• タグ別アーカイブ: 医療羞恥
  • 羞恥!下半身丸出し総合病院 2


    この病院はとある方法により、
    同地区の他の病院より多くの患者
    とりわけ男性患者数の確保に成功している

     
     

     
     
     さて、前作「下半身丸出し総合病院」の第二弾にあたる作品です。
    上記のとある方法とは、タイトルの通り女性は下半身丸出しが基本とされる病院です。
    なるほど、診察では肌を見せるケースもありますので、初めから脱いでいれば効率がいいといえばいい。

    なので、効率優先なので女性は下半身丸出しにして下さいね。

    そういう設定です。
    ファンタジーというか、設定自体は非現実的です。

    しかし、設定の範囲内でリアリティを追及してくれています。

    もちろん、扱いが不当だ、訴訟だとまでやりだしたらキリがないので、そういう意味のリアリティではなく。

    当然、恥ずかしそうにしている女性の姿を楽しめるという意味でのリアリティです。

    例えば、下半身丸出しで院内移動をさせられます。

    交通事故で足を怪我したという設定の女性が、
    すぐに手術だからという理由で全裸の上から検査着を着用。
    キャスター付きベッドで院内を移動させられます。

    こんな格好で、男性の視線がある中を運ばれてしまうなんて。
    果たしてこの女性はどんな気持ちなのでしょう・・・・
    恥ずかしいに決まっているのに、お構いなし。
    視線を浴びる羽目になりながら、淡々と運ばれていく光景は素晴らしい羞恥です。

    手で隠したがる仕草が恥じらいの表れのようで可愛いです。
     

     
     
     
    ↓丈を思いっきり下へ伸ばそうと頑張っています。
     

    ・表情を歪める、丸出しを気にする仕草、周囲の視線を気にした挙動。

    恥らっていることを示す描写がきっちりと行われているのです。

    アップされた女性の表情が、いっぱい動きます!

    恥らう仕草もたくさんあります。

    もうこれ、「仕草」「表情」も完全に収録対象にしてくれていますよね。

    こんなに羞恥に力を入れてくれるだなんて。

    手術前の剃毛なのですが、こんなポーズをさせられている挙句
    一般患者に好き放題に見学されまくっちゃっています。

    恥ずかしそうな、弱い感じの声で「見ないで下さい」と、この女性は動画中に何度か言っているのですが。

    男達はさっぱり立ち去っちゃくれないわけですね。

    入浴介護が必要なため、一人では風呂に入れない設定の女性

    なんとなんと。

    女性一人に対して、他全員が男性ではありませんか。
    これでは視線に晒されてしまいます。
    もちろん、介護の方も男性になっています。

    この大事な部分を隠したポーズで、周囲を気にするような首の動きをみせるのです。
    チラチラとサイドを気にする首の挙動が、まさに恥じらいの表れとなるのでたまりません。

    女性「すごく見てるんですけど……」
    看護師「え?そうですか?」

    助けを求めるかのように告げるものの、特にフォローなんてありません。

    こんな恥ずかしい状況で、少しでも早く終わって欲しそうに見えるのは女優の演技のたまものでしょうか。

    しかも、このまま男性に体を洗われるわけです。
    最初はスポンジ(というかタオル)を使うものの、素手でオッパイを揉まれます。

    こんなポーズでお尻を綺麗にされちゃいます。
     
     

     
     
    お尻をアップに映して、肛門を指で綺麗にしているシーンもありましたが
    やっぱり表情がいっぱい動いて、恥らっているのがわかって最高です。
     
     
     
     
     
     
    待合室で聴診
     
     

     
     
    全裸で腰痛ストレッチ

     
     

     
     
     
    「仕草」「表情」がポイントである他にも、

    「え?脱ぐんですか?」「見てるんですけど・・・」「まだですか?」

    みたいな、切実な台詞も多々あります。

    以上です。
     
     

     
     
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  • 羞恥!下半身丸出し総合病院

    個人的には良作でした。

    女性の羞恥心などより効率が優先で、だから人前だろうとさっさと脱げという設定です。 普通に考えたら当然トラブルというか、抗議が起きたり面倒ですが、そこはリアルに考えずに まあエロが優先だからと軽く流していきましょう。


    で、肝心のエロシーンです。

    主に下半身を診察され、アソコや肛門を見られるシーンが多いです。

    そして、医者にいやらしさはありません。

    医療羞恥では医者がエロい顔をしているかどうかって重要ですよね。

    もちろんしているパターンもありで、黒塚もそういう小説を書いています。

    しかし、あくまで診察。別に裸が見たくて脱がせているわけでなく、 必要だからそう指示しているに過ぎないところがこの作品のいいところでしょうか。

    ただ、女優さんの一人語りはいらなかったような・・・・・・・。

    この作品、本編が始まる前に内容をダイジェストするような映像が流れ、 それでは『事の顛末をご覧下さい』という形式で内容が映し出されます。

    そのダイジェストシーンの最中、女優さんの心の声が流れてくるのですが・・・・・・。

    特に演技力があるわけではないので、完全に棒読みです。

    羞恥に震えた声が表現できていればよかったのですが、もう普通に棒読みに過ぎません。 そもそも、素人考えではありますが、羞恥心で打ち震えた心の声を演じるには、 きちんと演技の稽古をしていないと無理ゲーでは・・・・・という気がします。

    無理にそこは入れなくてよかったような。

    けれども、本編は見ごたえ有りです。

    医者も医者っぽい演技を意識していて、ああこういう風な態度してる医者いるよねっていうのがなんとなくわかります。

    というか、女優以外の脇役達には演技力があるのは何故だろう・・・・。

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  • ハレンチ・ザ・高校~羞恥の身体測定~

     
     
     
    身体測定のはじまり

    身長での羞恥体験1/2

    身長での羞恥体験2/2

    内科検診でおっぱい丸出し1/2

    内科検診でおっぱい丸出し2/2

    スリーサイズ測定がてらおさわり1/2

    スリーサイズ測定がてらおさわり2/2

    心電図でニヤニヤ

    モアレ検査でお尻丸出し1/2

    モアレ検査でお尻丸出し2/2

    体重測定は全裸で正確に

    尿検査もみんなの前で1/4

    尿検査もみんなの前で2/4
     
     
     


  • 栞子の乳房検診

    
    
    
     俺は思わず目を奪われた。
     篠川栞子。
     なんて綺麗な人なのだろう。
     学生時代から医学を学び、晴れて患者の診察を受け持つようになった俺は、まだまだ経験が足りないために女性の胸というものを見慣れていない。場数を踏んだ医師ならもっと見慣れているものなので、美人だろうと何とも思わずに診察に臨めるものなのだが、俺の場合はまだ完全には欲情めいた気持ちを封印できない。
     もちろん診察に支障が出るほど興奮したり、我を忘れて揉みしだくような真似は決してしないが、栞子ほどの美人では見惚れてしまう。
     黒髪の長髪。ブラウスの上からでもわかる大きな胸。
     うむ、衣服を内側から膨らませるような、こんなパンパンの巨乳をしていれば、男なら大なり小なり目を奪われるのが普通のはず。
     とにかく、冷静に診察をしなくては……。
    「あ、あの……。よろしくお願いします」
     なかなか気の小さい人らしい。
    「どうも、篠川さん。さっそく問診から初めていきましょう」
    「……はい」
    「妊娠や出産のご経験は」
    「ありません」
     栞子は顔を赤らめて、恥ずかしそうな細い声でそう答える。
    「性交経験は無いということですね」
    「…………はい」
     さらに恥ずかしそうにして、小さな小さな声で頷く。
     ふむ、処女か。
     なんとも初々しいというべきか。ちょっとした質問くらいで、ここまでモジモジする女性なんていうのは滅多にいない。
     というのも、乳がん検診に来るのは三十代や四十代の女性が多い。歳がいっていればいっているほど、既に経験があって見せ慣れている可能性は高まるし、診察を受けた場数のおかげで割りに冷静に服を脱ぐ。
     しかし、二十代でも症例がないわけではない。
     彼女は健康を思って来たのだろう。
     俺はさらに生理周期や病歴、家族暦といった必要な質問を行って、それらの回答について問診表にチェックを入れる。生理や月経について答えるときは、やはり恥じらいっぽく赤らんで、どうにも可愛らしかった。
    「では視診触診の方に移りますので、服の方をお願いします」
    「……はい」
     既に耳まで染まっている。脱ぐ前からこんなに赤くて、この人は乳房の視触診に耐え切れるのだろうか。
     栞子は衝立の裏へ移動し、まずは上から脱ぎ始める。
     衣擦れの音から、俺は想像した。
     裾の内側へ腕を引っ込めた栞子は、中から上へ持ち上げる形で一枚脱ぎ、軽く折りたたんだブラウスを脱衣カゴの中へそっと置く。男性医である俺の存在を気にしつつ、羞恥に染まった表情で背中へと手をまわし、ブラジャーのホックを外すのだ。
     ブラジャーが落ちないように、胸を隠すかのように、片腕で胸元を支えた栞子は、左右の肩紐を一本ずつ順番に下げていく。
     隙間から引き抜く形でブラジャーを取った栞子は、両腕でしっかりと胸をガードしながら、すっかり肩の縮んだ赤面姿で衝立の裏から姿を見せた。
    「……脱ぎました」
     椅子に座った栞子は、モジモジしながら両腕を横に下ろす。
     すごく、良い胸だ。
     ただ大きいだけでなく、綺麗な丸みのカーブを成して、美乳といえる形状なのだ。乳輪も決して大きすぎることがなく、小さすぎるわけでもない。
     こんな凄いおっぱいを観察できるなんて……。
     いや、あくまでも診察だ。医師というのは信頼が大切な職業なので、患者に疑われるようなことはあってはならない。
    「ではじっとしていて下さいね」
     俺はそーっと顔を近づけ、視診を開始した。肌質から皮膚疾患の有無を確かめつつ、表面におかしな凹凸がないかもじーっと見ていく。
    
     じぃぃぃぃ……。
    
     と、必然的に視線を注ぎ込む形となる。
     栞子は静かにじっとしているものの、顔が明らかに言っていた。
     ――は、恥ずかしいです……。
     大人しい彼女なら、控えめに小さな声で言うかもしれない。
    「同時に触診も行っていきます」
     断りを入れてから、俺は栞子の乳房に触れた。下から持ち上げるような形で指先に乗せ、手に重量を感じ取る。
     やっぱり、凄くいい胸だ。
     俺は鷲掴みにして指を沈め、しこりや異常な張りがないかを探り始める。診察目的のマニュアルに則した揉み方で、あくまで医療行為の範囲を外れないように務めた。
     いや、しかし――。
     少しは長めに触っていたい。
     ふと顔を見ると、栞子の頬は恥じらいで上気していた。
    「少しかかりますので、ご辛抱下さい」
    「は、はい。大丈夫です」
     俺はさらに探りを入れ、しこりの有無を確認すると同時に、揉み心地に関しても手に覚えこませていた。もっちりと張り付くようでいて、ふんわりともしている優しい質感が、柔らかな弾力で沈めた指をそっと押し返す。
    
     モミ、モミ、モミ、モミ、モミ、モミ――。
    
     じっくり揉み込む。
     顔にはいやらしさを出さず、真剣さを装い続けた。
    
     モミ、モミ、モミ、モミ、モミ、モミ――。
    
     とても心地良い。
     いつまで揉んでいられるだろう。
     長くやりすぎれば当然まずいが、もう少し揉んでいたい欲求もある。
     あと三十秒。
    
     モミ、モミ、モミ、モミ、モミ、モミ――。
    
     俺は普通の患者を揉むより長く、この手に栞子の乳房を味わった。
    
    
    


     
     
     


  • フォトの診察と盗撮

    
    
    
     オレの名前はソウ。モトラドだ。
     小型車のトランクに積んで持ち運べるように設計された、ちょっと特殊なモトラドだ。もともと車体が小さいが、ハンドルやシートを折り畳むと、さらにコンパクトになる。まあ、速度は出ないけどな。
     オレの乗り主の名はフォト。性別は女。年齢は十七。黒い髪は背中まで長い。
     どうも風邪でも引いたらしい。フォトは今朝から、くしゅんと可愛いくしゃみを連発して、熱っぽいだるそうな表情を浮かべている。今日は寝ていた方がいいと思うのだが、そうオレが告げれば、仕事をサボるわけにはいかないと言い出すもんで、説得するのも一苦労だ。
     無理は禁物だ。無理をしたせいで体力が低下して、病気が長引いたり悪化すれば、仕事のパフォーマンスが落ちて、いい写真なんて撮れなくなっていくに決まっている。
     そんなことは考えるまでもないんだが、フォトのなかでは本当にサボりは悪ってものらしい。
     病人の無理がいかに危険で、仕事の効率が落ちたり、元も子もなくなることなのか。言葉を尽くして説明して、やっとわかってもらったことで、オレは病院へと出かけるフォトの背中を見送った。どうして医者に行かせるだけで、オレがこんなに疲れなければいけないのか。
     つっても、所詮は風邪だ。
     薬を飲んで一日寝れば、まあすぐに治るだろう。
    
