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  • 羞恥の闇のゲーム ~杏子の運命~

    第1話 ファーストゲーム
    第2話 五人との邂逅
    第3話 連続デュエル
    第4話 パンチラダンスゲーム
    第5話 羞恥のクイズバトル
    第6話 闇の少年
    第7話 風の平均台渡り
    第8話 ダンス再び
    第9話 おぞましいお触り
    第10話 白濁回避ゲーム
    第11話 そして陵辱


  • 第11話 そして陵辱

    前の話 目次

    
    
    
     杏子への運命の罰ゲームが確定した。
     その後、闇の力に包み込まれて、全身を漆黒の霧に覆われたかと思いきや、次に杏子が立っていたのは浴室だった。
     力で転送されたわけだった。
    『ほら、シャワーを浴びていいんだよ?』
     音声が届いて来て、その直後に杏子は気づく。
    「いやぁ! なによこれ! 服はどこにいったのよ!」
     体表の白濁だけを残して、体操着もスパッツも、さらにはショーツも消えている。杏子はとうとう丸裸となり、周囲には裸を隠してくれるものが何もない。あるのは湯船とシャワーのみ、タオルがあるとしたら外の脱衣場だった。
    『綺麗になるまで出られないよ? 僕の力で、戸は開かないようにしておくから、しっかり綺麗にしてきてね?』
    「あ、アンタ……!」
    『シャワーが済んだら、僕と愛し合う時間の始まりだ。杏子ちゃん? 君はもう僕から逃げられないから、覚悟を決めておこうね?』
    「くぅ……!」
     少年の持つ途方もない魔力に対して、杏子には逆らう手段がない。
     向こうがそう言ったからには、シャワーを無視して外に出ることすら、決してできないわけなのだろう。
     杏子はノズルを回し、シャワーを浴びた。
    (いいわよ! どっちみち、こんなままじゃいられないもの!)
     怒りを帯びた眼差しで、全身を熱いシャワーで濡らす。
     気持ち悪い粘液が流れ落ち、排水溝の中へと消えていく。身体の表面から白濁のコーティングは流れ落ち、髪の隙間に詰まっていたのも薄れていく。これだけ気持ち悪かったのに対し、しだいしだいに清潔になっていくのは、それに関して言えば心地良い。
     もっとも、シャワーを済ませ、脱衣所のタオルを借りて身体を拭いた後、出て行く先で待っているのはベッドルームだ。
    
    「やあ、杏子ちゃん」
    
     体にタオルを巻いた杏子の前で、少年の方は全裸でベッドに座っている。
    「……最低よ。アンタ」
    「闇の生け贄になるのと、僕のペットとして飼われるのと、どっちがいい?」
    「どっちも願い下げよ!」
    「それは駄目だね。君は負けたんだから、きちんとどちらかを選ばないと――っといっても、オススメはペットの方だよ? ほら、生きてさえいれば、またいつかチャンスがあるかもしれないんだから」
     用意された選択肢から、嫌でもどちらかを選ばざるを得なくさせ、マシな方と最悪な方を提示する。それは選ぶなどというものでなく、ただの強制でしかない。
    「さあ、タオルを外してごらん?」
    「……嫌よ」
    「じゃあ、魂を僕に吸収されてみる?」
    「……っ!」
     杏子は怒りと屈辱に歯を噛み締め、少年を鋭く睨む。
    「ほら、タオルを外そうね」
    「…………わかったわよ」
     恥辱に震えた指先で、杏子は胸元からタオルを外す。白いタオルがばっさりと、足下に広がり落ちた時、少年の前には杏子の裸体が立っていた。
     張りの良い乳房の先で、乳首が突起しきっている。
     ささやかな陰毛の下では、ワレメが愛液を分泌しつつ、クリトリスもやはり突起している。
    (なんでよ……なんでこんな奴なんかに…………)
     途方もなく膨らむ屈辱感で、頭が内側から壊れそうだ。
     杏子はベッドへ上がっていき、鋭く睨む視線を変えないままに横たわる。これから自分が何をされ、どう扱われるか。わかっていながら、それを避ける道が存在しない。この気色悪い男に身を差し出し、抱かれるより他はないのだ。
    
    「杏子ちゅわぁぁぁぁん!」
    
     少年は食いついてきた。
    「やっ! ちょっ、ちょっと! いきなり……!」
     餓えた猛獣の勢いで、少年は襲いかかった。
     その凄まじさに杏子は反射的に手で押し退け、抵抗をしてしまうが、暴れたせいで闇の力を行使されたら、などという計算は頭にない。勢いよくやって来られた驚きで抵抗に夢中になり、杏子はひたすら腕力で押し返そうとしているのだった。
     だが、少年の小太りした体重は押し返せない。
    「ちゅーしようね! ちゅー!」
     分厚くねっとりとした唇が迫る。
    「いぃぃ……!」
     杏子は引き切った戦慄の顔で、必死になって力を込めるが、少年の顔はそれでも接近し続ける。着実に距離の詰まってくる野獣をとうとう食い止められず、杏子にできる抵抗は、せめて唇だけは奪わせず、顔を背けることだけだった。
     頬に唇が乗せられる。
    
     ぞわぁぁぁぁ…………!
    
