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  • 署内ゾンビに犯されまくるクレア

    
    
    
     後がない。
     警察署内の散策に当たっていたクレア・レッドフィールドは、弾を一発も残していない状態で、手元に振り回せる武器もなく、何本かはあったナイフも、とっくに他のゾンビに突き刺したまま、回収の暇もなく手放す流れとなっている。
    「最悪…………」
     丸腰の状況でクレアを密室に追い詰めたのは、女とみるなりズボンを脱ぎ捨て、ヨダレを垂らして迫るゾンビであった。
     ゾンビには二種類いる。
     噛みついて、肉を喰らおうとしてくるものと、女を見るたび性的に襲おうとしてくるものである。狭い空間に追い込まれ、出口はゾンビの向こう側ともなってしまうと、もはや相手が男性器をぶらぶらと揺らしているのを不幸中の幸いと思うしかなくなった。
     食欲タイプと、性欲タイプとでも呼べばいいだろうか。
    「仕方がないっていうの……?」
     真っ平なのは違いない。
     望みもしない性交に、当然のように心は傷つく。まして普通の生きた男性ですらない、元は人間とはいえ怪物でしかなくなった相手と交わるなど、そうしなければ死ぬ状況でもない限り、あり得ない話なのだった。
     そして、今がまさしくその状況だ。
     今まで何度となくゾンビと対峙して、逃げるか、殺すかを繰り返すうち、いつかはしくじる時が来る。いかにミスの少ない人間でも、同じ作業の繰り返しを、いつか一度は間違える時が来る。命懸けの状況かでは、そんな不運なミスが生死に関わるのだ。
     いつしか押し倒される羽目になり、死の恐怖に戦慄した。大きな悲鳴を上げ、必死に抵抗したものの、クレアはあえなく犯された。
     そう、犯されたのだ。
     レイプされ、そういうゾンビもいると、そうなって初めて初めて知った。
     最初はショックで放心したが、ゾンビだらけの署内で泣いているわけにもいかず、立って進んでいくしかなかった。二度、三度と追い詰められ、危機に陥った経験から、性欲ゾンビには素直に身体を差し出す方が、少しはマシだと学んでいる。抵抗すれば肉に食らいつき、爪を突き立て、残忍な暴力によって動きを封じようとしてくるのだ。
    「死ぬよりマシね」
     後ずさっていくにつれ、背中を壁にぶつけたクレアは、迫るゾンビを前にジーパンの留め具を外し、下着もろとも膝まで下げる。壁に両手を当てたバック挿入の体位により、クレアは剥き出しの尻を差し出した。
    「助かるため……助かるためよ…………」
     普通なら決して受け入れるわけがないセックスを、他に道がないから受け入れる。
     フラフラとした足取りで、一歩ずつ迫って来たゾンビが、おもむろに尻を撫で回し、クレアの膣内に容赦なく挿入した。
    「あぐぅぅ…………!」
     まともな準備などしていない、愛撫もなければローションもない挿入に、湿り気の足りない膣壁に痛みが走る。
    「グゥゥゥウ……ワッグァァ……!」
     ゾンビは獣でしかない呻りを上げ、本能の赴くままにクレアの腰を掴んでいる。
     肉棒の太さに合わせ、大きく開いている膣口で、ピストンによって生じる摩擦が痛い。まるで中身を擦り下ろすかのようだったが、痛みに応じて徐々に分泌液が滲み出る。それは膣壁を保護するための、愛液とは異なるものなのだが、しかし確かに肉棒の滑りは良くなった。
     スムーズになった腰振りで、クレアの尻はパンパンと、パツパツと、良い音をリズミカルに鳴らしている。
    「ああもう……どうしてこんな……!」
     ゾンビなんかと交わることの嫌悪感に、クレアはいっそ泣きたくなる。弾さえあれば決してこんな真似はさせないのに、せめてナイフの一本でも、たかが一匹なら殺してみせる。対処できてもいい相手との性交なのが、歯がゆさを強めていた。
     清潔とはほど遠い相手の肉棒が入っているのも、人並みの乙女心の持ち主には辛すぎた。
     それに、経験からしてクレアは知っていた。
    「そろそろね」
     弾切れ、切れていなくても節約。
     生き延びることを考えて、泣く泣く肉体を捧げた過去の性交から、まるで汗でも出るかのように、肉棒の表面にある種の体液が浮かぶことを知っていた。それが女の身体に染みついて、浸透すれば、どういう効果をもたらすかも。
    「あう……!」
     声が出そうになり、クレアは咄嗟に裾を噛み締め、少しでも喘ぎ声を出さないように努力を始めた。
    「んぅ……んっ、ん、ん、んん……! ん、んぅ……!」
     歯を食い縛ることに懸命になった。
     クレアは気づいている。この狭い部屋に追い込まれた際、今このゾンビの後ろにあるドアは開いたまま、いつ他のゾンビが入って来るかがわからない。それが性欲のゾンビなら、よくはないが、死の危険が増すよりはマシだ。
     この状況で人肉喰らいに来られるなど恐怖でしかない。
    「んっ、んっ、んっ、んっ、んぅ……ん……ん……んん……んんぅっ、んっ、ん…………」
     相手の顔も見えない体位で、クレアは深く目を瞑り、顎の力が抜けないようにと意識を強く保ちながら突かれている。快楽がほとばしり、甘い電流が背筋を駆け上がり、脳まで達して思考が染まりそうになっているのを、懸命に懸命に保っている。
    「グォア――グゥゥ……!」
     垂れるヨダレがポタポタと、尻を濡らして鳥肌が立つ。
    
     ぱん、パンッ、ぱっ、パツ、ぱつん、ぱつ、ぱっ、パ、パッ、ぱつ――――。
    
     ピストンの腰が尻にぶつかるちょっとした衝撃で、クレアの身体はわずかに前後に揺れ続けて、ポニーテールにもかすかながらの振動が届いている。
     
     ぱっ、ぱつ、パツっ、ぱつん、ぱつ、ぱっ、パ、パッ、ぱつ、ぱちゅ、ぱつッ――――。
    
    「んっ、んん、ん、んんん……んぁ……ん……くぅ……んっ、んぅ……んぅ……」
    
     始まってから、何分経ったかもわからない。
     おそらくは十分近く、こうしてゾンビは動いている。クレアも快楽に耐え続け、歯を食い縛ったまま必要以上の喘ぎ声は出していない。
     クレアは耐えきった。
    
     ――ドクゥゥゥ……びゅくっ、びゅるるん!
    
     何の予兆もなく、前触れのない急な射精に驚きつつも、膣内に広がる白濁の熱気に、行為が済まされたことにひとまずは安心する。肉棒を引き抜いたゾンビは、満足したとばかりに背中を向け、ヨロヨロと、ヨタヨタと、時に大きくふらついて、一人で勝手に壁やテーブルにぶつかりそうな足取りで去って行く。
     ぐったりとうずくまり、息を整えるクレアは、すぐに開きかけのドアを気にした。
    「閉めなきゃ……」
     ゾンビが出入り出来ないようにして、少し休んで体力を回復させたい。どうにも上手く立たない足腰で、仕方なく四つん這いで進むクレアは、ドアに手を伸ばして触れかけた。
    「嘘でしょ!?」
     その瞬間、驚愕していた。
     先ほどとは服装も肌も異なる次の性欲ゾンビが現れて、たまたまここまで歩いた風に、思いがけず女を見つけて嬉しいように、始めからズボンなど穿いていなかった下半身の逸物を一瞬にして固くしていた。
    「続けてするなんて……冗談じゃないわ……」
     クレアに選択の余地はない。
    「ああもう……こんな真似するなんて……」
     手早く犯してもらうため、どうぞとばかりに仰向けに、足を開いてやるクレアは、獣の勢いで飛びつくゾンビの挿入を受け入れた。
    「あぁぁ……! ダメっ、声――んんん――んんっ、んんぅぅ…………!」
     やはり声を必死に抑え、三匹目や四匹目が来ないことを切に願う。
    「ウゥゥグガァァウッ! グゥゥゥ……ググゥァァ……!」
     始末の悪いことに、このゾンビは上手かった。
     人間だった頃のテクニックをゾンビになっても発揮するのか知らないが、ケダモノのくせにクレアの膣内をよく探り、ギラついた欲望の視線で感じている様子を確かめる。垂れるヨダレは頬を濡らし、次の瞬間に喰らいつく。
    「――ッ!?!?!?」
     本気で血肉を喰われるかと思って、眼球が飛び出しかねない勢いでクレアは目を大きく見開いていた。しかし、食い千切ったものは肉ではなく、クレアの赤いジャケットと、その内側に来ていたシャツであった。
     たちまちブラジャーの繊維まで引き千切られ、上半身の衣服は布の千切れた残骸でしかなくなって、丸裸も同然となっていく。無事なのは膝に下ろしたジーパンと、その内側にあるパンツのみで、それだけは既に挿入をしているせいか見逃された。
    「んんんっ、ぬっ、んんぅ……!」
     ピストンと共に、ゾンビの指が乳房を這う。
    「んん……! んっ、ンッ、んッ、んぅ……!」
     最悪だった。
     皮膚の表面を軽やかに撫で回す乳揉みの技巧は、猛獣の呻きを上げるくせに、嫌に優しく女のこともわかっている。たちまち乳首は突起して、甘い痺れが乳房の内側に生じてくる。
    「ガァァァウッ!」
     肉を貪りそうにしか見えないような、ヨダレを散らして歯も剥き出す食らいつきで、やはりそのくせ吸い方さえも心得ている。暴れる芋虫よりも活発に、元気に元気にベロベロと、口に含んで舐め回し、舌先と乳首のあいだに糸を引かせる。
    「ガァァ……! ジュッ、ジュブブッ、ヂュルブゥ――ジュジュゥゥ……!」
     汚らしい唾液の音を激しく立て、もう片方の乳房も貪り尽くす。吸引力に引っ張られ、何度となく伸びた乳房は、存分に濡らされていた。
    (ああッ、ダメ……! こんなに上手いなんて……!)
     スムーズに出入りしている肉棒は、最初のゾンビで出てきたばかりの愛液と、中に出された精液をかき混ぜる――じゅぅっ、チュプ、チュク、じゅぷっ、ズッぷっ、と、まるで舌でヨダレの汚い音を立てているような、そんな水音もアソコから響いていた。
    「グゥゥウアアア……! れじゅっ、レロレロレロレロォォォ!」
     そして、あまりのおいしさにとり憑かれでもしているように、夢中になってベロベロと、クレアの乳首を右も左も舐め尽くす。乳首どころか乳房全体にかけてさえ、余すことなく唾液を塗りつけて、クレアの乳肌にはゾンビのヨダレが浸透しきっていた。
     唾液を吸った皮膚の上に、さらに何度も、何度も何度も、しゃぶっては舐め、しゃぶっては舐める乳攻めに、もはやローションをまぶしたものと変わらない、濡れた輝きさえ放ち始めていた。
     気持ち良すぎた。
    「んんんんんんんんんん! んんっ、ンッ! ん! んぁ、んあぁぁ……! あッ、だ、だめッ、声ッ、んんん! ん――あぁ……!」
     活発なピストンが、あたかもそういう発電であるように電気を生み、足のつま先にかけて電気が走る。痙攣じみて足首が反り上がり、太ももの筋肉もピクピクと、肉棒の動きに応じて反応している。
     飽きる気配の見えない乳攻めも、舌を伸ばしすぎたあまりに根元が千切れても構わないかの勢いで、限界を超えて長く長く伸ばして舐めてくる。
    (ま、まずい――このままじゃ本当に……!)
     クレアが抱く危機感の通りに、歯を食い縛るための筋肉も疲弊してきた。どれだけ唇を引き締めても、それでも外に出ようとしている声が、抑えていても「ん! ん!」と、始めよりも明らかに大きく漏れていた。
     ただでさえ、このゾンビ自体が五月蠅く動物の鳴き声を上げている。ドアを閉めることも叶っていない。それで喘ぎ声まで上げてしまえば、騒音を聞きつけた何匹のゾンビが、ここに向かって来ることか。
     ここに来るまでの道中、弾の節約のためにやり過ごし、殺さずにいたゾンビはいくらでもいるのだ。
    (絶対っ、絶対に耐え抜くわ!)
     クレアは両手を使ってまで、全力で口を塞いだ。声を出さないことに力を尽くし、だから口を押さえるためだけに、腕力の限りを尽くしていた。
     だが、その瞬間だ。
    「ガァアアアアアアアアウ!」
    (そんな!)
     それを見たゾンビは、おもむろにクレアの両手を掴み、力ずくで床の上に押さえつけ、顎や唇の力だけで我慢するしかなくなった。
    「ガゥゥウ! ガッ、グゥゥゥウ!」
     ゾンビは大胆に顔を近づけ、キスするつもりのような至近距離から、クレアの表情をあらゆる角度で眺め尽くす。
    (……ゾンビなのに楽しんでるの?)
     肉体的な反応の快楽はわかるが、目で見て楽しむという行為は、果たして知性がなくてもありえることか。クレアにはそんなことはわからないが、少なくともこのゾンビは、まともな人間時代には、思う存分に感じさせ、喘がせながら、じっくりと表情を眺めてやる性癖の持ち主だった。
     ゾンビとなっても、本能の中にその行動が残っていた。
     あるいは生きていた頃の行動を再現しているだけかもしれないが、どちらにせよクレアには、心なしか目の前のゾンビの顔が、ニタニタといやらしく微笑んで見えているのだった。
    「ん! ん! ん! ん! ん! ん! ん! ん! ん! ん! ん!」
     気持ち良さに耐えるということが、本当に命懸けだった。それが生死に関わることの必死さで、顎の骨がどうにかなろうと、歯が折れようとも耐え抜きたいかのように、クレアは顔を力ませ我慢に我慢を重ねていた。
    (――こんな――こんなに激しく――こんなにイイなんて――どうしてよ!)
     クレアは完全に焦っていた。
     アソコに何か予兆がある。ピストンの一突きごとに蓄積して、やがては弾けそうな予感のする何かが、股へ股へと寄り集まり、未知の予感に焦燥した。
    
     ――イカされる!
    
     ゾンビなんかに、こんなところで、絶頂などしてしまっては、抑えきれずに大きな声が出かねない。
    (まずい! まずいわ!)
     本当に必死に耐えていた。
     イった時点で運命は決まってしまうかのように、クレアは首を振りたくり、意味もなく目を瞑るまぶたの力も極限まで、全力を尽くしての我慢を行っていた。
    「――んんんんんんん! んんぅ――んんんんんぅ!」
     何も状況を知らずに声だけ聞けば、まともな人は女性が何の苦痛を味わわされているのかと、きっと凍りつくだろう。
    (イってはダメ! イってはダメよ!)
     快楽との、必死の戦いだった。
    「ガァァァグゥゥウウッ!」
     ピストンは活発化して、摩擦で発火でもしそうなほどに激しく出入りする。それほどの熱さに膣は蠢き、全身がくねってしまう。
    「ん! ん! ん! ん!」
     限界は近づいていた。
     声を封じるための口の力が、顎や唇の筋肉が、出よう出ようとしている声に逆らいきれず、喉の中身を解き放ちそうになっている。叩き続けた扉がいつかは壊れるかのように、声を我慢する力も決壊しかけていた。
     長らく出入りしているのだ。
     自分がイクより、ゾンビの射精の方が早ければ、満足したゾンビはクレアを置いて去っていくことだろう。それだけに期待を寄せ、あと一分でもいいから耐えきれば、きっと切り抜けられると信じて願う。
    
     だめ……だめぇ……!
    