    
     俺は旅人だ。決まった名前はない。
     ジョンだったり、マイケルだったり、ジョージだったり、気分によって色々名乗る。
     俺は色んな国を渡り歩いたが、なかにはパソコンや動画技術の発達したところもあった。ビデオカメラやデータ記録媒体の存在について知ったとき、一つの商売が頭をよぎり、俺はそれまで貯めた金を投資ってものに注ぎ込んだのだ。
     アダルト動画ってやつだ。
     女の映像を記録して、動画技術のある国へ行くたびに、焼き込んだデータを売り捌く。
     あまり旅先の運に賭けすぎると、科学技術のない国なんてザラにある。そんな国では動画なんぞに価値はないから、なるべく売れる国に通い詰めることになる。やがて俺は動画専門の旅商人のようになっていた。
     いつしか、俺はアダルトビデオの意を汲んで、AV売りの男と呼ばれるようになっていた。
     そして、今回の国では病院に目をつけた。
     そう、盗撮だ。
     医者に大金を渡して、撮影を頼んで女を撮る。マニアックな需要を狙って、診察のために服を脱ぐ女を映像に収めたい。
     協力者を増やすのは、神経を使うし勇気がいる。
     おたくの病院にうちのカメラを置かせて下さい。盗撮をさせて下さいなんて、まともな医師ならまず引き受けることはないだろうし、その場で通報される恐れもある。悪い話に乗ってくれるかどうかの見極めは大切だ。
     結論から言うと、いけると踏んだ。
     まずは何度か診察を受ける名目で医者に会い、旅先で変な病気にでもかかっていないか、検査をしてもらいつつ、なるべく世間話めいたものを振って観察する。結果として金が手に入るのなら何でもやる。悪くてセコい医者になる素質があるとわかったのだ。
     話を持ちかけると、医師はもちろん驚いたが、協力費として大金を見せびらかすと、目の色を変えてきた。
     これで交渉成立だ。
     あとは動画を手に入れて、編集して、売れる形にして売るだけだ。
    
    
     私はこの国の医師だ。金には目がない。
     大金を落としてくれる金持ちの病人には、なるべく長く入院して欲しいし、金にならない患者は切り捨てたい。まあ、そんな腹黒い考えが知れ渡れば、一応客商売である病院の評判にも響くわけだし、たまに思い出したように貧乏人の味方をしたり、他所の病院にでも客を取られないための工夫は欠かさない。
     そんな私の元に面白い話が来た。
     この病院にカメラを仕掛け、盗撮した映像を販売する。その協力費用として、私に大金を約束するという。
     迷いはあった。もしバレれば評判はガタ落ちだ。
     けれど、その旅人はプロの観点からカメラの仕掛け場所について詳しく語り、小型やペン型など色んな種類のカメラがあることも教えてくれた。バレにくいものを複数仕掛け、あらゆるアングルから撮影すれば、良い編集が出来て売れる作品になると力説した。
     私自身、スリルを楽しみたい気持ちがある。
     女の裸だなんて、医者をやっていれば見る機会はいくらでもある。そのたびに興奮して、いやらしい気持ちになっていたら仕事にならない。医療の現場にはそういう気持ちを持ち込まないのがプロの医師だが、どうしてもカメラは持ち込んでみたくなったのだ。
     実に口の上手い奴だった。
     悪いことに興味があり、犯罪めいたことをしてみたい。そんな心の素質を見抜き、悪魔のように忍び寄っては、興味を掻き立てる言葉の数々を囁いて、上手いこと私を乗せてしまった。
    
    
     僕はAVマニアだ。アダルト動画には目がない。
     パソコンや動画技術の発達しているこの国に生まれ、初めてその旅人と出会ってから、僕は何度もAVを見た。AVにはまった。今度のAVは医療羞恥というジャンルで、実際に病院にカメラを仕掛け、本物の映像を撮ってきたのだと豪語していた。
     しかし、僕に言わせればこれはヤラセだ。
    「フォトさん。どうぞー」
     パソコンを起動して、いざ動画を再生してみれば、白衣の医師がさっそくフォトと呼ばれる少女を招き入れ、風邪を引いたのだと打ち明ける。
     ここまでは普通だ。
     昨日は何を食べたとか、何時に寝た、熱はあったのか。問診で色々なことを聞き出すシーンは、僕が風邪を引いた時の対応と変わらない。つまり、実際に有り得ることだとわかる。ペンライトで口を照らして、喉の腫れを確かめる方法も、僕は体験したことがあった。
     ところが、次の瞬間だ。
    「では聴診を行いますので、上半身は裸になって下さい」
     馬鹿な。裸だと?
     聴診なんて下着の上からでも出来ると聞いたことがある。僕の友達だったか誰だったか、どこかでそう聞いたことがあるから間違いない。
    「え、脱ぐんですか?」
    「はい。その方が正確に音を聞けますから」
     こんなことで騙される女がいるものだろうか。
    「そうですよね。わかりました」
     おかしい。さすがにおかしいぞ。
     まあ、アングルは悪くない。
     シャツを掴んでたくし上げ、脱いでいく姿がありありと映っているのは見応えありで、顔の赤みが恥ずかしさのせいなのか、風邪の熱で染まっているのか、微妙にわかりにくいあたりも演技が細かい。
     だが、僕は思う。
     このフォトという少女は、十中八九AV女優だ。
     きっと、お金を出して雇った女を使っているのだ。
     何人も何人も、口説いて寝たり、見つけた女をレイプしたり、本物の映像を集めることには限界がある。病院だって盗撮カメラの設置を受け入れるわけがないだろう。しかし、合意済みの女性を用意して、撮影のためだといって場所だけを借りるなら、本物の診察映像を撮るよりも現実的だ。
     医者自身が出演して、いつもっぽく対応すれば、よりリアリティは増すだろう。
     そうでなければ……。
     ああ、ブラジャーまで外している!
     両腕を背中に回してホックを外し、緩んだ胸元からブラジャーがどかされると、瑞々しい乳房が画面中央に君臨する。
     僕は右手でアレを握りながら、食い入るようにおっぱいを見つめた。
     女優は可愛い。素直でいじらしくて、ひょっとして未成年か。
     医者とはいえ、おっぱいを出すだなんて恥ずかしいだろうに、せっかく病気を診てくれるんだから、我慢しなくちゃ! とでも思っていそうな、健気な表情が朱色に染まる。聴診器がぴたりと当たると、胸に男の指が近づくから、ちょっとだけ気にする素振りを見せて、嫌がったり文句を言ったら失礼だから我慢する。細かい演技がなっている。
     なんて演技力だ! 本当に女優を雇ったのか?
     フォトといったが、彼女の国にも映像撮影の技術があって、映画で主演をやったり、アイドル活動をしている女の子なのかもしれない。それくらい顔は可愛いし、演技力もあって、こんな優れた逸材をAVに使うだなんて、なんてイケナイことなんだ。
    「背中を向けて下さい」
    「はい」
     ああ、確かに実際の病院でも、背中側も聴診する。
     どうせヤラセのクセに、どうでもいいところで細かいな。深呼吸の指示までして、心臓や肺の音について、診断書にペンを走らせる。妙に医者がそれっぽいのは、きっと医師らしい振る舞いの演技にまで拘ったか、本物の医者をAVに雇うことに成功したかのどちらかだ。
    「ところで、病院に来たことはあまりないって言いましたね」
     ああ、さっきの問診では初診だとか言っていたな。
     どうでもいいけど。
    「はい。初めてです」
    「だったら、うちの病院では初診の患者さんのデータを詳しく取りたい。今回は風邪ということだけど、また別の病気にかかったときなんかに役に立つからね」
    「わかりました。どうすればいいんですか?」
    「ズボンを脱いで下さい」
    「ズボン……! わ、わかりました!」
     おい、脱ぐのかよ!
     脱いでと言われた途端に表情を変えて、まさに「え? どうして?」「そんな必要あるんですか?」と、疑問のありそうな顔を少しはしたくせに、一瞬だけ浮かんだ顔つきなんて、まるで嘘だったみたいに、素直で大きな返事までして、さっそくベルトを外し始める。
     ジーパンを脱ぐシーンは複数のアングルから取られていた。
     まずは壁の高い位置にカメラを仕掛け、斜め上から見下ろすような構図で、腰をくの字にして脱ぐ。
     脱ぎ終わったと思えば、脱ぐ直前に戻って別アングルだ。
     立派な編集センスというわけだろう。
     次のアングルでは正面から、ジーパンのチャックが下りることにより、ショーツのクロッチ部分が見えてくる。
     また次のアングルは後ろからで、ズボン類を脱ぐ際の動きでは、腰がくの字になるわけだから、画面に向かってお尻が迫る。アップになると迫力のあるジーパン尻から、ずるりとジーパンが下がってショーツ尻へと変化する。
     そして、ショーツ一枚だけの女優がそこにはいた。
     心もとない格好にさせられて、困ったような恥ずかしそうな顔をして、腕で胸を隠すようで隠さない。恥ずかしいから隠したいけど、診察の妨げになっては迷惑かな、なんていう気持ちまでもが、そのちょっとした仕草から見え隠れする。
     文句無しの名演技だね。
     まあ、ちょっと過剰すぎる部分もあるけど。おっぱいは形が可愛いし、スタイルも良くて脚のラインも整っている。
    「じゃあ座って?」
    「はい」
     脱がせておいて座らせるのか。
    「えーっと、自慰行為の経験は?」
    「自慰行為って、なんでしょうか」
     おいおい、フォトさん。いくらなんでもあざといよ。自慰行為を知らない年頃の女の子がいるものかね。
    「つまり、オナニー。マスターベーション。自分で自分のアソコを触って、性的に気持ちよくなるということだが」
     医師も馬鹿真面目に解説する。
    「……あ、あります」
     ものすごーく小さな声で、今まで以上に顔を赤くして女優は答えた。
    「ある? なるほどねぇ」
     そして、医師は真面目な顔で診断用紙にそれを書き込む。
     婦人科で性交経験の有無を知らせる必要があるっていうのは、どこだったかの知識で知っているけど、オナニー経験だって? 馬鹿じゃないのか。必要なわけないだろう。全くヤラセも甚だしい。
     オナニーだけでも馬鹿馬鹿しいのに、やれ初潮だの、陰毛の生え始めた時期だの、胸が大きくなり始めた時期まで尋ねて、もう何が何だかわからない。僕に知識がないだけで、そういう情報も本当は必要なのか?
     だけどフォトは評価するね。
     オナニーという言葉さえ知らずに、純粋無垢で素直な子という演技をやり抜き、恥じらうべきところでは、いちいち恥ずかしそうな仕草をしたり、顔の赤みが変化したり、俯く頭の角度を変えていたり、本当の本当に細かい。
     だから、初潮の年齢を答えるのも、胸の膨らみや陰毛の時期を答えるのも、どれもこれもがいちいち可愛い。
     人が演技のために涙を流せることは知っているが、もしかして一流は、自分の赤面具合でさえもコントロールできるのか?
     何よりも凄いのは、このフォトという少女は、この意味不明な医師の言葉を全て頭から信じきっているに違いないと、思わず錯覚させてしまう部分にある。
     だって、さすがにおかしいじゃないか。
     問診なんて最初に済ませるべきだし、脱がせてからやる理由がない。わざわざショーツ一枚にさせてから、裸で恥ずかしい受け答えをさせるだなんで、羞恥を煽るための演出意図はわかるのだが、本物の診察映像を謡う割にはリアリティに欠けている。
     ま、リアルすぎたらやることが少ないだろうし、仕方ないっちゃ仕方ないか。
    
    
     フォトは思った。自分は試されているのだ。
     病気を見つけるのはとても大変なことで、立派なお医者さんでなければ難しい。そのお医者さんですら、本当に完璧なわけではない。だからデータは必要だし、早く病気を治したければ脱ぐしかなかった。
     上半身裸と言われたときは、恥ずかしくて嫌だなと思ったが、ここで言うことを聞けないようでは、きっと診察を受ける資格はない。
     フォトは恥ずかしさを我慢して、上半身裸になった。
     ジーパンを脱げと言われたときも、恥ずかしくて嫌だと思ったが、ここで言うことを聞けないようでは、お医者さんを困らせてしまう。
     フォトは恥ずかしさを我慢して、ショーツ一枚だけの格好になった。
     嘘をつくのは悪いことだ。だからオナニーをしたことも、初潮も陰毛の時期も、聞かれたことには全て答えた。
    「身長を測りたいと思います。そこで背筋を伸ばして両足も揃えて下さいね」
     身長計に乗ると、お腹の上に手を浮かれた。
     セクハラだろうかと、ほんの少しだけ思ったが、フォトは自分の考えを振り払った。
     人を疑うのは悪だ。自分で病院にやって来て、せっかく体を診てもらっているのに、そんな気持ちを抱くのは失礼なことだ。セクハラだと思ってはいけない。疑ってはいけない。きっと正確に測りたいから、手で押さえてくれているだけなのだ。
     フォトはきちんと両手を下ろし、背筋を伸ばし、両足を揃えて顎を引く。
     お腹に置かれた医師の手が、だんだん乳房に近づいて、微妙に下から持ち上げても、フォトは絶対に気にしなかった。
    「体重を測るから、体重計に乗って下さいね」
    「わかりました」
     すると、尻に手を置かれた。
     挨拶をしたり、誰かを励ましたり、声をかけるとき、相手の肩をポンと叩くことがある。それと同じだ。微妙に指に力が入り、揉むように動いたり、撫で回しても、フォトは絶対に気にしなかった。
    「触診するから、もう一度座って下さいね」
     胸を揉まれても、フォトは医師を信じ続けた。
     丹念に指を動かして、乳首への刺激が行われても、指先で乳輪をぐるぐるとなぞったり、摘むようなことをされても、フォトはそれをおかしいことだとは思わない。きちんと我慢しなければ相手に悪いということばかりを考えていた。
     けれども、さすがに辛かった。
    「アソコを見るから、横になって下さいね」
     診察台で仰向けになり、脚をM字のように開く姿勢だなんて恥ずかしい。
     けれど、きっと必要なことなのだ。
     フォトは医師の言葉を信じて、くぱっと中身が開かれてしまうことにも、サーモンピンクの肉ヒダをまじまじと観察されてしまうことにも、一生懸命耐えていた。
     
