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  • 最終話「後日の性交」

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     指導完了から数ヵ月が経った。
     あれから、豚山は担任なので顔は毎日合わせるが、もう性的なことは何もない。単なる生徒と教師に戻り、そして洋とは良好な関係が続いていた。
    「入れるよ?」
    「うん。来て? 洋っ」
     今日は洋を家に誘っていた。
     初めからそのつもりで、連れ込むなりシャワーを浴びると一言入れ、洋にも浴びてもらい、すぐにでもベッドの上にいた。
    
     ちゅにゅぅぅぅぅぅぅぅぅ………………。
    
     正常位で受け入れて、奥まではまった洋の形をよく味わう。
    「ヒクヒクしてるね」
    「え、もうっ、言わなくていいっ」
    「ははっ、ごめんごめん」
     下腹部がキュッと引き締まり、全身に満ち溢れる喜びで、膣壁をヒクヒクと蠢かせてしまうことを指摘され、柚葉はひどく赤らんだ。少しだけ怒ってみせれば、よしよしと頭を撫でられ、そんなことで気が済んでしまうのだから、我ながら自分はチョロい。
     いや、まあ、洋だからいいのだが。
    
     ちゅくっ、ちゅつっ、じゅぷ――つぷ――ずぷっ、ずぷ――――。
    
     洋は丁寧に動いて来る。
     まるで激しく動けば壊れることを恐れるように、まったりとしたリズムで行うピストンは、柚葉の肉体を静かに味わおうとするものだ。
    
     ちゅにゅっ、じゅにゅ――ずぷっ、つぷ――にゅぷっ、ちゅぷ――。
    
     動きながらも、柚葉の肢体に手を這わせ、腰のくびれを撫で回す。その手を胸まで運んでいき、乳首を責めつつ揉みしだく。
     しかし、何よりも洋は視線を絡めてくるのだ。
    
     じぃ…………。
    
     と、柚葉の顔を真っ直ぐに覗き込み、愛おしくてたまらない表情でどこもかしこも愛撫してくる。時折、思い出したように唇を近づけて、頬に額にキスまでくれる。
     とてもとても、柚葉のことを大切そうにしてくるのだ。
    「あぁ……柚葉ぁ……」
     うっとりと浸った目つきで、柚葉とこうして過ごせることを心から喜んでいることが、洋の全身から伝わって来る。
    「洋っ」
    「柚葉」
    「ふふっ」
    「はははっ」
     名前を呼び合い、苦笑し合い、お互いの瞳には、お互いのことしか映っていない。
     しだいにピストンは早まった。
    「あっ、あふっ、んっ、んん! んっ、いい! そ、そこ!」
     軽やかにリズムを刻む洋の腰は、柚葉の感じる部分を知り尽くし、思うままに喘がせる。
    「いい顔」
     少し意地悪な笑みを浮かべて、洋は両手で柚葉の頬を包み込み、どこにも顔を逸らさせないように軽い力も加えていた。
    「――ば、ばかっ、みないでよ――あっ、あん!」
     見ないでと訴えても、やめてくれない。
     そんな洋の意地悪も快感で、感じた顔を好きなように鑑賞されてしまうことになる。
     幸せなセックスに他ならなかった。
    「あっ、ちょっと、もう!」
     洋のことを押し退けようと、厚い胸板に触れて力を込める。女の子の力ではどうにもならず、あっさりと手首を掴んで押しつけられ、両手を封じてピストンを続けて来るのも、カップルとしてのじゃれ合いだった。
    「ひっ、あ――あっ、あうぅ――んっ、ん――――」
     顔を横向きに背け切れば、真っ赤な耳が洋を向く。
     洋はその綺麗な耳に口を近づけ、食んで耳穴に舌を入れ、うなじにかけて口での愛撫を施した。
    「ひっ、ひろっ、しぃ……!」
     すると、柚葉はキスを求めて前を向く。
     正面から唇が重なって、何度も繰り返し触れ合わせていくうちに、やがてディープキスに没頭した。
    「…………」
    「…………」
     急に時の流れが変わったように、ピストンが一度は止まり、その動きはまろやかなものとなっていく。
     あたかも時の止まった二人きりの世界にいるように、柚葉は静かに舌を伸ばし、そこに洋の舌先が触れてくることを楽しむ。
    「ぬちゅっ、ちゅぅ」
    「ずっ、れろぉ」
     柚葉は全身で洋を感じていた。
     這い回る両手が、尻から腰のくびれにかけて撫で回し、肩やうなじも愛撫して、胸に辿り着けば少し夢中で揉みしだく。けれど、またどこか別のところへと、脇下の肉や腹のあたりを撫で、また尻やくびれに移っていき、そのうち乳首に戻って来る。
     柚葉の舌を自分の口内に吸い込んで、味わい尽くした挙句に、今度は洋の舌が柚葉の口に潜り込む。前歯をなぞり、舌先で突きを繰り出し、唾液を吸い上げ、そして自分の唾液も送り込む。
     アソコに埋まる洋の形状がよく馴染み、軽くのんびりとしたピストンの突きは、ほどよい甘味の痺れを生む。
     この幸せの中で、柚葉の肉体は高まっていた。
     頭の上から爪先にかけ、全身に生まれる甘い痺れが、アソコに向かって一点に集中していく。それが何の予兆であるかを知る柚葉は、期待とも焦りともつかない、しかしそうなりたい欲に煽られ、表情を変えていた。
    「イク時の顔、見せてもらうよ」
    「…………うん」
     頬が両手に包まれて、再び軽い力に固定されていた。
     これでもう、右にも左にも向けず、洋と目を合わせているしかない。
    
     ――ずん!
    
     力強く叩き込まれて、柚葉の足がビクっと弾む」
    「んっ、ん! あ! あ! あん! あぁん! あっ、はげしっ、やっ! あん! あ! あん!」  
     自分の顔がどうなっているか、柚葉自身には想像もつかない。
     ただ、見られている。
     大きな喘ぎ声を吐き出し続け、表情の筋肉が力んだり、弾んだり、目尻も歪んで涙も流れる。
     絶頂を待つしかできない柚葉の顔を、洋は視線によってよく味わい、その興奮でより一層のことピストンに力を入れる。
    
     ずん! ずん! ずん! ずん! ずん! ずん!
     ずん! ずん! ずん! ずん! ずん! ずん!
    
     ベッドもぎしぎしと軋んでいた。
    「あん! あっ、あ! やっ! あっ、だ、だめ! だめ! ひろしっ、ひ、ひろっ! ん! んん! なっ、んは! は、あん! ふあっ、うう! んんん! あん! あ、あ! あ! ああん! あん! あ、い、イク! イク! だめ! も、もう! もうだめ! だめ! イク! いっちゃう――いっちゃう! いっちゃう!」
     柚葉の中で何かが弾けた。
     どこまでも火力が上がるようにと、アソコの奥で爆弾を膨らませ、それがとうとう破裂して、全身くまなく快楽電流が四散する。脳まで痺れて焼き切れるほどの絶頂に、肉体が発火したような気さえしていた。
     洋も射精していた。
     柚葉がイクと同時に放っていたのが、膣内のコンドームを膨らませ、さらにビクビクと吐き出している。
     一緒にイケたことの喜びに、二人は思わず見つめ合う。
     そして、余韻に浸った。
    