     しかし、クレアは耐えきれなかった。
     ゾンビが行うおびただしい射精量の、子宮から膣の入り口にかけて、一瞬にして満杯になるほどの白濁が放出され、勢いのあまりに肉棒の入った隙間から飛沫が飛び出る。
     それと同時であった。
    
    「アァァああぁぁああああああああああぁぁあああ!!!!!!」
    
     クレアは激しく絶頂していた。
     全身がビクビクと弾けるように、電流でも流されているように、足腰から両腕が反応して、頭の中まで白く弾けてショートしていた。
    「グゥゥゥゥアゥウゥゥ!」
     ゾンビが肉棒を抜いていく。
     今までクレアの膣内にフィットしていたものが、精液だけを残して去った時、まだ弾を残していた亀頭から、ビュク、ピュクっと、あと何度かの射精がされ、下から上へと、クレアの腹から胸にかけ、顎下にかけても白濁に汚していた。
    「あっ、あぁ……そんな…………」
     満足したゾンビは起き上がり、フラフラと去って行く。
     それと入れ替わるようにして、入って来るのは二匹のゾンビであった。
     今の喘ぎ声で、絶頂の声で呼び寄せてしまったのだ。
    「あぁ……なんてこと……アレを見てホっとすることになるなんて…………」
     二匹の警官ゾンビは、二匹ともが股間の部分を破り散らかし、その内側から勃起した逸物を突き出していた。
     ホっとしながら、これから始まる三回目の時間について諦めてもいた。
    
    「んっ、んぐっ、んんん! んんん!」
    
     苦しげな喘ぎ声。
     二匹同時に相手をする羽目になったクレアは、四つん這いで両手を突き、バック挿入に加えてフェラチオまで行っていた。
     パンパンと尻を打ち鳴らす一方で、後ろからのピストンで揺らされる勢いを使って、クレアは顔を前後に動かす。頬張っているものの太さに苦しみ、どうにか鼻息をしながら耐え、何分続いたかもわからない、二本の肉棒の出入りの中で、尻に精液をかけられつつ、口内の中にも白濁を注ぎ込まれた。
     そして、去って行く二匹と入れ替わり、四匹の警備員や警察に、どこからか紛れ込んだ一般男性のゾンビが現れて、いずれも肉棒を見せびらかしていた。
    「今日は地獄ね……」
     四本の肉棒を同時に捌くため、四つん這いの体位は変えず、手も使っての性行為に、慣れない態勢の辛さに苦しみつつも励んでいた。四つん這いというより、もっと膝立ちに近いくらいに上半身は高めているか。そうすることで両腕を左右にやり、両手とも手コキのために使っているのだった。
     尻をプルプルと揺らすピストンに、身体が前後に揺れる勢いを使うのは、今さっきと変わらない。加えて手コキまでこなす大変さに、どうして自分がこんな淫らなテクニックを磨かなくてはいけないのか、運命が呪わしいやら悲しいやらだ。
    「ガァァアア!」
     バック挿入のゾンビが射精して、それが背中にかかって来た時、これで相手が減って負担が減るかと思いきや、新しいゾンビの気配と共に、見えない相手に腰を掴まれ、持ち上げられ、またしても挿入されてしまった。
     左右からの射精に手が濡れて、顔への射精で顔も汚れて、また新しいゾンビが来る。
     いつ終わるとも知れない行為に、射精という射精の雨に濡らされ、髪にかかった精液の乾燥で、髪がところどころ固まっていた。頬や額で精液が乾き、その上からまたかけられ、手の平もヌメヌメとして気持ち悪い。
     こんな地獄にも終わりはあった。
     もう一匹のゾンビも来なくなり、輪姦の嵐の中でいつの間にジーパンも下着も引き裂かれ、白濁濡れの全裸でクレアは横たわった。疲れた身体でぼーっと天井を眺め、ドアを閉めてゾンビの侵入を防ぎたかったことを思い出し、そのために立ち上がり、やっと閉め、次の瞬間にぐったりと倒れて休みに入る。
    「なんて地獄だったのかしら。すっかり穢されたわ」
     おまけにシャワーも浴びられない。
     衣服も無し。
     生きた男は、ホールで怪我を抱えたマービンと、どこかで生存しているはずのレオンくらいのものであるが、丸裸で歩き回るのは、それでも心許ない話だ。
    「あいつら、弾さえ合ったら全員ぶち抜いてやるわ」
     腹の立つ気持ちを声に出し、どうにか心を保って、クレアは静かに身体を休めていた。
    
     そして、地獄は再び――。
    
    「ちょっと! 嘘でしょ!?」
    
     そのまま眠ってしまっていたクレアは、扉を叩く大きな音と、その向こう側にいるゾンビの群れという群れの鳴き声に戦慄していた。
     未だ弾を補充する機会もなく、丸腰でこの数は……。
     死を覚悟しなければならない状況を前に、そうであれば助かるからと、ここに来ようとしている全てのゾンビが性欲タイプであることを願っていた。
    「グゥゥゥウ!」「グガァ!」「アアアゥ!」
    「ガアアアウ!」「ギァアアア!」「ギャァ! ギャァ! ガア!」
    「キィィィイイガアアア!」
     両手でがむしゃらにバンバンと、ドアノブを掴んで普通に開けるという知性もなく、ただただ叩き続けているのだろう。
     それがやっとのことでドアノブにぶつかって、腕がドアにあたり続ければいつかは起こる偶然によって、出入り口は開け放たれた。
     見覚えのある顔をいくつか見て、クレアは悟った。
     雪崩れ込むゾンビの群れの全員が、クレアを犯した快楽に味を占め、抜き取った性欲が再び膨れ上がってからここに来たのだ。ここにクレアがいることを、知性がなくとも記憶して、もう一度来ればまたヤれると、これほどの人数で迫って来たのだ。
     確かに、性欲ゾンビなら食い殺されはしないと、命惜しさの期待はあった。
     実際に群れの人数を見てしまうと、そんなクレアにしても、さすがに青ざめざるを得ないのだった。
    「いやっ、やめて! 来ないで!」
     後ずさるが、しかし逃げ場はない。
    「やっ、やめ――いやぁぁ……!!!」
     群れの中に飲み込まれ、押し倒され、クレアはこの集団の慰み者となった。
     我先にと挿入したがるゾンビ達が、こぞって膣に挿入しようと、クレアの股に肉棒を近づける。本番行為の取り合いに、とても入り込めない他のゾンビは、ならば他の箇所で楽しもうと迫って来た。
     ずぶりと正面のゾンビに挿入され、正常位で犯され始めたクレアの足に、M字となって広がる左右の足に、本番に入れなかったゾンビが亀頭をこすりつけている。太ももにも、ふくらはぎに、足の裏側にも、亀頭を当てて擦ってくる感触があった。
     下半身だけに留まらず、肉棒で顔を挟み撃ちに、頬をつつかれていた。乳房をつついてくるゾンビもいた。腕のどこでもいいから、とにかくクレアの肌に肉棒を接触させ、擦って来ようとしてくるゾンビもいた。
     肉棒に包囲されたとしか言いようがなかった。
     身体のどこに意識をやっても、必ずそこには肉棒の生暖かさが擦り付けられ、額の上にまで乗せられている。脇腹にすりすりと擦りついてくる亀頭から精液が弾け飛び、太ももにもかかってきて、手にも足にも白濁はへばりつく。
     肉棒地獄の中で、数分おきにどこかで精液が放出され、それは必ず身体にかかっている。ただでさえ全身についた汚れに、さらに上乗せが行われて、いつしかクレアの顔面は表面を精液でコーティングしたようになっていた。
     乳房も、腹も、性器のワレメや手足の指も、白濁を浴びに浴びて、表面が白濁によってパッキングされ、髪も完全に汚され尽くした。
     これだけ大勢が満足して立ち去る頃の、クレアの酷い有様は言うまでもない。
     膣には一体何本が出入りしたかは数えきれず、右手も左手も、もう何百本も握ってきたような気さえしている。仰向けだから背中にはかかっていない以外、浴びうる場所の全てに精液が染み込んで、皮膚の半分以上を精液に漬け込んでから取り出したかのような状態だった。
     皮膚の感触も、臭いも、気分も、何もかも酷い。
     あまりの、本当にあまりの酷さに打ちひしがれ、それでも生きているだけマシと、そう思うことで立ち上がった。
    「雨でもいいから、水を浴びたいわね……」
     ここにいては、またヤりたくなったゾンビが来る。精気が低下している隙に、性欲タイプの脇を通り抜け、ひとまず安全なホールへ逃れるしかない。マービンにこんな姿を見せるのは嫌だったが、戻らないわけにはいかないのだった。
    「ただでやられはしないわ。あいつら……!」
     クレアは拳銃を握っていた。
     警官ゾンビの腰には、銃の収まったホルスターがあったのだ。どうにかして手を伸ばし、努力して取り出して、床に滑り落ちていき、地獄の去った後にはそうして拳銃が残されることとなった。
     弾は少ない。一丁限りの銃。
     わかりきった武器の不足に、果たしてクレアは最後まで生きているのか……。
    
    
    


  • 署内で調教されるクレア

    
    
    
     それは警察署にたどり着いてのことだった。
    
    「動くな」
    
     突如としてかかってきた男の声の、ただ一言によって、クレア・レッドフィールドは自分に向けられた銃の存在を感じ取り、即座に両手を挙げていた。
    「待って! 私は人間よ!」
    「いいから動くな! 銃も捨てろ!」
    「ここまで逃げて来たのよ!?」
    「捨てるんだ!」
     顔も見えない背後から、振り向くことさえ許されず、有無も言わさず、動くな、銃を捨てろとばかり繰り返す。銃を向けられている恐怖と焦燥から、クレアは口早に喚いていた。文脈も無視して、会話らしい会話も成立せず、自分は逃げて来た一般市民だと言い張る言葉と、あくまでも抵抗を許さない男の声に、やがてクレアが折れる形となっていた。
    「わかった。捨てるわ」
    「それでいい。その腰の荷物もだ。ベルトを外して、横に投げろ」
    「なんてことよ……どうしてこんなこと……」
     レオンという名の警察官に危機を救われ、共にラクーンシティへ向かった先で、しかし二人は突っ込んで来るトラックの事故に巻き込まれ、ガソリン漏れから起こる炎上によって、離れ離れにならざるを得なくなる。
     署で落ち合おう。
     彼が無事であることを祈りつつ、死人の群れをかいくぐり、どうにかたどり着いたまでは良かったが、警察署さえもまともに機能してはいなかった。扉がバリケードに遮られ、床には血痕らしきものが散在している。
     ここでも騒動が起こり、無事な警察などいるのかどうかもわからない。
     署内の散策を始めようと、少しばかり歩き始めてこれである。ひとまず安心できるかと思いきや、次の恐怖が待ち受けていたとあっては、自分の運命が悲しくなる。
     銃を床に滑らせて、ベルトとポーチも投げ捨てる。
    「ジーパンを下げろ」
    「何ですって?」
    「下げろ。いいか、太ももの途中までだ。それ以上は下げるな」
    「嫌よ許して!」
    「聞かなければ外に追い出すぞ」
     有無を言わせぬ圧力に、クレアは泣く泣くジーパンの留め金を外し、言われるまま太ももの半ばの位置まで下げるしかなくなった。次には留め金をかけ直すようにも命じて、ジーパンが落ちないようにさせられた。
     これで咄嗟の身動きは取りにくくなったことになる。
    「ねえ、まさか。おかしなこと考えてないでしょうねぇ?」
     赤いジャケットの丈に守られ、少しは隠れていることだろうが、それでも白いパンツの色が見えないはずもない。
    「白か」
    「考えてるわけ? この状況で?」
    「そっちに手錠を投げる。自分ではめろ」
    「そこまでする!?」
    「いいからやれ!」
     乱暴に投げたのだろう手錠が、ちょうどクレアの足下にやって来る。拾い上げ、自らの手首を拘束した。
    「あなた警察? こんなことしてる場合?」
    「アンタは上玉だ。俺に従えば守ってやる」
    「……最低」
    「そこにソファがある。そこまで移動して、そこに両手をつけ」
     その通りのポーズを取れば、尻を後ろに突き出す形となる。丸々とした尻肉の厚みが、下着を膨らませている光景は、もはやジャケットの丈にも隠れてはくれない。きっと視姦されているだろう状況に、クレアの頬は恥じらいの朱色に染まっていた。
     男の足音が迫る。
     ソファに置いた自分自身の両手と、皮の生地ばかりに目を落とし、尻のすぐ真後ろに近づく気配に神経を強張らせる。金具の音と、衣擦れの音で、男のズボンの中から一体何が出てきたのかも、状況からすればよくわかった。
    「いい尻だ」
     割れ目に合わせて腰を押しつけ、肉棒を当てて来る男は、尻山の狭間で前後に動かし、下着と擦れ合う刺激を楽しみ始めていた。
     尻コキなどという知識のないクレアは、ただただ痴漢行為を受けているのだと感じていた。
     しかも、右手では相変わらず銃を構えたままでいるのだろう。
    「ねえ、どこまでする気? どうすれば許してくれるの?」
     大きく開いた手の平が、尻の形に沿って撫で回す。乗せられている肉棒も、ピストンのように前後している。
    「安心しろ。ゴムは持ってる」
    「嫌よ。最後までなんて」
    「選択肢は二つだ。気持ち良くなるか、痛いやり方か」
    「三つ目はないの?」
    「無いな」
    「どうしても? 他の言うことなら聞くわ」
    「他のこともするさ。最初にやるべきことを済ませたらな」
    「最高の贅沢ね」
    「お前にも贅沢な快感を与えてやるとも」
    「本当に、最っ高…………」
     屈辱を受け入れるより他はなかった。
     油断なく銃を握り続ける男は、空いた左手のみで愛撫を行い、尻をまんべんなく撫で回しては性器も弄る。下着越しのワレメをなぞり、刺激を与え、内股の皮膚もさすって、クレアの肉体を少しずつ高めていた。
     触れるか、触れないかといったタッチの上手さで、くすぐったい感覚にも似た刺激をじっくりと、時間をかけて与えていく。
    
     すり、すりすり、すりぃっ、しゅりっ、すり、しゅっ、しゅりっ、
    
     尻を丁寧に撫で回す左手の、生地に人肌が擦れる音が、静寂に満ちた空気の中でよく聞こえる。時には指を押し込み揉みしだき、また撫で回し、内股の肌にも手を及ばせ、性器の周辺を指でくすぐり、尻撫でへと戻って行く。
     長時間にわたる愛撫であった。
     十分も撫でられているうちに、尻の皮膚は敏感に発達して、触れられていると何か疼くような感覚に見舞われる。性器に近い場所へのタッチでも、アソコに疼きが溜まっていき、穴の奥では肉欲が膨らんでいく。
     二十分、三十分。
     時計などなくとも、あまりにも長々と続く愛撫には、それくらいは経っているような気がしてくる。
     とっくにアソコは濡れていた。
     そこに指を当てられれば、にじゅりと、粘液を捏ねた音が鳴る。
    「糸が引いてるぞ?」
     気持ち良くなっている証拠を見て、男のいい気になった声がかかってくる。調子に乗って微笑む声だけで、未だに顔すら見ていない相手の、優越感に満ちた表情が想像できた。
    「汗でもかいたかしら」
    「暑いなら涼しくしてやる」
     パンツのゴムを掴み、ゆっくりと下げていく手つきは、いかにも皮を剥いた中身の果実が楽しみでならないものだった。皮膚の表面から生地が離れて、露出の面積がじわじわと広がる感触にクレアは震えた。
     太ももの位置に下着は絡み、全ては丸出しとなっていた。
    「ほら、尻の穴もよく見える」
    「そんな場所……」
    「ほれ」
    「なっ!?」
     クレアが目を見開いてまで驚くのは、肛門にぐりっと、指を押し込まれてのことだった。
    「顔から火が出そうか?」
    「早く済ませて」
    「楽しんだ方が特だぞ」
     男は指先でぐにぐにと、押し込むような、皺をなぞるようなマッサージを施した。
     汚い場所を見られ、弄られ、遊ばれている羞恥に耳まで染まり、歯を食い縛って堪えるクレアは、次には膣に指を入れられて、ますまそ顔を歪めていた。
    「あっ、うぅ…………」
    「さすがに気持ちいいか」
    「ううぅぁぁあ……あふっ、ふぁ……ふはぁぁ………………」
     指の出し入れによって内部を探り、知り尽くそうとする男は、すぐにでもクレアの敏感な反応を見つけ出す。膣壁に刺激を与え、ゆっくりとしたピストンを少しずつ活発に、技巧に満ちた手つきにクレアは翻弄されていた。
     抜き差しに伴って、いやらしい水音が響いてくる。それが自分のアソコから出る音だと思うと、さらに恥辱感が膨らんで、もう丸めた唇を食い縛っているしかない。
    「お待ちかねのチンコだ。ゴムは付けてやる」
     ビニールにパッキングされたものを破いて、中身を取り出そうとしている音で、いよいよコンドームの装着に移っているのがクレアには伝わった。
    「ねえ、十分楽しんだでしょう? 今からでも考え直さない?」
    「せっかく生きた女に出会えたんだ。お前には俺ってもんを叩き込む。この世の終わりみたいな光景が広がってるからこそ、英気を養わなくちゃあ、やっていけないからな」
    「やっぱり、諦めるしかないってわけ……」
    「悪いな。お詫びにたっぷりイカせてやる」
     性器の入り口に亀頭が当たり、そのまま腰が押し込まれる。ワレメが左右に開けていき、肉棒の太さに応じて穴も広がり、
    
     ずにゅぅぅぅぅぅ――――――。
    
     と、クレアの中には、顔も名前も知らない男の逸物が収まった。
    「なかなかの心地じゃないか」
     腰のグラインドが始まると、クレアの尻にパンパンと、男の身体がぶつかり続ける。
    「んぅっ、んあ! あっ、あうっ、あ! あぁ……! あっ、あん……!」
    「可愛い声も聞こえて来た」
    「んん! んんんんん! あぅ、ダメ! ダメよ! おっ、おかしくなる! こんなのっ、おかしくなるわ……!」
     想像を絶する快感がクレアを襲っていた。
    「ほう? そいつはよかったな」
    「ああああん! だめっ、ダメ! 許してッ、ゆるして――!」
    「何が許すだ天国を味わってるくせに」
    「んん! んあ! あっ、あぁ――だめッ、なにか――! あ! あ! あん! あぁっ、あううう! んっ、んあ、はっ、あっふぁあ――!」
     脳が快楽に侵食されていた。甘い痺れが全身に向かって流れていき、指先さえも敏感に発達していく肉体は、もはやピストンに翻弄されているしかない。
    
    「――あぁあああああああああああああああ!」
    
     絶頂など、時間の問題似すぎなかった。
    「はぁ……あぁぁ……なんてことなの…………」
     それでなくとも、感じることに体力を使い続けていたクレアは、絶頂によってぐったりと、ソファに顔も胸も沈めていた。しかし、なおも突き刺さったままの腰だけは、なおも持ち上がったまま、沈まぬように男の手で掴まれもしていた。
     男はもはや拳銃をホルスターに収めていた。
    「もっとイカせてやる」
    「待って! こんなのもう十分――――――あぁぁぁ――あああ…………!」
     慌てて男を止めようとする声は、ピストンの再開によって、いとも簡単に快楽の絶叫へと変わっていた。
    「あん! あっ、あん! あふっ、んんん! ん! ん! ん! ん!」
     ひたすら喘ぎ、水音が響き、尻は打ち鳴らされている。
     数分後には、次の絶頂が待っていた。
    
    「――あっ! ま、またッ! ああああ!」
    
     ビクビクと、痙攣にも見える震えで全身の筋肉を振幅させ、次の瞬間にはぐったりとへたり込むものの、男の両手がクレアの腰を掴んでいる。尻だけは沈むことなく、肉棒の収まった状態から逃れられない。
    
    「ああああああああああああ――――あっ、こんな――三回も――――」
    
     三度目の絶頂後も、休憩を与えてやるとばかりに動きを止めるが、決して肉棒を外に出すことはしていない。逃げようとするなら腰を掴んで引き寄せて、串刺しの状態を長々と維持していた。
    
    「あぁぁぁ――あぁっぁあっぁあああああッッ!」
    
     四回目の絶頂。
     やはり、肉棒の栓は抜かれずに、一分も休めばピストンは再開される。
    
    「あああぁぁぁぁぁぁぁ――!」
    
     しばらくピストンが続いていけば、五回目の絶頂も時間の問題だった。
     そして、男はまだやめない。
    
    「あうぁああああ――――――!」
    
     六回イカせた。
    
    「あぁあああああああああああああああああああ!」
    
     七回イかせた。
     なお続き、八回、九回、十回と、ついに二桁の数字にまで突入して、クレアの穴はこの男の気持ち良さを覚え込む。
    「もう無理、お願い……せめて、もっと休ませて……!」
    「フェラチオしろ。そうしたら手錠も外す」
    「ええ、もうそれでいいわ」
    「名前は」
    「クレア・レッドフィールド」
    「ペイニスだ」
    「よろしくペイニス。最高の出会いをありがとう」
    「この出会いを記念して、こいつはプレゼントだ」
     ペイニスは少しばかり腰を揺すって、今まで溜め込んでいた射精感を吐き出す。クレアの膣内でコンドームが大きく膨らみ、薄いゴム越しの熱気とトロ味が広がっていた。
    
