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  • 最終話「矢野小枝子 OL・二十四歳」

    前の話 目次

    
    
    
     身長百七十センチある長身美女の矢野小枝子は、しっとしとした潤いを持つ黒髪をロングストレートにして、乳房の上下にに微妙に触れる程度の長さに伸ばしている。保湿の聞いた肌も柔らかくもっちりして、Dカップの美乳に九十センチの巨尻を持つ。
     昔から言い寄られることの多い小枝子は、生半可な男が自分ばかりに群がることに、ほとほとうんざりとしていた。
     小学生の頃に告白を断り、中学生のときも他に好きな男子がいて拒み、何人も何人もフっているうちに難攻不落の城と呼ばれて、誰にも攻略不可能だという噂がクラス中に広まった。
     そのせいか、意中の男子に限って言い寄ってくることがない。
     我こそは挑戦者なりと言わんばかりの馬鹿ばかりが――実際に廊下を走って遊んだり、高校生のくせに鬼ごっこではしゃぐような連中だけが小枝子に告白を行って、結果に関係なく告白をしたという事実だけで、その男子はさも魔王に挑んだ勇者の扱いを受けていた。
     それは大学生になっても似たようなもので、いわゆるヤり目的のサークル連中が絡んだり、ナンパ上手のチャラい男が挑戦したり、いつになっても馬鹿しか来ない。
     おかげで告白をばっさり斬り捨て、蹴り飛ばすような台詞や態度の数々を会得していた。
    
     ――テストで満点でも取ってから出直してくれる?
     ――罰ゲームかしら? 好きで告白したんじゃないでしょう?
     ――あなた何回目? いい加減死ねばいいのに。
    
     小枝子自身も気づかないうちに、小枝子独自の雰囲気が完成していた。
     どことない冷気を身にまとい、ただ彼女が歩くだけで極寒の風が吹き抜ける。近寄る全ての男を跳ね除ける氷の女王は、ひときわクールな美女として崇められた。
     実際、それほどのルックスだ。
     何かを冷ややかに見下していそうな眼差しは、常にゴミ虫を眺める瞳をして、口を開けば誰かの心を情け容赦なく突き刺していく。
     商社のOLになってから、持ち前の優秀さで素早く出世した小枝子は、やはり部下に冷たい氷結の魔女か何かに見られており、いつしか誰も言い寄っては来なくなっていた。
     そうしたらそうしたで、仕事のできない駄目な新人に恵まれて、同じ内容を何度教えても失敗する使えなさにストレスを溜め込んだ。
     それでなくとも、社会生活はストレスのオンパレードだ。
     時間通りに終わらない会議に、定時に帰れるかと思えば舞い込む新たな仕事。眠い残業をこなした朝にはまた仕事。営業先はセクハラじみた中年達の吹き溜まりで、業績を出さなくてはならないプレッシャーも常にある。
    
     そんな小枝子を癒すのが、美容整体マッサージ店だった。
    
     豪奢な壁紙模様をライトアップした作りのマッサージ部屋は、高級木材を使用したフローリングとのセンスがいい。観葉植物の木も立てられ、とても雰囲気良く仕上がっている。
     高級ホテルにでも泊まったような気分になれるこの部屋で、照明を落とした薄暗い中でオシャレなアロマランプを焚いたなら、もう演出は完璧だ。
    「あー……いいわぁ……」
     アロマの香りにうっとりと目を細め、マッサージベッドに横たわる小枝子は、全裸の上に透明なローションを伸ばしてもらっていた。
     初めは水着を着て、ごく普通のストレスケアを受けていたが、セックス割のカード会員である小枝子は、やがてその手で水着を取られ、丸裸のまま凝りを取り除かれていく。
     首からつま先にかけて、濃密なローションが表皮をヌルっとコーティングした姿は、肌中がヌラヌラとした光沢を帯びて淫猥に輝いている。
    「割引っていうけど、事実上のサービスよね。これって」
     仰向けでアソコに愛撫を受ける小枝子は、気持ちよさに身を沈め、夢見心地の快楽を味わいながら愛液を滲ませる。
    「いえいえ、私も十分な役得ですから」
    「けど、気持ちいいわ。とても癒されるの」
     やはり小枝子も、性的な愛撫をサービスとして認識している。セックス割というおかしな提供内容に疑問はなく、せいぜい女性割引を少しばかり発展させた程度のものと捉えている。
    
     本当にいい店だわ。
     通い始めてからは肩や腰で悩まないし、前より綺麗になれた気がするし。
    
     とても素晴らしいマッサージ店として、快く思っているほどだった。
    「私も癒されますよ? 小枝子さんのような落ち着いたお客様と過ごす時間は」
    「あら、口説いてる?」
    「まさか。あくまで店をやる人間として、そう思っているだけですよ」
    「まあいいわ。そろそろ挿入してもらえるかしら」
    「かしこまりました」
     ズボンを脱ぎ、コンドームの装着を済ませた先生を受け入れようと、小枝子は薄っすらと恥じらいながらも脚を開いて、太い逸物を膣穴に咥え込む。
    「不思議なほど幸せだわ。どうしてかしら」
     まったりと揺すり動かすピストンは、静かに心地良く感じていたい小枝子のニーズに応え、やや控えめな快楽でくつろぎやすくしたものだ。
    「セックスは脳内で物質を分泌する作用があります。それが良い満足感を生むんですよ」
    「仕事の腕前っていうわけね。さすがだわ」
     ニチャリ、クチャリと、愛液とローションの交じり合った水音が、股のあいだでかすかな音を鳴らしている。
     両手でDカップの乳房を包み込むのは、マッサージなのか揉みたいだけか。どちらでも構いはしないが、優しくいたわる指遣いで乳首は硬く突起して、砂糖菓子のように甘い痺れが乳腺組織を満たしていた。
    「時間はたっぷりありますから、ゆっくりとおくつろぎになって下さいね?」
     甘いマスクの微笑みも目の保養となり、小枝子は存分にくつろぎの中に浸っていた。
     過去に恋人はいない。
     小枝子が知るのはここでするセックスだけだが、このマッサージ師と交わるのは、熱い湯船に長く浸かっていたい気持ちに近い。よく眠れる夜の心地良さにも近いだろうか。いつまでもこうしていたい気にさせられる。
     眠りゆくようにまぶたを閉ざし、自分の中に出入りしている肉棒と、揉みしだいてくる指の技巧に意識をやる。
    (もうこれって、マッサージが無くてもセックスだけでお金を取れそうよね)
     癒しやくつろぎの『時間』を与えるのも、物としての形はないが、ビジネス上の商品提供と解釈できる。この時間の作り方に長けた先生は、客の心を見抜いたプレイをするらしく、マゾヒスト相手には悪魔として振る舞うとか。
    (あ、乳首ね)
     両方の乳首が、それぞれ親指と中指の腹に挟まれ、クリクリと優しいつねりを受ける。少しだけ引っ張り、乳房の肉が伸びたところでいきなり離す。
    (これも気持ちいいわね)
     引っ張っては離し、引っ張っては離す責め方は、いかに乳房が振動して、プルンっとした弾みを披露しているかよくわかる。男としても視覚的に楽しめるのだろう。薄く目を開け、自分の乳房で遊ぶ先生の姿に満足してから、またまぶたを閉じ合わせた。
    「あぁぁぁ……あっ、あぁぁ…………」
     かすかで細い喘ぎ声が出てきている。
    「お加減はどうですか?」
     少しだけペースが速まり、振り込む勢いで乳房が上下に揺すられる。
    「ええ、丁度いいわぁ」
     答えるなり、可愛がるかのように頭を撫でてくれるのが、丁寧に扱われている実感を抱けて何となく嬉しい。
     乳房への愛撫も続き、五指で産毛を撫ぜるフェザータッチへと変わっていく。脇下の側面から乳首にかけ、下から上へとくすぐられる感触がローションの滑りを介している。マッサージとしての気持ちよさか、エッチな気持ちよさなのか、もう自分でもわからない。
    「そろそろ私も脱ぎますね」
     上一枚だけ残していた先生は、全裸となって覆い被さり、ほどよい厚みの逞しさをした腹筋や胸板を押し付ける。抱き合うような密着が、さらに小枝子の気分を高め、もっともっとこの時間に浸っていたくさせられた。
    「ねえ、お願い」
     自ら顎を突き出して、唇を差し出す形でキスを求める。
    「かしこまりました」
     唇が重なり、小枝子はうっとりとして舌を伸ばした。そのサインによってディープキスをしてもらう。大胆な獣のように捻じ込んで、じゅるじゅると貪り尽くすのは、昂ぶる小枝子の一層喜ばせることだった。
     先生が抱き上げて、対面座位へと体位は変わる。
    「あうぅぅ……!」
     より深みに肉棒が埋まってきて、小枝子はまた軽く喘いでいた。
    「たっぷりと密着して下さいね」
     そう聞いて、小枝子は先生の背中に両腕をまわし、あらん限りの腕力で締め付ける。相手の胸板に自分の乳房を潰しつけ、力強い密着の変わりにピストンは停止するが、背中へのマッサージに心地良さにとろけていた。
     背骨のくぼみをさーっと撫でていくように、お尻に手が下りていき、尻肉をがしっと掴まれたときには、ますます腕に力を入れて先生の背中を締め上げる。
     ぎゅぅぅぅっと、力強く抱きしめながら、小枝子は尻を揉まれていた。
    「あぁぁ……! わ、私っ、上になるわぁ……!」
    「かしこまりました」
     先生が仰向けとなり、小枝子は騎乗位で腰を上下に弾ませた。自分自身でペースを探り、少しは自分から先生を気持ちよくしてみたいと動いてみれば、その意思を組んでか下から突き上げることはなくじっとしていた。
    「んんぅっ、どうかしら? ねえ先生ぇ……気持ちいいぃ……?」
     自分がこんなに乱れるなんて、ずるいほど上手な愛撫でなければありえない。
    「はい。とっても!」
     満面の笑顔で答えてくれると、胸の内側がみるみるうちに満たされて、もっと尽くしてあげたくなる。先生がこういう仕事をしているのは、きっと女性が悦ぶたびに同じように嬉しくなるような、誰かを気持ちよくしてあげない尽くしの精神の持ち主だからだ。
    「んんん! 感じて! 感じてぇ! 先生ぇ!」
     小枝子は淫らに弾みまわって、胸を上下に揺らし込む。
    「けど、いけませんね。私がサービスを受ける側では」
    「でもぉ……感じて欲しいのぉ……!」
    「四つん這いになって下さい。私がやりたいようにしながら、小枝子さんにも乱れて頂きますので」
    「はっ、はぃぃ……!」
     一度腰を浮かせた小枝子は、犬の姿勢で尻を掲げて振りたくり、早く早くと言わんばかりに挿入を待ちわびる。
     腰のくびれを掴まれただけで大いに喜び、そして挿入と同時に背中を反らした。
    「あん――!」
    「少し激しく致しますので、無理があればおっしゃって下さい」
     無理なことなどあるはずない。
    
     ――パン! パン! パン! パン! パン! パン!
    
     猛烈なピストン運動に合わせて、小枝子自らも四つん這いの身体を前後に揺すり、膣肉に力を入れて快楽を貪った。
    
     ――パン! パン! パン! パン! パン! パン!
    
     腰と尻がぶつかるたび、肌を打ち鳴らす軽快な音が響き渡る。バウンドのように勢い良く離れる二つは、一瞬で距離を縮めて打ち鳴って、コンドームに包まれた粘液濡れの竿の部分をかいま見せつつまたぶつかる。
    
     ――パン! パン! パン! パン! パン! パン!
    