     ――ちゅっ。
    
     ちょっとしたキスの中でも、二人の気持ちが通じ合う。とても気持ち良かったよ。うん、私もすごくイっちゃった。イク時の顔、最高だったよ。もう、馬鹿。一緒にイケたね。うん、幸せ――。
     言葉の詰まったキスと共に、未だ勃起から萎えない肉棒も、柚葉の中で脈打っている。
     柚葉もまた、ヒクヒクとアソコを蠢かせ、締め付けを与えていた。
     余韻を楽しむ時間に長らく浸り、やっと結合を解いたのは、それから何分後のことになるかもわからない。
     その後も、プレイは続いた。
     フェラチオを頼まれて、じっくりと奉仕しているうちに、自然とパイズリやパイフェラまで試していく。二度や三度に渡る射精を全身で浴び、その末の二回戦ではバック挿入を行った。
     風呂場でもプレイを続け、汗と精液を流した矢先に、壁に両手をついての背後位で三度目のセックスに打ち込んだ。
     もう交わる気力を使い果たし、終わりにしようかという空気になってもなお、ベッドの中のピロトークではお互いの性器を触り合う。
    「柚葉のイク顔、よく見せてもらったよ」
    「やだなー。もー」
    「居られて喜んでだ」
    「そんなこと…………なくもないけど………………」
     そういう会話に浸っていた。
     いつまでも幸せに、そして時間の経過を名残惜しく思いつつ、やがて着替えを済ませてしまう。
     よかった。とてもよかった。
     これからも、ずっとずっと……。
    
     そして、豚山武は次なるカップルに指導を行う。
    
    
    


     
     
     


  • 第8話「最終指導」

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     今日は最後の勉強だった。
    「いいかい? これは気持ちを学ぶための指導でね。性教育委員会の方針で、立派なカリキュラムとして定められていることなんだ。ま、そのくらいのことは、ネットでもわかるし、保健の教科書にも載っている。言わなくても知っているだろうけどねぇ?」
     あれから、何度かの感度開発を行い、洋との回数もこなしていき、健全な肉体関係を築けている。もちろん普通の勉強も疎かにはしておらず、趣味の読書で同じ小説を楽しんだり、難しい本を読み合ってみることも忘れていない。
     勉強も、デートも、セックスも、二人は全てをこなしていた。
     文句のつけようがないカップルだが、いくら評価が高くても、方針で義務付けられた指導を教師個人の裁量では省略できない。
     先生に行う性奉仕も、セックスも、心のどこかには嫌がる気持ちが残っていて、柚葉は本当の意味では合意していない。そういう決まりだから、制度だから、ルールだからしたのであって、仕方がないという諦めの感情で交わったことは確かであった。
     豚山とのセックスがどれほどの天国でも、彼氏以外と行うセックスは健全なセックスではない。
     小学生の頃から、あらゆるメディアによる発信からも、そう刷り込まれて生きて来た柚葉である。
     もう豚山と性交する必要がなくなるのは、正直にいって望ましい話である。
     ただ、最後だから良い評価は得たい。
     それは例えるなら、勉強が嫌いで宿題なんてやりたくなくても、取れるものならテストでは良い点数を取りたいような、どこか相反するものがある。
     しかし――――。
    
     洋に見られながら性行為をするというのは…………。
    
     柚葉は既に丸裸だ。
     ブレザー姿の、背が高くスタイルのすらりとした洋と、1メートルの距離を離した向かい合わせで、すぐ傍らに立つ豚山が、柚葉の肩に触れて来ている。
     豚山もまた、全裸で股間を勃たせていた。
     これではまるで、洋に向かって「こいつは俺の女になった」と、元彼氏を相手に勝ち誇っているような、そんな構図が脳裏を掠める。
     違う、自分は先生の女ではない。
     洋への愛は変わらないことを訴えたくてたまらない目で、わかってほしい気持ちをいっぱいにした表情を投げかける。柚葉の心境を言葉もなく受け止めて、洋はそれに静かに頷いてくれていた。
    「柚葉ちゃん。今の気持ちはどうだい?」
    「――そ、それは――ひゃっ!」
     尻を触られ、とっくに慣れ切ったはずの行為で柚葉は肩を弾ませた。
     苦痛に歪む洋の前で、お尻を撫で回されている。尻肌にぴったりと張り付く手の温度が、実に上手に皮膚を快感で泡立たせ、恋人を裏切ることがどういうことか、柚葉は身をもって体験していた。
    「……洋に悪い、嫌だっていう、そんな気持ちだと思います」
     豚山はさらに柚葉の手を掴み、股間の元へ導き握らせる。手コキまですることになる柚葉は、気乗りせずにしごき始めた。
    「どうしてだい?」
    「やっぱり、洋は恋人で、先生はそうじゃないから……」
     それ以上も、それ以下の答えもない。
     指導の名目とはいえ、教育によって推奨されるのは、あくまでも恋人と行う健全なセックスだ。豚山との性行為は、教育課程におけるカリキュラムに過ぎない。
    「では洋くん。君はどうだい?」
     洋への問いかけと同時に、尻を撫で回す手つきが、ぐにぐにと指を喰い込ませ、揉みしだくものに変わっていた。どうすれば柚葉が感じるか、知り尽くした指の動きに捏ねられて、下腹部は熱く引き締まった。
    「もちろん、柚葉が他の男に触られているのは、とても嫌だと感じています。本当に、辛いです……」
     歯を食い縛り、拳まで震わせている。
    「ひ、洋……」
    「これも勉強だ。恋人以外とするのは、本当は不健全なセックスにあたるタブーだからね? 教師としては、指導以外の理由でそういうことになるのは防止したい。だから気持ちを体験させるカリキュラムが組まれているっていうわけだねぇ?」
     学習内容の一部なのは知っている。
     だが、わかっていても辛い。
    「柚葉ちゃん。騎乗位しようか」
    「…………はい」
     肩を抱かれる形でベッドへ歩み、わざわざ洋の前で行う騎乗位は、恋人同士で向かい合い、視線を合わせた形式となっている。
     豚山が寝そべった。
     さながらベンチに座るかのように両足を下ろし、その状態から上半身は仰向けに、雄々しい肉棒を天に向かってそそり立たせる。柚葉はそこにゴムをかけ、自ら跨ることになるのだ。
     唇を噛み締め、胸の痛みを堪える洋の前で……。
    「洋…………」
     柚葉の胸も、万力で締められているような苦痛に見舞われ、じきに心臓が張り裂けそうなほどである。
    「さあ、おいで? 柚葉ちゃん」
     跨る柚葉は、股下の肉棒に触れ、亀頭の位置を自分に合わせて、切っ先に膣口を重ねていく。腰を沈めるにつれ、子宮まで届く長大な一物が穴を抉って、すぐに根本まではまっていた。
     そして、動く。
    「んっ、ん、んぅ……うっ、んくっ、くっ、んぅ……んあっ、う……く……くふっ、んぐっ、ぬっ、あぅ…………」
     自分自身で腰を弾ませ、上下運動に合わせて視界も動く。
     豚山のサイズを受け入れるのに、もう少しの痛みや苦しみもない。初めてを思えば、想像以上にすんなり入る。それだけ慣れても大きな存在感が引力を放ち、腹の内側まで意識を引っ張る。
     いつもなら、感度開発の指導で感じたり、喘いだり、絶頂するのは当たり前なので、特に我慢はしなかった。
     今回は洋の前だ。
     他人の肉棒が入っているところを見せるだけでも、洋には拷問じみた苦痛を強いている。柚葉自身だって辛い。せめて柚葉に出来るのは、出来るだけ感じないよう、イカないように気をつけて、必要以上の思いをさせずに済ませることだ。
    「んっ、んっ、んっ……ん……あっ、んくっ、んう…………」
     豚山の方からは動かないから、気持ち良さは柚葉の方で調整しやすい。感じ過ぎず、良い部分にも当たらないように気をつけて、しかしそれでも感じる快感に、静かな喘ぎは漏れてしまう。
    「………………」
     洋は顔を苦悶させ、表情の筋肉をいたるところまで強張らせ、そこまで辛い思いに耐え忍ぶ。
    (私も耐えるからね。洋っ!)
     同じ苦悶を顔に浮かべて、アソコに生まれる快楽など、封殺しようとばかりに心を強く引き締めた。
    (あっ、ん、んっ、だめ……声が……どうしても…………)
     いくら豚山の肉棒が気持ち良くても、そのセックスの上手さは性教育に関わるプロだからだ。これからも指導を行い、他の女子といくらでも交わる男の、指導用のおチンチンにいつまでも悦んでいてはいけない。「んっ、んふぁ……あっ、くっ…………くっ、ううっ、うぅ…………」
     他の男で感じる声も、洋には聞かせたくない。
     本当なら、交わっているのも見られたくない。
    「んっ、んんぅ――――――――」
     手で口を塞ぎ、聞かせまいとしながら、柚葉は初めて快感を心の底から拒もうとしていた。気持ち良くなりたくない、絶頂なんてもってのほか。アソコに溢れる甘い痺れは、洋を傷つけ自分も傷つく、恐怖の刃でしかなくなっていた。
    (これが……! これが、洋を裏切るセックス……!)
     決してあってはならないことだ。
     絶対に浮気はしない。
     そもそも、別の男という発想すらなかった柚葉が、わざわざ一途でいようと決意を固め、洋だけを愛そうと、結婚まで夢想する。
     しかし、このカリキュラムは豚山を射精させるまで続く。
     いつまでも緩い刺激だけでは、肉棒の方が精液を出してくれない。柚葉は快感を拒否したくても、豚山の方には感じさせる必要がある。
     こうなったら、柚葉は俯いた。
     少しでも感じた表情を隠し、洋には見せないため――。
    
