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  • 栞子の乳房検診

    
    
    
     俺は思わず目を奪われた。
     篠川栞子。
     なんて綺麗な人なのだろう。
     学生時代から医学を学び、晴れて患者の診察を受け持つようになった俺は、まだまだ経験が足りないために女性の胸というものを見慣れていない。場数を踏んだ医師ならもっと見慣れているものなので、美人だろうと何とも思わずに診察に臨めるものなのだが、俺の場合はまだ完全には欲情めいた気持ちを封印できない。
     もちろん診察に支障が出るほど興奮したり、我を忘れて揉みしだくような真似は決してしないが、栞子ほどの美人では見惚れてしまう。
     黒髪の長髪。ブラウスの上からでもわかる大きな胸。
     うむ、衣服を内側から膨らませるような、こんなパンパンの巨乳をしていれば、男なら大なり小なり目を奪われるのが普通のはず。
     とにかく、冷静に診察をしなくては……。
    「あ、あの……。よろしくお願いします」
     なかなか気の小さい人らしい。
    「どうも、篠川さん。さっそく問診から初めていきましょう」
    「……はい」
    「妊娠や出産のご経験は」
    「ありません」
     栞子は顔を赤らめて、恥ずかしそうな細い声でそう答える。
    「性交経験は無いということですね」
    「…………はい」
     さらに恥ずかしそうにして、小さな小さな声で頷く。
     ふむ、処女か。
     なんとも初々しいというべきか。ちょっとした質問くらいで、ここまでモジモジする女性なんていうのは滅多にいない。
     というのも、乳がん検診に来るのは三十代や四十代の女性が多い。歳がいっていればいっているほど、既に経験があって見せ慣れている可能性は高まるし、診察を受けた場数のおかげで割りに冷静に服を脱ぐ。
     しかし、二十代でも症例がないわけではない。
     彼女は健康を思って来たのだろう。
     俺はさらに生理周期や病歴、家族暦といった必要な質問を行って、それらの回答について問診表にチェックを入れる。生理や月経について答えるときは、やはり恥じらいっぽく赤らんで、どうにも可愛らしかった。
    「では視診触診の方に移りますので、服の方をお願いします」
    「……はい」
     既に耳まで染まっている。脱ぐ前からこんなに赤くて、この人は乳房の視触診に耐え切れるのだろうか。
     栞子は衝立の裏へ移動し、まずは上から脱ぎ始める。
     衣擦れの音から、俺は想像した。
     裾の内側へ腕を引っ込めた栞子は、中から上へ持ち上げる形で一枚脱ぎ、軽く折りたたんだブラウスを脱衣カゴの中へそっと置く。男性医である俺の存在を気にしつつ、羞恥に染まった表情で背中へと手をまわし、ブラジャーのホックを外すのだ。
     ブラジャーが落ちないように、胸を隠すかのように、片腕で胸元を支えた栞子は、左右の肩紐を一本ずつ順番に下げていく。
     隙間から引き抜く形でブラジャーを取った栞子は、両腕でしっかりと胸をガードしながら、すっかり肩の縮んだ赤面姿で衝立の裏から姿を見せた。
    「……脱ぎました」
     椅子に座った栞子は、モジモジしながら両腕を横に下ろす。
     すごく、良い胸だ。
     ただ大きいだけでなく、綺麗な丸みのカーブを成して、美乳といえる形状なのだ。乳輪も決して大きすぎることがなく、小さすぎるわけでもない。
     こんな凄いおっぱいを観察できるなんて……。
     いや、あくまでも診察だ。医師というのは信頼が大切な職業なので、患者に疑われるようなことはあってはならない。
    「ではじっとしていて下さいね」
     俺はそーっと顔を近づけ、視診を開始した。肌質から皮膚疾患の有無を確かめつつ、表面におかしな凹凸がないかもじーっと見ていく。
    
     じぃぃぃぃ……。
    
     と、必然的に視線を注ぎ込む形となる。
     栞子は静かにじっとしているものの、顔が明らかに言っていた。
     ――は、恥ずかしいです……。
     大人しい彼女なら、控えめに小さな声で言うかもしれない。
    「同時に触診も行っていきます」
     断りを入れてから、俺は栞子の乳房に触れた。下から持ち上げるような形で指先に乗せ、手に重量を感じ取る。
     やっぱり、凄くいい胸だ。
     俺は鷲掴みにして指を沈め、しこりや異常な張りがないかを探り始める。診察目的のマニュアルに則した揉み方で、あくまで医療行為の範囲を外れないように務めた。
     いや、しかし――。
     少しは長めに触っていたい。
     ふと顔を見ると、栞子の頬は恥じらいで上気していた。
    「少しかかりますので、ご辛抱下さい」
    「は、はい。大丈夫です」
     俺はさらに探りを入れ、しこりの有無を確認すると同時に、揉み心地に関しても手に覚えこませていた。もっちりと張り付くようでいて、ふんわりともしている優しい質感が、柔らかな弾力で沈めた指をそっと押し返す。
    
     モミ、モミ、モミ、モミ、モミ、モミ――。
    
     じっくり揉み込む。
     顔にはいやらしさを出さず、真剣さを装い続けた。
    
     モミ、モミ、モミ、モミ、モミ、モミ――。
    
     とても心地良い。
     いつまで揉んでいられるだろう。
     長くやりすぎれば当然まずいが、もう少し揉んでいたい欲求もある。
     あと三十秒。
    
     モミ、モミ、モミ、モミ、モミ、モミ――。
    
     俺は普通の患者を揉むより長く、この手に栞子の乳房を味わった。
    
    
    


     
     
     


  • ドーター調整セックス グリペン

    
    
    
     激しく息が乱れていた。
     お互いの呼吸が絡み合い、緊張と興奮によって上がった心拍数が、何故だか同じリズムを刻んでいるような錯覚に囚われる。
    「へ、平気か? グリペン」
    「慧こそ、凄い汗。垂れてくる」
     気づけば髪の先から雫が落ちて、それがグリペンの頬にかかっていた。これじゃあ、真夏の炎天下にいるくらいには、肉体が水分を失っていそうである。
    「ごめん。興奮しすぎてるかな」
    「構わない。わたしも興奮してる」
    「そ、そうなのか?」
    「うん。慧と繋がってるから」
     仏頂面のようでいて、よく見ればグリペンも紅潮している。顔がしっとりと汗ばんで、頬に触れれば潤いが指に伝わる。薄い桃色の髪を持ち上げて、それから首の筋に触れていく。指先で表面だけを撫でていき、つーっ、と、鎖骨に沿って、その下にある膨らみに五指を全て絡ませた。
     鳴海慧とグリペンは裸でいた。
     しかも、ベッドにグリペンを押し倒し、挿入までしてしまっている慧は、今にも暴発しそうな肉棒で、膣の熱と触感を味わっている。
     根本まで差し込んだ肉棒は、まだ一度も動かしていない。
     大きく開かれた灰色の瞳に吸い込まれ、心奪われてしまった慧は、情熱的な愛を注がんばかりに熱のこもった眼差しを向けていた。
     アニマはザイで出来ている。
     ザイからコアを取り出し、それを脊髄の一部として培養・生育したものだと、前に真相を知って驚愕したが、こうしていると普通の人間の少女だとしか思えない。こんなにも温かくて、根本から締め上げて来る快感があるなんて、グリペンが戦闘機だというのをつい忘れそうになってしまう。
    「動くぞ? グリペン」
    「うん。動いて」
     慧はやっと動き出し、まだ未熟なピストンによってナカを貫く。
    「んあっ」
     グリペンが喘いでいた。
     挿入の気持ち良さだけでも、頭がどうにかなりそうだというのに、自分がグリペンをよがらせているだなんて思ったら、ますます肉棒が滾ってくる。
    「グリペンっ、グリペン……!」
     溢れんばかりのエネルギーを一心不乱にぶつけて掻き回し、いとも簡単に射精感が引きずり出される。
    「あっ、あ! あん! あん! あっ、あうっ、あふっ、んっ、あん!」
     グリペンの全身がくねくね動く。人形のように整った顔が左右によがり、ベッドシーツに髪を振り散らかす。弓なりに腰が弾んで、控え目な乳房は上下にプルプル揺れていた。
     よがる両手が何かを求め、シーツを鷲掴みにして握り締める。
     慧はグリペンの肩に触れ、たどっていくように二の腕を揉み、肘に触れ、だんだんと手首に迫って手に触れる。グリペンの手が、待っていたように慧の手を握り締め、慧の方からも握り返してキスをする。
     唇を重ねた瞬間から、グリペンの舌が慧の口内目掛けて飛び出した。
     お互いの存在を激しく求め合う貪り合いで、舌の唾液が混じり合い、何度も何度も糸が引いてはぷつりと千切れ、まだまだ足りずにまた頬張る。
     駄目だ! 幸せすぎる!
     グリペン! グリペン!
     彼女がいなければ生きていけない勢いで、無意識のうちに慧はピストンを速めていく。
    「あっ、あ! けい! 慧っ、あん! あぁん! あっ、あああっ、あん!」
     肉棒の根本が激突するたび、慧の陰毛にはグリペンの愛液が付着していく。べったりとした粘液で毛先が固まり、毛穴まで愛液で濡れるほどにピストンは激しくなる。慧が起こした嵐の中に、グリペンを晒しているようなものだった。
    「くっ、出る! 出る!」
     射精感が限界を迎え、出すしかなくなった慧は、もう根本まで埋め込んでいるにも関わらず、まだ深い部分に届かせようとしているように、強く強く腰を押し当て、グリペンのもっとも深いところに白濁を解き放つ。
    「来てる! 慧の精液!」
    「グリペンっ!」
    「慧……ッ!」
     激しい求め合いだった。
     グリペンの中に自分の証を植え付けようと、必死なまでになる慧に、グリペンも全力を出し切る気持ちで精子を受け取る。
     ビクビクと肉棒を震わせて、全てを出し切った慧は、ぶっつりと電源が切れたように、ぐったりとグリペンの上に折り重なる。
    「慧。気持ち良かった?」
     グリペンは慧の背中に手を回し、強く抱き締めていた。
    「ああ、すっごく」
     心からの感謝の気持ちで、慧の胸中は溢れかえっていた。
    「慧が気持ち良かったなら、わたしも嬉しい」
    「ありがとな。グリペン」
    「慧のおチンチンはまだ大きい。慧はまだシたがっている」
    「……かも」
    「わたしは何回でもいい。慧、遠慮なく来て欲しい」
    「本当に遠慮しないぞ?」
    「そうして欲しい。何度でもシたい」
     誘う瞳に飲み込まれ、慧は再び挿入する。
     そして、何度も射精して、中も外も精液で汚しきる。やっとの終わりを迎える頃には、グリペンの肢体は白濁にまみれていた。
    
         *****
    
    「グリペンと性交渉をして欲しい」
     いつしか八代通に言われ、唐突すぎて噴き出した。
    「は!? なに言ってるんですか!」
    「いや、すまん。驚くのはわかっている。その反応もわかる。わかるんだが、すまないが俺も本気で言っている」
     以前、グリペンが好調な理由がわかったと言われた時は、脳波グラフをプリントしたものを見せられた。グリペンの脳波は慧の脳波を受けて安定する。同調とでもいうべきか、十メートル圏内に慧がいれば波形の合成が始まり、安定するのだと説明された。
     だったら、身体の接触でより活性化する?
     なんてことを、当然思いはしたのだったが、なにもまさか、本当に性交渉が有効だという説を打ち立てることはないだろう。
    「その、性交渉? そんなこと急に言われても、っていうかいいんですか!?  そんな親が娘を差し出すみたいな!」
    「正直言うと、どうしても興味がある。身体の接触でどこまで活性化するか。セックスを行った前後でどのような変化が観測できるか」
     技術者としての興味を膨らませ、慧とグリペンが性交した場合のデータを意地でも欲しがる八代通の熱い説得に、思わず頷きかけもした。が、さすがの内容に踏み止まる。これをすんなり受け入れるのは、人としてどうなのか。己の欲望に正直になってばかりはいられなかった。
    「幸い、グリペンの君への好意は強い。だからセックスなんて大したことない」
    「大したことありますよね!?」
    「だがこれは命令だ」
    「命令っ!?」
    「とにかく頼む。セックスをして欲しい」
    「いや、だからそれはちょっと!」
    「頼む!」
     と、こんな押し問答が全てのきっかけだった。
     さすがにさすがの内容で、だから慧だって意地でもかわそうとしたのだが、最終的には慧をホテルに泊まらせて、そこに全裸のグリペンを送り込む強硬手段まで使われた。
     八代通にどんな知識を吹き込まれてか、セックスしよう、フェラチオしてあげる、手でどうか、などなど。グリペンにまで迫られて、慧の理性が折れる形で、結局は性交渉を行う仲にまで発展してしまった。
     本当に良かったのか? まずかったんじゃ?
     生まれて初めてのセックスをして、感激に震えた後は、罪悪感に苛まれたが、そんな胸中など知らないように、二度目三度目と関係は繰り返された。
     いつしか性交渉は任務のうち。
     さしもの慧も、やがてはいちいち拒んだり、正論や理性めいたことを唱えようとすることはなくなっていた。
    
         *****
    
     そして、これは八代通が慧に裸のグリペンをけしかけ、意地でも肉体関係を持たせようと画策していた頃の出来事だ。
    
    「いいかポンコツ娘。これからセックスを学んでもらう」
    
     かなりの肥満体がそこにいた。
     首の太い、醜悪ですらある外見の、八代通遥という男は、ホテルの一室を借りたソファに座り、丸裸で勃起した一物をそそり立てている。
    「セックス。セックスというのは、何をすること?」
     不思議そうに見上げるグリペンは、同じ丸裸の格好で、床の上に正座している。これから学び教える関係の、生徒と教師といったところか。グリペンの人格矯正プログラムには、性交渉の中で行う奉仕や挿入の知識がなく、だから直々に教え込むというわけだ。
    「ま、ひとまずだ。それは人間同士で子供を作るために行う。人間の男はな、性器に快感を与えると、白いオシッコを出す。精液といって、その中には精子というものが含まれる。精子が女の子宮に入り、卵子っていうものと結びつくことで女は妊娠する」
    「わたしと慧で、子作り?」
    「ところが、そういうわけじゃない。子供を作る以外にも、単純に快楽を求めてセックスをすることがある。セックスは気持ちいいものだ。だから人間なら誰でもしたがる。子供が出来ないように、避妊道具を使ってやるわけだな」
     こうして八代通はセックスにまつわる知恵を語って、ピルやコンドームの存在についても教えていく。どうして避妊が大切で、子供が出来ればどういう責任が付きまとうのか。セックスとは膣に男性器を挿入することを言うものの、他にもフェラチオや手コキといったプレイが存在するなど、性に絡んだ知識なら何でも語った。
    「で、問題なのは慧だ。慧とお前にセックスをさせたいが、肝心の慧が拒否している」
    「慧はわたしが嫌?」
    「そうじゃない。これは人としての道徳の問題だな。それについても教えるが、今は後回しだ。とにかく慧はセックスを拒否していて、なんとかその気にさせる必要がある。裸で迫るだけでも十分に効果はあるかもしれないが、実践経験を積んだ方が、より確実になるんじゃないかと思うわけだな」
    「つまり、わたしとハルカがするのは練習のようなもの」
    「そうだ。ひとまず手コキをやってみてくれ」
    「わかった」
     ミルク色の五指が、肉棒へと絡みつく。
     ほとんど勉強のつもりでいるグリペンは、慧とのセックスに備えた練習として、生まれて初めての手コキに挑戦した。
     右手で上下にしごいていき、快感に浸る八代通の表情をグリペンは静かに見上げる。
    「気持ちいい?」
    「ああ、とってもいい」
     問いかけて、満足そうな声が返って来ると、グリペンも納得したように手コキを続けた。
     こんなにも硬いものかと感心しながら、熱気と脈打ちを手の平に感じ取る。漂う牡臭が鼻孔に流れ込み、ペニスの匂いを意識しつつも、グリペンは好奇心から、空いていた左手で亀頭に触れて、鈴口を指腹で撫でては可愛がる。
    
     しゅり、しゅり、しゅり……。
    
     竿をしごく摩擦の音が、実に静かに響いていた。
    「透明なのが出てる」
     それを見て、グリペンは不思議そうに汁を眺める。
    「先走り汁。カウパー。呼び方は色々あるが、それも性的な快感によって出て来るものだ。白くはないが、一応精子が含まれていて、女性器の中に入れば妊娠の可能性はある。ちゃんとした白い精液の方が確率は高いがな」
    「ほう」
     グリペンはカウパーに触れてみて、それが指のあいだで糸を引くのを、珍しい昆虫でも見ているように観察する。手コキによってもう少しだけこし出されることに気づいて、やや握力を込めて搾り出し、左手の五指に絡め取って弄ぶ。
    「そろそろフェラチオをやってくれ」
    「了解した」
     グリペンはさっそく頬張り、その長さが口内に収まるだけを呑み込んだ。試しに前後に動いてみると、その太さにすぐに苦しげな顔をして、ぺっ、と吐き出さんばかりに頭を後ろに引っ込めていた。
    「太い、苦しい、息苦しい」
    「三拍子っぽく言っても、苦しいと息苦しいは割と意味が被ってるぞ」
    「とにかく、苦しい」
    「あーあー。フェラもまともにできないポンコツ娘か」
     あからさまに煽るなり、グリペンは仏頂面で八代通を睨む。
    「そんなことはない」
    「だったらやってみろ」
    「やる」
     ムキになって肉棒を頬張ると、口が塞がる多少の苦しさは構いもせず、八代通を見返すために努めて顔を前後する。小さな口に収めるには、確かに辛そうなほどに肉棒は太く、大きく顎を開いた唇は、リング状に限界まで伸びきっている。
    「んずっ、ずっ、じゅりゅっ、んっ、んぐっ、むぐっ……んっ、ぐぅ……」
     男の皮膚の味が、熱気と共にグリペンの舌に染み込む。
     鼻でしか息が出来ないグリペンは、きちんとやってみせていることを目で訴え、どうだとばかりの瞳を八代通に突き刺している。
    「いい子だ。気持ちいいぞ?」
     八代通は努力を認め、その手で頭を撫でてやる。
    「フェラチオしたら、ハルカは喜ぶ?」
    「ああ、喜ぶとも」
    「慧も喜ぶ?」
    「必ず喜ぶさ」
    「じゃあ、もっとフェラチオする。頑張る」
     感じてもらえていることの喜びに、奉仕への意欲を増して、グリペンはさらに活発な動きで刺激を与える。
    「ふじゅっ、むじゅ――じゅっ、ぢゅぅ――ちゅりゅっ、むじゅぅぅ――」
     つたないなりの、テクニックの高い女さえ知っていれば、いかにも素人とわかるグリペンのフェラチオは、しかし大いに気持ちが込められている。八代通が気持ち良くなりますようにと、願いの宿った口奉仕に、肉棒がビクビクと震えて歓喜していた。
    「グリペン。これから射精する」
    「精液が出る?」
     尋ねるために口を離したグリペンは、聞くなりすぐに咥え直して、そのまま奉仕を続けていった。
    「ああ、白いものが出る。それを口の中で受け止めて欲しい」
    「つずっ、じゅっ、ずずぅ――ずじゅぅ――じゅっ、じゅむっ、はじゅぅ――」
     グリペンは頷きを返して奉仕に励み、これから口内に射精がされるのだと、心の準備を固めていく。精液を迎えるために唇を締め付けて、より快感を与えようと舌を奮い、懸命に舐め込みながら頭を前後に振り込んだ。
    
     ――ビュクン!
    