     
     俺が動画編集の際に迷ったことは色々ある。
     どのアングルからのシーンを、何分何秒ほど収録するか。それとも画面を分割して、二箇所同時に加えてみるか。迷いに迷って編集を進めていた。
     座薬を挿入する部分もそうだ。
     俺のパソコン画面には、お尻がでかでかと丸映しとなっている。
     当然、フォトの尻だ。
     四つん這いの体勢で腰を高く掲げれば、割れ目の中身も見えるから、画面中央にはちょうど放射状の皺の集まりが映っている。薄っすらとしたチョコレート色のヒクつきへと、医療用のビニール手袋を嵌めた指が近づき、そこへ座薬を挿入する。
     突き立てて、指でねじ込み、指の腹が肛門をぐにっと押すまでなると、医師はそのままマッサージでも施すように肛門を弄り倒す。
     この肛門に薬が入り込むシーンは必須だが、となると表情も必須だろうか。
     複数のカメラを仕掛けたわけだから、四つん這いの顔の部分の動画もある。そこには真っ赤に染まり上がった顔があり、この世で最も恥ずかしそうにしている勢いの表情が、実によく撮れていてたまらない。
     いい、実にいい。
     やはり、ここは収録するべきか。
     だとしたら、他のシーンは――
     
     
    「ただいまー」
     フォトは病院から帰ってきた。
    「おう。おかえり、どうだった」
    「お薬を入れてもらって……」
     妙だな。家を出たときよりも、さらに顔が真っ赤じゃないか。
    「入れてもらった?」
    「な、なんでもないよ! ものすごーく熱心に調べてくれて、いいお医者さんだったと思う!」
    「……そうか」
     そんなに声を荒げるからには、よっぽど良い医者だったんだろうが、どこか必死に言い訳をしているような慌てっぷりが気にかかる。
    「とにかく、治ると思うから!」
    「ちゃんと布団かけて寝ろよ? 悪化させるな?」
    「わかってるって、じゃあ寝るから!」
     フォトは逃げるような小走りで、部屋の奥まで行ってしまった。
     一体どうした。
     様子がおかしいことは間違いないが、病院で何かあったか? あったとしたら、一体何があるっていうんだ?
     しかし、翌朝になるとフォトは元気を取り戻した。
     きちんと熱を計らせたが、元が風邪だし、病院まで行って長引く理由もない。
     おかげで仕事も再開できるんだから、まあ良かったってことにしておこう。
     結局、様子がおかしかった理由を知る機会なんて、オレにはなかった。
    
    
    


  • アナルまで診られる彼女

    
    
    
      やっばい。風邪ひいた。
     ってわけでお願いがあるんだけど。
     学校終わったら、家まで迎えに来て?
     できれば病院まで連れてって欲しいな。
    
     ――送信。
    
     彼氏へのメールを送った明瀬エナは、熱のだるさと悪寒に耐えながら、ベッドにもぐり眠りにつく。早く治すためにも、寝よう寝ようとは思うのだが、学校の時間に合わせた普段通りの生活リズムで目が覚めて、それからもう一度寝るというのは、なかなか難儀なものだった。
     恋人の名前は新藤ヒロマ。
     中学では同じテニス部に所属していて、まあ強豪には程遠いが、都大会で何回か勝ち上がる程度の強さはある。関東や全国など夢のまた夢だったが、熱血なことにヒロマはもっと上まで行きたいと日々励み、史上初めて関東大会まで進んだことに驚きを隠せなかった。
     いつの間にかエナは惹かれ、途中敗退で悔しい涙を流すヒロマのことを抱き締めた。
     中学三年から付き合い始め、高校一年になってもうじき一年。
    
     先、進んでもいいよねぇ……。
    
     これだけ長く付き合って、ディープキスまでしかしていない。
     正直に言って、進行は遅いだろう。
     まあ、高校でもお互いにテニスを続け、練習ばかりでデートは少ない。メールや電話だけは毎日するが、テニスにも集中しなくてはいけないヒロマだ。自分が下手に誘った遊んでばかりになってはまずいだろう。
     そんなちょっとした責任感から、なかなか前に踏み出せないが、日々の努力のご褒美ということで、なにかこう、してあげてもいいような……。
     もちろん、風邪が治った後。
     迎えなんて頼んだのも、ハードメニューが続いた末の休みの日であるからだ。
     あいつに風邪は移るまい。
     いや、そもそも、半日もあればちょっとは良くなる。それでも病院にわざわざ行くのは、さすがに熱が高かったから、心配した親がお金を置き、ちゃんと行っておくよう煩く念を押してきたからだ。
     しかし、楽しみだな。
     あいつを呼び出し、あいつの迎えで、病院まで送ってもらう。
     お姫様気分というのも言い過ぎだが、そんな時間が乙女心に待ち遠しかった。
    
         *
    
     今日はテニス部が休みだ。
     地獄のような練習メニューで、いつか身体が壊れそうなほどの負荷を抱え、しかしオーバーワークについてはコーチがきちんと管理している。休みというより、厳密には練習禁止となっているのが今日である。
     エナの風邪が今日だったのは、不幸中の幸いだろうか。
     迎えに行ってやれるから。
     学校が終わるにすぐに校舎を出た新藤ヒロマは、徒歩十五分ほどのエナの自宅へ向かい、インターフォンを押して彼女を呼び出す。
     階段を駆け下りる音が、玄関の外まで聞こえて来た。
    
    「待ってたよ! ヒロマ!」
    「うおっ、おい!」
    
     腕を絡めるように飛びついて、実に嬉しそうに微笑んでくる。
    「移ったらどうしてくれる」
    「むしろ移してやる」
     一応、半日もあれば少しは元気になったのだろう。
     ヒロマの身長に合わせ、背伸びしながら飛びつかんばかりのキスをしてくる。柔らかい心地に高揚感を覚え、ヒロマの方からも強く抱き締め、軽く舌を捻じ込み口内を蹂躙する。もはや風邪など気にせず二人の世界に入り込み、お互いの舌に糸を引かせて見つめ合う。
     エナはずっとヒロマを応援してくれている。
     中学の頃に、もっと上まで勝ち進みたいという熱意が沸いた時からそうだった。
     ――いいじゃん! やっちゃいなよ!
     そう言って、練習相手をしてくれた。
     支えとなった大切な存在が、こうして腕の中にいてくれると、たとえ明日世界が滅ぶとしても安らぎが得られるような気さえする。
    「エナ。病院。行くの?」
    「一応ね。今朝はすっごい熱だったし」
    「四十度くらい」
    「うん」
    「マジかよ……」
     心配するのも当然か。
     見ればエナは、既に出かける準備のため、Tシャツとジーパンに着替えている。豊満な胸のサイズがシャツを押し上げ、くびれた腰のカーブがよく目立ち、尻の部分もパンパンに膨らんでいる。
     ……触れてみたい。
     しかし、ディープキスまでは進んでいても、まだ胸を揉むまでいっていない。風邪をひいたばかりのエナに手は出せまい。いつだって、先に進んで肌を曝け出させてやりたい欲望を抱えているが、大切なものを傷つけたくもないヒロマは、ずっと押し倒すことに踏み切れない。
     とはいえ、さすがに交際一年。
     とっくに進展があってもいいはずだ。
     だから、風邪が治って、次に二人きりになる暇ができたら、その時は……。
     などと考えつつ。
     照れくさそうに笑い合い、手を繋ぎ、ヒロマはエナを病院まで導いた。
    
         *
    
     奇跡的に空いていた病院で、受付から程なくして待合室のベンチに座る。
     診察室への出入り口は、ドアの代わりにカーテンをかけ、布一枚で仕切ったものだ。向こう側で診察を受けるオジサンと、診ている医者のやり取りが、ごく普通に聞こえてしまう。プライバシーの観点からして、この作りはどうなのか。
     それに、ここから診察室を覗ける窓がある。
     いや、カーテンによって閉ざされてはいる。向こう側にかかっているので、こちらからの開閉もできないのだが、照明が上手い具合にシルエットを浮かび上げ、だから一度はベッドに寝そべるオジサンが、仰向けで触診を受けた様子がわかってしまった。
     オジサンの診察が終わる頃には人が増え、会社帰りのサラリーマンやTシャツの中年に、大学生ほどの男子がベンチに並ぶ。
     そんな中で名前を呼ばれた。
    「待っててね。ヒロマ」
    「おう」
     エナはオジサンと入れ替わりで、診察室へ踏み込んだ。
     丸椅子に座り、眼鏡をかけた中年医師と向き合うと、すぐに何の来院の理由を尋ねて来る。熱は何度あったのか、昨日は何を食べたか。痛い場所は、だるさはあるのか。問診によって行われる質問の数々に応えていき、そして中年医師は聴診器を手に取った。
     男の手が胸に近付いてくるのは好きではない。
     だが、診察のためにわがままも言っていられずに、シャツの上から当てられる程度は我慢するも、それでは聴きにくかったらしい。
    「ちょっと持ち上げて下さる?」
     少しだけたくし上げ、服の隙間に中年医師の手が入った。
     聴診器のひやりとした感触が、ブラジャーを介した乳房の生え際に当たっている。中年医師はエナの顔や胸を見る様子を欠片も見せない。初めから音にしか興味がなさそうなのは、下心の無さに思えて安心する。
     しかし、シャツに潜った手が動き、谷間の部分に当てようとして来た時、胸にその手が擦れて辺り、中年医師はすぐに腕を引っ込めた。
     エナの胸は、少し大きいのだ。
     シャツをなるべく引っ張っても、胸の中央に聴診器を当てるには隙間が狭い。そのまま聴診を行うには、谷間に手首を挟んでしまうしかなかった。
     さすがに、そうなると困る。
    「失礼。当たってしまうので、完全にたくし上げて頂けます?」
     淡々として作業的な、仕事の邪魔になるからどけてくれという、それ以外の意思を全く感じられない物言いだった。
     それに、やや大きめの声。
     エナがシャツを持ち上げて、胸を出し切ることが、外で待つみんなにも聞こえてしまう。
    (嫌だなぁ……)
     渋々。
     白いブラジャーの胸を出し切るために、シャツをたくし上げていく。
    (……はあっ、嫌だ)
     自分の手で露出を行い、人に見てもらう行為を好きにはなれない。
     いくら性的な気持ちが皆無でも、一応男の視線が乳房に刺さる。きっとエナのこの光景は、待合室にも伝わっている。自分の彼女が医者に胸を出しているなど、ヒロマも決して良い気分ではいないだろう。
     だいたい、他の患者さんの頭の中に、エナのこうしている姿があるかと考えると、それもまた面白くない。
    「発疹が見受けられますね? 皮膚科を受診されたことは?」
     聴診器を当てようとするなり、何かに気づいて胸を凝視し、そんなことを訪ねて来る中年医師の表情は、ただ仕事の上で気づいたことを確認しようとするものに過ぎない。何らいやらしさのない、視姦には程遠い視線とはいえ、その目ははっきりとエナの胸を眺めていた。
    「え? いえ……」
    「では――」
     胸のあたりに痒みは、痛みは、といった質問が開始され、一向に聴診が行われないせいで、かといって勝手に隠すのもどうかと思えて、胸を出しっぱなしにした挙句だ。
    「シャツとブラジャーを脱いで頂けますか?」
    「……へ?」
    「上半身裸です。お願いしますね」
     そう言いつつ、この中年医師がエナの裸に無関心なのはよくわかる。
     しかし、機械でも動物でもない、れっきとした人間相手に、だから羞恥心が湧かないかといえばそうでもない。だいたい、やはり声の大きさで、カーテンの向こう側にも、エナがこれから脱ぐというのが伝わっている。
    (嘘……本当に嫌なんだけど……)
     エナは泣く泣く脱ぎ始め、脱衣カゴへとシャツを置く。
     背中のホックに腕を回すと、中年医師は正面からまじまじと、早く仕事を進めたくて待ち構える。事務的な視線を気にしつつ、ヒロマにも見せたことのないおっぱいを、無念にも曝け出してはブラジャーもカゴに置く。
     丸っこさのある、大きく張りのある乳房が、真正面から中年医師の視線を受け止める。
     おっぱいを見ているが見ていない。
     いくら物理的な視線が突き刺さっても、症状を調べることだけに、中年医師の持つ全ての興味が注がれている。上半身裸の指示にも関わらず、そこにセクハラの意思は存在しないと、問答無用で納得させるだけの事務的な表情がそこにはあった。
    (エロ医者ではないんだろうけど……)
     真面目な診察なだけに、隠したり、恥ずかしがることは失礼だという気持ちが働く。ならば堂々と背筋を伸ばしていなければならないが、彼氏に裸を見せたことがなく、羞恥心の強い高校生の年頃には、やはりこの状況には辛いものがあった。
     左胸の生え際。
     エナにそうした知識はないが、医者としては心尖という部位に当てたい。何となく、その部分に当てることに意味があると悟ったエナは、そうはいっても驚きに目を丸めた。
    「――うっ!」
     乳房を持ち上げたのだ。
     手の平の先端で、四指を束ねて掬い上げてやるように、ほんの少しだけ垂れのあった左乳房を上へとどかし、そこに聴診器が当たって来る。
    (やば……い……さすがに、ヒロマに悪い……)
     診察だ。診察だとわかっている。
     それに意味があるのなら、彼氏に悪いと言い張って、医者を困らせるのもまずい。
    (我慢、我慢、我慢……)
     これくらい、冷静に耐えられる。
     幸い、手はすぐに離れていき、胸の真ん中に当てて音を聴く。
    「触診しますね」
     聴診が終わって、次の一言がそれだった。
     エナは聞くに引き攣った。
    (そ、それって、おっぱい揉むってことじゃ……!)
     中年医師の手が伸びた。
     ヒロマにも揉ませたことのない乳房が、名前も知らない男に触れられることに対して、拒否反応が全身の神経に行き渡る。
    (……嫌っ!)
     だが、逃げられない。
     れっきとした診察の場において、エナのおっぱいはあえなく鷲掴みにされていた。
    