     あっ、あっ、あ! か、硬いのッ、奥にあたる! 子宮にぶつかる!
    あうっ、あん! あん! あん!
    
     柚葉は動きを速めていた。
     精液を絞り出し、この時間を一刻も早く終わらせるため、下腹部に力を入れてキュゥキュゥと締め付ける。
    
     んっ! あん! だ、だめ! 良すぎる! なんで!?
     が、我慢したいのに――できない――!
    
     腰を落とすたび、極大な槍でも使って股から脳天にかけてを串刺しにされてしまうような、激しい快感が身体を貫通していく。下から上へと、快楽の電気が頭から天井に放出されているのではないかと思うほど、痺れは強くなっていた。
    
     ぬっ、く! こ、こんなの! すぐに抜いて――。
     あっ、あん! あん! あん! あん!
     少し……は、激しくすれば……。
     髪とか揺れまくるし、オッパイもプルプルすると思うけど。
     でも、早く終わった方がいい!
     あ! あん! あん! あん! あん!
    
     それは洋を苦しみから解放して、性教育に決着をつけるための動きであった。
    
     ずん! ずん! ずん! ずん!
    
     叩きつけんばかりに腰を落とし、喘ぎ声はあくまで噛み締め、しかし腰は快楽にくねくねと動いてしまう。
    
     イケ! 早くイっちゃえ! 精液出しちゃえ!
     早く、早く――あっ、あ、あん! あん! あぁ――!
     せ、精液っ、精液!
     射精っ、してぇ……!
    
     そして、彼氏のためを思えばこそ、けれども必死になって豚山を射精させようと頑張る姿がそこにはあった。
     
     ずん! ずん! ずん! ずん!
    
     手で口を塞いだ内側は、歯も強く食い縛り、荒げた息が最低限聞こえる以外は喘ぎ声を漏らしていない。俯くことで垂れる前髪の影が、感じた顔を洋の目から隠している。
     
    (洋ッ! 私は、早く洋のところへ――――)
    
     コンドームが内側からドクンと熱く膨らんで、たっぷりと射精してきた気配が膣内に感じられた。
    
     よかった……。
     これで……私は洋とだけ……。
    
    
    
    


     
     
     


