服を交換する際に(セレナ、柚子)





 *第46話より、岩陰で服を交換することになった二人。


 服を交換しようと提案するなり、セレナはすぐにでも脱ごうとしていた。岩陰に隠れるように促したからいいものの、堂々と全てを脱ぎ去り、丸裸になってしまうのには、柊柚子も引き攣るしかない。
「あのねぇ……。別に下着まで脱がなくても」
「何故だ。敵を欺く作戦なら、念には念を入れ、見えない部分まで交換すべきではないのか」
 女の子同士。岩が視線を遮っている。
 それでも、その向こうには男がいることには変わらない。
 それなのに、胸もアソコも隠そうとする素振りがまるでないのは、いっそ勇ましいとでも言うべきだろうか。
「さあ、私は脱いだぞ。お前も早く脱げ」
「わかってるわよ。ちょっと待ってて」
 そこに置かれたセレナの服を着るために、柚子も制服や靴下を脱いでいく。
 とりあえず下着姿にまでなった柚子は、背中のホックに両手を回して、セレナの視線をさりげなく伺った。
 ――やっぱり、これも交換するの?
 と、目で問いかける。
 コクリ、と。セレナは頷いた。
 仕方なく取り外し、ショーツまで脱いだ柚子は、セレナ共々お互いに丸裸である。恥じらいのある柚子は、例え同性の前であっても、胸やアソコに手を伸ばさずにはいられない。
 何も隠そうとしないセレナと、隠そう隠そうと腕で恥部を守った柚子とは、二人はまるで対照的であった。
「それにしても、綺麗な体だな」
「え?」
「さすが私と瓜二つなだけはある。その体を見れば、誰の視線も釘付けになるだろうな」
 いきなり体を褒められて、困った柚子は慌てて赤らむ。
 綺麗と言ってもらえるのは嬉しいが、裸の体について指摘されているわけでもあるから、思春期の女の子としては恥ずかしい。
「……あ、あなたこそ! とても綺麗な胸じゃない。私とそっくりなだけあるわ!」
 仕返しであるかのように、柚子はセレナの乳房を褒め返した。
 もっとも、セレナがそれで恥じらうわけがない。
「ふん。当然だ」
「羨ましい……。触ってみてもいいかしら?」
「何?」
「だって、すっごくイイ形なんだもの。ちょっとくらい興味沸くわよ」
 柚子はがっつり、積極的に胸を褒め、恥じらいのないセレナに対して、ちょっとくらい何かしてやろうと攻めに出る。
「そんなの興味があるのか」
「ええ、あるわ。お願い! 少しだけだから」
 さすがのセレナも、少しは迷った。
 どうしたものかといった顔つきで、少しばかり悩んだ挙句、セレナは言う。
「よし、いいだろう。だが時間が惜しい。あまり長くはやるなよ?」
「わかってるって」
 柚子はさっそくのように手を伸ばし、セレナの胸を揉み始めた。

     ***

「やわらかーい」

 乳房にべったりと手の平を貼り付けながら、踊るように指を動かし、柚子はじっくり丹念に揉み込んでいた。
「どうだ?」
「うん。すっごくいいわ! 張りがあって、柔らかくて、いい胸よ。私もこんな胸だったらいいのに」
 手の平に伝わる感触が気持ち良くて、全然指が止まらない。
 セレナの胸を揉みしだく柚子の手は、止まるどころか活発になっていた。
「お前も十分に良い胸をしているはずではないのか?」
「えっ、そんなこと……」
「何を自信のないことを。お前は私と同じ顔なんだぞ? そのお前の胸が貧弱な質であるはずがない。私にも確かめさせろ!」
「あっ、ちょっと……!」
 静止する間もなく、今度はセレナの手が柚子の乳房を鷲掴みにした。
「なるほど、私と似たようなものか。お前こそいい胸じゃないか」
「……そうかしら」
 おかしな状況になってきた。
 服の交換で着替えるはずが、いつの間にやら、お互いの乳房を揉んでいるのだ。

 モミモミ、もみ、もみ――。
 もみ、もみ、もみ……。

「ねえ、セレナ。いつまで揉むの?」
「何を言っている。私はまだ一分も揉んでいないぞ」
「けど、時間が惜しいんでしょ?」
「ああ、その通りだ。お前こそ、そろそろ終われ」
「そう言われたって、ここでやめたら私だけ揉まれっぱなしじゃない」
 引っ込みがつかなくなっている。
 やめるタイミングがお互いにわからない。
「――っぁ! お、おい! 今どこを触った!」
「どこって、乳首よ。あなただって、今触ってるじゃない。んんぅ……」
「お前! 何を変な声を――あっ、くぁぁ……」
「あっ、んんぅ……。あなたこそヘンよ」
「そんなことは……。ぬぅぅ……」
 しだいに触れ方ばかりがエスカレートして、とうとう二人は乳首を刺激し合っている。散々に揉まれたお互いの乳房には、甘い痺れが宿っており、柚子もセレナも、乳首が固く突起してきているのだ。
 そんな乳房を刺激されれば、静電気の弾けるような快感が乳房全体に広がってしまう。
「……ねえ、セレナ。あなたの目、色っぽくなってない?」
「色っぽいだと? お前こそ……」
 こんなことを続けていれば、やがてもう一つの部分も切なくなる。
 何かを気にするかのように、セレナの太ももが擦り合わせられる瞬間を、柚子は決して見逃さなかった。
「ねえ、なんか変な気分にならない?」
「ヘン? ああ、さっきからおかしい。一体何だ。この胸の感じは」
「私が教えてあげる。じっとしてて?」
 柚子はセレナの股へ手を差し込み、太ももの狭間に隠れた秘所へと触れる。割れ目への愛撫を始めるや否や、セレナはビクンと肩を弾ませ、わけもわからない快感にみるみるうちに表情を変えていく。
「……なっ、なんだ? この感じは」
「気持ち良いでしょう?」
「ああ、何故なんだ。人に触れられるというのは、こんなにも……」
「そうよ。とってもイイの」
 しつこく絡み込むような指先で、くすぐるような刺激を受けたセレナは、気持ち良さに体を震わせ拳を固く握り締める。縋るかのように柚子の肩を掴んで、頭をもたれかけ、やがて重心を柚子に委ね始めた。
「っ、つはぁ……。ふぁ……はぁ…………」
「気持ち良いなら、気持ち良いって言って?」
「ああ、気持ち良い」
「だったら、私のも触ってくれる?」
「こうか」
 セレナの指が柚子へと伸びる。
 お互いの秘所を弄り合う形となり、この淫らな触れ合いはしばし続いた。

     *

 そして、長らく続いてしまったその後。
「ところで、下着は?」
 問いかける柚子。
「下着? ブラジャーがあるだろう」
 答えるセレナ。
 しかし、柚子が気にしたのはそんなことではない。
「ショーツは? って聞いてるの」
 スパッツを履こうとして気づいたのは、あるべきはずの下着が、ショーツがどこにも置かれていないということだ。
「それなら、直穿きだ。ショーツなら履いていない」
「……へ?」
「何がおかしい」
「それじゃあ、私はノーパンってこと?」
「別に見える心配はないだろう。問題あるのか」
 問題ある。下着がないと落ち着かない。
 かといって、念入りに下着まで交換する流れになったのに、これからスカートを履くことになるセレナをノーパンにさせることはできない。
 つまり、柚子は自動的にノーパンの道を選ぶしかないのだ。


「――そ、そんな~!」

 この情報に密かに聞き耳を立てていた忍者は、デニスは、果たして何を思うのか。