     肉棒が震え、第一射が放たれる。
    「!」
     グリペンは灰色の瞳を大きく丸め、こぼさないようにすぐに顔を前に出す。喉の奥に亀頭がぶつかり、そこでさらに肉棒はビクビクと震えて白濁を吐き出した。
    
     ――ドクン! ドク、ビュク! ドックン!
    
     グリペンの中に撃ち出される精液が、ヨダレの混ざった白濁の水溜まりとなって、口内に溜まっていく。
    「手の平に出してみろ」
    「ぺっ」
     グリペンは両手の上に吐き出して、初めて精液を目の当たりにした。
    「白いだろう?」
    「うん。白い」
     自分の手の中に広がるそれを、グリペンはまじまじ見つめ、舌に残った青っぽい味のことも口内で意識した。
    「これが精液だ。男にとって、射精ってのは気持ち良くて嬉しいことだ。オナニーといって、自分の手でしごいて出す方法もあるが、女の子に射精させてもらった方がもっと気持ちいい」
    「ハルカは気持ち良くて嬉しくなった」
    「そうだ。それに、男は女の子に向かって精液を出したいと思う生き物だ。顔や体にかけたり、口に出して飲ませたり、子宮の中に注ぎ込む。まあ、性器の中に出したら妊娠するから、ピルかコンドームのどちらかか、それか両方を使うんだが」
     そう言いながら、八代通はティッシュを手渡す。
    「これはいいの?」
    「とりあえず、拭いて捨てていい」
    「わかった」
     グリペンは手の平の白濁を拭き取って、丸めたティッシュをゴミ箱に投げ込んだ。
    「でだ。これで精液がどんなものか。エッチをするというのが、どういうことかもわかっただろう?」
    「パンツを見せたり、おっぱいを揉ませるだけがエッチじゃない」
    「そうだ。そして、チンコを膣内に挿れることを、エッチの時には『本番』とか『挿入』とか言ったりするんだ」
     こうして、自分は鳴谷慧と何をすればいいのか。どんな奉仕で喜ぶのか。どんな欲望を男は持っているものなのか。体験を通してよく学び、慧の肉棒も気持ち良くしてあげたいと思い始めていた。
    「ハルカ。本番、しよう」
    「本番には体位ってものがある。これも一つずつ教えていくから、よく覚えていくんだぞ?」
     実習によってセックスを学んだグリペンは、八代通によって一通りの体位も体験して、いかに慧を誘惑すればいいかの助言も受けた。
     あとは八代通が慧をホテルに呼び出して、そこで裸のグリペンが迫ればいい。
     そして、その後は作戦成功による肉体関係が待っていた。
    
         *****
    
     自衛隊の寮は基本的に単身者用で、今は昼の只中である。全員勤務中につき宿舎には誰もいない。
     すなわち、女の子の部屋に、男一人で上がることに。
     しかも隣室は留守。
    「い、いいのかな?」
     玄関の前で躊躇うと、グリペンは目をぱちくりさせた。
    「なんで? わたしたちは肉体関係」
    「そうだけどさ」
    「上がる。おもてなし。セックス」
     まいったな。
     グリペンの部屋にはカメラがあり、私生活は監視されている。そのせいか、いちいち一目に頓着せず、初めてここに来た時は、慧の視線も気にせず着替えを始めようとしたものだった。
    「一緒にシャワー。慧、一緒に気持ち良くなろう?」
     そんな風に誘われては、もう断ることなどできなかった。
     慧が上がり込んだというべきか、逆にグリペンが慧を連れ込んだというべきか。どちらにしても、男女一緒にシャワールームへ足を運んで、それを監視カメラで覗いた人間には、慧達がこれから何をするのか筒抜けだろう。
     だから上がるのは躊躇ったのだが、グリペンと交わることの誘惑には勝てなかった。
     お互いに裸になれば、さっそくだ。
    「フェラ? 手コキ? 慧が望むなら、パイズリも頑張る」
     浴場に入ってすぐ、グリペンは何をお召し上がりになりたいかを尋ねて来て、確かにパイズリをやるにはサイズが足りなさそうだと、控え目な膨らみを見て思う。
     どうする?
     ここまで来てしまったからには、監視カメラの存在を気にしても今更だ。それにここまで監視されているわけではない。
     シャワールームであるからには、慧はボディーソープに目をやった。
    「洗いっことか」
    「新井っこもエッチになる?」
    「お互いを触り合うからな」
    「わかった。しよう」
     お互いの手にボディーソープの泡を作って、さっそくのように胸を揉み合う。グリペンの手の平が逞しい胸板に夢中になり、慧は泡の滑りに沿わせて乳房を撫で回す。純白の泡立ちを纏う胸には、単なる裸とは違った味わいに溢れている。
     柔らかな感触を揉み込むと、手の平の中央に、興奮した乳首の突起が突き刺さる。乳輪をぐるぐるとなぞって泡を塗り、乳首を転がしもして弄ぶと、しだいしだいにグリペンの頬は紅潮していき、息遣いも熱気の宿ったはしたないものへと変わっていく。
     グリペンもグリペンで、慧の脇腹や腹筋を、二の腕の筋肉も夢中で触り、いたるところを思うままに撫で回す。
     少しくすぐったい。
     しかし、撫でられていると気持ちいい。
    「おチンチン」
     いつしかグリペンの手は下へと動き、慧の硬い一物をしごきはじめた。
    「大きくなった」
     抱き合うような体勢で、泡を纏った手でのしごきは、普通にする手コキとは違った滑りの良い快感に満ち溢れる。
     二人だけの世界に没入して、お互いの身体で遊び合った。
     慧は乳房と乳首で、グリペンは肉棒で、好きなように弄び、お互いの反応を楽しみ合う。乳首への刺激に反応して、ピクっと肩が弾んだら、グリペンは仕返しのように鈴口を責め立てて、細胞が焼かれるような熱い快感に慧は表情を強張らせた。
    「慧は感じている」
    「……かも」
    「かもではない。感じている」
    「ぐ、グリペンこそっ」
     たまらずに抱き締めて、対面座位の形に導いた。
    「セックス」
     それを挿入のサインと思ってか、グリペンは持ち込んでいたコンドームの袋を破き、慧の肉棒にかけてきた。
    「大丈夫か? いきなり挿れて」
    「平気。慧のせいで濡れた」
    「早いな。まだソコは触ってないぞ」
    「慧がエッチなせい」
    「俺のせい!?」
    「する。繋がる」
     グリペンは自分の身体を持ち上げて、自分から肉棒にアソコを被せる。性器で一つに繋がると、改めて抱き締め合い、慧は尻へと手を回す。もっちりとした白い肌の柔らかさに、ぐにぐにと揉みしだく慧の手が、グリペンの尻肉を変形させる。
    「慧っ、慧と一緒っ」
     喜んではしゃぐように上下する。
    「おっ、おうっ」
    「慧が感じてる、気持ち良さそう、私も気持ちいい」
    「グリペン……!」
     乳房で泡を塗りつけてくるような、密着した身体のヌルヌルとした摩擦まで気持ちいい。背中にまわる両手が、何かを求めんばかりに這い回り、執拗に撫でてくるのも心地いい。慧は白い尻を揉みながら、全身で快楽を味わった。
     しばらく、このままの時間が続いた。
     二人だけの世界に入り込んだし、大袈裟に言ってしまえば、この世界に自分達以外の人間がいることまで忘れた気がする。それほどにのめり込み、心が幸せに飲み込まれ、グリペンとこうしていられることが満足といったらなかった。
    「んー!」
     唐突にグリペンは呻き、ビクビクと全身を震わせた。
    「グリペン、イった?」
    「イった、絶頂。もうこのまま動けない」
    「おい、それじゃあ俺も動けないぞ」
     はち切れそうな勃起のものが、グリペンの中に埋まったままだ。
     といっても、このまま動きたくない気持ちはわかる。いっそ液体にでもなって混じり合い、一つに溶け合ってしまいたい。
    「安心すぎる。動きたくない。離れたら」
    「離れたら」
    「一日会わないだけで慧欠乏症になる」
     自分もそうなりそうだと、慧はグリペンを笑えなかった。この状態から放れたら、一体どれだけ寂しいだろう。一日どころか、今日中にグリペン欠乏症になるのではないか。かといってこの状態を永遠に続けられるわけではない。
    「グリペン。まだいけるか?」
    「うん。何度でも」
    「体位、変えよう」
     ただ離れるのはどうしても寂しくて、体位を変えるだけで性交はまだ続くのだと、慧は自分自身を慰めた。壁に両手を突かせたバックで掻き回し、正常位でキスをしながら快感を貪り尽くし、シャワーを出た後はお互いの体を拭き合った。
     本当に、本当に名残惜しく、この日はグリペンと別れた。
     明日また会えばいいのに、一瞬でも離れていることが寂しい。思わず電話でもかけてしまいそうだ。ふと気づけば、帰った後にグリペンからメールが届き、そこには『慧の声が聞きたい』と書かれていた。
    
         *****
    
     思えば全ては八代通の画策で、二人が肉体関係になるように仕向けた上、活性化した脳波データを手に入れて、さぞかし満足していることだろう。
     手の平で踊ったことで、こういう結果になったことはわかっている。
     それでも、嫌いな女の子が相手であったら、裸で迫られたからって抱いただろうか。理性を保てなかったことは否定できない。だけど、シてしまった後、責任を持って彼女を大切にしようと決心が持てただろうか。
     たぶん、そこまで好きではない、中途半端な好意しかない程度の相手であったら、もっとこう「やっちまった……どうしよう……」と、深刻に頭を悩ませ、今頃はどう謝罪すればいいかでも考えていたのかもしれない。
     俺はグリペンが好きだ。
     ずっと、ずっと一緒にいたい。
    
    
    


     
     
     


  • 廃棄処分の撤回 グリペン

    
    
    
     人形のような少女が裸でいる。
     ミルク色の肌、飴細工めいた唇、華奢な獅子。頬から顎のカーブはわずかな歪みもなく陶器のような質感を放っている。
     だが、何より特徴的なのは髪だ。
     まとめもせず、無造作に流れ落ちた髪は薄い桃色だった。
    「八代通からはなんて言われている?」
    「何をされても抵抗しないこと。どんな言うことでも聞くこと」
    「いい子だ。こっちへおいで――グリペン」
     そこはホテルの一室だった。
     醜悪な中年の元へ歩み寄り、ベッドに上がるグリペンは、どこを隠すこともなく、ぼーっと立ち尽くしているのだった。
    「……来た」
    「座ってくれ」
    「座った」
     入れ替わるようにして、今度は中年がボクサーパンツを脱ぎながら、全裸となってグリペンの前に立ち上がる。
    「……!?」
     肉棒を突き付けると、灰色の瞳を揺らしていた。
    「手コキをしてもらうよ」
    「手コキ?」
    「大丈夫。おじさんが教えてあげるからね。言う通りにしてくれればいいんだ」
    「わかった」
     手始めに根本を握らせ、上下にしごくことを教えてやる。
     仁王立ちをして、自分の元に膝をつかせて受ける奉仕は気分がいい。それも年端もいかない、手を出すべからず年齢にしか見えない外見だ。禁断の果実を食い散らかし、思う存分に穢していることの面白さといったらない。
     巻きつく指の感触と、つたないにもほどがある前後の動きは、技術だけなら他に上手い女がいくらでもいる。刺激としてはほど弱いが、金や権威の立場で経験豊富になるからこそ、いかにも素人なところは逆に新鮮だ。
    「先っぽにキスをしてくれるかな」
     頼んでみれば、グリペンはすぐに顔を近づけて、すぼめた唇を押し当てた。
    「……した」
    「もっといっぱい、何度もして欲しいな」
    「ちゅっ、チュ、ちゅ、チュ――」
     グリペンは顔を前後に動かす機械となりきり、もうやめてもよい許可を出さない限り、延々と亀頭にキスを繰り返す。
     乾いていた先端が、唇の表面にあるわずかなぬかるみに濡らされていく。亀頭の半分が唾液に濡れ、口付けのたびにぬかるみが糸を引き、甘い快感が肉棒の根本から芯の先までせり上がる。キスで塗られた唾液には、とっくにカウパーが混ざり込み、それも一緒に唇で糸を引いているはずだ。
    「?」
     何を物珍しそうに見ているのかと、不思議そうにしている顔と目が合った。
     こうまで何も知らない少女に、自分は教え込んでいるというわけか。
    「フェラチオを教えてあげよう。オジサンの言う通りにおしゃぶりするんだ」
     中年は竿を深く頬張らせ、顔を前後に動かすように教えていく。
    「あむぅぅ……」
     言われた通りの動きをこなし、グリペンは口内で舌を蠢かせ、つたないフェラチオに励み始めた。
     本来、グリペンは廃棄処分が決定していた。
     アニマやドーターの維持には莫大な費用がかかる。実戦では使えない、不安定な試験機にはいつまでも金は出せないとのお達しから、テスト飛行で能力を証明できなければ、グリペンを廃棄とする方針だった。
     そのテスト飛行によって、あえなく廃棄が確定される。
     しかし、何の運命か。
     そんな時に20機にも渡るザイが現れ、廃棄決定のはずのグリペンが、その時になって初めて大きな戦果を挙げた。グリペンの廃棄を望まない八代通は、この結果をダシに決定を覆そうと動いたわけだ。
     お役所というのは動かすのは大変なものだと相場が決まっている。
     一度決まったものを覆すのも簡単ではない。
     自分が声を入れれば、有用な機体の廃棄は立派な損失であるとして、今後もグリペンを運用していく方針を押し通すことが出来るだろう。八代通の意見を受け入れ、覆す力を持つ立場の中年は、だから一つの条件を提示したのだ。
     それが、これだ。
    「ずっ、じゅむぅ……むじゅっ、はじゅっ、ちゅるぅ……」
     太い剛直を含んだ顔が、中年の腰に向かって前後している。その薄い桃色の頭を見ているうちに、射精感が限界まで込み上げていた。
    「これから出すものは、こぼさないように飲み干すんだ」
     グリペンの頭を鷲掴みのように捕らえ、遠慮せずに精を放出させてもらうと、唇の締め付けが強まった。言われた通りに、こぼさないように気を使い、喉を鳴らして飲み込んで、肉棒が口内から解き放たれる。
     先端から白濁の糸が引き、グリペンは自分の精に濡れた唇を撫でる。
    「……これが、フェラチオ」
    「そうだよ。グリペンちゃん」
    「フェラチオは、精液を飲む」
    「飲んだり飲まなかったりする。今回は飲んでもらった」
     飲ませてやったことの充足感に、中年の心が満たされる。
     今度は全身を愛撫でもしてやろうと、仰向けになることを命令して、控え目な乳房を揉みしだく。慣れた手つきで刺激を与え、固くなった乳首を指で転がす。腰のくびれや太ももに手を這わせ、下の毛も薄桃色なのに目をやると、綺麗なワレメにも触り始めた。
    「よく言うことを聞いてくれるね」
     アソコへの愛撫をしていると、指に愛液がまとわりつく。
    「私は室長の言うことを聞いてる。抵抗しない、言われた通りにするって」
    「八代通が好きかい?」
    「ぶっきらぼうだけど時々優しくしてくれる。恩返ししたい」
     健気な言葉を聞きながら、膣の中まで指を入れ、出し入れを始めてみる。熱い肉壁の感触に、根本まで埋めた指が温まる。ピストンを続けるうちにグリペンの息は乱れ、どう見ても気持ち良さそうな、トロンと目の溶けた顔をしていた。
    「だったら、僕のことをきちんと満足させて、廃棄の決定を無しにしないとね」
    「頑張る。何でもする」
    「オジサンとセックスしようか」
    「する」
     セックスが何かをわかってもいないだろうに、グリペンはそう答える。
    「脚を広げてごらん? そう、M字にね。そうそう」
     自分の膝を抱え上げ、挿入を受け入れるためでしかないポーズとなる。グリペンのあられもない恰好に、中年は鼻息荒く興奮した。
    「セックスってわかるかい?」
     まだ男を知らないワレメのラインに沿わせるように、グリペンのアソコに肉棒を置いてやる。
    「わからない」
    「セックスはね。君のアソコにおチンチンを挿れることなんだよ」
     指でワレメを弄りつつ、切っ先だけを埋め込ませ、膣口に狙いを定めた。
     腰を前に出しさえすれば、これでセックスの本番を開始できる。
    「おチンチンを、挿れる。挿れたら、廃棄処分はなくなる?」
    「なくなるとも」
    「室長に恩返しできる?」
    「もちろんできるさ」
    「じゃあ、して欲しい」
    「だったら、約束しようか。オジサンがセックスをしたいと言ったら、また来るんだよ? だってオジサンのおかけで廃棄じゃなくなるんだから、オジサンにも恩返しをして欲しい。セックスがオジサンへの恩返しだ。わかるね?」
    「わかる」
    「いい子だ。じゃあ、挿れるよ?」
     中年は腰を押し進め、幅の狭い穴に潜り込む。肉棒を圧縮しようとしてくる締め付けと、熱湯にでも包んだような快感に、舞い上がって腰を振る。
     よい音が部屋中響いた。
    
     ――じゅぷ! ずぷっ、にゅぷ! ちゅぷ! じゅぶ! にゅぶ!
    
