすい位置の取り合いまで始めていた。
     こっちは本当に恥ずかしいのに……。
     医者は開いた性器を片手の指で押さえ、もう一方の手でピンクの肉壁を撫でてきた。円を描くような動きに擦られ、あたしは刺激を受けてしまう。
    「あっ……んんん――」
     どうしよう、感じちゃう……。
     ずっとエッチな目に合わされていたせいだ。いくら本心から嫌がっていても、身体の整理反応は正直で、いい加減に性感が溜まり続けていたのかも。それがここで発散されちゃって、あたしは快楽に襲われる。
     愛液までにじみ出てくる。
     感じてしまっている自分の体が憎い!
     男子にまた喘ぎ声なんて聞かせたくないので、あたしは歯を食いしばって堪えるけど、それでも歯の隙間から声が漏れ出てしまう。
    「んっ…んんんっ……ん!」
     懸命に声量を抑え、悟られまいと頑張ったけど、意味はなかった。
    「咲夜やっぱ感じてるぜ?」
    「感度いいんじゃねーの?」
     男子達はあたしの様子に気づいて、いやらしい言葉を投げてくる。
    「なあ咲夜ー、気持ちいいのか?」
     う、うるさい!
     調子付いた男子の顔に悔しさが込み上げ、あたしは声を荒げたい気にすらなる。でも喘ぎ声を抑えるので精一杯で、とにかく歯を食いしばるしか出来なかった。
    「指を挿入するからねー」
     待って! 今入れられたら……。
    「んんんん!」
     膣内に指が進入してきて、その感触にあたしはさっきよりも喘ぎを漏らしてしまう。
    「おぉっと? イっちゃうのか?」
    「感じてる顔サイコーじゃん」
     男子ははしゃぎながら興奮する。
    「綿棒で膣の粘膜を採取するからね」
     医者は綿棒を取り出して、あたしの中に挿入してきた。
    「くっ……んんん! あっ…あああ! あん!」
     穴の内側をぐりぐりとくすぐられ、堪えきれない刺激に、あたしはとうとう喘ぎ声を漏らしてしまう。
    「ひゅー! エロいねえ」
    「もっと聞かせてー!」
     男子達の心ない言葉が、あたしを悔しさで締め上げる。
    「あっっ…あ…んん! あ! あぁ!」
     出したくないのに、聞かせたくないのに、どうしようもなく声が溢れる。
     あたしはもう涙目になって、医者に懇願した。
    「ん! もっ…もう駄目! お願い…早く終わって…!」
    「そうだねえ、もう少し我慢してね」
     お願い…早く……。
    「くっ……うう! ん! あん!」
     あたしの意識は、そのうち快楽に沈んでいった。
     もう目の前には何も写らず、聞こえる男子の声も遠のいて、あたしの心は襲い来る会館に抗うことだけに必死になる。恥ずかしさと悔しさに身もだえし、肩をよがらせ、固定された足までびくびくさせる。
     やがて、ようやく――。
    「はい、終了ですよ」
     救いの声が耳に入ったところで、あたしの沈んだ意識は浮かび戻ってくる。
    「はぁ…はぁ…はぁ……」
     あたしの身体はもうヘトヘトで、息遣いも荒くなっていた。
    「次は性感検査だそうだよ? 頑張ってね、咲夜ちゃん」
    「そんな……」
     あたしは絶望的な気分に包まれた。
     股はすっかりびしょぬれになって、愛液を滴らせていた。