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  • 第5話「おパンツ鑑賞」

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      決意を込めた栗木が、スカートに向かって手を伸ばしてくる。
     明日美は反射的に後ずさるが、すると背中に葉山の体が当たってきた。逃げ場を与えないように、背後に回りこまれたのだ。
    
     ち、畜生! こんな奴に!
    
     明日美は強く歯を食いしばった。
     こんな豚程度の男を蹴飛ばしてやることなど、本当なら簡単だ。ぶっても叩いてもいい。踏みつけてもいい。いつもの明日美であれば、こんなことをされようものなら、すぐにでも暴力に打って出ているところだ。
     しかし、今はそれを堪えなくてはならない。
     でなければ、余計に恐ろしい罰則が発生する。
    
     く、くそ! 冗談じゃねえ!
    
     とうとうスカート丈を掴まれて、捲り上げられる寸前だ。ゆっくりと持ち上げられ、少しずつ太もも露出面性が増えていき、明日美はただ受け入れることしか許されない。抵抗を抑え込み、懸命に我慢した。
    
     畜生! 畜生! この豚野郎が!
    
     スカートは持ち上がり、朝も晒された紫色のパンツが栗木の目を奪い、明日美は下腹部を凝視された。
    
     ――――――くぅっ!!!
    
     予想以上の恥ずかしさだ。
     朝と比べればマシな状況のはずなのに、今まで苛めていた奴に捲られているかと思うと余計に屈辱感が増幅して、膨れ上がる羞恥が苦しい。頬が一瞬にして加熱され、耳まで熱く染まり上がり、激しい恥じらいに耐えながら、それでも栗木を睨み返す表情となっていた。
    「どうです? 栗木君、気分が良いとは思いませんか?」
    「え、その……」
     葉山の問いに、栗木はしどろもどろになる。
    「あなたを今まで苛めていたこの子が今、こうしておパンツを曝け出しています。栗木君自身の手でスカートを捲って、ですよ? 気分が良いとは思いませんか?」
    「は、はい。その……。悪くないです」
     栗木は珍しいものでも観察するかのように、まじまじと明日美のパンツを見つめてくる。紫色の生地にかかったパンツの柄を、栗木は目でなぞっているのだ。あるいはアソコのシワにラインでも浮かんでいて、そこに注目しているかもしれない。
     明日美はすぐに耐えかねて、隠したい思いで自分の持ち上げられたスカートに触れる。
    「駄目ですよ? 明日美さん。きちんと見せてあげないと」
     葉山に即座に注意され、明日美はすぐに手を引いた。
    「もういいだろ? 十分じゃねーか」
    「そうおっしゃるのでしたら、次に移りましょう。栗木君、お尻を叩いてあげてください」
     再びスパンキングを持ち出され、明日美はぎょっとした。
     朝の屈辱が蘇る。
    「お、おい! あれはもういいじゃんかよ。わかった! パンツぐらい見せるからよォ、いくらでも拝んでいいから、ケツは勘弁してくれよ」
    「できない相談ですね。パンツはいくらでも見せるべきですし、お尻叩きも受け入れて下さい」
     葉山の無情なまでの命令に、明日美は必死に食いつくも、一切の意見は受け入れられない。結局机の上に乗り、朝と同じような四つん這いでパンツに包まれたお尻を丸出しにされた。
     畜生、結局こうかよ。
     今ならクラスメイトこそいないが、栗木ごときにお尻を差し出している。腰を突き上げた情けないポーズを取らされているだけあって、捲られる以上の恥ずかしさだ。
    「い、いいんですか?」
     栗木は明日美よりも葉山に確認する。
    「ええ、是非とも。あなたの手でやってください」
     体は明日美のものなのに、葉山によって許可が出された。
    「そ、それじゃあ――」
    
     ペチッ
    
     く、くそ!
     遠慮のこもった弱弱しい一撃だが、明日美を屈辱に濡らすには十分だ。見下していた男に叩かれたというだけで、舌でも噛みたい気持ちになる。
    
     ペチッ
    
     か弱いビンタに尻たぶを打たれ、明日美は一瞬キレかかった。栗木ごときが調子に乗るなど許せない。今すぐにでも起き上がり、後ろに向かって殴り返してやりたい気持ちにかられた。
     だが、直後に頭を押さえられる。
    「駄目ですよ?」
     机に頭を押さえ込まれ、抵抗を封じられた。
    「あ、あたしは何も……!」
    「明日美さん。あなたは今、反射で抵抗しようとしていました。まあ体が勝手に動いたようなものでしょから多めにみますが、二度はありませんよ? さあ続けて下さい。栗木君」
    
     ペチッ、ペチッ、
    
     今度は二発連続だ。
     明日美は涙目になりかける。
    
     ペチッ、ペチッ、ペチッ、
    
     しだいに女の子をこんな風に扱う面白さに気づき、調子づいていったのだろう。弱弱しかった栗木の手つきはどんどん元気になっていき、リズミカルに左右の尻たぶを打ち始める。警戒な肌の音と共に柔らかな尻肉は波打って、プルプル震えて弾んでいた。
    「叩くって、いいものですね」
    「でしょう? もっと叩いてあげてください」
    「はい!」
     栗木はスパンキングを楽しみ始め、より小刻みなタップで明日美を苛めた。ドラマーがドラムを叩くようなハイリズムで、夢中になって振動させる。あからさまにリズムを取った叩き方に屈辱感は大きく膨らみ、明日美は自分がオモチャにされた気持ちを味わっていた。
    
     冗談じゃねーよ!
     こんなのって、ゼッテーおかしいだろ!
     なんで……。
     なんであたしが栗木ごときに! こんな豚みてぇなクズ野郎に!
     畜生!
    
