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  • 羞恥のヌードモデル 桜庭ローラ

    
    
    
     その芸術家はひどく頭を抱えていた。
     違う、これじゃない。
     画材の香り漂うアトリエには、いくつもいくつものキャンバス台に立てられた作品が並んでいるが、このどれもに彼は納得していない。
    「だったら、オーディションを行ってはどうでしょう」
     いつも自分の作品を売り込んで、どこかの金持ちの目に傑作を留めさせたり、美術館への展示にこぎつけてくれているマネージャーの言葉であった。
    「オーディション?」
    「今までのヌードは全て、所詮は脱ぎなれた女がモデル。どこか似たようなオーラの作品ばかりになるのはそのせいですよ」
    「ふむ」
     画力向上の目的なら、男女問わずあらゆる体格の持ち主を描くのがいい。太った人や痩せた人など、様々な皮膚や筋肉を描き慣れるべきなのだが、傑作狙いのモデルとしては、誰かしら素材から優れている子がいい。
    「ですから、まだ場慣れしていない女の子。アイカツに励むアイドルの卵ってのはどうです」
    「それは例えば、アイドル学園の生徒かね」
    「ええ、私に任せて下さい。必ず良い素材が見つかるはずです」
     全てマネージャーに任せることにした。
     全裸可能なモデルを派遣する業者からでは、確かに場数を踏んだ女性しか来ない。当たり前にポーズをこなし、胸も尻も晒せるプロの裸は、雇う金さえあればいいので、ある意味では見れて当然である。
     もっと脱ぎなれない、初々しい上で可愛い子。
     そんな女の子の方がいいのかもしれない。
    
         †††
    
     アイカツモバイルにオーディションの通知が入り、四ツ星学園に通う三人の女子生徒は、それぞれ顔を見合わせていた。
    「絵画モデルのオーディションだって」
     と、七倉小春。
    「小春は絵が描けるんだったよね」
     虹野ゆめ。
    「うん。このオーディションを出した芸術家の人は、とっても有名人みたい。芸術に見合った綺麗なモデルを探しているんじゃないかな」
    「ふふーん」
     桜庭ローラは既にどこか勝気な顔を浮かべていた。
    「もしかして、ローラは受けるの?」
     ゆめが尋ねる。
    「もちろん! ビシっとバシっとポーズを決めて、それをじーっと維持するのは、体力のいることだけどね。私はやるわ。挑戦あるのみ」
    「じゃあ私、ローラを応援するよ!」
    「私も!」
     三人とも、まだ知らない。
     その通知内容には、ヌードの募集である事実が記載されていなかったからだ。
    
         ***
    
     オーディション会場となる待合室では、あらゆる学校から集まった女子生徒が、それぞれの想いやチャレンジ精神を胸に宿して待機している。
    (この中から、合格するのは一人だけ……)
     意気込みに満ちた熱気は、部屋全体を静電気に満たしたように肌をピリピリ痺れさせ、それがローラの心を刺激する。
    (絶対に合格してやるわ!)
     しかし――。
    「みなさん。よくぞ集まって頂きました」
     オーディションの説明を行うため、芸術家の専属マネージャーを勤める男が現れると、熱と痺れの空気がガラっと変わる。
    「これより、ヌードモデルオーディションを開催致します」
    (ぬ、ヌード!?)
     そんなことは一言も聞いていない。
     あたりは騒然となっており、ローラ以外の全ての参加者も、たった今初めて聞いたらしい。
    「どういうことですか? 今になってヌードだなんて」
     すぐにローラは質問を飛ばしていた。
    「わざとですよ。我々が求める人材は、この土壇場で咄嗟に覚悟ができる度胸の持ち主。脱げないという方は帰ってよし。ヌードに合意できる方のみ、この場に残って下さいね」
    「合意できる人のみ……」
     参加者だった女子達は、お互いの顔を見合わせヒソヒソと相談を始めている。
    「ミロのヴィーナスのように、裸が芸術となることはご存知でしょう。うちが欲しいのは、そのテーマに一致した女の子。それは度胸や決断力の持ち主でもある」
     大げさに肩を竦めるマネージャーは、さらに一言付け加えた。
    「どうしました? どうぞ。遠慮なく帰って下さい」
     その言葉に押されるように、一人ずつ帰り出す者が現れた。
     二十人以上はいた女子の半数以上は抜け落ちて、この待合室の混雑具合が嘘のようにがらんと広くなってしまう。
    (どうする? ローラ。帰るなら今のうちよ……)
     実績を上げたい気持ちと、安易の裸は出せない板ばさみで、ローラは葛藤のままに立ち尽くしている。
    「あらあら、度胸のない子でいっぱいねぇ?」
     そこには周囲を嘲るような高身長の他校生の姿があった。
    「何もAVに出るわけじゃないのに、芸術への協力もできないだなんて、よっぽど自分の体に自信が持てない子達なんでしょうねぇ?」
     ムッとした。
     それはローラの勝気な性格を完全に刺激していた。
    「あなたは?」
    「当然、残るわよ。だけど、あなたは帰った方がいいんじゃないかしら? 四ツ星学園の生徒か何か知らないけど、ここで迷っているようじゃねぇ?」
    「いいえ、帰りませんよ。合格するのは私です」
    「言ったわね? 桜庭ローラ」
    「ええ、言いました」
     二人の視線がぶつかり合い、激しい火花が散っていた。
    