         *
    
     皮膚の色合いから考えられるのは……心音や熱の様子から、風邪には違いなく、しかしこの張りの中に何かしこりが隠れている可能性も……。
     中年医師の頭にあるのは、そんなものだった。
     おそらくEカップかFカップのあたりだろうが、彼女の乳房が何センチであろうとも、そこに性的な好奇心はない。ただ頭の中にある数々の症例と、こうして揉んでいる乳房の感触を照らし合わせ、誤診のないようにしっかりと『診る』ことしか考えてはいない。
     脇下から横乳へと続く筋肉に、べったりと手の平を当て、リンパ節を確かめる。
     五指を存分に躍らせ、揉み心地をチェックして、そのうちに手の平の中央に乳首の突起が硬くぶつかる。乳輪をなぞり、乳首をつまむと、明らかに何かを我慢した表情で、唇を大きく丸め込むが、医師としては何より仕事を済ませることが先決だ。
     この女子高生の後にも、まだ他の患者が控えている。
     迅速に済ませ、客を回したい考えが頭を掠めるに、時間をかけざるを得ない理由が見つかることで、顔には出さないが、心の底ではため息をついた。
    
         *
    
     自分の彼女が上半身裸の指示を受け、おっぱいを揉まれまでしていることは、新藤ヒロマの元にも伝わっていた。
     隣に座るサラリーマンが、中年オヤジが、大学生ほどの男も含めて三人とも、どこか前屈みになっている。こいつらの頭の中には、エナが触診を受ける場面の妄想がありありと浮かんでいるのは明白だった。
    (くそっ、こいつら……)
     どうにかしたいとは思っても、覗こうとでもしない限りは糾弾できない。
     人の頭の中身を勝手に決めつけ、俺の彼女を妄想のネタにするなと怒っても、そんなことをしても無用なトラブルに発展するだけなのだ。
    「ベッドで仰向けになって下さい」
     中年医師の声はここまで聞こえた。
     窓ガラスの向こう側で、カーテンにはエナが横たわろうとするシルエットがくっきりと動いている。仰向けとなった乳房の形が、自重によって少しだけ潰れつつ、ツンと天井に乳首を突き出しているのが浮かんでいた。
     男達の視線が一点集中していることは空気でわかる。
     さらに順番待ちの患者が増え、三十代の男が二人も加わるなり、乳房に気づいて視姦する。
    (エナ……)
     乳房への触診は続いていた。
     中年医師のシルエットが、その胸へと両手を伸ばし、揉みしだく。それがいかに医学的に理に適った触れ方で、症状を探るべくしての手つきであるかなど、知識もなければ影しか見えないヒロマにはわからない。
     きっと診察なのだろう。
     だが、こうも揉まれるところを見せつけられ、胸が万力で潰されているように痛い。
    「痛みや違和感はありますか?」
    「いえ……」
    「こちらはどうですか?」
     まるでクレーンゲームのアームの先端だけでつまもうとするように、中年医師の五指が乳首の部分に集中する。シルエットであろうと、影の形を見ればそのくらいのイメージはつく。指圧による強弱をつけ、引っ張り、押し込み、いいように乳首を刺激しているのだ。
    「んっ、ん……ん……」
    「どうしました?」
    「い、いえっ、大丈夫……です……」
     その声にヒロマは唇を噛み締める。
     この場の空気が嫌に静かで、どことなくギラついている。中年医師がどうであれ、ここに待つ男達が、シルエットを性的な目で見ているのは疑いようがない。
    「こちらに痛みはありますか?」
     今度は腹の方を指で押して訪ねていた。
     何の病気だったか、風邪だったか、腹部へのそういう触診なら、ヒロマにも覚えがある。
     やはり、普通に診察だ。
     乳房にも、きっと何かあったのだろう。
    「脚のリンパを診ますんで、ちょっと失礼しますね」
     中年医師のシルエットが、エナの下半身に向かって動き、そしてチャックを下げる際の金属の歯が、左右に開けていく音は、すぐにヒロマの耳にも届いてきた。
    「一瞬お尻を上げて下さい」
     そんな言葉の次に聞こえる衣擦れの音で、ジーパンを下げているのもわかる。
    (くそっ、どれくらい下げた? 全部は脱がしてないだろうけど、パンツまで見えて、ほぼ裸にされてるじゃねーか……)
     そういえば、脚の付け根の部分を揉むことで、リンパの触診を行う方法があったはず。エナはそれをされている。中年医師の手の平が、太ももの内側の、それもアソコに近い位置へと当てられているはずなのだ。
    (畜生……)
     診察だ。診察なのだろう。
     しかし、それでも……。
    
         *
    
     乳首は硬く突起しきり、ジーパンは膝まで下がっている。ショーツ一枚の裸と違いのない姿にさせられ、せめて胸だけでも両腕のクロスで隠し、リンパ節への触診に耐え忍ぶ。
    (外の人達……見てるのかな……)
     このベッドに寝ていると、カーテンのシルエットで待合室まで様子がわかると、さっきまで順番待ちをしていた明瀬エナにはわかっている。こうして仰向けになっているのも、中年医師が触診をしてきていることも、外に伝わっているはずだ。
    (お願い……誰も見ないで……スマホ弄ったり本読んだりしてて……)
     切実な願いを抱き、カーテンからの視線をどうしても意識する。
     先ほども、ベンチソファのぎしりと軋んた音がして、待合室の方で人が増えたことがエナにはわかった。一体何人が見ているのか。もしかしたら、本当にスマホを弄って何も気づかない人がいて欲しいが、きっとそうはいかないのだ。
    (うぅぅぅぅ…………)
     中年医師の触診にも震える。
     両手で太ももを包む手が、マッサージとしては心地よく指圧を加えて来るが、ショーツの生地に触れるかもしれないギリギリの位置に指があっては、エナは緊張で全身をまんべんなく強張らせてしまう。
    (パンツ見せるのも、初めてはヒロマが良かった……)
     悲しげに顔を背け、赤く染まった耳が真っ直ぐに天井へ向けられる。どこでもない、何を見るわけでもない方向へぼんやりと視線を向け、肌をする音さえ響く静寂の中で、じっと診察の終わりを待つ。
    
     すり、すりっ、すり、すり、すりっ、すり……。
    
     それは皮膚と布とが擦れる音だった。
    (やっ、ちょっと……!)
     ショーツの内側で閉じ合わさった肉貝の、本当に端っこだけに、中年医師の上下に動く手が擦れている。悶えるように全身が反応して、より強く我が身を抱き締め、頬も唇も強張らせるエナは、下腹部の熱い感覚に焦っていた。
    (何っ……? この感じ……まずい……)
    「どうしました?」
     本気で首を傾げる中年医師。
    「い、いえ? 大丈夫です」
     明らかに声が上ずってしまった。
     人並みにエッチなことへの好奇心はあり、彼氏が出来てからは、いずれはヒロマとセックスをするのだと想像して、週に何度かは自慰行為をしているのだ。自らの指で鍛えた感度は、この程度の摩擦でもじわりと来て、エナの下腹部はきゅっと熱く引き締まる。
    (まずい、まずい、まずい、まずい――)
     エナは内股気味に太ももを引き締め、肩でモゾモゾと身悶えする。
     そして、中年医師の顔を見やれば、そんなエナの反応にどこか不思議そうな顔でいた。自分はただ診察をしているだけなのに、どうして感じた素振りを見せているのか。まるで理解していない、どこかきょとんとした目でさえある。
    (や、やば……このままじゃ……)
     下半身に何かが集まる。
     それは尿意に似ているが、そうではない。
     もっと別の……。
    
     じわぁぁぁぁ……。
    
     白いショーツのアソコ部分に、みるみるうちに染みが広がり、それが中年医師のどこか驚いた視線を引き寄せる。それは高校生にもなってお漏らしをする人間を目撃して、信じられないものを目撃したような、驚愕の色さえ浮かぶ表情だった。
    (そ、そんな……! うそっ、なんで、わたしっ、ぬ、濡れ……!)
     温かいお湯を滲ませたような熱感で、エナのショーツはぬかるんでいる。
     もう泣きたかった。
     いくら違うものを漏らしても、オシッコを見られた気持ちと変わらない。ヒロマとエッチしてこうなるなら、一体どれほどよかったか。診察室の真面目な医療の現場において、こんなところで濡れてしまったエナの方がおかしいのだ。
    「大丈夫ですか?」
    「ごめんなさい……」
    「替えの下着を持って来ましょうか?」
     中年医師が言った途端である。
    
     ――え?
     ――替えって……。
    
     外からの小さな声が、エナの耳まで届いてきた。
     この人の声が大きいから、だいたい防音性も悪いから、替えの下着などという言葉が漏れて、エナが何故だか濡れたことが、見知らぬ男やヒロマにまで伝わっている。
     エナは必死に首を振った。
     そんなことをしても、濡れたアソコを否定できるわけではない。起きてしまった出来事は変わらない。しかし、横に振らずにはいられない。
    「汚れるといけないので」
     中年医師はジーパンに手をかけて、膝に絡んだそれを完全に脱がしきる。
     ショーツ一枚のみの姿にされ、エナは滑稽なほど表情を歪めていた。
    
         *
    
     こんなことで濡れるとはさすがに予想外だな。
     まったく、他にも患者は残っているんだ。
     こいつだけに時間をかけたくない。
     しかし、気になる点もあるからな。
     はぁ……やれやれ……。
     もう少し調べるしかないか。
     誤診などあってはならんからな。
    