     小枝子は理性が飛ぶほど乱れていた。
    「あぁぁ! あうっ、んふぁぁああ! やん! ひああん!」
     そこに理性ある人間としての姿はなく、快楽さえあればいい獣と淫らな顔が、ありありと浮かび上がっている。
    
     ――パン! パン! パン! パン! パン! パン!
    
     やがて、そのときは来た。
     どこまでも熱い子宮は、いつしか沸騰しきって限界を迎え、小枝子は絶頂に達した。
    
    「あぁ――――――――――――!」
    
     ぐったり、と。
     体力を使い果たしたようになった小枝子は、コンドーム越しの射精を受け、肉棒が抜けると同時にうつ伏せのまま動かなかった。
    (はあっ、気持ちよかったわ)
     薄っすらと理性が戻り、子宮を疼かせる余韻に浸る。
    (って、まだ時間が残っているわね)
     射精済みコンドームの処理を済ませた先生は、うつ伏せの小枝子の尻を揉み、再びマッサージを開始している。尻肉を大胆に包み込む手の平が、五指を埋め込みながら割れ目を広げ、校門を丸見えにしてしまう。
    (ちょっと、恥ずかしいじゃないの……)
     そう感じる自分の心に気づくことで、乱れ狂った獣としての自分が消え、元の矢野小枝子に戻ったことを我ながら自覚する。
    「小枝子さん。アフタープレイはいかがなさいますか?」
    「そうね。時間いっぱいまで楽しみたいけど、イクのは一回で十分よ。あまり気持ちよすぎない程度に挿入して頂戴」
     そこにあるのは、身の回りの男が冷血と称する女王じみたときの小枝子の顔だ。知的な表情へと立ち戻り、くるりと仰向けに返った小枝子は、静かに股を広げて肉棒を求めた。
    「そうですね。残り時間はまったりといきましょう」
     やはり、ゆったりと正常位で感じているのが一番落ち着く。
     迎え入れたペニスは軽く小刻みに揺する程度にピストンして、その指先で前髪をかきわけるようにしてくれる。大切なものを扱う優しさで頬に触れ、うなじに触れて、次に鎖骨を撫でてから、乳房を揉んでくれている。
     こんな時間のために払った金額は、むしろ安すぎるほどではないか。
    「あなた本当にさすがだわ。その手にかかったら、私が私でなくなってしまう」
    「光栄です。いつでもお好みで乱れさせてあげますよ」
    「そうね。次はいつ乱してもらおうかし――らっ、あん!」
     急に一度だけ、強めに突かれて小枝子は喘いだ。
    「失礼」
    「何よ。わざとやったわね?」
    「そんなことはありませんよ」
    「嘘。あまりお茶目なことしないでよ」
    「お嫌いではないでしょう? この強さも」
     先生が適度にペースを上げていくと、少しは激しい快楽電流が背筋に流れる。
    「ちょっ、んんぅ……! やっ、やめてったらぁ……」
     そして、まったりと落ち着いたピストンに戻る。
    「やっぱり、このくらいがいいですか? 私としては小枝子さんの声が聞きたいですが」
    「それは次回にしましょう? また来るから」
    「ではそのように」
     静かに安らいでいられる快楽で、小枝子はまぶたの裏側にある暗闇を見つめながら、ペニスの出入りに浸り込んだ。
    (あぁ……落ち着くわぁ……)
     上半身が小枝子へ向かって倒れ込むと、額に軽いキスが行われた。
    「ああもう、先生ったら」
     頬にチュッと一瞬したあと、続けざまに唇に重ねられ、うっとりしたところで耳の穴を舐め取り始める。
    「そうですね。小枝子さん。次は目隠しなんてどうです?」
    「目隠し、ね。まあ考えてみるわ」
     視界を閉ざすことで肉体に集中して、自分の中にあるペニスの形状や愛撫の手つきによく意識を及ぼすのが、小枝子はとても好きである。
    
     ずちゅっ……にちゅ……くちゅ……ねちゅ……
    
     とても優しい突きの水音。
     百二十分コースの時間たっぷり、小枝子はまろやかな快楽に全身を満たした至福の時を過ごしていき、終わる頃には寂しくなって仕方が無い。
    「また来るわ」
     終了時間にパンツスーツへ着替えた小枝子は、事務的なOLの顔をして、彼にお礼を告げて店を出た。
    
     そうね。次も中盤で乱してもらって、終わりはいつも通り……。
     目隠しも、試してみようかしら?
    
    
    
    


     
     
     


  • 第2話「中田恵理 高校二年・十六歳」

    前の話 目次 次の話

    
    
    
     高校二年生の中田恵理はテニスの試合で肩を痛めた。
    「ありゃ波動球か何かですか。百八式ッスか……」
     恵理が試合で当たったのは、身長百九十センチある巨漢の女子で、丸太のように太い手足と広い肩幅の体格は、もはや同じ女とは思えない。アマゾネスの豪腕ショットを無理に返そうとしてしまい、あえなく肩に負担を受け、恵理は治療を受ける羽目となったのだ。
     そこで病院から紹介されたのは、市内にある美容整体マッサージ店だった。
     美容も治療もこなすらしい。
     日曜日の朝に予約を入れ、清潔感ある店を訪れると、やや甘いマスクのスマートなマッサージ師に迎えられ、整体措置を受けたのだ。
     しつこい痛みは翌朝のうちに取れており、たった数回通っただけで完治したのは、マッサージ師の実力ぶりを素直に実感させられた。
    
     へえ、すごいじゃん。
     顔も悪くない先生だし、通っちゃいたいな。
    
     そして、完治後に念のため一回だけ、肩の様子を診てもらうとき、先生の口から新たなサービス内容について語られた。
    「ところで、セックス割なんてどうかな?」
    「セックス割? 珍しいッスね。レディースデイの超進化ッスか」
     尋常でない発言だが、どういうわけか恵理は疑問を抱かない。ただ珍しいサービスを知り、軽く驚いているだけに過ぎない反応は、格安メニューのサービスの良さに対するものなら普通だが、セックスという言葉を前に不思議なほどケロっとしているのだ。
    「会員カードを発行して、セックス割を導入すれば、基本マッサージは毎月二千円だけで受け放題だよ」
    「うわっ、安いッスね」
    「お勧めなんだけど、どうする?」
    「いやー、是非ともって言いたいッスけど。うちの毎月のおこずかい的に二千円でもキツイものがあるッスよ。高校生でバイトもしてませんッスから」
    「学生割りもあるので、中高生限定で五百円」
    「ホントッスか?」
    「ポイントカードを発行して、セックスでポイントを溜めれば、通常メニューもポイントから値引きできるし、それならお金がなくてもいけるんじゃない?」
    「いいんッスか? そんなに安くて」
    「全てお客様のためだからね。快適で気持ちいい時間っていうものが、うちが提供する商品みたいなものだから、安さでも満足させないと」
    「さすがプロ根性! 処女でも平気ッスか?」
    「むしろ、セックス未経験者の方が初回一年間の月額料は無料になります」
    「マジっすか? 今高二だから、高三の途中まで無料ッスか」
    「どうする? 恵理さん」
    「是非是非! 入会するッス!」
    「よし、じゃあ今から早速脱いじゃおうっか」
    「うっす!」
     嬉しそうに入会を決めた恵理は、さっそく書類の書き込みとカードの発行を済ませ、脱衣所で脱ぎ始める。男性経験無しの恵理にとって、初めてのセックスはとても不安で緊張する。怖くもあるし恥ずかしい。
     しかし、脱衣中は席を外して、カーテンの内側で安心して脱げる環境が用意され、バスタオルを布団代わりにかけた状態でマッサージ用ベッドに横たわる。
    「はぁー……。なんじゃこの落ち着く香りは」
     何かの効用を持つお香が焚かれ、良い匂いが鼻腔に流れ込むことにより、リラックス効果が現れる。
    「脱ぎましたね」
     先生が戻ってくる。
    「うっす。緊張するッス」
     恵理の表情は実際強張り、タオル一枚を介した裸で男の前に寝ている事実に赤面する。
    「では性感美容マッサージを開始します。これから行う方法には、ただ気持ちよくなるだけではなく、血行が促進され、バストアップやヒップアップの効果も出てきます」
    「おおっ!」
    「というわけで、最初は恵理さんの体にスイッチを入れるよ?」
     肩を隠すまでかけていたバスタオルが、鎖骨を出すまで下げられて、まずは肩と二の腕周りからマッサージが施された。
    「おおっ、気持ちいいッスね」
    「だんだんと、性的にも気持ちよくなっていくからね」
     そう言って行う揉み方は、まだ恥ずかしい部分には触れてこない。肩から指先にかけて、普通のマッサージ師がやるような筋肉のほぐし方から、足のふくらはぎや膝関節への措置も特に性的なものはない。
     知識のない恵理には知る由もないが、今のところただのストレス解消マッサージだ。
     タオル越しにくびれを撫でるあたりから、やっと手つきが怪しくなった。
    「そろそろッスか?」
     乳房に限りない位置で、手の平全体を使って肋骨の表面を震わせる。揺らすことに意味があるのかもしれないが、乳房と距離が近いだけ、Cカップの初々しい膨らみもタオルの中で振動を浴びている。
     いかにプルプルと上下に動いているか。バスタオルの生地が薄いため、浮き出た形を見れば如実にわかる。
    「うん。だんだんと恥ずかしい部分に触れていくからね」
     女を射抜くような甘いスマイルで心を溶かし、お香の効果で可能な限り緊張を和らげた上で、まずは乳房の下弦が包まれた。
    「おうぅ……初めて揉まれている……」
    「オッパイって、垂れない方が美しいでしょう?」
    「うっす」
    「今やってるのは、上向きにさせる効果もあるんだ」
     下から上へ、押して上げるような手の動きは、やはりマッサージに過ぎない。とても性的な手つきとは思えなかったが、やがて鷲掴みにして揉み始め、とうとうエッチな段階へと突入していた。
    「ああ、恥ずかしいッス」
     バスタオルの生地が肌を傷つけることがないような、柔らかなタッチで力を入れすぎずに揉みしだく。
    「初めてだもんね。お医者さんに見せたくらいかな?」
    「そうッスね。そんな経験しかないッス」
    「ここで行うエッチも、マッサージ効果で出るように研究してある愛撫だからね。医療的な行為と普通のエッチの中間あたりってことになる」
    「ふむ」
    「そろそろ、お胸を拝見するからね」
     バスタオルが下がっていき、乳房が丸出しになる途端、ただでさえ赤い恵理の顔は、より一層の赤面に染まっていく。
    「おおおっ、は、恥ずい! 超恥ずいッス!」
    「可愛いよ? 恵理さん」
     生の乳肌が指に包まれ、丁寧な愛撫が始まると、恵理は何かを我慢するような震えた表情でかすかに身をよじっていた。
    「いやもう、可愛いなんつーこと言われましても!?」
    「ほら、可愛い声も出させてあげる」
     乳首への刺激が始まった。
    「んにゃ! むにゃぁぁぁ……!」
     これまでのマッサージにより、少しずつ高められていた恵理の女体は、恵理自身も気づかないあいだにスイッチを入れられ、既により気持ちいい愛撫を待ちわびた状態だった。乳首に指が触れるだけでも快楽電流が弾け飛び、そこにマッサージの技法が加われば、軽く暴れるほどに恵理は身悶えした。
    「んにぃぃぃ! 勘弁! 勘弁ッス!」
    「うん。胸は一旦ここまでにしようか」
     乳房から手が離れる。
    「はぁぁ、ビックリッスよ。気持ちよさが予想外過ぎて」
    「今のマッサージも受け放題になるからね」
    「やばいっすねぇ。こんなの繁盛確定じゃないッスか」
    「ありがとう。じゃあ下の方も触っていこうか」
    「……ウス」
     これからアソコにも愛撫が来る事実に緊張して、多少はほぐれた表情が再び強張る。
     初めは一般的なマッサージ師と同じ技法で、タオルの中に隠れた太ももをほぐしていく。股関節に指がくるあたりで怪しくなり、性器のまわりを集中的にタッチする段階では、既に割れ目が濡れ始めてしまった。
     指の腹は陰毛の茂みへ移り、毛先を撫でるように這い回る。
    「ではアソコをほぐします」
     割れ目に指が触れてきて、恵理は恥ずかしさで悲鳴を上げた。
    「やばいっ、やばいッス! この感じ!」
     バスタオルは取らないまま、手を忍び込ませる形であるのが、なんとか恵理の羞恥心を和らげているのだが、さすがに頭がパンクして、パニックじみた状態に陥った。
    「はい。挿入しまーす」
    「むおぉぉぉ……!」
     指の出し入れにも技法があり、膣壁をほぐす効果を心得ている。恵理にとっては単なる気持ちいい愛撫でも、先生にとっては下腹部を健康にしてやる措置でもあった。
    「タオル。外すからね?」
    「ちょ! 待った待った! まだ早――」
     慌てる恵理に容赦なく、先生はタオルを奪った。
    「はい。丸裸」
    「うわぁああ! 待ってくださいよォ!」
     恵理は必死に恥部を隠して身を縮める。
    「ここからは遠慮無しです。一気にいきます」
     ズボンを脱いだ先生は、診察ベッドに上がり込み、恵理の脚を強制的にM字にさせてコンドームのペニスを当てる。
    「ひぎぃ……!」
     挿入した。
    「本日はセックス割に入会頂きまことにありがとうございます」
     先生はゆっくりながらも大胆な腰の引きを披露しで、深く抉り込むようなピストン運動で恵理のアソコを責め立てる。
    「いやぁぁぁ! あっ、あぁ……! 初めてなのにぃ……!」
     処女で喘いだ恵理は、やがて絶頂に達していた。
    