         †††
    
     芸術家の中年と、そのマネージャーに加えて、どうやら事務所などの関係者らしい複数の男が長いテーブルに並んでいる。
     脱衣オーディションの方法は、横一列に並んだ女子達が順番に前に出て、目の前でストリップを披露することだった。
     男しかいないテーブルに近寄って、一枚ずつ脱いでいく。
     すると、男達は女体品評会を開催して、やれ胸が大きい小さい、形がどうだ。くびれの良し悪しについて口々に語り始め、言葉によって辱める。順番が終われば列へと戻り、次の女子が同じようなストリップと品評会に移る。
     こちらからアピールするのは、ストリップと裸体以外に何もない。面接らしいやり取りも、特技の披露も何もかも、この場所には存在すらしていない。
    (これがオーディションだなんて……)
     八人並んでいた女子は、右から左へ順々に全裸となっていた。
     そして、七人目。
     撤退する女子を侮蔑していた他校生は、言うだけあって最も抵抗なく脱ぎきり、大きな胸と巨大な尻からなるグラビア級のボディを魅せつける。
    (これは手ごわい……)
     このオーディションで選ばれるのは、芸術のテーマに一致した女体である。腰の細まりがほどよい高身長の体格は、ここにいる誰よりも別格で、ローラの胸や尻では敵わない。審査員の反応からも、既に彼女で決まったような空気が流れていた。
    「おお! メロンのようなオッパイじゃないか!」
    「桜色の乳首がいいねぇ?」
    「唇も艶々で、一番ムラっときちゃうね」
    「先生。彼女で決まりでいいんじゃない?」
     こうも女を辱めるための会で、本当に勝ちたいかといったら複雑になってくるのだが、あからさまに挑発的な態度を取った他校生に負けるのも癪でならない。
    「勝負あったわね。もうあなた、帰っていいんじゃない?」
     特に恥じらいもなく列に戻ってくる他校生は、またしてもローラを挑発する。
    「どうしてですか」
    「だって、どうせ落ちるオーディションで脱いだって、損するだけでしょう? やめておいた方が身のためだわ」
    「勝手に決めないで下さい! まだ勝負は決まってませんから」
     自分は何を言っているのか。自分も同じ品評行為をされたいのか。
     いや、それでも嫌だ。
     この女には負けたくない。
    「四ツ星学園桜庭ローラ。脱ぎます」
     だからローラは前に出た。
    