    
    
    


     
     
     


  • 第4話「放課後」

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     糞が!
     明日美はその日、授業をサボって屋上の戸に八つ当たりの蹴りを加えた。少しへこんでしまったが、別に知った事ではない。
    「なんであたしがあんな目に! あの糞野郎が!」
     イジメ撲滅委員会を名乗る男が現れて、クラスメイトの前でお尻を叩かれた。死ぬほどの恥ずかしさもそうだったが、まるで親が幼児に与えるような体罰なんて、あの扱いは屈辱そのものではないか。懲役さえ盾になければ、とっくに蹴りでもくらわせているのに。
     放課後も、葉山純一に呼び出される。
     すっぽかせば、何か法的罰則を持ち出してくるに違いない。あとでスマートフォンで調べたが、一度撲滅委員会が動き出せば、イジメっ子は相手の裁量一つで人権を剥奪される。人前でスパンキングを受けるなど序の口で、下手をすればもっと酷い目に遭うとの話だ。
     素直に反省した方が良いのだろうが……。
     しかし、栗木は気持ち悪い。
     あんなのを苛めて何が悪いのかわからない。
    「あのブタ野郎のキモさなんとかしてから言えってんだよ! 顔はキメェしデブだし汗くせぇ奴なんて、キモく思うなって方が無理なんだよ。根暗でウジウジしやがって、存在がイラつくんだよ!」
     むしゃくしゃした気持ちをどうにもできず、明日美は無意味に鉄柵を蹴ったり地面を蹴ったり、空き缶を踏み潰したりして物に八つ当たりを繰り返した。
    
     そして、放課後がやって来る。
    
     行くしかない。
     帰りのホームルームでも葉山は現れ、栗木と明日美はすぐに指定に教室へ来るようにと言いつけられる。
     やって来たのは狭い部屋だ。クラス用の教室と比べて半分程度の広さしかない、出入り口の戸も一つしかない少人数用の教室だ。戸には鍵がついていて、葉山は明日美と栗木を入れるなり内側から戸締りをして、誰も出入りできないようにする。
    「さて、反省しましたか?」
     してたまるか!
     とは思うが、またお尻を叩かれては叶わない。
    「あー……。したした! ごめん! 今まで悪かった! な? 栗木!」
     心にもない言葉だが、ちょっと我慢して謝る方が身のためだろう。
    「本当に反省しましたか?」
    「したっつってんじゃん」
    「だそうですよ? 栗木君」
     葉山は話を栗木にふる。
    「あ、あの……。そう、ですか……」
     何がそうですかだ。
     そんなボソボソした気の小さい反応しかしないから、苛々されるし気持ち悪いと思われる。どう考えても、イジメをやりたい気持ちを刺激してくる栗木が悪い。こんな奴がいるからいけないのだ。
    「まあ、いいでしょう。ひとまずあなたは反省の意思有りにしてあげましょう」
     よっしゃ!
     これで少しは好転した。
    「ですが、明日美さんが謝ったからハイ終了では芸がないといいましょうか。撲滅委員会を名乗りながらこれだけでは、我々は仕事をしたことにならないのですよ」
    「はい? あたしがこんなに謝ってんのに、まだなんかあるんですか?」
    「ありますよ? わたくしはあくまで、イジメはやる方が悪いと思っています。ですが、その一方でイジメっ子が好んで狙う相手に一定の傾向があるのもまた事実。気が小さかったり、友達がいなかったり、まあそういう人ですね」
     と、葉山は栗木を見る。
     自分の欠点をあげつらわれ、栗木は無意味に肩縮めていた。
    「んで、じゃあどうするっての?」
    「野之宮明日美さん。あなた、反省したのですよね?」
     葉山は顔を押し寄せながら確認してくる。
    「ああ、したっつってんじゃん。な? ごめんな栗木、もうやんねーよ」
     口先だけだが、明日美は繰り返し謝ってみせる。
    「ええ、もうやらないのは当たり前です。わたくしに残された仕事は、栗木君の気弱な性格を少しばかり強くしてあげることです」
    「強くするって?」
    「明日美さん。彼には特別な薬が必要です。自信をつけさせるため、今の性格を改善するため、少し協力して下さい」
     どうせ治るとは思えないが。
    「どうしろっての?」
     とりあえず、協力的な態度を示してみる。
    「パンツを見せてあげてください」
     その瞬間、明日美は一瞬にして引き攣って、顔を染めながら怒鳴りあげる。
    「はあ? なんでそうなんだよ!」
     もちろん葉山に対して怒ったのだが、何故か栗木がビクっとしていた。
    「我々の権限をお忘れですか?」
    「わ、忘れてない! けど他にねーのかよ!」
    「あなたは今まで、長期間に渡って精神的損害を与え続けてきましたからね。その分を賠償する意味も込め、明日美さんには女の子として栗木君に奉仕をして頂きます」
    「な、なんでそうなんだよ……」
     葉山はあくまで、明日美に屈辱的仕打ちを与えるつもりだ。やはり、謝ったフリだけしても、何の解決にもならないのか。だからといっても、こんなキモい男を相手に心から反省するなどできやしない。
    「そうですね。でしたら栗木君、今度こそあなた自身の手で明日美さんのスカートを捲って下さい。あなたがやるべきです」
     葉山は栗木に矛先を変えた。
    「ぼ、ぼくですか?」
     栗木はいかにも情けない声を出す。そ、そんなの出来ません! と、いかにもそう言いたげな表情だ。
     よし、いいぞ?
     こいつに捲られたくはない。
     いつものように弱気を見せて、できないできないと駄々を捏ねてくれればいい。そうすれば明日美が助かる。
    「さあ、やってください」
     葉山が詰め寄る。
     だが、明日美も栗木を睨み付けた。
     やったらぶち殺す! 殺意をたっぷり込めた凶眼を向けてやった。
     葉山の命令は断れず、明日美のスカートに触れるのも恐ろしい。きっと板挟みで苦しんで、挙句何もできないまま葉山にため息をつかせて終わるだろう。
     そのはずだ。
     そのはずだが……。
    「いいですか? 栗木君、あなたは現在法的保護を受けています。万が一わたくしの判断ミスで学校生活が悪化しようものなら、それに対する保障が支払われます。また、明日美さんはあなたに手出しができません。もしこの後に及んでイジメなどしようものなら、懲役の他にも罰金刑や労働義務、様々な罰則が彼女に対して発生するのです」
     つらつらと説明を述べ、葉山は栗木に対して何も不利が発生しないことを言いつらう。
    「……ほ、本当ですか?」
     恐る恐る、栗木は喋る。
    「もちろんです。明日美さんはこんなに怖い顔をなさっていますが、わたくしがいる以上はあなたに手出しはさせません。さあ捲りましょう。栗木君」
     まさか、やるのか?
     やる気にでもなったのか?
     決して人が変わったわけではない。栗木は栗木、おどおどとした雰囲気を纏って、声も小さい俯きがちの表情ばかりだが……。
     それでも、自信なさげな声ながら、栗木は言った。
    