         *
    
    「……え?」
    「替えって……」
     ヒロマの隣に座る男の二人が、中年医師の言葉を聞くなり、ついつい思わずといった風に反応して、どこか無意識のうちに呟いていた。
     心中穏やかではいられない。
    (し、下着が濡れたのか? パンツだよな?)
     どういうことだ?
     何故、パンツが濡れる?
     この歳でさすがにお漏らしはしないだろう。もし完璧に漏らしたら、尿の香りはここまで漂う。指がアソコに当たるか、どうにかして、ちょっとした刺激で、微妙に出してしまったということなのか。
    (いや、なに考えてんだ! 俺は馬鹿か!)
     ヒロマはエナを心配する。
     とにかく、少しばかり下着が濡れ、エナはどんな心境でいることか。何よりも、ヒロマと同じベンチソファに座る男達は、誰もが満面のニヤけぶりを発揮していた。
    (こいつら……!)
     ジーパンを脱がせる衣擦れの音で、エナが下着一枚のみにされたとわかり、憤りでヒロマは拳を握り締める。
    「直腸からの診察を行いますので、四つん這いになって頂けますか?」
    (尻の穴ってことじゃないか!)
     シルエットが身体を持ち上げると、犬のようなポーズに変わる。両手をついて、中年医師にお尻を向けてしまった体勢で、垂れ下がった乳房の先から乳首の形もくっきりしている。
     肩のあいだに頭を落とし、うなだれきったエナの心境が、ヒロマに痛いほど伝わった。
    (恥ずかしいよな……こんなの……)
     エナを純粋に思う心。
     だが、もっと黒く煮えたぎる思いも湧く。
     もちろん、ニヤけていやがるこいつらに対しての感情ではあるのだが、いくら診察とはいえ中年医師に対しても、嫉妬の炎は大きくなる。
    (だいたい、俺だって見たことないのに!)
     当然の感情だった。
     乳房を暴かれ、ショーツを暴かれ、ヒロマが知らないものを次々見ている。
     そして、今度は四つん這いの尻に手を伸ばし、ショーツまで下げようとする中年医師のシルエットがそこにはある。手の動きで、太ももに絡む位置まで下がったことが伺えて、次には尻たぶを掴みさえする。
    「直腸検温です。しばらくそのままでいて下さい」
     尻に向かって蠢くシルエットが、さっと後ろへ離れると、体温計を尻尾のように生やした影があらわとなった。
    (え、エナ……)
     屈辱すぎる。
     あたかも自分自身が同じ目に遭っているように、他人に尻の穴まで見られ、物を挿入されることの恥辱がヒロマの胸に急速に膨らんでいた。
    
         *
    
     お尻を向けるだけでも恥ずかしかった。
     それがショーツを下げられて、尻たぶを掴まれまでして、肛門をはっきりと見られた上で体温計を挿入された。
     尻尾を生やしたままの明瀬エナは、拳をぎゅっと握り締め、目に涙を浮かべている。これ以上ないほどの赤面はトマトと形容するに相応しい。熱で沸騰しそうな頭は、パニックによって思考回路が乱れている。
    (あぁぁ……! こんなっ、こんな……!)
     直接ではないだけで、ヒロマや他の知らない男達にも、自分のこんな姿を見られているも同然だ。
     体温の測れた音が鳴り、体温計が引き抜かれる。
    「頭は下にしちゃって下さい」
     尻だけが高いポーズとなり、まるで下半身を差し出しているかのようだった。
     肛門が丸見えの、そのすぐ真下には性器のワレメも丸出しとなっての、こんなにも大胆に差し出すポーズが、シルエットだろうと何人にも見られている。
     ヒロマ以外にさえ……。
    (ごめんっ、ごめんヒロマ……!)
     ぺたりと、左の尻たぶに、中年医師の左手が置かれ、エナはぶるりと震えて顔を歪める。
    「肛門括約筋の反応を診ますので、動かないで下さいね」
     クリトリスを摘ままれた。
    (あ……ッ!)
     放射状の皺の窄まりは、ヒクっと力んで収縮する。
     中年医師のやることは、つまりこうやってお尻の穴を反応させ、ヒクヒクと蠢く様子を眺めることだとわかるなり、まるで頭の中身がみるみるうちに蒸発していくように、羞恥によって煮立った脳から蒸気が立つ。
    (無理無理無理無理! な、ちょっと! こんなの無理だよ!)
     指の強弱によって、クリトリスへの刺激が甘い痺れとなって迸り、さながら肛門で呼吸でもしようとしている光景がそこに生まれていた。
    
     ひくっ、ひくんっ、ヒク、ひくっ、ヒク、ひゅくっ、ヒキュゥゥ――。
    
     縮んでは緩み、縮んでは緩む。
     それがクリトリスへの刺激によってコントロールされている。
    (み、見ないでっ、見ないで――無理っ、これ無理、無理無理――!)
     羞恥心によって思考回路がショートして、脳神経のどこかが焼ききれそうに、お尻の穴を見られる恥ずかしさが激しく頭脳を循環していく。それはパイプの太さに見合わないほどの容量とも言え、あまりにも速い流れに摩擦で擦り切れそうでさえある。
    
     ひきゅぅぅぅう……っ、ひきゅっ、ひくっ、ひくっ、ひく――。
    
     恥ずかしさが死因になりそうなほどの有様は、歪みに歪んだ表情として現れて、エナの顔つきはぐにゃぐにゃの一言で表現できる。口周りの筋肉で、唇が面白いほど波を打ち、頬も面白おかしく動いている。眉間に皺が寄っては離れ、まぶたが激しく力んでいる。
     肛門括約筋の動きをチェックするのは、実に一分に満たない時間に過ぎなかった。
     しかし、永遠と思われた地獄から、やっとのことで解放された気にまでなり、その安心もつかの間に、中年医師は透明なビニール手袋を嵌めていた。
     医療向けの、触診時に衛星のことを考えて装着するものだ。
    (ひぐっ、なっ、なっ! まだあるの!?)
     ひんやりとしたゼリーを乗せた指が、肛門の周りをぐにぐにと、皺を一本ずつなぞるように丁寧に塗りたくる。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅぅぅぅ……。
    
     肛門に指が入り込む感触に、エナの頭で火花さえ弾けていた。
     根本まで埋まった指に、内部を探られ、エナはもう、ただ全身から恥じらいの信号を放出するだけの存在でしかなくなっている。
    (やばいっ、やばっ、やだ駄目無理無理っ、無理――!)
     ベッドシーツを力強く鷲掴みに、足の指まで力んでいた。
    
         *
    
    【中年医師】
    
     やはり、腹に触診した時のあの感じ……。
     まあ薬で十分か。入院はいらん。
     が、となると、この女子高生にまだ時間を使う必要が。
     はぁっ、仕方あるまい。
    
    
    
    【サラリーマン男性】
    
     うわっ、マジでエロいな。
     四つん這いでアナル弄られまくってんのか。
     っていうか、ここ肛門科じゃないよな?
     いや、エロいからいいや。
    
    
    
    【中年オヤジ】
    
     さて、と。スマホでも弄るか。
     実はこれ、動画撮る時も音が鳴らないアプリがあるんだよな。
     どこで手に入れたっけ?
     まあいい、どうせカーテンに移った影だけなんだ。
     どうせ誰だかもわからないんだし。
     撮っとけ撮っとけ。
    
    
    
    【新藤ヒロマ】
    
     なんだよ、なんなんだよ。
     みんなエロい目で見てやがんのか。
     た、ただのシルエットだろ!
     くそっ、このオヤジ動画まで!
     注意してや――いや、待てよ……?
    
         *
    
     隣のオヤジがスマートフォンを動画モードにしているのが、横目にちらりと見えた時、それを注意してしまえば、その声がエナにも聞こえるはずだと気づき、声を出そうとしかけて躊躇った。
     だったら、黙って見ているしかないのか。
    「座薬を挿入しますね」
     一度は抜かれた指が、再び肛門へ押し込まれていく。
     腕と尻の影が一つとなり、カーテンの上では一体だった。
    「このまま一分ほど、溶けるのを待ちますよ」
     医師の目から見たエナの姿が、どうしても脳裏に浮かぶ。
     あれだけ丸い尻のフォルムを正面から拝んでいるのだ。さぞかし征服欲を刺激する物凄いアングルに違いない。エナのそんな姿を拝む権利があるのは、仮にも彼氏という立場の、世界でも新藤ヒロマただ一人だ。
     ここにいる連中は、本来何の権利もない。
     それが、こんな風に晒されて……。
    「はい。いいですよー」
     中年医師が指を抜き、手袋を外す動作のあと、次に両手を太もものあたりに伸ばしていた。何かを持ち上げているシルエットの動きを見るに、最初に下げたショーツを穿かせ直したことは明白だ。
     しばらく、いや、数秒間、きっとエナはフリーズしていた。
     色々とわけがわからなくなってしまって、もう終わったこともわからなかったのだ。
    「いいですよ?」
     改めて告げる医師は――ぺちっ、と。
     エナのお尻を叩いていた。
     あまりにも悪意のない、やった本人は自分がセクハラをしたことに気づいてもいないであろう、ただただ診察は終了しました旨を告げたいという、それ以上でもそれ以下でもない、ペチンという一撃が、さらにもう一度だけ加えられ、エナはそうして跳ね起きた。
     高速で着替える気配が、衣擦れの音によって伝わる。
     心を読める超能力者などでなくとも、一刻も早く自分の衣服を取り戻し、裸の状況から抜け出そうとする気持ちのたっぷりとこもった衣擦れは、エナが一体どれだけの感情に溺れて赤らんでいたかを如実なほど伝えて来た。
     何の露出もしていない、ただ座っていただけのヒロマが、それでも少し赤面するほど。
     カーテンの向こうから出て来るエナは、お湯の中から取り出した直後の、存分に蒸気を纏った茹でトマトのようになっていた。
     そんなエナへと視線が集まる。赤面しきった面白い顔を見るために。
    
     カァァァァァ――!
    
     もう赤くなる場所は残ってもいないのに、それでも赤くなろうとしているエナの顔は、いずれは破裂してしまうのではないかと思え、いてもたってもいられずヒロマは立つ。正面から抱きとめて、この背中でエナの姿を男達の視線から隠してやった。
     エナはそれに縋りつき、ヒロマもその背中を抱いて、病院から連れ出していく。
    「辛かったな」
     一声、かけた。
    「……ごめんね。ありがとう」
     そんなエナの声に胸が締め付けられた。
     あんな思いをして、それてもエナは、ヒロマに対する罪悪感を覚えているのだ。診察だから仕方がないというのに、それなのに……。
     エナ、エナが大切だ。
     これからも、ずっと大事にしていこう。
    
    
    
    


  • 診られてしまう私の・・・

    
    
    
     たぶん私の年齢が十二歳を過ぎてから、とっくに高校生となった今の今まで、ずっとこの胸を疼かせている相手がいる。
     黒木誠也という人だ。
     ご近所に暮らす親戚の息子で、初めて見たときからイケメンだとは思ったけども、宿題でわからない部分があると知るなり、とても丁寧に教えてくれた。
     ぶっちゃけ、学校の先生が教える小学校の算数も、中学校の数学も、言いたいことがわかりにくくて、何やらさっぱりという感じがした。私がバカなばっかりとは限らなくて、普通に他の友達にも評判が悪くて、あの人は教えるのに向いていないというのがクラスの共通認識となるほどの数学教師がいたってわけだ。
     だけど、誠也が教えてくれた数学は、まるで魔法のように頭に入った。
     さっきまで解けなかった数式の答えが理解できたときには、魔法で特別な能力を与えてもらったような気分にさえなってしまった。
    
    「俺はね。医者になるんだ」
    「お医者さんに?」
    「いっぱい勉強しないといけないし、まずは研修医になったり忙しいけど、もし君が病気になったら俺が診てあげるよ」
    
     現在、十六歳。
     風邪で学校を休まなくてはならなかった私は、最近やっと近くの病院で診察を受け持つようになったと聞いたので、約束通り診てもらおうかと町の小さな医院を訪れた。
     正直、歩くのも辛いだるさと熱があったけど……。
     共働きの家庭で、都合上付き添ってくれるような人などいないので、辛かろうが己の力で徒歩何分かをせっせと歩み続けるしかなかったのだ。
     受付に診察券を出して、待合室のベンチで十分ほど。
     やっと名前が呼ばれると、清潔な白衣の似合った誠也が私を迎えた。
    「やあっ、会うのは久しぶりだね」
    「お、お久しぶり……」
     思わずドキリとしてしまった。
     黒縁眼鏡の顔立ちがとても知的で落ち着いている。ちょっと事務的で淡々としていそうにも見えるけど、いざ喋ったりするときは、途端に顔の硬さが崩れて、雲一つない快晴の青空かと思うほどのさわやかな表情を送ってくる。
    「ちょっと辛そうだね。一人で来たの?」
    「まあ、共働きなもんで」
    「そうだよね。でもよく来れたね。ここまでよく頑張りました」
     ああ、エスパーかこの人……。
     いや、医者か。
     医者だから、歩くのも辛い人の見分けくらいつくんだろう。
    「俺は見ての通り、昔からの目標が叶ったよ。俺が病気を見つけてあげるから、さっそくだけど脱いでもらおうかな」
    「――へ?」
    「うん? うちは上半身裸でお願いしてるから、服はそこのカゴに置いておいてね」
    「…………」
     上半身、裸?
     それはそれは、確かに服の上から聴診器を当てるのと、肌に直接当てるのでは、色々と正確さが変わるのかもしれないけど、相手は身内で……。
     恋だって、している相手で……。
    「歩くとき、フラフラする感じがしなかった?」
     誠也の目は医者だった。
     身内に対するちょっとした砕けた態度が消え、仕事としてのことを見据えていた。
     真剣なんだ。この人。
    「はい。しました」
    「フラーっと力が抜けて、もしかしたら倒れちゃうかもって感じがしながら、どうにかこうにか病院まで来れたんじゃない?」
    「……なんでわかるの?」
    「研修でも患者さんを診てきたし、だから経験則なところもあるけど、君のことは昔から知っているからね。どうやって歩いてきたかぐらいは想像つくよ。大変だったんでしょ?」
     見抜かれている。
     このドキドキする感じが風邪のせいなのか違うのか、もう私自身にもわからない。
    「君をちゃんと治したいんだ」
     熱意の瞳で言われては断れない。
     こうなったら、もしヤブ医者だったら蹴ってやろうと、密かに決意しながら脱いでいく。病院という特別な空間で、医師免許を持つ相手に見せるのは、もう単に診察を受けるため以外の何者でもないんだから気にしないようにするしかない。
     そりゃあ、服の上からが一番だけど。
     そうもいかないのなら、致し方のないことだ。
     ブラジャーまで脱衣カゴの中へ置いた私は、この両腕で覆っているしか、胸を隠している手段がない。目の粘膜を見たり、喉の中身をライトで照らしているときは、胸元で両腕のクロスをがっちり固めていても問題なかった。
     だけど、聴診器の出番が来る。
     こうなると、治療のためだからと諦めて、私は両腕を下ろすしかない。好きな男に初めておっぱいを見せるのが、まさか診察目的になってしまうとは……。
     ぺたりと、聴診器が胸の中央に当たってくる。
     ああ、誠也の指がすぐそこに……。
     もしかしたら、何かの拍子に膨らみに指が当たってくるかもしれない。だけど緊張しているのは私だけで、誠也は聴診器で聞く音にじっと集中していた。
     私のおっぱいなんて見ちゃいない。
     診察したいから脱がせただけで、初めからそういう興味なんて何もない。そもそも、そんなセクハラ医師がいては困る。やっぱり症状の有無ばっかりに関心を抱いてこそ、プロの医者なんだろうけど、それでも誠也が私の胸に無反応なのは……。
     いや、ガッカリするのはおかしい。
     きっと仕事で診ているからであって、もしも誠也と恋人になれて、エッチのために脱いだりしたら、さすがに反応は違うはず。
     色々と考えているうちに聴診も終了して、あとは処方箋を貰って、薬局で薬を貰って言家まで帰る流れとなった。
     だが、その夜だ。
    