    
    
     そして、クレアは初めて男の顔を見た。
     短髪に切り揃え、ルックスの良くも悪くもない平凡な風貌から、何か酷い犯罪をやる姿はとても想像できなかった。何より彼は、ここの警察官の制服を着ていたが、残念ながらペイニスは、クレアを散々にイカせ尽くしたばかりである。   
    「こんなの、したことないわ」
     クレアは床に膝をついていた。
    「できないってのは無しだぞ?」
     ソファに座したペイニスは、背もたれに身体を沈めつつ、大胆に脚を広げている。そんなV字に開いた膝のあいだにクレアはつき、これから肉棒を咥えるのだ。
    「わかってるわよ」
    「好みの顔だ。その口に俺のチンポが入ったところを、好きなだけ鑑賞してやる」
    「それはどうも。始めるわよ」
    「ああ、よろしく」
    「……あむっ」
     するしかなかった。
     ペイニスのホルスターには拳銃が収まっている。クレアが捨てた銃は、この場所から何メートルも離れた床の上だ。おまけに手錠ときて、抵抗は得策ではない。ペイニスの肉体は肩幅が広く、そのガタイの良さは服の上からでも明白だ。
     それに、クレアのアソコにはかなりの余韻が残っている。
    「はじゅぅ……ずっ、ずず……ずぅ……れろっ、れろぉぉ…………」
     咥えてみて、前後に動き、そしてペロペロ舐めてやる。
     そうするクレアの下半身は、ジーパンも下着も両方とも、太ももの半ば辺りに下げたままの、尻を丸出しにした状態だ。もしもクレアの背中を映すアングルがあったなら、肉厚の丸っこさがよく目立つ。
     さらにアソコを覗き見たなら、今まで絶頂してきた愛液が、内股にまんべんなく広がって、陰毛もぐっしょりと濡らしているのがわかるだろう。
     そんなクレアのアソコの中は、すっかりとペイニスの肉棒を覚えきり、少しでもセックスを思い返せば、反りや太さの形状が頭に浮かぶ。何十分にもわたって膣内に居座って、ピストンを続けた感触は、まだ挿入が続いていると錯覚しそうになるほどに、鮮明なまでに肉体の記憶に刻まれている。
    (これが入っていたのね……)
     と、そういうことも思いつつ、クレアは頭を前後に動かしている。
    「はじゅっ、ずずずっ、ちゅるぅ……じゅむっ、ずむっ、んじゅぅぅ…………ずぅ…………」
     ずぅ…………ずぅ…………
     急に犯され、それでいてイカされ続け、休ませて欲しければという条件で、こうして奉仕に励む羽目にまでなっている。ここまでペイニスの思い通りに扱われ、それに従うしかないクレアには、従属心めいたものが育ちつつあった。
    「顔がよく見えるようにしてくれよ」
    「ずずぅ……じゅぽっ、こうかしら……れろっ、れろれろっ、あむぅぅぅぅ…………」
     首の角度を上げ、ペイニスと目を合わせ、先っぽを舐めるなり咥え直す。ニヤニヤとした顔つきでクレアのことを眺めてくるのは、人の咥え顔を見るのが嬉しいからに決まっていた。
    「んっ、んむっ、んずぅ……ずずっ、ちゅぅ…………」
     ペイニスを視覚的に喜ばせ、肉棒にも奉仕している。
     好きでもない、出会ったばかりの相手にだ。
     だというのに、自分の中のメスを疼かせ、やや積極的にしてしまっている。肉棒を丹念に味わって、ゴム越しの射精の際に残った表面の白濁も、口内に取り込んでいた。
    (お礼してる気分……)
     ふと思ってしまうクレアは、自分の気持ちをすぐさま戒めた。
    (何を考えているのよ、私は……あんなにイカされたせいだわ……気持ちよくしてもらったお礼だなんて…………)
    「んむっ、んくっ、あぁ……じゅぅ……」
     喉にぶつかるまで顔を押し出し、カリ首に唇が引っかかるまで後退させる。見え隠れする肉棒には、クレアの唾液がたっぷりとまとわりつき、ねっとりとした水分を吸収している肉棒の皮膚は、ヌラヌラと光沢を放っていた。
    「美味しそうにしゃぶるもんだな」
    「そんなわけ……じゅじゅずっ、ぢゅるん――ずむっ、はじゅぅぅ…………」
    「ははっ、いいもんだ。外してやるから、オッパイ出してパイズリしてくれ」
     ペイニスは手錠の鍵を見せびらかし、すぐにクレアは両手を差し出す。鍵穴にかちりとはめてもらい、拘束から解放されると、次に取るべき行動は、ジャケットの内側でシャツを持ち上げ、ブラジャーもずらして乳房を露出することだった。
    「これも、初めてよ」
     そう言いながら、クレアは胸に肉棒を抱き込んだ。
    「構わん。頼むぞ」
     しごき始めるクレアは、数分かけてコツを掴んで、腰を上下に動かしていた。身体ごと動いての乳房の上下で、膨らみの中に挟んだ逸物に刺激を与える。表面がぬかるんで滑りが良いのは、クレア自身がフェラチオでまぶし続けた唾液のおかげであった。
     噴火のような射精が顎を撃ち、唇から鼻の周りにかけてを濡らす。漂う精液の香りが鼻孔を突き、そしれペイニスはクレアの白濁濡れとなった顔を喜んだ。
    「マンコは十分休めただろう」
    「まさか、もう!? 冗談でしょう?」
    「全裸になれ。嫌なら拘束する」
    「あなたって最高の警察ね」
    「法なんて機能していない。組織もだ。見返りもなく市民を守る気にはならないね」
    「明日じゃ駄目? 今日はその、代わりにもっと奉仕するから」
    「脱げ」
    「本当に疲れてるの」
    「わかった。いいだろう」
     おもむろに立ち上がるペイニスは、顔がクレアの主張を聞き入れていなかった。あくまでも自分の欲望しか考えず、言うことを聞かないのなら乱暴にしてしまえと、ペイニスはクレアの肩を掴んで押し倒した。
    「いや! やめて!」
     暴力を働く男と、それに抗う女の、傍からすれば誰もが性犯罪の現場と認める光景が、そこにはすぐさま出来上がった。
    「脱ぐんだ!」
    「いや! よして! 駄目よ! 他のことするから! 許して!」
     じたばたと手足を暴れさせ、腰もくねらせ必死にもがき、それでもクレアの身体から赤いジャケットが奪われる。シャツが、ブラジャーが、ジーパンが、パンツまでもが力ずくで脱がされていき、全裸は時間の問題だった。
    「じっとしていろ」
     口ぶりだけなら、まるで犯人でも抑え込んだように聞こえる。再び手錠を取り出して、クレアの両手にかけてしまう。テーブルの足に手錠の鎖を通しての、両腕が頭上に封印されてしまったクレアは、またしても挿入を受け入れるしかなくなっていた。
    「もう一度言うが、痛いか、気持ちいいかだ。これでも暴れるなら、殴って暴れる気をなくさせてから挿入する」
    「………………」
     それに対するクレアの答えは、黙って足をM字に開き、どうぞ挿入して下さいとばかりのポーズを取ることだった。
    「いい返事だ」
     ニヤリと、ペイニスは覆い被さる。
     どこか諦めた表情で顔を背けて、亀頭の気配にまた挿れられてしまうのだと感じたクレアは、他にどうしようもなく角度を決める。
     快感に翻弄され、何度もイカされることへの覚悟だ。
    「いくぞ」
     手始めとばかりに、亀頭が入り込む。
     次の瞬間だ。
    
    「ぬぁあッ……! あッ、あぁぁああ――――!」
    
     クレアは絶叫じみた喘ぎを上げ、背中もビクンと弓なりに弾ませていた。
     ピストンが始まった時には、途方もない快感に頭の中まで染め尽くされ、もう喘ぐことしか出来ていない。ものを考える思考も潰れ、全身もビクつかせ、チンポで喜ぶためだけに生きる存在へと返られていた。
    「あッ、ああッ、あああ……! ぬっ、あふぁッ、あぁ……!」
     絶頂の回数など、誰も数えはしていない。
     ただでさえ潰れた思考がさらに弾けて、頭の中から脳さえ消えてしまったような、真っ白になった状態に何度も陥り、その時だけは休憩とばかりに腰振りを止める。快楽も沈んでいき、だから少しは正常な思考を取り戻すが、動き出せば簡単にかき消された。
     クレアは教え込まれていた。
     誰が偉くて、どちらが従うべきなのか。何度も何度も、執拗なまでにイカせて許しを請わせ、ペイニスは自分の顔を見つめさせる。これがお前をイカせた男の顔だと、しっかりと網膜に焼きつけさせ、またさらに腰を振っては絶頂させる。
     ペイニスが肉棒を引き抜く頃には、実に十個以上のコンドームが消費され、精液をたっぷりと溜め込んだ臭気と共に、それらはクレアの周りに散乱していた。
     犯し尽くすに飽き足らず、ペイニスはどこかで拾ったカメラのシャッターを切り落とし、クレアの痴態を収めていく。ありとあらゆるポーズを取らせ、性器のアップも、肛門の接写も行って、フェラチオの咥え顔まで撮影した。
     その後、クレアはペイニスに付き従った。
     署内から脱出するため、通路の道を開く鍵となるメダルを集める。ゾンビが蠢く危険な探索を行いつつも、休憩と称して何度も犯し、毎日のように絶頂していた。
    
    
    


  • ヴィヴィアンと汚いオッサン

    
    
    
    「さて、ヴィヴィアン殿」
    金髪剣士の名を呼ぶのは一人の魔女。
     少年の弟子を従え、三角帽子を被った彼女の名はホルボーンという。
     村の辺境にあるガーディアンストーンが血によって穢れたことをホルボーンは、古戦場遺跡にあるダーククリスタルを手に入れれば、その穢れを払うことができると語った。
     ガーディアンストーンは村に魔物が侵入することを防ぐ守りの石。
     力が失われている限り、村は平和でなくなってしまう。
     これを引き受けたヴィヴィアンが、見事にダーククリスタルを持ち帰り、ホルボーンへと手渡したまでは良かったのだ。
     しかし、油断していたのかもしれない。
     あるいはホルボーンも、ヴィヴィアンの技を始めから警戒して、利用する算段を立てていたのだろう。ヴィヴィアンがホルボーンを味方と思い込み、事態が解決して一安心の、ホっと気を緩む一瞬を逃すつもりなどなかったのか。
     いずれにせよ、ヴィヴィアンはホルボーンに呪縛をかけられた。
    「まさに魔術師を殺めるために編み出されたような技」
     その瞬間、ヴィヴィアンは動けなくなっていた。
     光のリングをいくつも並べ、あたかも人を閉じ込めるほど大きなバネをかけてしまったように、その内側にあるヴィヴィアンの肉体は身じろぎ一つ許されない。
    「素性を隠さなくても結構。お前の正体はわかっている」
     そして、ホルボーンは言うのだ。
    
    「ルーンワーデンよ」
    
    「……くっ」
     ヴィヴィアンは歯噛みするしかない。
    「お前には今まで、いったい何人の魔術師が殺され、あるいは何人の魔術師がお前を殺すのに失敗してきたことか。そんなことは私にはどうでもいいのだ」
     ホルボーンの別に誰かの恨みや無念を晴らそうというわけではない、ただただヴィヴィアンの手で何人が死んだことかと、気まぐれに口にしてみているだけの、それ以上でもそれ以下でもない口ぶりから、決して今まで殺された魔術師が理由ではないとわかった。
     だが、ホルボーンはさらなる魔術をかけてきた。
    
    「あぁっ! くっ!」
    
     ヴィヴィアンの悲鳴。
     それは呪縛だった。
    「……ふん」
     もう拘束している必要がなくなってか、束縛の光はすぅっと消え去り、やっと動けるようになったヴィヴィアンの身体は、真っ先に膝をついていた。
     呪いをかけたのだ。
     もしもホルボーンに逆らおうとすれば、一瞬にしてヴィヴィアンの命を奪う。断るという選択肢を初めから剥奪して、いかなる要求も飲み込ませ、従わせるにはこれ以上向いている術はないはずだった。
     当然のように取引を持ちかけられた。
     探して欲しいものがある。それを持ち帰れば呪いを解き、今後一切ヴィヴィアンには関わらない。元の生活に戻れることを約束する。報酬さえ出すという。
     その上で問われれば、受け入れるしかない。
    「どうだ? 取引するか」
     圧倒的に優位な立場から降りかかるホルボーンの言葉。
    「私に選択肢はなさそうだな。お前の言う通りにしよう」
     そんな答えを出すしかなかった。
     そうに決まっていた。
     生殺与奪を握られてはどうにもならない。おまけにアカデミーから懸賞金がかけられていること、生死は問わないことまで持ち出されては、ただでさえ弱い立場でえ、余計に反抗できなくなる。
    「さすがは傭兵。ものわかりがいい」
     ホルボーンの表情はおぞましかった。
     一言、邪悪。
     己の計略通りにことが運んで、優位な立場で言うことを聞かせ、それが嬉しくてたまらない。これ以上ないほどに黒い笑みが、ホルボーンの頬を歪めていた。
    「だが、その前に。少々教育しておきたいな。何、悪いようにはしない。自分の立場は十分にわかっているだろうが、より一層のことわかってもらうため、少しばかり仕事をしてもらう」
    「何をさせるつもりだ?」
    「男の相手だ」
    「……なッ!?」
     ヴィヴィアンは驚愕と共に顔を上げ、その黒く歪んだ笑顔を見た。優位に立って人を従わせることに、味を占めでもしたわけか。どういうわけか。ますます頬は吊り上がり、邪悪極まりなくなっていた。
    「もちろん、相手となる男にお前の素性は言わん。秘密は守る。だが、呪縛で言うことを聞かせていること、教育しておきたいことだけは伝えることになるだろうな」
    「…………」
     ヴィヴィアン自身にはどうにもならない、変えようのない運命が、ホルボーンの手で決められていく。
     冗談ではなかった。
     男の相手が仕事など、娼婦の真似事など真っ平だ。
     たった今にでも、ヴィヴィアンは辱めを受けた気持ちに顔を歪めて、ぎゅっと拳を握り締める。
    「心配するな。一回きりだ」
    「……ああ、そうしてくれ」
     一回。
     それがせめてもの救いか。
    「結構上手いそうだ。せいぜい楽しむといい」
    「…………」
     楽しめるものか。
     ヴィヴィアンは内心で歯噛みして、目の前の魔女を斬り伏せてしまえればと思いを抱くが、出来ないものは出来ないのだ。
     言う通りにするしかない。
     マシな男であることを、願っておくしかなかった。
    
         †
    
     ベッドの部屋で、相手を待ち――。
     
     客となる男は醜かった。
    「なッ!?」
     ゾっとして驚くほど醜悪な、浅黒い肌の肥満の男は、正直に言って魔物の亜人種と見間違える風貌である。
     骨格の作りを疑うほどの垂れ目はいやらしく、ヴィヴィアンの肉体をいかにもそういう気持ちで眺めている。乳房や下腹部に視線を寄越されているだけで、ねっとりとした気色の悪い液体でも塗りつけられている心地がする。
     鼻が異常に反り返り、ブタでしかない。
     唇が分厚く、脂っこい光沢で汚く見える。
     吹き出物でいっぱいの肌は、まんべんなく凹凸にまみれている。
    「はぁっ、はあっ、び、美人だね? 綺麗だね? ヴィヴィアンたんっていうんだっけ? 可愛いね?」
     気持ちの悪さは見た目だけでは済みそうにない。
     明らかに興奮しきった犬のような呼吸に、下劣な妄想がありありと窺える目つきに態度。ここまで気色悪い男を見て、生理的に拒否反応を起こさずにいられる女が、果たしてこの世にいるのだろうか。
    
     ――これの相手をするだと?
    