    「ぼ、ぼく……。やってみます」
    
     栗木にしてみれば一大決心。
     明日美にすれば、最低最悪の瞬間だった。
    
    
    


     
     
     


  • 第3話「公開スパンキング」

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     葉山は言った。
    「さあ、栗木君。あなたにはイジメっ子に対する報復権が与えられ、それを行使する義務が与えられます。仕返しの機会を与える事によって、苛める側と苛められる側、双方の心を入れ替えることができるという考えなのです。苛める側は自分の行いを後悔し、苛められていた側は仕返しによって自信をつけ、引っ込みがちだった性格に強みを持たせる目的です」
     これから行うことに対する意味合いを語っていき、彼は栗木の肩に手を置いた。
    「ほら、目の前で野之宮明日美が四つん這いです」
     栗木は緊張で汗をかく。
     高く突き上げられたスカートのお尻が、栗木の目の前にそびえている。短めのスカート丈が垂れ下がり、太ももは大きく露出している。生足は丸見えで、少し腰を低めればパンツも見えることだろう。
    「叩くのはあなたですよ?」
     葉山は遠慮なく、さも何でもないようにスカートを捲り挙げ、紫色のパンツが露出する。模様の派手めな、一枚の布の上へ柄を縫いつけたような明るいパンツだ。生地のせいか蛍光灯が反射して、どことなく光って見える。
    「さあ、叩いて下さい」
    「え、あの……」
     叩けと言われても、いきなりできるわけがない。
     相手は明日美だ。
     しかも、背後にはクラスメイト。
     叩こうものならみんなにどう思われるかわからないし、後でどんな報復が待っているかと思うと恐ろしい。出来る事と言ったら、せいぜい自分ではなく葉山の手によって丸出しにされたパンツを凝視するくらいだ。
     動くに動けない栗木を見かねてか。
    「仕方ありませんね。あなたにはまだ早いようですので、わたくしがやりましょう」
     葉山が変わって慣れた手つきで手を乗せて、お尻をまんべんなく撫で回す。
    「くっ……」
     明日美が悔しそうに歯を食いしばるのが、全身がビクッと固まる挙動だけでも良くわかった。
    「あなたのこのお尻、栗木君の目に焼き付けられていますよ? この派手な紫がね。さて、どんなお気持ちですか?」
    「どうもこうも、パンツぐらいなんともねーよ」
     声が震えている。
    「なんともありませんか。では一発」
    
     パァーン!
    
     手の平で、葉山は明日美の尻を打ち鳴らした。
    「て、てめぇ……!」
    
     パァーン!
    
     二発目。
    「どうですか?」
    「どうじゃねーんだよ変態が! これで満足か?」
    「満足じゃないんですよ。あなたに反省を促すための体罰なのですよ?」
     葉山は大胆なスイングで、まるで太鼓でも叩くような気持ちで明日美のお尻を連打した。肌の打ち鳴らされる打撃音が教室に響き、明日美は今にも屈辱に震えている。全身を硬くして、尻肉を打たれる度に肩をビクビク揺らしている。
    「さあ反省するのです。さあさあ!」
     楽しげなスパンキングで、明日美のお尻は揺らされていた。皿に出したゼリーでも揺らすように、プルンプルンと尻肉は弾み、波打っている。栗木はその光景から目が離せず、すっかり釘付けになっていた。
    「誰がこんなもんで……。あたしは負けねーぞ!」
    「反省はしないという意味ですか? 罰則が長引きますよ」
     今度は両手を使い、左右の尻たぶを交互にタップする。
    「ざけんな! こんなのねーだろ。どこの変態が作った法律だよ」
    「賛否両論ありますが、可決したものは仕方がありません。わたくしは法に基づいて仕事を行うまでですよ」
     左右の尻たぶが交互に打たれ、右左右と、リズム良く波打つ振動を見せる。
    「何もクラスの前で……」
    「明日美さん。あなただって、クラスメイトに聞こえる形で栗木君のありもしない事実を吹聴したでしょう。あなたには今、イジメによって受けるとされる羞恥と屈辱をご自身で体験して頂いているわけです」
    「あたしはなにもここまで……。ちょっとからかっただけじゃねーか」
    「わたくしとて、少し悪戯しているだけですよ? あなたと気持ちは変わりません」
     クラスメイトの視線の中で、明日美はお尻を叩かれ続けた。
     この日は欠席者はいなかった。
     男子に見られるのは当然のこと、いつもつるんでいる友達にもこの痴態は見られている。担任も教室の隅にひっそり佇み、この光景をニヤリとして楽しんでいた。
    「可哀想……」
    「まあ、しょうがないよね……」
     それが女子生徒の声だった。
     今まで明日美が痴漢をでっち上げれば、「ほんとかな?」「でも栗木君ならやりそうだよね」といった具合に、そもそも嘘か本当かも関係なく引いていたくせに、こんな事態になった途端に態度を切り替え、明日美を悪者として見始めた。
     なんという手の平返しか。
     女子というものは恐ろしい。
    「さすがにマジで可哀相じゃない?」
     という、良識的な反応も多くあったが。
    「いいねいいね」
    「ざまみろよ。ひゅー!」
     日頃から態度の不良じみた明日美に対して、軽い反応しか示さない生徒も多くいる。素直に目で楽しむ者、口では良識的な反応をしながらも、結局はチラチラお尻を気にする者と、それぞれだ。中には目を瞑ったり、逸らしたりしてあげている者もいはしたが、ほんの二人か三人程度に過ぎない。結局のところ、明日美の痴態を大なり小なり拝んでいる生徒が半数以上を占めていた。
    「ま、そろそろ時間です。今はこのくらいにしましょうか」
     葉山がスパンキングを終了すると、明日美は即座にスカートを直して教卓を飛び降りる。
    「もう終わりだよな?」
     明日美は反抗的な口調で噛みつく。
     強きな態度を見せてはいるが、顔は真っ赤で目は涙目だ。
    「放課後、空きの教室で更生指導を行います。あなたは随分前からイジメをやっていたでしょう? ですから、当分は罰則に付き合ってもらいます」
    「冗談じゃねーよ。なんとかなんねーのか!」
    「反省しだいですよ。詳しいことはまた放課後説明しますので、サボらずしっかり授業を受けてくださいね」
     葉山はにったりと嗤いを残して、一礼を交えながら教室を後にする。
     更生指導とは何だろう。
     もしかして他にも、明日美にとっては恥ずかしい罰が用意されているのだろうか。
    