     じぃぃぃぃぃ――――
    
     長いテーブルで横並びになった男の視線は、その全てが同時にローラ一人に注がれた。
     あわい水色にネイビーの締め色を合わせた制服は、サイドファスナーと胸元スナップボタンで着脱する仕組みである。
    「おっ?」
     それを脱ごうとしただけで、期待に満ちた声が上がって、ローラの手は一瞬止まる。
    (いや、負けない……)
     他校生への対抗意識。
     ぐっと恥を堪えたローラは、大胆に制服を脱ぎ去って、下着のみの姿となる。
    「脱いだものはこちらへ」
     と、そういう決まり。
     ローラは制服を折り畳み、テーブルへ運んでいった。
     こうして一枚脱ぐたび手渡すことで、最終的に全ての衣服を手放して、彼らが返してくれない限り全裸でいることになってしまう。
    「桜色のブラとパンツか」
    「さすがは桜庭ローラですなぁ?」
     下着の時点で品評会は始まった。
    「上下共に白からピンクのグラデーションで、中間の色の境目が鮮やかなのが、とても本人らしさというか」
    「ええ、雰囲気が出ています」
    「ブラ紐とパンツのゴムがレース付きなのもセンスがいい」
    「さあ、さっさと次を脱いで下さい?」
     自分達で制止させておきながら、あたかもローラが時間を喰った言い回しだ。腹立たしいことこの上ないが、背中のホックを外してブラジャーを取り去ると、控えめな膨らみしかない乳房を晒した。
     当然、ブラジャーもテーブルに置きに行く。
    (どうぞどうぞ。別に平気ですから)
     明らかに耳まで染め上げているローラだが、あくまで気丈に振る舞っていた。
    「うーむ」
    「わかってはいましたが」
    「さっきより小さいですな」
     あとはパンツ一枚しかない恥ずかしさと、乳房を貶す言葉に顔を歪めて、ローラは震えながら残りを脱ぐ。
    (――うっ! やばい!)
     尻とアソコから布地が離れ、下腹部の肌が外気に触れる瞬間は、言うまでもなく今までの脱衣の中で最も恥ずかしい瞬間だった。
     しかも、パンツの裏側にはおりもののシミがある。
    (わかっていれば新品を履いてこれたのに……)
     急なヌードの告知は、そんなささやかな対策さえも封じている。染み付きをテーブルに置くなり手に取って、あろうことかローラの目の前で確認した。
    「ちょっと茶色がついてますね」
    「ウンコ?」
    「んなわけない。おりものだよ」
    (こ、この人達……!)
     これで、全裸。
     毛の生えていないアソコは視線に晒され、乳首も硬く突起している。あまりの羞恥に思わず隠したくなってしまうのは、腰の後ろに手を回して、固く指を組ませることで堪えていた。
    「おや、ツルツルで」
    「けどよーく見てください?」
    「ああ、産毛程度にはあるんですね」
    「けどまあ、パイパンでしょう」
     アソコにコメントが集まっていく。
    「割れ目も綺麗で」
    「ビラがはみ出ていない」
    「なんというか。ヘラで掘り込んだような一本筋?」
     これが普通の面接であったなら、好感触の気配に素直に期待できるような、けれど性器に対する評価が高まっていた。
    (平常心……平常心……!)
     平然とした表情を維持しているが、本当なら恥ずかしさに歪みきり、恥辱にまみれきっているはずのものを無理に抑え込んでいるのだ。ただ普通の顔をするだけで、表情筋を少しずつ消耗していた。
     微かながらにピクピクと、顔を維持する筋肉が、痙攣じみて震えているのが、目が良ければわからなくもない。
    「お尻も見せてくれる?」
    「は、はい」
     背中を向けると、真っ白な丸尻に視線が集まる。
    「いいんじゃない?」
    「小ぶりで丸っこいし」
    「可愛さがあってそそりますよ」
     尻への評価をひとしきり浴びせられ、やっとのことでローラの審査は終了する。
     そして――。
     八人並ぶ全裸少女の中から、一人だけ合格者が決定するのだ。
    (これで選ばれるって、けど……)
     隣に立つ他校生の、当然自分が選ばれると思った顔。
    (この人に負けても悔しい)
     選定を選ぶのは芸術家本人らしい。
     だったら、他の余計な男達はどうしていたのか。ただ女の裸を見に来ただけか。思っていても口にはできないことが次々浮かぶ。
    「合格者は……」
     芸術家の口から、重々しい声が放たれる。
     みんなこれで合格したいと思うのだろうか。
     ただ、この芸術家だけは真剣な眼差しで、特にいやらしさなく品定めを行っていた。審査員がこの人だけなら、ローラもこんな気持ちにまではならなかっただろう。
    「ふふん」
     ニヤっとした笑みがローラを向く。
     合格者は私よ? と、目がそう言っていた。
    (わからないわよ。そんなの)
     ローラも目だけで言い返すが、明らかに尻と胸が豊満で、バランス良く腰もくびれた女体美は、百人が百人とも口を揃えて評価するものに違いない。それだけのスタイルを獲得するための努力を重ねた相手は――強敵だ。
    