     運命が忌まわしかった。
    「そ、それにしても、え、え、エッチな格好だよねぇ?」
    「…………」
    「む、むむむ胸はほぼ下着だしっ、ず、ズボンも内股を切り取ってパンツ丸出しで、これじゃあ痴女と言われても仕方がないよねぇ?」
     緊張なのか、声を震わせ、どもらせる。
     女とまともに喋れないのか、人との交流自体が苦手なのか。お喋りに不慣れで、接し方も不器用なのがひしひし伝わり、そして卑猥なトークでヴィヴィアンに接しようとしてきている。
     ホルボーンを信じるなら、この男はヴィヴィアンの秘密を知らない。
     従わなければいけない立場と、これが反抗しようと思う気持ちを良くしするため、つまりは自分の状況について思い知らせるための行為であることだけを、この男は知っているはず。
    「き、き、キスしよっか」
     どこか恐れつつありながら、どんな要求でもできるはずの立場の男は、本当にヴィヴィアンと性交できるのか、何でも言うことを聞かせても構わないのか、緊張混じりに迫って来る。
    「…………」
     ヴィヴィアンは思わず顔を背けていた。
     ただでさえ汚い唇から、覗けて見えた歯が黄ばんでいた。口の臭そうな男とキスなど、嫌悪感しか湧きはしない。
    「あ、あああ、あれ? いいんだよねぇ? あ、あのっ、何でも言うことを聞くんだよね?」
     男はビビっていた。
     自分は何かを間違えたのか、聞いていた話と違いはしないか。
     このままヴィヴィアンが牙を剥き、威圧的な態度で迫れば、こいつは必ず萎縮する。強い目つきで睨みつけ、チンピラのように恫喝すれば、たちまちヴィヴィアンには刃向かえなくなるだろう。
     しかし、それもまずい。
     心臓に直接かかった呪縛を思えば、キスを拒んだせいで殺されないとも限らない。
    「……ふん。すればいい」
     嫌だ。したくない。
     だが、しなければ……。
    「うひっ、うひひひひひひひ!」
     その瞬間、急に人格を入れ替えて、中身が別人になったのかと思うほど、男の表情は豹変していた。
    「そっかぁ! 本当なんだね! 何してもいいんだね! 何でも言うことを聞くんだね!」
    「…………っ!?」
     それはおぞましい欲望の表れだった。
    「ほらほら、こっちを向いて? ほらほらほらほら!」
     男はヴィヴィアンの顎に触れ、背けた顔を自分に向かせ、迷いなく遠慮なく、先ほどまでの縮まった態度からは想像できないほど大胆に、醜い唇を近づけていた。
    「――んっ!?」
     ヴィヴィアンは本気で顔を顰めた。
    
     醜男に唇を奪われ、貪られ、おぞましさに本気で震えた。
    
     ねばっこい粘液をまとった唇に、ヴィヴィアンの唇が喰われている。不快な柔らかさが押しつけられ、ベタベタとした唾液に汚れ、舌が口内への侵入を試みる。
     きつすぎる異臭が口腔を侵食した。
     嫌に濃厚な味のする醜男の舌が、ヴィヴィアンの唇をベロベロと、前歯をねっとりと舐め込んで、奥へ向かって絡みつかせる。
     肩に両手が置かれていた。
     こんなキスの距離に迫られ、ヴィヴィアンの乳房に醜男の胸が押しつけられている。脂肪によって膨らみ、たるみ、おっぱいの出来損ないでしかない脂肪袋が、毛穴から脂分を噴き出しながら、乳房と密着しているのだ。
     丸く膨らみ大きな腹も、ヴィヴィアンの腹に当たっている。
     全身の細胞が蝕まれ、みるみるうちに腐食が広がってくるような、自分の身体がやがて腐敗物に変わっていきそうな悪寒に晒され、背中全体に寒気が走る。
    (い、嫌だ……! 無理だ……!)
     つい、押しのけようとする手を醜男に当てていた。
     本当なら、思いっきり押しのけて、突き飛ばし、直ちに剣さえ抜くところだ。
     ホルボーンの呪縛が、そんなヴィヴィアンの反射的な行動に歯止めをかけ、だから本当に突き飛ばすことはできずにいた。
    「へへへえっ、初めてキスしちゃった」
     とっくに四十代は超えているだろうに、ファーストキスであることを告白しながら、醜男は乳房を揉んだ。
    (本当に……こんなのに体を許しているのか……私は…………)
     醜男の五指が押し込まれ、乳房が潰れる。力を抜けば、ヴィヴィアンの乳房は弾力によって弾き返す。それが面白くてか、醜男は楽しい遊びを見つけたように揉み潰し、力を抜き、指が押し返されてしまうほどの弾性を堪能していた。
     しだいに腰をまさぐって、腹筋を撫で回す。
     ベッドへと押し倒し、飽きずに胸を揉みしだき、アソコにも手を伸ばして布越しの愛撫を始めた。
    「うっ……くっ…………」
     ヴィヴィアンにとって、それは汚物を塗りたくられているような、身体が不潔な異臭にまぶされていく汚辱感でいっぱいだった。不快や嫌悪の心から、顔中の表面が汗ばんでいき、歪んだ顔や目つきで耐え忍ぶ。
    「うへっ、えひひひっ、ふひぃぃぃぃ……!」
     ブラジャーでしかない胸の衣類をずり上げて、片手で乳首をつまんで転がしながら、もう片方の乳には吸いついた。
    「ううっ! うぅ……!」
     完全に、汚いものが付着してきた引き攣った反応だった。
     世にもおぞましい顔立ちの男が、自分の乳房をしゃぶっている。ベロベロと唾液を塗りつけ、甘噛みで刺激してくる。
    「ねぇ、ねえねえヴィヴィアンたんは、こういう経験あるのぉ?」
    「……初めてだ」
    「そっかぁ! 僕がヴィヴィアンたんの初めて貰えるんだぁ!」
     これほど醜い中年に、子供のような無邪気な喜び方は似合わない。鼓膜に粘液が張ってくるような、嫌にねっとりとした声質は、怖気が走るものでしかなかった。
    「ヴィヴィアンたんのオマンコはいけーん!」
     醜男はヴィヴィアンのショーツをずらし、未経験の性器のワレメが曝け出された。
    「あ、あまり見るな……」
     じっくりと凝視しようと顔が近づき、至近距離で視線を浴びて、さすがの羞恥に顔が赤らむ。
    「だめだめ、見てあげるんだから」
     醜男は親指で性器を開き、桃色の肉ヒダさえもあらわにされ、より大きな羞恥と屈辱にヴィヴィアンは苛まれる。
    「へえ? これが処女穴かぁ!」
     おもむろに指を突っ込み、やけに女を知った指使いでピストンの刺激を行う。中指一本の出入りが膣壁をうねらせて、おぞましいばかりのはずの醜男の手で、少しずつ快感が芽生えていく。
    「ぬっ、くぅ……!」
     身じろぎしながら喘ぐヴィヴィアンは、ホルボーンにかけられた魔術とその効力を思い出す。
    
    『感じやすくしておいてやる』
    
     さも恩でも売るように、ホルボーンは言ったのだ。
     この部屋で男を待つよう言われ、相手の到着まで待機する時、思いついたように事前に魔術をかけ始め、ホルボーンの魔力はヴィヴィアンの肉体に浸透した。
    
    『初めてが苦痛とあっては可哀想だからな。男の方にも術をかけ、技量を与えておいてやる』
    
     つまりヴィヴィアンには感度上昇の魔術が、醜男の方には性技上昇の魔術がかけられ、中年童貞には似つかわしくない、およそありえないはずのテクニックを醜男は発揮している。
    「気持ちよさそうだぁぁ……! ヴィヴィアンたんは僕の指で感じてくれてるんだねぇ?」
    「だ、誰が……!」
    「だってほら、こんなにヌルヌルで、反応もしちゃってるんだもん」
     中指のピストンが早まった、
    「――ぬっ、うっ、んっ、うんっ、んんっ、んっ、ぬっ」
     耐えんばかりに、ヴィヴィアンたんは唇を丸め込み、いかにも我慢している表情で醜男を睨み返した。
    「気持ちいい? 気持ちいいよねぇ?」
    「――うっ、ううっ、んっ、んっ」
     違う。魔術のせいだ。
     ホルボーンの力さえなければ、何も感じなどするものか。
    「気持ちよさそうだねぇ?」
    「ちっ、ちが――」
     アソコの快感を堪えきれない。
     歯を食い縛り、ぐっと顎に力を入れ、どうにか喘ぎ声を抑え込んでいるヴィヴィアンは、それでも髪を左右に振り乱す。腕でよがってベッドシーツ鷲掴みに、悩ましげな色を目に浮かべる。
     気持ち良くなっているのは、どこのどんな人間から見ても、隠しようがないだろう。
    
     ニタァァァァァ……!
    
     と、醜男はいい気になっていた。
     自分がヴィヴィアンを気持ち良くしているのだと、心の底から勝ち誇った笑みで頬と唇を歪めていた。
    
    「挿入しよっか。ねえ、ヴィヴィアンたんも欲しいでしょう? おちんちん」
    「ほ、欲しいものか……そんなもの……」
    「僕さ、生まれて初めてセックスするけど、ヴィヴィアンたんみたいな美人が初めてで嬉しいよ。気持ち良くしてあげるからね」
     まるで話など聞いていない。
     自分のことしか頭にない醜男は、おもむろに下着を脱ぎ捨て、とっくの昔から勃起している逸物の蒸れを解き放つ。
     パンツに閉じ込められていた熱気がむわりと漂い、アソコを包んで来る心地は、質感の異なる奇妙な大気に撫でられているようなものだった。
    「さあ、ヴィヴィアンたん」
     切っ先が、ワレメに触れる。
     この瞬間、ヴィヴィアンは腹を括った。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――。
    
     ついに肉棒が侵入してきた。
    「ぬっ、ぐぅぅぅ――!」
     太い剛直の感触が押し込まれ、切っ先がヴィヴィアンの体内へと突き進む。根元までがぴったりと収まって、醜男はますます微笑み、その表情に黒い歪みを増していた。
     笑顔の邪悪さだけで人間をやめようとしているほど、おぞましく不快な顔つきだった。
    「どう? ヴィヴィアンたんの中に僕のおちんちんが入ったよ」
    「……ふん。大したことはない」
     本当は最悪だった。
     女として、これ以上の災厄があるのだろうか。
    「僕は嬉しいよぉ? ヴィヴィアンたんのオマンコぉぉ……!」
     下劣極まりなく歪む唇から、舌なめずりをする猛獣のようにヨダレを垂らす。ぽたりぽたりと、それは乳房の上に垂れてきて、ぬかるみを帯びた液体の不快な感触に身じろぎした。
    「ひひひっ、ひひひぇ……!」
     不気味ですらある笑い声を上げながら、醜男は両手で胸を揉みしだく。
     そのまま、動き始めた。
    「――っ! んっ、ん! ん! んっ、んっぐっ、ぬっ、ふぐっ、ん、んがっ、あっ、ん! ん! ん!」
     苦しそうな声で身じろぎして、首でよがって金髪を振り広げる。
     決して、苦しいのではなかった。
     快感だった。
    「やっ、あ! あ! ん! ん! ん! んっ、んあ!」
     そして、屈辱だった。
     ホルボーンの術さえなければ、きっと感じるはずはない。ヴィヴィアンが喘いでいるのも、醜男自身の技量とは関係がない。そうであっても、その指で、その肉棒でヴィヴィアンが感じる以上、醜男は極上の気分に浸るのだ。
    「どう? どう?」
     大いに楽しむ醜男は、ヴィヴィアンの手首を押さえつけ、体重任せに抵抗を封じていた。
    「んっ、あ! くっ、こんな――どうとも――!」
     乳房が上下に揺れていた。
     裸のまま小さくジャンプを繰り返しているように、ピストンの衝撃が胸まで伝わり、ブルブルと大胆に弾んでいる。弾力と張りの強さで、すぐさま元の形に戻ろうとするものが、絶え間なく与えられる衝撃で延々と揺らされ続けた。
    「んっ、んっぐっ、ぬっ、ふぐっ!」
     頭が痺れ、快感に染まっていく。
     両足もよがり、ピストンで足首が反り返る。
    
     やがてヴィヴィアンは絶頂した。
    
     手首も、足首も、全身にかけての筋肉がブルりと震え、肉棒の出入りしていたアソコで何かが弾けた。そんな見えない破裂の感覚と共に、ヴィヴィアンは頭を真っ白にして放心した。
    「はぁ……はぁ………………」
     疲弊しきった息づかいで、それから少しずつ意識を取り返す。
    「イったね? ヴィヴィアンたん」
    「ふん」
    「もっとしたいね? 四つん這いになろうか」
    「したいには、お前の方だろう……」
     そう言いながらも、ヴィヴィアンは仰向けから背中を返し、ベッドシーツに両手を突き、言われるままのポーズを取ってしまう。
    
     ――ホルボーンめ……。
    
     調子づく醜男に対しても、恨めしい気持ちでありながら、敏感になった尻が醸し出すメスの香りは明らかに男を誘っている。散々に喘いだ証拠の蜜が、内股まで濡らしている。
    「エッチなお尻だねぇ? プリプリのむっちりだ」
     醜男の手が、尻たぶに乗せられた。
     可愛がる手つきですりすりと、味わうようにじっくりと、醜男は尻を撫で回す。
    「す、するなら早くしろっ」
     こんな時間、一秒でも早く過ぎ去って欲しい。
     いや、気持ち良くなりたい。
    
     くっ、魔術のせいだ。
    
     あれだけの快楽が生まれたセックスに、体の方が来たいをしている。挿入を待ち侘びて、尻の方では肉棒を今か今かと待っている。いつでも入って来て欲しいと、アソコの穴がヒクついている。
    「うひひっ、シてあげるね」
     醜男はヴィヴィアンの腰を両手に捕らえ、宛がった肉棒を一気に突き込み、すぐにでもピストンを開始した。
    
     ぱんっ、ぱっ、ぱん! ぱん! ぱつっ、ぱつん!
    
     尻から良い打音が鳴り渡り、たっぷりと愛液をまとった肉棒が、ピストンによって見え隠れを繰り返す。
     乳が揺れていた。
     姿勢によって、真下に向かって垂れ下がった豊満な乳房が、今度はバックからの勢いで前後に揺られて動いている。
    「あっ! ん! ん! なっ、んあ! あっ、ああっ!」
     何とか歯を食い縛っているヴィヴィアンが、それでも甘い声を漏らして鳴いていた。首が反り返り、突いた両手の肘が折れ、頭がベッドシーツに埋もれていく。
    「うひっ! ぶひひひっ! 気持ちいいなぁ! あ、アナルがヒクヒク動いてるよ? 可愛いねぇ? 可愛いねぇ?」
     醜男は大喜びで腰を振り、肛門に指を押し当てグニグニと揉んでいじくる。
     さらに――。
    
     ぺちん!
    
     尻を叩いた。
     肛門をほじくりつつ、もう片方の手でペチペチと、ニヤニヤと尻を叩いて虐め始めた。
    
     ぺちん! ぺちっ、ぺち! ぺん! ぺっ、ぺちっ、ぺちん!
    
     片側ばかりだけでなく、肛門弄りを一度やめ、もう片方の尻たぶでもペチペチと叩いて遊ぶ。
    「ヴィヴィアンたんで遊ぶのは楽しいなぁ!」
    「あっ、遊ぶって――あっ、あ! あん! あっ、くっ、んぁ――」
     完全に玩具として扱われていた。
     喘ぐ穴として思うようにピストンして、尻まで叩いて楽しむなど、まるでこんな程度の低い男に支配されてしまっているような、泣けてくる思いにヴィヴィアンは歯噛みする。
    「あっ、あ! あ! あん! あぁっ、あ! あぅっ、んん! あっ、んああ! んあ! んあ! あっ、あぐっ!」
     こんな男のために乱れている。
     途方もない快感が、頭が真っ白にしようと押し寄せる。ほんの少しでも油断をすれば、今にも何も考えられず、自分がただひたすらに喘ぐだけの存在になり果てそうな、どうしようもない気持ち良さに飲み込まれ、抗うことなどできなかった。
     確かに屈辱だった。
     中身にかけても最低な男に、ここまでいいように喘がされ、しかもホルボーンの術のおかげということなど忘れている。自分の力でヴィヴィアンをここまで乱していると思い込み、抗おうにも快楽のあまりに何もできない。
     もしも剣を握って醜男を殺そうと思っても、こうして挿入されたまま、ピストンされながらの状況では、ヴィヴィアンはまともに振り回すことさえできないだろう。
     いつしか、頭は真っ白になっていた。
     理性を保つことが出来なかった。
    「あぁぁあ! あ! ああ!」
    「まだいけるね? まだまだいけるね?」
    「い、いけるっ! まだ――いっ、いくらでも! おぉぉ!」
     いつの間にか体位が変わり、騎乗位となってヴィヴィアンが自ら快楽を貪っていた。
     乳が上下に暴れ回って、醜男は仰向けのまま景色を楽しむ。
     尻が、胸が、顔が、いたるところが精液に濡れていた。いつどの時に射精され、かけられたのか、ヴィヴィアンにはわかっていない。醜男がこうもたくさんの精液を出したこと自体、心が快楽に囚われるあまり、気づいていない。
     完全に堕ちていた。
     感度上昇の魔力に、そして醜男の技量上昇の術に、何らの抵抗もできないままに、ヴィヴィアンは喘ぎ続けた。セックスが気持ちいいことしか頭になく、体位を変えろと言われれば、その言葉を辛うじて理解できる意外、夢中で夢中で周りの何にも気づかない。
     一日中、セックスをした。
     セックスに疲れ、同じベッドで眠りにつくまで、二人のまぐわいは飽きることなく続いていた。
    
     それから……。
    
     …………
     ……
    
     ――昨日の私は、私でなくなっていた。
    
     自分がいかに喘ぎ散らして、無様に絶頂を晒していたか。醜男なぞに散々に遊び尽くされ、気づけば彼の腕に抱かれたまま、眠りにまでついていたのか。
     快楽に堕ちた自分を思い出し、翌朝のヴィヴィアンは頭を抱えていた。
     途方もない快感を与えられ、甚振られれば、自分はあのようにされてしまう。夜中に眠り、朝に目覚めるまでの時間を置いたから、あのセックスに夢中でならない自分自身を振り返り、どれだけ乱れた姿をさらしていたかに気づいていた。
     そしてまた、ああなるかもしれない。
     しばらくすれば醜男も起きて、朝から再びセックスを始めたからだ。
    「昨日みたいに楽しもうねぇ?」
     醜男はぬっぷりと肉棒を差し込んで、正常位のままにヴィヴィアンの顔を見下ろし、悦に浸って腰を振る。
     緩やかなものだった。
     いつでも好きに乱れさせてやれることの愉悦を知り、実に余裕を身って人を見下す。そんな醜男の肉棒が、ぬるりと下がって抜けていき、ピストンにおって一気に奥まで貫いてくる。
    「――あっ」
     と、その時は軽く声が出てしまう。
     しかし、貫いた後は一度止まって、ゆっくりと息を落ち着け、何秒かの時間を待ってから、再び後退を始めている。
    「元気なものだな。あれだけの量を出しただろうに」
     悔しいが、気持ち良かった。
     無理のないペースでゆっくりと、緩やかに動く刺激も、喘ぎ疲れることなく静かに感じていられるらしかった。
    「ぶっひひひひひひっ、ずっと童貞だったからかな? 初めてあんなに気持ち良くなれたおかげで、僕のおちんちんはとっても活発になっているんだ。ヴィヴィアンたんのおかげだよ」
     いい気な顔で胸を揉み、軽やかに五指を押し込む。
    「そんなことを褒められても困るだけだな」
     醜男から顔を背けて、壁でも眺めて黙していると、耳の穴に舌を押し込み舐めてくる。唾液のぬかるみが広げられ、濡れてしまった皮膚が空気にふれてひんやりする。
    「んっ、んぅ……! んっ、あっ、あ……あ……あぁ……」
     じっと、静かに喘いでいた。
     緩やかな出入りによって、肉棒の熱気にアソコが溶け堕ちていくような快感の、肉体を蝕む甘ったるさに身を委ねていた。
    