  • 第7話「成功報告」

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    「それで、彼とのセックスは上手くいったかい?」
    「はい。とっても」
    「習ったことが役に立ったね?」
    「そうですね。処女を失くしておいたおかげで、余計な痛みもなく、気持ち良くなれました」
     柚葉はこの日も豚山の指導を受けていた。
     ベッドの上で、膝のあいだで子供でもあやすかのようにして、柚葉は豚山に抱き締められている。
     もうとっくに慣れてきて、先生の前で裸になることには、何らの抵抗も感じない。それは指導や授業という意識から、生徒として抱く意識であり、だから恋人としてラブホテルに入ることを要求されれば、やることは同じでも肌中が戦慄するに違いない。
     豚山の肉体も、決して好きなものではなかった。
     筋肉というより脂肪に満ちた胸板の膨らみと、腹筋の逞しさなど皆無のたるんだ腹が、体育座りの柚葉の背に、べったりと密着している。指まで脂肪で膨らみ気味で、顔立ちも醜いオッサンとあらば、思春期の女子が生理的な拒否反応を示すには十分すぎた。
     慣れだから、指導だからとしか、ごく普通に愛撫に身を委ね、快感に浸れる理由は説明できない。
    「一緒にシャワーを浴びたってことは、洗いっこもしたのかな」
     豚山の右手が乳房を包み、触れるか触れないかといった具合で、手の平全体で胸の皮膚をさすっている。左手の指はアソコのワレメをよくなぞり、滑らかな愛撫で愛液を掻き取っていた。
    「はい。お互いの体にボディーソープを塗り合って、途中からオッパイで洗ってあげました。そしたら洋も、『ありがとう』『気持ちいいよ』『とても嬉しい』って、何度も言ってくれて、私もやる気出たんで、パイズリまでしちゃいました」
    「じゃあ経験しておいてよかったね」
    「はい」
    「洋くんは、ちゃんと射精の直前に一言入れたかな」
    「入れましたよ。だから、私もどこに出したいか聞いてみて、顔っていうから顔で受け止めました。洋、私の汚れた顔、すっごく嬉しそうに見て来て、それで私もそのまま洗わないで眺めて貰って。いや、まあ一分くらいしたら洗ったんですけどね」
    「ラブラブでいいねぇ?」
     豚山の両手は気ままに動き、左右の胸を同時に揉みしだく。腹をさすっていくように、皮膚の表面を這っての移動でアソコに手をやり、膣口とクリトリスを同時に責める。
     そのうち右手が乳房に移り、気でも変わったように乳首を摘まむ。
     右手と左手が後退して、今度は左側の乳房が揉みしだかれる。
    「顔を洗ったあとは、いっぱいキスしました。私も夢中になって、やめられなくて、出来るだけ唇をくっつけながら、タオルで体を拭いていましたね」
    「で、いよいよベッドに行ったんだね」
    「はい。洋くんの愛撫で、いっぱい濡らされちゃいました。凄く優しくて穏やかなタッチで、私が『あ、ソコ』って思ったら、顔を見ただけでわかってくれて、私がいいと思う場所を重点的に攻めてきたり、私の方からも洋の体をまさぐったり」
    「ぼちぼち、挿入に移っていくわけだ」
     豚山は静かに柚葉を寝かせ、コンドームの袋を破き、肉棒に被せ始めている。
     あと何回もない感度開発で、柚葉はよりイキやすくなる。
     つまり、洋の肉棒で導いてもらうため、幸せな時間を過ごすための、未来への投資を意味するセックスだ。
    「『心の処女』を捧げる相手ですから、洋も私との時間を凄く大切に考えてくれました。コンドームの袋、一緒に破いたんです」
     指導での性交は、物理的には確かに処女を失っているものの、現代教育における貞操観念上、恋人との性交でなければ『心の処女』を失ったうちにはカウントされない。
     もちろん、レイプといった『心の処女』を無理矢理奪う事件も、世の中あるにはあるが、そういった例外でもない限り、恋人がいなければ『心の処女』を失う機会はどこにもない。
    「へえ?」
    「私が袋を手に取ったら、洋は私のこと抱き起して、キスして。それで自然とっていうか、見つめ合いながら、洋と二人で破きました。まあ、やりにくい破き方なので、ちょっと苦戦しましたけど、コンドームの装着も二人でしたんですよ?」
    「先生もちょっと挿入するからね」
    「はい、どうぞ」
     柚葉は股を左右に開き、正常位でしようとしてくる豚山の挿入を受け入れる。肥満の体格のせいかは知らないが、洋のものより太い一物は、やはり微妙にきつく苦しい。
     しかし、こうして根本まで入って来れば、この太さの有難みが身に染みてよくわかる。太いもので肉体の処女を散らしたから、先生よりも少しだけ細い洋の肉棒で、苦しい感じがしないで済んだ。
     キュっと締め付けるまでもなく、柚葉の穴より太いくらいの肉棒は、良い締め具合を味わっていることだろう。
    「お、いいね。柚葉ちゃんのアソコがセックスに慣れてきているのが、何となく伝わるよ」
     豚山の腰が動き始める。
     たった数センチもないピストンの、本当にゆったりとしたピストンで、ちゅくちゅくと愛液の音が鳴る。
    「ありがとうございます」
    「それで、装着も一緒にしたんだね」
    「はい。洋が自分で上に乗せて、私もそこに手をやって、二人の手で一緒に被せていきました」
    「それはいいね。とても充実した時間になっただろうね」
    「はい。とにかく一緒に過ごすってことを大事にして、挿入も見つめ合いながらやりました。洋はこう、私のこと、熱い感じの目で見て来て、私も似たような感じて視線を重ねて、だから手元の方で、ここだよっていう具合に、亀頭の部分をアソコの中に導いたんです」
    「お互いに協力し合って、本当にいい時間を作ったみたいだね。まさに百点満点。理想のあるべきセックスだ」
     洋との行為を全面的に肯定してくる豚山の言葉に、柚葉は嬉しそうに目を細め、ご機嫌になって今の肉棒に浸っていく。
     本当に充実した時間だったのだ。
     挿入を済ませた途端に、感激に震えた表情を浮かべた洋は、何度も何度も「ありがとう」と口にして、キスをしながらピストンした。柚葉と交わることが出来たのが、心の底から嬉しいのだと伝わって、それが柚葉の心を大いに高めた。
     だから、洋とのセックスではイクことが出来た。
     ゴム越しの射精を感じた後は、イカせてくれたお礼にフェラチオをしようと思い、仰向けになってもらって奥まで咥えた。精液は飲み下し、済んだ後も亀頭の周りをペロペロと舐め取った。頑張って奉仕に励む柚葉をよしよしと、頭を撫でて可愛がってくれたのが最高だった。
     まだ元気を残した肉棒を見て、もう一度挿入して欲しくなり、コンドームを被せるなり正常位で迎える姿勢となって、そのまま三回は本番をしてしまった。
     裸のまま抱き締め合い、余韻に浸り、シャワーを浴びた後はホテルを出て、手を繋ぎながら帰っていく。
     ――今日は本当に良かった。凄く良かった。ありがとう。
     家まで送ってもらっての別れ際に、耳元に囁かれ、赤らんだところに唇が重なって来たことには、一体どれほどドキリとさせられたか。
    「楽しんだねぇ? また洋くんとしたいねぇ?」
    「はっ、はい……! し、したいですっ、あっ、あっ、あん!」
     いつしか柚葉は全てを語り、そして喘いでいた。
    「じゃあね。いい指導が出来たわけだし、生徒としては先生にお礼をしないとね? だから今日は、ちょっとばかり楽しむためのセックスをさせてもらうよ?」
     いつからピストンが激しくなっていたのかわからない。
     それほど柚葉は夢中で語り、惚気続けて、自分は喘がなくてはならないことに今頃になって気づいたように、巨大な快感に貫かれていた。
    「へ? あ、はっ、はいっ! あっ、あん! あん!」
    「はぁぁぁっ、いいなー! 心まで奪うより、気持ちは本命の彼に向いたままの女の子が好きなんだ! 心の底からは合意してない、でも感じちゃってどうしようもなくなってる感じの!」
    「あっ、あぁぁ――――――――――――――――っ!」
     股から脳天にかけてを貫通する、鋭い槍に串刺しにされるがごとき快楽に、肺の酸素を絞り切ってなお喘ごうとしてしまう。そんな呼吸の苦しみを超え、やっと空気を吸い込むと、次なるピストンがまた柚葉に酸素を吐かせる。
    「おっと、少し責め過ぎたねぇ? 手加減しないとねぇ?」
     いずれは白目を剥いて失神しそうな勢いから、急に快楽が緩んだことに安心しつつも、未だ四肢には激しい電流が走っている。
    
     ずん! ずん! ずん! ずん! ずん! ずん!
     びく! びく! びく! びく! びく! びく!
    
     リズミカルなピストンに一致して、太ももから足首まで、下半身の筋肉が全て強張り、ビクつく反応を繰り返す。
    「あっ! あっ! やっ、あふっ、んん! ん! ん! んぁっ、あああん! あん! あん! あん!」
     巨大な壁が聳えるごとき、大きな快感の津波が迫っては、柚葉の脳から余計な思考をどこか遠くへ流していく。
    「あん! あん! あっ、いっ、いい! いい!」
    「バックになってごらん?」
     肉棒を引きながら、豚山に言われるなりだ。
    「は、はい!」
     柚葉はすぐさま姿勢を変え、どうぞ挿入して下さいと言わんばかりに尻を突き出す。
    「あ…………!」
     背後からの挿入で、豚山の腰が柔らかな尻山を押し潰した。
    「あっ! うっ、ん! ん! ん! あん! あん!」
     尻たぶを波打たせ、大胆なグラインドで突き込む豚山の腰は、子宮にぶつかるほどの奥まで切っ先を刺している。
     豚山は楽しむと言ったが、これが感度開発になることはわかっている。
     指導の一環と思って快楽を受け入れて、気持ち良さのままに喘ぐ柚葉は、ベッドシーツを強い握力で握り込む。跳ねる背中で綺麗なカーブを成しながら、髪を左右に振り乱し、全身から噴き出す汗でシーツを濡らす。
     気持ち良すぎる! 気持ち良すぎるよ!
     頭の上から爪の先まで、皮膚が細やかに弾け飛ぶような快感に、このまま屈服しそうな自分がいる。ただひたすらに圧倒的で、抗いようのない快楽の暴力に、力ずくで打ちのめしてものにする。そんな豪快なピストンの中で、柚葉は必死に洋の顔を浮かべていた。
    「ちゃんと洋くんのことを考えているかい? ははっ、駄目だよ? いくら気持ち良くても、快感に流されて心まで奪われたら、真に一途とは言えなくなる。きちんと彼氏を想い続けるんだ」
     豚山が語っている言葉など、脳神経までやられるほどの快感で、ろくに聞き取りも出来ていない。
     しかし、それでも柚葉は「洋! 洋!」と、心に浮かべた彼氏にしがみつき、離すまいと懸命になっていた。
     