     鳥肌が広がっていた。
    (いやぁぁ……気持ち悪い……本当にキモイ……こんなの……耐えきれるわけないじゃない……)
    「へへへっ、杏子ちゃんにチューしちゃった。嬉しいなー」
     今度は唇を奪おうと、両手で頬を包んで来る。強制的に前を向かせてくる腕に対して、杏子はそれを引き離そうと手首を掴む。しかし、どんなに力を込めたとしても、やはり抵抗はしきれない。
    「やめて! やめなさい! 嫌ってば!」
    「だーめっ、チュー!」
     ついに唇は重ねられ、杏子のファーストキスは奪われた。
    (なんでよ! なんでこんな奴なんかに!)
     唇が離れていくと、杏子は恨めしくてたまらない気持ちを視線に宿し、少年を鋭く睨みつける。呪いたい思いでいっぱいの杏子に対し、少年は何かを得てやった満足感で大いにニヤけ、今度は乳房を揉み始める。
    「ほらほら、僕に身を委ねないと!」
    「だ、だめ……! んんぅぅ……! んっ、んぁ…………!」
    「おっぱいが気持ちいいねぇ? いっぱいもんであげるからね?」
    「やぁ……やめっ、あぁっ、あぁぁ……!」
     乳首をやられることで、激しい快楽電流が迸る。
    「媚薬がよく効いているねぇ?」
    「び、媚薬って……」
    「ほら、水を飲んでもらったでしょう? あれだよ。あれ」
     体操着やスパッツに着替える直前の、あの時に出されたコップらしい。
     嫌でも感じる状態に貶められ、少年の思い通りに喘ぐ体にされたとわかるなり、杏子はますます屈辱を感じていた。
    (人の体になにしてくれてるのよ!)
     その憤りも、乳首への刺激一つでかき消される。
    「んあっ、やぁっ、やん!」
     つままれ、弾かれるだけで、こんなにも声が出るのだ。
    「じゃあ、アソコを触ったらどうなるのかな?」
    「だめ……!」
     杏子は少年の手首を掴み、必死に食い止めようとしていた。胸だけでも驚くほど気持ち良く、声が上がってしまう状態で、それ以上に敏感な性器をやられたら、もう正気ではいられない恐怖があった。
    (だめ! だめだめ! そこだけは触らせられないわ!)
     右手を下に移そうとする少年と、それを食い止めようとする競り合いで、杏子はさらに太ももを閉じ合わせる。脚の力でぎゅっと封じ込めることで、手を差し込める隙間さえなくそうとしていた。
    「しょうがないなぁ? なら、こうしてみよっか」
     少年は指をパチンと鳴らす。
    「きゃあ! なによこれ!」
     その瞬間、杏子は開脚していた。
     M字開脚が出来上がり、そのポーズを杏子自身の意思で変えられない。足首に闇のリングが生み出され、空間に固定されているのだ。
     両手だけが自由だった。
     杏子は大慌てで両手をアソコに被せて覆い隠し、力を込めて、頑としてその下は見せまいと意思を固める。鋭い視線で睨み付け、未だに意思の強さや怒りをあらわにしてくるが、目尻からはさすがに涙が流れ始めている。
    「杏子ちゃん? ここから先は、そうだね。両手だけが自由に使えるっていうルールにしようか。アソコを最後まで守り切れれば本番は勘弁しよう。でもね? 気持ち良すぎて手から力が抜けたり、おチンチンが欲しくなっちゃったりしたら杏子ちゃんの負けってことだ」
    「なんなのよ……どうしてそんなゲームを思いつけるのよ……」
    「じゃあ、スタート!」
     少年は杏子の意思など確認せず、そうだと決めたらやり始め、まず真っ先に狙うのは乳房であった。ガードのない乳房を揉みしだき、乳首も含めて攻め始めると、杏子はその快感に髪を振り乱す。
    「やっ! あぁっ、やっ、やんっ、だめ……!」
    「駄目じゃないよ? ほらほら、ほらほら!」
    「やぁぁ……! あっ、あくっ、うんっ、んぅっ、んっ!」
     杏子は喘ぎながらも右手を動かし、右手だけで手首を掴んで抵抗するが、その腕力では少年の腕を引き離すことは敵わない。
    「ほーら、乳首を集中攻撃だ」
    「やぁぁぁぁ……! やっ、あっ、あぁっ、あっ、あぁつ、だめぇ……!」
     少年は乳首を上下に転がした。
     指で擦り続けることで、まるでレバーを動かし続けているように、乳首は上下に角度を変え続ける。そのタッチが快楽電流を生み出して、乳房どころかその周囲にも拡散していく。背骨を伝った快楽信号が腰にまでやって来て、やられているのは乳首なのに、アソコさえもがウズウズと熱を上げ、体の方は触って欲しさで愛液を垂れ流す。
    (なんで! こんなキモイので気持ち良くなんなきゃいけないのよ!)
     左手に覆い隠したその下で、愛液はみるみるうちに量を増やして、まだ触れてもいないうちからシーツに染みを広げている。
    「今ならどうかな?」
     少年はおもむろに左手首を掴んでいた。力任せに引き離し、杏子の手の平と性器のあいだに糸が引く。
     急にガードを溶かされて、慌てた杏子はすぐさま右手をアソコにやるが、それよりも先に少年の指が触れ、ワレメを撫で上げているのだった。
    
    「――――――――っ!?!?」
    
     想像を絶する快楽で、まるで背骨が弾けたように身体が弾んでいた。
    (え……なにっ、いまの…………)
     放心しているあいだにも、少年の指は遠慮無しに侵入する。隙だらけとなった一瞬のうちに穴へと潜り、中指がピストンを開始していた。
    