    
    


     
     
     


  • 第2話「イジメの糾弾」

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     翌朝、担任がいつものようにホームルームを開始して、席についた生徒の点呼を取る。手はずは整っているという話だが、本当に何かが起きるのだろうか。
    
    「それでは、今日はイジメ撲滅委員会の方から派遣された葉山純一さんを紹介します」
    
     担任が言い出すなり、教室の戸が開く。
     現れた男は、昨日栗木の前に現れたスーツの男性その人だった。
    「初めまして、イジメ撲滅委員会の葉山純一です。ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、近年になってイジメ対策にまつわる法案が可決されました。イジメって軽い響きですが、深刻なものになると本当に大変でしょう? 被害者は自殺し、加害者はその後ものうのうと生きていくなんてケースはザラにあります。そうした事態を防ぐため、わたくしには大きな権限が与えられているのです」
     葉山は一通り説明口調で語ってから、一人の生徒を指した。
    「野之宮明日美さん。あなたは栗木健太を対象にイジメを行っていますね?」
    「はぁ? 遊んでやってるだけだよ」
     容疑者に指名されるなり、明日美はほぼ反射的に言い返した。
    「イジメをしている人間はみんなそう言います。悪ふざけ、遊んでいただけ、といった言い訳をなさりますが、わたくしが出てきた以上はそうした言い訳は通用しないとお考え下さい」
    「っるっせーな。ふざけはんぶんでも小突いたりくらいすんだろ。そんなのイジメ認定してたら世の中イジメっ子だらけになるじゃねーか」
    「もちろん厳正な判断は必要ですが、今回は確実に調べがついています。でっちあげの痴漢を言いふらす行為、自分のゴミを捨てさせる行為。紙ゴミの投げつけ、教科書への落書き、顔写真のインターネット上へのアップロード等々。他にもネットコミュニティを利用して、本人の実名をあげて悪口をつぶやく、書き込むといった行為を繰り返しています。全て調べはついているわけですが、その上で言い訳をする場合は、こちらも相応の対応をするとお考え下さい」
    「だからやってねーって!」
     明日美はあくまで否定する。
     葉山は嗤った。
    「もう一度言いますが、イジメ撲滅委員会には高い権限が与えられており、被害者に罰則を課すこともできるのですよ。素直に謝罪をして、謝るのでしたら今のうち。しかし、反省の色が見られない場合は相応の対応を取らせて頂きます」
     目の前で起きている展開に、栗木は空いた口が塞がらずにいた。
     葉山は本当に学校に現れ、イジメ対策を行使しようとしている。みんなの前で明日美の罪状をあげつらい、本人に反省を求めている。同時に自分が受けた仕打ちが晒されているのと同じだったが、あまりの衝撃に栗木はそんな事など気にしていない。むしろ明日美が一体どうなるのか。栗木の関心はそこだけに集中した。
    「へいへい、すみませんね」
    「本当に反省していらっしゃいますか?」
    「してるしてる。ごめんな? 栗木」
     悪びれもしない、いつもの口調だ。
     そんな明日美を見て、葉山はニヤリとする。
    「残念ながら、野之宮明日美が自分の行いを反省しているとは判断できません。よってイジメ撲滅委員会として、あなたに罰則を命じます」
    「はぁ? 今謝っただろうが!」
    「口先だけでは反省とはいいません。あなたは何も罪悪感を感じていないのでしょう? 今まで挙げた以外にも数々の行いをしてきているというのに、これっぽっちも反省の色がありません」
    「うるせーな。だったらコイツのキモさなんとかしろよ」
     明日美は栗木を指す。
    「苛められる側にも原因がある。という主張ですね。確かに被害者には気の小さい傾向などが見受けられますが、だからイジメはしてもいい。という話にはなりません。あなたにはこの場で罰則を受けてもらいます」
    「何が罰則だよ。あたしは受けねーからな?」
    「逆らっても構いませんが、わたくしは法律に基づいて動いています。もし罰則事項を守らない場合は刑事罰を行使して、あなたに懲役を科すことにもなりまねませんよ?」
     すると、明日美はさーっと青ざめた。
    「は、はぁ!? なんだよ懲役って!」
    「最近の法律はご存知ありませんか? 実際に条文にきちんと記されている内容です。なんでしたらこの場で暗記した内容を言っても構いませんが。さて、わたくしに権限が与えられているという意味は理解できたでしょうか」
    「ちっ……」
     明日美は舌打ちする。
    「では明日美さん。教卓の方へ来て下さい」
    「はっ、なにやらせよーってんだ?」
     明日美はずかずか進んでいく。
    「栗貴君も、前へ」
    「は、はい!」
     何だろう。
     明日美への罰で自分が狩り出されるなど、一体どういう内容なのだろう。
    
     ――あなたのイジメにエッチな報復を致しませんか?
    