    「仕事終わったから、お見舞いに来たよ」
    
     ベッドでゆっくり寝ているときに、いきなりインターフォンが鳴って誰かと思えば、まさかまさかの誠也が私にゼリーを買ってきてくれた。
     迷わず家に上げてしまった。
     というのも、親戚関係のお相手だから、その辺は家族や兄弟への対応に近い。家族だけれど家族じゃない、兄弟だけれど兄弟じゃない――親戚。近いけれど遠い相手は、たまに私の様子を気にしてくれる。
     テスト期間で苦しいとき、教科は違うけど誠也も隣に来てくれて、一緒にい頑張るノリで応援してくれたり……。
     薬で少しはラクになっていた私は、誠也が用意してくれたスプーンでゼリーを食べ、眠るまえにはおでこにタオルをのっけてくれて、とても安らかに眠りに落ちた。
    「おやすみ。誠也……」
    「うん。おやすみ。いい夢を……」
     少しだけ思う。
     私の胸、見たよね?
     だけど仕事としてだし、やっぱり気にしても仕方がないのか……。
    
         **
    
     その後は病院にかかる機会もなく、何事もなかったように日常は流れていった。
     誠也……。
     今のままでも、たまに私の様子を見にやってくる。勉強してるかなんて聞きにきながら、宿題を見せれば教えてくれる。まるで近所の優しいお兄さんのような――いや、実際優しいんだ。いつか気持ちをぶつけて一つになりたい。
     けど、もし願いが叶わなかったら……。
     もう誠也は来てくれなくなるかもしれないい。
     いっそ、だったらクラスの男子に恋した方が、今は同じ教室でも、いつかはクラス替えだか卒業なんかで遠く離れていく相手だ。告白に失敗しても、もう二度と面倒を見に来てくれなくなるわけではない。
     私の心を他の男に移せたら――そう思って、クラスの男子を見てみても、みんな誠也ほどの顔立ちじゃない。脚が長くて、スタイルの整ったラインもない。もう医者になっている男とクラスの男子では、頭の良さだって全然違う。
     駄目だ。
     どうしても誠也のことを考えてしまう。
     ああもう、どうすれば……。
     何年も何年も、ずっと長期間こんな調子だ。
    
    ・きっぱり切り捨て、何としても他の恋を見つける。
    ・いっそのこと誠也に告白する。
    
     ただ二択から選ぶだけのことが、十二歳の頃から未だにできない。
     現在、高校二年。十六歳。
     あの診察から一ヶ月以上が経って、私はまた病院へ行きたくなった。
    
         **
     
     ダルさ、腹痛。熱もある。
     また誠也の診察を受ける私は、またしても上半身裸で聴診器を当てられる。もう医療は医療に過ぎないから、私も気にしないようにしていた。
     誠也が私の胸に目もくれないのは、大きさが足りないのでも、形が悪いとかいった理由でも、ましてや女として見られていないからでもなく、ただただ医者として仕事をこなすべき場所にいるからだ。
     白衣を着て患者と接しているからなんであって、恋人がいて男女として胸を見れば、きっと誠也だって興奮する。
     病院で脱ぐのとホテルで脱ぐのは、もう完全に別々の出来事ということだ。
    「風邪ではないみたいだね。別の病気だと思うから、そこに仰向けになってもらえる?」
     診察台に横たわると、誠也は私のお腹を押した。
     皮膚の上から臓器を押して、痛みや違和感はないかといったことを尋ねてきた。
     それに答えているうちに診察終了が告げられ、脱いだブラジャーを着けなおす私の前でやることは、診断書か何かの記入であった。
    「明日は休みなんだ」
    「あ、そっか。定休日」
    「仕事が終わったら見舞いに行くけど、もし明日も辛かったら、直接経過を見てあげるよ」
    「……ありがとう」
     一日看病、ごくり。
     病気に治らないで欲しいと初めて願った瞬間だった。
    
         **
    
     処方された座薬がやっかいだった。
     自分では見えないお尻の穴に入れるのも厄介だが、本当に腹が立つのはツルンと中から滑り出てきてしまうことだ。きちんと押し込んでいるはずなのに、えんぴつほどの太さな上に長さもあるせいか、想像以上に入りにくい。
     ミサイルのように先端が尖った形状は、突き立てやすいためなんだろうけど、長いのでバランスが倒れやすい。
     やっと先端が入って、ここぞとばかりに押し込んでも、出てきてしまって駄目だった。
     何だこの入りにくさ……。
     やっと入ったと思いきや、運悪くもトイレに行きたくなり、きっと薬が溶けて効果が出るより先に流れ出てしまっている。
     もう駄目だ。寝よう。
     ベッドに入ると急に心細くなってきた。
    「誠也。まだかなぁ……」
     腹の中身がキリっと痛み、ぼんやりとした熱っぽさもあって、辛いばかりでさっさと寝たいところだけども、こんな時に限って眠気が来ない。眠れない。両親ともに仕事で、静かなばかりの部屋の中には、孤独の演出がごとく時計の針がチ、チ、チっと鳴り続けている。
     まだかな、誠也。
     いつ来てくれるんだろう。
     来るんだよね?
     終わったら見舞いにくるって、ちゃんと言っていた。
    
     ピンポーン。
    
     ――来た!
    
     私は飛び起きてインターフォンのモニターを覗き、誠也のために鍵を開いた。
    「ごめんね。遅くなっちゃって」
    「いや、別にそんなこと……」
    「具合はどう?」
    「まだちょっと、朝から変わらなくて……」
    「薬は?」
    「それは……そのぉ…………」
     座薬が肛門から抜け出てくるだなんて話は、さすがのさすがにできなくて、ただ入りにくくて入れられていないことだけを私は告げた。
    「わかった。お風呂は入った?」
    「うん」
    「排便は?」
    「……う、うん」
    「ご飯は食べた?」
    「ちょっとだけ」
     今の誠也は医者として来てくれたんだろうか。
     それとも、ただの優しい親戚のお兄さんとしてなのか。
     ……どっち?
     見れば誠也の手には小さな白色いケースが握られていた。そこには医療の象徴となる赤い十字架のマークがあって、わざわざ医療道具まで持ってきてくれたとわかる。
     さすがは医者だけあって、お見舞いのやり方が本格的だ。
    「君のことは俺が見守るから、さあ早く寝よう」
     誠也は私を優しく抱いて、ベッドへと導いていく。
     もちろん、ただ患者を寝かせるためだけに。
    「どうしても座薬が入らなかったんだね?」
     ベッドについて、私が横になったところで誠也は尋ねる。
    「うん。本当にね。もう、すっごく、すごく入れにくくて……」
     まるで薬も一人で飲めない子供みたいで、そう思われるのが嫌な私は、本当の本当に入れにくいものだったと強調していた。
     それがいけなかったのだろうか。
    
    「じゃあ、入れてあげるよ」
    「――へ?」
    
     誠也の顔は病院のときと変わらない。
     ただ医者として、患者さんの病気をどうにかしようとする表情。
    「入れにくいんでしょう?」
    「それは……そうだけど……」
    「治るのが遅くなるよ。明日になっても、明後日になっても、今みたいな辛い状態のままでいたい? 違うよね」
     ちょっとだけ、顔色が変わっていた。
     私を心配してくれている顔だった。
    「……うん。違う」
    「君を治したいんだよ。俺は」
    「…………うん」
     医者としても、身内としても、そんなに真剣に気にかけられたら、私にはもう断りきれなくなってしまう。
     ここが私のベッドだとしても、誠也には医療行為のつもりしかない。
     だから……。
     だったら、もう何も言えない。
    