    
    


     
     
     


  • 第1話「とあるマッサージ師」

    目次 次の話

    
    
    
     いつの頃からか『彼』は、自分に秘められた才能について自覚していた。
     ――人心操作。
     これに初めて気づいた小学校高学年の当時は、頭の中で念じながらじゃんけんをすることで、相手に思い通りの手を出させるといった微妙なパワーしかなかったが、鍛えれば鍛えるほどに強くなり、もはや催眠能力としか言い様の無いものを会得していた。
     これに人並み以上のルックスと、悪くないスタイルの良さが加われば、落ちない女は存在しないといってもいい。
     セックスを経験するのは簡単だった。
     フェラチオもパイズリも尻コキも、意中の女に何でもやらせた。何人もの女を欲望のはけ口として扱ってきた。
     しかし、中学二年で少しずつ将来のことに思いを馳せるようになってから、『彼』は自分がどんな生き方をしたいか、おぼろげながら計画した。
     能力さえ使えば、いくらでも貢がせることはできる。
     だが、それは相手の人生を壊さないか?
     冷静に考えれば欲望を満たす道具として扱う時点で鬼畜だが、別に非処女なせいで結婚できないことはないだろう。代えはいくらでも効くのだから、相手に彼氏が出来たら手を引くなどの最低限に良識があれば……。
     無論、本当に良識があれば催眠でセックスに持ち込む真似自体をしないだろうが、ともかくこれが節度というべきラインを守れば、その人の人生を破壊はしないだろう。
     だとしたら、催眠をどう生かす?
     インターネットの情報で、偶然にも知った女性向け風俗の存在を知り、これなら自分に向いていると確信した『彼』は、整体やエステの勉強を始めて、将来的にマッサージ店の開業を決意したのだ。
     うん、そうしよう。
     お客様として丁寧に扱って、至福の時間を与えるのなら、自分の欲望を満たしつつも、相手のストレス解消になる。催眠という手口によるセックスにしては、なかなか善意的で素晴らしいアイディアではないだろうか。
    
     そんな『彼』は、いつしか本当にセックス割サービス付きの店を開くするのだった。
    
    
    
    


     
     
     


  • リピート!性感マッサージ店

    
    
    
     春野恵美、二十五歳。
     先日、性感マッサージなるサービスを受けました。
    
     友達からの勧めが始まりで、何やかんやと女性向け風俗店を訪れれば、そこにいたのは高校当時に憧れていた友田典明くんだった。元クラスメイトから受けるマッサージで、散々にイカされ続けた私は、とてもいやらしい考えに囚われた。
     また、あんな気持ちになってみたい。
     天国にまで連れて行って欲しい。
     心がすぅーっと、優しくとろけていくような、だけど激しくもある体験が、私の心を捕らえて離さない。
    「また来てくれたんだね。春野さん」
     高身長でスタイルも整っている。スラっとした印象の友田君は、汗からフルーツの香りでも放出しそうなほど、とても爽やかな顔立ちをしている。耳を溶かさんばかりの甘い声質も、どことない穏やかなオーラも、何もかもが乙女を狂わせる。
     まさに女子を喜ばせるために生まれたような存在が、お金を払ってのサービスとはいえ、これから私のためだけに尽くしてくれる。
     彼氏ではない。客と店員の関係。
     しかし、恋人同士の甘い関係でなければ得られないはずの時間をお金で買った。
     風俗にハマる男と変わらないだろうか。
     キャバクラ嬢に貢ぐことと似ているだろうか。
     本当は良くない。おかしなことにハマっている。
     酒とギャンブルにのめりこむのと同じくらい、きっと不健康なことなのだと思う。そう思いながら、あの何度もイカされた体験が忘れられずにいる私がいる。またイキたい。友田君に苛めて欲しい。どこか淫らな気持ちを抱えて私はここに来てしまった。
    「あのっ、ほら……ストレス解消にいいかなって……」
     私は言い訳めいたことを言っている。
    「そうだよね。やっぱり色々と、上司の不満だとか。ありそうだよね」
     特に否定することもなく、それどころか同意して、理解してくれる姿勢で友田君は、そのまま私の愚痴を一つ一つ引き出した。
     あの上司がうざい。取引先での嫌な出来事。
     他には単純にデスクでの肩こりや目の疲れ。
     日頃から思っていたことが、まるで魔法のように私の口から引き出されて、ほとんど知らないうちに晴れ晴れとした気持ちにまでなっていた。
     ――わかっている。気休めだ。
     だけど、体に悪いストレスが全て分解されてしまったように思う。
    「この前みたいに、色々と……」
     何度もイカせてもらったあとは、子供をあやすかのように可愛がり、甘い刺激を全身に与えてもらった。
     あれが、いい。
     もう一度、あの感じを……。
    「うん。あれは嫌だったとか、そういうのは特になかった?」
    「ない、かな」
    「挿入サービスはどうする?」
    「え? ええっと、ちょっと迷ってるといいますか――」
    「そっかー。迷ってるかー」
    「……だって、ねぇ?」
    「だよねー。お客様を不快にさせたら意味がない。ちゃんと春野さんが望んだら、その時にということで」
    「うん。そういうことで……」
    「じゃあ、少し外すから、着替え終わったら教えてね」
    「う、うん」
     私はそれから、更衣室で服を脱ぎ、紙ショーツとガウンに着替えた。このガウンは袖を通すタイプではなく、スナップボタンがある以外は単なるタオルというべきか、風呂上りのバスタオル巻きのようになった私の身体は、たった一枚の布を外せばショーツのみだ。
     これから、再び私の全身が燃やされる。
     友田君のあの指で、じっくりとたっぷりと、丁寧に余すことなく愛撫され、私はどこか天国にでも連れて行かれるのだ。
    
         ***
    
     ところで、紙ショーツの色は白。
     一番透けやすい色ではないか。
     オイルを塗られただけで、色々と見えてしまうことは間違いない。
     毛の色とか……。
    
         ***
    
     ラテン系の壁紙模様に艶やかなフローリングと、観葉植物で緑を添えた一室にうっとりとするようなアロマが焚かれ、こんな格好でも過ごしやすいように、室温もちょうど良く調整されている。
     とても落ち着きやすい室内で、私は施術用のベッドに横たわった。
     アイマスクの厚みにより、私の視界は完全に遮断され、どんなに目を見開いていようと暗闇しか見えやしない。
     私の肌にあるのは、自分の背中がベッドに埋まっている感触と、裸を包んで隠してくれるガウンだけ。
     あとは視界がゼロだからこそ、耳や素肌が友田君の気配を探していた。
     衣擦れや呼吸を聞き取って、それから足音も聞こえたおかげで、ベッドの横合いから私を見下ろしているんだなと、何となく読み取った。
    「始めるよ?」
     手が、迫る。
     ガウンに触れた友田君の手は、ぱちりぱちりと、ボタンを一つずつ外していき、だんだんと私の露出面積は広がっていく。肌に触れていたタオルの生地が、左右に広がることにより、すぐに乳房が露出した。
     ああ、さっそく見られている。
     友田君の視点を想像すると、そこには紙ショーツ一枚だけの私がいる。
     ジィィィィィ、と。
     心なしか、胸に視線が突き刺さっているような気がした。気のせいかもしれないし、本当は別のところを見ていても、今の私はそんな風に意識をしてしまう。だからそう感じるんだと思うのだけど、体のことを言われるともう駄目だ。
    「可愛いね。もう乳首が尖ってる」
     オッパイを褒められた。
    「全身があの時の快感を思い出しているんだね」
     言わなくてもいいことを……。
    「始めるよ」
     と、友田君は施術を始めた。
     しかし、すぐに恥ずかしい部分に触れるわけではない。
     まずは足から、指の一本ずつにかけてまで、丁寧にオイルを塗り込みながら、指圧マッサージでほぐしていく。両方の足が終わって、やっと足首を揉み始めて、またそれが終わったら、ふくらはぎに移って来る。
     もうそんな感じで、部位ごとに丁寧だ。
     手の平だって、指を全てじっくりと……。
     腕から肩にかけても、腹部や腰に、背中全体まで丁寧に、手の平を滑らせる。
     胸もアソコも触ってくれない。
    