     ――くそっ、こんな奴とのセックスに浸るとは……。
    
     いいようにされ、まんまと気持ち良くされていることの屈辱を、心のどこかで思い出し、思い出したように顔を顰めていきながら、頬を強ばらせていきながら、それでもヴィヴィアンは浸っていた。
     その時だった。
    
    「いい姿になったな。ルーンワーデン」
    「ホルボーン……!」
     
     ヴィヴィアンをこんな目に遭わせた元凶が、無遠慮にドアを開いて踏み込んで、人の犯される有様を高みの見物とばかりに眺めていた。
    「これで余計な企みをする気持ちもなくなるだろう」
    「……はじめから選択肢などないだろう」
    「そうだがな。心まで従属させるには、こういう手は効くだろう」
    「ふん。どうだろうな――んぅぅ……あっ、ぬぁ……!」
     乳首を指で攻め抜かれ、甘い痺れが弾けて広がる。脳に電流が走ったように、頭が快感に囚われて、自分がまた昨日のように堕ちる想像がよぎって唇を噛み締める。
    「いい眺めだ。そうだな、体位を変えてくれないか? 結合部をよく見せてもらいたい」
     ホルボーンが醜男に言った。
    「だってさぁ、ヴィヴィアンたん。ちょっと変わろうか。うん、背面座位がいいよねぇ?」
     体位を変えるため、醜男は一旦引き抜く。
    「あ……」
     そうして抜かれてしまった肉棒が、アソコの穴に洞窟のような空洞を残したようで、急に膣内が寂しくなる。
    「ぐっ」
     肉棒と離れることが寂しいなど、そんな気持ちにさせられての、自分を戒めたい思いにヴィヴィアンはかられていた。
    「よいしょっと」
     醜男はベッドの横から足を下ろして、ベンチ代わりのように座ってから、ヴィヴィアンには肉棒の上に座るようにと言ってくる。
    「…………」
     ヴィヴィアンはベッドを降り、そして腰をくの字に折り曲げながら、股元にある肉棒を自らの入り口に導く。膣口が亀頭を捕らえ、あとは座れば根元まで埋まってくる。
     急に感じた膣内の寂しさが埋められる。
    「うっ、ぐぅ……んぅ……んぅぅぅ…………」
     ヴィヴィアンは座り込み、背面座位で繋がった。
     脂肪によってたるんだ腹と、垂れ落ちた胸の感触が、ヴィヴィアンの背中に密着する。醜男がヴィヴィアンの足を持ち上げて、M字の形が作られれば、それはもう見せびらかすための結合となっていた。
     大きくM字に広がった足の、その中央で、穴に肉棒が刺さっているのがよく見える。
    「はしたないな。汁を垂らして、気持ちよさそうな顔までして、その男がそんなにいいか」
    「……冗談を言うな」
    「なら一つ賭けをするか」
     何かの悪巧みでも思いついたかのように、ホルボーンは嫌みたらしく唇を歪めて微笑む。
     目が、完全に人を見下していた。
    「賭けだと?」
    「十分でいい。絶頂を堪えてみろ。我慢できれば呪縛を解く」
    「ほう? ありがたいな」
     二人が、対峙していた。
     まるで決闘が始まる直前のような、命のやりとりを前にした緊張感にも近い空気は、荒野か草原あたりで向かい合っていたのなら、きっと絵になっただろう。
     しかし、結合しているのだ。M字開脚なのだ。
     逆らえない立場だからそうしているだけとはいえ、ヴィヴィアンの左右に開ききった脚から、肉棒を深く咥えたワレメが見えている。二人の会話が終わるまでの退屈しのぎか、醜男は手慰みに乳を揉み、耳の裏側にべったりと唾液を塗って遊んでいる。
     丸々とした豊満な乳房の、皮膚の表面をじっくりと優しく撫でる手つきが両胸ともに這い回り、乳首や乳輪をくすぐりもしている。その刺激に少なからず身じろぎして、熱い吐息を漏らしている。
     埋まったまま、まだピストンの始まらない肉棒に意識がいき、快感を待ち侘びる肉体がついつい動く。少しだけ、ほんの一センチか二センチだけ腰が浮き、それを落として、まだセックスが始まらない寂しさと待ち遠しさを、本当の本当に小刻みでさりげない上下運動で誤魔化している。
     とても対等には見えない、だからホルボーンも優位の立場から見下ろしている、そんな対峙であった。
    「イった場合は、そいつに奉仕しろ。フェラやパイズリをたっぷりとしてやるんだ。どうせ何度も交わって、全身に精液を浴びた身だ。負けたところで、今更気にするような条件でもあるまい」
    「そ、そうだな……んっ……。ホルボーン。あっ……ふっ……お、お前が約束を守るようなら……あっ、あぅ…………ふはぁ……。面倒な捜し物をすることもなく、この場で解放されるというわけだ――あっ、んっ、ん……ん……んぅ」
     喘ぎ声というほどでもない、しかし確かに快感から漏れている声が、他でもないヴィヴィアン自身の、たった数センチの尻のはずみを数秒おきに小刻みに行っていることでの甘い声が出ているのだ。
    「そう上手くいくかな」
    「……耐えてやる。約束は守ってもらうぞ」
    「いいだろう。やれ」
     ホルボーンが命じた途端だ。
    
    「んんんん! ん! あ! あ! あ! あぁああ! あっ、くあああああ! あぁっ、んっ、んんんんん!」
     
     醜男はせっせと腰を動かして、それだけでヴィヴィアンの乱れようはここまで変わった。
    「どうした? 耐え抜くんじゃなかったのか?」
     ホルボーンが嘲っている。
    「ぬっ、ぬぁっ、ぐぅぅぅぅ! くっ、あ! あ! あ! あ!」
     ヴィヴィアンは懸命に堪えていた。
     全身全霊をかけて食い縛る歯が、それでも大きく開くほど、醜男は活発に突き上げている。ヴィヴィアン自身も腰を浮かせて、耐えたいはずが無意識のうちに弾んでいる。
     乳房が上下に暴れていた。
     背中が大きく反り返るほど、ヴィヴィアンは自分の背中を醜男の肉体に押しつけて、これ以上は上がりようもない密着度合いを、なおも上げようとしてしまっていた。
    「ぬぁああ! あ! あん! あん!」
     反りきった首は、醜男の肩を枕代わりにしてしまっている。
    「あ! あん! あん! んんん! んぁあ! あっ、あん!」
     ヴィヴィアンが喘ぐ分だけ、醜男は我が物顔になっていた。こいつを感じさせているのは俺だ。俺のチンポこそが、ヴィヴィアンを淫らな女にしているのだ。醜男はそんな風にいい気になって、ヴィヴィアンを自分のもののように扱っていた。
    
    「んっ! ぐぅ――――――――――――――――――――――――!」
    
     叫びが、喘ぎが、声になっていなかった。
     肺が空になるまで酸素を絞りきり、もう声が出せない喉から、なおも何かを叫ぼうと大口を開いたヴィヴィアンは、腰を痙攣させていた。脚の筋肉も震わせていた。
     手首が、足首が、反り返っていた。
     頭の中では稲妻が弾け、全ての思考や感情が消し飛んで、文字通りの真っ白となっていた。
    「イったようだな。ルーンワーデン」
    「………………」
     ヴィヴィアンの敗北だった。
     これでホルボーンは呪縛を解かない。それどころか、ホルボーンのさらなる要求で、ヴィヴィアンはこれからフェラやパイズリまでしなくてはならないのだ。
    
         †
     
     ヴィヴィアンは無念の奥底に沈んでいた。
     目の前には肉棒。
     木の床に膝を置き、ベッドを椅子代わりに座した醜男の前で、イってしまった自分の情けなさにヴィヴィアンは俯いている。じっと床ばかりを見つめながら、やがて顔を上げ、肉棒へと手を伸ばした。
    「さあ、見せてみろ。お前の奉仕する姿を」
     そんなホルボーンの声が背中にかかる。
    「……わかっている」
     眼前の肉塊は太かった。
     こんなにも大きく膨らみ、皮に血管を張り巡らせた剛直が、今まで自分の膣内に入っていたのか。たどたどしく指で触れ、さらに根元を握ってみれば、火傷しそうな熱気が肌に染み込み、セックスの心地や激しい絶頂の快感を全身が思い出す。
    「うっひひひっ、ぶひひひっ、こんな美人が僕のになるなんて」
    「誰がお前のだ」
     所有物になるつもりはない。
     ……ないのだ。
     しかし、あの快感。あの絶頂。頭の中身が弾け飛び、何も考えることも出来ずに、ただ喘ぐだけの存在と化す瞬間。この一連のセックスで、自分は挿入には勝てないことを教え込まれて、それをすっかり全身が覚えてしまっていた。
    「お前はそいつのものだ。少なくとも今はな」
     ホルボーンはそう言った。
    「おねがぁぁぁい! 優しくしてね? ペロペロしてね?」
     聞くだけで鼓膜に何か付着した気になる気色悪い声質と、見たくもない醜い笑顔に、誰がお前など喜ばせるかと、心の中には反意が湧く。睨み上げ、自分はお前のものではないと、反抗心をアピールするが、それがどこまでもポーズでしかないことをヴィヴィアンは自覚していた。
    「ちゅむ」
     先っぽを咥えた。
     その瞬間に、逞しいオスの香りと精液の匂いが口に広がり、喉を通って鼻孔さえ通り抜け、頭をぴりっと痺れさせていた。自分はこのチンポに属しているのだという意識が広がり、もう心の大半が醜男によって蝕まれていた。
     本当にギリギリの、精神のわずかな領域だけが、無念や屈辱を根強く感じ取り、自分がチンポに従属していることへの悔しさや悩ましさにかられていた。
    「はずっ、じゅぅ……」
     ヴィヴィアンの頭が前後に動く」
    「ずっ、ずりゅっ、りゅちゅぅ……じゅっ、ずむぅ……」
     こんなものに、チンポなんかに尽くさなければならないのか。その心境がヴィヴィアンの胸を締め上げ、それでいて活発にヨダレを使う。淫らな音を立てながら、自分が仕えるチンポに懸命に奉仕していた。
    「ヴィヴィアンたんは本当におちんちんが大好きになったねぇ?」
     違う、そんなわけがあるか。
     醜男を睨み上げ、鋭い視線で頬張った。
    「くちゅ……ちゅく……ちゅっ、むちゅ…………」
     咥えていると、口内の領域を大幅に占領してくる太さに、挿入最中はこんなにも硬く立派なものが出入りしていたのかと、関心というか感慨というか、そんな気持ちを抱いていた。
    「じゅずっ、じゅむっ、じゅぷぅ……」
     この奉仕自体が、自分はチンポに屈服し、こうして仕える身となっていることの証明のようだ。
     チンポには逆らえない。チンポに負けている。
     それを教え、自覚するためのフェラチオ。
    「じゅっっ、ぽっっ……んちゅ……ずっ……ぱぁ…………」
     屈服したままでいられるものか。
     このままチンポの従者になどなりはしない。
    「えっへへへぇぇ、そろそろパイズリしてねぇ?」
     醜男は楽しげに命じてきた。
     冗談じゃない。
     そんな命令……。
    「私は別に……屈してなどいないからな……」
     ヴィヴィアンは自分に言い聞かせた。
     ホルボーンの呪縛に逆らえないだけだ。命を握られているからだ。でなければ、そもそもこんな醜男には、指一本とて触らせはしていない。そんな思いで釘を刺し、ヴィヴィアンは身体を近づける。
     乳房のあいだに肉棒を挟み、しごき始めた。
    「こんなことを……」
     パイズリなど経験のないヴィヴィアンは、コツもわからず、ただただ両手で乳圧をかけている。風船のような弾力で圧迫を与え、上下にしごきもしてみていた。
     乳房を両手で閉じ合わせての、ぴったりと隙間のない合わせ目に、醜男の肉棒は埋まっている。
    「んっ、くっ」
     谷間に亀頭が見え隠れする。
     乳房だけを手で上下に、不慣れながらもどうにかしごくヴィヴィアンは、しだいに身体ごと動いていた。無意識のうちにコツに気づいて、知らず知らずのうちに床から尻を浮かせていた。
    「どうなんだ。気持ちいいのか」
    「もちろんだよ? ヴィヴィアンたん」
    「……ふん」
     駄目だ、なっていないなど言われても嫌だったが、こんな男が悦んでいると思うと、やはり癪だ。
     しかし、疼きもする。
     自分を散々に喘がせた肉棒に、今度はこちらが至福の快楽を与えているのかと思うだけで、女としての愉悦がわく。ここまで刺激を与えて、興奮させてやったからには、もっと挿入してもらえるに違いない期待が湧いてしまう。
    
     ――何を考えている。
     ――快楽にハマっては……。
    
     と、自戒しつつも。
    「口も使ってね」
     ヴィヴィアンは自らの胸元に顔を落として、パイズリどころかパイフェラさえも行って、ペロペロと舌を動かし亀頭を舐めた。
    「んっ、ちゅっ、ちゅるっ、ちゅむっ、むっ、むっ」
     谷間から飛び出る亀頭を咥え、飲み込んで、乳房の上下に合わせて頭も動かす。
    「ちゅっ」
     と、先端にキスをしている状態から、乳房と共に顔を下げ、口内に亀頭を導く。
    「んっ、んむっ、むっ、むぬ、ぬっ、んむっ、むっ」
     口内では舌を大いに踊らせながら、まるで乳房を使って肉棒にマッサージを施すように、ぐにぐにと、むにむにと、乳圧の強弱をかけてしごいている。
     こうした繰り返しであった。
     ペロペロと舐め続け、亀頭を口に出し入れさせ、咥え込んだままに刺激を与え、それを醜男が満足しきるその瞬間まで繰り返す。
    「ふひっ、ぶひひっ、ザーメン顔に浴びたら、またおちんちん挿入してあげるからねぇ? 可愛がってあげるからねぇ?」
    「そんな必要は……」
     そう言いかけ、睨み上げ、なのにアソコはきゅっと引き締まる。
     心のどこかでセックスを求め、ヴィヴィアンはそのために奉仕を懸命にこなしていた。
     ご褒美を貰うため、頑張っていた。
     そして……。
    
     どくっ! びゅりゅびゅる! どりゅ! ビクビク! ドクン!
    
     噴水のような白濁が解き放たれ、それがそのままヴィヴィアンの顔に直撃していた。
     白い射撃が鼻にぶつかり、頬や額に飛散して、なおも飛び出る精液は、髪にも唇にも張り付いた。ピクピクと脈打ちながら、出すだけ出した肉棒は、なおも先端から液体を流していた。
     温かい白濁が、肉棒の表面を流れ落ち、乳房の谷間に入り込む。
     顔と谷間を精液で飾っていた。
     ツンとした精子の香りが漂い、それがヴィヴィアンの鼻孔に流れ込む。それを吸い込んだヴィヴィアンは、ますます下腹部を疼かせて、ヒクヒクとセックスを求めていた。
    「したいのだろう? ルーンワーデン」
     ホルボーンの嘲笑う声が降りかかる。
    「欲しいのだろう? してもらえばいい。素直に挿入を求めるがいい」
    「わ、私は……」
     嫌だった。
     チンポに屈服していると思われるのが、快楽に溺れ、堕ちていると思われるのが嫌だった。
     だというのに、肉体は灼熱している。
     おちんちんが欲しい欲しいと、アソコが必死にヨダレを垂らし、ヴィヴィアンの理性を踏み倒しても、挿入を求めようと、セックスがしたいことを主張している。
    「私は………………くっ…………………………」
     わかっていた。
     もう、我慢できない。耐えきれない。
     とっくに屈しているのだ。
     本当は屈していて、堕ちていて、その上で意地を張り、気丈に振る舞う余裕を精液の香りによって奪い取られた。
    
    「挿入…………してくれ……………………」
    
     ヴィヴィアンは肉棒を求めた。
     あとはもう、醜男の思うままだった。ベッドの上にあがらされ、好きな体位を命じられ、その通りのポーズで挿入を受けて、ピストンの音がパンパンと打ち鳴らされる。
     一日中抱かれた最後、ヴィヴィアンは使い捨てられた人形のようにベッドに伸び、さらにいたるところを精液で汚して倒れていた。セックスに体力を使い切り、起きることも出来ない状態で、夜が明けてからダーククリスタルの捜索に出かけていった。
    
     その後も、性欲を持て余し……。
     ヴィヴィアンはそれからも、何度か醜男に抱かれていた。
    
    
    


  • グイーネの眼差しから(非エロ)

    
    
    
     *ネタバレ
    
     最終章の内容まで知っている人向け。
     もしグイーネ視点から物語を追ったらという想像です。
    
    
    
    
         ***
    
    
    
    
     産場へ向かう馬車は無視できない。
     特にこの道を通って行くのは、武国ヤマトから連れ去られた女性であり、彼女達からは強力な魔族が生まれてしまう。
     ……もうすぐだ。
     森の中から、生い茂る草花の影に身を隠し、耳元を飛び回る羽虫や、肌を這う蟻など気にも留めずに、グイーネは全ての集中力をその方角に向けていた。緑色の葉が詰まった茂みの隙間から、わずかに見える土道まで、しかるべきタイミングまで近づいてくる瞬間を待ちながら、剣の柄に一本ずつ指を絡める。
     馬の蹄が地面を叩き、車輪が石くれの凹凸を通り抜けてくる馬車の音が、もうとっくに聞こえている。
    
     ――今だ!
    