    「四つん這いになってごらん?」
    「………………」
    
     私は……。
     静かに姿勢を変えて、誠也にお尻を向けるしかなかった。
    「電気、点けるよ」
     暗闇が消え、白いベッドシーツが照らし出される。
     後ろには誠也の気配。
     私はじっと、ただ四つん這いのためについた両手のあいだに目を落とした。
    「頭は下にくっつけちゃって」
     肘もつけ、上半身の角度を沈めた。
     たぶん、スフィンクスが取るポーズに似ている。違いといえば、両腕のあいだに顔を押し込んでいることと、お尻だけは高くしてあることだろう。その後ろに男の人がいるだなんて、このポーズが実は人にお尻を捧げるためのようなものに思えてくる。
     いや、でも誠也は私を患者だと思っている。身内の患者だから特別に心配して、それ以上でもそれ以下でもないのに、私がいやらしい想像をしすぎなんだ。
     でも……。
     誠也はどうやって私に座薬を入れてくるのか。
     答えは一つしかない。
     それが、とっても……。
     まぶたを閉じて、ベッドシーツに顔を埋め込むことで得られる暗闇の中で、誠也の手の平に宿る温度が――その気配がお尻の上を彷徨っていることに気がついた。直接触られているわけではなくとも、熱気から出るモヤモヤが私の皮膚に染み込んで、まるで本当は目には見えない透明な手が置かれてしまったような心地になった。
     パジャマズボンが両手によって掴まれる。
     ああ、脱がされるんだ……。
    「――っ!」
     そう思った時には、次の一瞬で勢いよく膝まで下げられ、頭が真っ白になってしまった。
     あ、ああっ、丸見えだ……!
     無心、無心、無心!
     医者なら色んな人の裸を見る。女の人の診察だって私だけじゃない。だから下着ぐらいでは興奮しなくて、まして今の誠也には医者としての心のスイッチが入っているはず。
     どうってことない。
     って、私がそう思ってさえいれば、誠也だって大した意識はしていない。ただ医療行為のために必要なことをやり、座薬が済んだらそれでおしまい。
     ただ、それだけ……。
    「アソコは見ないようにするからね」
     優しい語りかけをして、誠也は私の下着も指で掴む。
     下げ方が、恐ろしくゆっくりだった。
     ゆったりと、のろのろと、ショーツのゴムの締め付けが下へ……下へ……あんまりにも静かに動いているから、私のお尻はどこまで見えてしまっているのか、そんなことが皮膚感覚で頭に伝わる。
     カーブラインの一番高い位置までいって、そこからもう少し先まで下がっていく。
     自分のお尻の穴が、尾てい骨から何センチの位置かを知っているわけではないけど、もう見える直前に来ているのが想像できる。
     だってこの姿勢、よく考えたら割れ目が左右に広がるから……。
     それにアソコまで見るわけではないといったって、今までくっついていたクロッチ部分の布が肌の上から浮いてって、もう何センチだかの距離まで離れてしまった。
    「ここまでかな」
     そう、アソコを見るわけじゃない。
     だけどもう、もう一つのものは見えているんだ。
     誠也の目に映っているアングルからの自分の姿は、とても想像したくない。
    「ちょっと待ってね」
     ケースの中から道具を取り出し、何やらシュっと、スプレーの噴射音が聞こえた。
     どこに何をかけたんだろう。
    「最初に拭いちゃうから」
     ……え? 拭く?
     次の瞬間、しっとりとしたガーゼが強く押し付けられていた。
     ああっ、消毒だ――アルコールか何かで……誠也がガーゼ越しの指で私のお尻の穴を擦ってしまっている。
     人の手でお尻の穴を拭いてもらうだなんて、本当は赤ちゃんまでじゃ……。
     ガーゼ越しの指のお腹が嫌というほど丁寧で、なぞるようにして拭き取っている。丁寧な拭き掃除みたいにゴシゴシして、やっとのことでガーゼが穴か離れていく。
     最後にトイレに行ったのは入浴前のことだった。別に汚いわけではないはず。衛生的にそうしているだけなんだと、私は固く信じ込むことにした。
    「じゃあ、入れるね」
     座薬の先端が、私のお尻の穴に狙いを定めて接近している。
     もう、入れるんだ……。
     正しい位置に押し込むため、一体どれほど注意深く視線を送ってきていることか。右利きの誠也は右手に座薬をつまんでいるはずで、その手の気配が皮膚の上でどんどん濃くなる。
     来ると思った時には、もう先っぽが当たっていた。
     そして、押し込まれた。
     一本の指だけで、座薬の全てが収まると、まるでフタをするみたいに指の腹がお尻の穴に触れてきている。
     その指が離れると――。
    「確かに、にゅぅぅぅって、出てきちゃってるね」
     そんな……嫌だ……。
     で、出てきてるって、一度入ったものが穴の中から飛び出てくる瞬間が、誠也の瞳に納められてしまったということだ。
     そんな瞬間を見せてしまっただなんて……。
    「奥まできちんと押し込む必要がありそうだね」
     もう一度、指で私のお尻に押し込んだ。
     今度は指も一緒になって、爪の先から入ってきている。えんぴつレベルの太さだった座薬よりも、もっと太い男の指が侵入してくる異物感は、穴の窄まりを広げてくる。普通に生活していれば、ものが出て行く感じは日常だけど、逆に外から入ってくる感覚には慣れっこない。
    「薬が溶け出して、馴染み始めるまでちょっと待ってね」
     待つって、このまま?
     指で栓をされてしまったみたいに、誠也の指はぴったりと止まっている。
     無心、無心に……なんて、なかなかなれない。
    「お尻の穴にギュゥゥゥって力を入れてくれる?」
     そんなことまでさせるの?
     いくらなんでも……。
    「薬が逃げないようにね」
     ううっ、やるしかない。
     肛門括約筋に力を加えて、窄まりをぎゅっと引き締めるようにしてやると、自分のお尻の穴が誠也の指を締め付けるのが、皮膚感覚で如実にわかる。
    「はい。抜くよー」
     スローモーションのように一ミリずつ、だんだんと指が後ろに抜けていく。締め込んでいる分だけ、やっぱり皮膚感覚で指の形がわかってきて、やがて第一関節まで抜けて、もう爪の部分まで出てくるところだ。
     先端まで出て行ったと思いきや、グニっと指の腹を押しつけて、マッサージみたいにお尻の穴を揉んでくる。
    「せ、誠也……もう薬は入ったんだよねぇ……?」
    「直腸検温もしておこうか」
    「直腸って……」
     知っている。
     お尻の穴に体温計を挿し込むのだ。
     やっと誠也の指が離れても、直後に体温計の先がぷすりと、私の窄まりを貫いていて、またしても皮膚感覚が想像させる。どんなに意識を逸らしたくても、だらんとした体温計の、あってないようなちょっとした重量と、先っぽが私の内部に埋まったままとなっている感じが、嫌というほど如実でたまらない。
     ああもう……こんなのって……。
     体温計という名の尻尾を生やしたお尻が、誠也にまじまじと見られている。この時間が終わって明日になったら、もうどんな顔をして誠也に会えばいいのかわからない。
    「ほら、ぎゅって力を入れて? でないと体温計がだらっとしてる」
     お願い、もう私を苛めないで……それでも私は言うことを聞いてしまうから……。
     別にだらっとしててもいいじゃないかって、そう思っていても私は何も言わなくて、言われた通りに締め上げて、そうしたら持ち上がっていくのがわかって……。
    「…………」
     でも、しばらく静かになった。
     時計の秒針がうるさく聞こえるくらいの静寂。
     私はじっと、じっとじっと、暗闇とにらめっこをしていた。どんなに電気が明るく照らしてきていても、こうやって目を閉じて、シーツに顔面を預けてしまっている限り、視界だけは暗闇の中にある。
     自分自身のまぶたの裏側だけ、私はじーっと見つめていた。
     体温計の音が鳴り、検温が済んで引き抜かれると、誠也は黙って私のショーツを持ち上げていて、誠也の手によって穿き直されていた。
     人に下着を穿かせてもらう体験って……。
     それにパジャマのズボンまで、誠也の手で直されてしまった。
     私、何でこんな目に遭ったんだろう。
    「お疲れ、頑張ったね」
     頑張ったっていうのかな。
     確かに心は疲れきったけど。
    「明日はいいものを処方してあげるよ」
     いいもの? なんだろう?
     私が静かにポーズを解くと、誠也は黙って私に布団をかける。
    「おやすみなさい。よい夢を……」
     よい夢なんて、見れるものか。
     私が見たのは、またお尻の穴を見られたり触られたりする悪夢だった。
    
         **
    
     いいものっていうのはね。
     俺はずっと、君の恋の病を放置してきた。
     いや、放置どころかね。
     少しでも症状が長期慢性化するように努力してきた。
     面倒を見てあげたり、勉強を教えたり、色々とね。
     どうしてかっていうと、ちゃんと医者になってから治してあげようと思ったんだ。
    
     ああ、君のおっぱい。
     本当は綺麗だったよ?
    
     他の女性だったら、ただの患者として診ていられるけど、好きな女の子の胸が出てきちゃうと少しね。
     まあ幸い、医者としての顔しか見せないように抑えていたから、俺の本心が医療現場でバレるようなことはなかったけど。
    
     明日になったら、バラしてあげよう。
     けど、大丈夫かな。
     もしフラれたらって思うと……。
     それでも、明日は伝えようって決めてあるから――。
     
         **
    
     朝になっての処方箋は、私をかつてないほど元気にするお薬だった。
     なんで? なんでだ!
     そんな薬があったなら、もっと、もっと早く……。
     よし、決めた。
     それだけは一生恨んでやる。
    
    
    


  • 小児科での羞恥体験

    
    
    
      その時代、プライバシーの概念が薄かった。
     遡れば遡るほど、セクハラやストーカーといった言葉すら存在しなかった時期があり、ならば時代によって羞恥心への配慮が欠けていてもおかしくない。
    
     この医師もそうだった。
    
     小児科の診察を受け持ち、女子中学生の上半身に聴診器を当てなければならないが、その少女は両腕のクロスで乳房を覆い隠していて、なかなか診させてもらえない。
    「大丈夫だよ? 診察だからね?」
     医者も接客といえば接客だ。
     仕事が進まない苛立ちを隠し、あくまで営業スマイルで語りかけると、女子中学生は申し訳なさそうに両腕を下ろしていく。
    (ったく、ガキの裸なんて何とも思わないっつーの)
     患者の名前は須磨葉子。
     とっくに発育の始まっている肉体は、確かに胸も膨らんでいる。女児特有のくびれなどないイカ腹というものがあるが、十四歳の葉子の腰つきは微妙にカーブを形成しており、将来的にはスタイルの良い魅力的な女になるのだろう。
    (ま、十年経ったら興奮するかもな)
     医師はただ淡々と、聴診器を当てて必要な音を聞き分ける。その指はかすかに乳房に接触したが、仕事意識しか持たない医師は、自分が今どんな得をしたのかさえ気づいていない。仮に気づいても、職業上触診だってこなすのに、いちいち邪な念を抱くことはないのだ。
    「緊張していらっしゃいますか?」
    「え? ええ、まあ……」
     問いかけると、ぎこちない返事がくる。
    (心臓の動悸は緊張分も計算して、まあ検温では熱もあったし風邪には違いない)
     その後は背中を向けてもらい、背中の複数個所に聴診器を当て、肺の音を確かめてから、触診で腹を軽く押してやる。
     痛み、違和感。
     そういったものはないかと尋ね、すると葉子は頷いたため、より詳しく調べるためには診察台に横になってもらう必要がある。
     スカートを脱がせ、パンツ一枚で仰向けにさせてから、その下着を微妙に下げた。
    「この辺も痛みますか?」
    「……はい」
     あともう少しだけ下げていれば、医療にかこつけて性器を視姦できただろう。いや、この時点でも陰毛は見えかけになっていて、まだ細い毛しか生えていないが、かといって産毛よりは濃いものがデルタゾーン一帯を覆っている。
     それでも、あくまでも医師は――。
    (腹の中もアレか。なるほどね。だとしたら……)
     仕事に欲望は持ち込まない。
     持ち込む持ち込まない以前に、そもそも彼には中学生の裸に欲情する発想自体がない。
     だが、葉子は完全に赤面していた。医師側の意識がどうであれ、パンツ一枚だけの姿で、指が陰毛に触れかけている状況で、顔が赤くならないわけがなかった。
    (本当に熱っぽそうだな)
     羞恥心に対する意識がないからこそ、医師は純粋にそう思っていた。
    
         ***
    
     須磨葉子、十四歳。
     小学生の頃に生理が来て、発育も始まってからは、胸もそれなりに大きくなっていた。味噌汁のお椀か、あるいは握り拳一つ分に膨らんで、尻もそれなりに成長している。くびれのカーブも生まれようとしているので、早ければ一年以内には、グラビアモデルのような素晴らしい肉体の持ち主となるだろう。
     恋に恋する年頃では、学校教室にいるあいだ、自然と目で追ってしまう男子がいた。
     相手の名前は紺野克己。
     顔は良すぎず悪すぎず、けれど授業中に指されれば、必ず問題には正解する。すらっとした背の高さがあって、どことなく格好いいような、だけど自分の身の丈にも合っていそうな、彼となら間違いなく気が合う予感があった。
     しかし、自分に自信があるタイプでもなければ、積極的でもない葉子では、さほどアピールということはできていない。
     ただ、見ているだけ……。
    (紺野君と、もっとお喋りできたらなぁ……)
     漠然とした願いがあるばかりで、自分の力で実現しようとはしていなかった。
     何の勇気もない葉子は、夢のような想像ばかりを膨らませ、少女漫画に出てくる素敵な台詞で口説かれはしないかと、期待しているだけだった。
    
    「あのさ。須磨さんって、帰り道こっちだったんだ」
    
     そんな葉子にとって、これは大事件だった。
    「……え?」
    「あ、いや――俺もこっちだから、一緒に帰ってもいいかな?」
     照れくさそうな顔の克己がそこにいて、葉子は途端に舞い上がっていた。
    (うそ……! うそうそうそ! 本当に? 私いま、アタックされているんですか?)
    「駄目、かな?」
    「い、いえ! そんなことは……! ちょっとびっくりしただけで……!」
    「そっか。ごめん」
    「あのっ、大丈夫だから、帰ろう?」
    「うん」
     会話らしいはっきりとした会話などありはしない。
     思い切って隣を歩いてみたまでは良かったが、そこから先に繋げることができずに、必死に喋る内容を考えてはいるものの、何一つ浮かばずに内心焦っている克己。
     ただ彼が隣にいるという事実だけで、かつてないほど心臓が暴れまわって、鼓膜の内側で動悸がうるさいほどになっている葉子。
     結局、あとは家に着いてから、「俺、ここだから」「そっか。じゃあね」と、特別面白いわけでもないやり取りしかなかったが、これまで喋ったことすらなかった二人の関係は、大きく飛躍したといえるだろう。
     次の日も、その次の日も、葉子は克己と一緒に帰った。
     下校時間が毎日の楽しみとなり、彼が掃除当番や委員会で遅い日は、わざと図書室で時間を潰して下駄箱で待ち伏せた。逆に葉子の帰りが遅いと、克己が待ってくれていて、ますます嬉しくなって一緒に帰った。
     繰り返すだけ慣れていき、二人のあいだに会話も増える。
    「昨日の面白かったよね」
    「ああ、俺犯人は絶対アイツだと思ったのに」
     共通のドラマでも話題の種にして、会話に花を咲かせることも、珍しくなくなった。
     そんなある日だ。
    
    「なあ、今度デート行かない?」
    「へ?」
    
     葉子にとって、さらなる大事件が起きたわけだが――
    
         †
    
     なんでぇぇぇ!
     風邪! 風邪だよぉぉぉ!
    