     昨日の言葉が頭をほぎる。
     まさか、明日美はこの場で卑猥な目に遭うとでもいうのだろうか。
     この、全生徒が見ている前で……。
    
    「ではこれより、スパンキングの刑を行使します。明日美さんのお尻を叩くのは、被害を受けていた栗木君です」
    
     スパンキング?
     いやまさか。
     本気で言っているのだろうか。
     さすがに冗談では? と思うのだが。
    「明日美さん。教卓の上に上がって四つん這いになりなさい」
     確かにそう命令している。
    「は、はぁ? ざけんなよ! 何がスパンキングだ! 受けねーぞそんなもん!」
     明日美はそれに声を荒げていた。
    「今お尻を叩かれるのと、刑事罰で懲役を受けるのと、どちらがよろしいですか? 懲役になると最低でも三年は出られません。わたくしとしてはスパンキングの方がおすすめなのですが、どうなさいますか?」
    「て、テメェ……! 本気か?」
     法律を盾にされ、明日美はそれ以上口答えできない。ただ葉山を睨みつけ、栗木に凶眼を向け、従うでも逆らうでもなく、ただただ冷や汗を流してその場に立ち尽くしていた。
    「本気も本気、大真面目です。我々には実際にそうした命令権が与えられているのですが、どう致しますか?」
    「くっ、糞が……」
     さすがに懲役の方が恐ろしいと判断したのだろう。
     明日美は屈辱を飲み込みながら、栗木を睨みつけながら、上履きを脱いで教卓にのぼる。
    「さあ、お尻は向こうです」
     クラス全員にお尻を向けた四つん這いを前に、栗木はごくりと息を呑んだ。
    
    
    


     
     
     


  • 第1話「イジメ撲滅委員会」

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     キモい奴を苛めて何が悪いのか。
     だってキモいもんはキモいじゃん? 暗いしうじうじしてるし、見てるだけで鬱陶しい。なんていうか、もう存在してるだけで苛められっ子オーラが出てるというかね。とにかく、キモい奴なんて蹴ろうが何しようが構わないじゃん。
    
     それが野之宮明日美だった。
     同じクラスにはいつも一人でボソボソしている暗い男子がいて、彼は友達もいない頭の鈍くて成績も低い、良いところなどまるでないような男なのだが、明日美はそれを標的に、ことあるごとにイジメをやって楽しんでいる。
     例えば朝、登下校には同じ電車を使っているので、たまたま同じ車両に乗り合わせたことがあった。満員だったので体がくっつき、お尻に硬い勃起物があたってきて、非常に不愉快な気持ちを味わったのだ。
     もちろん、わざとではない。
     事故に過ぎないことなど明日美も承知していたが、わかった上で明日美は言っていた。
    「あいつさー。今朝、あたしのケツ触りやがったんだよ」
     休み時間の教室で、仲間内で大きな声で、本人どころか他の色んなクラスメイトにも聞こえてしまうような声量であることないこと言いふらすのだ。
    「混んでればわかんねーとでも思ったのかな? 手ぇ伸ばしてきてさ、メチャ揉んできやがったの。足踏んでやったら引っ込んだけど、あいつマジでやばいんじゃね? 犯罪者じゃん。通報した方が良かったのかなー」
     単なる接触事故を立派な痴漢行為に膨らませ、ありもしない事実をクラスに広める。それを耳にしたクラスメイトは明日美の話を真に受けて、男子は「おい痴漢野郎!」と彼を罵倒し、女子は「うわぁ……。近づかないようにしよ」などと引いていた。
     彼、栗木健太はいつも一人だ。
     友達がいない。
     庇ってくれるような友人も、信じてくれる仲間も一人もいない。
    「あ、私もこの前見たよ? 階段上ってる女子のさ、スカート覗こうとしてるとこ」
    「うっそ! マジかよ。キメエなほんとによぉ!」
     もちろん、それも嘘八百だ。
     明日美に便乗した友達が、そもそも学校外で栗木を見かけた事すらないのに言い出したデタラメでしかない。しかし、ジョークに過ぎないことをわかっていながら、明日美は大いにキモいと盛り立て、聞いていたクラスメイトも信じてしまう。
     それだけではない。
    「あ、これ捨てといて?」
     昼休みが終わると、明日美は栗木の机にゴミを置く。持ち帰ったり、自分でゴミ箱へ行く手間を惜しんで、コンビニで買ったおにぎりやサンドウィッチなんかのゴミを当たり前のように置いていくのだ。
    「あ、あの……」
     栗木が何か言おうとすると、明日美は大声でそれを遮る。
    「あぁ? 何? 文句でもあんの? 全然聞こえないんだけど? はっきり喋れよブタ野郎」
    「いえその……ゴミは自分で……」
    「なんだよテメェのゴミだろ? テメェで捨てろや!」
     明らかに理不尽なことを言いつけ、怒鳴って相手を黙らせる。
     気の小さい栗木は萎縮する。
     明澄はますます調子に乗る。
     この負の連鎖をクラスメイトは見て見ぬ振り、大半の教師も「相談して来ないから」として無視を決め込み、さもイジメなど存在しないかのように振舞っていた。
     打ち明ける勇気などなく、かといって家に引きこもるには家族が怖い。学校をサボる度胸もない。逃げ場のない栗木は追い詰められる一方で、弱った心で何度飛び降りようかとさえ考えていた。
     イジメを受けるためだけに登下校を繰り返しているようなものだった。
    