    「あぁああああ! あっ! やぁぁあっ! やあっ、やめて! やめっ、あっ! あん! んんんんんん!」
    
     甲高い喘ぎであった。
     杏子は無意識のうちにピストンを食い止めようと、どうにか手だけは下にやる。少年の手首を掴み、愛撫を停止させようと力をかけるが、感じすぎた体に上手く力が入らない。ただ掴んでいるだけの、弱々しい握力にお構いなく、少年は杏子を責め続けた。
    「あっ! やっ、やん! やん! やん! やっ、あぁぁっ、あん! あふっ、はっ、はぁっ、はふっ、んんんん!」
     激しく髪を振り乱し、体中をビクビクと弾ませている。背中がしきりに浮き上がり、そのたびに落下でシーツに叩きつけ、それが乳房に振動を与えてプルプル揺らす。
    「ではそろそろ」
     少年は肉棒を構えていた。
     杏子のワレメに亀頭をぶつけ、そのまま押し込み――――
    
    「いやぁあああ! やめて! 駄目! それだけは! やっ、あぁ……あぁぁあああああああああああああああああ!」
    
     杏子は絶叫していた。
     それだけは阻止したかった必死さも虚しく、呆気なく肉棒が収まることで、あとは快楽に飲まれるだけだった。
    「あぁああああ! あん! あぁぁっ、あぁぁぁっ!」
     少年は腰を振り、快楽に浸った顔で杏子を見下ろす。
     ピストンをぶつけることで、突き上げるように身体を揺らす形となり、それが乳房を上下に震わせている。
    「おおおっ、ほほっ、気持ちいいなぁ! 杏子ちゃんの中は!」
    「嫌! 嫌っ! 抜いて! 早く抜きなさいよ! あぁぁぁああ!」
    「焦らなくても、たっぷり出してあげるからね?」
    「いやあああ! あぁぁっ、あああん! あっ、あぁ……あぁぁああ……!」
     少年の射精感が高まった時、杏子はぬるま湯のような温度を膣内に感じていた。
    
    「あ……あぁ……なんで……中に出すのよ…………」
    
     少年は肉棒を引き抜く。
     すると、注がれた精液がこっぽりと溢れ出し、シーツへと伝って流れ落ちていた。
    
         *
    
     その後、杏子と不良五人組は行方不明となる。
     男達は魂を生け贄にされ、少年が生き長らえるための糧となる。
     そして、杏子が辿る末路は性奴隷だ。
     誰も知らない空間で、杏子は今日も明日も少年に抱かれ続ける。
    
    
    


     
     
     


  • 第10話 白濁回避ゲーム

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     少年の決めたルールによって、杏子は十分間のあいだ絶頂せず、よって最後のゲームステージに立つこととなる。
     そして、それは最高に悪趣味なものだった。
     杏子は今、プールの上にサークル状の台を浮かべて、そこに立たされていた。服装は先ほどのものをそのまま引き継ぎ、アソコも未だ濡れたまま、だからショーツの透けを気にして両手で股を隠している。
     水面に浮かべた物に立つのはバランスが危うい。
     少しの重心のずれで大きく傾き、呆気なく倒れてしまうのが普通だが、杏子の乗るサークル状の台は傾きが少ない。直径二メートルに及ぶ大きさで、その重量がしっかりと水面に食い込んでいるせいなのか、多少は動き回る余裕がある。
     だが、何も台の安定感ばかりが理由ではないだろう。
     プールの水が普通ではない。
     白濁によって満たされたプールは、つんとした青臭い香りを立て、杏子の鼻孔を刺激してくる。この液体は一体何なのか、杏子にはピンと来ていないが、男性ならば何を連想するかなど言うまでもない。
     その液体の粘性で、水面に浮かべたものの傾きは普通よりも少ないわけだ。
     しかし、杏子が本当に悪趣味だと思っているのは、この白濁の液体などではない。
    (なんなのよあれ……)
     杏子を囲む大砲の数々だ。
     もちろん、本当の大砲などではない。
     このプールの形もまたサークル状で、陸地にはぐるりと一周するように大砲は並んでいるのだが、それら全てがペニスを象ったものなのだ。
     歴史上の大砲のイメージそのままに、大きな車輪を付けながら、亀頭という亀頭の数々が杏子へと向いている。
    
    『射撃ゲーム! ルールは簡単! 十分間落ちずにいること! 落ちさえしなければ、大砲の弾をいくら浴びてもセーフ! ただし、当たれば当たるほど、どんどん服が透けていくから、なるべく避けた方がいいんじゃないかなー』
    
     究極的には、何も気にせずケロっとしている覚悟さえあれば、弾の全てを体で受け止めても構わないわけである。
    『補足として、しゃがみ込むのはルール違反! でも避けたい時もあるだろうから、五秒以内に立ち上がればセーフとするよ!』
     最初に提示されたルールだけなら、最後まで頭を抱えて蹲り、サークルの中心で小さくなっていれば良いという解釈も可能であった。しゃがむのは五秒までというルールを追加することで、それは封じられたわけである。
    『ではスタート!』
     ゲームが始まる。
    
     ドピュン!
    
     発射される白濁の塊は、意外にも弾が小さく、大きさを例えるなら野球かテニスボールほどになる。その弾速も人間の視力で終える程度のものであり、避けることは十分に可能だった。 ただ、左右への移動でかわせば、土台の傾きが怖い。
     一発目をかわした杏子は、すぐさま中心に位置を戻す。
    
     ドピュン! ドピュン!
    