     肉と愛液の中を槍で突くたび、ヨダレで汚い音を立てるのに少しだけ似たものが、ピストンのリズムに合わせて鳴っている。
     グリペンの全身から汗が噴き出ていた。
     アニマでも、処女でのセックスには性交痛があるのか。運動で膜が切れることがあるとは知っているが、10G超えの世界で処女であろうと膜を失ってしまっているのか。破瓜の出血はしていない。
     どちらにしても、グリペンの初めてを喰っているのは変わらない。
     貪るように叩きつけ、摩擦によって生まれる快感を味わい尽くす。
     本当にいい気持ちだ。人の形をした戦闘機というのも、この立場でしか味わえない特別な女体じゃないか。
     外出しで、胸や腹に精液をばら撒いた。
     収まりがつかず、また挿入して腰を振り、二回目は中に出した挙句に、やり終わった性器へのお掃除フェラも要求する。
     仰向けで棒を立て、ちゅうちゅうとそれを啄むグリペンの頭を撫で、この気分の良さにじっくりと中年は浸っていた。
     廃棄処分は撤回。
     ただし、グリペンは撤回してくれたオジサンに今後『お礼』をしなくてはならない。東京まで呼び寄せるか、こちらから出向いてやるか。お互いのスケジュールから、そう頻繁には出来ないだろうか、月に数回は何とかなるか。
     今回は基本を教えただけだ。
     調教を繰り返し、快感を教え込み、やがてはセックスが大好きな女に変えてやろう。
     中年の抱く野望が燃え上がり、上下に動く口の中へと三回目の射精が炸裂した。
    
    
    


     
     
     


  • 獅朗に飼われる柳瞳佳

    
    
    
    「君には自傷行為が必要じゃない?」
    「自傷? どうしてですか」
    
     生徒総代室。部屋の中に立ち、警戒した眼差しの柳瞳佳の正面には、大胆なほどに背中を沈め、見るからにふんぞり返る荻童獅朗がソファーに座っていた。
     獅朗に個人的な呼び出しを受け、三年総代の部屋に瞳佳がいるのは、結論からいえば盗撮をネタに脅されているためだ。ある日突然のように、廊下を一人で歩くところへ獅朗は現れ、スマートフォンに画像を見せびらかしてきた。
     服を脱ぎ、身体測定を受けていた写真。
     パンツ一枚だけまで脱がされて、スリーサイズの測定を受けたりしていた。その姿を高性能カメラによる画質の高さで、乳首を大きく拡大可能にして撮られていた。
     見せられた時、ぎょっと慌てて赤らみながら、パニックになるうちに言いくるめられ、のこのこと危険人物と二人きりの場に顔を出してしまったが、自分がどれだけ迂闊な行動を取っているのか、来てしまった後で気づいた。
     要するに、写真をばら撒かれたくなければ、肉体を提供しろ。
     そういう脅迫をしてくるしか、裸の写真を使った個人的な用事は想像できない。
     警戒に警戒を高め、いつどのタイミングでセックスを迫って来るか。ほぼ本気で恐れて緊張感に胸を満たしていた瞳佳は、開口一番に自傷行為という話題を出され、少しだけきょとんとしていた。
    「だって君、自分のせいで人が死んだって思ってるでしょ。自分の霊感のせいでさ」
    「……っ!?」
    「そうだね。君のせいだ。だけど自殺しようって気もなければ、リストカットをしているわけでもない。けどさ、何かの方法で罪悪感を和らげないと、心の健康に悪いと思うんだ」
     見透かされている。心の中身をレンズで覗かれている心地さえして、驚きと警戒で身を固める瞳佳に、獅朗は目を細め、実に楽しそうに笑っている。
    「いいえ、必要ないです」
    「今は霊感を人の役に立てているから?」
    「……」
    「あ、そうそう。そういえば言っておくけど、警察なんて頼りにならないよ? 少しくらいばら撒かれるのを覚悟して、問答無用で通報しても、そんなの別の犯人が捕まるだけだし、そうなるとそいつが可哀そうだよねぇ?」
    「…………」
    「実際、カメラを仕掛けたのは僕じゃない。たまたまイタズラを発見したから、お説教のついでに、そいつらのコレクションを分けてもらっただけ。この写真だって、盗撮っぽく見せかけた、そういうジャンルのエロ画像だと思ってる。被写体もAV女優に違いないと思っているし、まさか一般の女性を映した本物の盗撮画像だなんて、想像もしてないわけ」
     要するにネットで拾った画像なのだと押し通す準備があるらしい。
    「卑怯、ですね」
    「まあね。でさ、ロザリオサークルで活動しているから、それで少しは罪滅ぼしができてるとか考えてる?」
     獅朗はおもむろに、ソファーからその長身を立ち上がらせる。
     整った顔と、スタイルのいい長身は、それだけで既に絵になる。
     そしてそんな獅朗は、部屋の中央に立ち尽くしている瞳佳に向かって大股に歩み寄ると、思わず身を縮めている瞳佳の横に、並ぶようにして回り込んで、それからなんと、驚くほど遠慮なく、大胆に尻を触った。
    「ひっ!」
     心臓が破裂するほどぎょっとなり、頭を真っ白にしてパニック気味に、全身が硬直して瞳佳は動けなくなっていた。
     電車の中で痴漢に遭ったら、どれほど怖くて不愉快か。
     その体験をさせてくれるかのように、すりすりと、スカート越しに撫で回し、尻の丸みに手の平の動きを沿わせている。
    「少し楽しみ過ぎたんじゃ? 死んだ四人に申し訳ないという気持ちが、少し薄れてきたんじゃ?」
     深く、深く、瞳佳は俯いた。
     美麗な悪魔が悪い魔法をかけてくるように、耳元にかかる獅朗の息が、毒のように広がると、指先にかけて痺れていく。
     その通りだった。
     瞳佳は弱くて卑怯で利己的な人間だ。自分のせいで友達が死んだのに、これからも同じことが起こるかもしれないのに、責任を取って死ぬ勇気もない。日常生活を送れなくなるほどの自責の念を感じるほどの責任感もない。
     死にたくないし、呪われるのは怖いし、日常の幸せも捨てたくない。
     ただ、せめてこの霊感を人助けをして、そう考えていた瞳佳が、ちょうどまさしく、新しい友達や真央と会って、少し楽しみ過ぎたと感じていたおりに、狙いすましたような獅朗の毒牙が、こうして瞳佳に迫って来た。
    「ちょうどいいんじゃない?」
     撫で回してくる獅朗の右手は、スカートの丈をつまみ上げ、今度はショーツの上から触り始める。ここまで性的な体験を、生まれて初めてする瞳佳は、早鐘のように鳴り響く鼓動を鼓膜の内側でうるさく感じ、そして男の手の感触や温度を嫌でも如実に感じていた。
     片方の尻たぶを掴み、プルプルと揺らさんばかりに指の強弱を細やかにして、それから全体をねっとりと撫で回す。
     
     すり、すり――。
     
     と、静謐なこの部屋に、手で布地を摩擦する音が聞こえている。吹奏楽部の奏でる音楽や、校庭から聞こえる運動部の掛け声が、どこか遠くの異世界から、この部屋の中へと漏れ出てきたものであるように、ここは外界から切り離されていた。
     性的な目に遭わされる現場という、ある意味の異空間。
     ゴムからはみ出た尻たぶの下弦をつまみ、つつき、ショーツに指を潜り込ませる真似をしてから、今度は中指が割れ目にフィットするようべったり当て、上下にこすり続ける。
    「幽霊の解釈はともかくさ。気持ちの問題として考えてみなよ。もし天国が存在して、死んだみんなが今の君を見ていたら、君がこんな罰まで受けていると知ったらさ。フツーは許してくれる気がしない?」
     獅朗は昏いものを宿した目を輝かせ、瞳佳をソファーへ導いていく。
     奥底までを見透かした言葉に酔わされて、くらくらとしている瞳佳は、逆らう気持ちを魔法で抜き取られてしまったように、意のままに体勢を変えられて、深々と座り込む獅朗に膝に腹ばいとなっていた。
    「パンツ丸見え―」
     スカートを完全に捲り上げられ、ショーツの尻が丸出しとなった瞳佳は、揉まれるがままに沈黙して、五指の食い込みを触覚によって味わっていた。
    
     ぱん!
    
    「……え?」
     え? え?
     瞳佳は困惑した。
     ぱん! ぱん! お尻を叩く手の平が、拍手よりも良い音で、スパンキングの音色を奏でている。生まれて初めての体験どころか、想像さえしたことのないお仕置きに、何よりもまず困惑の方が先に立ち、やっと思い出したように顔が赤らむ。
    「いいねえ。その感じ、傑作だよ」
     小さくなれるだけ限界まで、肩が小さく縮こまろうと、全身に力が入っていく。お尻をペンペンされる瞳佳は、心理的にも追い込まれ、ただお仕置きが過ぎ去るまで、腰のどこか高らかなポーズを言われてもいないのに維持していた。
     ぺちっ、ぺつ、ぺっ、ぺん――と、肉と肌からの打音がリズムとなり、尻肉への衝撃が丸みをプルっと揺らしている。
    「ワン! ツー! スリー フォー! ファイブ! シックス! セブン! エイッ!」
     獅朗はいかに楽しい気持ちになって、人のお尻で遊んでいるか。自分は楽器か玩具の扱いなのか。叩かれるほど惨めになり、なのに瞳佳は抜け出せない。こんな仕打ちを受けることの快楽が芽生えかけ、まさか自分は悦んでいるのかという衝撃が、ますます瞳佳の心を揺らす。
     カウントが繰り返された。
     一から八までのリズムを刻み、規則的にペチペチと鳴り続け、いつしか赤面しきった顔の瞳佳は、ただ平手で打たれる衝撃と、音だけを静かに聞いて過ごしていた。
    「どう? お尻ペンペンされてみて」
    「…………」
    「ほら、答えてよ」
     ペン! と、今までより強く、瞳佳を喋らせるために、まるで動物に言うことを聞かせるかのように叩いてきた。
    「……さ、最悪。だな、と」
    「けど気持ちいいでしょ?」
     改めてペチペチと、今度はもっと軽い調子で、ほとんど撫でたり可愛がったりする手つきで触れている。そんな獅朗の叩き方と、撫で方に、ぞくりと肌は粟立った。
     初めて瞳佳は理解する。
     過剰な自信。快楽主義。異常性。傲慢。我欲。自己愛。認知の歪み――彼から感じているものは、そういうものが入り混じった悪質な何かだったが、しかし総体として、間違いなく一種の『カリスマ』だった。
     顔も育ちもいいが、とんでもない下衆。
     人格者にはほど遠いカリスマから支配され、玩具のように扱われることの喜びに、今までしりもしなかった自分のマゾヒズムについて、その手で気づかされたようだった。
    「僕は楽しめる。君も気持ちいい。立派なウィンウィンの関係だよね」
     そうかもしれない。
     そうやって押し流し、手籠めにしていく手口だとわかっていながら、このいつでもお尻を叩ける体勢で、心理的にも主導権を握られている瞳佳は、きっぱりとした拒否の言葉や態度を出せずにいる。
    「犬の首輪をつけて、リードに繋いで、学校の中を四つん這いで散歩しよう。もちろん丸裸でパンツだって履かせない。あ、全裸で靴下っていうのもフェチだけど、その時は犬耳を付けてあげるよ。お尻の穴に犬の尻尾も突っ込んで、完璧なワンちゃんにして歩かせてあげる」
    「……興味、ないです」
    「そうかな? ちょっと想像したでしょ」
    「……っ!」
    「手錠で両手を封じてさ。目隠しで視界も奪って、バック挿入で後ろから突きまくろうか。僕のチンポに集中できて気持ちいいよ? 場所はそうだね。この部屋で壁に両手をついて、立ちバックでズコバコしよっか」
    「それも、興味ないです……」
    「でも想像したよね?」
     自信を持って言い切ってくる獅朗の声。
     それは魔法のように、自分は想像したのだという気にさせられ、アソコに男性器が出入りすることについて、瞳佳は膣で感触をイメージしてしまう。
    「ならゲームしようか」
     どうせロクなことは言ってこない。
     薄っすらと戦慄して、身構える瞳佳の想像に漏れず、獅朗の思いつきは瞳佳を貶め、これから好きなように扱うためのルールであった。
    「君の体をまんべんなく撫で回す。尻とオッパイは触るけど、初めてだからアソコは無しにしてあげよっか。で、僕の手で君のパンツをエッチなお汁でぐっしょり濡らす。
     一回イクごとに一枚脱いで、全裸になったら僕の勝ち。君が何も感じなければ君の勝ち」
    「……い、いいです。そういうのは」
    「え? 君さ。忘れてるみたいだけど。一応、写真をネタに脅迫してるんだよ?」
    「そうですけど……」
    「君が勝ったらばら撒くことは一切しないって約束するし、もうこういうことで呼び出す真似もしない。口約束だけどね。ま、削除はしないし、気が向いた時はいつでも鑑賞させてもらうんだけどさ」
     おどけきった口調で獅朗は言った。
    「はい。けってーい!」
     有無を言わさず、瞳佳の返事を聞く気もなく、もう話は決まった扱いで、獅朗は瞳佳のことを抱き起す。
     恋人が背中に密着してくるような抱擁で、しっかりと腕を巻き付けられ、横顔に獅朗の頬が触れて来る。男の体温が如実に伝わり、そして尻には、勃起した男の象徴が割れ目に合わせて押しつけられていた。
    
         ***
     
     これが性欲魔に襲われているのでなかったら、どれほどロマンスに溢れ、夢のような恥ずかしいような、甘い体験と言えただろうか。
    「さあ、お嬢さん」
     王子様のエスコートであるように、ソファーに座らされた瞳佳は、まずはその整った顔立ちに真正面から見つめられた。
    「君を幸せな気持ちにさせてみせるよ」
     纏っている空気さえ、その瞬間に変わっていた。
     それは邪悪な悪魔の微笑みから、夢の王子様への変貌だった。警戒している瞳佳の前で、こうも驚くほど、瞳佳の知る獅朗の人間像は消えていた。
     指が髪にそっと触れ、耳の裏側を優しくくすぐる。手の平で頬を包んで、首筋からうなじにかけてを愛撫する。くすぐったさに震えるほど、とてもとても心地よいのが恐ろしい。女性を喰っては捨ててをしているらしい男と知っているのに、それでも肉体は反応していた。
     純粋無垢なお姫様が、経験豊富で素敵な王子に、これから恥ずかしいことを教えてもらう。
     指先にかけても洗練された獅朗の動きと、細やかな表情に、声色の具合まで、全てがそのような演出を計算していた。
    
     ――ちゅっ、
    
     ほっぺにキスをされ、瞳佳はカァァァっと赤らんだ。
     どうしてこんな人に……。
     心の中では思いつつ、間違いなく瞳佳はドキドキしていた。
     その手が肩や二の腕を撫で、手を握り、腹や太ももにかけて愛撫は広がる。胸に手が迫るにつれ、揉まれるものと緊張に身を固め、横乳のあたりに本当に指が触れたが、それだけですっと手が遠のいた。
    「揉むと思った?」
    「……っ!」
     見透かされ、赤くなり、瞳佳はプイっと顔を横に背けていた。
    「ルールは覚えてるね」
    「……」
    「そろそろ一枚脱ごうか」
     遠回しで穏やかな、瞳佳をイカせるという宣言だった。
     獅朗の顔を見ないため、視線を決して合わせないために、瞳佳は横向きのままじーっと壁だけを眺め、その素材や模様を観察する。
     手が太ももに置かれ、スカートに潜り込み、一気にアソコに迫るかと思いきや、しかし性器に触れるわけではない。脚の付け根の、あと一センチでも近づけば、間違いなく性器の領域に踏み込む際どい位置を、指の先ですりすりと、産毛だけを撫でるタッチでくすぐった。
    「ほら、反応してる」
    「……っ」
    「体がモゾモゾしちゃうね」
     事実、太ももがかすかに動き、全身がもぞりもぞりとしている瞳佳は、そんな自分の姿をささやかに実況されたことにより、少しばかりマゾヒズム的な喜びを覚えてしまう。下腹部が引き締まり、何が入っているわけでもないのに、瞳佳は膣壁をヒクヒクと蠢かせた。
    「気持ちいいね?」
     その通りだった。
     触れられてもいないのに、性器の奥から甘い痺れが生まれている。アソコがとにかく熱くなり、汗をかいている気になって悟るのは、もう性器が濡れ始めていることだ。
    