    「痴漢すんなよ?」
    
     下校の電車で、するわけもない事を大声で言われ、周囲の一般人は栗木に引いていた。
     明日美の行いは十分にあからさまだったが、それでも暗い雰囲気を纏い、下を向いてぶつくさ言っている栗木の方がもっぱら引かれる対象だった。
     理不尽だが、それが現実だった。
    
     しかし……。
    
    「あなたのイジメにエッチな報復を致しませんか?」
    
     イジメ撲滅委員会、と名乗る手帳を提示しながら、一人のスーツの男が現れた。さながら刑事ドラマの警察が、手帳を見せつけながら聞き込みや事情聴取を行うワンシーンのように、男はそんな事を言い出した。
    「報復? しかもエッチなって……」
    「近年、イジメ対策のために撲滅委員会の設置が可決されまして、学校や生徒による調査報告によって我々は被害者の元へ派遣されます。あなたが今まで受けてきた仕打ちの数々などは全て把握してますよ? 例えば、してもいない痴漢行為をでっちあげ、クラスでの評判を落とされたりといった被害を受けているでしょう」
    「そ、それは……!」
     栗木はぎょっとした。
     味方など、どこにもいないと思っていた。
     いや、それどころか。こんな仕打ちを受けていますと相談すること自体、まるで自分はそういう弱弱しい人間ですと宣言しに行くかのようで、とてもそんな勇気は出せなかった。救いを求めることにも抵抗があったのだ。
     ところが、撲滅委員会を名乗る男の登場だ。
     相談する気概などなかったのに、向こうの方からやって来られた上、確かに受けた仕打ちを言い当てられては敵わない。
    「明日、さっそく野之宮明日美さんへのエッチな報復のチャンスが訪れます。既に手はずは整っておりますので、どうぞ楽しみにお待ちください」
     手はずが整っている?
     一体、何をしたというのだろう。
     まるで強力な権限を持った組織の台詞じゃないか。
    
    
    


     
     
     


  • イジメっ子にエッチな体罰!

    第1話「イジメ撲滅委員会」
    第2話「イジメの糾弾」
    第3話「公開スパンキング」
    第4話「放課後」
    第5話「おパンツ鑑賞」
    第6話「虐げられる明日美」
    第7話「チャンス」
    第8話「しゃぶられた乳房」
    第9話「使われた乳房」
    第10話「奴隷宣告」
    第11話「犬奴隷の散歩」
    最終話「明日美の末路」


  • 最終話「それから」

    前の話 目次

    
    