     発射に法則性はない。完全にランダムだ。
     この二発も杏子が見ている前から発射され、だから横への移動やしゃがみ姿勢でやり過ごすが、簡単なのは最初のうちだけである。
    
     ドピュン! ドピュン! ドピュン!
     ドピュン! ドピュン! ドピュン!
    
     周囲全てを大砲に囲まれており、杏子は四方三百六十度の全ての角度からの砲撃を警戒しなくてはならない。だから忙しく身体の向きを変え続け、周りを忙しく確認し続けていない限り、回避を続けることは不可能だ。
     それでも、全ての弾道が上半身を狙ったもので、しゃがんでいれば決して当たらないことに杏子は気づく。
     なるべく、しゃがみ姿勢を多用した。
     五秒のルールに気をつけながら、何度も繰り返ししゃがむことで、頭上に弾を通過させ、最初の二分は一発も当たらない。
     だが、時間が経過した時だ。
     大砲はそれぞれ角度を微調整するようになっていた。
     下半身も狙われるようになり、さらには避けた先でも弾が来るような展開が増えてきた。最初のうちは、狙う箇所すら中央狙いのみだったが、端に逃げたところを狙い撃つ動きが加わることで、回避はしだいに困難になっていく。
     五分経過。
     すると、一発発射してから、次のもう一発が発射されるまで、その間隔も短くなっていた。
    
    「いやぁ!」
    
     とうとう背中に当たった。
     それも、ねっとりとした粘液の塊が染み込む気持ち悪い感触に、指先にかけてまで細やかに怖気が走る。
    「む、無理……!」
     この気持ち悪い感触を二度も三度も浴びるなど耐えきれない。
     杏子は必死になった。
     しかし、慌てて動けばその分だけバランスを損ない、台が傾き転倒しかける。誤って端へ行きすぎた時、鍛えた体幹がなければ間違いなく白濁のプールに落ちていた。
    
     べちゃ! びちゃ!
    
     避けた先を狙い撃つ精度が上がり、胸と腹にそれぞれ当たる。
    『透けたねぇ! おっぱい丸見えだよ!』
    「いやぁぁ!」
     杏子は両手で勢いよく乳房を隠し、恥ずかしさでしゃがみ込む。
    『おっと! 五秒ルール!』
    「ううっ!」
     杏子は急いで立ち上がり、腕のクロスを固めたままに動き回るが、次の一発が避けきれずに脇腹を掠めた。また次の一発が肩を掠めた。
     さらにいくつかの大砲が角度を上げ、ほとんど真上を向いた。
     天目掛けての発射の意図は、上空を目指した弾が宙高くで勢いを失い、落下へと移行することで、上から降らせる形で杏子を狙うことである。発射から着弾までに時間がかかり、正確に狙い討つことは不可能だが、杏子は周囲三百六十度に加え、天井にまで意識を割かなくてはいけなくなる。
    
     びちゃ! べちゃ! ぶちゃ!
    
     空から降って来た三発は、そのどれもが杏子に当たることはなく、むしろ大きく外した位置で粘液を広げていた。
    (う、嘘……この上、動かなきゃいけないの?)
     杏子は裸足だ。
     素足で粘液の塊を踏まなければ、今までの回避はできなくなる。
     砲身の微調整を見た杏子は、発射に合わせてさっと動くが、その先にある粘液を早速踏みつけることになった。
    (き、気持ち悪い! 滑る!)
     杏子はひどく顔を顰めた。
     感触のおぞましさは言うまでもなく、その上で滑り、バランスを崩しかける。杏子はバランスを維持するため、重心の調整を行うものの、これが隙となった。避ける暇のない一瞬を狙われて、尻に弾が弾けていた。
    
     びちゃ!
    
    『はーい! お尻丸見えー! パンツが綺麗に透けちゃったねー!』
    「いやぁぁ!」
     杏子はより激しく赤らんだ。
     これでもう、先ほどの愛液と加えることで、スパッツはショーツを隠す意味を成さなくなった。
     時間が経てば経つほど、杏子の足下は粘液にまみれている。
     空から降り注ぐ粘液の雨もそうだが、今まで身体に当たったり、掠った分も、飛沫によって微妙ながらに周囲を濡らす。
     ついには台の表面全体を白濁で染め上げた状態に至り、もはやどこに足を置いても気持ち悪い感触は染み込んで、つるつると滑りもする。
    
     ぶちゃ!
    
     頭上に綺麗に命中して、頭から白いペンキを被せたように、頭皮に染みた白濁は髪の隙間を伝って流れ落ち、うなじや額に付着する。
    「やぁぁぁ!」
     悲鳴を上げた時だ。
    
     びちゃ!
    
     顔面にまで命中した。
     顔をべったりとまんべんなく、隅々までコーティングしたように、白濁に濡れていた。
    「無理……! 無理……!」
     そして、顔に当たったことで反射的に目を瞑り、周囲への注意がおろそかになる。目に染み込むことを気にして、まぶたに力を込めてしまうことも手伝って、この隙は実に大きなものとなっていた。
    
     べちゃ! びちゃ! ぶちゃ!
    