    「――――――あっ、ん!」
    「ちょいイキって感じかな?」
    
     そして、初めに決めたルールの通り、獅朗が瞳佳から奪う衣類は、取られたところで何ら恥ずかしくもないリボンであった。
    「…………」
    「どうしたの? いきなりパンツとか脱ぎたかった?」
    「いえ、別に」
    「次は上履きと靴下を片方ずつで、合計四回か。制服とスカートで二回。ブラジャーとパンツで二回。八回はイカせないと全裸にはならないね。けど、さすがにそこまでエッチな女の子ではないだろうし、これは僕に勝ち目はないかな」
    「わ、私が勝ったら……」
    「そうだね。二度と君には手を出さないよ」
     そう言って愛撫を続け、獅朗は同じように全身をまさぐった。横乳に微妙に触れたり、下乳を持ち上げていなくもない程度の、軽いタッチはあったとしても、はっきりとオッパイを揉むことはない。お尻にも触らず、手や足までまんべんなく撫で尽くし、やっと触れるのは脚の付け根の際どい位置で、やはり性器に触りはしない。
     しかし、瞳佳はそれでイカされた。
     上履きを脱がされ、またイカされ、靴下だけになった瞳佳は、十分と経たないあいだに裸足にまでなっていた。
     そして、愛撫は続き――。
    
    「はぁっ、はぁ……はあっ、はぁ…………」
    
     明らかに息遣いが変化して、熱と湿気を多分に含ませた息を吐き出す。茹で上げた直後のように火照った頬と、存分に赤く染まった耳の色。それから目つきは、どこかトロンと溶けていながら、そんな自分を悔やまんばかりに唇を噛み締めていた。
    
     瞳佳はパンツ一枚にまでされていた。
    
     大人しく、控え目な性格を現すように、決して巨乳というわけではない乳房が、乳首を極限まで突起させている。顔立ちをお嬢様っぽいと評されたことがある瞳佳は、その美乳もまた上品でいて、滑らかな白い肌が良いオッパイを形作る。
    「ここでパンツを取られるってことは、僕とセックスするってことだからね?」
    「い、いやです……」
    「だったら、必死こいて我慢してみなよ?」
     そこにいるのは、瞳佳のよく知る下劣な獅朗だ。
     我慢なんてできっこない。
     何せ未だに、お尻もオッパイも、アソコだって、一度もはっきりとは触られていないのだ。
     それでも下着のクロッチはよく湿り、自分でもわかるほどの量を垂らしている。いかにも愛撫をして欲しそうな、たまらない淫気を放出して、そんな瞳佳の色香に誘われれば、まともな男はくらりと狂う。
     獅朗の手が、初めて乳房に取りついた。
    「……んっ!」
     揉みしだかれ、ビクっと引っ込むように肩を縮める。
    「どうした? すごく可愛い声が聞こえたけど」
    「な、なんでも……んっ、んっ、んぅ……んぁぁ……」
     軽やかな手つきは、当然のようにオッパイを揉み慣れている。強く指を喰い込ませれば痛いことも、逆に優しくしてやれば気持ちいいことも知り尽くし、瞳佳のような大人しいタイプはどう扱ってやればいいのかも、獅朗はツボをわかっている。
    「気持ち良さそうな顔しちゃってさぁ」
     横乳を四指ですりすりと、下乳を持ちあげるようにぐにぐにと、さらにこなれた指技で全体をまんべんなく捏ね回す。
    「んぅ……んぅ……」
    「乳首も責めてあげるよ」
     桜色の突起を摘ままれ、瞳佳の中で何かが弾けた。
    「――っ! あっ、んあ!」
     なにこれ? なんでこんなに!
     驚き、戸惑う瞳佳は、わけもわからないまま髪を必死に振り乱し、ほとばしる快楽の電流に翻弄される。獅朗が右乳にしゃぶりつき、唇と舌の技巧でたっぷりと攻め込んで、唾液を存分にまぶした後で左乳も啄んだ。
     二つの乳首が、唾液濡れに輝いている。
    
    「これでアソコを触られたら、どうなっちゃうんだろうねぇ?」
    
     その瞬間、瞳佳には生まれて初めての感情があった。
     今の敏感なアソコを触られたら、この下衆の提案したルールに一瞬で敗北しかねない恐怖感と、それから本当に自分はどうなるのか。どんな天国にまで行けるのかという、恐怖とは裏腹の期待が胸に満ち溢れる。
    「や、やめ……!」
    「はい。イってね?」
     笑顔で、ただ玩具のスイッチを押す程度の感覚で、獅朗は実にご機嫌な面持ちで瞳佳の秘所を撫で上げた。
    
    「ひぁぁぁぁあ――――!」
    
     容易くイった。
     背中が大きく反り返り、ビクビクと痙攣して、そのままバテきる瞳佳は、肩を大きく上下させながら、自分の股から下着を脱がせる獅朗のことを、ただ黙って見るしかできない。抵抗するしないはおろか、嫌がろうと思うことさえ、この方針の中ではできなかった。
     尻とアソコが、下着の圧迫から解放される。
    「ほーら、見てごらん?」
     瞳佳がどれだけ濡れたのか。獅朗は目の前にパンツを広げて見せびらかす。
    「……っ!」
     たっぷりとぬかるみを含み、クロッチが完全にヌルりとしきった自分自身の下着から、瞳佳は全力で顔を背けた。
    「じゃあ、セックスしようか」
     獅朗がベルトを外している。
     瞳佳はどこかそれを遠い場所の出来事のように聞き、ぼんやりと耳を傾け、放心から立ち戻るにつれ、自分が挿入されそうな危機にあることを自覚する。
     しかし、意識がはっきりとした頃には、とっくにコンドームの装着まで済ませた亀頭がアソコに沈みかけ、あとは腰を前進させれば処女を失うばかりであった。
    「い、嫌っ」
    「もう遅いよ」
     ずにゅぅぅぅぅぅぅぅぅ――と、獅朗の腰が、瞳佳の中へと沈んでいく。
     瞳佳の処女が、失われた。
    「あっ、あぁ……!」
     よく熱した杭のように固い一物が、アソコの穴に根本まで埋まっている。ぶつかり合う股のあいだで、お互いの陰毛が絡み合い、かつて性交経験を持たない膣口は、穴幅が狭いがために肉棒を締め付ける。そして、だからこそペニスの形状が如実にわかった。
    「ほら、動くよ」
     ピストン運動が始まった。
     処女などいくらでも喰ってきた腰使いが、巧妙に抜き差しを行って、よく濡れた瞳佳の中身を責め立てる。
    「――――――――っ!」
     太いものの出入りに、もう声も出ない瞳佳は、ひたすら歯を食い縛っていた。
    「気分いいよ。とっても」
     獅朗は両手で、瞳佳の頬を包んで自分を向かせる。否応なしに視線を重ね合うことになり、瞳佳は気まずく、何も言えずにただ耐える。
    「どう? 初体験の気分は」
     軽やかで無理のないペースで、ゆったりとスムーズに腰が下がると、肉棒が抜けた分だけ膣壁が閉ざされる。その閉じ合わさった壁と壁が、直ちに戻ってくる肉槍でこじ開けられ、そうやって膣と肉棒での摩擦は繰り返された。
    「僕は気分いいよ? 君と守屋君は別に付き合っていないだろうけど、人のところにいる女の子って、やっぱり他人の女を奪ってる気がして最高でね」
    「さ、最低……」
    「でも君。もう僕のチンコを一生忘れることができないよね」
     ずんっ、と突き、覚えさせようと腰を止め、はめ込んだまま獅朗は瞳佳の目を見つめる。
    「…………」
    「大丈夫。僕は君を他の女と同じように捨てたりはしない。君は特別だ。特別に、じっくりと遊んであげる」
     そして、唇が重なった。
    
     ――きゅん!
    
     優しいキスに下腹部が引き締まる。こんな最低な男とわかっていながら、それでも美貌の顔立ちを持つ獅朗の笑みを見ていると、まるで美麗な悪魔にでも魅入られてしまったように、カリスマに酔わされて、瞳佳は全身で喜んでしまっていた。
    「またイキそうだね」
     なんで、どうしてこんな人に――。
     自分がいかに呆気なく、軽々と落とされているのかと、心のどこかで思いながらも、ピストンの再開にドキリとしては、出入りしてくる刺激に意識をやる。
    「一緒にイこうか」
     ピストンのペースが少し早まる。
     それと共に、瞳佳の興奮も増していき、アソコの中心に加速度的に何かが集まる。何か、としか言いようのないその感覚は、絶頂の予兆であることに違いはない。それが急速に膨らんで、まるで子宮の中に風船でもあるように、破裂直前まで上り詰めると――。
    
    「――――――っ!」
    
     瞳佳は処女セックスで絶頂した。
     同時に、コンドームを熱い精液が膨らませ、ゴム越しとはいえ、膣に精液の感触が触れ、これが子宮に届いてきたら、赤ちゃんができるのだと、女に生まれた自分の肉体の仕組みについて、何となく心を馳せていた。
    
         ***
    
     そして、これは休憩後。
    「んじゅっ、ずずっ、ずぅぅ……じゅっ、じゅむっ、はっじゅぅ……ぢゅるるぅ……じゅずずずずっ、ず、ずりゅっ、ちゅぅ……」
     今度はまた獅朗がソファーに座り、大胆に背中を沈め、その左右に開いた膝のあいだに瞳佳はいた。全裸で床に正座をして、逆に服を着た獅朗はペニスだけを露出している。瞳佳はお掃除フェラと称して咥えさせられ、頭を前後に動かしていた。
     不慣れでつたない。
     ただただ、口を大きく開き、噛まないように気をつけることしかできない瞳佳は、わけもわからず頭を動かす。肉棒の根本は両手で支え、言われた通りに手コキ交じりに、時には先っぽをペロペロと舐め続け、ちゅっちゅとキスを繰り返すことで、少しは顎を休めても構わない許しもあった。
     飽きるほど女を喰っている獅朗が、そんな素人のフェラチオで、数分やそこらで二度目の射精をすることはない。
     別に、獅朗は射精したいわけではなかった。
     
     この女に存分に奉仕をさせ、柳瞳佳を自分のペットにしたいのだ。
    
     あの《ロザリオの棺》を持つサークルの、守屋真央の元にいる優秀な霊媒。それを自分の肉棒に屈服させ、いつでも好きな時に性処理に使える状態に仕込んでおくのは、今後の立ち回りで優位に働くと考えていた。
     正直に言って、下手くそだったフェラチオで、獅朗はやっとのことで射精する。もちろんそれは瞳佳の口内へと、遠慮なくドクドクと流し込んだ。
    
    
    


     
     
     


  • 小木奏は獅朗のペット

    
    
    
     体格の違う男に覆いかぶさるように肩を抱かれ、その重さと体温が肩にのしかかって、身動きのできなくなっている小木奏は、体も心も押しつぶされそうになりながら、成す術もなく、ただ黙りこくる。
    「…………」
     リボンをほどかれ、それが無造作に床に落とされても、奏はこの荻童獅朗という男に逆らえない。反抗など思いつくことすらできない。
    「ほら、自分で脱ぎなよ」
     震えた指でたどたどしくボタンを外し、露出度が上がるにつれて緊張感も増していく。肩から腕にかけてが激しく震え、羞恥に顔も赤らんでいた。
    「しっかし、脱ぐのも鈍くさいなぁ。お前、どうせ気持ちよくなりたいんだよね」
    「……」
    「なに? なりたくないの?」
    「……っ!」
     即座に奏は、怯えたように、何度も首を小さく横に振る。
    「だったらさ。全裸になって、犬の散歩みたいに、四つん這いでぐるっと一周まわってさ。僕にケツ振りながら、『どうか私のおっぱいで、あなたのおチンポ様に、エッチなご奉仕をさせて下さい』って頼んでみてよ」
    「……」
     あまりに人権を無視して、尊厳もないものとして扱った、酷いとしか言えないプレイを命じられ、奏は顔面蒼白になっていた。
     確かに、ここは生徒総代室。
     部屋に鍵はかかっていて、獅朗としても、安心してそういうことに及べる場所ではあるが、そんなプレイで喜ぶほどの、ドMというべき性癖は、奏は持ち合わせていないのだった。
    「ほらほら頑張って。きちんとできたら、ご褒美のエサを下のお口にあげるから」
     獅朗は尊大かつだらしなく、もたれかかるようにソファーに座って足を組む。
     もうそうすることが義務として決定され、ますます震える指先で、奏は未だに脱いでもいない制服のボタンを今頃になって外しきる。あとは完全に脱ぎ切れば、上半身はブラジャーのみとなるのだが、奏はそれさえ手間取っていた。
     ストリップショーの披露が恥ずかしくて、だから脱げずにいるのはもちろんある。私生活の着替えでなら、さすがにここまでかかりはしないが、やはり奏の場合は、単純に要領が悪くて鈍いのだ。
     しかし、奏がどれだけ鈍くても、そんな手間取っている姿でさえも楽しいように、獅朗はニヤニヤと眺めてくる。
     スカートのホックを外すのも、ブラジャーを脱ぐのも、ショーツを脱いでとうとう丸裸になるのにも、どれだけの時間を費やしたことかわからない。
     辛くて、恥ずかしくて、全身で震える奏は、それでも手で隠すことをしなかった。しっかりと気をつけの姿勢で、大きな胸や毛深いアソコを曝け出し、飼い主の目を楽しませることに、従順に徹していた。
    「さあ、ぐるっと一周だ」
    「あ、あの……本当に……」
    「やるんだよ。さっき言ったこと全部ね。どうせ一回言っただけじゃ、お前ロクに覚えきれてないだろうから改めて命令するけど、四つん這いで一周したら、僕にケツを向けてフリフリしながら『どうか私のおっぱいで、あなたのおチンポ様に、エッチなご奉仕をさせて下さい』だからね?」
     見せびらかさんばかりに、獅朗はデジタルカメラの用意をしていた。
     本当に泣く泣く、自分が奴隷でしかないことを実感しながら、床にべったりと膝をつき、両手もつけて、四つん這いのポーズで歩き始める。
    「ははっ、いいねぇ? 本当にやってるよ」
     壁際まで歩いてから、この部屋を一周とはいっても、果たして時計回りか反対回りか、単純なことにまで迷い始める。
    「どっちでもいいけどさ。じゃあ時計回りにしようか」
     その雰囲気を、鋭い獅朗は即座に見抜く。
     奏は歩いた。
     こんなはいはい歩きを最後にしたのは、まだ両足で立てない赤ン坊の頃までさかのぼることになる。そこまで昔の記憶を奏は持ち合わせてはいない。普段ならない、四つん這いの高さまで落ちた視界の景色が、一歩ずつ進むにつれて移動していた。
     ぺたり、ぺたりと、汗ばんだ手の平が床にくっつく。膝が痛い。時計回りの壁に沿い、髪の垂れ下がった隙間から前を見て、一周を終えた奏は、決して立ち上がることなく、犬のポーズのままにソファーの前まで移動した。
     命令されてもいないのに、勝手に四つん這いをやめる真似はせず、従順なまでにお尻を向けると、土下座のように額を床にくっつけた。腰だけを高く突き出し、肛門まで丸見えであることを自覚しながら、お尻をフリフリと左右に動かす、
    「ど、どうか……私のおっぱいで……」
     奏は涙ながらに言葉を吐き出す。
     ふりふりと、オスを誘って自ら犯してもらおうとするためのアピールを、一生懸命にやる羽目になりながら……。
     地味で人付き合いの苦手な奏には、ペニスやセックスといった内容を話題にできる、猥談が平気な女子と関わり合う機会もなく、だからおっぱいという単語でさえも、私生活では一度も使うことがない。
    「あなたの……お、お、おチン……おチンポ様に…………」
     チンポという言葉を使うのも、まるで拷問のような恥ずかしさを伴って、心底の苦痛に耐え忍んでも、どうにか喉から絞り出した状態だった。
    「エッチな……ご奉仕を……さ、させて下さい…………」
    「いいよ。パイズリを許可する。あ、パイフェラね。僕を満足させられたら、ご褒美にセックスをしてあげるから、まあ頑張ってみせてよ」
     それは奴隷ごときが王様の身体に触れ、奉仕をしても構わないことを許される、名誉を得られた瞬間だった。獅朗はそれくらいに奏を下に見ていて、奏自身も獅朗の言いなりでしかなく、光栄に思わなければ不敬に当たるとさえ感じていた。
     そこまで身分を下にされている実感に、心のどこかでは泣きながら、奏はやはり鈍くたどたどしい手つきで、見る者が見れば鈍臭さに苛立ちを隠していられなくなる手間取りようで、ベルトの金具やチャックを弄る。
     そそり立つ肉棒に上半身を近づけて、大きな乳房の中に抱き締めた。
     女子の性欲を煽るには十分な、太く反り返ったペニスのフォルムに、この男は顔やスタイルばかりか性器の形状さえも恵まれているのだと、そんなことを奏は思う。その熱気が乳房の肌に染みついて、脈打つ感じも肌に伝わる。
     一生懸命に奉仕して、自分の谷間に見え隠れする亀頭に唇を被せていた。
     独裁的な王様に芸を見せ、喜ばせることに失敗すれば死刑になる。そんな中世時代の立場と状況を当て嵌められた心地を味わい、ご主人様にお喜び頂くことだけを考えていた。
    「いいじゃん。お前、いい性奴隷だよ」
     そんな褒められ方でさえ、恐怖の対象が少しでも満足してくれていることで、奏に安心感をもたらしている。
     挟み込む圧力で絞り上げ、上下にしごき、亀頭もよく舐め込んで、自分は性処理道具であることに徹していた。舌に妙な味が広がり始め、自分がもうカウパーを舐め取っていることに気づくと、気持ちよく頂けている実感で奉仕に一層身が入る。
    「ほーら、いいものやるよ」
     獅朗が急に差し出すのはコンドームだった。
    「え……」
    「鈍いなぁ? わかんない? 僕にセックスしてもらえるってことだよ」
    「あ……!」
     奏は慌てて受け取り、袋を破き装着する。
    「正常位でしてあげるから、机に寝なよ」
     挿入をしてもらうため、机の板に背中を預け、股を開いた奏は、入口に亀頭をあてがって来る獅朗の笑みをぼんやり眺めた。自分で物事を決めなくて済む方が楽。獅朗はそれをわかっている。だから体位も、奏に希望を聞きはせず、そして顔が見える体勢でしたいわけでもないのだろう。
     胸を揉みたいのだ。
     肉棒が埋まって来ると、ピストン運動を始める獅朗は、その両手を乳房に伸ばし、好きなように揉みしだいた。
    「あっ、あ、あ……あ……んっ、あっ、ふっ、んんっ、んぁ……!」
     力強い腰がぶつかり、身体が揺らされると、黒縁眼鏡も上下に揺れて、前髪が小刻みにずれ続ける。軽い衝撃が視界を揺らし、結合部からは甘い痺れが絶え間なく広がっていた。
    「ま、使い心地は悪くないけど、スポーツやってる女に比べると、ちょっと締まりが悪いんじゃないの?」
    「んっ、あ……あ……!」
     そう言われ、奏は下腹部に力を入れた。
    「ちょっとはマシになったね」
     獅朗は欠片の愛情も注がない。利用できるからしている女に特別な情はなく、ただやれるからやっているだけの、ちょっとしたつまみ食いの感覚でするセックスだ。
    「あっ、あん!」
     そういうセックスで喘いでいると、さすがの奏もわかっていた。
    「んっ、ん! んぁ……あん! あっ、あん! あん!」
     奏はただ、ひとしきり喘ぎ、そして獅朗は満足する。射精したコンドームを奏の腹に無造作に置き捨てると、性処理道具の使用を終え、もう目の前の女の姿が見えない態度で、すっきりとした表情で下着とズボンを整えていた。
    「じゃーねー」
     奏のことを放置したまま、獅朗は爽やかに去っていく。
     取り残された奏は、ぼーっと天井を眺め続けて、やっとのことで起きる気になり、服を着替えて立ち去った。
    