     風が吹き抜けるごとき影として、瞬足で飛び出すグイーネは、あまりにも自然と馬車に飛びついて、運転手だった魔族の首にその刃を通していた。
    「何事だ!」
    「一体どうした!」
     魔族の反応も早い。
     運転手を殺した首が、地面に転がるよりも遥かに早く、護衛である他の魔族の面々が飛び出してはグイーネを標的と捉えていた。翼とかき爪を持つ種族の三匹は、その翼膜で一斉に風を叩いて一直線に、グイーネの腸を引き裂くために襲い掛かった。
     殺す気で来ていることがよくわかる。
     人間の命を何とも思わず、玩具の感覚で弄ぶ者達の眼は、たかが下等な種族のくせに生意気だと、グイーネに魔族と人間の力関係を教えたがっている。そのためなら肉の奥まで爪を刺し込み、まるで土でも掘り返すかのように臓物を抉り出そうというわけだ。
     だが、もうわかる。
     度重なる戦いの末、これまで数多くの魔族を討ってきたグイーネには、目の前にいる三匹がこれからどう動き、どのように仕掛けてくるのか、先の先にかけてのイメージがありありと浮かんでいた。
     こう来るに違いない、だからこちらはこう動けばいい。
     そういった思考の数々が、流れ水のように指先まで伝っていき、あたかも自分の取るべき動作を事前に知っているごとき軽やかさで、爪という爪の応酬をかわしていた。足の素早い動きで地面を蹴り、適切なポジションを取りながら、段階的に剣を振り、膝や翼に刃を通過させていく。
     どの程度、この剣が魔族を傷つけたか。それはもう、手の平に伝わる皮膚感覚で把握可能だ。
     そして、そうやって抵抗力をそぎ落とし、逃げも反撃もさせないためのダメージを一匹ずつに与えてから、あとはトドメを刺せばいい。
     これしきの魔族を死体に変えるのは、もう難しいことでも何でもない。
     そんなことよりもグイーネの意識は、その手で救った命にあった。
     荷台の中には、荷物の扱いで拘束されている女性達がいるはずだ。
    「あら、怪我はないようね」
     布の扉を持ち上げて、そこには五人の少女が縄に巻かれていた。それぞれ怯え、涙や絶望を顔に浮かべている少女達は、恐怖で神経が過敏になって、グイーネの優しい表情を見てさえ震えていた。
     もう何人も助けたのだ。
     当然、この手の少女の扱いも知っている。
    「大丈夫よ。あなた達は助かったの。あなた達を攫おうとした魔族はいなくなったわ」
     優しく、優しく語りかけ、一人ずつ安心させ、恐怖に敏感な状態を和らげる。あとはいつものように、まだ魔族には嗅ぎ付けられていない隠れ家に連れて行き、そこで彼女達を落ち着かせてやるだけだ。
     それにしても――。
     五人の中には、まだ十歳にも満たないであろう女児さえいた。
    (あんな小さな子にさえ、産場での苦痛を与えるつもりだったのかしら)
     多くの女性が産場へ行くことを阻止してきたグイーネだ。産場に送られたが最後、彼女達はどのような運命を辿り、どのように死んでいくのかも知っている。大きく膨らむ腹の中から、生まれて来るのは人類の敵となる恐怖の象徴。
     同じ女だからこそ、グイーネの想像はより実感を伴う。
     決して祝福できない命が育ち、生まれてくるというのは、これから人を殺すことが確定している犯罪者の増加に加担している気分になる。それを生む機械として扱われ、人間としては扱われない屈辱も、グイーネには大いに想像できた。
     情報によれば、いずれ人類解放軍が動き出す。
     今の自分や仲間達にできるのは、小さな反乱活動を繰り返し、こうやって少しでも敵の兵力が増えないようにするだけだ。
    (ゲオルイース……)
     ふと、別れたきりの親友に想いを馳せる。
    (あなたならきっと来る。信じているわよ。だから、その時は――)
     グイーネは思い返した。
     あの別れ際、ゲオルイースが放った言葉は、今でもグイーネの心に刺さっている。そうだ、あの子はそういう子だ。今頃はできる限りの努力をして、一日でも早く力をつけ、ボヘロスを解放しようと全力を尽くしている。
    (私は解放するべきボヘロスが滅ばないよう最後まで抗う。だから――)
     その時は、一緒に戦おう。
     グイーネは待っていた。
     ずっとずっと、ゲオルイースを待っていた。
    
         ***
    
     昔の思い出の一つには、ゲオルイースがお化けを怖がったものがある。家の周りに幽霊がいるらしいというデタラメをどこで聞かされ、どうやって信じてしまったのか。怪しい物音を聞いて、気配を感じてしまったと、怯えてやまないゲオルイースは、グイーネの元まで必死に駆けつけてきたものだ。
    「グイーネ! グイーネェ!」
     人が寝ているベッドの前まで、大声で泣き喚く。
    「うるさいわねぇ、何時だと思っているのよ……」
    「おおおおおおおばけ! 出た! 出たんだ!」
    「はいはい」
    「本当なんだ! 見たんだぞ! 顔が青くて、髪が長くて!」
    「髪なら私も長いわよ?」
    「ち、違う! 私が見たのは! だから、その――黒髪で! それで――」
     ゲオルイースは本当に懸命に言葉を尽くし、とにかく幽霊を見たのだと、グイーネに信じてもらおうと必死でいた。
     眠いところを起こされて、こんな時間に何なのだと思ったが、涙まで流しているゲオルイースが可愛いというか可哀想というか。そのうちに、もうしょうがないな、という気になってきて、最後の最後でグイーネは言うのだ。
    「一緒に寝る?」
    「ほ、本当か? グイーネ!」
     まるで命の恩人か、それとも女神を見つめる顔まで浮かべるゲオルイースだ。
    「よしよし、こっちに来なさいな。ほーら、よしよーし」
    「あぁっ、グイーネェ……!」
     もう、母親に甘える子供かとさえ思った。
     けれど、温かくて、ゲオルイースの体温を感じていると、何だかグイーネ自身も安らいできて、結局は気持ちよく眠れたと思う。
     それから、かけっこで腰のまがった老人に負けたこともあっただろうか。
     あれはもう、なんといったものか。
     一緒にご飯を食べて、一緒に出かけて、他にも色々――。
     たくさんの思い出の中には、こんな戦争でもなければ気にも留めなかったであろう、小さな小さな出来事までたくさんのものが浮かんできた。
     だが、もっともよく覚えているのは――。
    
     ――三年前の別れの時だ。
    
     グイーネェェェ!
     私は必ず戻って来るからな!
     必ず! 絶対に!
    
     あの、約束。
     千年に一度という周期を無視して、言い伝えよりも早く現れた魔族達は、その圧倒的な攻勢により、たちまち人類を追い詰めていた。二人の故郷も例外ではなく、生まれ故郷に残って魔族と戦う者達と、避難のために故郷を離れる者達へと、人々は分かれてしまった。
     ボヘロスに残って戦うことを決めたグイーネに対して、ゲオルイースは避難の側だった。
     まあ、仕方がない。
     運動神経も悪ければ、お化けも怖いようなゲオルイースでは、残ったところで戦力にならずに終わりだろう。
     けれど、去り際に誓いを立ててくれたのだ。
     必ず、故郷を救いに戻って来ると。
    
    「待ってるわよ! ゲオルイース!」
    
     グイーネも、そう返した。
     そうやってゲオルイースを見送った。
    
         ***
    
     ゲオルイースは必ず来る。
     だから、私も――。
    
     戦って、戦って、戦い抜いた。
     信じているものがあるグイーネは、それを心の支えと変え、いつしか救世主とさえ呼ばれるまでに成長していた。
     しかし、それでも魔族は強かった。
     百人で作戦に取り掛かり、無事に帰ることができたのが五十人だった。五十人が三十人、三十人が十五人へと、戦える人間の数は減りこそすれ、増えることなどない。苦しい現状の中で敵の数だけは無情なまでに増えていた。
     洗脳兵だ。
     魔族による洗脳を解く術はなく、また死んだ人間が魔族との融合で蘇り、その記憶や身体能力を魔族の都合に合わせて利用させることさえあった。
     仲間達の雰囲気も、明らかに暗い方向へ進んでいる。
     手練れであった戦士も、戦いの最中に利き腕を失って、もはや戦力とはなれずに戦線を離脱している。目を潰された者もいれば、片足を持っていかれた者もいて、少し隠れ家のまわりを歩けば、そこには包帯を巻いた人間しかいなかった。
     ある日、洗脳兵の矢からグイーネを庇った男がいた。
     迂闊だった。私のせいで!
     戦慄したグイーネは、すぐに手当てを試みるが、その刺さった位置は心臓だった。
    「お嬢ちゃん……あとは……たの……む…………」
     誰かが看取ってやれただけ、彼はまだ幸せな死に方だったのかもしれない。けれど遺体はどこかに隠すか、火葬にしてやらないと、魔族は死体すら利用する。
     日常的に仲間が減った。
     実力を信頼していた相手が、グイーネをわかってくれていた理解者が、戦場で仲間の手当てに奔走してくれていた医療班の面々が、当たり前のように消えていった。
    (どんどん減っていく。最後まで失っていくしかないのかしら……)
     気持ちが暗くなったとき、グイーネが自分を奮い立たせるために思い返しているものは、あのゲオルイースがしてくれた約束だ。
    (ゲオルイース。あなたは今、どこまで……)
     どんなに時間がかかってもいい。
     それまで、その時まで、せめてボヘロスを維持できれば――。
    
         ***
    
     グイーネの戦いは、その日で終わった。
     襲撃を仕掛けた馬車から、現れたのは三体もの残滓であった。一体ですら強すぎる魔族を三体まとめて相手取るなど、グイーネは咄嗟の判断力で逃げ出したが、残滓が相手では逃げ切ることさえ不可能だった。
     あえなく捕まり、その後は……。
    
     守りたい――守りたい――守りたいカラ――。
    
     グイーネはもう、普通の状態ではなくなっていた。
     どうせ全ての人類を殺すに違いない魔族だが、グイーネの出方一つで、親族や仲間達の死に方が変わるという。仲間同士で殺し合いをさせ、治しては殺し合わせ、治しては殺し合わせ、それが実現した場合の幻術を延々と、時間をかけて見せつけられた。
     人間狩りをやらされて、守ってきた数以上の人々を魔族達に売り渡した。
     女としての肉体も、裏切りの王族に売り渡された。
     彼らは魔族と繋がっていたのだ。
     自分達は少しでもボヘロスを維持しようと、何人もの仲間を失いながら戦ったのに、そんな事情など知らないように、魔族に媚を売って土地も人民も差し出して、その代わり少しだけ甘い汁を吸うなどという実態を見せつけられた。
     そんな低俗な連中の精液で全身を汚された。
     人間を狩り、さもなくば性処理道具として働く。
     当然、魔族への奉仕もやらされた。男根を差し出されれば、黙って咥えなくてはならず、その動きが少しでも気に入らないと、真面目にやれと殴られた。それでもあの見せられた幻を現実にしないため、グイーネは従属しきった。
     生気が抜け、薄ぼんやりとした頭の中で、少しだけ思うことがあった。
    (まだなの……? 人類解放軍は……)
     ゲオルイースがくれば、きっと。
     しかし、魔族が言うのは、人類解放軍が動き出したら、その面前にグイーネを突き出し、そこで処女を使うらしい。自分の存在が、士気を削ぐための道具に使われる。はい、ありがとうございますと、それに対してグイーネは感謝の言葉を述べなくてはならなかった。
    
         ***
    
     そのとき、自分の刃が己に向き、心臓を一突きで貫いていた。
     もし、自分が魔族の洗脳にかかったら、この手で誰かを殺してしまう。救世主とまで呼ばれた自分が人類の敵になったら、それはどれほどの脅威か。だからこそ、この手が他者を殺めようとした時に発動して、自害へ導く魂式を作ったのだ。
     だが、それも無意味に終わる。
     急速に命が薄れていき、魂がこの世を離れていく直前に聞いたのは、あーあ、と、魔族達がいかにも残念そうに、グイーネのことを嘲笑う声だった。人質となった親族達のため、ここまで従ってきたというのに、約束通りに人質は全員殺すらしい。
     結局、何も守れず……。
    
     あれ……わたし……いきている…………。
    
     消えるはずの命が、少しのあいだだけ延命されたのは、魔族達がかけた蘇生術と、さらには石化の魔法によるものだ。
     身動きが取れず、磔にされているグイーネの瞳に映るのは、他でもない親族達だ。
     殺されている。
     八つ裂きにされ、首を落とされ、ありとあらゆる残酷な死に方と共に、血の香りと絶叫がグイーネに届いてくる。
    
     みんな……! みんな……!
    
     石化された肉体は、指の一本ですら動いてはくれない。
     ただ、見ていることしかできなくて、最後には何も考えたくなくなった。何も見えず、何も聞こえないままでいたい。そんな風にだんだん無に、心の脈が止まったグイーネの耳には、本当におぼろげなものだけが届いていた。
    (ゲオルイースは……来なかった……)
     グイーネの心は、ここで死んだ。
    
         ***
    
    「……なんだこいつは? 全く動かねぇが、生きてるのか?」
    「救世主とかいってもてはやされた人間だ。まぁ、すでに精神は死んでるよ。最後まで守っていた親族達を目の前で潰されんだ。残滓様は抜け殻になったこいつを使って、奴隷どもの反抗心を挫く見世物にしたいらしい」
    
     魔族の声が聞こえて来ても、グイーネは何も反応しない。ただ心を止め、何も感じまい何も思うまいと、心の死を保っているだけだった。
    
    「あ、お前、勝手に壊すなよ。残滓様の命令で磔にされてる女だぞ?」
    「全部壊したわけじゃねえだろうが! 元救世主ってのがわかればいいんだろう? 問題ねえよ……コノ!」
    
     やがて、消える。
     蘇生術によって延命され、少しは寿命の延びた命も……。
    
     グイーネは安眠につきたかった。
     そうすれば、本当の意味で何も感じることはなくなるから――。
    
    
         ***
    
    
     あれ?
     どうして……。
    
     死んだはずの自分の体が、どういうわけか息を吹き返していることに気がついた。
     まずは困惑した。
     今まで悪夢でも見ていたのか、今が本当の現実なのか。それとも、この今の自分が夢かも判断できず、オロオロしていたグイーネの脳裏には、一つの邪悪な声が響いた。
    
     ――ウシナエ!
    
    (何ッ!? この声は一体! この邪悪は一体!?)
    
     ――ウシナエ! ウシナエ! ウシナエ!
    
    (ざ、残滓――そんな……私に……)
    
     長い戦争の中で、グイーネは嫌というほど知っていた。
     死んだ人間が蘇る方法は、魔族との融合だけだ。そうやって生き返った人間は、魔族の意志で記憶や身体能力を都合のいいように利用され、親族だった人間を騙し、殺すために利用されていく。
    
     ……だから生き返ったんだ。
     だから、まだ死なせてさえくれないんだ……。
    
     それは絶望以外の何者でもない。
     絶望はまだ続くのだと、地獄の道のりはまだ長いことを宣告された絶望にグイーネの心は蝕まれた。 
    
         ***
    
     それから、残滓ロビィの手によって散々に見せつけられた。
     魔族との戦争を追え、平和そのものとなった世界に生きる楽しそうな人々の笑顔に、幸せそうな生活の数々を嫌というほど目の当たりにした。
     この目が、この肉体が、大陸中を渡り歩いて――。
    
    (やってくれたのね。ゲオルイース。私はそれだけでも……)
    
     そうやって安心する心の裏には、もっと邪悪なものが渦巻いているのだと、グイーネは自分でも気づいていた。
    
     ウシナエ! ウシナエ! ウシナエ!
    
     平和な世界に対する安心や安堵といった感情は、ただの一瞬にして暗闇に飲み込まれた。その代わりに増幅してやまないのが、世界の全てを憎もうとする黒い感情。それがロビィの声なのか、それとも自分の本心なのか。それがグイーネ自身にもわからなくなっていた。
     自分はあんな目に遭った。
     なのに、なのに、ここにいる人達は――どうしてこんなに、どうしてあいつらが幸せで、私は失うだけだった。
    
    (違う! そんなことを思ってはいけない!)
    
     ――ゲオルイースはお前を忘れているぞ!
    
    (……え?)
    
     グイーネが次に見せつけられたのは、親友の記録を受け入れられず、記憶に蓋をしてしまったゲオルイースの幸せな日常だった。
     ゲオルイースが私を忘れている?
     じゃあ、あの時の言葉は何だったのか。約束を守りに来てくれたのでは――違う。そんな風雨に考えるものではない。大事だった人がもういないなんて、誰だって受け入れられない。
     グイーネは懸命に拒んでいた。
     きっと、残滓ロビィなど関係なく、自分はあんな目に遭ったのに他の奴らは――そんな黒い感情が全くわかないわけがない。そう思う心が自分のどこかに存在している。けれど、それを嵐のように吹き荒れさせてはいけない。
     もっと早く人類が自由になっていたなら、自分もこの平和の中にいたはずなのに。
     いや、違う。
     そう考えてはいけない。
     拒まなければ、考えるのだ。
     だったら、ゲオルイースはどうして人類解放軍の総司令にまで上り詰めた。故郷のためにそこまで努力してくれた。あの子の頑張りは一体どうなる。それさえも否定していいのか。いいわけがない。
    
    (そうよ! ゲオルイースは来てくれたの! それだけでもいいじゃない!)
    
     噴き出しそうなものを手で押さえ、まるで力で封じ込めようとしているようなグイーネは、懸命に自分を抑えていた。
    
     ――チガウ! アイツモ、ウシナウベキダ!
    
     グイーネの中にあった善意と、良識が止まった。
     幻を見たからだった。
     夢の世界にでも放り込まれてしまったように、裏切りの王族達に弄ばれ、人類のために戦ってきたはずの末路を嫌というほどに味わった。
     そう、世界は平和になった。
     じゃあ、あの王族達は?
     あんな奴らがいなくて、彼らがもっと平和のために尽力していれば、人類解放軍の動きも早まり、グイーネも彼らと合流を果たすという、結局は成しえなかった夢物語が実現していたはずではないのか。
     足を引っ張った王族達がいるせいで、自分は絶望だけを味わって、今の平和な世界を生きることはできなかった。この手で魔族に売り渡す羽目になった命も、守りきれずに殺されていった親族達も、一人でも多くが生きて平和な世の中に暮らせたはずだ。
     グイーネは思い出す。
     捕まってから初めに行った性行為は、残滓トーデイラに連れて行かれた先のボヘロス城で、裏切りの王に口奉仕を強要された時である。前線で戦っていたグイーネにとって、勝ち目のない魔族相手に土地も人民も差し出すべきだという王族の言葉は、よしんばジョークであってもキツすぎるものがあった。
     その精液を飲まされた体験と、他の王族達にも白濁で全身を穢されたトラウマは、グイーネに眠る黒い感情を引きずり出すにはうってつけすぎていた。
     あいつらさえいなければ、彼らがああでなければ――。
     無意味な空想なのかもしれないが、グイーネや他のボヘロスの人間達は、つまり魔族と戦おうとすらしなかった連中の煽りを受けて、人類勝利の日に立ち会うことをできなくされた。
     だいたい、ああやって魔族と通じていた以上、グイーネが残滓三体と鉢合わせることになったことさえ、裏切り者が足を引っ張ったせいではないのか。そして、戦ったはずの人間を辱め、それで興奮する人間なら、情報を売ることくらい十分にありえるはずだと思えてならなかった。
     もちろんそんな証拠はないが、一度疑惑が浮かんだらキリがない。
     人類解放軍の動きに時間がかかっていたのも、大陸各所で人間が次々討たれたのも、何もかもの裏切りの王族が絡んでいるように思えてきて、あれもこれもと悪い想像ばかりが膨らんでならなかった。
     こうして人類は勝てたじゃないか。
     魔族に媚びる必要なんて、初めから無かったのだ。
     それなのに、それなのに……。
    
     わかっているわよ! こんな感情に飲まれてはいけない! 
     でも――。
    
     生きてゲオルイースに会いたかった!
     