     集中砲火を浴びていた。
     全ての大砲が杏子に向き、天を向いていたものも直接狙いに切り替わり、一斉に粘液を解き放つ。後頭部に、背中に、尻に、足に、ありとあらゆる場所に粘液が命中して、もはや全身がドロドロだった。
     白濁の風呂に浸かった後、そのまま出て来た直後と例えるしかない。
     体操着もスパッツも、衣服の全てがねっとりと粘液を帯び、吸水しきれない粘液がなお体表に弾けると、それは表面で滴となって流れ落ちる。
    「やめて! お願いもうやめて!」
     杏子は集中砲火からヨロヨロと、情けない足取りで逃げて行き、中央から端へと動いていく。台が体重の影響を受け、沈み傾き、杏子は慌ててバランスを取ろうとする。そして、今までの杏子なら、問題なくそれをこなせた。
     しかし、足下が白濁だらけで、滑りやすくなっている状況である。
     つるっと足が滑り、杏子は尻餅をついてしまう。
     その勢いで台はさらに傾いて、角度のついた上から滑り落ちる形となり、杏子は白濁のプールの中へと落下した。
    
     ……ゲーム敗北。
    
     ツンとした青臭い香りの中を泳いで、必死でプールサイドに上がる杏子は、一体どれほど白濁まみれかなど言うまでもない。
     もはや体表を全てコーティングした勢いだった。
     ヌルヌルでない場所など、一箇所たりとも残っておらず、その様子は当然のようにカメラに収まっている。
    
    
    


     
     
     


  • 第9話 おぞましいお触り

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    『あらあら、負けちゃったねぇ? だけど運命の罰ゲームを与える前に、杏子ちゃんには最後のチャンスを与えちゃおっかな? 敗者復活ゲーム!
     た・だ・し!
     とびっきりエッチな内容になるから、覚悟してちょーだいね?』
    
     チャンスを与えると称した辱め準備として、杏子には体操着と白スパッツが与えられた。
     加えて、何故だか一杯の水を飲むように言われ、杏子はコップを手に取っていた。
     さらにショーツが返却されるが、それを手にとって思い出すのは、あの少年がクロッチ部分をべろりと舐めていることだ。今は乾いていても、一度はあの唾液が染み込んで、穿けばそれが杏子のアソコに接触する。
     間接的に舌が触れてくるのかと思ったら、気持ち悪くてたまらない。
     かといって、闇の力を相手に逆らうのは限界があり、それに他の下着が無い以上、背に腹も変えられない。
     杏子はノーブラで体操着を着た。
     そして、ショーツと白スパッツを穿き、スカートは手放す。
     指定通りの服装になったところで、少年の案内通りにエレベーターに乗って階を移動し、廊下を進んで部屋へと入る。
     それを見た瞬間、
    
     ぞわぁぁぁぁぁ…………!
    
     これまで以上の鳥肌に襲われた。
     全身余すことなく悪寒が走り、まるでゴキブリかナメクジの巣窟にでも入ってしまったような、気持ち悪さ一つで絶望感を覚えるほどの状況に泣きたくなった。杏子にとって、これ以上のおぞましい光景などなかった。
    
     部屋中にびっしりと、壁にも天井にも余すことなく真崎杏子の写真が貼られていた。
    
     大きく印刷してポスターに変えたものが何枚も、小さな写真が何千枚も、壁と天井の素材が一片たりとも見えなくなるまで、本当にみっしりと詰め込まれている。
     それらは杏子の学校生活を隠し撮りしたものであったり、パンチラを撮ったものであったり、ゲーム中のものであったり様々だ。
    
    「さあ、入っておいでよ」
    
     そこに少年本人は立っていた。
    「あ、アンタ! 気持ち悪いのよ! なんなのよこれは! こんなのありえない! ちょっとは常識ってものがないの!?」
    「可愛い反応をするんだね? 僕はますます杏子ちゃんを大好きになってきたよ」
     怒る杏子に対し、少年は満面の笑みを浮かべてくる。
     その猫なで声に引き攣って、杏子は思わず後ずさりまでしていた。
    「ほらほら、早くおいでよ」
     冗談じゃない。入りたくない。
     ここまで気持ち悪い部屋を見せられて、その上で入って来いなど、まさにナメクジの巣に入ることを強要されるかのようなおぞましさがある。
     だが、杏子は進んだ。
     そうするしかないからだ。
     他にどうしようもないからこそ、杏子は肌中の戦慄を堪えて部屋に踏み込む。床を踏んだだけでもぞわぞわと、全身に寒気が走り、気色悪さだけで身が竦む。恐怖で動けなくなったり、怯むとはよく言うが、気持ち悪さによってそうなりそうだった。
    「ふざけないで……」
    「おっと、逃げちゃ駄目だよ? 杏子ちゃんはこれから僕と一緒に遊ぶんだからね」
     少年は杏子に手をかざす。
     たったそれだけのことで、杏子は動きの自由を奪われた。まるで目には見えない手錠がかかったように、両手が勝手にくっついた上に吊り上げられた。手錠にロープをかけて天井に引っ張るかのように、杏子の両腕は強制的に真上へ伸びていた。
    「なっ、なにするのよ!」
    「ルールを説明するよ?」
    「ちょっとはこっちの話を聞きなさいよ!」
    「いいかい? このゲームは敗者復活ゲームだ。ゲームをクリアしたら、最後にもう一回だけ僕との対戦メニューを用意する。では肝心の復活ゲームの内容だけど、これからいっぱいお触りするから、絶頂したら負けってどうかな?」
    「ふざけてるの……?」
     杏子は凍りついていた。
     触る? 絶頂?
     そして、今の杏子は身動きが取れない。慌てて気づくのが遅れたが、では両足はどうだろうかと思って試してみるも、足さえ地面に根が張ったように動かない。
     迫る少年に対して、杏子が出来るのはただ身を捩ることだけだった。
    