    
    


     
     
     


  • 羞恥の身体測定 柳瞳佳

    
    
    
    
     教室で嫌な視線が増えてきた。
     別にイジメといった陰湿な類のものではない。
     柳瞳佳が不快に思っているのは、あからさまないやらしい視線であった。明らかに胸の部分を見ていたり、スカートの中身をじっくり想像している顔で眺められたことなど、過去あまりなかったのだが、ここ数日になって本当に嫌な感じがしてならない。
     
     じぃ……。
    
     と、胸を、尻を眺め回して、服の内側にあるものを想像してくるような、そういうものが日常的に突き刺さる。
    
     たぶん、あの時からだ。
     身体測定をやった次の日から、こういうことになっていた。
    
         ***
     
     よく映っていた。
     盗撮した動画である。
     年度途中入学者の身体測定で、柳瞳佳が保健室を訪れて、優しそうな保健のおばちゃん先生の指示に従う様子が画質の限り鮮明に記録されている。高いカメラの性能だけあって、限界までズームしていけば、細やかな肌の質感まで観察できた。
     あの保健室はおかしい。
     おかしな気配を感じたり、物が勝手に動いたり、影が動いたりという噂がある。誰も不気味で近寄らず、盗撮カメラを仕掛けた『彼ら』にしても、好きで出入りしたい場所ではない。
     しかし、不気味な場所に出入りすることの苦難に引き換えても、こうした犯罪を犯す連中にしてみれば、こそこそとカメラを仕掛けに行く価値は大いにあった。
     仕掛けることは簡単だった。
     まず先生が中にいない。保健の先生は事務室にいて、呼んでから一緒に保健室に行く謎の手順になっている。にもかかわらず先生不在の保健室は鍵がかけられていない。そんなザルな状態だと良からぬ生徒が勝手に利用していたりしそうなものだが、それもない。
     それもないから、誰にも咎められることなく設置して、撮れたであろう映像を『彼ら』は回収に成功した。
     
     制服を脱ぎ始める。
    
     長めの髪をクリップとバレッタで留め、おしゃれの趣味はやや大人しめ。人の良いお嬢さんぽい雰囲気がこの子にはある。
     その脱衣が始まるに、誰もがごくりと息を飲んでいた。
     ベッドを囲むためのカーテンを引き、その中に隠れながら、どうせ裸体は見せることになるのに、脱ぐ姿はおばちゃん先生からも隠している。隠れているから安心して、何も知らずに、瞳佳は脱ぎ始めてしまうのだ。
     真っ白で真新しい生地が薄いのか。ほんの少しの汗ばみによって肌に張り付き、目を凝らせば肌色が透けていることがわかってくる。周りの肌色のおかげでブラジャーの白が浮き立ち、白と白では期待しにくい透けブラが、解像度の良さで見て取れる。
    
     瞳佳はボタンを外し始めた。
    
     目の前に盗撮のカメラがあり、実に都合の良い正面からのアングルで映っているなど、想像すらしていない、何の疑問もない表情で、瞳佳は上から下へと肌の露出を広げている。ボタンが外れれば外れただけ、制服は左右に分かれて割れていき、白いブラジャーまでよく映った。
     袖の中から腕が抜け、上半身はブラジャーのみ。
     大人しいお嬢様の雰囲気によく似合い、控え目なレースとちょっとした刺繍の施されたブラジャーは、瞳佳の淡い顔立ちとマッチしている。
     スカートのホックも外し、こちらはあっさりと脱ぎ落とすと、瞳佳は完全な下着姿に変わっていた。
     実にいい。
     白いショーツにもレースと刺繍が施され、地味すぎずに派手すぎない。ほどほどにオシャレな雰囲気を醸し出し、センターリボンも付けて、大事な部分を包んでいる。食い込みの具合によるものか、割れ目が浮き出て見えなくもない。
     疑いなく背中に両腕を回す瞳佳は、何も知らずにブラジャーまで外してしまい、控え目な膨らみの乳房はしっかりと映り込んだ。
    
     お嬢様っぽい、おっぱい。
    
     穏やかに優しい膨らみは、触れるだけで細胞を細かく癒してくれそうなほどに、どことなく輝いていた。蛍光灯によって非常に白く照らされていることもあり、眩しいほどに光沢を帯びた乳房から、淡い色合いの乳首を立てているのが、『彼ら』を一層興奮させた。
     さらにこの次の瞬間だ。
    
     保健室にオジサンが現れた。
    
     がらっ、とドアが開けられて、何も気にせず入ってくる足音と、次に聞こえる中年の喋り声に、瞳佳は明らかに動揺していた。
     カーテンの内側だ。
     見られる危機でもないだろうに、反射的に肩を小さく丸め、素早く両腕をクロスして、胸を隠してしまう姿が何とも可愛らしい。
     そして、完全に困った様子で、瞳佳は何度もカーテンの方を振り向く。
     オジサンとおばちゃんの談笑が、カーテンの向こう側では始まっている。急に男が入ったこともそうだが、身体測定の事情を知るおばちゃんさえもが、気にするでも何でもなく、オジサンとの会話に応じているのだ。
     あらゆる意味で困り果て、どうしようもなくなっている瞳佳へと、おばちゃん先生から声がかかった。
    
    「どうしたの? こっち来なさい?」
    
     優しく、穏やかな声。
     ――え?
     ――え?
     声にこそ出ていないが、明らかにそんな反応をした顔と、そういう挙動が目に見えて、何だかリアクションが面白い。
    「あのっ、そっちに男性の方が……」
    「ああ、大丈夫よ。測定に立ち会って下さる方だから」
    「でも、それって……」
    「ほらほら、早くしなさい。大丈夫だから」
    「でも……!」
     オジサンの前に出たくない瞳佳と、いいから早く済ませましょうねと、その一点張りのおばちゃん先生のやり取りは平行線で、そこにオジサンも瞳佳を引きずり出すために参加して、早く出て来いとのプレッシャーが増していく。
     視聴する『彼ら』は期待を高めた。
     この子は、瞳佳はどんな風に、カーテンの向こうへ出ていくのだろう。
    
    「…………わかりました」
    
     どうしようもなく、大人二人のプレッシャーを跳ね除けるだけの気概がないから、泣く泣く諦めた瞳佳は、カーテンを指の先でそっと掴んだ。
     じーっと、沈黙。
     カーテンを開ければ見られるとわかっていて、おいそれと開けることは出来ず、かといって指示に従うしかない状況。
    
    「早くしなさい」
    
     オジサンが重々しい言葉を放つと、それにトドメを刺されたように、完全に諦めた瞳佳は、俯く背中でカーテンの向こう側へと出て行った。
    
         ***
    
     ニタァァァァァァァァァァ――。
    
     オジサンの表情がみるみるうちに笑顔に歪み、一見すると穏やかで優しそうな印象さえあった顔立ちが、醜いほどに変形していた。
     心底ゾっとした。
     全身に鳥肌が広がって、頭からつま先にかけて無数にある毛穴が全て粟立つ。胸をガードしている両腕に、そう意識するまでもなく自然と力が入り、こんないやらしい男だけには、何としても見せたくない。
    「大丈夫よ? 瞳佳さん。そんなに固くならなくても」
     おばちゃん先生は優しく言って聞かせる口調で、このオジサンが保健関係者の男で、どういう理由でここにいるのか。何のために立ち会うのか。あらゆる言葉を尽くして語ってみせ、オジサンはここにいても問題のない男であると説明する。
     まるでわがままな子供の説得に力を尽くし、苦労して言うことを聞いてもらおうとしているような、自分がそういう子供である気持ちにさせられていく。
     そのうちに計測は開始となり、すぐに身長計で背筋を伸ばすこととなる。
    
     瞳佳はここで、乳房を見せることになってしまう。
    
     身長計のバーに背中をつけ、金属のひやりとした感触に身震いしながら、両足を揃えて背筋も伸ばす。あとは両腕を下ろすだけとなり、固い腕のクロスを解くに解けない、見せたくない思いが邪魔して腕の動きの鈍い瞳佳は、手ブラの状態になるまででさえ手間取った。
     手の平で乳房を覆い、衣服はたったのショーツ一枚。
     赤面している思春期少女のいじらしさは、オジサンを興奮させるには十分すぎる。見ればズボンの内側が膨らんで、テント状にまで発達しているものを見て、瞳佳はますます赤らみながら視線だけを横に逸らした。
     興奮してる……。
     セックス未経験だとしても、勃起のことは知識にある。
     そして、オジサンの口元は歪むだけ歪みきり、頬までいびつに変形して、女の子の裸をベロベロと舐め回したくてたまらないのであろう視線で瞳佳を見ている。舌なめずりもして、白いショーツの柄もよく見ていた。
    「どうしたのかな? 柳さん」
     卑猥な表情を浮かべてやまない張本人が、聞くだけで鼓膜に粘液を詰め込まれ、耳の中がゾっと気持ち悪くなるほどのねっとりとした声を出している。
     胸、こんな人に見せるなんて……。
     無念や屈辱以外の何でもない、悔しくて恥ずかしくて、どうにもならずに涙を呑んで諦めているしかない。すっかり赤く染まり上がった諦めの表情で、瞳佳は両腕を下ろしていき、おっぱいを見られる苦痛に耐え忍ぶ。
    
     ジィィィィィィィ――!
    
     すぐさま、視線は鋭く乳房を抉った。
     目だけで皮膚を抉り取り、乳首を引き抜かんばかりの勢いで、それだけ物凄いとしか言いようのない血走った目で、オジサンは瞳佳のおっぱいを視姦している。
    「あらあら、恥ずかしいわねぇ?」
     おばちゃん先生の言い方は、ちょっとした事で落ち込む子供を慰める程度の、思春期の羞恥心を気遣うものとは程遠いものだった。
    
     じぃぃぃぃぃぃ…………。
    
     視線に焼かれて炙り出されていくように、乳房の内側にある血管が、ある一箇所へと血流を集めていく。
    
    「可愛いねぇ? 乳首が立っちゃって」
    「ほら、柳さん? 動いちゃ駄目よ」
    
     身体のことを指摘され、反射的に身じろぎするのを、おばちゃん先生はさも瞳佳が悪いように穏やかに咎めていた。
     ここに瞳佳の味方は存在しない。
     頭の上にバーが触れ、おばちゃん先生が数字を声に読み上げると、オジサンはニタニタしながらペンで書き込む。
     身長を測るだけがここまでの地獄になるなど、きっと二度とない体験になるだろう。
     体重計の上でも気をつけの姿勢を強要され、何秒もかけておっぱいを視姦され、ようやくいくつかの計測が終了する。
     だが、次に待つのはスリーサイズの測定だ。
    
     オジサンがメジャーを手に、いかにも楽しみそうな顔をしていた。
    
     オジサンが測るんだ。
     そう思うだけで身震いして、ますます鳥肌が立って寒気も走る。ふと気づくと、自分でも知らないうちに、瞳佳は手ブラで胸を隠し直していた。
    「ほら、測るからね」
     そしてオジサンのたった一声が、瞳佳の両腕を下ろさせる。
     今度はもっと近い距離からの視線が刺さり、オジサンは楽しみそうにメジャーを伸ばす。
     ネックレスをかけてやるようにして、頭の上からかかったメジャーは、瞳佳が腕を上にすることで、脇に挟まるようにする。そうして真っ直ぐ、ピンと伸びためメジャーを巻きつけ、乳房がぷにりと圧迫された。
     さりげなく指をぶつけて、胸に触れてくるセクハラが嫌で嫌でたまらない。
     目盛りを読むため、オジサンの顔がぐっと近づく。
    
     じぃぃぃぃぃ……。
    
     そして、執拗な視姦。
     何秒もかけて眺め回して、その挙句にオジサンは声を上げる。
    
    「……センチ!」
    
     バストサイズを大声で読み上げられた。
     それがまた本当に嫌で、思春期の乙女の情報を知られた苦痛にも顔は歪んで、瞳佳は深く俯きながら表情を歪めていた。
     ただ身体測定に来ただけなのに、どうしてこんな目に遭うのだろう。
     ……困る。
     こんなことをされても、とにかく困る。
    「うん。いいおっぱいだ。育ちが良くて健康的で、ウブっぽい可愛らしい感じが出てる」
     褒めながら、オジサンは指で乳房をつついてきて、瞳佳はぎょっとした。
     セクハラ親父が行うボディタッチに他ならない手つきでツンツンと、不快感や嫌な気持ちが沸くよりも、まず先に驚くことの方が先の瞳佳は、一歩だけ後ずさりして半笑いした。
    「や、やめて下さい……」
     やんわりと、ニッコリと。
     人の良い瞳佳は、はっきりと強い意志で拒むことが出来ず、拒んだら拒んだで、おばちゃん先生もやんわりと諭すことを言ってくる予感がして、困るという感情は大きかった。
    「じゃあ、ウェストいこうか」
    「……はい」
     オジサンは膝立ちになり、まずは瞳佳の腰のくびれを撫でてきた。
    
     さわっ、
    
     べったりと、手の平の温度が張り付くと、いやらしい優しさで上下に動く。事前に必要な点検であるように、さも真面目な顔をしながら、それはしつこく行われた。
    
     すり、すり、すり……。
    
     手が皮膚を摩擦する音。
     静かな保健室に淡々と広がって、嫌がる瞳佳はチラチラとおばちゃん先生の顔を伺う。尾高やな微笑みを返してくるだけで、やはり味方になって止めてくれるわけではない。
    「あの……? まだ、ですか?」
     瞳佳は自分の口でそう言った。
    「そうだねぇ? よっ、と」
     オジサンはまるで抱きつくようにして、メジャーの先を瞳佳の腰の後ろに回し、ウェストに巻きつけヘソの近くに目盛りを合わせる。
    「瞳佳ちゃんはさ。転校生なんだよねぇ?」
    「え? まあ、そうですけど」
    「まだ学校には慣れないと思うけど、しっかりやっていかないとね」
     穏やかに励ますような言葉をかけ、それでいて次にオジサンが行うのは、保健室の外まで聞こえそうな大きな声で、瞳佳のウェストを読み上げることだった。
    「…………」
     もう何の言葉もない。
     次はヒップだ。
     まるで抱きつくように腕を回して、メジャーをお尻の後ろに通すオジサンが、ここで一体どんなことをしてくるのか。軽いセクハラ程度の気持ちで乳房をつついたくらいなら、当然してくるであろうことがわかっていて、それでも動くわけにはいかなかった。
     瞳佳は、この状況に縛られていた。
     学校の決まりで測定を受け、今は二人の言うことを聞かなくてはならない。指示に従う生徒の立場で、余計な抵抗の気持ちを表に出せず、嫌であろうとなかろうと、起こること全てを受け入れるしか透過にはできないのだ。
    
     お尻の上に手が置かれた。
    
     純白のショーツに覆われた丸いカーブの、柔らかな膨らみにべったりと、張り付けるようにして当たった手から、瞳佳の肌へとオジサンの体温が染み渡る。
     手の平とショーツの生地が擦れ合う、
    
     すり、すり、すり……。
    
     と、静かな音が保健室を満たしていた。
    おばちゃん先生は何も言わない。たかがお尻くらい、可愛いイタズラに過ぎないと思っているように、あらあらと困った子供を見る程度の笑顔を浮かべるだけだ。何らの悪意もなく、おばちゃん先生は味方ではなかった。
     ぐにりと指が食い込んで、オジサンは尻の感触をよく味わう。
     瞳佳はひたすら静かに耐え忍び、ただ過ぎ去るのを待っていた。揉んで来る指の動きで、オジサンの指がどんな太さで、どのように指を躍らせてくるのかが、嫌でも如実にわかってしまい、本当に辛くて恥ずかしい。
     ヒップサイズも大声で、しかし最後の山場を越えたところで、どっと気が抜けて瞳佳はへたり込んでしまう。
     身体測定だけで、ここまで疲れることになるなんて。
     すぐに着替え直した瞳佳は、ここまで散々な思いをさせてくれたオジサンにお礼を言い、ようやく保健室を後にする。
    