    
     その夜は自室でノートパソコンを立ち上げて、実際に静太にされた数々のことをネタにした官能小説を執筆した。初めて胸を揉みしだかれ、秘所を触られ、耳元で股の濡れようを指摘される。胸が破裂しそうなほどの緊張感と、顔が焼けただれそうなほどの恥ずかしさを思い起こし、それらを丁寧に文章で表した。
     書いたのは痴漢小説だ。
     電車の中で体を触られ、びっくりしながらも感じてしまう。今日の体験を参考にした心情描写だけでなく、「あれ? 感じてる?」「君ってやらしい子だね」といった言葉攻めで脚色を加え、エッチな妄想を膨らませながら筆を進める。
     書いているうちに股のあたりが疼いてしまい、何度も手を止めては秘所を触った。
    「あっ……。うん……」
     気持ち良さにうっとりしながら、濡れてしまった手をティッシュで拭き、執筆を再開する。すぐにまた触りたくなってきて、愛液を垂らしてティッシュで拭く。自慰行為と執筆を交互に繰り返して、夜中までに書き上げる。
    (私って変態かなぁ……)
     気にしつつ、二人きりの部室で静太の顔色を伺った。昨日はあんなことをしてしまったが、そもそも静太は気づいてくれたのだろうか。
    「文乃?」
    「は、はい!」
     急に名前で呼ばれてドキっとして、文乃は頓狂な声をあげてしまう。
    「昨日のことなんだけど」
    「あ、うん! 昨日はその……。色々あったね」
     思い出すだけでも顔が真っ赤に染まり上がり、静太と目を合わせていられなくなる。自分のような引っ込み思案な子なんかでは、とにかく思い切った行動を取らなければ気持ちは伝えられないと考えていた。だからといって、よりにもよって官能小説など読ませてしまって、自分は気でも狂ったのだろうか。
     普通に考えれば、おかしい行動なのはわかっていた。いや、本来なら理解できて、行動を取るにしても何か別の方法を選んでいた。ところが、気持ちを伝える方法を考えているうち、自分の特技は文章くらいだと思い至り、ならば文章で伝えようと思いつき、だったら『私』が体を許すシーンを見せれば、嫌でも気持ちは伝わるだろう、だなんて突飛すぎるアイディアを浮かべてしまい……。
     人は意外と暴走するものなのか。はたまたは勢い余って分別がつかなくなるものなのか。冷静に考えればおかしい方法で行為を伝え、結果として身体を貪られた。
    (あれ? 静太君はどういうつもりで……)
     胸を触られ、アソコを触られ、自分はそれを許してしまったが……。
    「文乃」
    「う、うん。何?」
     どんな話を振られるのか。文乃は緊張で体を固める。
    「あのさ、俺……」
    「うん」
    「あの文章で刺激を受けてしまったというか、興奮したというか。そのさ、登場人物のモデルが丸わかりな分、余計にその人の顔を浮かべやすくて、それでつい……」
     ああ、静太も暴走したのだ。自分が濃密な性描写など見せたばかりに、あろうことか自分の性的欲求まで書き込んだばかりに、『ひょっとして触っても平気なんじゃ』と、魔が差すようなきっかけを与えてしまった。
    「私はその……。平気だよ?」
     平気と答えるのもどうかと思いつつ、自分が隙を与えたせいなのでそう答える。
    「そ、そうか」
    「うん」
     やり取りはこれで終わった。
     元々、文乃も静太もあまりお喋りな方ではない。別に会話自体は普通にするし、話の合う二人は普段から色んな話題を共有している。ただ、それは相性が良いから出来ているようなもので、他のクラスメイトとはあまり口を聞いていない。明るい友達グループだとか、華やかな集団には入り込めないからだ。
     そういう性質の持ち主同士が話題を失い、黙っているしかなくなった。しかも話題が話題だっただけに、微妙に気まずい沈黙が流れていた。
    (ああ、どうしよう……)
     あまり沈黙ばかり流れていると、どことなく不安が込み上げる。
    (嫌われてないかな?)
     普通に考えれば、文乃のした行為は変態すぎた。あれを一時の暴走だったとしても、いつも官能的な文章を書いていることは事実だし、静太に甘い言葉を囁いてもらって、体の色んな部位を攻めてもらう想像をしながら自慰行為にふけっている。はしたないことには変わりない。そんな女は嫌われてしまうかもしれない。
     もし、静太に嫌われたら。
     他に仲良くなれる男の子なんて絶対いない。
    (どうしよう。どうしよう……)
     不安が膨らみ、内心の焦りで肌汗が滲む。
    「文乃」
     その時、再び名前を呼ばれた。
    「あっ、うん。何?」
    「あの文章、どれくらい本気だった?」
     官能小説を話題に出され、文乃は深く俯いた。
    「え、えーっと……。どの部分のことかな」
    「いや、それは……」
     言えない部分なのだろうか。
     ということは、性描写の部分か。文乃が自分の妄想を書いてしまったはしたないシーンを挙げて、どれほど本気なのかを尋ねている。やはり、淫らな女の子だと思われている。
    「私が本気だったのは、その……」
     あの一文に決まっている。
     しかし、そんなことは口には出せない。
     出せないから、文章にしたのだ。
    「俺の感想を話すことにする。たぶん、あの小説に登場する男の人って、語り手である『私』のことを――その……可愛いとか、思ってるはず」
     瞬間、ドキっとした。
     文乃が書いた登場人物など、『静太君』と『私』の二人だけだ。
    「本当?」
     文乃は聞き返す。
    「間違ってない――と思う。その子のことが気になってるから、ああいうへんな悪戯もしたくなるんだろうし、それで実際にやっちゃったんだよ。だから、もしあの作品が本気なんだとしたら、わかるよな?」
     思いがけない展開だ。
     まさか、これは夢ではないか?
    「……うん」
     文乃は頷く。
    「良かった。『静太君』と『私』って、両想いだったんだな」
     夢ではない。
     しかし、信じられない。
     まさか、こんな形で成功するなんて、もはや夢にも思っていなかった。
    「あ、あの! 静太君こそ本気だよね? あれを読んで、本気でそういう解釈をしたんだよね?」
    「そうだよ。ちょっと驚いたけど」
    「……良かった」
     伝わった。
     自分の今まで抱き続けてきた密かな気持ちは、たった今伝わった。静太はあれを読み解いて、文乃の望み通りに解釈してくれたのだ。
    「静太君、好き」
    「俺も文乃が好き、文乃がいいよ。他の奴じゃ嫌だ」
     静太はきっぱりと言い切って、嬉しくなった文乃はついつい肩をすり寄せて、懐いたように体をくっつけずにはいられなくなってしまう。すると胸板に抱き締められ、文乃はそのまま彼の体温を味わった。
    
    
    


     
     
     