    「――――ああぁ! イク! イク! せ、せんせ――いっ、イキます――も、もう! もう! あ、あああああん!」
     
     絶頂の波に晒され、柚葉は全身を痙攣させた。
     イキ果てた柚葉は、朦朧とした虚ろな瞳で余韻に浸り、上半身をぐったりとさせていた。愛液を存分に漏らした尻だけが高らかに、肛門のヒクつく光景は、女としてはあまりに無様なものである。
    「ひ、洋ぃ……」
    「そうそう。そうでなくちゃ。合意しているようでいて、本当は罪悪感を抱いていたり、腹の底にほんの欠片でいいから嫌がる気持ちが残っているのが好きなんだ。そういうセックスが、先生には一番気持ちいいからねぇ?」
     豚山は醜い笑みを浮かべて尻を撫で、豊満な曲線を大いに愛でる。
     この日、柚葉は休憩の末にフェラやパイズリくらいの体力は取り戻し、ひとしきりの奉仕をしてから、指導終了のハンコを貰って帰宅した。
    
    
    


     
     
     


  • 第5話「初めての本番」

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      ベッドの柔らかさに背中が沈み、頭を乗せた枕も柔軟に変形して、白いシーツの全てが佐矢野柚葉を受け止めている。
    
     くちゅり、
    
     愛液に濡れたアソコから、そんな音が聞こえたような気がするほど、柚葉の下腹部は温まっていた。
    「えっ、こんな……! うそ……!」
     指先で軽やかにワレメを引っ掻き、くすぐるようになぞる愛撫が、瞬く間に汁を掻き出してしまったことに、柚葉は動揺さえして瞳を震わせていた。
    「それはっ、気持ちいいですけど、えっ、えっ……!?」
     何が起こっているのかわからないと言わんばかりの表情で、性器の表面に愛液を溢れさせ、色白の肉貝をヌラヌラと輝かせる。
    「あっ、あぁ……あぅ……ふっ、んぁ……!」
     確かにオナニーの宿題を真面目にやった。一日も欠かすことなくアソコを弄り、満足するまで快感を味わって、たった一週間でこんなにも成果が出るのだろうか。
    
     ち、違うっ、先生が上手いんだ!
     プロの指導者だから……!
    
     指が挿入されて来て、甘い痺れがますます膨らむ。
     二本、三本と指は増やされ、柚葉の穴はそれをしっかりと咥え込み、押し広げようとする圧迫に愛液を撒き散らす。
    「確かに宿題はやってるらしいね。三本も入ってしまった」
    「あっ! あぅ――せ、先生ェ――!」
     髪を振り乱し、両手でよがり、喘いでいるうちに脚が広がり、いつの間にか柚葉はM字開脚で太ももを強張らせている。それを前から指で犯され、正常位で挿入されたらこういう気持ちに違いない刺激に、アソコで何かが膨らんでいた。
     オシッコに行きたいのとは違う、しかし尿意に似ているような、言い知れない未知の何かが下腹部で育っていき、その感覚の正体がわからず柚葉は顔を歪めていた。
    「せんせっ、せん――な、なにか! なにかヘンです!」
    「それでいい。そのままだよ」
    「そんな――あっ、あん! あっ、ダメ! ダメダメ! こんなっ、このままじゃ――あっ! あっ!」
     脳まで何かにやられてしまっているように、柚葉は未知の快感に飲み込まれ、もはやそうなることは時間の問題だった。それも数分後の遠い未来でなく、たったの数秒後にさえ迫っているのだ。
     脚の筋肉が極限まで硬直して、天井を蹴散らしたいように両足でよがって暴れ、足首を反り返す。
    「あっ、あ――あ――」
     もう、ダメだった。
     これ以上は破裂するとわかっている風船に、なおも空気を注入して、弾け飛ぶまで膨らませているようなものだった。
    
    「――――――――――――――――っ!!!」
    
     声にならない絶叫。
     佐矢野柚葉は絶頂していた。
    
     高圧電流でも全身に流されているように、手足を痙攣させながら、背中も高く反り返し、腰を弓なりに弾ませる。
     さもアソコから霧吹きの噴射をしたように、愛液の潮が飛び跳ね、その滴が豚山の顔に胸に付着した。
     四肢の力が抜けていき、起き上がりたい気がしない。
    「今のが絶頂。オーガズム。イクってことだね」
    「絶頂……」
    「イった体はね。さらに開発を行うことで、どんどん絶頂しやすくなって、彼氏との時間を充実したものにしやすくなるんだ」
    「洋との……」
     柚葉はごくりと息を呑んだ。
     今のは、そもそも恋愛対象ではない男によって与えられた絶頂だ。同じイクでも、彼氏でイクか、違う男にイカされるかでは、心の満足感は大きく違ってくるだろう。
    「実際にイってみて、どんなことが勉強になったと思う?」
    「どんな……うーん……」
    「自分の感じるポイントがわかったんじゃないかい?」
    「あ、そうですね。だから、洋にもそれを伝えられれば、今みたいにイけるんでしょうか」
    「もちろんだとも。ま、それにはもう少し経験を積んで、感度を磨いた方がより確実だけどね」
     再びアソコに指が置かれ、イカされるのだろうかと柚葉は強張る。
    「せ、先生……」
    「大丈夫。無理はさせない。次はまろやかな感じでいってみよう」
    「……はい」
     塗って広げるような、ぐるぐるとした滑らかな愛撫によって、豚山は穴の周りを丁寧になぞっていく。何周もかけてじっくりと、実に丹念に行う刺激の甘味は、柚葉の脳を少しずつ溶かしていた。
    「今頃は洋くんも、こういうテクニックを習っている頃だからね」
    「……うそ、楽しみです」
     叶うのは時間の問題の、楽しみでならない夢が、数日か一週間後か、そのあたりに迫っている。
    「ところで柚葉ちゃん」
     若干ニヤけていた豚山が、少しだけ真面目な面持ちで、急に真剣な話題を出そうと空気を切り替える。
    「……はい」
     来るのだろうか。
     あの話が。
    