    「桜庭ローラ」
    
     それが、芸術家の告げた名であった。
    「……え?」
     ローラ自身が驚く。
    「ど、どうしてですか!?」
     他校生は声を荒げた。
    「確かに肉体だけでいえば、あなたが最も万人受けする。しかし、欲しいのはテーマに合う素材であって、ここはグラビアのオーディションじゃない。腰のくびれも胸の大きさも、必須というわけではない」
     それが、彼女の選ばれなかった理由。
     ではローラが選ばれたのは……。
    「度胸があり、机上に振る舞うだけの精神力がある。しかし、かといって脱ぎなれてはいないため、羞恥心も十分強い。顔立ちといい控えめな胸といい、こちらの方が私の描きたい芸術には合っている」
    (よ、喜んでいいのかしら……)
     肉体では負けていた。
     だが、オーディションには勝った。あの態度だった他校生を下してやったのは、決して悪い気はしないのだが、同時に桜庭ローラのヌード画が製作されることまで決定している。
    (大丈夫よね。有名人だし)
     ローラも事前に調べてあり、目の前の芸術家がいかに著名で優れた画家であるかは把握している。彼の作品の中にはヌード画もいくつかあった。その歴代作品の中に、ローラの裸も加わるのだ。
    「……ま、負けたようね。だけど覚えてなさい? 次にまた会うことがあったら、今度は私が勝つんだから」
    「私も負けません。次もその次も勝ってみせますから」
     これが裸でさえなければ……。
     良きライバルと出会った瞬間として、もう少し絵になる場面だったことだろう。
    
         ***
    
     芸術家のアトリエでは、白い布を被せた土台に乗り、ポーズを取って二時間から三時間は同じ姿勢を維持することになる。休憩を挟むとはいえ、一切動かないように過ごすのは、意外と筋肉を使う労働だ。
     もっとも、日頃体力をつけているローラであれば問題ない。
     問題はポーズの内容だった。
    「あの、これ……」
     ローラは四つん這いとなっていた。
     尻を高く掲げるために頭と胸はなるべく低め、額を下に押し付けているので、自分自身の開いた脚の向こう側が逆さに見える。
    「芸術にエロスはつきものでね」
    「は、はぁ……」
    「ピンとくるポーズを見つけたい。とりあえず、このままでいてくれないか」
    「いいですけど、これって……」
     性器はおろか、明らかに尻の穴まで見えてしまう。
     よりよい角度を探してか、芸術家はローラのまわりをぐるりと一周歩いていき、最終的に尻の後ろにしゃがみ込む。
    (そこはお尻の穴……!)
     どこに顔が接近しているかなど、気配だけでもよくわかった。
    
     じぃぃぃぃぃぃぃ――
    
     と、どんな高出力かと思うほどの強い視線が、ローラの皮膚を焼ききらんばかりに、桜色の雛菊皺へと集中している。
    「テーマは強気な乙女。たまらない恥を堪え、無理に気丈に振る舞う姿だ」
     まるで尻に話しかけてこられるようだ。
    「だとしたら、これは立派な演技……」
     芸術家の意向に沿った自分を演じることが求められる。
    「自分は脅迫されていると思って欲しい。言いなりにさせられているが、負けず嫌いなので気丈に振る舞う。何でもないと言わんばかりに、ケロっとした表情でいようとするが、どこか恥じらいを隠しきれていない」
    (それって、演じるまでもなく既に恥ずかしくて死にそうなんですが……)
    「こちらに顔を向けて欲しい」
    「はい」
     ローラは肩越しに振り向いて、芸術家と目を合わせる。ローラの視界に入るのは、自分の肛門をまじまじと見つめてくる顔だった。
    
    「悪くはないが、別のポーズも試してみよう」
    
     次は立ち姿勢だった。
     肩を小さく内側に丸め、くの字気味に腰を折り、内股で太ももを摺り合わせる。両手で胸とアソコを覆い隠して、赤い顔のまま相手に強気な視線を向ける。脱げとでも強要され、全裸と成り果てた状態で脅迫相手を睨み返すイメージだろうか。
    
     同じ立ち姿勢のまま、頭の後ろで両手を組み、足を肩幅程度に開いて背筋を伸ばす。これからボディチェックでも受けるようなポーズ。何かの理由で捕まって、所持品チェックと称して体の穴まで調べられる直前なのかもしれない。
    