    「制限時間は十分! 絶頂我慢ゲームスタートだ!」
    
     少年がニヤニヤと躙り寄る。
    (来ないでよ…………)
     少年の手はまず真っ先に、体操着の胸へと伸びてくる。今にも乳房を触られそうな杏子の心境は、ナメクジを体にくっつけられそうな危機感によく似ている。ゴキブリ、ミミズ、触れないものが接触しようとしてくる。こんな形での絶体絶命のピンチに陥って、抵抗の手段もない。
    「あはっ、柔らかいおっぱいだなー」
     とうとう少年の手が乳房を包み、体操着越しに触り始めた。
    (いやぁぁぁぁ! 無理! 無理無理! 無理よこんなの!)
     まるで一瞬にして腐食が広がり、身体の一部が黒く腐り落ちてしまったようなおぞましさが乳房に充満していた。胸どころか、そこからさらに全身へと、細胞を腐敗させるための信号が神経に乗って行き渡り、体中のいたる箇所が犯されるかのようだ。
    「乳首が立ってるね?」
    「っ!?」
    「気持ちいいんだ?」
    「気持ちいいわけないでしょ! なにふざけてるのよ! 冗談も大概にしなさいよ!」
    「でもほら、乳首がこんなに硬くなって、服の上からもばっちりと目立ってきてるよ? これは杏子ちゃんが僕の手で感じてくれている証拠じゃないか」
     少年は両手で揉みしだく。
    「だからふざけないでってば! ありえないこと言わないで!」
    「じゃあ乳首を刺激してみようかな」
    「くっ! くぅぅぅ……! んっ、んあっ、あぁ…………!」
    「ほーら、気持ちいい」
    「や、やめて………………」
    「次はお尻を触ってあげよう」
     少年は背後に回り込み、まるで電車の痴漢がそうするように、べったりと手の平を乗せて撫で回す。スパッツの生地を摩擦するスリスリとした音が立ち、杏子の尻は腐り始める。細胞が何かに犯され、死んでいくような感覚がしてならなかった。
    「お尻も大きくて可愛いね? スパッツがぱんぱんに膨らんでいて、とってもセクシーで、僕はもう既に勃起してしまっているよ」
    「うるさいわよ! せめて黙りなさいよ!」
    「気持ちいいのを誤魔化したって、杏子ちゃんが僕の手で感じている事実は変わらないよ? ほら、次はアソコを触ってあげる」
     少年は正面に回って来る。
     ニタニタと気色悪い笑顔で杏子を見つめ、視線だけですら怖気がする。単に見つめられるというだけで、何か気持ちの悪いネトネトとした液体でも塗られるような、それほどまでに嫌な感覚がしてならない。
    「杏子ちゃんのオマンコの様子を見てみようね?」
     アソコへ手がやって来る。
    「いやぁぁ……! や、やめて……! 本当にやめて……!」
     全身が震えていた。
     極寒の地にでも立たされているように、あるいは全身が痙攣するように、杏子は汗を噴き出しながら涙目で震えていた。
    「へへへっ、腰が反応してるね? アソコも濡れてきてるよ?」
    「濡れてなんて……馬鹿なこと言わないで………………」
    「ちゃんとアソコを意識してごらん? 僕の指にはもう水気が吸いついてきているんだ。杏子ちゃんはもう間違いなく愛液を漏らし始めているんだ」
     ねっとりとした声で、まるで力ずくで顔の方向を変えられるかのように、性器へと意識を引っ張られる。
    (…………いやぁ!)
     杏子は心で絶叫した。
     感じている自覚はなかった。乳首も立っているのだが、杏子自身には本当に自覚がなく、気持ち悪さの方に夢中で快感に気づいていなかった。
     だが、本当に濡れているのだ。
     ショーツの内側が汗ばんで蒸れるかのように、ぐっしょりとなり始め、さらに愛撫が続いていることで、愛液は量を増やし続ける。ショーツが水分を吸収して、それがスパッツにまで及んでいるうちに、もう完全に無自覚でいることはできなくなった。
    「ほら、自分で確認してごらん?」
     少年は指をパチンと鳴らし、浮遊カメラと浮遊モニターを操作する。
    
    「いやぁぁぁぁ…………!」
    
     杏子は絶望の顔を真紅に染め上げ、涙目で頭から煙を噴き出す。
     モニターに映った杏子の股は、白いスパッツを完全に透かせきり、ショーツが完全に丸見えとなっていた。まだ水気の及んでいない、太ももの部分は透けていない。きちんと白い生地に隠され、肌色の気配すら見えない。
     濡れない限り、透けることのない生地だ。
     逆に言うなら、濡れさえすればここまでくっきりと透けるスパッツは、もはやショーツを隠す意味合いなど持たなかった。
    「杏子ちゃん? そういえば、僕はこのパンツのアソコをいっぱい舐めたりキスしていたから、僕の唇と杏子ちゃんのアソコが関節キスをしているね?」
     聞くに毛穴が広がって、背筋に氷が触れたような寒気と、細胞全てが怯え固まるような怖気が走る。
     どうしてここまで薄ら寒い台詞が言えるのかがわからなかった。
    (無理……本当に無理…………こんなのっ、痛みとか他の苦しみを味わう方がずっとマシじゃない…………!)
     杏子は本気でそう思っていた。
     これほどの拷問など、他にありはしないとさえ感じていた。
    