    「そろそろ、本番してみようか」
    
     やっぱり、と柚葉は思った。
     愛する彼氏に、痛がる姿を見せるわけにはいかない。せっかく肌を重ねるのなら、お互いに気持ち良くなることが理想である。処女とはそれを阻む壁なのであり、適切な指導者の手で取り払うべきと、現代の教育方針によって定められている。
     つまり、これは準備。
     彼氏とセックスという、夢の現場へ向かうための、必要な切符を手に入れる手続きなのだ。
     実際、柚葉の心の中には洋の存在しかありはしない。
     目の前にいる豚山など、手続きの係員か何かにしか見えていないくらいである。
    (だけど、痛くてもいいから初めては洋がいいかな。本当は……)
     それは許されていない。
     痛がる姿を見せるのはタブーであると、現代教育による刷り込みを受けている柚葉は、相応の悲しみを抱きながらも、諦観の表情を浮かべてため息を吐く。
     結局、一番の望みは一時的な試練より、その先にある彼氏とのセックスである。
    「はい。お願いします」
     柚葉は自ら指導を望む。
    「事後避妊薬を使うから、生で挿れるよ? 仮に妊娠しても、報告さえくれれば早期に堕胎手術を受けさせてあげるからね?」
    「は、はいっ」
     豚山が覆い被さり、視線を絡め合わせて来た。
    (今から……するんだ……)
     M字となった柚葉の股に、豚山のペニスが近づいている。むわっとした熱気の固まりが、ジメジメとした湿気の固まりのようにアソコに触れ、肉棒の気配は如実なものとなっていた。
     見なくてもわかる。
     雄々しく血管を浮き上がらせ、ピクピクと脈打って、自分の中に入りたいとする欲望を大いに醸し出している。エサを見つけてヨダレを垂らす獣のように、亀頭からカウパーを滴らせているのだ。
    「洋くんのためだ。我慢しようねぇ?」
    「は、はいっ、大丈夫です!」
     声が震えた。
     緊張している。
    「ひッ!」
     怯えたように肩が縮んでしまったのは、ワレメの上にフィットさせんばかりに肉竿を乗せられて、熱気がアソコに伝わったからだった。
    
     ぬるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……………………。
    
     やけにスローな動きで腰を動かし、まるで形をわからせようとしているように、竿全体をワレメの上に這わせている。腰の後退につれ、切っ先がわずかに触れるのみとなっていき、そのぴったりと接触している位置が膣口のところへ合わさった。
    
     ぬりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……………………。
    
     再び竿全体がワレメの上に乗るように、豚山は腰を前に動かして、柚葉のアソコは切っ先と裏筋によってなぞられた。
    「や、あぁぁ…………」
     亀頭でアソコのラインをなぞり、今度は挿入しようと位置を合わせる豚山は、たった1センチだけ先端を差し込んだ。
    「ほら、わかるかい?」
    「……はい」
     もう、入って来るのだ。
     これまで、たくさん気持ち良くなってきた。奉仕もした。しかし、柚葉にとっての豚山は、所詮は好きではない男だ。これでも何の葛藤もなかったわけではない中で、挿入はやはり心苦しいものがある。
     だが、洋のためなのだ。
     洋のため、洋のため。
     これを済ませなければ、洋にはさせてあげること自体ができない。
    「いくよ? 柚葉ちゃん」
    「はい……」
     豚山の肉棒が埋まり始めた。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――。
    
     1センチだけ入っていた亀頭が、処女の小さな穴幅を押し広げ、だんだんと膣口に身を埋める。1ミリずつ侵攻していく、実にゆったりとした挿入は、一秒でも長く処女を味わうためのものだった。
    「あっ、あぁぁ………………」
     やっとのことで亀頭が入り、どれほど時間をかけるつもりでいるか、柚葉には想像もつかない。処女膜が裂ける痛みで血が流れ、穴を強引に拡張してくる圧迫感の苦しさにも柚葉は喘ぐ。
    「うっ、いぃぃぃぃぃぃぃ…………………………」
     カリ首まで入って来た。
     あとは竿の部分が少しずつ、本当に少しずつ、柚葉の中に何秒も何秒もかけて入っていく。今はどこまで入っているのか、まだ半分なのかどうかもわからない。
     しかし、亀頭は確かに子宮に近づいていた。
     ピストンが始まれば、子宮の入口を直接ノックされるに違いない予感に、それは一体どんな感覚なのかという未知への想いに頭の中が満たされていく。
    「あ、あっ、あぁ………………」
     そして、豚山の陰毛が密着して、ぴったりと根本まで収まった。腹の内側に感じる肉棒は、やはり子宮まで届いていた。射精されれば直接流れ込むのは間違いなかった。
    「どうかな? 初めておチンチンを受け入れた感想は」
    「い、痛くて……緊張もして……」
    「彼氏の前では、痛みは無しでリラックスもできた方がいいよね?」
    「それは……はい…………」
    「でも、せっかくの初挿入だ。いきなり動いたりはしないから、今はじっくりと先生のおチンチンを意識してごらん?」
    「……はい」
     意識しようとするまでもなく、肉棒の存在感が柚葉の集中力を引きずり出し、嫌でも形や大きさを想像させてくる。散々見て触った経験のせいかもしれないが、膣の触覚が脳に正確な形状を伝えてくるようで、頭の中にはありありとフォルムが浮かぶ。
     きゅっ、と。
     下腹部に力が入ってしまうと、より如実に感じ取れた。
    「これで、もう私……」
    「そうだね。これで柚葉ちゃんも経験済みだ」
     豚山はにっこりと柚葉の顔を覗き込む。処女を破られたことの驚きや感傷に浸った表情に、ニタニタと頭を撫で、髪を弄び、胸まで楽しげに揉んでくる。
     自分という存在が釘付けに固定されている気がした。
     豚山という男の前から放れられないようにされ、こうして処女を散らした思い出は、良かれ悪しかれ一生かけても消えることはないだろう。
    「洋とも……」
    「そうだね。これで彼氏とセックスすることが出来るようになったけど、まずは先生の相手を済ませないとね」
    「は、はいっ」
    「さーて、動くよ?」
     豚山は腰を前後に動かし始めた。
    
     ぬるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――。
    
     1ミリずつゆっくりと、静かな動きで肉棒は後退していく。亀頭だけが埋まった状態から、再び子宮を目指して来た。
    
     ぬぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――。
    
     と、閉じ合わさった膣壁の狭間に潜り込み、ゆうに何秒もかけて最奥まで到達した。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅぅぅ――――ずるぅぅぅぅぅぅぅぅ――――。
    
     一度のピストンにどれほど時間をかけているのか。竿の部分が抜け出るだけで、果てのなかったものがようやく終わりを迎え、押し込まれる時にも半ば永遠を感じてしまう。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――――。
     ずるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――――。
    
     処女膜の裂けた傷口にも擦れていて、性交痛に脂汗が滲んでくる。
    「あっ、ぐ…………くぅ…………んっ、くっ………………」
     苦しげな声も、どうしても出てしまう。
     表情も、きっと痛がっているのがありありと伝わるはずだ。
     確かにこんな姿を彼氏には見せたくない。気を遣わせそうで、それに肉棒を萎えさせてしまわないかの恐怖もある。せっかくするなら、少し恥ずかしいが、気持ち良くて喘ぐ姿を見せてあげたい。
     自分の手で喘がせている実感を持つ方が、男としては喜ぶはずだ。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――――。
     ずるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――――。
    
     少しマゾ的な思いだが、いいように喘がされ、そのことで調子付く洋が見てみたい。柚葉のことを満たしたり、イカせたりしたのは自分だと、満足な気持ちに浸って欲しい。
     お前をイカせたのは俺だという、征服的な気持ちをぶつけられたい。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――――。
     ずるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――――。
    
     洋とする際の欲望が膨らめば膨らむだけ、こうして出入りしている肉棒が豚山のものであることに、初めから諦めているしかない悲しげな気持ちが蘇る。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――――。
     ずるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――――。
    
     それでも、両手で乳首を弄り回し、遊んでくれている快感で、下半身の痛みから少しは気が紛れている。性交痛は個人差があるというが、トラウマにはならずに済みそうだ。
    「んっ、ぐっ、ぐぅ……あっ、くっ…………」
     愛液を挟んでの膣と肉棒の密着は、棒の太さに対する穴幅の狭さのせいで、少しの締め付けでピストンを停止しそうなほどなのだが、活性油による滑りの良さで、それでも自在に出入りする。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――――。
     ずるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――――。
    
     変わることのないペースが続き、いっそ機械のようだと感じていると、しだいしだいにピストンの速度が上がり始めた。
    
     ずにゅっ、ずぷっ、じゅにゅっ、ずぬっ、ずぷっ、にゅぷっ、ちゅぶっ、つぷっ、ずにっ、ぐにっ――――。
    
     まだまだ、ゆっくりと動いている。
     しかし、揺すりつけるように柚葉にぶつかり、軽い振動を与えてくる豚山の腰は、着実に膣を性交に慣らしている。
    (こうやって、準備が整って行くんだ…………)
     彼氏とのセックスが本番。先生とのセックスは本番に向けての練習という意識の下で、だから柚葉にとっては筋トレや走り込みがハードで辛いようなものともいえる。
    
     ずにゅぅ! ずにっ、ずに! ぐにっ、じゅぬ!
    