     もう絶対に十分か二十分以上は経っていて、何度かうつ伏せになったりして、背中にもオイルが塗りつくされている。
     私の皮膚面積は、もう一ミリも余ることさえなく、本当に隅から隅までマッサージを施されてしまったのだ。
     ただし。
     胸と、お尻と、アソコはまだ一切触られていない。
     肝心なところだけを綺麗に避けて、それ以外の私の全身には、じわぁぁぁっと皮膚が発火しているみたく熱くなるような、塗り込まれたオイルの効果が出てきている。
    「もうモゾモゾ反応してるね」
     恥ずかしいことを指摘してくる。
    「さっきから、お尻がモゾモゾって左右に動き始めているよ。体が思い出すだけじゃなくて、もうハッキリと求め始めている証拠だね」
     返す言葉は何もない。
     エッチしてもらうために私の方からお金を払って、だけど正直に認めてしまうのも恥ずかしいから、私は首を横に振っていた。
     違う違う! くすぐったいだけ!
     という心の声を、私の全身が放出したと思う。
    「触って欲しい?」
     意地悪なことを尋ねてきて、友田君はきわどい場所に触ってきた。
    「あぁ……」
     胸、じゃない。
     乳房の生え際、三角形の根元ぐらいの位置を指の腹でサワサワと撫でていて、場所が絶妙すぎるから、オッパイを触られているうちに入るのかわからない。
     ぐるりと回りの部分を撫でたり、鎖骨にもマッサージを集中して、胸の周辺をしつこく愛撫しているけど、いつになっても揉んではくれない。
     それどころか、今度は内股をスリスリしてきた。
     太ももの内側で、アソコに指が当たるかどうかの、物凄い位置をくすぐるようにしてくるけど、いつになったって触られない。 
     ウズウズする。
     胸も、アソコも……。
     甘い痺れみたいのが溜まってきて、下腹部にキュっと力が入ってしまう。何かが欲しい感じでアソコの部分が切なくて、乳首だって破裂しようとばかりに硬く突起している。 
     ……生殺しだ。
     飢え死に直前の状態で目の前にご馳走を並べられ、それを絶対に食べてはいけないとお預けされているくらいの気持ちを、こんなエッチなことで味わうハメになっている。
    「春野さんはどうして欲しいのかな」
    「い、言えない……」
     オッパイ揉んで、アソコ触って。
     そんな言葉が私の喉から出せるわけがないじゃないか。
    「どうして欲しい?」
     それなのに、意地悪っぽく聞いてくる。
     言わなきゃ触ってあげないけど?
     という嫌味な意志が、その友田君の台詞には込められていた。
    「……まだ触ってない場所」
    「どこ?」
    「……うっ、うぅぅ……言わないと駄目なの?」
    「うん。言わなきゃサッパリさからない」
    「嘘つき、意地悪、酷い」
     私は精一杯非難した。
     だけど、そうしたら友田君は活発なマッサージを繰り返して、きわどいだけで本当には触らない、微妙な部分ばっかり攻めてきた。
    「どうしても言えない?」
    「言えないって」
    「それじゃあ駄目だね」
    「そんなぁ……!」
     両脇が手に包まれ、脇下の肋骨にある筋肉がほぐされるけど、もうすぐ乳房に触れそうな位置までいくと、まるで関係ない場所に両手とも移ってしまう。
     おヘソをクリクリされるのも気持ちいいけど、違う。
     そこじゃない。
     もっと、下……。
     私の気持ちに合わせるように、指がすーっと、私の皮膚でスライドしている。紙ショーツのところへ近づいて、もう少しで触ってもらえると期待した瞬間に、そもそもショーツ部分にさえ指は来ないで遠く離れた。
     今度は太もも、腰のくびれ。
     確かに会社の上司が触ってきたら、セクハラで訴える場所ではあるけど、そこしか触ってくれないことがこんなにも苦しくて、一種の拷問にさえ思える日が来るなんて、普通に生きていた私には想像さえつかなかった。
    「どうしても言えない?」
    「だ、だって……!」
    「仕方ないから、特別にお尻を可愛がってあげるよ」
    「……!」
     喜んでいる私がいた。
     お尻をなでなで、すりすり、もみもみされると知って、子供みたいに嬉々としている私がこの世界に存在してしまった。
    「まずは四つん這いになって」
    「……こう?」
    「もっとこっちへ、頭と胸も低くしちゃって」
    「こんなポーズ取らせるなんて……」
     私は頬をベッドシーツに押し付けて、お尻だけを高らかに掲げてしまっていた。
     当然、お尻のすぐ後ろが友田君。
     お好きにどうぞと差し出しているみたいな気がするけど、本当に恵みが欲しくて求めているのは私の方だ。
     がしっ、と。
    「ひっ……!」
     紙ショーツを両手で掴まれ、私は緊張感に支配された。
     ……下げられる。
     丸出しにされてしまう。
     お尻が、お尻が……。
    「やっぱり、ボリュームがあっていいよね。春野さんのお尻」
    「で、でも大きくて……」
    「大きくて、形も良くて、すごい美尻だからね?」
     甘く囁く声で讃えて来る。
    「そ、そうなの……かなぁ…………」
     そうとしかいえない私は、自分のお尻に意識を落とした。
     ジロジロとした視線が私のお尻を這っている。
     それに、ショーツに潜り込んでいる指も、私の中で存在感を増している。私は金縛りみたく動けなくなっていて、これからお尻を生で見られようとしているのにじっとしている。考えてみればオッパイは初めから出しているから今更じゃないか。
     だけど、だけどだけど!
     友田君は余計なことを教えてくれる。
    「ねえ、春野さん。お尻の割れ目が開く姿勢だから、このまま下げると春野さんのお尻の穴が僕の目の前だよ」
    「お? お、お、お尻の……穴って…………!」
    「ほーら、見えて来ちゃうよ?」
     友田君は物凄く楽しそうにしながら、紙ショーツを本当にゆっくり下ろす。どうしてそこまでスローモーションにする必要があるのかというくらい、恐ろしいくらいの時間をかけて、後ろの部分だけが綺麗にずれるようにとしていたのだ。
     まだアソコは隠れたまま、お尻とその穴だけが、ピンポイントに晒される。
    
     ――黒ずみが見えてきたよ?
     ――皺が見えたね。
     ――はい、これであなたのお尻の穴は丸出しです。
    
     友田君の実況が私を苛めた。
     べったりと、尻たぶに置かれた左手の存在感が、私の中で物凄い。手の平の温度とか、指の長さとか、細かいところまでお尻の皮膚が読み取って、頼んでもないのに私の肉体は全力で味わい始めた。
     手の感触を、皮膚が活発に吸収した。
     だから置物のように貼り付けられたのなんて一瞬だけで、すぐに五指に強弱がついて、微妙にだけどモミモミしてきていることが如実にわかる。
    
     ジィィィィィ――。
    
     と、肛門を視姦される感覚も、皺の部分の皮膚が必要以上に読み取った。
     こんな場所をジロジロ観察される日が来るなんて、普通に人生やってて想像できただろうか。
    「ねえ、友田君? あのね、恥ずかしさで死人が出るよ?」
    「恥ずかしくて死んじゃうって、ウサギさんみたいで可愛いね」
     よしよし、と。
     子供を可愛がっているのと似たノリで、左手がなでなでと這いずりまわる。
    「あぁぁぁ……」
     右手も乗って、私のお尻は完璧に好き放題だ。
     手の平にオイルを乗せ、ヌルりとした感触をまとった手の温度に撫で回されると、私のお尻はたちまち熱く火照っていく。
    「オイル塗りはね。女の子の体がテカテカに光るから、とってもエロいんだよ」
    「そういうこと……言われると……」
    「あっ、いま春野さんのお尻の穴がキュって反応したね」
    「え……!」
    「キュって皺が縮んだよ。嬉しかったんだね」
    「嬉しくないから! そんな……」
     そんなこれから生きていけなくなるものを見られてしまって、私はこれからどうしたらいいのだろうか。
    「チョコレートより薄くて、ベージュよりも濃い色合いだね」
    「やだ……言わなくていいって……!」
     もう駄目だ。
     肛門の色まで言葉で聞かされてしまうだなんて。
     すぐに頭が真っ白になった。
     いつになく顔面が熱くなっていて、頭の中身が沸騰してしまった。
    「こら、動かない」
     ぺちっ――と、私は停止した。
     お尻……叩かれた……。
     振り上げた手の平を、軽く乗せてくる程度の、威力なんてありもしない手つきだったけど、友田君は間違いなくお尻を叩いた。
    「……動いたの? 私」
    「まあね。だから、ちょっとだけお仕置きだね」
    
     ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ――。
    
     なんて、尻たぶの左右交互に手が乗って、聞こえなくてもいい軽快な音が聞こえてくる。もしやリズムでも取っているんじゃないかと……私のお尻は打楽器じゃないのに……。
     でも私は動けなかった。
     ……なんでだろう。
     冷静に考えて、私が悪い要素なんてないはずだけど、何だか自分が悪い子になったような気がしてしまう。
    
     ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ――。
    
     私は静かにお仕置きを受け続けた。
     こんなお仕置き、幼稚園の頃にだってされたことなかったのに。
    「逃げようとしちゃいけないよ。わかったね?」
    「……はい」
     何でだ……。
     この先生に怒られた悪い子みたいな気分は、一体どこから私の胸に溢れてきた。本当に悪いことなんてしてないのに、理由もなく罪悪感が沸く魔法でも使ったのか。
    「もう一度聞くけど、胸とアソコをどうして欲しい?」
     ペチペチするのが終わっても、手は両方ともお尻の上に置かれている。
     なんだか、このまま答えられなかったら、またお仕置きされそうって気がした。
    「観念しなきゃ、駄目?」
     私はそう尋ねた。
     本当に恐る恐ると――ぺちっ、ぺちっ、と、本当に嫌なくらい良い音を立てられて、とても逆らえなくなってしまった。
    「観念しようね。どうして欲しい?」
    「…………触って、欲しい」
    「気持ちよくなりたいんだね」
    「だって、そういう店じゃない……」
    「それじゃあ、エッチなことをいっぱいして欲しいって、言葉にして認めてみようか」
    「……はい。エッチなこと、して欲しいです」
     自分で自分の望みを口にした。
     お金を払ってこの店に来ている私に、して欲しいって気持ちがないわけない。
     だけど、それをいざ声に出してみると、ぼんやりとしていたものがハッキリと形になって、旨とアソコを友田君のマッサージで苛めて欲しいんだと、より具体的でいやらしい願望が湧き上がっていた。
     ただ触られたいっていう漠然とした気持ちがが、いやらしくてねっとりした手つきで触られたいっていうものになっていた。
     乳首つまんだり、膣に指を入れられちゃったり――したい。
    
         ***
    
    「あ……ふっ、ふぁ……ふっ、あ、あぁ………………」
    「春野さん。オイルまみれのオッパイ。物凄くエロい見た目になってるんだよ?」
    「うっ、あぁ……やだぁ……あ、ふぁ………………」
    「乳首もつまんで欲しいんでしょう?」
    「あぁぁ…………!」
    