     もう、その瞬間だった。
     まるで、見えない手がグイーネの脳を手掴みして、深いところへ引きずり込もうとしてくるかのように、グイーネの良心は黒々とした奥底へと飲み込まれた。天に向かって、心の手を必死に伸ばすが、青空はどこまでも遠ざかるばかりであった。
    
    
     残滓ロビィは、こうして大王を手に入れた。
    
    
         ***
    
    
     まただ。まだ、続いているのね……。
     過去の私は、守ってきた数よりもたくさんの命を魔族達に引き渡した。
     今では私は大王となり、罪もない王族達を陥れ、冤罪によって次々に監獄の中へと放り込んでいる。たとえば殺害の罪を被せるため、まずは私が誰かを殺す。それは神父であったり貴族であったり、どこか身分のいい人。
     駄目、やってはいけない。
     そんな風に思ってはみるけれど、刃を突き立てようと動く私の腕は止まらない。心のどこかで叫んだり、自分を抑えてみようとしたところで、もう誰かを守れるわけでも、王族達の冤罪をたった一つ減らせるわけでもない。
     ……どうしてかしら?
     私が、まだ人間狩りに加担しているだなんて。
     こんなことに私が使われるくらいなら、本当に死んでしまった方がマシじゃない。そうよ。死ぬための魂式を用意していたはずじゃない。なのに、自分の死の行方ですら、こうやって好きにはさせてくれないの……!
     私という存在が、もう私のものではないんだわ。
     この頭の中にはゲオルイースを陥れる計画があるけれど、何千何百回と制止をかけても、もう私は止まらない。
     
    「お前は戦争中に人類を裏切っていただろォ?」
    
     ああ、私が笑っている。
     ……あるんだ。
     当時の裏切り者を抹殺して、それに愉悦を感じるような心が私の中に――こんなことをしても過去が変わってくれるわけではないのに、そんな理性的な言葉を私は聞いてくれはしない。
    
    「だがよかったなァ? あの時の罪はここで償え! しかもお前が死ぬことで、お前を殺した罪は他のゴミどもが背負うことになる。ははっ、冤罪? あの戦争当時、人間を売り渡していた連中が正しく裁かれているだけだよなァ!」
    
     そうだ。裁かれて欲しいんだ。
     私が止まらない! どうやっても! どう足掻いても!
     きっと、残滓ロビィのせいだけじゃない! ロビィは私の心を増幅してる! 私の心に少しでも黒いものがあるせいで、付け入る隙を与えてしまって――どうすれば、どうやったら私は止まることができるの!
     どうやったら! どうすれば!
    
    「ははは! ハッハッハッハッハ!」
    
     こんな魔族と変わらない笑い声を私が上げているなんて、もう私なのかロビィなのかもわからない! 私自身かもしれない! 私の心の中に今の大王がいるのかもしれない! あの場で死んだはずの私にとって、私には味わえなかった平和な世界が羨ましくて、妬ましくてたまらないから!
    
     ………………
     …………
     ……
    
     残滓ロビィは精神世界を渡り歩く。
     だから、その一瞬でグイーネは気づいたのだ。
    
     ゲオルイースと繋がった。
    
     お願い! あなたなら大王を止められる!
     もうあなたしかいないの!
     ゲオルイース!
    
    
         ***
    
    
     そして、だからグイーネは知ってしまった。
     ゲオルイースが監獄で心を取り戻し、脱獄を決意したのは、スティアラとの出会いがあったからだと――。
     ゲオルイースはグイーネの助力に気づいていない。
     いや、そもそも助けてすらいないのだ。
     まず貶めたのがグイーネだ。自分が大王にさえならなければ、こんな監獄の実態が生まれることさえなかったのだ。たとえ全てがロビィのせいでも、グイーネの名前と肉体で重ねられた罪の数々は、きっとグイーネのものなのだ。
     ならばもう、自分はせいぜい夢の中の登場人物でいるしかない。
     そうだ。夢にでも馴染んでいよう。
     そうすれば、たとえ夢でも、ゲオルイースとの生きた再会を果たして、共に戦うことができるのだから――。
    
     夢に浸ったグイーネは思う。
     こうして、残滓を相手に戦える日が来るなんて――と。
    
    
         ***
    
    
     男が見張り、女が就寝。
     交代制の休憩で、二人に順番がまわってから、共に布団に潜るグイーネは、今に隣でまぶたを閉じるゲオルイースを意識する。こうして残滓を倒していき、洗脳兵となった伝説の勇者クダンとの戦いも乗り越えて、あとはトーデイラとロビィを残すのみとなっているのが、今でもどこか信じられない。
     ゲオルイースやその仲間がいなかった頃は、もっと厳しかった。人類解放軍が動き出すまで、日に日に消耗していくだけの、いつ果てるとも知れない戦いの中で、ようやく合流を果たせたことにどれほど安堵したことか。
    「……すまなかったな」
     まだ眠れないのか、ゲオルイースの静かな声が、そっとグイーネの耳に届いた。
    「あら、どうしたのかしら?」
    「もっと早くここに来られれば、ボヘロスの惨状もここまではなかったはずなんだ」
     まるで懺悔のようだ。
     誰だって考えることだろう。もっと早く、もっと順序良く、力を身に付け、準備を整え、こうして戦いに出られていれば――しかし、魔族は強すぎた。来たくても、簡単には来られなかったであろうことくらい、戦ってきたグイーネには簡単に想像できる。
    「その話はしたばかりでしょう?」
    「そう、だったかな。ははっ、そういえばグイーネの隠れ家で話したか」
    「本当よ。本当に今よりもっと早ければ、ゲオルイースは何歳で総司令? あーあ、やだやだ怖い怖い。その方がゾッとするわ」
    「けど、できるものなら、何歳だろうと力をつけてやりたかった……!」
     静かだったゲオルイースの声は、しだいに感情的になっていた。当時の後悔が、ありとあらゆる想いが蘇り、グイーネの脳裏にさえも、親友と別れることになったあの日が色濃くよぎり、だんだんと胸が締め付けられる。
    「自分だけ逃げるかのような気持ちがしたんだ……! ボヘロスを去ってから、本当は自分も残って戦っていればって……! あのときの私には何の力もなかったけど、それでも何度もそんなことを考えた……!」
    「……あ、あれ?」
     急に涙が出て、グイーネはゲオルイースに背中を向けた。
    「どうした? グイーネ」
    「い、いえ……。何でもないわ……」
     既に一度は言ったことだ。
     あの荒らされてしまった隠れ家で、その惨状を見て無念を語るゲオルイースに対して、今もあの時も、グイーネは同じことを思うのだ。
    
    「いま来てくれただけで十分よ」
    
     親友のことだ。
     故郷を思い続けてくれたゲオルイースが、どれだけの努力を重ねて、そして本当に人類解放軍総司令にまで上り詰めてしまったか。それくらいの想像ができないグイーネではない。離れ離れになっていても、その心にはずっとボヘロスがあり、グイーネがいたと、それがわかっただけで満足だ。
    
    
    


  • もしもの監獄の夢 共に躾を・・・

    
    
    
     いつもの薄暗い監獄で、ボロ布を敷いただけのベッドとは呼べないベッドの中で、眠りに落ちて夢の世界へ没入していく。
    (ここは、監獄か)
     夢でありながら、自分のいる場所は起きている時の監獄と変わらない。
     ただ、そこにはグイーネがいた。
    「お目覚めかしら、ゲオルイース」
    「ん? あ、ああ……そのようだ……」
     戦場ではない。ここにグイーネがいる夢だ。
     もしここに、かつての旧友がいてくれたらと、そんな願望がもしかしたら心の奥底に隠れていたのかもしれない。
    (夢だからいいが、現実なら笑えないな)
     と、ゲオルイースは心に思う。
    「もうすっかり元気ね。スティアラちゃんに会ってから、いつものゲオルイースの顔に戻ってきたわ。それまでのあなたは、心が消えてしまっていた……」
    (この夢では、グイーネと共に行動して、一緒にスティアラに会っているということか。ということは、ラスターもか?)
    「それにしても、まともな服を与えて欲しいものよね。こんな紐だけなんて」
    「ああ、全くだ。あの獄長め……」
     ゲオルイースに与えられた着衣物は、服とは呼べない単なるボロ紐で、どうにかして結び目を固定することで、辛うじて乳首や性器を隠せている。しかし、全裸に限りなく近い露出度を余儀なくされ、ふと見えたグイーネの尻など、割れ目に紐の食い込んだTバックだ。
    「……すぐに着替えて、行きましょう? 昨日は時間がなくて引き返したけど、火と水の魂式であの扉を開けられる。それが脱獄に繋がるかどうかはわからないけど、まずは確かめてみるしかないわ」
    (そうか。わかってきたぞ。戦場の夢で火の魂式を見つけたが、そこで目を覚ますはずが、どうやら別の夢に移ったらしい。きっとそれだけ、グイーネのことが懐かしいから……)
     ふと、気づく。
     懐かしい?
     どうして自分は、グイーネを懐かしいなど――投獄される前の平和な記憶が、もうとっくの昔の出来事に思えてきているからか。
     そういえば包帯を巻いていないが、まあ夢だ。
     隠すべき怪我など、ここでは負っていないのだろう。
    「行こう。グイーネ」
     ゲオルイースは立ち上がり、土の中に隠した装備を掘り返す。まともな着衣を手に入れてはいるのだが、獄中で所持品が整っているなど怪しいことこの上ない。看守や獄長の前では決して見せるわけにはいかないものだ。
    「待って、来るみたい」
     と、グイーネ。
     どうやら、看守が檻に近づく足音を聞き取ったらしい。
    「……躾とやらか」
    「でしょうね。そして、従わなければ反省部屋で一週間。素晴らしくてたまらないわね」
    「耐えることしか許されない。実にもどかしい話だ」
     だが、グイーネが一緒だ。いや、グイーネを巻き込んでいる。共に耐え抜いていけるかのようで、罪悪感がなくもない複雑さは、きっとグイーネも同じ気持ちだろう。
    「グイーネ様。ゲオルイース様。獄長がお呼びです」
     従わされているに過ぎない、本当は二人にそんなことなどさせたくない、良心的な部類の看守は、それだけ遠慮と躊躇いの篭った声をかけ、鍵穴に鍵を差し込む。
     二人は、その背中についていく。
    
    「グッモォォニィィィング!」
    
     獄長はいかにも二人の肢体を嘗め回し、じゅるりと唾液の音の出る舌なめずりで、これから行う『躾』とやらに既に興奮している様子だ。
    「相変わらず下品な男ね」
    「全くだ」
     グイーネの言葉には同意しかない。
    「その服従する気のなさが躾の時間を招くんだぜぇ? さっさと腹の底まで奴隷になって、心の奥底まで俺様に跪きなぁ!」
    「ありえないわね」
    「全くだ」
     同意しかない。
     この男の思い通りになるということは、精神的にも逆らう気力を一切失い、正気すら保てないまま恐怖の中で盲従する。バルカン女王がそうであったように、心の中まで追い詰められれば、もう脱獄という発想だえ持てなくなる。
    「おらおら、二人して咥えなぁ! お口でペロペロ奉仕しやがれってんだ!」
     およそ会話が通じないこともわかっている。
     だが、この屈辱は……。
    「もちろん、反省部屋で看守達から一週間犯され続けるコースがご希望なら、無理にやり必要はないけどなぁ!」
     一週間、それは脱獄への支障がありすぎる。
     獄長の独断一つで、一体どんな目に遭わされるかもわからない立場上、こうなったらやるしかない二人は、実に苦々しい表情で顔を寄せ合う。
    「さっさと済ませましょう。ゲオルイース」
    「それしかないか」
     汚物でしかないものに口を触れさせ、いっそ泥水の方がマシに感じる汚辱を味わう。無念でならない二人の舌は、涙ながらの思いで肉棒に這っていた。
    
     れろっ、れろぉぉぉ……。
     べろぉぉっ、ぺろっ、ぺろん――。
    
     二人がかりの舌使いは、肉竿の左右を少しずつ唾液に濡らしている。
    「おおうっ、頑張れ頑張れ、そうやって俺様の機嫌を取りやがれ。特に救世主様の場合は身内どもを捕らえてあるからなぁ? もし噛み切ろうとでもしてみれば、闘技場で殺し合いをやらせるぜぇ?」
    (ぐ、グイーネの身内だと!? この夢はどうなっている? 過去の思い出の再現ではないようだが……)
    「んで、英雄様ぁ、お前をお慕いしている看守どもがやたらといやがるからな。下手をすればお前に懲罰を与える代わりに、英雄大好き連中あたりがこの世からの辞表を出すかもなぁ!」
    (ただでさえ逆らえない立場の女に対して、その上に人質まで出して来るとは、一体どうすればここまでのクズが誕生するんだ)
     そして、獄長の人間性がゲスなものであればあるほど、そんな男に奉仕している自分は何なのかと、あまりにも情けなくなってくる。目の前にあるグイーネの表情にも、ゲオルイースが抱いているのと変わらない感情が、ありありと浮かんで見えていた。
    「あむっ、はむぅぅ……ぢゅつぅぅ…………」
     グイーネは側面を唇で挟み、ハーモニカでも吹くように顔を左右に動かしている。ゲオルイースもそれに習い、二人の頭が交互に動き続ける分だけ、さらにまぶされていく唾液は肉棒の皮膚に染み込み続けた。
     ただ、早く終わらせたかった。
     獄長を満足させ、刺激を与えて射精に導こうとしているのは、この時間が一秒でも早く過ぎて欲しいと願いを込めてのことである。
    
     はぶっ、れろっ、ペロペロペロ――。
    
     懸命に、丹念に、グイーネは亀頭を嘗め回した。触りたくもない不潔なものを我慢している顔つきで、肉棒のおぞましさに鳥肌を立てながら、先端からカウパーを吸い上げようとまでして励んでいた。
    (……グイーネ一人には頑張らせない)
     ゲオルイースも舌を動かし、グイーネに負けない活発ぶりを披露する。
    「だいぶ俺様のシンボルの美味さがわかってきたなぁ!」
     それを獄長は、いかにも都合のいいように解釈していた。
    (そんなわけがあるか! 何が美味しいものか! こんなもの!)
     いっそ噛み切ることができたなら、どれだけ溜飲が下がることか。
     グイーネも、ゲオルイースも、何かを言いたい視線で睨み上げ、美味しいわけがないことをどこか主張しつつも、奉仕を中断することはない。
    「はぶっ、じゅむぅぅっ、じゅるっ、ちゅるるん」
     ゲオルイースは亀頭を飲み込み、顔を前後に貪った。
     こうすれば終わる。
     そうすれば、たった一秒でもいいから時間が縮まる。
     そんな感情ばかりが、ゲオルイースの奉仕には篭っていた。
    「あむぅぅっ、ちゅむっ、じゅむっ」
     今度はグイーネが亀頭のポジションを確保した。金髪の頭が前後に動くと、綺麗な唇には亀頭の赤みが出入りする。そのあいだゲオルイースは竿の側面を舐めてやり、時にはキスもしながら、グイーネと交代で亀頭を責めた。
    (まだか! くそっ、どうせ射精をするんだろう? せめてさっさと出せばいいものを!)
     やがて二人は、二人分の舌で亀頭を集中的に舐めていた。
     ぺろぺろと、頬のくっつき合ったゲオルイースとグイーネが、できうる限りの素早い舌使いによって舐め込んで、それでもすぐには射精に至らなかった。
     結局、何分間の奉仕になったのかもわからない。
     きっと十分間以上はかけて、やっとのことでビクビクと予兆を示し、熱い白濁が解き放たれるときには、二人の顔はまとめて精液に汚された。
    「ハハハハハ! 英雄様と救世主様が手を組んで挑む相手が、俺様のシンボルだったとは泣ける話だなぁ? あぁ? なんだ? 嬉しくて歓喜でぷるぷる震えてるのかぁ? そんなに嬉しかったなら、もう二、三回はヌいてもらおうかァ!」
     獄長の気まぐれな思いつきが、やっと終わったと思った二人の心を踏みにじる。
     さらに二十分、三十分と、嫌というほど時間をかけて、獄長の肉棒を味わった。
     その屈辱の時間が、本当にやっと終わる頃に出てくる言葉はこれである。
    「おら看守ども! そいつらを仕舞ってこい!」
     獄長は二人を人間だと思っていない。
     看守の中に、二人の境遇を思う者達が少なからずいるというのが、せめてもの救いといえた。
    
     そして、檻の中に戻った二人は――。
    
    「ねえ、ゲオルイース。もし機会があったら、切り落としちゃう?」
    「それはあまりにもむごいというか可哀想というか」
    「不思議ねぇ? なんだか、その台詞をどこかで聞いた覚えがあるわ」
    「よしてくれグイーネ。こんなはしたない話題が二度も三度もあってたまるか」
    「ふふっ、でもよかった。まだ戦えそうね? ゲオルイース」
    「ああ、こんなところでも、支えになるものを見つけたからな」
    