     さらにペースが上昇した。
    「ぐっ、ん! あっ、あくっ、くっ、ぐっ、ぐぅっ、んん!」
     苦しげな喘ぎの声を吐きながら、こうして肉棒が出入りしてくる感覚に身を沈め、まぶたを閉ざして延々と耐え忍ぶ。
     やがて――。
    
    「出すからね?」
    
     豚山の唇が耳に触れ、ねっとりとした声で囁いてきた。
     その瞬間だ。
    
     ドクッ、ビュク! ドック! ドクドク! ビュクン!
    
     膣内で脈打つ肉棒から、熱い白濁が放出され、柚葉は膣内にそれを感じて顔色を変えていた。
    (あ、やだ……な、ナカに……!)
     アフターピルの用意があるとはいえ、本当なら妊娠確定としか思えない射精の量が、子宮に注ぎ込まれている。入りきらずに溢れ出し、肉棒と膣壁が密着している隙間の無い道のりをなお通り、結合部から漏れる白色が破瓜の出血と混ざり合う。
     なお勃起したままの肉棒が抜かれた時、急に穴の内側が寂しくなり、何も挿入されていないことの方に違和感を覚えてしまった。
     最初は挿入の方が違和感で、じっと異物感に耐え続けていたはずなのに、あれだけ時間をかけたせいなのか。膣穴が空っぽであることの寂しく悲しい感覚に飲み込まれた。
    (でも、体力的にちょっとな……アソコも痛いままだし……)
     おかげで、さすがに二回戦目はしたくない。
     しかし、この痛みが取れて、アソコがセックスに慣れ切っていたのなら、果たして一度で物足りているだろうか。
    「お掃除フェラ。お願いね」
     豚山は柚葉の背中に腕を回して抱き起し、ぐったりと座り込んでいる正面に肉棒を突き出した。
    「……かぷっ」
     歯は立てないが、唇で噛みついた。
     ヌルりとした青味ある味をペロペロと舐め取って、静かなフェラチオの時間を過ごして、柚葉は今日の指導を終えていく。
    
    
    
    


     
     
     


  • 第6話「デートをして」

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     それから、破瓜の負担をかけたアソコに休憩を与えるため、しばらくの指導は休みになる。
     それを機に、佐矢野柚葉は休日の待ち合わせの場で、20分も早く来てしまって彼氏を待つのに、必要以上にキョロキョロと周囲の人の往来を見渡していた。
     駅前に建つ芸術品らしいオブジェの前で、ワンピースの上に薄手のカーディガンを羽織った私服姿で、安藤洋を待ち侘びている。時間が早すぎたのは自分の方だというのに、こうなると似たような体格の男を見て、それが通行人として近づいてくるたびに、洋ではないかと期待を抱いては肩を落とし続けていた。
     柚葉のすぐ近くにも、同じようにこの場所を待ち合わせ場所にしていた見知らぬ女子が、やって来た彼氏に抱きつき、デート先へ向かって離れていく。
    (いいなー……)
     実に羨ましい気持ちでカップルを眺め、改めてスマートフォンで時間を見るに、まだ待ち合わせよりも15分早かった。いつも5分前到着の洋を考えると、あと10分も待たなくてはならないのだ。
    (早く会いたいよ。洋、洋……)
     どうせ会えることはわかっているのに、どうしてこんなにも気持ちが焦るのだろう。
     スマートフォンの画面で、さらに1分立った時だ。
    