     仰向けに戻った私は胸をいっぱい苛めてもらっていた。
     そう、望み通りに。
     まずはオイル濡れにされて、どれだけテカテカでいやらしい乳房の見た目なのかを口頭で伝えられ、たっぷりと揉みしだかれた。
     指で乳首を挟んでつまみ、強弱をつけるみたいにして遊んだり、引っ張ったり、乳輪をぐるぐるなぞったり、いっぱいいっぱい苛められた。
     オッパイの皮膚が完全に友田君を求めていて、手の平の温かさも、足されたオイルのひんやりも、指の踊り具合も、何もかも吸収して内側に取り込んでいる。目が見えなくても、友田君の指の動きを細かく把握している気がするくらい、私の触覚は友田君の愛撫を受け取ろうと敏感に発達していた。
     鷲掴みで包み込んで、むにむに、もみもみ。
     産毛だけを撫でるフェザータッチでも、まんべんなくやられてしまって、もう空気に触れているだけで気持ちがいい。
     皮膚がオイルのぬかるみをまとっているから、風にだって敏感だ。
     少しの大気の動きだって、性感帯の刺激になるから吸収しようと、私の触覚神経は必死すぎるほどアンテナを長く伸ばしていた。
     もし、だ。
     すっかり上昇してしまった感度が、自然にすーっと引いていくまで放置したら、何時間かかるのか想像がつかなくなってくる。絶対に一時間か二時間はかかるだろうし、一人で置いておかれでもしようものなら、私はオナニーを始めかねない。
     はしたないけど、そういうスイッチが入ってしまって……。
     手が少しでも離れるだけで、私のオッパイは全力で寂しがった。
     寂しいあまりに大気だけで気持ちよくなろうと、少しでも風があったらそれで感じてしまおうとしていて、離れた手の平が戻ってくるとオッパイは大歓喜だ。
     嬉しい! 嬉しい!
     もしもオッパイに意志があったら、絶対に声まで出して喜んでいる。喜びついでに弾けた快楽の電流で、私の息はますます乱れて、もう平然とした呼吸をしていられない。興奮でハアハアした息以外は私の口から出てこない。
    「肩がモゾっと動いてるね」
    「だって……っ、はぁ……はぁ……はぁ……!」
    「息遣いもかなりエッチだ。すっかり興奮しちゃってるね」
    「だって、だってぇ……もぉ…………!」
     言葉で指摘されるとたまらない。
    「乳首で悦んじゃうのもよくわかるよ」
    「ひゃ! あぁぁ……あぁっ、ふぁ、あぁ…………」
     証拠を引き出すみたいにして、指先で乳首をクリクリ転がしてきた。
     友田君の言うように肩はモゾモゾ動いちゃうし、それにアソコも……。
     ああ、まだ一度も触られてない。
     急にアソコの切なさを思い出して、触れてくれない寂しさに私は太ももを引き締めた。脚とお尻がモゾモゾと動いてしまった。
    「さて、春野さん」
    「……はい」
    「アソコの部分にはオイルもつかないようにしていました。なので濡れているわけがない。まだ何もしていないのに、随分と濡れているようですね」
    「いや、だからそんなことは言わないで…………」
    「白くて透けやすいから、触る前からもう毛が見えている状態だよ」
     うぅっ――よくもそんな情報を――。
     わざわざ指摘してくるから、アソコの皮膚感覚に意識がいって、ああ本当に友田君の言うとおりの状態なんだと思い知る。
    「触ってもいないはずの春野さんのアソコが、一体どれだけ濡れているのか。一度マスクを外して確かめてみようか」
     そう言って、友田君は私の視界を解放した。
     すぐに紙ショーツに手がかけられ、脱がされるんだとわかった私は、動くに動けないかのような気分になって、されるがままに脱がされた。
     お尻の穴を視姦された後だから、おかげでアソコくらい今更だ。
     いや、恥ずかしいけど。
    「はい。これが春野さんのアソコで濡れた紙ショーツです」
     証拠品を見せ付けられた。
     アソコを覆うための部分が、いわゆるクロッチがびしょ濡れで、穿きものとして使い物にならないほどの状態だ。
    「私こんなに……」
    「そうだよ。いやらしいね。春野さんって」
    「こ、これくらい上手にされたら、別に普通だもの……」
    「どうかな? もしかしたら、春野さんほど濡れる子はいないかもしれないよ?」
    「……嘘」
     何だこの軽い恐怖は。
     そうだ、友田君は他のお客さんだって相手にしている。
     もしかして、本当に私より濡れる子っていないの?
     それじゃあ私は本当にいやらしい子じゃないか。
     証拠品に何も言えない私は、またアイマスクをかけられて、視界を犠牲にした分だけ皮膚感覚が発達する。
    「さて、それではね。春野さんのいやらしいアソコ。いっぱい気持ちよくするからね」
     といいつつ、例によって触れるようで触れてこない。内股から接近して手が引っ込み、ヘソの場所から迫って手が引っ込み、焦らすだけで十分か二十分はかけていそうな戦法がアソコにも行われていた。
     早く、触って欲しい。なのに来ない……。
     来ない――まだか……。
     私は待っている。すごく、すごく待ちわびていて、もう辛抱たまらない。いっそ自分の口でおねだりでもした方が、ラクになるんじゃないかとさえ思えてくる。
     それでも、全然来なくて――。
     だけど、不意に……。
     ――来た!
    「――あぁぁぁん!」
     さっとなぞり上げられた瞬間、私の背中が施術用ベッドから浮き上がっていた。
     どすんと、尻が落ちる。
     どんなブリッジかというほど、とても高く仰け反ってしまったのだと、このどすんという感覚によって私は悟った。
    「早いねぇ? もう一度目の絶頂だよ」
    「はぁ……はふっ、ふぁ……うそぉ…………」
     駄目だ。
     私はいやらしいんだ。
    「気持ち良さそうにしてもらえて嬉しいな。もっと楽しませてあげる」
     そこからの時間は、天国というべきか地獄というべきか、私にはまるでわからなかった。
     ただ指がアソコに置かれるだけで、ビリビリと電気が流され続けているような、激しい勢いの快感が迫ってきた。
    「あぁ……! あっ、ああっ、あふっ、ふうぅぅぅっ、んひぁ……!」
     自分でも、どれだけ激しい動きでくねりまわって、背中を弾み上げたり、手足が強張ったりしていたのか。そんなことわからなくて、ただ気持ちいいことだけで頭が真っ白で、いつの間にか指が挿入されていたのに気づくことすらできなかった。
     指が出入りしているとわかったときには、クチュクチュと音を鳴らして、水音がうるさいくらいにかき混ぜられてしまっていた。
     あぁ……! イク! もうイク!
     イク――イク――。
    
     なのに、愛撫がぴたりと止まった。
    
    「はい。寸止め」
    「ひどい……!」
    「イキたかった?」
    「そんなこと……聞かないで……」
    「じゃあ、もう一回いってみようか」
     私は友田君に支配されていた。
     指が入っているだけで、もう何も逆らえなくて、友田君の思い通りに高らかに喘いでしまっている。
     ひょっとしたら、どんな風に腰がくねって、どんな風にモゾモゾして、ビクンと弾み上がるのかまで、指先一つでコントロールされているんじゃないか。
     わからない。
     わからないけど、そんな気がしてきていて――。
    「い、イク! 友田君――」
    「はい。一旦ストップします」
    「なんでよぉ…………」
     酷い。最低だ。意地悪すぎる。
     恨めしい思いしか沸いて来ない!
    「再開します」
    「あぁぁぁ……!」
     もうどうしようもないじゃないか。
     イキそうになったら止められて、寸止めばっかりされる私の中では、早く絶頂させて欲しい気持ちがどんどん積もりに積もっている。
     こんなの――。
     もし、こんな時にあのことを聞かれたら……。
    
    「ところで、性器の挿入サービスはどうします?」
    「うぅぅ…………」
    
     酷い。酷い酷い。
     私は……言わされるんだ……。
     言わされるだなんて……。
     でも、言わなかったら一体いつまで?
     イキたい。イキたいのに――。
     もし何も言わずに時間だけが過ぎてって、一度もイカせてもらえないまま終了時間だなんてことになったら、私はこの自分の火照った体をどうすれば……。
     なにこれ、これじゃあ……。
     もう観念するしかないじゃないの……。
     素直になれない悪い子は、またペチペチお仕置きされてしまうもの。
    
    「………………おねがい……します」
    
     すぐにチャックを下げる音が聞こえた。
    「かしこまりました。お客様」
     その店員としての態度が、台詞が、私に一つの大きな実感を与えていた。
     サービスを注文したのは私の方なんだということを……。
    「直ちに準備を致しますので、M字開脚にてお待ちください」
     なんて酷い……。
     だけど、それでも私は股を開いて、挿れてもらえる瞬間を今か今かと、もうすっかり待ちわびている状態だ。
     痴女も同然じゃないか。
     こんなの……くぅ……早く挿入を……。
     全身で気配を探ろうとする私だけど、いっぱしの武人でもないのに気配だけで人を見つける芸当なんてありっこない。ただきっとコンドームを装着している最中で、私の卑猥なポーズを目の前で見ているはずなのだ。
    「では只今より、挿入致します」
     友田君が、上がってくる。
     この施術用ベッドが重力で軋むのと、私の股のあいだに座って肉槍の狙いを定め始めているのがわかって、私はいよいよ緊張していた。
     これから、入ってくるんだ。
     ああ、入り口に当たった!
     先っぽから、だんだんと……私の入り口を押し開いて、この表面がヌルっとしている感じはローションを塗ってあるのか。それが私の膣内を進んで来て、私の股に友田君の腰がぶつかることで、がっしりと根元まで収まった。
     入ってしまった……本番が始まった……。
    「あぁっ、あん! あっ、あふっ、んんっ、んあっ、ふぁぁ!」
     動いている! 私の中で動いている!
     ああ! 来る! すぐに来てしまう!
     嘘だ――こんなに早く――。
     でも、ずっと寸止めされていたから――。
    
    「――――あぁぁぁ! あっ! あああああああああ!」
    「……イったね」
    
     はぁ……やばい……。
     今ので完全に疲れた。
     でも何だ。このスッキリとした疲れは……。
     全身全霊で戦って、悔いのない試合をやり遂げたスポーツ選手の気持ちにでも例えればいいのだろうか。
     わからないけど、物凄い満足感があって――。
    
