第13話「六日目① 寸止め」

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  朝、目が覚める。
 まだ眠気でまぶたが重いままのリーナは、薄ぼんやりとした意識の中で、ジョードが自分の体を弄んでいるのを感じていた。乳房の先に吸い付いて、口内で舌を動かし乳首を舐める。唇が唾液で塗れた感触から、何度もキスをされていたことも悟っていた。
「――んっ、んぁぁぁ」
 乳首をべろんと舐め取る刺激が、甘い痺れとなって乳腺を駆け抜ける。
「んひぃ……んはぁぁぁ…………」
 まどろみを脱しきっていないため、意識のはっきりしないリーナは、それ故に快楽に身を任せてしまっていた。
 夢見心地であるかのように。
「キアラン……キアラン……」
 今まで夢を見ていたリーナは、まるで愛する者に抱かれるような心地良さを覚えていた。
 くちゅり。
 それは指先が愛液を絡め取る音。
「あぁぁ…………」
 気持ちが良くて、リーナは熱にとろけた瞳を浮かべる。
 ――イキたい。
 昨日から寸止めだけで、一度として絶頂には至っていない。
 そろそろ、イキたい。
 快楽に身をゆだね、絶頂を求めてリーナはよがった。
「キアランじゃないよ? ジョードだよ?」
 その瞬間、ぼんやりと曇っていた意識から、全ての曇りけが一瞬で吹き飛んで、はっきりと目を覚ました。
「――いっ、嫌よ! イキたくない!」
「あれ? 何も聞いてないけど?」
「そ、それは……。とにかく、アンタなんかでイキたいとは思ってないの!」
 ジョードではイキたくない。
 キアランがいい。
 愛する恋人。大好きなキアラン。
 アイツじゃないと、イキたくない!
「おはよう」
「フン!」
「今日は挿入はお休みの約束だったねぇ? まあ、それ以外のことは、たーっぷりするんだけどねぇ?」
「約束は守ってよね」
「もちろんだよ! リーナちゃんは、僕のおチンポをきちんと言い当てられるほど、記憶に刻み込んでくれたんだからねぇ?」
 ジョードはひどく醜い笑顔を浮かべた。ブルドッグのように頬の垂れた豚顔から、分厚い唇をぐにゃりと折り曲げ、醜悪としか言えないゾッとするような顔つきで笑っていた。
「……だから、すぐに忘れてみせるって言ってるでしょ?」
「ふふっ、可愛いねぇ? リーナちゃんは」
 ジョードはさも愛おしそうにリーナのことを抱き起こし、股のあいだに座らせる。リーナの尻には勃起した一物が食い込んで、割れ目の狭間でピクピクと脈打っていた。背中に当たるジョードの胸板からは、不快な脂汗が皮膚に染み付き、両手は無遠慮に胸を揉む。
「……くっ」
 リーナは太ももを擦り合わせた。
 イキたいけど、イキたくない。
 絶対に嫌だ。
 嫌だけど、いつまで我慢していられるだろうか。
「本番無しの約束だけど、リーナちゃんの方からおねだりするなら、仕方がないからシてあげるんだけどねぇ?」
「……は、ハァ? なんで私が、ほんの少しでもアンタにおねだりなんてする可能性があると思ってんの? どこまでおめでたい頭なのよ」
「リーナちゃんは口ではそう言うけど、体に聞いたらどんな答えが返ってくるかなぁ?」
「――っはぁ! あっあぁ!」
 ジョードの指が秘所に触れ、リーナは激しく身をよじった。
「体はチンポを欲しがってるねぇ?」
「うるさい! そんなことない!」
「本当にそうかなぁ?」
 くちゅり、くちゅりと、ジョードの指先は水音を立てる。
「くはぁ! あぁっ、いやっ、だめぇ!」
 指の出し入れにリーナは喘ぎ、髪を左右に振り乱す。あまりにも強い快楽電流に、よがりきったリーナはジョードの腕を両腕に抱え、思わず胸に抱き締めてしまっていた。それはあくまで条件反射的なものにすぎず、間違ってもジョードへの好意は欠片もないのだが、それでもジョードが調子に乗るには十分だ。
「そんなに大切そうに抱き締めちゃって」
「ひ、ひぃ!」
 リーナが咄嗟に手を離すのは、虫の苦手な女の子が、ゴキブリに悲鳴を上げる瞬間とよく似ていた。
「ほーら、指が入っちゃうぞぉぉぉぉぉ」
 ジョードは楽しそうに指を沈める。
「あぁぁ……くぁぁぁ………………」
「すごく濡れてるねぇ?」
「うるさい! うるさい!」
「でも、どんなにマンコがチンポを欲しがっても、挿入しない約束だからねぇ? 仕方がないことだよねぇ?」
 ジョードはリーナの背中を押し、四つん這いの姿勢を取らせる形で押し倒した。尻の割れ目に肉棒を強く押し付け、尻を上下に動かすようにリーナへ命じた。
 尻コキだ。