    「お待たせ」
    
     小走りで駆け寄って来る少年に、柚葉は目を輝かせた。
     背が高く、細く整った腰つきや足の長いスタイルに、とびきりのイケメンとまではいかないが、十分に格好いい顔立ち――いや、けれど好きすぎてアイドルにさえ見えてしまう。
     寡黙らしい彼の静で落ち着いた声質に、耳が溶けてなくなりそうな思いで興奮しながら、柚葉の方からも洋に向かって駆けよった。
    「洋……!」
    「おはよう。その服、似合うね」
     開口一番、今日のために密かに選んで買って置き、是非とも次のデートにと思っていた私服を褒められ、ドキリと心臓が弾んで顔が赤らむ。
    「あ、ありがとう……」
    「髪もいつもよりツヤツヤしてて、肌もなんか……綺麗で……」
     褒め言葉を言うのが本当は恥ずかしくてたまらない、照れ隠しが丸わかりの赤らんだ顔つきで、それでも褒めずにはいられずに、柚葉のことを称えてくる洋の声に、心まで溶かされていく。
    「そんなこと……!」
     柚葉も照れを隠しきれずに、顔をどこかに背けてしまった時、ゴクリと生唾を飲んでいる気配を確かに感じた。改めて洋の顔を見てみると、いかにも美味しそうでたまらないものを見る獣の目つきで、しかしそんな自分に気づいてハっと理性を復活させている様子に、間違いなく性欲を向けられたことがわかってドキドキした。
     愛している以上、柚葉にも性欲はあり、そのうち一つに繋がりたい。
    「行こうか」
     洋は手を差し出してきた。
    「う、うんッ」
     そして、柚葉は手を繋ぎ、デートコースへ向けて歩み出す。
     プランといえば、別にただ映画館のある駅まで電車に乗り、二人で見ようと決めた映画の感想を、ファミレスで一緒に食事をしながら語り合う。デザートを一口ずつ交換したり、意味もなくテーブルの上でお互いの手を触り合って過ごしていく。
     あとはデパートで買いもしないグッズを眺め、買うわけでもない洋服を選んでみて、一緒に読みたい本についてはおこずかいを用意している。色んなところを見て回って、アイスクリームなんかも食べてみて、充実した時間を過ごしていくうちに、デパートを離れた通りに入る。
     そして、ホテルの並んだ道を歩いて、洋はさりげなく切り出した。
    「なあ、ちょっと休まないか?」
     ラブホテルの建つ場所で、休憩と称した誘い方があることは、性教育でも習っている。
     教科書の授業の際は、おおっぴらには誘いにくいので、そういう言い回しでさりげなくセックスに持ち込みましょうと教えていた。性交渉に持ち込む指南であると同時に、そんな気のない男性から誘われたら、ホテルに連れ込むテクニックであると警戒せよとも教えている。
     洋は彼氏だ。恋人だ。愛している。
     警戒も何もない。
     それに、付き合いの長さでお互いの気持ちはわかる。教科書の知識や妙な雑誌の知恵がなかったとしても、洋が柚葉としたがっているサインは感じ取れていたはずだ。
    「そ、そうだね! 私も、ちょっと疲れたかも……」
     声が上ずった。
     何せ、こうなると休憩を取ることへの合意が、ホテルへ行くことの合意になる。
    「行こう。柚葉」
    「……うん」
     手を握られ、されるがままに引っ張られ、連れられるままにホテルの入口で部屋を取り、エレベーターにまで入っていく。
     その時が、着実に迫っていた。
    (……どうしよう! どうしよう! どうしよう! こ、これから洋とするんだ! や、やばい! やばいよ! 凄い緊張する! 心臓もこんなにうるさいものだっけ? やばい! どうしよう!)
     何が始まったわけでもないのに、エレベーターで部屋の階まで上がっていくだけで、必要以上の赤面が耳にまで及んでいた。
     頭が沸騰しかかっている。
     心臓の鼓動は、胸が破裂せんばかりだ。
    (お、思い出そう! 豚山先生と散々してる! もう処女じゃないから痛みもないはず! それに、あとは、そうっ、コンドーム! 洋のことだから、誘うつもりでいたなら用意してるだろうし、なかったとしても部屋に置かれてるだろうから避妊はOKだよね)
     必死になって学んだことを思い出し、頭の中で復讐していく。
    (手コキ、フェラ、パイズリ、パイフェラだって、頼まれさえすればみんなできるし……あ、でも……。頼まれなかったら? 洋だって、初めてで頼みにくいだろうし、気を遣って私の方からする? ううっ、そういうのは個別の問題だから、先生の指導でどうにかっていうものでもないし……)
     肝心なところがわからない。
     しかし、洋だって女教師の手ほどきを受け、もう童貞ではなくなっているはずである。性奉仕は体験して、愛撫も習い、避妊の責任についても改めて学んでいることだろう。
    (お互いに素人じゃない。だから、気軽に……気軽に……)
     気軽に行こうと、深呼吸で息を落ち着ける。深呼吸で大胆に肩を上下させているうちに、エレベーターは開いて廊下に出る。部屋番号のドアノブに鍵を差し、とうとう部屋まで到着した。
     清潔な純白のシーツが敷かれたダブルベッドに、ここでするのだという覚悟なのか思いなのか。そういったものが胸に込み上げ、緊張による体の強張りと、心臓の激しい動悸はなかなか解けない。
    「柚葉」
     洋は黙って、柚葉の背中に腕を回して抱き締めた。
    「ひ、洋……」
     頑として離すまいと、誰にも渡すまいとする腕力に、呼吸が苦しいほどに感じるのが、むしろ愛されていることの実感となって心を満たす。柚葉の方からも抱き返し、あらん限りの腕力をかけ、いっそ締め潰すつもりで密着した。
     見上げれば、真剣に射抜こうとしてくる熱意の瞳がそこにある。
    (なんでだろう? 生まれて初めてセックスする気がする……)
     指導であろうと、処女を散らしたことは散らしたはずだ。
     それなのに、洋の熱い体温と、柚葉の心を焼き尽くそうとする勢いの情熱に、胸の内側さえ沸騰を始めている。ここまで気持ちが高まれば、もう生涯かけても洋を嫌いになることが出来ない気がして、好きになりすぎることが恐ろしくさえあった。
    「ずっと大切にする。一生、柚葉と一緒にいたい」
    (ああ、結婚しちゃうんだね。私達って……)
     高校生で、まだ成人後の未来など決まってはいないのに、何故だか確信してしまう。ここまで心の波長が合う相手は、きっと世界のどこを探しても二人はいない。
     指紋や遺伝子の一致よりも細やかに、心の波紋が重なってしまったのだ。
     柚葉の柔らかな頬に、温かい手が触れて来る。
    「私も同じ気持ちだよ。洋、大好き」
     目を瞑り、捧げんばかりに顎の角度を上に突き出す。
     すぐに唇が重ねられ、甘いキスに心を溶かされていきながら、うっとりと目を細め、永遠に酔いしれていくかのような時間に浸る。舌を突き出そうとして来る気配に、柚葉は舌を差し出して、お互いに絡め合わせて深いキスにまで発展した。
    「んじゅっ、ん、ずっ、じゅぅ――――」
     大きく開いた口で貪り、洋は舌を捻じ込んで来る。柚葉の舌は洋によって絡め取られ、流れ込む唾液の味を感じ取る。前歯をなぞり、歯茎を責めてくる舌先に、こちらからもと柚葉も同じことをやり、洋の口内を蹂躙する。
     逃げられないよう、後頭部が掴まれていた。
     柚葉とて、そうして洋の口が逃げないように手で掴み、自分自身の唇に洋の口を押しつけている。今度は自分が大口を開き、洋の唇を貪るように食べ始め、しばらくのうちに洋も改めて貪った。
    「んずっ、じゅむっ、ずっ」
    「ずずっ、にゅじゅぅ……ちゅっ、チュゥ……」
     攻め合っているうちに、洋の手は動いていた。肩に乗せられた手の平から、胸を揉みたい意思を感じ取り、柚葉は少し後ろへ引く。胸板へ密着させていた乳房を離し、途端に洋の手が取りついた。
     指導を受けた経験があっても、本当に緊張してしまっている。まるで慣らさず、いきなり胸を揉まれていたら、どれほど驚き、戸惑うことになっていたか。
     とても静かに、柚葉は胸を揉ませていた。
     キスで二人の世界に没入していることもあり、幸せに身を浸している表情で、柚葉の方からも洋の胸をまさぐり返す。その手をしだいに下へやり、腰を撫で、腹を撫でていきながら、ズボン越しの膨らみに這わせていた。
    「柚葉……」
     嬉しそうに、気持ち良さそうに、目を細めて洋は快感に浸っている。
    「洋……」
     今一度、唇を絡め合わせる。
     そこに何かの合図でもあったかのように、二人はおもむろにシャワールームへ進んでいき、まずは洋が柚葉のカーディガンを脱がせていく。
     次は柚葉が洋のシャツをたくし上げ、剥き出しの上半身はなかなかに筋肉で締まっている。インドア派としては意外な逞しさにドキリとして、柚葉はムラムラと胸板は腹筋を眺めてしまう。
    「スカート。たくし上げてみて?」
    「……うん」
     気恥ずかしく染まり上がって、柚葉はワンピースのスカート丈を持ち上げる。あらわとなる白い脚から、続いて純白のショーツが洋の目を奪い、熱意を帯びた視姦に柚葉は隠したそうにモジモジする。
    「可愛いよ。柚葉」
    「も、もう……!」
     怒ったような照れた顔で、ショーツを隠してしまう柚葉だが、ワンピースを脱がそうとしてくる洋の手つきに、大人しく身を委ねる。
     下着姿になったところで、洋は柚葉を抱き締めた。
     それはブラジャーのホックを外すためだと、柚葉にはもうわかっている。柚葉の手も、自然とベルトの金具へ這っていき、指先でカチャカチャと弄って外しにかかる。
     お互いが下着一枚。
     あとは順番に最後の一枚を下げ合って、恥ずかしながら、柚葉と洋は全裸となった。
     シャワールームへ入っていき、プレイが始まる。
     指導を受けている関係上、二人は処女でも童貞でもない。だというのに二人の心は新鮮で、生まれて初めてセックスを行う心境そのものの、ウブな恥じらいに満ちた時間を過ごしていった。