    
    


     
     
     


  • 第8話 ダンス再び

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     そして、またパネルがあった。
     指示に従い、エレベーターに乗って上へ進むと、やはり少年の決めた階で下りることとなり、その下りた先だった。ロックのかかったドアに、最初の入り口にあったものと同様の仕掛けで、ブラジャーの形をした凹みがあった。
    「これって…………」
    『そうそう。ここでブラジャーは外してね?』
    「なんなのよさっきから! もっと堂々と勝負できないの!?」
    『サレンダーするならしてもいいんだよ?』
     今は放送の声のみだが、ニヤニヤとした顔が目に浮かぶ。
    (冗談じゃないわよ……)
     杏子はより一層の憤りを抱え、頬に羞恥の熱を灯す。顎が震えるほどに強く歯を食い縛り、屈辱に歪んだ顔で両手を背中に回した時、浮遊カメラが真正面にやってくる。乳房が見える瞬間を中継して、杏子自身に見せつけようと、カメラはそこに浮かんでいる。
     手で叩き落とそうとしてもかわされる。
     杏子は仕方なくホックを外し、右腕でぎゅっと守りを固めながら、腕と胸の隙間から引き抜く形でブラジャーを脱ぎ去った。
     これで上半身裸になってしまった。
     さらに羞恥の炎は強まって、脳が内側で焦げようとするような、頭がどうにかなりそうな恥ずかしさに煙を上げる。本当に煙が出るわけではないが、そう例えるべきほどに、杏子の頭は熱でいっぱいになっているのだ。
     パネルにブラジャーをセットしたことで、次のステージへのドアは開かれる。
    
    『ダンスゲームでーす!』
    
     元気な声が聞こえてきた。
    『今度のダンスゲームはね? ちょっとした対戦形式なんだ。といっても、僕が踊るわけじゃない。僕はダンスとは別の方法で点数を稼ぎ、杏子ちゃんはダンスゲームで点数を稼ぐ。ポイントが高い方が勝ちっていうルールだ』
     少年はここまでルールを語ったところで、さらに細かな説明を加え始める。
     今回のダンスゲームは満点が1万ポイントらしく、最高点数に達するためにはフルコンボが必須らしい。
     さらにマークを潰すのも、全てパーフェクトである必要がある。
     流れてくるマークのタイミングに合わせてボタンを押すわけだが、音楽ゲームではその精度によって点数が変化する。最高精度でマークを潰せばパーフェクトとなり、つまりフルコンボの上でオールパーフェクトになれば、一万ポイントを獲得できる。
    『僕が点数を稼ぐ方法は――カメラの操作だ』
    「……最低」
     杏子は顔を顰めた。
     ダンスで揺れ動くスカートを狙い、アソコや尻の写真を撮った枚数×1000ポイントというルールで少年はポイントを稼ぐ。
     となると、11枚以上の写真が撮れれば、杏子がどう頑張っても1万ポイントしか取れないのに対し、少年側はそれ以上の獲得が可能になる。
     そこで、少年側のポイントも1万をマックスとして扱い、たとえ11枚以上の写真が撮れても、杏子のポイントを上回るものとはしないという。
    『ダンスゲーム用のカメラと中継用のカメラは別々とする。中継用は動画撮影を行っているけど、ゲーム用のカメラはタイミング良く写真を撮らなくてはいけない。お尻やアソコが見えたとしても、上手くシャッターを押せなければ、僕はポイントを取れないってわけだ』
    「よく考えたわね。こんな最低なルール……」
     杏子はダンスゲームの台へと上がっていく。
     不良五人組の時と同じで、足下には九マス分のパネルがあり、前後左右を囲む手すりにも、手押し用のボタンがある。乳房を隠したままではポイントを稼げなくなる上に、ノーパンのスカートを押さえながら動けるタイミングも限られてしまう。
    (どうあったって、胸は絶対に見えちゃうじゃない……)
     そして、杏子のスカート丈は太ももの半ばあたりまでである。
     動き回るには向かない、飛び跳ねれば簡単に捲れる長さで、これから踊らなくてはいけないのだ。
     ダンスゲームの画面が起動する。
     中継用の浮遊カメラは四つ飛び、杏子のスカートを四つの方向から見張ったものを全て画面に映すため、四分割で流されている。そんな中継映像の真上にマークが流れるため、杏子は嫌でも画面を見ていなくてはいけないのだ。
     収録楽曲のメロディーが流れ始める。
    
     このまま もう少し 歩こう 肩を抱き
     消えゆく夢を数え 枯れてく 仲間を見た
    
     歌詞のリズムに合わせたマークが降ってくると、最初のうちは両手のクロスを固めたままでもどうにかコンボは繋げられる。
     だが、手押しボタン用のマークはすぐに流れて来た。
    