     よりにもよって、朝起きたら頭がダルく、クラクラして、熱っぽくて思考がまわらない。風邪の症状により学校を休まされ、明日になっても治らなければ、病院へ行ってくるように告げられたのだ。
     舞い上がった矢先なだけにショックは大きい。
    (だ、大丈夫だよね? 今日か明日治れば、デートの日には間に合うし……)
     不安ながらも、葉子は受話器を片手に番号を入力する。
    (もし治らなかったら行けなくなるし、一応伝えておこうかな……)
     と、いつしか交換していた電話番号に発信して、受話器のコールから克己が出るのを待ちわびた。
    「もしもし」
    「あ、紺野君?」
    「須磨か。風邪だって聞いたけど、大丈夫?」
    「うん。それなんだけど、もし治らなかったら今度の約束が……だから一応伝えておこうかなって……」
    「わかった。治るといいな」
    「明日病院へ行くよ」
    「実は俺もなんだ」
    「うぇ?」
    「俺も今日、なんか熱っぽくて、病院行って来いってさ。明日行くことにした」
    「じゃあ、一緒に……」
    「一緒に行こう」
     今思えば、少し浮かれていたのかもしれない。
     熱で頭がユラユラしていたせいもあるだろう。
     一緒に行ったりするものだから……。
    
    「上は全部脱いで、このカゴに入れておいてね」
    
     ニッコリとした笑顔の看護婦のオバサンから、さも優しい口調でそう言われた。
    
         ***
    
    「……ね、ねえ……見ないでね?」
    「……わかってる」
     二人は途端に気まずくなった。
     小児科の待合室では――この病院の場合では、年齢に関係なく上半身裸で順番を待たせ、順番がまわりしだいすぐに診察を行えるようにしている。限られた人数で、いくらでもいる患者の相手をこなすため、病院側の事情としては少しでも効率化が必要だった。
     しかし、須磨葉子の乙女心が、そんな病院の都合など把握しているわけがない。
    (紺野君の隣で脱ぐって……)
     この待合用のベンチには、紺野克己の他にも小学校高学年の男子が数人ほどと、幼稚園か低学年かの男児女児が数人いるが、小五か小六あたりの視線は男児以上に気にかかる。
     今の葉子の状態は、左側に克己が座り、右側には十二歳と十一歳の少年がいる。よりによって男の子に挟まれているのでは、ただでさえ脱ぎにくいのに余計に脱げない。
     とりあえず、セーラー服のスカーフは取る。
     だが、この先が辛い。
     克己の方を伺うと、きちんと向こうに顔を背けた上で、黙々と学ランのボタンを外して脱ぎ始めていた。
    (そうだよね。診察なんだし……)
     前開き式のセーラー服は、中央のチャックを下げることにより、前側が左右に開いてブラジャーがはだけて見える。
    
     じぃ……
    
     視線を感じて右を向けば、小学男子二人がまじまじと見つめていた。
    「ご、ごめんね? 見ないでね?」
     注意すれば、二人とも向こうを向く。
     その隙に肩を剥き出すようにして、袖を片方ずつ脱いでいき、手放すことを躊躇いつつも畳んだセーラー服をカゴに置く。
     二人の小学男子は、明らかに隣の葉子を意識していた。
     見ないでくれている克己も、葉子が脱いでいく衣擦れの音を聞き、どこか緊張している様子に見えた。
    (意識、するよね? 普通……)
     もう幼稚園児の裸とは違うのに、中学生の胸やお尻は、小児科の中では一律に所詮子供のものなのだろうか。
     桃色のブラジャーのホックを外す。
     腕で胸を隠した隙間から、引っ張り抜く形で取ることで、一秒たりとも乳首を見せることなく上半身裸となった。
    (ああ、どうしよう……!)
     恐る恐る紺野を見れば、彼も上半身裸となっていた。
    (紺野君も裸……)
     男女二人が裸など、軽く異常事態ではないだろうか。
     いや、ここは病院であり、診察を受けるに過ぎない。おかしな意識をする方が失礼で、葉子のわきまえ方が足りていない。
     自分は何も見せたくないのに、克己の裸は見るというのが不公平な気がして、それに異性の逞しい胸板などが目に入るのは純粋に恥ずかしくて、葉子はなるべく何も見ないように俯いていた。
     俯いて、両腕で自分の胸を覆い隠していた。
    
    「須磨葉子さーん」
    
     看護婦のオバサンの呼び声で、葉子は診察室へと進んでいった。
    
         †
    
     もう少し時代が進んでいれば、女性の人権や羞恥心の配慮について、もっと叫ばれていたことだろう。
     そうではなかった葉子の時は、葉子自身ですら過剰に恥じらうことは医師に失礼、診察の妨げになるといったことを思っており、配慮の無さに対する疑問を抱いていなかった。残念ながらこれが普通で、どうしようもないことだと思っていた。
     たとえ、診察室が外から丸見えであってもだ。
    (み、見ないよね? 紺野君)
     出入り口にはカーテンもドアもなく、広い幅から室内がよく見える。大きな窓までついていて、あまりにも自由に覗き見可能だ。
    (……見ないでね)
     心の中で、そう願う。
     葉子は医師の前にある丸椅子に座り、まずは問診から始まった。何時に寝たか、何を食べたか、頭はクラクラするのか、鼻水は出るのか。様々な質問に答えていき、すぐに医師は耳に聴診器をかけ始めた。
    「聴診しますからねぇ?」
     両腕を下げろと、遠まわしに言っている。
    (オッパイ。もう膨らんでるんだけどなぁ……)
     四歳児や五歳児なら、娘であってもお父さんと一緒にお風呂に入るだろう。そんな時期なら何の躊躇いもなかったはず。しかし、十四歳はさすがにない。診察とはわかっていても、一切の躊躇なくとはいかないのだ。
    「大丈夫だよ? 診察だからね?」
     と、言われて。
    (ご、ごめんなさい……)
     心の中で謝りながら、葉子はそっと腕を下ろした。
     あまり躊躇ってしまったから、きっと医師を不快にさせた。この子は医者を疑って、実はオッパイが見たいだけではないかと警戒している。そうに違いない。と、そんな誤解を医師に抱かせてしまった。
     違う、そうじゃない。
     ただ本当に、葉子が恥ずかしがっただけなのだ。
    「緊張していらっしゃいますか?」
    「え? ええ、まあ……」
     胸の真ん中や乳房の周囲に、ぺたぺたと聴診器が当たってくるうち、指が微妙に膨らみと接触していた。
    (どうしよう……気になる……)
     まさか、わざとではないのだろう。
     患者である自分が医師に注意をするのは失礼だ。
    「後ろ向いてね」
     丸椅子の回転で背中を向けると、葉子はより一層に赤面した。
    (ちょ、ちょっと!?)
     そこには、大きな窓から覗き込んでくる小学生男子二人の姿もあった。
     克己とも目が合って、彼は慌てて顔を背けていた。
    「ほら、動かない」
     慌てて反射的に隠そうとすると、医師に注意されてしまって、葉子は胸を視姦されるまま背筋を伸ばしていなくてはならなくなった。
    (これじゃあオッパイが……)
     好奇心に満ちた年下の目線が突き刺さる。
    「深呼吸ね。吸って?」
    (そ、そうだ。診察……)
     葉子は医師の指示に合わせて肺を大きく膨らませ、ゆっくりと息を吐き出していく。
    (お願い……見ないで……)
     男子達に通じることはなく、ただ克己だけが目を逸らしてくれていた。
    「お腹の方も触診するので、そちらに横になって下さい」
     葉子が診察台で仰向けになろうとすると、看護婦のオバサンが枕を置き、頭の位置をそこに指定してしまう。
     窓側に足を向け、葉子は寝そべった。
    「痛みはありますか? 何か違和感とか」
     医師は腹部に手を乗せて、押すようにしながら確認する。キリっと走るような、内側に何か傷でもあるような痛みを感じたので、そのことについて答えると、触診の指はしだいに下へ動いていき、やがて言い出す。
    「スカートも脱いじゃいましょう」
    「へ?」
     困惑する葉子。
    「はい。大丈夫よー」
     有無を言わさず脱がしにかかってくるオバサン。
     仮にも女性が、診察補助の立場でスカートの留め金を外し、あまりにも容赦なく下へ引っ張るので、葉子はいとも簡単にパンツ一枚だけの姿となった。
     そして、覗き見の少年二人が明らかに喜ぶ表情を浮かべていた。
    「あ、あの、窓から見ていて……!」
    「あら、大丈夫よ? あなたより年下なんだから」
     オバサンは一瞬だけ後ろを見て、二人が窓に張り付いてまで覗いているのを確認するのだが、注意するでもなく陽気な笑顔を浮かべるのだ。
    「年下って、そんなことは――」
    「平気よ。さあ、恥ずかしがってないで、パンツもちょっとずらすわよ?」
     腹部触診が目的だから、全て脱がされることはなかったが、それでも三角形の陰毛エリアが半分近くは露出した。
    「この辺りはどうかな?」
     どこまでも触診に過ぎない手つきで、しかし陰毛の上から下腹部を押してきて、葉子は何一つ文句を言えずにただ診察上のことだけに答えていた。
     いっそ、これがイタズラなら、葉子にだって異を唱える権利があったかもしれない。
     ただ仕事をこなしているだけの医者を相手に、恥ずかしいだけの理由で喚いたり騒いだりしては失礼だし迷惑だろうと思えてしまって、だから葉子は我慢することしかできなかった。
    「座薬でも入れとこうかな」
     医師がそういう言うと、オバサンはにっこり笑う。
    「じゃあ四つん這いね。ほらほら、葉子ちゃん。お尻を上にして、こんな恥ずかしいことはちゃちゃっと済ませちゃいましょう」
    (恥ずかしいってわかってるなら……)
    「さあ、早く早く」
    「…………はい」
     窓に尻を向けるということは、覗き見の二人にわざわざ見せつけるも同然だ。せめて頭を窓側にして、恥部は見えないようにしたかったが、「なにやってるの? 枕はこっちよ」という一言によって封じられ、葉子は涙ながらの四つん這いポーズを取っていた。
    (お、お尻に視線が……)
     既に数センチだけ下げてあるパンツから、尾てい骨と割れ目の端が見えている。そんな下着のゴムにオバサンの手がかけられ、その手によって思いっきり、何一つ配慮のない大胆さによって膝まで下げられ、葉子のお尻は丸出しとなってしまった。
    (いやぁ! やだよもう! 早く終わって……!)
    「っと、まずはお尻の穴にワセリンを塗りますからね」
     ゴム手袋をはめた医師の指が、乙女の肛門の上に置かれ、ぐるりぐるりと皺をなぞるように塗りたくる。
    (お尻の穴……。診察だけど、診察だけど……)
     恋に恋する無垢な年頃には辛すぎる。
     しかも、医師は葉子の横合いに立っているから、背中でお尻が隠れることもない。尻穴に指で薬を塗りたくっている様子が、窓の向こうからよく見える。
    「あとは挿入して終わりだからさ。次の子も呼んじゃってよ」
    「はーい。紺野克己くーん。こっち入ってきてぇ?」
    (紺野君!? こんな状況で? わ、私こんな状態なのに?)
     せっかく目を逸らしていた克己であるが、出入り口から診察室へ入るのに、まさか一秒たりとも今の葉子を視界に入れないわけがない。それが裸の四つん這いでは、視線吸引力は最高潮にまで達していた。
    「さっ、そこで待っててね」
     克己が丸椅子に座ったことで、三人目の視線が葉子に刺さった。
    (もう、こんな……なにこれ……)
     お尻の穴に座薬が立てられ、指先によって突きこまれる。
    「奥まで入れますからね」
     指の第一関節程度まで、医師は座薬を押し込んだ。
    (やだぁ……)
     指と座薬が同時に入り込んでくる異物感が、葉子の尻穴を広げている。
    (もう死にたいよぉ……)
     四つん這い、お尻に指が刺さっている。
     最高に格好悪い姿だ。
     それを、克己にまで見られている。
     全ての人生がここで終わったような心地に沈んでいった。
    
         ***
    
     紺野克己は最後まで気にかけていた。
     葉子が隣で脱ぎ始めた衣擦れの音から、聴診を受けるために医師に乳房を見せているのも、四つん這いのポーズで座薬を挿入される瞬間も、全てを意識していた。
     もちろん目は逸らしたが、強大な引力に捕らわれた克己の視線は、ずるずると葉子の方へと引きずられ、結局はお尻の穴も見てしまった。
     好きな女の子の裸、お尻、肛門……。
     それらを見てしまった喜びと、辛かったであろう葉子への思いと、この二つが入り混じる複雑さの中に克己はいた。
    
    
     小学生男子二人は、もっともお尻の穴が見えやすいポジションで、医師の指先がワセリンを塗りたくる瞬間からよく見ていた。
     灰色気味に黒ずんだ皺の窄まりへと、医療用のゴム手袋を嵌めた指が置かれる。
     ぐるりぐるりと、容赦なく塗りたくっている様子は衝撃だった。
     お尻の穴だなんて、男にとっても恥ずかしい。
     それが女の子なら……。
     果たしてどんな気持ちなのかと想像しながら、ごくりと息を飲んだ二人は、まるでとり憑かれたように、食い入るような視姦を行い、座薬が挿入される瞬間まで見届けた。
    
         ***
    
     須磨葉子は寝込んだ。
     熱っぽさでも、体調的な気持ちの悪さでもなく、今日の小児科で受けた辱めによって、すっかりベッドに潜り込んでいた。
    (紺野君にまで見られた……)
     まだ、葉子のお尻の穴には、人の指が入ってきた余韻が残っている。
     もう生きていけない。
     明日、顔を見せられない。
    (これじゃあ、デートなんて行けないよ……)
     かといって、断りの電話を入れる勇気もなかった。