         ***
    
     以後、私はリピーターとなってしまった。
     指名するのは友田典明君。
     元クラスメイトにお金を払って、私の方からセックスを頼んでいる状況なんて、当時では全く考えつきもしなかったけど、いけない店にハマってしまったことがこの私の現状だ。
     必ずアイマスクで視界を一切遮断して、暗闇しか見えない中で、うっとりと目の細くなるようなアロマの香りが漂ってくる。
     手足の指を一本ずつ丁寧にほぐすことから始まって、腕や脚だけで随分と時間をかける。
     耳の穴とか、脇の中とか、手足の指や膝の裏まで、細かいパーツまで丁寧に触るから、私の肌面積のうち友田君の手が触れていない部分はもう一ミリも存在しない。お尻の穴までグリグリされて恥ずかしかった。
     百二十分コースで入ったはずが、感覚としては二時間以上経ってようやく胸を揉んでもらっているくらい、丁寧に丁寧に、それはもう丁寧に愛撫する。
     やっと挿入タイムになって時間を聞くと、今回はまだ三十分しか経っていないとか。
     ってことは、あと九十分も残っている?
     またしてもM字開脚の姿勢で待たされ、コンドームを着けたり準備している友田君に、たぶんきっちり鑑賞されてしまっている。
     友田君がマッサージベッドに上がって来ると、すぐに私の入り口に肉兜が埋まり始めた。
    「いっぱいイクと水分不足になってくるから、まずはまったりした快楽で楽しもうか」
    「うん。お願い」
     必要に応じて快感レベルを調整するという謎のテクニックは、控え目にいってもセックスマスターの称号を送らざるを得ない。
     友田君。
     クラスメイトだったあなたが、そんな男になっているとは――。
    「肌が前より綺麗になったね?」
    「そうかな。変わらないと思うけど」
    「いいや、変わったよ。キメが細かくて、よく磨いた表面の滑らかさっていう感じ。肩や腰の凝りも取れたでしょ?」
    「……うん」
    「れっきとしたマッサージだからね」
     思い返せば、ぐいっと指圧するような揉み方も多かったような少ないような。
     最近は肩も腰も疲れない。
    「あっふぅぅ……」
     ずにゅぅぅぅぅぅ、と。
     私の穴は友田君によって埋められて、根元までぴったりと、膣に収納されてしまった。
    「いっぱい感じてね。春野さん」
     ゆっさり、ゆっさり、優しさを重視したピストンに私は喘ぐ。
     両手の指はマッサージのために這い回り、ところどころを指圧して、胸を揉んだり乳首を弄んだりもしてくれる。
     腰はゆさゆさ、マッサージも継続中。
     物凄くいい。
     うっとりと、まったりとしていられる快感だ。
     ああ、癒される。
     どう例えるべきかな。
     湯船に溜めたお湯が気持ちよすぎて、いつまでも極楽気分でくつろいでいたいような、まったりムードというのだろうか。
     手の平が私のお腹を這いまわり、二の腕のリンパを流したりして、オッパイが寂しくなった頃には揉みしだきに戻ってくる。
    「うん。リラックスしているみたいだね」
     ほっぺたも撫でられた。
     こうして、私が幸せに浸っていればいるほど、友田君も満足そうにしているから、これが奉仕なんだと実感する。お客様に尽くして下さる店員殿。私が奉仕を受ける側。収められている肉棒はそのために私を抉り、ここぞというところで刺激を強める。
     偉大なるアイマスクの力によって、長さも太さも、反り具合だって頭に浮かんで、形状がアソコでわかる。
    「なんかね。温泉じゃないのに、極楽極楽って言いたくなっちゃう感じが」
    「こういうまったりとした過ごし方にも興味あったでしょ」
    「うん。凄く」
    「僕としてもね。クラスメイトだった子にサービスできて、とっても燃えてるんだ」
    「そうなの?」
    「店に来たのは知っている女の子でした。って、いいシチュエーションだと思うんだ」
    「まあ、そうかも」
     挿入状態でのトークでくつろぎながら、ちょくちょく乳首を攻めてもらう。
     友田君は彼氏じゃない。
     それっぽい時間を購入できるサービス業と、重々承知していながら、私は友田君とイチャイチャすることを楽しんだ。
     胸板に触ってみたいといったら、友田君も脱いで全裸になってくれて、撫で回したら筋肉の硬さで厚みがついているのがよくわかった。二の腕も逞しいし、腹筋のところをくすぐっても、立派な体つきなのが手でわかった。
     たまに強めに攻められて、思い通りに喘がされる私は、ほとんど子供をあやすみたいにして弄ばれた。
     ああ、私をコントロールするのは簡単なんだな。
     っていうのが、あやされてしまうと実感して、私の中を出入りしているモノに対して、もはや畏敬の念まで沸いて来る。
     プロのものだから、っていうことか。
     友田君が腰使いを変更するだけで、私はたちまちイカされるというわけだ。
     そう思うと、それだけでなんだか。
     ――キュ、
     と、アソコに力が入ってしまう。
    「あれ? どうしたの?」
     やばい。
     何かがバレた。
    「ん? いや、何でもないけど?」
    「当ててあげようか? 僕の気分一つで焦らしたりイカされたり、寸止めまで自由なんだってことを思ったでしょ」
     エスパーすぎて敵わない。
     もうあれだ。
     兎にも角にもさすがはプロだ。
    「……あのっ、あやして下さい」
    「かしこまりました。お客様」
     私自身がそう望んだんだと、実感させにかかってくる受け答えだ。
     友田君のピストンがペースを変えて、優しかった肉棒が急に性格を変えたみたいに、意地悪をして楽しむように動き始めた。
    「あぁっ、あ、ふぁ……! んぁぁ……! あ、ふ、ふぁ……!」
     私が背中を浮かせたり、髪を振り乱すのもわかっていて、そうなるように貫いている。よがるあいだにオッパイが掴まれて、揉みしだいた上で乳首も指で苛められ、友田君の気持ち一つでピストンが停止する。
    「はぁ……はぁ…………」
     動きが止まれば、少しは喘ぎも落ち着くけど。
     肉棒自体は入ったままで、友田君が好きなようにピストンを再開すれば、私はそのたびに乱される。
     だけど、友田君はゆっくりと弓なりに腰を引いていた。
     ね、狙ってる。
     たぶんこれ、弓矢で狙い済ましている感じだ。
    「あぁん!」
     突かれると、全身が弾み上がった。
    「可愛いねぇ?」
     玩具遊びの扱いで翻弄するのも、友田君にとっては簡単なんだと、この一言の囁きによって教えられたような気がする。
     そのあとのピストンは、もう少し優しい性格を帯びていた。
     何だか、撫でれば喜ぶ子供でも扱うみたいで、小さく身をよじったり、細い喘ぎを吐き出す私を眺めて楽しんでいる。アイマスクの向こうにある友田君の表情は、きっと孫と遊んで楽しいおじいちゃん的なものなんだと、そういうのが空気感でわかってくるから、私はこのまま望み通りあやされていることにした。
    
    「本当に可愛いねぇ? 春野さんって」
    「ほら、ここがいいんでしょ?」
    「よーしよしよし、いい子だね」
    「オッパイもモミモミしてあげましょうねぇ?」
    「ほーら、乳首を気持ちよくしちゃいますよぉ?」
    
     本当に小さな子供と遊ぶみたいな言葉の数々が振ってきて、いっそのこと私も親に甘える幼児みたいに喘いでいた。
     ひとしきりあやしてもらって、それが終わるとあやされていた最中の私の反応を言葉攻めのネタにしてきたり、意地悪されて喜ぶ私に追い討ちをかけるみたく、じゃあもう一回あやしてあげるよなんて言い出して、時間たっぷりに遊ばれた。
     あとは何度かイカせてもらって、潮を吹いたことまで意地悪に指摘され、それでも優しく水分補給のドリンクを用意してくれた。
     最後はもう一度だけ、イチャつきトークで楽しみやすい、まったりとしたピストンにしてもらって、時間終了の迫ったフィニッシュとしてイカされた。
     そうなると私も体力を使ってしまって、心のストレスはすっきりしても、体はすぐに動かないから、友田君の手で着替えをさせられた。
     人の手でパンツを穿かせてもらうだなんて、幼稚園ぶりの体験をこの歳でするなんて、改めて恥じらう私の顔が可愛いからってキスされた。
     友田君のことだから、私がキスを嫌がらないのも、とっくにわかっていたんだろう。
     サービス力の高さに私の心は溶かされて、恋にドキドキした気分にさせられた。
    
    「また来たいな」
    
     なんて、お店としての策略通りなんだとわかっている。
     でも、きっと友田君はサービスに生きがいを感じていて、人を喜ばせるために働いているのだと思うから、私はこのままリピーターでいたいと考えていた。
     そういえば、私がそもそも性感マッサージ店を訪れたのは、友達に頼まれて偵察して欲しいからとのことだった。
     いいお店だったとは教えるけと、友田君のことは黙っていよう。
     だって、店には他の男の人だっているんだし。
    
    
    


     
     
     


  • 女性向け性感マッサージ店

    
    
    
     女性向け風俗?
     性感マッサージ?
    
     そんなものの存在を知らされたのは、私が商社のOLとして二十五歳を迎え、友達から相談を受けてのことだった。
    「ねえねえ、美恵。ちょっと興味あるんだけど、安全なのか気になるじゃない?」
    「いや、まあ……」
    「安心してくつろぎたいじゃない?」
    「普通のマッサージじゃいかんのか」
    「そうなんだけど、やっぱり興味あって……」
     縋るような目つきで私を見てくるのは、さしずめ自分が行くのは怖いから、まずは私が試しにサービスを受けて来てはくれないかという目論見あってのことだろう。
     ……やばいって。
    「普通は逆じゃない? どうして女が男に金を払って」
    「確かに良い人と素敵な経験って方が理想だけどさ。そうもいかないじゃん?」
    「だから金を払って素敵な時間を買ってみようと?」
    「そういうこと!」
    「ふーむ……」
     性欲があるのは悪いことではないのだろうが、果たして貞操観念的にセーフといえるか。よしんばセーフということにしたとしても、本当に安らぎの性感サービスなど受けられるのか。
     春野恵美、今年で二十五歳。
     男日照りの私とその友達は、彼氏を持たない数年間を共に過ごした底辺の仲である。社内にはイケメンらしきイケメンがおらず、まあ顔の良し悪しは横に置いても、仕事の出来る性格良好なイイ男は他の女子社員に持っていかれている現状だ。
     社内には良いと思える男が残っていないが、かといって外で出会いがあるわけでもない私達は、つまるところ一人寂しい肉体を持て余している。
     ならばお金を払ってでもという発想になることで、ホストにハマる女というのは誕生するわけなのだろうか。
     いや、わかんないけど。
    「ねえ、いいでしょ恵美。試してみない? お金は私が半額出すから」
    「そんなことを言って私を生贄にされても困りますぞ」
    「わかった! じゃあ、駄目だったらどこでも好きなお店で奢ってあげる!」
     そこまでして興味があるとは、ちょっと心配になってしまう。
     ここで私が断ったとて、この子なら仕方なく自分で店を訪れて行くだろう。そこで万が一危険なことになったらやばいのでは?
     大げさな心配かもしれないが、例えば金を出したのは女の方なのに、男の方がフェラチオだとかを頼んできても、サービス業としては最悪だ。安全性ばかりでなく、癒しとくつろぎがあるのかどうかも重要だ。
     ネットでレビューを見ればいいのだが、本当のところは自分で確かめるしかないだろう。
    「本当にどこでも?」
    「うん! 約束するから!」
    「で、半額出してくれるの?」
    「うん!」
    「ならば致し方あるまい」
     私が結局引き受けたのは、マッサージには小さな思い出があるからだ。
    
    
     高校時代の私はバスケ部に所属していた。
     そこには何故か男子マネージャーがいた。
     同じクラスの友田典明くんは、例えるなら汗からフルーツの爽やかな香りが漂いそうな、まあ誇張の過ぎる言い方だけど、艶やかな黒髪を風になびかせる横顔は、どことなく甘いフェロモンを出していたと思う。
     百八十センチに近い身長の持ち主で、体育の授業であったバスケでも、華麗なドリブルからダンクシュートを決めていた。
     マネージャーとかやっていないで、もうお前ちゃんと男子バスケやれよとツッコミを入れたくなるのは言うまでも無い。
     そんな友田君から、私はマッサージを受けたことがあった。
    「疲れ、取ってあげようか?」
     激しい練習で立ち上がる気力もなくなって、死体ごっこでもしているしかなかった私に、明るい笑みで微笑んできた友田君は、それから整体だとかエステに興味があって、実はそういう勉強をしているのだと話してきた。
     何となく信用して、私は身を任せた。
     綺麗な手でドリンクを配り、部員の怪我に気づいて声をかけ、重い荷物の持ち運びを手伝って下さる気遣いのできる男の子というポイントはもちろんあったが、果たして私はそれだけの理由でボディタッチを許したのか。
     なんてことはない。
     別に二人きりでも何でもなく、周りには他の女子達もいたので、まさかおかしな真似ができるはずもなかったからだ。
     それに、どの程度接触があるのか尋ねれば、胸やお尻へのマッサージ法もありはするけど、当然NGだろうしやめておくよと、友田くん自身が言うわけなので、あとは際どい内股も嫌だという条件で疲れを癒して頂いた。
     ふくらはぎを揉むのも、太ももに接触するのも、それはどういう手法で効果があるのかを逐一説明していきながら、心地良いマッサージで気持ちよくしてくれた。
     傍目にプロと見えたのか。
     それとも、甘いマスクのイケメンに触られたい下心か。
     何にせよ私へのマッサージが終わるなり、「私も私も!」と群がる黄色い声の女子軍団にも快い笑顔で接していた。
     プロのサービス業者かね、アンタは。
     なんて感想を抱くほど、丁寧な接し方で順番にマッサージを行っていた。
    
    
     さしてロマンチックというわけではなく、ただそれだけの思い出だが、練習が辛かったことを大いに汲み取り、労わりながら丁寧に扱って下さるマッサージは、とてもよく筋肉がほぐれて癒されたのだ。
     お金を払ったマッサージ店なら、あの時の感じを上回ってくるのだろうか。
     と、そんなことを私は思ったわけだ。
     ホームページを確認すれば、プレイ内容については事前にNG事項を告げておくこともできるらしい。
    「本当に安全に受けられるサービスですか?」
     予約電話の際に尋ねてみた。
    「もちろんです。お客様を気持ちよくして差し上げて、くつろいで頂くことが当店の使命になりますから、女性の嫌がることは致しません。もしも途中で駄目だと思ったら、いつでも中断を申し出て頂いても」
     なるほど、なるほど。
    「挿入とかって」
    「もちろんご希望しだいです。NGにしておきますか?」
    「はい。お願いします」
    「かしこまりました。局部への愛撫はいかがなさいますか?」
    「ええっとぉ……」
    「迷われているようでしたら、実際にマッサージを受けてみてのお気持ちで判断して頂くことも可能です。その場合は担当のマッサージ師の方にもお伝えしておきますので」
    「はい。じゃあそれで」
    「コースはどうなさいますか」
    「百二十分でお願いします」
     あとは日曜日の朝に時間を決め、当日を迎えた私は、担当のマッサージ師として案内に現れた男の顔に仰天した。
    
     ――友田あぁぁあぁああああああああ!
    