     通い慣れた道に 迷い込むこのごろ
     闇がもう一人の 自分をつくる
    
     杏子はどうにか隠し続けようとしていた。
     生の乳房を晒す抵抗感に、まるで引力に吸い付けられているように、両腕とも固く胸から離れにくい。引力に逆らってでも動かすのは一本だけに留めることで、乳房を見せない状態をキープしていた。
     しかし、手押しマークの数が増えるにつれ、徐々に腕一本での対応は難しくなっていく。
     しまいには二つのマークを同時に押すべきタイミングが生じたことで、いよいよ杏子は乳房を曝け出した。
    「くぅ…………!」
     歯を噛み締め、悔しさを滲ませながら、杏子は乳房を解放した。
     すると、浮遊カメラの一つがポジションを変え、杏子の胸を映し始める。
    「――ッ! 最低!」
     これで杏子は自分自身の乳揺れを拝み続けることになる。
     上下左右のパネルを踏むため、絶えずステップを踏み続ける杏子の乳房は、たとえスカートの中身が見えずとも、プルプルと弾んでいる。身体の上昇に合わせて舞い上がり、着地の衝撃で小刻みに振動する。
    『大きなおっぱいだねぇ! ふひひっ、早く揉んであげたいなぁ!』
    「だ、誰が! 揉ませるわけないでしょ!?」
    『それはどうかな? 僕が勝ったら、杏子ちゃんには運命の罰ゲームが待っているんだよ?」
    「くぅ……!」
    『ほらほら、コンボが途切れちゃうよぉ?』
    「わかってるわよ!」
     顔中が歪んでいた。恥辱感で頭がどうにかなりそうだった。
     自分の乳揺れを見ながら、それを少年にも視姦されているのだろうと感じながら、その上でポイントを稼ぐ努力をしている。そして、頑張れば頑張るほど、体の動きがつい激しくなってしまい、スカートが浮きそうになっていく。
    『はーい! お尻撮れたー!』
     撮影成功の宣言がなされた時、四分割のうちの一つは、スカートのしっかりと捲れ上がった一瞬で一時停止となっていた。こんなにもはっきりと、お尻が丸ごと綺麗に露出してしまったのだと、真実を突きつけられることで頭がますます沸騰する。
    (こんなの……やりにくいってもんじゃないわよ……!)
     スカートが気になることは言うまでもなく、腕も乳房を隠すために使いたくて仕方がない。隙さえあればそうするのに、流れてくるマークのせいでチャンスがなく、杏子はステップを踏み続ける。
     胸とスカートと、マークにポイント、背景の中継映像、あらゆる要素に意識を取られ、集中力が分散する。足使いが緩やかになるタイミングでは、乳房の揺れがもっぱら気になり、手押しマークの数が減って欲しくて――少しでも隠せる時間が欲しくてたまらなくなる。
     横へ飛べば横へと、上に飛べば上下に、乳房はプルプルと角度を変えて震えている。弦がどんなに激しく振幅しても最後はピンと張った一本の糸の姿に戻るように、杏子の乳房もまたプルプルとした振動の末には必ず元の形状に戻っている。
     しかし、形状が戻ってから、また乳揺れを起こすまで、ほとんどあいだが開かないのだ。
     ステップの量が増え、飛び跳ねるような動きを余儀なくされる機会が増えると、杏子はしきりにスカートに手をやった。手押しボタンを押さずに済む、少しでもスカートを守るチャンスがあれば、杏子は前後のどちらかを押さえていた。
     それでも、スカートはたびたび捲れる。
     尻たぶが少しだけ見えた。危うくアソコが見えそうなほど、際どく丈が浮き上がった。また尻たぶの端が見えた。それら全てが杏子自身にも確認でき、いちいち羞恥を煽ってくる。見えるたび見えるたび、顔から火の粉が噴き出ていた。
     ようやく、曲は終盤に差し掛かった。
    
     僕を信じて 咲かそう
     just take my heart
     人生は続いてく
    
     最後のマークからポイントを取るために、杏子はパネルを踏みつける。
     総合ポイント『9587』――惜しくも満点とはならないが、マークは一つも取りこぼすことなく、今度はフルコンボを決めている。だが、やりにくくて仕方がないのを我慢しながらのダンスでは、いくつかのマークからパーフェクトを取り逃したわけだった。
     対する少年は何枚の写真を撮ったのか。
    
    『さあいくよ! まず一枚目!』
    
     ゲーム画面が切り替わり、画像を順々に表示していく写真発表が始まった。
    『お尻丸出し!』
     スカートのきっちりと捲れ上がり、お尻が丸見えとなった写真を見せつけられ、杏子は思わず右手をそこに置く。今頃になって隠しても意味はないが、わかっていても押さえずにはいられない。
     無論、左腕では乳房をぎゅっと覆っている。
    『尻たぶ半分の写真!』
    (くぅぅぅぅぅ…………!)
     今度はスカートの捲れ方が異なって、サイドに丈が投げ出されている。そこから尻たぶの片方だけが綺麗に露出していたのだ。
    『アソコ!』
    (そんな……!)
     杏子の手は前に回った。
     せめて、性器だけはどうにか守り切ったと思ったのに、画面にはばっちりと、下から覗き込むアングルでワレメと陰毛が表示されていた。浮き上がったスカート丈から、杏子自身には見えた自覚がなくとも、際どい位置から見上げるような浮遊カメラで、知らず知らずに撮られていた。
     お尻の下半分だけが見える画像が表示された。毛は見えないがワレメの見える画像が出た。それが何枚も何枚も、スカート丈の捲れる具合や角度によって、見え方の異なるものが繰り返し表示され続け、その枚数はゆうに十枚を超えていた。
    
    『十四枚! 僕の勝ちでーす!』
    「そんな…………」
    
     杏子は絶望に打ちのめされた。
     負けたということは、待っているのは闇の罰ゲーム……。