     背中を向け、肩越しにこちらを振り向く。
     両手で胸を隠しつつ、どこか涙ぐんでみせる表情。
    
     恥ずかしさのあまりに、思わずしゃがみ込んだイメージでのポーズは、横向きから見た具合と背中側から見た感じを比べられ、それらもイマイチらしく没となる。
    
     最終的にローラは、M字開脚を披露していた。
    (これって、自分を征服された気分……)
     仰向けで自らの膝を抱えて、ご丁寧に腰の下には枕を敷くから、全ての恥部が見えるように高さが調整されている。
     もう駄目だ。耐え切れない。
    「~~~~っ!」
     ローラは必死に顔を背けていた。
     横向きの顔は土台に埋まり、髪のかかった耳と頬だけが正面からは見えている。
    「うん。やっぱり、少し安直だがこれが一番か」
    (そんな……よりによって全部見えるポーズで……!)
    「唇を丸め込んで、恨みがましい視線をこちらに送るんだ。一人称視点の絵で、鑑賞する人間が絵の中の君にこのポーズを強要している気分になるためにね」
    (……そんな目的って、本当に芸術?)
     だが、相手は著名人。
     芸術での実績を持つ者という事実は、ローラの口から疑問を封じている。
    「このまま描き始める。いいな」
     芸術家はキャンバス台を立て始めて、絵の具を揃える準備にかかる。椅子に座って描き始めるので、これでローラは二時間以上動けない。休憩を挟みこそすれ、また二時間以上のまんぐり返しを維持すれば、合計四時間以上はこのポーズを取っていることになる。
    (やっぱりこのオーディション……落ちればよかった……)
     今になって後悔しても、もう遅い。
     諦めきった気持ちとなり、ローラは今日一日この卑猥なポーズを提供した。
    
         †††
    
     数日にわたって描かれたローラの絵は、綺麗な一本筋のアソコと清潔な肛門を映し込み、唇を中に丸めた赤ら顔からは、その羞恥心がよく表現されている。
    「これが私の……」
     自分自身の痴態を拝み、ローラはそれ以上何も言えずに目を背ける。
    (私って、こんな顔だったんだ……)
     表情自体はあえて作っている。
     ただ、赤面具合。
     恥ずかしいのは当たり前だが、慣れていけば耐えられる。合計何十時間かはそのポーズで過ごした以上、もう胸や尻だけで騒ぐこともなくなった。ならば顔の色など、まして耳までもを意図的に染めてみせるのは至難の業だ。
     だから、途中からは顔の色も普通になっていたはずだが、絵としての仕上がりには、初期の赤面具合が如実に反映されていた。そんな赤面ぷりを見るに、最初の自分はこんな顔だったのかとつくずく思う。
     それに、もっと芸術らしい芸術を想像していた。
     それこそ、美術館に置かれる絵画として、官能らしい色気こそあれ、男性向けのアダルトじみた卑猥は存在しない、そういう絵になると思っていた。
    (エロすぎ……)
     これが世に出ると思うと……。
    (……終わった。何かが終わった)
     アイドルを目指すのに、世に公表される絵がこれでは、さすがによろしくないはずだ。
     やっぱり、合格しなければよかったのだろうか・
    
         ***
    
    【ある評論家の言葉】
    
     四ツ星学園の生徒である桜庭ローラを題材として、実に卑猥なポーズを絵にすることで、モデルの中にある細やかな心理を抉り出しているように思う。勝気で負けず嫌いな性格から、こんなことでは折れまいと振る舞いつつも、顔面の色はみるみる赤に変わってしまう。羞恥心と相反する気丈さというものを見事に表現してのけた。
     性器ばかりか、肛門の皺でさえも容赦なく描ききったことは、この画家にある果てしないこだわりを感じさせる。
    
    
     あの芸術家の作品に下された評価を、後々になってローラも知ることになる。
    (か、体だけじゃない……)
     知ったローラはまずます俯いた。
    (心の中まで、絵にされちゃったんだ……)
     それはもう全てじゃないか。
     いや、違う。
     誰にでもある当たり前の羞恥心が描写されたというだけで、日々アイカツに励む学園でのローラまでは描かれていない。
     けれど、体以上のものまで描かれた事実は、ローラにとって最高に気恥ずかしく、これから何週間経っても、何ヶ月経っても、ふとすれば思い出してしまって、ちょっとした日常の中で急に顔が染まるようなことになる。
     夢にも出るだろう。
     それは誰かに裸を視姦されるものかもしれない――だって、既にされているのだ。絵の中にいるローラは、大金を払ったコレクター以外にも、ネット画像として広まっていく。こうしている今にも、どこかにいる誰かの視線が、ローラの胸かアソコか肛門を眺めているのだ。
    
     ヌードモデルはもう真っ平……。