     何故だ! 何故お前なんだ!
     元クラスメイトだぞ!?
    
     しかも、高身長からなるスラっとしたスタイルの良さは当時から変わっていない。スリムな体格から伸びる脚のラインも、爽やかな香りを放出しそうな顔立ちの良さも、何もかもが百点満点というもので、これを上回るルックスを求めようなど贅沢すぎて罰が当たる。
    「あれ? もしかして、春野恵美さん?」
    「覚えてるし!?」
     つ、つまり――。
     元クラスメイトにお金を払ってエッチしてもらう状況?
     やばい、やばすぎる。
     どうするんだこれ……。
    
         ***
    
     恥ずかしければガウンや下着着用でも良いとのことで、頂いた紙ショーツと紙ブラジャーに着替えた私は、ガウンを羽織って待機した。
     マッサージルームはオシャレな仕上がりだ。
     ラテン系の壁紙模様に艶やかなフローリングと、観葉植物で緑を添えた一室にうっとりとするようなアロマが焚かれ、とても落ち着きやすい雰囲気だ。
    「準備はよろしいですか?」
     友田君がベッドの傍へやって来る。
    「い、一応……」
    「今回春野さんの担当をさせて頂く友田典明です。まあ高校以来になるわけだけど、あれからこういう仕事に就きました」
    「マッサージ師?」
    「そうだね。あの頃から興味があって、色々と勉強してたんだ」
     穏やかで落ち着きのある声質は、それだけで耳をくすぐるところがある。実は肌からフェロモン物質でも出てはいないかという甘い顔立ちも、長身のスタイルも、全てに乙女心をくすぐるずるさがあった。
     この人から、これから性感マッサージを?
     やばい、緊張する。
    「そうだったんだ。私は商社のOLでさ――」
     テンパって声の上ずっている私は、緊張を誤魔化すべくして早口で身の上をペラペラ語り、上司の愚痴をこぼすと友田くんは、うんうん、そうだねと、頷きながらしっかり耳を傾けてくれている。
     友田くんも自分が今の仕事に就くまでを語ってきて、少しのあいだ雑談に花を咲かせた。
    「春野さんは昔より綺麗になったね」
     なんてことをサラっと言われてしまっては、「えっ!?」と一瞬私は固まる。
    「バスケやってたでしょ? 僕としては背が高めなのは悪くないし、スポーツでラインの出来てる体って、とてもいいと思うんだよね」
     なんぞ褒められているんだ私は!
     ま、まあ……。
     お喋りに夢中になったおかげで、顔の強張るほどの緊張も和らいで、話題が落ち着いたところで友田くんは切り出した。
    「そろそろ始めようか」
    「……そ、そうね」
     とうとう、この時が来てしまった。
    「ガウンはどうする?」
    「うーん。着たままでも?」
     だって、いきなり下着姿はちょっと……。
    「うん。それじゃあ、初めはそのままにして、だんだん気持ちを高めてあげるからね」
    「あのっ、優しくしてね? 友田くん」
    「もちろん」
     ニコっとした微笑みは、やっぱり反則くさい。
     アイマスクがあるというので視界を閉ざし、マッサージ用のベッドにうつ伏せとなり、全身の力を抜いた私は、枕に顔面を埋め込んだ。
     私のガウンはパチっと留めるスナップボタン式で、バスタオル巻きのようなことになっているので肩から腕にかけては露出している。背中の肩甲骨まわりも見えている。丈は十分に膝のあたりまでかかっているが、一体どこから触るのだろう。
     アイマスクの厚みが完全に光を遮断して、物音でしか周りの様子がわからない。 
     わからないから、周囲にやたらと意識がいく。
     何か、棚から取った音だろうか。
    「アロマオイルの効能で肌を良くするからね」
     きっとオイルを手に取ったのだろう。足首から太ももにかけ、トロみのあるものが伸ばされて、私の足はヌルヌルにコーティングされていく。
     友田くんの気配が背後へまわり、指先がそーっと触れてくる感触があったのは足首だ。触れるか触れないか、いわゆるフェザータッチがアキレス腱を細やかにくすぐって、円を描くように撫で始めた。
    「始めるからねー」
     ブルブルと腕を振動させた指の震えが、産毛だけを撫でてぐるぐると、回転しながらふくらはぎへ上がってきて、膝の裏まで到達すると、アキレス腱のスタート地点に戻ってしまう。
     な、なんだこの感じは……。
     くすぐったいようでいながら、本当にくすぐったいのとは違う微妙な心地が、私の皮膚を少しずつ溶かしているようだ。
     そ、それに熱い! 火照ってくる!
     皮膚が発熱した熱さは、もしやオイルの仕業なのか?
     タオルの丈が少しだけ上にずれると、まずは約半分ほど出た太ももに同じアロマオイルをまぶしていく。ぬかるみによって固められた私の皮膚は、振動気味のフェザータッチでわずかに産毛だけで浴びていた。
     むぅっ、ムズムズしてきた。
     なんて丁寧なんだ。
     というか、オイルを広げる以外では、皮膚の表面しか責めていない。
     足だけで時間を使うので、いきなり恥ずかしい部分には来ないとわかって安心するが、太ももまで来たからにはもう……。
     タオルがさらに持ち上がり、ギリギリでお尻が隠れるだけの脚の丸出しぶりとなり、たぶん枕に深く埋まった私の顔は、カァァっと燃え上がっていると思う。
     やばい、やばい、やばいぞ。
     指先がお尻に迫っている――。
    「ふぬぅ――――」
     脚の付け根と、尻部の下限の境目で皮膚がゾワつき、私は珍妙な声を上げてしまった。
    「お尻を拝見するからね?」
     甘い囁き声で言われても困るよ!?
     あぁぁっ、また友田くんの手が丈を掴んで、紙ショーツなんぞ履いている私のお尻は、これでもう視線の下だ。
    「凄くいい形じゃない。綺麗だよ?」
    「いやそんなね。私のデカいのなんて褒められてもだね」
    「そうかな? 自信を持っても良さそうだよ。大きさは男が喜ぶし、プリプリした丸っこさが可愛くて、とっても美尻だよ?」
    「そ、そう? なの……? プリプリとかちょっと恥ずかしいから!」
     喜んでいいのか? そんなに美尻か?
     というか、そんなプリプリとかいう単語を爽やかな声で言い切らないでくれ。
    「さあさあ、このプリプリの厚みにも触っていくからね?」
     なんて言うものだから――。
     てっきり、すぐにお尻を揉むと思ったが、触れるといっても下弦と上弦を責めている、紙ショーツの生地がわずかばかりに及んでいない、山のような丸みのふもとの方だ。
     ――来るか?
     生地のエリアに指が入ると、大胆に揉まれるのかと覚悟しかけるが、そんな私の胸によぎった緊張感とタイミングを合わせるようにして、指は太ももへと移っていた。
     さーっとなぞり、また接近。
     ……来ない。フェイントかね。
     お尻を飛ばして、さらにタオルの丈を上げ、私の体はもう腰まわりまで見えている。そこにまたアロマオイルが垂らされて、皮膚の表面がヌルヌルになったところで、膨らみの上弦を可愛がる。
     うおおっ、そこは尾てい骨くらいの高さにあるお尻の端っこで、丸い膨らみと腰の境にあたる部分を――よしよし、ナデナデ、とでも言うべきか。絶対に幼い子供を愛しむノリの撫で方をしていると思う。
    「うっ、うぅぅぅ……」
     声だけ聞けば、今の私は苦しみの呻き声を発しているかのようだ。
    「もう気持ちよくなり始めているみたいだね」
     お尻の上端だけでなく、腰からくびれにかけても指先が這い、オイルのついた指の先端でヌルウゥゥゥっと、やっぱり皮膚の表面だけを責め立てる。
     ああぁぁっ、何だこの甘ったるい肌の熱さは――。
     皮膚がトロトロに溶解していく錯覚が、今までオイルを塗られた箇所全てに広がって、下半身がムズムズしてたまらない。
    「そろそろ、このプリっとしたお肉を見てあげるよ」
     次の瞬間、恐ろしいことが起こった。
     私の紙ショーツはスライド式で、施術に合わせて露出度を変えられる。
    