         ***
    
     それからだ。
     盗撮に成功した男子グループは、何度も何度も瞳佳の裸を眺めては、みんなでそれをオカズにしている。何も知らない瞳佳にいやらしい視線を送り、制服の内側にある乳房に思いを馳せている。
     瞳佳はこの事実を知らない。
     本人にとっての身体測定は終わったが、真実としてはまだ続いている。
     これからも延々と、瞳佳の裸は知らないうちに使われていくことになるのだ。
    
    
    


     
     
     


  • 羞恥のマッサージ 柳瞳佳

    
    
    
     依頼人の女性が持ち込んだのは、マッサージ店で受けた施術の内容が思い出せない。きっと何らかのオカルトに違いない。そう信じ込んでいる顧客の話を受け、『ロザリア・サークル』による代金持ちで、柳瞳佳は件の店を訪れることとなる。
    
     ぼぅ……。
    
     と、意識が揺らいでいた。
     ぼんやりと波に揺られて、ただ目的もなく海の真ん中を浮かんでいるような、ゆらゆらとした感覚に脳を掴まれ、瞳佳の眼差しはどこか焦点が合っていない。
     この部屋は薄暗い。
     暗闇をオレンジ色に照らしているのは、ランプの淡い輝きだけで、お互いが座るテーブルだけが漆黒の中から浮き出ている。周りの壁の色や柄が辛うじて判別できなくもない、それだけ暗い中に瞳佳はいた。
    「吸って?」
    「すぅぅー…………」
     鼻腔の中には、アロマのうっとりと目が細まる香りが流れ込み、吸えば吸うほど心地よい気持ちになる。朝起きて、二度寝するのが気持ちいいような、眠気に落ちるまどろみの心地よさによく似た感覚に支配されていく。
    「吐いて」
    「はぁぁー…………」
     指示通りに息を吐き出し、また「吸って?」と合図が出れば吸い上げる。
     脳に色濃い霞がかかり、すっかり魂の抜けた表情となっている瞳佳は、頭の片隅で自分の目的を辛うじて思い出す。
     そう、依頼。仕事だ。
     この店に入ってから、待合用のベンチで待つこと数分。カウンセリングルームに呼ばれ、清潔感のある若い男とテーブルを挟んで話し始めたことは覚えている。今日はどのような用件で、どういったマッサージをお望みでしょう、といった施術の相談。
     勉強で肩が凝るので肩こりと、胃に穴が空くほどの生活はしていないがストレス解消。あとはやっぱり、思春期の少女としては美容が気になり、美肌効果のマッサージをお願いしようと話していた。
     それで、運動はやっているかと聞かれたはずだ。スポーツの部活をやっているなら、例えばテニス部なら肘の具合も診ようとか、サッカーなら足とかで、そういったことも先生の方から切り出してきた。
     そうこう話しているうち、もう意識がぼんやりだ。
     ランプは初めからあった。アロマの香りも初めからで、気がつけば壁掛け時計の音も、やけに大きく刻まれている。
    
     チキ、チキ、チキ、チキ、チキ、チキ……。
    
     と、秒針による単調なリズム。
    「高校生ですもんね。美容が気になるってことは、やっぱりスタイルも」
    「え……あ……はい……」
     この機にスタイルも整える。
     いいかもしれない。
    「でしたら、バストエステなんかもオススメですよ?」
    「そうですね……。胸も……」
    「お客様の乳房に触れることになりますので、その辺のご同意を頂ければ」
    「あ……大丈夫です……」
     ただのマッサージだ。
     特に問題はない。
    「施術の際は紙ショーツを用意しますので、上からガウンを羽織って下さい。ショーツ以外の衣服は全て脱いで頂きます」
    「わかり……ました……」
    「施術中に行う方法は、全てれっきとしたマッサージの一貫になりますので」
    「……はい」
    「では、更衣室の方へご案内します」
    
         ***
    
     着替え始めた瞳佳は、脱衣カゴの中に一枚ずつ衣服を畳んでいく。
     まず上半身はブラジャー姿になってから、スカートの留め具を外して下着姿に、さらにブラジャーを外してショーツ一枚になる瞳佳は、自分のショーツを脱いで全裸となり、店側が用意した紙ショーツに履き替えた。
     ガウンを羽織ることで裸体を隠し、瞳佳はふと首を傾げた。
    
     マッサージ店というのは、こうも脱ぐものだろうか?
    
     こういう店には一度も通ったことがなく、ネットのレビューで調べたわけでもない。知識に乏しい瞳佳は判断できず、そういうものだろうと納得して、この更衣室から施術室の方へと移動していく。
     待ち構えるマッサージ師の若い男は、爽やかな顔立ちをした清潔感のある人だ。第一印象での感触はよく、喋り方も穏やかで信用しやすい。どこか安心できる男なので、あくまでも施術だからと脱いだわけだが、いざとなるとウブな乙女らしく顔が赤らむ。
     ガウンの中身はショーツ一枚。そんな格好で男と二人きり。
     思春期の少女がこれで何も思わないはずがなく、一言で言って落ち着かない。どうにもそわそわしてしまって、こんな格好でいるのはちょっと、せめてブラジャーだけでも着けられればと、そういうことばかりが頭に浮かぶ。
    「じゃあ柳さん。始めましょうか」
    「はい」
     施術用ベッドの上には大きなタオルが敷かれていて、瞳佳はベンチに座るような形で腰を落ち着けた。
     これから、男の指が触れて来るのだ。
     マッサージなのだが、やはり乙女としては意識する。別に下ネタが好きなわけでも、いやらしいことをすぐに考えてしまう頭でもない。ごくごく普通の頭であっても、男の手が自分の肌に触れる事実は、やはり思春期の少女にとっては大きなものだ。
     だから緊張してしまった。
     ガウンをちょっとはだければ、簡単に裸が見えることの心もとなさと、自分の背後に男が立ったことへの緊張感で心が強張り、顔も強張り、頬は朱色に染まっていく。
    「まずは肩こりの方からいきますが、よろしいですか?」
    「あ、はい。よろしくお願いします」
     自分はこれからどうなるのだろう。どんな施術を受けるだろうかと、内心では身構えつつ、瞳佳はきっぱりと答えていた。
    「ではいきましょう」
     背後から、瞳佳の両肩に男の両手が乗せられて、肉をほぐすための施術が始まる。ツボの名前を解説しながら指圧して、リンパを流し、腕を伸ばすように指示して肩を回転。こうした施術の数々には、依頼者が言うようなオカルトの痕跡は見受けられない。
     店を出たあと、自分がどんな施術を受けたのか思い出せない。
     それはオカルトの類に違いない。
     依頼者はそう信じ込んでいるわけだが、今のところ気になる記号や文字が壁に書き込まれていることもなければ、守屋真央の受け売りで知識的に覚えのあるオカルトグッズが置かれてもいない。
     そして、肩のこりを解消していく指技は気持ちがいい。
    「緊張してましたか?」
    「え、まあ、ちょっとだけですけど」
    「初めてのお客さんはだいたいそうです。けど、私はきちんとお客様の疲れを癒し、肩こりだの腰痛だの、日頃のストレスなんかもスッキリさせて、気持ちよく店を出てもらいたい。で、気に入ってもらえればまた来て欲しい。そう考えています」
     男はマッサージ師としての信念を語る。
    「人には悩みってあるでしょう? 嫌な人がいるだとか、毎日が不安だとか。私には原因を取り除く力はありません。けど、こうしてマッサージを受けて頂いて、曇った気持ちを晴らすだけなら、私にも出来るんじゃないか。まあ、そういうことを思った学生時代の頃から、こういう仕事を目指して来たってわけなんですよね」
     肩のマッサージは気持ちよかった。
     触れてくる五指が皮膚を圧して、揉むように筋肉を包んだり、リンパを流すたび、どこかとろけるようなものを感じる。毛穴の一つ一つが溶解して、細胞が細かく溶け合い、筋肉繊維が一本ずつ、どこかに溶け落ちているかのような気持ちよさは、指先だけでそんなことが出来るだなんて不思議でならない。
     これがプロの技術なんだと、瞳佳は素直に関心していた。
    「ちょっと、緊張ほぐれたかも……」
    「それはよかった。リラックスが一番ですからね」
     とはいえ、瞳佳が気がついていた。
     このマッサージ師の男が放つ、手馴れた落ち着きと、聴いている人間の意識を引き込むように作られた、わずかな抑揚。普通に話しているようだが、そのつもりで聴けば、どことなく催眠術を思わせる話し方だ。
     見えない技巧が凝らされている。
    
     これって、守屋君が『交霊会』をやるときの喋り方に似てる?
    
     だが、それが決定的なオカルトの証拠とは思えない。
     そもそも、オカルトに違いないという話自体が依頼者の思い込みで、このマッサージ店が本当に霊的に怪しいとは決まっていない。
    「背中もほぐしていきましょうか」
    「うつ伏せでいいですか」
    「そうですね。お願いします」
     枕の上に顔を埋め、背中と尻を上にする。
     うなじと肩甲骨。腰にかけてのマッサージで、手の平がまんべんなく這い回り、その手つきは言うまでもなくマッサージの技巧を帯びている。間違っても性的ではない、ツボを狙った指圧や背中を気持ちよくするためだけの触り方が、瞳佳をみるみるうちに癒していく。
    
     あー……気持ちいいなぁ……。
    
     瞳佳はうっとりしていた。
     どこかで焚かれるアロマの香りも流れてきて、それがすぅーっと、鼻腔から流れ込むと、香りの成分が身体を癒してくれる。完全にリラックスしきる瞳佳は、もう異性の手だのという意識をしていない。
     男の手だの指ではなく、マッサージ師の手であり指だ。
     このまま、ずっとくつろいでいたい。
    「続けてオイルを使いますので、足の方から失礼します」
     容器のフタを開けているのであろう音の気配を感じ取り、その次に足が両手に包まれると、足裏をぐにぐにと指で押し込まれることのくすぐったさに、瞳佳は少しだけ身をよじった。
    「くすぐったいですか?」
    「いえ、ちょっとだけ……」
    「本当にくすぐったくて、無理なようでしたら言ってください。そういうお客様もいますから」
    「あ、はい……」
     片方ずつの足にマッサージは施された。
     足の指の一本ずつまで丁寧にほぐしてから、足首を手に包み、ふくらはぎをほぐしてから、だんだん膝へと、太ももへと、上の方へと手が動く。ガウンの丈が持ち上がり、お尻が見えないギリギリの、生脚は丸出しになる露出度になったとき、瞳佳は再び赤面していた。
    
     ちょっと見えすぎなような……。
    
     瞳佳自身が意識するのは、太ももの露出度に関してだけだった。
    「ちょっと脚を広げて下さい」
    「はい」
     脚を若干V字にして、覗こうと思ったなら、実のところ白い紙ショーツが見えているが、瞳佳はそれに気づいていない。
     もう片方の足も同じくして、指の一本ずつから太ももまで、それだけで時間をかけてほぐしこまれて、瞳佳の両足の皮膚にはオイルが深く染み込んでいた。効能のせいなのか、皮膚全体が微熱を帯びて、どことなく火照った感じがする。
     瞳佳が本当に下着を意識するのは、尻と太ももの狭間に指が来てからのことだった。
    「あ……!」
    「どうしました? 柳さん」
    「いえ、そこって……」
    「脚の付け根ですね。ここも効果があるんですよ?」
    「あ、そうですよね。それなら……」
     なら、いいか。
     しかし、尻の下弦にあたる丸いカーブと、むっちりとした太ももの、その境界線にあたる部分に指を押し込むマッサージで、ガウンの丈はあと数センチだけ持ち上がっていた。
    
     下着、見えちゃってる……?
    
     見られているかもしれないことを意識して、一度意識すると余計に気になり、男の視線がどこに注がれているだろうかと、全身が気配を探ろうとしてしまう。
     本当はショーツを見ているんじゃないだろうか。
     いや、この人は単なるマッサージ師だ。
     だけど、男の視界に自分の下着があるのは事実で、マッサージ師にいやらしい気持ちがあるにせよないにせよ、一秒たりとも見ないということはないだろう。ちょっとくらい、何秒かくらい、見たかもしれない。それか、これから見るかもしれない。
    
     ぐにぃっ、
    
     両手でがっしりと、しっかりと、お尻を鷲掴みに揉まれると、さすがにぎょっとした。
    「え……!」
     それも一瞬だけのことで、すぐに両手とも尻から離れ、その上の腰をほぐすことに専念していた。少し焦ったが、お尻に残った感触を思い返すと、やっぱり技巧を凝らしたマッサージの揉み方で、いやらしい揉み方ではないはずだった。
    
     そうだよね。
     お尻に触るマッサージもあるんだよね。
    
    「ヒップにもエステを行いますので、丈の方をもうちょっと上げさせて頂きますね」
    「あっ、どうぞ」
     少しは――どころか、大いにあった。
    
     やだ、見られちゃう……。
    
     という気持ちが。
     マッサージのためであり、この男の手つきは全て技術を凝らしたもの。どれも『施術』に過ぎないのだと、そういう気持ちが瞳佳の中で、何かを諦めさせていた。本当ならきっぱりと、やめて下さいと言うところが、マッサージだから許していた。
    
     白いショーツが包む瞳佳のお尻は、完全にガウンの外へ露出していた。
    
     ……見られている。
    
     たとえ男に他意がなく、お客様を満足させる以外のことに興味がないのだとしても、いやらしい気持ちが皆無だとしても、丸出しのものが視界に納められてしまっている。
    
     じぃぃぃぃ……。
    
     余計な意識をしてしまうと、お尻をどのくらい見られているのか、そればかりが気になってきてしまう。
    
     ――じぃ。
    
     本当に視姦されているのかはわからない。
     枕に顔を埋めているだけの瞳佳は、自分の視界を暗闇に潰した変わり、お尻ばかりに意識が集中してしまって、周囲の気配をお尻によって気にしてしまう。敏感に視線を察知して、視姦されているような気持ちになる。
    「大丈夫ですよ。柳さん」
     抑揚を効かせた声には、思春期の乙女をそれでも落ち着かせてやる『効果』があった。
    「そうですよね。さすがに気になっちゃって……」
    「それが普通ですよ。ですが、お尻に行う施術では筋肉が引き締まり、ほどよい形に整いますので、かなりの美尻効果が期待できますよ?」
    「どれくらい綺麗になりますか?」
    「かなりです」
    「かなり……!」
     期待に満ちた瞳佳は、お尻の上に置かれる手を静かに受け入れ、尻肉を揉みまわす指遣いを如実に感じる。
    
     でも、お尻……!
     こんなに揉まれるなんて……!
    
     技術の宿る指先で、掴み取るべき筋肉を探り当て、それをほぐしているのがわかる。体重を巧く使って、リンパを押し流しているのもわかる。そこにもオイルは使われて、紙ショーツに染み込んでから、皮膚まで浸透してきていた。
    
     何で私、こんな……!
     うっ、お尻が、お尻が……!
    
     だんだん、どうして自分はお尻を揉まれ放題になっているのかわからなくなってくる。わからないなりに頭を回し、混乱しきった脳が辿り着くのは、言うまでもない。マッサージだからという、ただ一点のみだった。
    「柳さんのお尻は可愛いですねぇ?」
    「せ、セクハラ……!」
    「ああ、ごめんなさい。けど、褒めてもらえる方がいいでしょう? 彼氏が出来て、関係が進んだ時とか、なおさらね」
    「それはそうですけど!」
    「柳さんのは十分にプリプリでしたが、もっとセクシーになりますよ?」
    「もー。だいたい、なんでお尻揉まれながらフレンドリーな感じになってるんだろう……」
     打ち解けあった友達でもないのに、どういうわけかそんな感じだ。この人のコミュニケーション能力と、接客能力によるものかもしれない。
     こういう店員さんを、話しやすいし過ごしやすい、良い店員というべきで、常連さんはそういう気分良く接してくれる人を指名するわけなのだろう。美容院しかり、その他もろもろのお店しかり。
    「そうですねぇ? フレンドリーになったところで、仰向けになりましょうか」
    「次はどこなんですか?」
    「おっぱいです」
    「やっぱり……!」
     仰向けに返った瞳佳は、爽やかな男の笑顔と視線を合わせていられずに、ただただ天井だけを見つめて固まっていた。
     ショーツを見られる非ではない。
     お尻と胸、痴漢されたらどちらが嫌かといえば、大きく差はない気はするが、上にはブラジャーを着けていない。ガウンを左右にはだけた瞬間、瞳佳の生のおっぱいが、視線の元に晒されてしまうのだ。
    
     見られるの? 本当に見られるの?
     でも、バストエステもお願いしたんだった……。
    
     こうなると諦めるしかなくなって、瞳佳は静かに目を閉ざす。ガウンの前を掴まれて、それが左右に広がると、胸などあっさり露出して、それどころか腕から裾を引き抜かれ、完全にガウンを脱がされる。
    
     瞳佳はショーツ一枚だけの姿にさせられた。
    
     今まで裸体を隠してくれていたガウンは、ベッドシーツか何かの代わりとなり、瞳佳の背中で下敷きとなるのみだ。
    
     ――じぃ。
    
     穏やかな男の表情は、言うまでもなく胸を見ていて、瞳佳はたまらずに両腕をクロスに固めて隠してしまう。
     どれだけ顔が赤いだろう。
     唇の形がどこか歪んで、頬の筋肉も強張った、羞恥心ある乙女がどんな気持ちでいるのか丸わかりであろう表情も、この人の視線に晒されていてはたまらない。耐え切れずに顔を横向きに逸らした瞳佳は、赤色の耳だけを男に向けていた。
    「じゃあ、アソコからにします?」
    「……えっ!?」
    「まあ冗談ですが」
    「じょ、冗談なんだ……?」
     とてもそうは聞こえずに、性器まで見られる危機感を切実に覚えたので、瞳佳はかなりホッとしていた。
    「胸を見せるのはお辛いですか?」
    「正直、この格好だけでもかなり……」
    「先に手の平から肩にかけてをやりましょう。右腕を横にだらんと置いて下さい」
     言われた通りに投げ出すと、五指の一本ずつからマッサージは始まった。
     オイルをたっぷりと使いながら、指の根元から先端まで、丁寧に指圧に包んで解きほぐし、手の平や手の甲も指圧する。手首を揉み、だんだん肘へと、二の腕へと、一箇所ずつに数分以上かけながら、時間をかけて肩まで来ると、鎖骨を指でなぞってきた。
     次は左腕、同じようにしてもらう。
    