     どうしてだろうか。
     あんな目に遭ったばかりというのに、不思議と心が癒えてくるような……。
    
     それから――。
    
     今度こそ本当に目が覚めて、脱獄に向けてまた行動を開始するゲオルイースは、たった今までの夢に思いを馳せる。
    
     そうか。
     私は、過去の思い出にも支えられている。
     アーベント、ベロー、ヴルウ――。
     それに、グイーネ。
    
    「よし、行くか」
    
     今日もゲオルイースは、水の魂式を使って再現した鍵により、檻の向こうへ歩み出た。
    
    
    


  • ある日の夢

    
    
    
     むぅぅ……。
     また、この戦争の夢か。相変わらず夢とは思えない現実感だな。
     それに夢の中で寝ていたのも、なんというかおかしな気分だ。
    
     監獄のベッドとは呼べないベッドで眠りにつき、こうして夢の世界に没入したゲオルイースは、今現在のここでの状況を思い起こした。
     そう、確か……。
     アーベント、ヴルウ、ベローの三人が見張りで、女二人が休息だった。
     だからゲオルイースは久々に、まだ魔族が現れる前の平和な時期にそうしたように、グイーネと共にベッドで眠っていた。同じ布団を共有している温もりと、少し手を伸ばせばグイーネの身体に手を触れられることの安心感に、ゲオルイースはどこか幸福に満たされていた。
     夢とはいえ、旧友とこうして一緒に過ごしている。
     それに何だか、グイーネは綺麗だ。
    (いかんな。なにを考えているんだ。私は……)
     この一瞬で脳裏をよぎった邪な考えに、ゲオルイースは己の思いを頭から振り払うが、すやすやと眠る美貌の顔を見ていると、その感情は払っても払いきれないほどにおびただしく沸いてくる。
     駄目だ。我慢できない。
    (ゆ、夢なんだ……だから本当は許されないことであっても……)
     ゲオルイースはグイーネに唇を重ねた。
    「グイーネ……グイーネ……!」
     どうして、こんなにもグイーネが愛おしいのだろう。懐かしいと思うのだろう。まるで二度と会えないはずだったものが、何かの奇跡でここにいるかのような気持ちが何故だかして、決して離したくない思いにかられる。
     気がつけば、もう一度キスをしていた。
     熱い吐息のためなのか、少しばかり湿気が乗って、しっとしとした唇の柔らかさは、しだいにゲオルイースの心を狂わせる。
    「あぁ……グイーネ……本当に……グイーネ……」
     何度唇を重ねても、何も知らずに寝息だけを立てているグイーネの寝顔を見ていると、悪い悪戯を楽しむ子供じみた高揚感と、いけないことをしてしまった背徳感と、さらにはグイーネの美貌にこんな形で触れてしまった喜びで、ゲオルイースの心はすっかりと満たされていた。
    「だ、駄目だ。私はもっとグイーネを感じたい。自分でも、どうしてこんなにもグイーネのことが……! 自分でもわからないんだ……!」
     苛まれるかのように、存分にグイーネを味わった。
     唇はおろか、耳を舐め上げ、その穴の中身を舐め取って、首筋にも吸い付いた。キスというキスの雨が、グイーネのおでこにも、頬にも降らされ、顔面のそこかしこにゲオルイースの唾液が付着していく。
    「……んっ」
    「っ!」
     急にグイーネが寝苦しいかのような声を上げ、バレてしまったのかとゲオルイースはビクりとした。
    (……まずい、か。これ以上は)
     自分の罪に初めて気づいてしまったかのように、ゲオルイースは身を引いて、グイーネに背中を向けて眠りに戻る。夢の中でまた寝ようというのもおかしいが、とにかく眠りにつこうとまぶたの裏側にある暗闇にでも意識を向けた。
     そのとき、だった。
    「ゲオルイース」
     突如として名前を呼んでくるグイーネが、急にゲオルイースの背中に抱きつき、手の平でまさぐるように身体をさすっていた。
    「ぐ、グイーネ……」
    「ふふっ、甘えん坊さん」
     それはまるで、優しい母親が悪い子供をそっと諌めるかのような、意地の悪さと母性に溢れた声だった。
    「……は、はは……なんの話だ? 今の私は昔の私ではないんだぞ?」
    「そうねぇ、いつもどこかで泣いては私のベッドにもぐりこむ、可愛い女の子はどこへいっちゃったのかしらね。って、思っていたけど、ここにいたようね」
    「きき、き、気のせい! じゃ、ないか? ここにいるのは人類解放軍の――」
    「ゲオルイース」
     必死に慌てた言い訳は、そうやって名前を一言呼ばれるだけで封じ込まれた。
    (わ、私は……)
     背中には、グイーネの膨らみがぶつかっている。後頭部には顔が近づき、ゲオルイースの髪の隙間をささやかに通り抜け、グイーネの熱い呼吸が届いている。
    「いいのよ。私も、また甘えてもらえて、ちょっと嬉しくなっちゃって、よかったらこのまま続けてみない?」
    「続けるだと? 何を言って……」
    「嫌かしら? そっちからキスしたくせに」
    「うっ、それを言われると……」
    「じゃあ、決まりね」
    (ううっ、勝手に決められた……)
    「脱ぎましょう? この先、何があってもお互いを覚えているため……」
     死地である以上、生きて戦い抜ける保障はない。
    「…………わかった」
     静かに頷くゲオルイースと、どこか決意めいているグイーネは、お互いに背中を向け合いながら、お互いの衣擦れの音を意識しながら、一枚ずつ、だんだんと脱いでいく。そうして二人は一糸纏わぬ姿となり、万人が息を呑むであろう美の裸体がこの場に揃った。
    「では横になってごらんなさい? ゲオルイース」
     ……恥ずかしい。
     しかし、ゲオルイースの方から唇を奪っている手前、断ることなどできはしない。
    「……本当に……するのか? ……グイーネ?」
    「嫌かしら? 私じゃ」
     穏やかな微笑み。そんな言い方をされてしまうと、まさかグイーネを嫌うわけのないゲオルイースには、もう何も言えなくなる。
    「キス、しましょうか」
     そっと両手で頬を包まれると、手の平の温もりがあまりにも心地よく、うっとりと蕩けてしまうゲオルイースへと、今度はグイーネの方から唇が重なった。
     そして、ただ触れ合うだけのキスではすまない。
    「――んっ、むぅっ!」
     ゲオルイースが驚いたのは、舌が攻め込んで来たからだった。
    「あむっ、じゅつるぅぅ――」
     大きな口を開けるグイーネは、ゲオルイースの唇をいっそ食べようとしている勢いで、大胆なまでに貪っている。
    「んっ、んぬぅ、んぁ……んんぅ…………」
     ねっとりと唾液を帯びた舌先が、ゲオルイースの唇を押し開き、まずは前歯を舐め取って、さらに口内へと潜り込む。何かを探さんばかりのグイーネの舌は、その先端でゲオルイースの舌を見つけるなり、絡ませ合うための動きを始めて一層貪り尽くしていく。
     息など忘れていた。
     口に広がるグイーネの温度と、頬を優しく包んでくれる両手ばかりが、ゲオルイースの身も心も完全に満たしきる。
     少し呼吸が苦しくなって、そうなって初めて口呼吸ができないことに気づいて、まさにそのタイミングでグイーネは唇を遠ざけた。
     濃い糸が何センチにもわたって引いていくのは、決して一本だけではない。舌と舌を繋ぐ糸の他にも、唇に張った唾液粘膜でも糸が作られ、銀の輝きは数本以上にものぼっていた。
     ぽつりと、ゲオルイースの顔を濡らすのは、一滴の雨粒だった。
    「どうして……こんなに嬉しいのかしら……」
    「ぐ、グイーネ……?」
    「本当に、どうしてかしらね。ゲオルイース……」
     一滴ずつ、一滴ずつだけ、降ってくる雨粒は、ゲオルイースの頬で弾けて、唇の狭間にも流れ込み、あとはベッドシーツを少しばかり濡らしていく。
    「どうして、だろうな」
     ゲオルイースにもわからない。
     ただ、今目の前にいるグイーネは、この先何があろうと、絶対に忘れてはならないものの気がしてならない。
     そんな理由などありもしない予感にかられ、二人は一心にまさぐりあった。
     お互いの肉体を触り合う二人の手は、乳房の上に絡みつき、ゲオルイースの豊満さが手の平に潰れゆく。グイーネの胸にも、五指の強弱がつけられて、やがてして乳首が立つ。淡い色の突起を責め合い始め、甘い痺れが走り出す。
    「あ……うっ……」
    「可愛い声ね。ゲオルイース」
    「グイーネこそ」
    「――ひゃん!」
     するとグイーネは、やったわね、と、そう言わんばかりの意地の悪い微笑みを浮かべて、標的を秘所へと変えた。
    「ひゃっ! そ、そこは!」
     縦筋をなぞられただけで、ゲオルイースの全身に刺激が走った。
    「あら、随分と蜜を溜め込んでいるわね」
    「そ、そんなこと……」
    「それじゃあ、これはなにかしら?」
     濡れた証拠を見せ付けるため、少しの愛撫で秘所を苛めたグイーネは、指に絡めた愛液をわざとらしく見せつける。
    「それは……なんだろうな……」
    「ゲオルイースの禁断の蜜」
    「い、言うな!」
    「では禁じられた滴でどうかしら?」
    「神秘的に言うのも無しだ!」
    「甘い汁。ゲオルイースのエキス。乱れた証拠品」
     ありとあらゆる言い方を思いついては、グイーネはそれを耳元へ囁いて、熱い湿気を宿した吐息でゲオルイースの耳を苛める。もちろんアソコへの愛撫は言うまでもなく、愛液を塗り伸ばさんとしたぐるぐるとした手つきが、ますますゲオルイースの身体を高めていた。
    「あっ、んんっ! んんんっ! こんな……やられっぱなしでぇ……! わっ、あっ、わたしだって、さわるぞ! グイーネ!」
    「――ひゃ!」
     責められるばかりのゲオルイースは、どうにか反撃の手を繰り出し、グイーネの秘所に指を置くなりまさぐり始める。
    「……ぐっ、グイーネだって濡れているじゃないか」
    「あ、あら? ゲオルイースほどではないわ」
    「そんなはずはない! お、お前の方が濡れているんだ!」
     そう決め付けたいために、ゲオルイースは手を活発にして、割れ目の形をなぞってやる。それが十分に刺激となり、グイーネも息を乱して腰もくねらせ、ゲオルイースの高まりぶりに瞬く間に追いついていた。
    「望むところよ。ゲオルイース」
    「グイーネ……!」
     どちらともなく自然と意地を張り合うと、二人ともの意識は、もうアソコだけに集中していた。自分の秘所に置かれた相手の指。相手の秘所に触れている指への感触。二人のクリトリスが陰核包皮から顔を出し、まずグイーネがそれを見つけたと思いきや、すぐにゲオルイースも同じ場所に狙いをつけた。
    「あっ、うっ、んんぅ……んふぁ……あぁ…………」
     グイーネは腰をくの字にヒクヒクと、弾むかのように感じている。
    「んんっ、んぁぁ……! あっ、あぁぁぁぁぁ……!」
     ゲオルイースは髪を振り、首から上でよがっている。
     絶頂は近かった。
    
    「ん! くふぅ――!」
    「――――んんんん!」
    
     どちらが先だったかなど、二人にはわからなかった。
     ただ、果てたグイーネの身体から力が抜け、崩れ落ちるかのようにゲオルイースの上に重なる。その体重を感じ取り、乳と乳が潰しあっていることにも気づき、それからゲオルイースはグイーネに脚を絡めて抱き返す。
    「こういうのも、悪くはないわね」
    「ああ、グイーネ。できれば、また」
    「次は、私の方からしてあげる」
    「楽しみに待っていよう」
     グイーネの体温を全身に受け止めて、二度と離したくないかのように両腕に力を込めていたゲオルイースは、やがてようやく、眠気というものの奥底へ落ちて行く。
    
     夢の中でそうなることは、目覚めの時を意味していた。
    
     薄っすらと目を開くと、そこにあるのは薄暗い監獄の天井と、ボロ布でしかない布団。
     そうか、夢か。
     だけど――。
    
     グイーネ、もしも会えたら……。
     ああ、グイーネ。
    
    
    
    


  • ワールドセイバーによる強制口奉仕

    
    
    
     セレディ・クライスラーの率いる武装兵士に学園を占領され、武力制圧という形でワールドセイバーに学園主権を奪われてからのこと。
     女子生徒は兵士への性的奉仕が強要されていた。
     体育館で列を成す武装兵士の前で膝をつき、全て女子生徒が口奉仕を行っていた。ジェノックの鹿島ユノはもちろんのこと、ポルトン所属の沖田ヒナコ、ハーネスの金箱スズネばかりか、教員の美都玲奈までもが肉棒を咥えて頭を前後に振っていた。
     これは性的搾取であると同時に、女に立場をわからせようとするセレディの案でもある。毎朝のようにフェラチオを強要し、男のものをしゃぶらせることで教員含む女子生徒全てを精神的に屈服させる。自分達の勢力を拡大しようという考えだ。
    (どうしてこんなことせなアカンのや)
     金箱スズネは涙目だ。
     このフェラチオは女子生徒の日課とされているが、初日では舐め方について随分な指導があった。歯を立ててはいけないこと、きちんと舌を這わせること、唾液をたっぷりまぶしつけることなど、口淫のやり方を教えられ、生徒達はマニュアル通りに咥えている。
     ちゃんとやらなければ何をされるかわからない。スズネは嫌々ながらも舌を振るって肉棒に唾液をまぶしていた。
    「おいお前! 態度が悪いぞ!」
     真面目にやらない生徒は怒鳴られていた。
    「だってこんなのおかしいじゃない!」
     反抗的な態度を取るのはキャサリン・ルースであった。キャサリンは舌も使わず、それどころか大口を開けることで肉棒が口内に当たらないようにして、ほとんど手だけで男に刺激を与えていたのだ。フェラチオを拒否して少しでもマシな手淫で済まそうという魂胆である。
    「ちゃんと舐めしゃぶらないと個別指導をするしかないぞ」
     兵士は重い口調で脅しかける。
    「わかったわよ……」
     キャサリンは不満そうに口を使い、舌を大いに振るって肉棒を舐めまわした。
     相手は武装しているのだ。生徒に銃口を向け、今のところは脅迫のみに留まっているものの、いつ発砲に至るかはわからない。逆らうのは得策とはいえなかった。
    「お前は中々上手だな。才能あるんじゃないか?」
     褒められているのは仙道キヨカだ。まるで無表情で咥え込み、せっせと頭を前後させているキヨカの口技は、他の生徒以上に上達している。唾液を塗りたくるような舌遣いで亀頭までもをねめまわし、相手を射精に導いている。
     白濁が発射され、キヨカは一滴もこぼすことなく飲み込んだ。
    「次」
     順番待ちの兵士と入れ替わり、キヨカは新しい肉棒を咥え込む。
     口奉仕の時間になってから、キヨカは既に三人は射精させ、その全員の精液を胃袋に収めていた。他の生徒とはかけ離れた高い性技術から、兵士には淫乱な生徒と見られているが、そうではない。
    (みんなの負担は私が減らす)
     一人でも上手な生徒がいれば、仲間が精液を飲む回数を減らせると思っているのだ。だからキヨカはあらゆる舌の使い方を試行錯誤し、誰よりも多くの兵士を満足させている。人数比からして一人頭数人以上の兵士を射精させなければ追いつかないが、キヨカはすぐに四人目も絶頂させ、周りはまだ一人目の相手をしているうちに五人目の相手に入る。
     こうして負担を自分へ集めれば――。
     と、キヨカは良かれと思って技術を発揮していた。
     だが、善意が報われるとは限らない。
    「おい、隣はちゃんとやっているぞ? お前ももっと頑張れ」
     園山ハナコがせかされて、頭を振るうペースを上げる。
    「お前もだ。もっと頑張れ!」
     波野リンコも同じように注意され、より大胆に舌を動かさせられている。キヨカの技術を指標にして、兵士達は他の生徒にも同レベルの技術を求めるようになってしまったのだ。
     そして、沖田ヒナコはこうである。
    (これは郷田君の、郷田君の……)
     ヒナコは郷田ハンゾウのファンである。奉仕の際には目を瞑り、相手は郷田だと思いながら懸命に口を使っている。それだけにいっそ太い剛直の持ち主に当たった方が良いとさえ考えていた。
     郷田は豪快な攻めで戦うLBXプレイヤーだ。そのイメージを信じるなら、きっと人より太くて立派なものを持っているに違いない。大きければ大きいほど、それは郷田のものに近いのだ。
    「出るぞ」
     ドクドクと流し込まれる時も、頭の中では郷田ハンゾウを浮かべて飲んでいる。
     それだけに、小さく情けない肉棒はヒナコにとってハズレだった。二人目のズボンから出てきた短小を見て、ヒナコは顔をしかめていた。
    「な、なんじゃそりゃ」
    「おい、お前俺のを小さいとか思っただろ」
    「いや、別に……」
     小さなそれを嫌々咥え、ヒナコは思った。
     これでは郷田を想像できない。小さいために口内への圧迫感もなく、せいぜいバナナ程度しかない太さだけでは物足りない。そんなものを咥えることの方が、精神的なクッションを作ればない分、心を凌辱される気分になった。
     そして、鹿島ユノである。
    「ほら、後がつかえてるんだ。早くしろ」
     ユノが奉仕を行う男の後ろには、さらに何人もの兵士が並んでいた。口技は拙いが、ルックスの良さからユノは人気で、順番待ちになってもユノに抜いてもらおうとする兵士は数多い。さすがにみんながみんなユノの列に並んでは処理が進まないので、大半の兵士は他の女子生徒のところへ行っている。今並んでいる人数などユノ派のほんの一部に過ぎない。
     精液が放出され、溢れんばかりの量をユノは飲み込む。
    「さて、次は俺か」
    「早く出せよ? 後がつかえるんだから」
     二本目を奥まで咥え、口一杯に広がる嫌悪感と拒否反応を堪えながら頭を前後に揺り動かす。
    (こんなことしたくない! こんなこと……)
    「おらもっと頑張れ!」
     ペースを上げるよう強要され、ユノはより一層口を振るう。
     二人目の精子を飲み干しても、順番待ちはまだまだいるのだった。