  • 4話目「体験取材をしてみよう」

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     まもなく戻ってきた文乃は、とても恥ずかしそうに肩を縮めて、小さく席につく。顔は完全に赤く染まりあがり、静太とは目も合わせられないといった風だった。
    「……よ、読んだ?」
     小さな小さな声で、文乃はそっと尋ねる。
    「読んだよ」
     静太は書かれていた文章を思い返した。
     最初は胸を揉んでいただけの『静太君』だが、しだいしだいに手を下へ、ついには秘所にさえも触れていたのだ。それに『私』は興奮し、ショーツをじわりと濡らしてしまう。指と布地のあいだにねっとりと糸が引いていた。
    「ど、どうだったかな」
     文乃はようやく静太へ視線を向け、やや上目遣い気味になりながら顔色を伺う。何かを期待しているような、しかし不安がってもいるような、緊張した表情だ。
    「そうだな。とりあえず、肩でも揉んでやろうか?」
     小説の内容と、同じ台詞を言ってみる。
    「――えっ? う、うん」
     戸惑い、頓狂な声を上げつつも、文乃は頷いた。
     もしも、文乃の書いた文章を遠まわしな誘いや告白と解釈するなら、あまりにも変わった戦法だ。どう上手く文章表現を行ったとしても、逆に伝わりにくいのではと思えてしまう。あんなものも見せるくらいなら、そもそも声に出して告白する勇気を出した方がマシなような気もするが。
     ここで器用になれないのが、文乃という女の子なのだろう。
     彼女の斜め上な頑張りに応じるとしたら、自分もまた同じ土俵の上で気持ちに応えるのが一番だ。
     静太は柔らかな肩を優しくほぐし、指先で鎖骨を撫でる。
    「気持ちいいか?」
    「うん」
     この状況に、緊張しているのだろう。
     声がややこわばっていた。
    「こういうエロっぽいのを書くなら、実体験を交えるのがいいんじゃないか?」
    「たたた、た、体験ってそんな……!」
     緊張で硬い文乃は、さらに声を上ずらせる。
    「ほら、実際にこうされたらどんな感じがする?」
     静太は胸へ手をやり、制服越しの乳房を揉んだ。
    「せ、静太君……!」
    「女性視点の一人称だったからな。ちゃんと自分自身の心情とか、触られてる感じをよく覚えるんだぞ? リアリティがあった方がエロくなるからな」
     静太は手の平の触感に神経を集中する。
     包み込み、撫でるように揉み込むと、手の先でブラジャーのカップの堅さが読み取れる。ぱっかりとした堅さごしに、もっちりとした柔らかな感触が眠っている。乳首の位置に検討をつけ、指先で引っかくかのように刺激した。
    「んんっ、静太君……」
    「文乃、どんな感じがする?」
    「すごく、緊張する……。ドキドキしちゃって、頭が沸騰してテンパっちゃいそうで、余裕ないよぉ……」
    「なるほど。だったら、その自分の心情をしっかり覚えて、どこかの文章で使うといいんじゃないか?」
     静太はさらに下へ向け、腹の上に手を這わせる。太ももへ到達し、まんべんなくさすっていった。手を下げたことで重心を文乃の背中に預ける形となり、密着で心臓の鼓動が静太へ伝わる。温かな体温と、高い心拍数が静太の胸板へ通じていった。
     首筋から香るシャンプーの匂いが鼻を付き、静太は肺いっぱいに息を吸う。
    「あの……。静太君」
    「なんだ? 文乃」
    「その……。文章の――あの部分も読んだよね」
     静太はスカートへ手を忍ばせ、内股へ差し込むように秘所を狙う。ぷにゃりとした感触のその部分を、静太は指先でそっと撫でた。
    「こういうこと?」
    「ひゃっ! あの、だからその……。もう少し手前の……」
    「もしかして、パンツの中?」
    「……うん」
     文乃は恥ずかしそうな小さな声でこくっと頷く。
     静太はパンツへ手を潜らせ、秘所を直接愛撫した。
    「どう?」
    「すっ、すごく緊張……!」
     文乃の声は上ずっている。
     そこには粘性のあるわずかな汁が少しずつ滲み出て、しだいに指の腹がよく滑るようになっていった。肉芽がぷっくりと膨れてくるのを指先に感じ取り、静太は文乃の耳にふーっと息を吹きかけた。
    「濡れてるね」
     指摘してやる。
    「い、言わないでぇ……」
    「だから、これも体験取材だよ。自分の状態を指摘されてどんな気持ちか、きちんとネタにしていかないと」
    「う、うん……」
    「ほら、どんどんヌルヌルになってる」
     そのことを示すかのように、静太はわざとらしい愛撫で指を回して攻め立てる。
    「いやぁぁ……」
     文乃はひたすら頬を染め上げて、自分の顔を両手に覆い尽くしていた。
    
    
    


     
     
     


  • 1話目「二人きりの文芸部」

    目次 次の話

    
    
    
     文芸部ではいつも二人きりだ。
     在籍する先輩自体はいるらしいが、二年生も三年生もほとんど幽霊部員でしかなく、事実上の部員は二人しかいない。
     そんな部室の中、吉川静太(せいた)はテーブルの向こう岸にいる彼女を見た。
     三つ編眼鏡の彼女は秋月文乃(ふみの)といって、本が大好きな文学少女だ。ただ読むだけでなく、自分で書くのも大好きで、こうしている今もテーブルにノートパソコンを立ち上げ、タイピングに指を躍らせている。
     執筆の邪魔をすると悪いので、静太は自分の本を読みながら時間を潰していた。
     読んでいるのは日常系のライトノベルだ。
     普通なら、美少女の萌えるイラストが表紙を飾る一冊を、人の目の前で堂々と読むなど躊躇われる。しかし、それは人々の中に、そういうものに対して偏見や抵抗感を抱く層がいるからで、同好のあいだでならば隠す必要は一切ない。
     文乃もまた、毎期のアニメを漁ってお気に入りを欠かさず視聴し、それなりにライトノベルを読んでいる立派な仲間だ。しかも文乃は自分自身で作品を書き、二次創作まで書くことがある。オタク度数を数えるなら文乃の方が上かもしれない。
     ページを捲っているうち、文乃のタイピングの手が止まった。
    「ちょっと、トイレ行って来るね?」
     顔が赤い。
     柔らかそうな頬がほんのり、白から朱色へ染まっているのは何故だろう。
    「そうか。それ、読んでいいかな?」
     静太はノートパソコンを指して尋ねる。
    「う、うん! いいよ? それじゃあ、行って来るから!」
     文乃の声はあがっていた。まるで大事な舞台の本番直前で緊張でもしているかのように、席を立って戸の向こうへ出て行くまでの文乃の動きは、硬くカクカクしていた。おまけに耳も赤くなっていたのは、本当に何故だろう。
     どうも様子がおかしいのが気になったが、文乃が出て行き空いた席に、静太はついた。
     文乃が書いた、ワープロの縦書き文章の画面を上までスクロールさせ、最初のページに目を通す。
     文乃の夢はプロ作家なのだという。
     だから執筆に関しては真剣で、気の知れた静太に対してはしょっちゅう感想を求めてくる。やや活字中毒な静太にとって、数百ページに渡る長編をポンと渡される事など、決して迷惑な話ではない。それなりにクオリティのある文乃の作品を読むのは、むしろ静太にとっては楽しみの一つとなっていた。
     意外に面白いものを書く文乃には、是非ともデビューして欲しい。文乃はとにかく、物書きとして『人の感想』を欲しがるので、自分なりに良かった点と悪かった点を述べれば、文乃はそれを受け止め今後に活かしていくはずだ。読み終わったら意見をまとめて、文乃の糧にでもしてもらおう。
     物語を楽しませてもらい、それが友への貢献にも繋がる。
     一石二鳥だな、などと思いながら静太は画面の文章を読み進めた。
     そして、理解した。
     一体文乃は、どうしてあんな挙動を取っていたのか。意味もなく、理由もなく乙女が恥じらいでもするような顔をしていたのか。
     それら答えが、静太が読むその作品の中にあった。
    
    「官能小説……」
    
     非常に濃い性描写を書き綴った、女一人称の卑猥な文章がそこにはあった。