     ああ、でも……。
     やっぱり、マッサージか……。
    
     そんな単純で深みもない、呟きめいた感想が浮かぶのは、瞳佳が裸体であるにも関わらず、男の方が仕事熱心な顔しかしていない。裸の女子が横になり、男が上になっている状態は、つまりそういう状況を連想するが、ストレートに言えば、これからセックスに繋がりそうな気配がどこにもない。
     マッサージに専念している姿を目にすると、ああマッサージなんだなと、シンプルな思いが浮かび上がって、余計な警戒心はどこか遠くへ消えていく。
    
     でも、おっぱい……。
     ちょっとなぁ……。
    
     お尻を見せるのも、本当は無理だったのだ。
     もうマッサージされ尽くして、尻の肉には施術の感触が残っている。今更になって遅いことなので仕方がないが、やっぱりお尻は勘弁して下さいと、正直に言えばよかった後悔は確かにあった。
     左腕が終わる頃には、それでもガードを解かされると、どこか覚悟してしまっていた。
     何というか、立場が弱い。
     この格好の自分が、強気に何かを断れる気がしない。
    「お腹ですか?」
    「ええ、ここもね」
     思いもよらず、腹部と脇腹のマッサージが始まるので、そこは拍子抜けだった。
     しかし、数分もすればそこも終わって、残る触れられていない部分といえば、胸とアソコの二箇所くらいだ。
     それ以外、もう触れられている部分には、大胆に塗り込まれたオイルが染みて、皮膚の表面に光沢を作っている。
     さらにオイルを手に取って、今一度足に塗り、膝に塗り、全身に重ね塗りを行うから、ヌルヌルとした厚みに全身がコーティングされていき、最後にはもう、オイルで出来た風呂に浸かって出てきた直後のようにまでなっていた。
     どこもかしこも、指の股にも成分が吸収されて、全身が火照っている。
    「大丈夫ですよ。これも『施術』です。『マッサージ』です。気持ちよくして差し上げますよ」
    「でも……」
    「柳さん。両腕をだんだん、だんだん、横に下ろして、気をつけの姿勢になって下さいね」
     そう言うと、男は瞳佳の手首を掴んできて、少しずつ下に動かし始めた。力の抜けた瞳佳の腕は、されるがままにずれていき、あれほど隠した胸があっさり曝け出されて、そのまま瞳佳は気をつけの姿勢を取らされた。
    
     胸、見られてるんだ……。
    
     じっ、と刺さる視線の感触は、じりじりと肌を焼き、熱で皮膚をかぶれさせてくるかのようなものに思えた。相変わらずマッサージのつもりしかない表情で、視線は乳首に集中して、瞳佳は何も言わずに耐え忍ぶ。
    
     マッサージされちゃうんだ……。
     でも、綺麗になるし……。
    
     そんな諦めがどこかにあった。
    「お嬢様っぽいって、言われたことありません?」
    「え? あ、っぽいってだけなら、ちょっとだけ……」
    「胸の膨らみも、お嬢様ですねぇ?」
    「え、あの……!?」
     よく意味がわからない。
     身体のことを指摘され、そのことに瞳佳は動揺する。
    「形といい、肌の色といい、可愛らしさが出ています。大人しくて、控え目な雰囲気が、このサイズと乳首の色にも現れているので、つい関心してしまいました」
    「セクハラ……」
    「マッサージです」
     両手が胸に接近する。
     おっぱいを揉まれてしまう危機感に強張るが、瞳佳の置かれた危機はレイプでも暴力でも何でもない。美容効果のあるマッサージだ。緊張するだけ緊張して、危機感を感じるだけ感じる瞳佳は、別に特別な抵抗をするはずもなく、手の平に胸が包まれることを受け入れた。
    
     もみ、もみ、もみ、もみ……。
    
     指に強弱をつけ、この人は瞳佳の胸を揉んでいる。
     手の平に宿る温度と、男の指の感触が、生まれて初めて乳房にあって、マッサージであれ揉まれている事実が心に焼きつく。やっぱり、こういうことは乙女にとって、瞳佳にとっても重大な出来事で、初めてな分だけ乳房に全ての意識がいった。
     ただの鷲掴みだと思っていたが、下から持ち上げるようにし始めて、さらには周りの皮膚から乳房の中へと、指で押し流そうとしてくる手つきもあり、どんな技巧が凝らされているのかを胸の皮膚でよく感じた。
     脇下にあるリンパも流し、肋骨の部分も手の平全体をかけてよくほぐし、決しておっぱいを揉むことに執着しない手の動きは、これがマッサージに過ぎないことをますます証明しているようだった。
     だから、乳首を急につままれても、瞳佳は疑問に思わなかった。
    「ひっ、あ……!」
     これは何のマッサージなのだろうと、喘ぎ声を上げながら、突如とした快感に動揺しながらも、心のどこかではそんなことを思っていた。
    「大丈夫ですか?」
    「は、はいっ、いっ……! んっ、ん……!」
     乳首への刺激が始まっていた。
     全身が火照ったせいか、普段よりも敏感な素肌の中でも、特に性感帯とされる部分を指で苛め抜かれれば、肩がモゾモゾと動いてしまう。捏ねるような、ねじるような、クリクリと転がす指遣いに絡め取られて、瞳佳は快楽に鳴き始めた。
    「あ、あん……! あの……これ……!」
    「マッサージですよ?」
    「ど、どんな……!」
    「乳腺組織を活性化します」
    「あっ、んんぅ……!」
     マッサージだ。施術なのだ。
     効果があると信じ込み、肩がくねって捩れる瞳佳は、か細い息遣いの中に紛れた喘ぎ声で、自覚のないうちに色気を振り撒き、この『マッサージ』に耐えていた。
    「あの……! こ、声が……!」
    「大丈夫ですよ。声の出てしまうお客様は多いので、柳さんも遠慮なくお声を出して頂いても構いません」
    「そ、そう言われても……! んん、ふっ、ぬぁ……あふぅ…………」
     気持ちよかった。
     ただ、今までの気持ちよさは、こうもはしたないものではない。もっと健全なマッサージの中にある快感で、決して性的な気持ちの良さではなかったのだ。
     それが、こんなにも――。
    「アソコの周りにいきましょうか」
     乳首から指が離れて、次の言葉はそれだった。
    「そんな……さすがに……」
    「周りだけです。足を左右に開いて下さい?」
     遠回しにM字開脚を要求され、そんな指示にも関わらず、瞳佳は従ってしまっていた。
    
     カァァァ……!
    
     顔の赤味が急速に増していく。
     そんなポーズを取ってしまえば、どんなにえげつなく、まるでこれからセックスをして欲しいように見えてしまうか。いやらしく見えることなどわかりきっていたのに、瞳佳は自然と施術上の意味があるのだと捉えていた。
     腰の下に手を入れられ、尻を高らかに持ち上げられる。
    
    「これ、まんぐり返しっていうんですよ。ご存知ですか?」
    
     下腹部を好きにしてもらうためだけにあるような、乙女心を削り取るには十分すぎるポーズに瞳佳の頭は沸騰しかけていた。
     それだけ高く尻が上がって、膝が肩に触れてさえいる。M字開脚も逆さになり、これではWになっている。
     アソコの周辺に指が置かれて、脚の付け根にある神経をほぐし始める。性器自体には触れないが、何ミリか横にずれれば当たりかねない。そんな際どいこと極まりない位置に指があり、瞳佳は完全に強張っていた。
    「自分で自分のアソコが見えますか?」
    「…………はい」
     そんなことを聞かれて素直に答える。
    「濡れていますね」
    「……はい」
    
    「実はここには一度もオイルを塗ってません。塗らないどころか、濡れないように気をつけていたくらいです」
    
     煮え立つ気配のあった瞳佳の頭は、今の言葉で完全に沸騰を始めていた。
    「ど、ど、ど、どう、どういう……!」
     瞳佳は声を震わせた。
     だが、言われなくともわかっている。
    
     自分の秘所から染み出た愛液が、紙ショーツのアソコ部分をべったりと濡らしたのだ。
    
     知りたくなかった、自覚もしていなかった事実を突きつけられ、自分がどういう意味で気持ちよくリラックスしていたのか。受け入れるには酷すぎる現実に動揺して、脳の沸騰がひたすらに加速する。
     だいたい、他にもあるのだ。
    
     紙ショーツの内側から肌色がくっきりと透けている。
    
     今までずっと、瞳佳のアソコは丸見えだったし、何ならお尻にオイルを塗られた時点で見えるべきものが見えただろう。
     今まで、ずっと――。
    
    「ではご拝見」
    
     紙ショーツがずるりと、皮でも剥くようにずらされる。
     瞳佳はさーっと青ざめた――いや、青ざめるような気持ちでいながら、逆に赤面の度合いが増していき、トマトや茹でタコといった例えが相応しいまでになっていた。
     こんなポーズで、お尻の方から脱がされれば、もう見えるものは決まっている。
     羞恥心のある乙女。思春期の少女。
     高校生である瞳佳の心が、このまま一体どんなことになってしまうか。
    
     二本の親指によって広げられ、丸肉の割れ目から広がるものは――お尻の穴だ。
    
     もう脳が蒸発を始める勢いだ。
     パニックのように表情が大きく歪み、それでなくとも強張っていた頬の肉が、極限まで力んで硬くなる。唇がぐにゃりと歪み、その内側では折れそうなほど強く歯が食い縛られる。
    
     ――恥ずかしい。
    
     それ一色の感情で気が触れて、表情も赤面具合も、あらゆるものがどうにかなってしまった瞳佳は、途方もなく膨らむ恥ずかしさに耐えることしかできなかった。
     耐えて耐えて耐え忍び、それでも視線は注がれ続ける。
    
     じぃぃぃぃ……。
    
     必要以上にお尻の穴を観察され、頬や額までもが煮立っている。顔面の全てがグツグツと泡立ち始め、その目は涙目になっている。
    
    「肛門もお嬢様っぽいですねぇ?」
    
     そんな場所に対する品評が始まった。
    
    「あまり黒ずんでいない。それどころか、皺の集まりの部分が桃色っぽくさえあって、肌の白さとのコントラストで上品ぽくなってるよ。お嬢様っぽいお尻の穴ですねぇ?」
    
     薄っすらと、泣き出す気配だけだった瞳佳の涙目は、涙の雫を浮き上げて、いつ零れ落ちてもおかしくないまでに、可哀想なくらいに涙ぐんでいた。
    
    「次はアソコも確かめましょう」
    
     どんな腕力か、それとも紙ショーツが脆かったか。
     呆気なく引き裂かれても、瞳佳にはそんなことを考える余裕もなければ、過度な行為を咎める言葉さえ吐き出すことが出来ずにいる。そうする、そうしないの次元にそもそもなく、羞恥心だけにより、脳の容量が丸ごと取られ、物事をほんの少しでも考えるスペース自体が残っていない。
     肛門に続けてアソコまで視姦され、いつかは首から上の全てが残らず蒸発して消えてしまうかのようだった。
    
    「例えるならヘラで掘り込んだような一本筋。毛の部分も、毛先が細めで、生え方も薄い感じで手入れも無しに整っている。お嬢様っぽい!」
    
     品評の言葉を使った絶賛は、全てが蒸発するまでの時間を加速させるだけだった。
     しかし、実際には顔は消えない。
     沸騰の勢いだけが強くなり、もうこれ以上は顔が赤くならない変わりに、耳にかけてまで熱さが増す。
    
     くぱぁ……。
    
     アソコの穴が広げられ、中身が視姦に晒される。
    
    「桃色ですね! やっぱりお嬢様っぽい! ピンクな感じに白味もあって、白桃みたいな色合いが美しいですよ! しかも処女! これは凄い!」
    
     柳瞳佳という存在そのものが、しまいには「恥ずかしい!」という意志を全身から放出していた。隠し切れないものが滲み出て、脳に収まりきらないものが溢れるように、そう訴えたい心が洪水のように身体の外まで広がっていた。
     ただ泉のように羞恥心を放出し続ける。
     それだけの存在と化していた。
    
    「アソコとアナルにもマッサージをしてあげましょう! クリトリスにも!」
    
     もし羞恥心の限界が存在して、恥ずかしさで人が死ぬことがあるのなら、瞳佳はこのまま殺されてしまいかねない。
     無慈悲が過ぎるマッサージは、この期に及んでも技巧を凝らし、肛門の周囲を施術効果が出るように揉みほぐす。
     穴の上に置かれた指が、グニグニと蠢いて、皺をなぞるようにも動いている。
     逆にアソコのマッサージが始まると、こちらはもっぱら性的刺激で、クリトリスを苛めながらも膣に指を出し入れする。それがどんなに気持ちよくとも、喘ぐ余裕まで存在しない。表情の苦悶の形が変わるだけだった。
    
         ***
    
    「覚えてない?」
    
    「……うん。ごめん」
     マッサージ店から出てきたあと、確かに施術内容の記憶がなくて、そう告げるしかなかった瞳佳は申し訳のなさに俯く。
    「覚えていないって自覚はあるんだな」
    「一応」
    「なら、記憶がなくなる理由に心あたりは?」
    「それも、ちょっと……」
     どう思い返してみても、ごく普通のカウンセリングを受けたあと、肩こりや美容関係の施術を受けたくらいしか思い出せない。
     もっと、他にもあったはずなのだが。
     記憶に空白があることは理解できても、瞳佳にはそこが思い出せない。
    「凄く恥ずかしかったような……? 気がするけど、わかんないかな」
    「……そうか」
     お手上げといった顔をして、守屋真央は肩を竦める。
    「いずれにしろ、依頼人の言うとおり、利用者が施術内容を思い出せないというのが、事実であることはわかった。それだけでも収穫としよう」
    「……うん」
     それくらいしか、瞳佳が上げた成果はない。
     だったら、どうするか。
    
    「もう一度行ってみてもいいかな?」
    
     挽回を望む気持ちで、瞳佳はそう切り出す。
     数日後、瞳佳は再び店を利用するのだ。
    
    
    
    


     
     
     


  • 催眠少年は瞳佳を犯す

    
    
    
     銀鈴学院高校。
     転入初日の自己紹介を乗り切るも、ちょっとした経緯があって、積極的に柳瞳佳と仲良くしたそうな子のタイプには偏りができていた。つまり『占い』や『霊感』の話が好きな子。
     本当はそういうものとの関わりを減らしたいのだったが、今さら否定してまわるのも不自然だろうし、何より右も左もわからない新天地で、せっかく仲良くしてくれようという人達に文句があろうはずもない。
    
    「ねえ……柳さん。ちょっといい?」
    「うん?」
    
     そして帰りの陣部をしかけていた瞳佳は、そう呼ばれて顔を上げた。
     たしか――木茂くんだっけ、と、瞳佳は今日の記憶からその男子の名前を探り出す。瞳佳に話しかけてきた占いや霊感話好きはクラスの色々な層に満遍なくいたが、男の子にまで積極的に寄って来られたのは、たった今これが初めてだ。
     見た目から大人しそうで、オドオド気味で、フレームの太い黒縁眼鏡が、必要以上に地味っぽさを醸し出す。ダンゴのように丸っこい鼻の形と、吹き出物の多い肌に、それに崩れきった顔立ちは、お世辞にも格好いいとは言えなかった。
    「なに? たしか、木茂くんだったよね」
     実際に名前を声に出してみて、木茂くんという言い方は、イジメのための意地の悪いあだ名に聞こえなくもないことに気がついた。
    「う、うん。あ、あ、あのね。催眠とか、興味あるかなって思って……」
     明らかに喋り慣れていない木茂は、緊張なのか挙動不審に見える震え方で、声の出し方さえもオドオドしている。
     どうしたものか。
     きっと勇気を出して声をかけてくれたのだろうし、友達になりたいと思ってくれるのは、男子であっても嬉しい申し出ではあるが、少しばかり考えてしまう。
     こういっては悪いが、いかにも不器用そうで顔も悪い、たどたどしい木茂の振る舞いを見ていると、この人に必要以上に好かれたら嫌だなと、残念ながら思ってしまう。
     まさかストーカーとまでは言わないが、執拗に声をかけ、瞳佳と仲良くなりたがる。
     その男子が、これ。
     失礼なのはわかっているが、少なくとも第一印象では気になる異性の範疇には入らない。それに女子のたしなみというか心得として、いかにも面倒になりそうな男の子は、どうにか軽く受け流して身を守るのも、トラブルを避けるためには必要だ。
    「催眠は、どうかな。占いとはまた違うし……」
     ここは『占い』や『霊感』とは別物だと言い切って、せめて催眠だけでも、興味がないということにしておこう。
    「こ、これ見て欲しいんだ」
     木茂はそう言って、スマートフォンの画面を見せてきた。
     そして、見てしまった。
    「う……!」
     くらっとした。
     急な眩暈に見舞われたかのように、立ちくらみのように頭が揺らぎ、ぼんやりとした心地にさせられる。眠りに入る直前の、だんだんと意識が閉じていく感覚と共に、ぼやけてやまない視界の景色が、完全に見えたものではなくなった。
     意識が、消えた。
     それはしかし、一瞬のことだった。
    「え? あれ?」
     一瞬で目が覚めて、たった今の感覚に瞳佳は困惑した。
     何だったのだろうか。
     画面を見た途端だったが、何か起こったのだろうか。
    「柳さん。僕と、友達になってくれない?」
    「まあ、いいけど」
     瞳佳は軽く受け答えた。
     転入初日で声をかけてくれた男の子だ。わざわざ勇気を出してまで、ありがたい申し出をしてくれたのだから、それを断るのは『失礼』だし、受け入れるのが『当前』ではないか。断る理由がなかった。
    「アドレスを教えてくれる?」
    「あ、うん、いいよ」
     瞳佳は気軽に頷く。すでにみひろや積極的な何人かとアドレスも交換していたので、今さら拒否感はない。一度バッグにしまっていたスマートフォンを出して、何だか緊張気味にしている木茂とアドレスを教え合う。木茂が自分のスマートフォンをあまり良くない手際で操作しながら、瞳佳に言った。
    「じゃあ、メッセージ一つ送るから驚かないでね」
    「うん」
     瞳佳が快く頷いて、数秒後。
     瞳佳のスマートフォンが通知音を鳴らし、送られてきたメッセージを表示した。
     そこには。
    
    『セックスしよう』
    
    「……」
     見た瞬間、瞳佳は固まった。
     目を疑ったが、どう見てもセックスしようと書いてある。
     え?
     え?
     しばらく目を丸くして、瞳佳はそのメッセージを見ていた。
     どういうことだろうか。
    
     この拒否感のなさはなんだろう?
    