 税金の肩代わりという建前のため、真面目にしないと立替不足の扱いにされてしまう。だからリーナは嫌でも一生懸命お尻を動かす。
 素早い上下運動を行うには、両手と肘をついた状態で、膝を少しだけ浮かせてやるのがやりやすかった。長時間やるには筋力を消耗しやすい動作だが、剣の稽古で鍛えられているリーナにとって、これを十分や二十分程度続けるだけなら造作もない。
(……今日と明日で全ては終わる。それまでの我慢)
 尻に挟まっている硬さと熱さを如実に感じながら、リーナは尻を駆使して刺激を与える。
(我慢……我慢よ……)
 肉棒がフィットしているのは、ちょうど肛門のある位置だ。肉竿の真ん中あたりと、リーナの肛門とが、直接ぶつかり合っている。そして、尻たぶはジョードの腰の上で潰れて、ふくよかな丸みはジョードに向かって摩擦していた。
(アソコの近くに……ジョードのが…………)
 秘所と接触しかねないが、そうならない微妙な位置に肉棒はある。
(キアランになら、おねだりしてあげてもいいのに……)
 イクことのできないリーナのアソコは、既に肉棒を恋しいと思っている。求めるようにヒクヒクと疼きをあげ、だらりと愛液を垂れ流す。
(……ジョードなんかに頼めない)
 ジョードを嫌う本心に変化はない。死んでもおねだりなんてできっこない。
 だが、体は求めていた。
 挿入されたい。肉棒に掻き回され、壮大にイカされたい。
「素股をやるから、仰向けになってくれる?」
 次のプレイは太ももに挟んでのピストン運動だった。割れ目のラインに押し当てられ、ちょうどアソコに肉棒が摩擦してきて、快楽の電流がほとばしる。
「あっ、あぁ……いやぁ…………」
 アソコにチンポが当たっている。
 ジョードが少しその気になれば、さっさと挿入してもらえるのに……。
(何を考えてるの! 私は!)
 自分の考えに首を振り、リーナは必死に自己を保った。
(ジョードのなんて欲しくない! 欲しくないのよ!)
「欲しいんでしょ」
 その瞬間だ。
 ピタリ、と。
 肉棒の先端が、リーナの膣口に当たっていた。亀頭の先が、わずか数ミリだけ入り込み、けれど実際には挿入されない。
(何よ……このもどかしさ………………)
 ジョードの命令とはいえ、リーナは太ももをギュっと引き締め、太ももによってジョードのチンポを抱き締めていた。
 アソコとチンポの接触を維持するために……。
 それでも、リーナはジョードのことを忌み嫌い、憎しみさえ抱いているままなのだ。殴り飛ばしてやりたいような怒りを抱え、キッとジョードを睨んでいる。もしもジョードを殺してよい許可がありえるなら、リーナはやはり剣を手にして斬り殺しにかかるだろう。
 だが、リーナは感じていた。
 性器に押し付けられる肉棒が、ピクピクと血管を脈打たせ、前後に往復し続けているのを……。
「欲しいんでしょ」
「欲しくない!」
 そう、欲しくない。
 そちらが本心であるにも関わらず、体はどうか。
 リーナの太ももは、ともすればジョードのチンポを離したくない勢いで、極限まで強い力で締め付けていた。
「ふーん? だけど、本当に本番無しは寂しいから、僕としては台詞だけでも聞きたいな」
 台詞を言わせる行為も含め、絶対服従が法律だ。相手の要求を問題にできるのは、せいぜい身体外傷を与えたり、過度の苦痛を与える叩き方をするなど、怪我を伴うケースのみだ。
 先日言わされた台詞の数々は、リーナにとってこの上ない屈辱だった。
「どんな下らない台詞を言わせる気よ。この豚野郎」
「ジョード様のおチンポをリーナのマンコに入れてください」
「はいはい。ジョード様のおチンポをリーナのマンコに入れてください」
 ひどくやる気のない棒読みを、リーナはわざとやっていた。
「もう一回」
「ジョード様のおチンポをリーナのマンコに入れてください」
 どうせ、入れる気なんてない癖に、こんな下品な台詞を言って何になるのだろう。それとも約束を破るつもりだろうか。ジョードのようなクズならありえる。
 そうしたら、このまま……。
「もう一回」
「ジョード様のおチンポをリーナのマンコに入れてください」
 今度は少しだけ、感情がこもっていた。
「あげないけどね」
「……くっ」
「本当は欲しかった?」
「――だから! 欲しくないって、何回言わせる気よ!」
 リーナは声を荒げた。
「じゃあ、今度は欲しいって言ってみて?」
「……欲しい」
 熱にとろけたような切ない声が出てしまった。
「あげなぁぁぁぁぁい」
 ジョードは邪悪にニッタリ微笑んだ。




 
 
 

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