     ――ずるっ、
    
     と、友田くんが私の紙ショーツを中央に手繰り寄せると、いとも簡単にTバックと化す私のお尻は、割れ目が隠れる以外は丸見えなのだ。
    「ととと、友田くん! 友田くん!」
     恥ずかしい! 恥ずかしいって!
    「お尻から嫌だ嫌だって声が聞こえてきそうだね」
     し、しまった!
     私はそう見えかねないお尻の振り方をしてしまった。仕方ないじゃないか。熱いしムズムズするし、何だか腰がくねってしまうもの。
    「ここも気持ち良くしていくよ」
     とうとう、お尻の上に手の平がやってきた。
     アロマオイルを塗り塗りと、広げる時にも無理な力は入れていない。どこまでも優しく軽い手つきのみで、全体的に馴染ませると、今度こそ指先オンリーの愛撫がお尻を丁寧に丁寧に、細やかな踊りで責めている。
     あぁぁぁっ、骨の芯まで甘ったるいよぉぉぉ。
     一箇所だけで時間をかけて愛撫するから、もう既に三十分以上は経過していまいか。
     だからお尻もたっぷりと、良い子良い子と褒めんばかりの手つきにトロけていき、もうどうにでもなれという諦めの境地に私は達した。
     だって、Tバックの露出度をガン見されてるんだもの。アイマスクのおかげで指の感触は如実すぎるほどよくわかるし、恥ずかしげもなくサラっと褒めるし、何というか私はもう何もできない。
     ――もういいです。
     ――どうぞお好きに性感マッサージをお願いします。
     やっとのことでお尻の愛撫が打ち止めになると、ガウンの内側に隠れた背中へオイルを広げて、肩や二の腕にかけても伸ばしていく。
    「はぁっ、あぁぁ……」
     私は絶対、変な声を出している。
    「もうアソコも濡れている頃でだろうね」
    「……友田くん。そんなまさか」
    「大丈夫だよ。本当に嫌がることはしないけど、一旦仰向けになってもらっていい?」
     上を向いても、アイマスクによって広がる暗闇で、私には何も見えない。ただ枕に後頭部を置き、肌に染み込んだ皮膚中の熱い疼きに甘美なまでにうなされる。
     前開き式のガウンなどあっさりとオープンされ、私は下着姿で友田くんの目の前に横たわっていることとなった。
     不思議なほど恐怖感はない。
    「今度は先に全部オイルを塗るからね」
     断りを入れてから、べったりと私の肌に張り付く手の平も、あくまでオイルを広げようと這い回り、下着に隠れた部分以外は、首から下が全てオイル濡れとなる。
     そっか、いやらしさが無いんだ。
     いやらしさというか、欲望にまみれた身勝手な揉み方が一切ない。自分が楽しむためなら、お尻なんかはもっと大胆に揉みしだいてもおかしくないのに、そういうことを一度もしないで私への性感だけに集中している。
     本当に女性を感じさせることが目的で、自分自身の欲望は横にでも置いているのだ。
     ずっと鼻腔を癒し続けるアロマの香りの効果もある。
     表側への愛撫も、足の先から太ももにかけ、時間をかけて上へ上へと迫ってくるが、内股のきわどい位置まで接近しながら、焦らさんばかりにアソコには触れてこない。腰や腹に指先が踊り、肋骨をわたって胸の真下に指は来た。
     やっぱり、簡単には触ってくれない。
     脇下から迫る形で、だんだん乳房に来ると思ったら、端っこをちょっぴりするだけで、指は鎖骨へ移動する。
    「だいぶ気持ち良さそうな顔になったね」
    「んん……っ、そんなことは……ぁ……んっ!」
     もう駄目だ。私の腰はモゾモゾと動いている。
     こんなにも肌が沸騰して、快感が広がってくるなんて――。
    「春野さんのこういう声が聞こえて光栄だな。高校時代は高値の花だと思っていたから」
    「ひゃ……そんな私っ、高値だなんてぇ……っ!」
    「自分で思っているよりも、春野さんは人気者だったんだよ?」
    「んっ、うそぉっ、だってぇぇ……!」
    「さあ、脚を少し開いてもらうよ」
     私の足のあいだにスペースを作り、友田くんがそこに座った気配がわかる。股を閉じようとするだけで、友田くんの正座の膝にぶつかって、もう開いたままでしかいられない。
    「あっ」
     むああっ、わき腹……!
    「いっ……にぃ……いにゃぁ……!」
     下から掻き揚げる四指の愛撫が、数センチずつ脇の下へと向かっていき、ギリギリで乳房とは言えない付け根の部分を集中的に――。
     指が離れ――次はどこ?
     鎖骨の中央に指が一本置かれた。それが下へと、乳房のあいだに入るものの、触れるようで触れずに乳房を離れ、今度は肋骨で指が踊った。乳房の下弦に迫るも、やはり触れずに他所へ指を置き直してばかりである。
    「春野さんのオッパイを見ちゃおうかな」
     友田くんは私の紙ブラジャーを掴んだ。
    「はい。バンザイ」
     と言われれば、私はその通りにしてしまって、ずるりと持ち上げるように脱がされる。これで私を守ってくれるのはショーツだけだ。
     あぁぁっ、オッパイを見られている。
    「乳首が硬くなっているね」
    「言わないでぇ……!」
    「夢みたいだな。自分では信じられないだろうけど、僕にとっては『あの春野さん』が下着一枚だけなんだよ」
    「言わないでってぇ……」
    「もっと感じる状態にしてあげる」
     友田くんはやっと、私の乳房を――。
     いや、膨らみの端っこだけで、上の方には来ようとしない。丸みに沿って、ぐるりと一周かけてくすぐるが、ほとんど乳房というよりその付け根だ。
     ううっ、これじゃあ一体いつになったら私のオッパイは責めてもらえる?
     しかし、代わりにおへその穴に指が入って、もう片方の手は下腹部のあたりだ。ショーツ越しに陰毛の生えた部分をさわさわと、それから両手ともV字ラインに沿った股を撫で、性器に限りなく接近した。
     スライド式の布地を――いや、紙ショーツだから紙地を閉じて、アソコが本当にギリギリで隠れるだけの露出度となり、出ている肌がまさぐられる。
    「んんぅぅ……まさかっ、あそこを……?」
    「ここがNGかどうかは決めていないんだよね」
    「そうだけど……」
    「決めた。アソコに欲しい気分にさせてあげるよ」
     それがどれほど、爽やかな風を吹かせたニッコリ笑顔による宣言なのか。アイマスクを解していても、私にはよくわかった。
     私が覚える危機感は一つ。
     アソコの淫らな状態を認めさせられてしまう……!
    「そんなのいいって……!」
    「だめ、リラックスしなきゃ」
     次の瞬間――。
     んむぅぅぅぅ!
     ――乳首!
     完全な不意打ちで乳首をつままれ、私は大きく仰け反ってしまった。
    「いい反応だよ。可愛いね」
     あぁぁっ、指のお腹でよしよしって、乳首を両方とも可愛がってる。乳房の内側にどんどん快楽が詰まってきて、もう自分でも状態がわからない。
     な、何だこの『何か』は――。
     何かはわからないけど、この『何か』はもう快感と呼ぶしかない。それが私の全身にしつこいほど循環して、腰がくねくねと動いてしまう。お尻が少し浮いてしまう。シーツもギュっと鷲掴みにしていると――。
    「すごく幸せそうになってきたね」
     友田くんは嬉しそうにそう言った。
     ええっ、友田くんが喜ぶの? 今の私を見て?
     今の私って、どうなってるの…………。
    「そのまま、そのまま、頭を真っ白にしていって、気持ちよくなることだけを考えて?」
    「えうっ、んむぁ……っん!」
    「春野さんはもう凄く濡れているよ? アソコの部分にオイルとは関係のないものが出て、ヌルヌルなのが見ただけでわかるから」
    「いやぁ……わたしそんなに……あぁぁ……!」
     あっ、アソコの状態なんて……。
     駄目駄目!
     もう恥ずかしくて考えられない!
    「好きなだけ感じてごらん?」
    「あぁぁ……ふっ! ひむぅぅっ、んぅ……!」
     今まで指先オンリーだった愛撫が、手の平べったりとなって私の腹を這い回る。軽やかなフェザータッチが、オイル濡れの皮膚の表面をするする滑り、わき腹から肋骨へと、そして胸を軽く揉む。
     優しく扱う指の圧力で、ふわっと軽やかに包んで離す。
     指でコリコリと乳首をつまみ、刺激の強さに肩が浮いたり首がよれたり――。
    「いっ、うん……!」
    「可愛い声にはもっとサービス」
     ――ちゅっ。
     き、キス!?
     私のおでこにそっと唇が触れていて、さりげない一瞬で離れていった。
    「友田くんってば……!」
    「びっくりした? 今の表情もキュンとしたよ」
     友田くんは私の両耳を掴み、親指で撫で回す揉み方を行った。
    「もおっ、変なことばっかり――」
    「そういう店に来たのはどこの誰かな?」
    「そ、それは……」
    「アソコも変なことになってるし、いっぱい感じてくれて嬉しいな」
     友田くんの動く気配がしたと思うと、おそらくベッドを降りて脇に動いた。
     ……次はどうするの?
     物音がなくなると、私には暗闇しかないからわからない。今一番よく聞こえている音といったら自分自身の心臓だ。もうバクバクいっている。全力疾走したみたいに荒れた呼吸が私自身よくわかる。
     最後の一枚を脱がそうと――。
    「んひぃ……!」
     友田くんの手が紙ショーツを掴んでいた。
    「NGって言わないと、ここもメチャクチャにしちゃうよ?」
     私には悪魔の囁きにしか聞こえない。
     だって、こんなに火照った体を放っておかれたら……。
    「え、えぬ…………」
     それでも、やっぱり恥ずかしい。
     アソコを見られてしまうだなんて、どうしても考えられなくて、私は震えながら口にしかけていた。
    「本当にいいの?」
    「うぅ……」
    「いっぱいサービスするんだけどな」
     ど、どうしよう……。
     私は……ええと、でも……。
    「ほら、今のうちに決めないと間に合わないよ?」
     肌の上からずれる感触で、紙ショーツに隠れていた下の毛が、ほんの少しだけ見えているであろうことが私にはわかった。
    「あっ、あぁ……わっ、わたし…………」
     それでも、数秒間は待ってくれていたと思う。
     だけど――。
    「はい。時間切れ」
     意地悪な悪魔がいかにニヤっと微笑んだか。
     声だけでわかるほどだった。
    「あぁっ……!」
     私の全てが曝け出された。
    「隠しちゃ駄目だよ」
     反射的に動いた私の手首が、友田くんの手に捕らわれる。乱暴ではないけれど、軽い力で掴まれるだけでも、魔法のように抵抗力が奪われて、私はだらりとしてしまった。
    「見ないでぇ……」
     私に出来るのは懇願だけだ。
    「アロマオイルは綿密に広げたからね。ヌルっとした春野さんの全身を包んでいて、かなりエロい光沢がかかっているよ」
     嫌ぁぁ……!
     説明しなくていいのに!
    「だけど、アソコがヌルヌルになっているのは、オイルのせいじゃないね。こんなに感じてくれて嬉しいよ」
     友田くんの指先が、私の割れ目を撫で上げた。
    「ひぃぃ……!」
     電流でも流されたように、ブリッジに挑戦して腹を持ち上げようとしたように、私の腰と背中は高らかにビクっと弾んでいた。
    「あーあ、動かれたらマッサージができないよ?」
    「ひあっ、そんなぁ……っ! 意地悪なこと――いっ、言われても……んふぁっ!」
     友田くんは私の横合いに立っている。
     右手の指を愛撫に使い、左手では私のお腹を軽く押さえているけれど、決して強引な力は入れないから、私の腰のくねりは押さえられない。
    「駄目じゃない。春野さん動きすぎだよ」
    「だってぇ……! 友田くんがぁ……!」
    「おっ、おぁ……! お願いィィ……! いじめ……ないでぇ…………」
    「あくまでサービスだよ」
    「ひぃぃぃああああ――!」
     恥ずかしいほど珍妙な声で、私は達してしまっていた。
    「あらら、すごい潮だね。僕の服にもかかっちゃったよ」
    「うそ……私……ごめんなさい……」
    「いいんだよ? まあ、お仕置きはしておこうか」
     ぐっと、急に押し付けが強くなったと思うや否や、私の割れ目に友田くんの指が挿入されていた。
    「そっ、そんな――」
    「もう一回、イってみようか」
     指の出入りに逆らえなくて、もう私は滑稽な踊りのようにお尻を浮かせ、腰をくねらせていたと思う。
     噴き出す潮が、私自身のお腹にかかってきた。
     ビクン、ビクンと、全身の筋肉が痙攣して、「またイったね?」と聞こえてきた。
     指が二本に増えていた。
     もう頭が真っ白で、嵐のような気持ちよさの中で、散々喘ぎ尽くす羽目になったとしか言いようが無い。
    
     はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……
    
     わたし、何回イっちゃったの?
    
     凄かった。
     もう色々と、凄かったと友達には伝えておこう。
    
     絶頂地獄が終わったあとも、まだ少し時間は残っていた。
     さすがに手加減してくれたけど、何というべきか、気がついたら背面座位のようにして、私のお尻は友田くんのあぐらの上に乗せられていた。体重を後ろに預けると、背中には良い胸板の厚みが接触してきた。
    「春野さん。いっぱい感じちゃったね」
     友田くんの顔が後ろから、私の耳のあたりへ降りてくる。
     甘みのある声が至近距離から、耳の穴がくすぐったい。
    「ねえ、なんか想像を絶するんだけど」
    「それくらい幸せになってもらえれば本望だな」
     胸にお腹にアソコまで、残り時間をかけての愛撫で、私は子供のようにあやされていた。どんなに濡れたか、愛液を指に絡め取られては直視できずに目を背け、そんな私の反応を可愛いなんてからかってくる。
    
     終了後は――
    
     着替えのあとにドリンクを用意してくれた。
    「たくさん濡らしたから、水分補給をしておかないとね」
     という一言付きで。
     ああもう、気持ちよかったよ。
    
    「よければ次も来て頂戴ね。挿入サービスもあるから」
    
     そ、挿入……。
     いや、まずリピート自体をどうしよう。
     なんということか、行く行かないで迷っている自分がいた。