     常識的にはもっと引いたり、品性を疑うものだが、そうした感情が沸きもしない。それに転入初日だというのに、ここまで積極的に誘ってくれるのが、嬉しくすら思えるのだ。
     初対面でセックスなんて、普通は嬉しいだろうか。
     でも、嬉しい。
     何故なのだろう。
     瞳佳は、困惑した曖昧な笑いを浮かべて言った。
    「……まあ……いいけど」
    「あ、ありがとう。もう一通送るから、待っててね」
     そう言って文字打ち操作に入り込む木茂は、次に場所や日程のことを送ってきた。怪しまれないように別々に校舎を出て、さっそく待ち合わせの形で落ち合おうというものだった。
    「……えーっと、また明日ね?」
     またすぐに会うことになるのに、また明日というのもおかしいが、曖昧に手を振って、すると木茂も応じて教室から出て行った。
     転入初日から彼氏ができるのはさすがに目立つ。
     まあ、付き合うわけではないのだが、二人一緒に行動しては怪しいだろう。
     木茂は友達だ。
     ただし、友達は友達でも、これからセックスフレンドになる仲である。
    
         ***
    
     渡り廊下をいくつか通ると、見たことのない教室ばかりが目に入るようになり、やがて明らかに使われていない教室が並んでいる一角までたどり着く。金属製のドアがあると、メールに書かれた案内を見て、その通りのドアを見つけて全身で引っ張って開ける。
     そこは人の気配もない、空気に埃の臭いさえ感じる静かな廊下だった。
     がちゃん、と開いたドアを閉めると、すでに遠くなりつつあった学校の喧騒が、ほとんど聞こえなくなった。そして代わりに、この建物の中に広がっている空気の涼しく冷えて停滞した静寂が、耳の中に入ってきた。
    「……ここなんだね。木茂くん」
     そこに木茂は立っていた。
    「ここの教室を使おうと思って、あんまり人が来ないから」
     誰もいない、静かな静かな教室で、埃を拭き取った綺麗な机が、何台か寄せ集められ、くっつけてある。これがベッドの代わりなのだと、言われるまでもないく理解した瞳佳は、これから自分が木茂とセックスをする事実に緊張してきた。
     しかし、転入生が初日でクラスの男子と性交するのは、何もおかしくない。
     当然、常識、断るのは失礼。
    「もう一度、画面を見てもらえる?」
    「うん。見るだけ?」
    「見るだけでいいよ」
     木茂のスマートフォンに表示されているものの正体は、一瞬のうちにくらりとして、眩暈に襲われたように視界もぼかす瞳佳にはわからない。辛うじて理解できるのは、見たが途端にフラフラして、意識が眠ることだけだ。
    「これから柳さんから羞恥心がなくなります」
    「…………」
     瞳佳は、目が虚ろな人形でしかない。
     木茂の声など届いていないようにしか見えなかった。
    「平気で丸裸になりますが、手の平をパンって叩く合図によって、失われた羞恥心が蘇ります」
    「…………」
    「だけど、隠せません。隠してはいけません」
    「…………」
     瞳佳は始終、何も見てはいなかった。瞳の焦点はどこにもなく、視界にある全てのものが瞳佳の意識外にあった。
     それも、数秒。
     ハッと意識を目覚めさせると、今まで自分が何をしていたのか思い出せない瞳佳は、ちょっとしたパニックのようにキョロキョロとあたりを見回した。
    「あ、あれ? 私、立ったまま寝た? って、そんなわけないか」
    「うん。大丈夫。ちょっと、ぼーっとしていたみたいだけど」
    「そうなんだ」
    「ところで、全裸になってくれる? ああ、靴下は残した方がいいな」
    「全裸か……靴下だけ残っても……」
     何も隠せない衣類など、裸にされてはないに等しい。
     しかし、友達の頼みとあっては服を脱ぐくらい普通のことで、瞳佳は特に躊躇いなく制服を脱ぎ始めた。
     リボンを解き、ボタンを外し、だんだんと肌を晒していく瞳佳は、スカートまで脱ぎ落とすことにより、純白の下着姿となっていた。背中に両手をまわし、ホックを外し、ブラジャーも外したあとは、最後にショーツを下ろして完了だ。
    「気をつけ」
    「はいはい。どうぞ、ごらんあれ」
     裸を見せるくらい何でもないので、言われた通り靴下のみを残した状態で姿勢を正し、食い入るように見つめる木茂の様子でも眺めていた。
     おっぱいに顔を近づけ、胸ばかり見ていたと思ったら、おもむろにしゃがむ木茂は、アソコに生えた毛の部分を凝視する。
     それにしても。
     転校初日の人間関係は、こうして男子の友達までできたわけで、順調といえるだろう。霊感などと、うっかり口走ってしまったときは、やらかしてしまったと焦ったものだが、結果的には話しやすい相手もできた。
     こんな風に裸を見せてあげるのは、親睦の証というべきか、いたるところを夢中になって視姦している木茂の喜んでいる姿を見るに、ひとまずの安心を得られた感じがする。あとは余計なことに巻き込まれないように気をつければ、退学などと不名誉を賜ることはないだろう。
     いきなりだった。
     木茂が両手を打ち鳴らす。
    
     パン!
    
     それが合図のように、瞳佳は今の自分の恥ずかしさを思い出した。何でもなさそうにしていた瞳佳の顔は、急速に赤みを帯びていき、触れれば熱がありそうなほどの羞恥に歪んだ表情が浮かび上がった。
    「え? あれ、私――ハダカ!?」
     馬鹿な、そんな馬鹿な――。
     いや、自分で脱いだのだ。頼まれたから普通に脱いで、気をつけの姿勢も取って、どうして自分が平然と裸体を晒したのか、瞳佳自身にも理解できない。
     反射的にしゃがみ込み、両手で恥部を隠そうとする気持ちが瞳佳にはあった。
     だが、体がそのようには動かなかった。
    「え? あれ、おかしいな……」
     手足が言うことを聞かない。動かない。完全に動けないわけではないが、どうやら隠そうとする意志には反応してくれないらしい。考えてもみれば、自分で脱いでおきながら、それを隠すだなんて、友達に対して『失礼極まりない』行為じゃないか。
     となると、今になって隠すわけにはいかない。
     だが、恥ずかしさは想像以上だ。
     乳房の発育具合も、乳首の色合いも、下の毛やお尻の形も、木茂は女としての部分を全てくまなく視姦している。
    「写真撮らせて?」
    「え? まあ、ちょっとだけだよ」
     瞳佳の許可を確認するなり、すぐにスマートフォンのカメラ機能を呼び起こした木茂は、まず全裸直立が画面にすっかり収まるようにパシャリと押す。カシャ、っというシャッター音声が耳に入ると、ああ撮られたんだと、事実が明確に伝わった。
     ちょっとだけと言ったのだが、木茂は何枚も撮っていた。乳房のアップや性器のズームに、お尻まで、そんなに必要なのかと疑問になるほど、執拗にシャッターを切り落とし、瞳佳の裸体が画像記録として木茂のスマートフォンに蓄積していく。
     撮った写真の処遇はいかなるものか。決まっている。
     一人で、家でじっくり鑑賞するのだ。男の子はオカズを使ってオナニーをする生き物だと、瞳佳も知識的には知っている。瞳佳が寮で勉強したり、寝たり食べたり、私生活を営んでいるあいだにも、自分の裸をネタに木茂が自慰行為に耽るかもしれない未来を思うと、正直なところ何も言葉は出なかった。
     自分がいかに性の対象になっているかと思うと、どうにも肌が疼いてきて、下腹部が引き締まる感覚を瞳佳は感じていた。
    「ねえ、柳さん。そろそろセックスしよう?」
     あー、そうだった。と、瞳佳は思わず苦笑いした。
     実のところ、自分ではわからないが実際にそういう顔をしているのだろう。他人から「人が良さそう」と見られて色々と声をかけられたり、頼みごとをされたりするのは、瞳佳にとって日常茶飯事だ。それで妙なことに巻き込まれるのもよくあることだ。
     そしてそういう頼みに、結局、ほいほい応じるのも。
    「……わかった。いいよ」
     友達とのセックスなど『普通』である。
     なんだかんだで、実際人がいいのが瞳佳という人間だった。
    
    ***
    
     寄せ集めた机によって成された固い板のベッド。
     上履きを脱いだ瞳佳は、やはり靴下だけは履いているまま、机に上がって横たわる。すぐに木茂も上に来て、犬のように息を荒げていた。
    「や、柳さん。これから、せ、セックスするけど、別に嫌じゃないよねぇ?」
    「うん。友達なら普通だし、嫌ってことはないけど、でも初めてだからちょっと……」
    「……へへっ、き、緊張する?」
    「まあ、ちょっと……」
     生まれて初めてエッチをするのに、何の感慨も沸かないはずはない。早鐘のように鳴り続ける自分自身の心臓の音が聞こえて、表情もどこか強張り、そしてこれから行う胸を揉んだり挿入なりといった数々のことに今のうちから赤面した。
    「触るよ」
    「うん」
     瞳佳が頷くと、木茂は真っ先に胸を揉む。
     ムカデが這うような、ウネウネと指の踊った手つきは、乳房の皮膚をまんべんなく絡め取ろうと蠢いている。
    「んっ、んぅぅぅ……」
     すぐに瞳佳は感じていた。
    「はぁ……! はぁっ、柳さん……!」
     木茂は鼻息を荒げた。
     快楽と緊張と、それから恥ずかしさに目を細め、頬を朱色に染めている表情は、男にとっては魅力の塊でしかない。すっかり瞳佳の顔に見惚れた木茂は、より一層と指使いを活発にして責め走る。
     鎖骨を撫で、二の腕を撫で、ヘソをくすぐり、腰のくびれをまさぐりまわす。太ももに手の平を這わせてやり、それこそ全身という全身を撫で回した木茂は、とうとうアソコの割れ目にも愛撫を施していた。
    「んくぅ……! あぁ……ふぁぁ……!」
     ラインに沿って指の腹が上下に動けば、瞬く間に滲み出る愛液が、活性油となって滑りをどんどん良くしていく。瞳佳の様子を見ながらコツを掴んで、しだいに上手に責めていく木茂は、陰核包皮の内側から突起してくるクリトリスの存在に指で気づいた。
     くりくりと、ぬりぬりと、指の腹でクリトリスを苛めた。
    「あぁ……! あっ、あぁぁ……!」
     瞳佳の乱れている姿が、その髪を左右に振り乱している色気の顔が、ますます木茂を興奮させていた。そして瞳佳自身、自分のこの乱れ具合を見ることで、木茂がより鼻息を荒くしていることを何となく理解していた。
     その責めは、さらに続いて数分以上。あるいは十分以上なのかもしれない。喘ぎ乱れる最中に時間など確かめる余裕はないが、長々と続いた愛撫の末に、木茂は言い出した。
    「……い、挿れるよ! 柳さん!」
    「うん。わ、わかった」
     緊張しつつ、瞳佳は静かに股を開いた。
    「ふひっ、へへへぇ……」
     いかにも鼻の下を伸ばして、M字気味となった瞳佳の股へと、木茂は自分の肉棒を押しつけて、切っ先をやや沈めることで膣口に狙いを定める。
     いよいよ処女を失う瞬間がやってきて、瞳佳はさらに緊張で強張った。
     こんなこと、今まで誰ともしたことがない。
     本当にどうして、自分は初めて会ったばかりの男の子に――いや、せっかく友達になってくれたんだから、これくらいは『普通』のことで『何もおかしくない』のだ。
     だから、構わない。
     ここで初めてを体験しよう。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅぅ――。
    
     一本筋だったアソコのラインへと、亀頭が沈んでゆくごとに、その太さに合わせて穴幅を広げる膣口は、破瓜の痛みを伴いながら肉棒を飲み込んでいく。
    「うっ、くぅ……」
     体内に異物が侵入してくる違和感に悶える瞳佳は、この感覚に耐えよう耐えようと、一生懸命なまでに深呼吸を繰り返す。そうすれば何かが和らぐ気がして、とにかく大きく息を吸い、吐き出して、少しでも楽になろうとした。
     そんな瞳佳の奥を目掛けて、みるみるうちに一ミリずつ、ゆっくりと肉棒は進行する。袋を絞り込んだかのような膣壁の密閉は、肉槍の先端によって広げられ、ついには竿の半分以上までもが入り込み、そのまま根元までもが瞳佳の内部に収納された。
    「あぁぁ……! あ、は、入って…………!」
     瞳佳の全神経が、意識が、肉棒に向けられた。初めて入ったものの猛烈な存在感は、それだけで意識を引きずり、肉棒以外のことをたった一瞬でも考える余裕がない。入っている、根元まで、初めてで、硬くて太くて、そればかりのことが瞳佳の心と脳を占拠していた。
    「う、動くよ? 動くからね? 柳さん……!」
     木茂が腰を揺さぶると、瞳佳の中で肉棒の存在感はますます膨らみ、もう心の中にも挿入されている心地がした。
    
     にゅる……! にゅる……!
    
     肉棒の太さに対して、窮屈なはずの瞳佳の穴は、愛液のおかげで想像以上にあっさりとピストン運動を通している。
    「……あっ! あぁっ、あくっ、むっん、んぁっ」
     快感か、圧迫感か。それとも処女だからある性交痛か、あるいは木茂が上からかけてくる重心なのか。自分がどうして喘いでいるのかも、瞳佳にはわからなくなってくる。肉棒が出入りしている事実だけで頭が染まり、とうとうそれ以外の全てが、瞳佳の頭から消失した。
    「ああっ、気持ちいいよ? 気持ちいいよ? 柳さんのナカ……!」
     木茂はせっせと腰を振る。
    「あぁぁ……! いっ、うぅぅ……! んぁっ、はうぅぁぁ……!」
     瞳佳はひたすら喘いでよがる。
     あとはもう、射精のときまで延々と腰振り運動が続いていく。木茂が瞳佳を味わいつくすばかりである。下腹部に力の入った膣圧が、ぎゅっと肉棒を掴む快感を木茂は楽しみ、そして瞳佳の全身を使った色気あるよがりを見るために、一心不乱に奥を貫いていた。
     全てが終わる頃には、瞳佳はただ放心しきっていて、真っ白な頭の中には、何一切の思考といえるものなどありはしなかった。
     初体験を通した精神的な驚きと、疲弊しきった感じとで、目が少しばかり虚ろな瞳佳は、事後の写真を撮られていることに気づきもしない。シャッター音声が何となく聞こえたが、生きた人形でしかない瞳佳には、撮られている自覚など持てなかった。
     ただ、またあのスマートフォンの画面を見せられて。
    「気持ちよかったね? 最高だったね?」
    「……うん」
     意識が回復したわけでもなく、虚ろな瞳を維持したまま、そう言われればそう答えた。
    「またしようね?」
    「うん」
    「誘ったら、きちんと応じるんだよ」
    「うん」
    「でも、僕達の関係は内緒だよ? いいね?」
    「うん」
     ただ、うん、と返事をするだけの機械と貸して、そうやって刷り込みを受けてから、さらにまたしばしの時間が経ち、本当にやっとのことで意識の回復が始まった。
     ああ、そっか。
     ここでセックスしたんだっけ。
     瞳佳はごく自然に事実を受け入れ、友達である木茂と別れてから、寮での夜を過ごした翌朝には登校して、何事もないように一日を過ごす。
     まるで、何もなかったように。
     仮に友達から木茂について聞かれても、セックスをしたとは決して言わず、単なる友達で週に何度かメールをしなくもない程度と答えている。瞳佳の中で木茂という男は、実際にそのくらいの存在で、にも関わらず、間違いなくセックスフレンドだった。
     たまにメールが来れば、都合に応じて誘いに乗る。
     それは別に普通のことだし、セックスは気持ちよくて面白い。ちょっと友達と遊んでいるだけのことだから、瞳佳はそれを何とも思わない。
    
    『ねえ、瞳佳ちゃん。よくないと思うよ?』
    
     ん? 何が?
     と、そのメールを見るに、瞳佳は本気で首を傾げた。
     確かに不純異性交遊はよろしくないが、木茂は正式なセックスフレンドで、性交しても問題のない相手だ。
     別にいいじゃないか。
     おちんちん、気持ちいいんだから――。
    
          ***
    
     誰の目から見ても、柳瞳佳の様子に変わりはない。
     もちろん、転校してまだ日が浅く、瞳佳の日頃の様子といっても、友達みんなが瞳佳についてそこまで詳しいわけではない。しかし、それにしたって、日常的に授業を受け、休み時間には友達と話をして過ごす様子には、特筆しておかしな様子はないのだった。
     だが、間違いなく瞳佳の日常は歪んでいた。
    
     ねえ、今日空いてる?
     男子トイレでしたいんだけど。
    
     ああ、またか。
     まあ今日は暇だし、付き合ってやろう。
    
     木茂からのメールを見て、瞳佳の心はそんなものだった。
     普通として、受け入れていた。